(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818181
(24)【登録日】2021年1月4日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ミネラルファイバー
(51)【国際特許分類】
C03C 13/06 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
C03C13/06
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-503810(P2020-503810)
(86)(22)【出願日】2018年7月24日
(65)【公表番号】特表2020-526475(P2020-526475A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(86)【国際出願番号】FR2018051890
(87)【国際公開番号】WO2019020925
(87)【国際公開日】20190131
【審査請求日】2020年5月29日
(31)【優先権主張番号】1757027
(32)【優先日】2017年7月25日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン−ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ クレールオー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック ベルナール
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−512969(JP,A)
【文献】
特開2015−027948(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1544370(CN,A)
【文献】
特表平08−511760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含む化学組成を示すミネラルファイバー:
SiO2 57.0〜60.0重量%、
CaO 25.0〜30.0重量%、
MgO >8.0〜10.0重量%、
B2O3 2.5〜6.0重量%、
R2O 2.5重量%まで、
Al2O3 0〜2.0重量%、及び
R2O/B2O3のモル比 0.20〜0.60。
【請求項2】
R2O/B2O3のモル比が0.23〜0.54であることを特徴とする、請求項1に記載のミネラルファイバー。
【請求項3】
CaO/(CaO+B2O3)のモル比が、0.75〜0.95、好ましくは0.78〜0.91であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のミネラルファイバー。
【請求項4】
SiO2+CaO+MgO+B2O3+R2Oの含有量の合計が、前記ミネラルファイバーの前記化学組成の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%を占めることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項5】
前記ミネラルファイバーが、8.1〜9.5重量%、好ましくは8.3〜9.3重量%のMgO含有量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項6】
前記ミネラルファイバーが、2.5〜5.0重量%、好ましくは3.0〜4.5重量%のB2O3含有量を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項7】
前記ミネラルファイバーが、0.1〜2.0重量%のNa2O含有量を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項8】
前記ミネラルファイバーが、最大で1.0重量%、好ましくは最大で0.5重量%のK2O含有量を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のミネラルファイバー。
【請求項9】
前記ミネラルファイバーの前記化学組成に適したガラス化可能な混合物を溶融する工程、及びその後の繊維化工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のミネラルファイバーの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のミネラルファイバーを含む断熱製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工ミネラルファイバーに関する。より詳細には、本発明は、断熱材を製造することを意図したミネラルファイバーを対象とする。特に、本発明は、防火用途のためのガラス質のミネラルファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
構造部品の耐火性とは、ある期間に部品がその構造的機能を保持し、難燃性を保証し、かつその断熱の役割を保持することに相当する。標準的な燃焼試験は、一般的には、セルロース火災の温度曲線に基づくISO規格 834に従う温度上昇からなる。実際のところ、この曲線は炭化水素を伴う火災に代表的なものではない。海上プラットフォーム、石油化学産業、又は道路トンネルで起きる火災のような、石油製品に関連した火災をシミュレートするためには、規格EN 1363−1で述べられている炭化水素曲線を適用する。この炭化水素曲線は、よりいっそうの急激な温度上昇及びより高い最終温度によって、セルロース曲線とは異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、火災に対して改善した挙動を有する、SiO
2−CaO−MgO−B
2O
3の四成分系に基づくガラス質のミネラルファイバーの組成物を提供することにある。
【0004】
この組成物はまた、ブラスト延伸プロセス又はローター上での繊維化プロセスのような、従来から使用されているプロセスで繊維化することができるものでなければならない。これらのプロセスによる繊維化の進行は、溶融材料の粘度が、1.5ポアズであるときに最適となる。さらに、この粘度に到達する必要がある理想的な繊維化温度(T
fib≒T
log1.5)は、1320〜1420℃である。この温度は、時間の経過と共に完全には一定ではないか、又は繊維化の間で完全には均一ではないので、繊維化温度(T
fib)と液相温度(T
liq)との間に十分な差が必要であり、それによって繊維化の間の失透のいかなる問題も防止するようにしている。繊維化範囲としても知られるこの差が、少なくとも30℃でなければならない。
【0005】
さらに、すべての人工ミネラルファイバーに関しての生体溶解性の性質は、本発明によるミネラルファイバーにとって重要な基準である。吸入による体内での極細繊維の蓄積可能性に関連した、任意に起こり得る病因となるリスクを回避するためには、ミネラルファイバーは、生理的媒質に迅速に溶解することができるものでなければならない。この目的で、本発明による組成物は、特に、技術規則TRGS 905で定義する発がん性指数(KI)が、40又はこれを超えるものであることを満たす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は以下の成分を含む化学組成を示すミネラルファイバーに関する:
SiO
2 57.0〜60.0重量%、
CaO 25.0〜30.0重量%、
MgO >8.0〜10.0重量%、
B
2O
3 2.5〜6.0重量%、
R
2O 2.5重量%まで、
Al
2O
3 0〜2.0重量%、及び
R
2O/B
2O
3のモル比 0.20〜0.60。
【0007】
本明細書及び請求の範囲のすべてを通じて、別段の指示がない限り、これらの含有量は重量%で示されているものとする。
【0008】
このような組成は、生体溶解性、改善した耐火性(特に炭化水素火災に対する耐火性)、及び加工性(T
fib≒T
log1.5が1320〜1420℃であり、かつT
fib−T
liqが30℃よりも大きいこと)について、所望の基準を同時に満たすことを可能にする。これらの特性は、特に、比較的高い(8.0%を超える)酸化マグネシウム含有量と、酸化ホウ素の存在と、非常に特異的なR
2O/B
2O
3モル比との組み合わせによって得ることができたものである。
【0009】
本発明によるミネラルファイバーは、ガラス繊維であり、すなわち、結晶質のセラミックファイバーとは対照的に、主となる(少なくとも50%の)ガラス質相を有し、一般的には90%を超え、実に99%を超え、又はさらには100%のガラス質相を有する。ミネラルファイバーにおけるガラス質相と結晶質相の割合は、X線回折法(XRD)によって測定することができる。
【0010】
本発明によるミネラルファイバーの組成は、SiO
2−CaO−MgO−B
2O
3の四成分系に基づいており、すなわち、SiO
2、CaO、MgO及びB
2O
3の含有量の合計が、組成の少なくとも92%、特に少なくとも95%を占める。好ましくは、SiO
2、CaO、MgO、B
2O
3及びR
2Oの含有量の合計が、ミネラルファイバーの組成の少なくとも95%、特に少なくとも97%、さらには実に少なくとも98%を占める。
【0011】
シリカ(SiO
2)の含有量は、57.0〜60.0%、特に57.5〜59.5%に及ぶ範囲内である。60.0%を超える含有量は、このミネラルファイバーの生体溶解性を低下させる可能性がある。57.0%未満の含有量は、繊維化温度でのこの組成物の粘度に好ましくない影響を与える可能性がある。
【0012】
石灰(CaO)の含有量は、25.0〜30.0%、特に26.0〜29.0%に及ぶ範囲内である。25.0%未満の含有量は、液相温度を高める可能性がある。
【0013】
酸化マグネシウム(MgO)の含有量は、8.0%を超えて10.0%まで、特に、8.1%から、さらには実に8.3%又は8.5%から、10.0%まで、さらには実に9.5%又は9.3
%までに及ぶ範囲内である。8.0%又はこれ未満の含有量は、液相温度を高める可能性がある。
【0014】
酸化ホウ素(B
2O
3)の含有量は、2.5〜6.0%、特に、2.5%から、さらには実に3.0%から、5.0%まで、さらには実に4.5%までに及ぶ範囲内である。2.0%未満の含有量は、ファイバーの耐火性を低下させる可能性がある。6.0%を超えると、繊維化温度での粘度が低下し得る。
【0015】
CaO/(CaO+B
2O
3)のモル比は、好ましくは0.75〜0.95、特に0.78〜0.91であり、それによって、液相温度を下げ、かつ繊維化範囲をさらに広げるようになっている。
【0016】
アルカリ金属酸化物(R
2O)、特に、酸化ナトリウム(Na
2O)及び酸化カリウム(K
2O)の含有量の合計は、2.5%までの範囲内である。Na
2Oの含有量は、有利には0.1〜2.0%である。一方、K
2Oの含有量は、有利には、最大で1.0%、さらには実に0.5%である。ミネラルウールは、好ましくは、Na
2O及びK
2O以外の別のアルカリ金属酸化物を含まない。それでもなお、ミネラルファイバーは、いくつかの出発物質に不純物としてしばしば存在する、Li
2Oを少量含むことができる。
【0017】
R
2O/B
2O
3のモル比は、0.20〜0.60、好ましくは0.23〜0.54である。いかなる理論とも関わり合うことを望まないが、本発明による組成の範囲では、R
2O/B
2O
3のモル比が0.20〜0.60であるときに、ホウ素が主に網状構造の形成物質として作用すると考えられる。このことは、耐火性を向上させるのに重要な酸化ホウ素の含有量を保持しながら、本発明による組成物の繊維化温度で、粘度を高める効果をもたらす。
【0018】
酸化アルミニウム(Al
2O
3)の含有量は、2.0%又はこれ未満であり特に1.5%又はこれ未満であり、例えば、0%から、さらに実に0.1%から、1.0%まで、さらに実に0.7%までである。2.0%を超える含有量は、ファイバーの生体溶解性に影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
本発明によるミネラルファイバーの組成物は、P
2O
5も含むことができ、特に、3%まで、さらには実に1.2%までに及ぶ含有量で含むことができ、それによって、中性のpHで生体溶解性を向上させるようになっている。
【0020】
本発明による組成物は、特に不可避的な不純物として存在するその他の成分も含むことができる。本発明による組成物は、3%までに及ぶ範囲内の、特に0.1〜2.0%の、さらには実に1%の含有量で酸化チタン(TiO
2)を含むことができる。同様に、酸化鉄(Fe
2O
3の形態で示される)は、3%までに及ぶ範囲内の、特に0.1〜2.0%の、さらには実に1.0%の含有量で存在することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述した様々な好ましい範囲を互いに自由に組み合わせることができ、簡潔さのためにその様々な組み合わせのすべてを列挙することは不可能であることが明らかである。
【0022】
いくつかの好ましい組み合わせを以下に記載する。
【0023】
好ましい実施態様によれば、本発明によるミネラルファイバーは、以下の成分を含む化学組成を示す:
SiO
2 57.5〜59.5重量%、
CaO 26.0〜29.0重量%、
MgO 8.1〜9.5重量%、
B
2O
3 2.5〜5.0重量%、
R
2O 2.5重量%まで、
Al
2O
3 0〜2.0重量%、
R
2O/B
2O
3のモル比 0.20〜0.60、特に0.23〜0.54、及び
CaO/(CaO+B
2O
3)のモル比 0.75〜0.95、特に0.78〜0.91。
【0024】
本発明の別の主題は、本発明によるミネラルファイバーを得るための方法であり、この方法は、このミネラルファイバーと実質的に同じ化学組成を有するガラス化可能な混合物を溶融する工程、及びその後の繊維化工程、特に、ブラスト延伸プロセス又はローター上での繊維化プロセスによる繊維化工程を含む。
【0025】
溶融工程は、ガラス化可能な混合物から溶融材料浴を得ることを可能にする。ガラス化可能な混合物は、様々な天然及び/又は人工の出発原料、例えば、ケイ砂、フォノライト、ドロマイト、炭酸ナトリウムなどを含む。
【0026】
溶融工程は、さまざまな既知の方法で行うことができ、特に、燃料燃焼炉での溶融によって、又は電気溶融によって行うことができる。
【0027】
燃料燃焼炉は、少なくとも一つのバーナーを有しており、空中で(溶融材料浴の上に炎を置いて、放射によって加熱する)又は浸漬して(溶融材料浴内に直接炎を作り出す)、炎を当てる。一つのバーナー又は複数のバーナーのそれぞれには、例えば、天然ガス又は燃料油などの様々な燃料を供給することができる。
【0028】
「電気溶融」とは、例えば炎のような他の加熱手段を任意に使用すること以外の、溶融材料浴中に浸漬した電極を使って、ジュール効果によってガラス化可能な混合物を溶融することを意味すると理解されている。ガラス化可能な混合物は、通常、機械的装置を使って溶融材料浴の表面上に均一に広げられており、このため、溶融材料浴の上の温度を制限する熱遮蔽を構成し、その結果、上部構造の存在は必ずしも必要ではない。電極を包囲して設置するか又はタンクの側壁に設置し、頂部を介してこの電極を吊るして、溶融材料浴中に浸すことができる。この初めに述べた2つの選択肢は、大きなサイズのタンクにとって一般的には好ましく、それによって、溶融材料浴の加熱についての可能である最適な分布を達成するようになっている。電極は、好ましくはモリブデンでできており、さらには、任意に酸化スズでできている。包囲して設置するモリブデン製電極の通路は、好ましくは、スチール製の水冷式電極ホルダーを介して実施される。
【0029】
溶融工程に燃料燃焼溶融及び電気溶融の両者を用いることもでき、例えば、ガラス化可能な混合物の溶融を促進するために使用する電極を側壁に具備した燃料燃焼炉を用いることもできる。
【0030】
繊維化工程は、好ましくは、ブラスト延伸プロセス又はローター上での繊維化プロセスによって実施する。ブラスト延伸プロセスは、例えばカナダ特許第1 281 188号明細書に記載されており、一つ又は複数のノズルを通じて溶融材料を搬送し、初期フィラメントを形成することで構成されている。続いて高速ガス流を使って、初期フィラメントを細くして、ミネラルファイバーを得るようになっている。
【0031】
ローター上での繊維化プロセスは、カスケード繊維化としても知られ、例えば国際公開第92/06047号に記載されており、実質的には水平な様々な軸の周りを回転するように取り付けた複数のローターのアセンブリ上に溶融材料を注入することで構成されている。ローターが回転したとき、ローターアセンブリの上部ローターの周囲に溶融材料が注がれ、この溶融材料が次のローターの周辺上に投じられ、かつ連続してそれぞれの次のローターの周辺上へと投じられるように複数のローターを配置する。ミネラルファイバーは、一つ又は複数のローターのそれぞれから遠心力によって投げ出され、かつ集められる。
【0032】
得られたファイバーを、その表面に噴霧したサイジング組成物を使って一緒に結合し、その後、例えばロール又はパネルのような様々なミネラルウール製品を与えるように、支えるか又は成形する。したがって、結合したミネラルウール製品は、好ましくは、バインダー及びミネラルファイバーの重量の合計に対して、最大で10%のバインダーを乾燥重量で含む。
【0033】
さらにより良好な耐熱性を得るために、ミネラルウールは、好ましくはサイジング組成物と同時に噴霧して、有利にはリン化合物を含む。リン化合物は、例えば、国際公開第01/68546号に記載されているような無機物であるか、又は国際公開第2006/103375号に教示されているような、例えば、ポリ(ホスホン酸若しくはリン酸又はこれらのエステル)タイプのオリゴマー又はポリマーといった、部分的に有機物であるものとすることができる。
【0034】
本発明の別の主題は、本発明によるミネラルファイバーを含む断熱製品である。このような製品は特にロール又はパネルの形態で提供される。これは、例えば、建築物で、産業において、又は移動手段、特に鉄道又は船舶において使用することができる。この製品は、火災に対する保護(防火扉や、ボート、トンネル又は海上プラットフォームの断熱など)の役割で、連続して(家庭内若しくは工業用のオーブン又はストーブ、あるいは流体の輸送用のパイプの断熱)又は偶然に高温にさらされることが起こり得るような用途のために特に適している。より一般的には、本発明による製品は、あらゆるタイプの建物、第三次建物、又は住居(共同又は個人用のもの)に使用することができる。例えば、外部を介した断熱システムに、木造家屋の断熱システムに、サンドイッチパネルにおいて、換気ダクトにおいて等々に使用することができる。
【0035】
以下の実施例は、何ら限定することなく本発明を例示するものである。
【実施例】
【0036】
実施例のガラス(実施例1は本発明によるガラスであり、実施例2〜5は比較例のガラスである)を、表1に示した重量組成で製造した。
【0037】
繊維化範囲は、組成物がおおよそ1.5ポアズの粘度を示す必要がある繊維化温度と、液相温度との差に対応する(T
fib−T
liq≒T
log1.5−T
liq)。
【0038】
熱機械分析によって、たるみを測定した。得られたガラスを、40μm未満の粒径のガラス粉末にする。ガラス粉末のそれぞれを、直径5mm、高さ約1cmであり、かつガラス密度が64%に等しい円筒状ペレットの形態に圧縮する。パーセンテージで示したたるみは、室温から1100℃まで、10K/分の温度勾配にさらしたガラス粉末ペレットの、初期高さに対する高さの変動に相当する。試料の高さの測定は、円筒の頂部に置いたプローブを使用して実施する。再現性のある試験は、1%未満の標準偏差として定義することができる。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明による実施例1の組成は、低いたるみを示し、良好な耐火性を示すとともに、1320〜1420℃のTlog1.5温度、及び30℃よりも大きい繊維化範囲をも同時に示し、このことは、失透のリスクなしで、この温度範囲での繊維化を可能にするものである。これに対して、比較例の実施例2〜5の組成は、これらの基準のすべてを、同時には満たすことができない。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]以下の成分を含む化学組成を示すミネラルファイバー:
SiO2 57.0〜60.0重量%、
CaO 25.0〜30.0重量%、
MgO >8.0〜10.0重量%、
B2O3 2.5〜6.0重量%、
R2O 2.5重量%まで、
Al2O3 0〜2.0重量%、及び
R2O/B2O3のモル比 0.20〜0.60。
[2]R2O/B2O3のモル比が0.23〜0.54であることを特徴とする、上記[1]に記載のミネラルファイバー。
[3]CaO/(CaO+B2O3)のモル比が、0.75〜0.95、好ましくは0.78〜0.91であることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のミネラルファイバー。
[4]SiO2+CaO+MgO+B2O3+R2Oの含有量の合計が、前記ミネラルファイバーの前記化学組成の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%を占めることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のミネラルファイバー。
[5]前記ミネラルファイバーが、8.1〜9.5重量%、好ましくは8.3〜9.3重量%のMgO含有量を有することを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載のミネラルファイバー。
[6]前記ミネラルファイバーが、2.5〜5.0重量%、好ましくは3.0〜4.5重量%のB2O3含有量を有することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のミネラルファイバー。
[7]前記ミネラルファイバーが、0.1〜2.0重量%のNa2O含有量を有することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のミネラルファイバー。
[8]前記ミネラルファイバーが、最大で1.0重量%、好ましくは最大で0.5重量%のK2O含有量を有することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載のミネラルファイバー。
[9]前記ミネラルファイバーの前記化学組成に適したガラス化可能な混合物を溶融する工程、及びその後の繊維化工程を含む、上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載のミネラルファイバーの製造方法。
[10]上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載のミネラルファイバーを含む断熱製品。