特許第6818206号(P6818206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818206曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6818206
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27H 1/00 20060101AFI20210107BHJP
   B27M 1/02 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B27H1/00
   B27M1/02
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-126031(P2019-126031)
(22)【出願日】2019年7月5日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】515305717
【氏名又は名称】田上 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】田上 晴彦
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭58−48088(JP,Y2)
【文献】 特開2008−188871(JP,A)
【文献】 特開2001−062807(JP,A)
【文献】 米国特許第04953602(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27H 1/00
B27M 1/00 −3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法であって、
工具として、
a)製造しようとする前記湾曲板材の凸状外周面を画定するように、作業用台盤に固定された複数個の外周面設定部材、
b)前記各外周面設定部材の内側に位置するように、前記作業用台盤に設けられた溝、
c)前記溝を隔てて、前記各外周面設定部材に対面するように、前記作業用台盤に固定された複数個の内周面策定補助部材、および
d)前記溝に嵌め込んで使用される複数個の楔
を用い、
1)前記板材を、前記各外周面設定部材と、前記各内周面策定補助部材との間に配置する工程、
2)配置された前記板材と前記各内周面策定補助部材との間の前記溝に、前記複数個の楔をそれぞれ打ち込み、前記板材を前記各外周面設定部材に向けて圧着する工程、
3)前記2)の状態で所定時間保持し、前記板材の曲げを固定する工程、および
4)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した湾曲板材を取り出す工程
を含む製造方法。
【請求項2】
前記曲げを付与した板材が、一枚の板材であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記楔が略均一な厚みを有する板材から形成され、先端が鋭角θ度である直角三角形の形状であり、
前記内周面策定補助部材の前記外周面設定部材側の面が、鉛直面に対して(90−θ)度傾斜する平面であり、
前記2)の工程において、前記複数個の楔が、直角と鋭角θで挟まれる面を、前記外周面設定部材側とするようにしてそれぞれ打ち込まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記曲げを付与した板材が、複数枚の板材を積層し接着して形成した集成材であり、
前記1)〜3)の工程に引き続いて、
4’)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した湾曲板材の凹状内周面に接着剤を塗布する工程、
5’)他の板材を、前記湾曲板材の凹状内周面と、前記各内周面策定補助部材との間に配置する工程、
6’)配置された前記他の板材と前記各内周面策定補助部材との間の前記溝に、前記複数個の楔をそれぞれ打ち込み、前記湾曲板材および前記他の板材を前記各外周面設定部材に向けて圧着する工程、
7’)前記6’)の状態で所定時間保持し、前記他の板材の曲げを固定すると共に前記湾曲板材と前記他の板材とを接着する工程、
8’)前記4’)〜7’)の工程を所定回数繰り返し、複数枚の板材からなる湾曲板材とする工程、および
9’)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した複数枚の板材からなる湾曲板材を取り出す工程
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記楔が略均一な厚みを有する板材から形成され、先端が鋭角θ度である直角三角形の形状であり、
前記内周面策定補助部材の前記外周面設定部材側の面が、鉛直面に対して(90−θ)度傾斜する平面であり、
前記2)または前記6’)の工程において、前記複数個の楔が、直角と鋭角θで挟まれる面を、前記外周面設定部材側とするようにしてそれぞれ打ち込まれることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記外周面設定部材の前記内周面策定補助部材側の面が、製造しようとする前記湾曲板材の凸状外周面の形状に応じた曲面であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記2)の工程において打ち込まれる前記楔の前記外周面設定部材側の面が、製造しようとする前記湾曲板材の凸状内周面の形状に応じた曲面であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
曲げを付与する前に、前記板材および/または前記他の板材の湾曲する部分を、予め加熱することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、曲げを付与した一枚の板材または複数枚の板材を積層し接着して形成した集成材からなる湾曲板材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
曲木加工は、木材を切断、切削する通常の曲線加工に比較して生産費が安く、軽くて堅牢、しかも継ぎ目がなく外観に独特の美しいデザインが得られるという特徴があり、古くから、回転式曲木機械、押込式曲木機械、レバー式曲木機械、プレス式曲木機械など種々の曲木機械を利用して強力迅速に加工する機械的曲木や、内型の一端に被曲げ加工用材と帯鉄の一端をクランプ止めし、次に、被曲げ加工用材と帯鉄の他端をクランプ止めしてから、徐々に内型に沿って曲げ、要所々々を内型諸共クランプ止めし、全体を曲げて行くといった作業手順に従う手工的曲木など様々な加工方法が採られてきた。
【0003】
しかしながら、これらの曲木加工方法では、製造する曲線形状毎に凹凸型を準備しなければならず、一定形状の製品を大量生産する場合はともかくとして、多品種少量生産を行う場合には、製品毎に異なる凹凸型をその都度製作、準備する必要があり、生産コストおよび段取り工数の増加によって製品価格を高騰させてしまうという欠点がある。
【0004】
また、凹凸型を用いない曲木加工方法として、実公昭58−48088号公報(特許文献1)、特開2008−188871号公報(特許文献2)のような複数個のクランプ装置を用いる方法が提案されている。実公昭58−48088号公報(特許文献1)には、図11に示すように、当板11と押圧板12との間の挟着部13に接着剤を塗着した合板を挿入し、取付台14の拡開調節を加減することにより挟着部13を任意円弧状に形成し、押圧板12にて圧力を加えて合板を適当に曲折することが開示されている。また、特開2008−188871号公報(特許文献2)には、図12に示すように、作業用台盤T上の任意箇所に、対象市販クランプ21を組み込んでなる複数の曲木工具22を固定し、曲げ加工用材Mを複数の曲木工具22の対象市販クランプ21で挟持して、所望の彎曲状または彎曲蛇行状とすることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの曲木加工方法では、小型の製品を生産する場合はともかくとして、大型の製品を生産する場合には、多数個のクランプ装置を準備する必要があり、生産コストおよび段取り工数の増加によって製品価格を高騰させてしまうという欠点がある。
【0006】
一方、本件発明者らは、先に、牽引・搬送時の振動・衝撃、風圧により破損しにくい木製トレーラーハウスおよびその製造方法について特許出願を行い、特許第6497568号(特許文献3)として特許を取得したところである。図13に示すように、この木製トレーラーハウス31は、木製の居住部32が、複数本の、木製支柱を湾曲させて形成した環状木製支柱を、前後方向に配し、シャーシに直接的または間接的に固定して形成された中央骨格部33を備えるものであり、木製の居住部32全体に柔軟性を付与することができる。
【0007】
しかしながら、前記の環状木製支柱のような大型の湾曲板材は、前記のような凹凸型や複数個のクランプ装置を用いる従来の曲木加工方法では、経済的・効率的に製造することは困難である。
【0008】
本件発明者等は、前記木製トレーラーハウスの環状木製支柱を始め大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造できる方法について鋭意検討し、本件発明を成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭58−48088号公報
【特許文献2】特開2008−188871号公報
【特許文献3】特許第6497568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本件発明の解決しようとする課題は、環状木製支柱のような大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することのできる、曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明の要旨を以下に示す。
(1)曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法であって、
工具として、
a)製造しようとする前記湾曲板材の凸状外周面を画定するように、作業用台盤に固定された複数個の外周面設定部材、
b)前記各外周面設定部材の内側に位置するように、前記作業用台盤に設けられた溝、
c)前記溝を隔てて、前記各外周面設定部材に対面するように、前記作業用台盤に固定された複数個の内周面策定補助部材、および
d)前記溝に嵌め込んで使用される複数個の楔
を用い、
1)前記板材を、前記各外周面設定部材と、前記各内周面策定補助部材との間に配置する工程、
2)配置された前記板材と前記各内周面策定補助部材との間の前記溝に、前記複数個の楔をそれぞれ打ち込み、前記板材を前記各外周面設定部材に向けて圧着する工程、
3)前記2)の状態で所定時間保持し、前記板材の曲げを固定する工程、および
4)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した湾曲板材を取り出す工程
を含む製造方法。
(2)前記曲げを付与した板材が、一枚の板材であることを特徴とする、(1)に記載の製造方法。
(3)前記楔が略均一な厚みを有する板材から形成され、先端が鋭角θ度である直角三角形の形状であり、
前記内周面策定補助部材の前記外周面設定部材側の面が、鉛直面に対して(90−θ)度傾斜する平面であり、
前記2)の工程において、前記複数個の楔が、直角と鋭角θで挟まれる面を、前記外周面設定部材側とするようにしてそれぞれ打ち込まれることを特徴とする、(1)または(2)に記載の製造方法。
)前記曲げを付与した板材が、複数枚の板材を積層し接着して形成した集成材であり、
前記1)〜3)の工程に引き続いて、
4’)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した湾曲板材の凹状内周面に接着剤を塗布する工程、
5’)他の板材を、前記湾曲板材の凹状内周面と、前記各内周面策定補助部材との間に配置する工程、
6’)配置された前記他の板材と前記各内周面策定補助部材との間の前記溝に、前記複数個の楔をそれぞれ打ち込み、前記湾曲板材および前記他の板材を前記各外周面設定部材に向けて圧着する工程、
7’)前記6’)の状態で所定時間保持し、前記他の板材の曲げを固定すると共に前記湾曲板材と前記他の板材とを接着する工程、
8’)前記4’)〜7’)の工程を所定回数繰り返し、複数枚の板材からなる湾曲板材とする工程、および
9’)前記溝から前記複数個の楔を外し、製造した複数枚の板材からなる湾曲板材を取り出す工程
を含むことを特徴とする、(1)に記載の製造方法。
)前記楔が略均一な厚みを有する板材から形成され、先端が鋭角θ度である直角三角形の形状であり、
前記内周面策定補助部材の前記外周面設定部材側の面が、鉛直面に対して(90−θ)度傾斜する平面であり、
前記2)または前記6’)の工程において、前記複数個の楔が、直角と鋭角θで挟まれる面を、前記外周面設定部材側とするようにしてそれぞれ打ち込まれることを特徴とする、(4)に記載の製造方法。
)前記外周面設定部材の前記内周面策定補助部材側の面が、製造しようとする前記湾曲板材の凸状外周面の形状に応じた曲面であることを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載の製造方法。
)前記2)の工程において打ち込まれる前記楔の前記外周面設定部材側の面が、製造しようとする前記湾曲板材の凸状内周面の形状に応じた曲面であることを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載の製造方法。
)曲げを付与する前に、前記板材および/または前記他の板材の湾曲する部分を、予め加熱することを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本件発明の曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法(以下、「本件発明」という。)では、
〇作業用台盤上に固定した複数対の外周面設定部材および内周面策定補助部材
〇各対の外周面設定部材および内周面策定補助部材の間に、作業用台盤に設けられた溝
〇各溝に嵌め込んで使用される楔
を工具として用い、
板材を、複数対の外周面設定部材および内周面策定補助部材間に配置し、各溝に楔をそれぞれ打ち込むことにより、大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、工程1)の前の工具の状態を示す斜視模式図である。
図2図2は、工程1)の前の工具の状態を示すものであって、板材の長手方向に垂直な断面の模式図である。
図3図3は、工程1)における工具および板材の状態を示す、板材の長手方向に垂直な断面の模式図である。
図4図4は、工程2)における工具および板材の状態を示す、板材の長手方向に垂直な断面の模式図である。
図5図5は、工程1)における工具および板材の状態を示す、作業用台盤の上方から見た模式図である。
図6図6は、工程2)における工具および板材の状態を示す、作業用台盤の上方から見た模式図である。
図7図7は、工程4’)における工具および製造した湾曲板材の状態を示す、湾曲板材の断面に対して垂直方向の断面模式図である。
図8図8は、工程5’)における工具、製造した湾曲板材、および他の板材の状態を示す、湾曲板材および他の板材の断面に対して垂直方向の断面模式図である。
図9図9は、工程6’)における工具、製造した湾曲板材、および他の板材の状態を示す、湾曲板材および他の板材の断面に対して垂直方向の断面模式図である。
図10図10は、工程6’)における工具、製造した湾曲板材、および他の板材の状態を示す、作業用台盤の上方から見た模式図である。
図11図11は、従来の複数個のクランプ装置を用いる曲木加工方法を示す、実公昭58−48088号公報(特許文献1)の図2である。
図12図12は、従来の複数個のクランプ装置を用いる曲木加工方法を示す、特開2008−188871号公報(特許文献2)の図11である。
図13図13は、本件発明者が特許を取得した木製トレーラーハウスを示す、特許第6497568号公報(特許文献3)の図1である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件発明の実施形態を、添付の図面も参照しながら詳細に説明するが、本件発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
<本件発明の主要な特徴>
まず、本件発明の主要な特徴について説明する。
【0016】
本件発明は、工具として、
〇作業用台盤上に固定した複数対の外周面設定部材および内周面策定補助部材
〇各対の外周面設定部材および内周面策定補助部材の間に、作業用台盤に設けられた溝
〇各溝に嵌め込んで使用される楔
を用いて行うものであり、環状木製支柱のような大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することができる優れたものである。
【0017】
すなわち、本件発明は、製品毎に異なる凹凸型や、複数個のクランプ装置を用いることなく、木材の廃材・端材等を利用して、現場で簡単に行うことができるため、環状木製支柱のような大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することができる。
【0018】
図1〜10を用いて、本件発明について説明する。
【0019】
図1〜6は本件発明の第1実施形態を示すものであり、図7〜10は本件発明の第2実施形態を示すものである。
【0020】
<本件発明において用いられる工具>
図1〜10に示すように、本件発明では、工具として、
a)製造しようとする湾曲板材の凸状外周面を画定するように、作業用台盤2に固定された複数個の外周面設定部材3、
b)各外周面設定部材3の内側に位置するように、作業用台盤2に設けられた溝4、
c)溝4を隔てて、各外周面設定部材3に対面するように、作業用台盤2に固定された複数個の内周面策定補助部材5、および
d)溝4に嵌め込んで使用される複数個の楔6
が用いられる。
【0021】
作業用台盤2は作業性等からできるだけ平面であることが好ましく、また、外周面設定部材3、内周面策定補助部材5の固定や、溝4を形成が容易にできることから木製とすることが好ましい。作業用台盤2への外周面設定部材3、内周面策定補助部材5の固定は、ネジ、釘、接着剤などの固定手段を用いて適宜行うことができる。
【0022】
楔6は溝4に嵌め込んで使用されることから、楔6および溝4の幅は略均一で、均しいものとするのが好ましい。また、板材1を外周面設定部材3に向けて均一に圧着できることから、楔6の形状を先端が鋭角θ度である直角三角形の形状とし、内周面策定補助部材5の外周面設定部材3側の面を、鉛直面に対して(90―θ)度傾斜する平面とすることが好ましい。楔6の先端角度θ度は、板材1を外周面設定部材3に圧着するために大きな力を要する場合には小さくすることが好ましいが、通常は5〜15度の範囲とする。
【0023】
外周面設定部材3、内周面策定補助部材5および楔6は、木材の廃材・端材等を利用して作成することができる。
【0024】
外周面設定部材3の内周面策定補助部材5側の面、および打ち込まれる楔6の外周面設定部材3側の面は、製造しようとする湾曲板材の凸状外周面の形状に応じた曲面とすることが好ましい。
【0025】
<本件発明の第1実施形態>
図1〜6に示される本件発明の第1実施形態は、曲げを付与した一枚の板材からなる湾曲板材を製造するものであり、前記の工具を用いて、
1)図3および図5に示すように、板材1を、各外周面設定部材3と、各内周面策定補助部材5との間に配置する工程、
2)図4および図6に示すように、配置された板材1と各内周面策定補助部材5との間の溝4に、複数個の楔6をそれぞれ打ち込み、板材1を各外周面設定部材3に向けて圧着する工程、および
3)前記2)の状態で所定時間保持し、板材1の曲げを固定する工程、
4)溝4から複数個の楔6を外し、製造した湾曲板材を取り出す工程
により行われる。
【0026】
板材1の厚さが厚い場合には、セルロースを柔らかくし曲げやすくするために、曲げを付与する前に、予め板材1を加熱するのが好ましい。板材1が小型の場合には全体を加熱してもよいが、板材1が大型の場合には、効率性、経済性、加熱設備を考慮して、湾曲する部分を加熱するのが好ましい。板材1は水蒸気(熱水に浸漬または高温の水蒸気を用いた蒸煮)、マイクロ波(水分を十分吸収させマイクロ波で加熱処理)等により加熱することができる。
【0027】
<本件発明の第2実施形態>
図7〜10に示される本件発明の第2実施形態は、曲げを付与した複数枚の板材を積層し接着して形成した集成材からなる湾曲板材を製造するものであり、前記の工具を用いて、第1実施形態と同様に、前記工程1)〜3)で湾曲板材を製造した後、
4’)図7に示すように、溝4から複数個の楔6を外し、製造した湾曲板材7の凹状内周面に接着剤8を塗布する工程、
5’)図8に示すように、他の板材9を、湾曲板材7の凹状内周面と、各内周面策定補助部材5との間に配置する工程、
6’)図8および図9に示すように、配置された他の板材9と各内周面策定補助部材5との間の溝4に、複数個の楔6をそれぞれ打ち込み、湾曲板材7および他の板材9を各外周面設定部材3に向けて圧着する工程、
7’)前記6’)の状態で所定時間保持し、他の板材9の曲げを固定すると共に湾曲板材7と他の板材9とを接着する工程、
8’)前記4’)〜7’)の工程を所定回数繰り返し、複数枚の板材からなる湾曲板材とする工程、
9’)溝4から複数個の楔を外し、製造した複数枚の板材からなる湾曲板材を取り出す工程
により行われる。
【0028】
他の板材9についても、板材1と同様に、厚さが厚い場合には、セルロースを柔らかくし曲げやすくするために、曲げを付与する前に、予め他の板材9を加熱するのが好ましい。
【0029】
接着剤8としては、木工用接着剤として一般に用いられる、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリルエマルジョン等の水性エマルジョン系接着剤、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスなどのラテックス系接着剤、PVA系接着剤、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリアメラミン共縮合樹脂系接着剤等を用いることができる。接着剤の選択は、湾曲板材の用途に応じて、耐水性、耐熱性、初期接着力、安全性等を考慮して行う。
【0030】
<本件発明が奏する効果>
このように、本件発明の湾曲板材の製造方法は、前記木製トレーラーハウスの環状木製支柱を始めとする各種大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 : 板材
2 : 作業用台盤
3 : 外周面設定部材
4 : 溝
5 : 内周面策定補助部材
6 : 楔
7 : (製造した)湾曲板材
8 : 接着剤
9 : 他の板材
11: 当板
12: 押圧板
13: 挟着部
14: 取付台
21: 対象市販クランプ
22: 曲木工具
T : 作業用台盤
M : 曲げ加工用材
31: 木製トレーラーハウス
32: 木製の居住部
33: 中央骨格部
【要約】      (修正有)
【課題】環状木製支柱のような大型の湾曲板材を経済的・効率的に製造することのできる、曲げを付与した板材からなる湾曲板材の製造方法を提供する。
【解決手段】a)凸状外周面を画定するように、作業用台盤に固定された複数個の外周面設定部材3、b)各外周面設定部材の内側に位置する溝、c)溝を隔てて、各外周面設定部材に対面する複数個の内周面策定補助部材5、およびd)溝に嵌め込んで使用される複数個の楔6を用い、1)板材1を、各外周面設定部材と、各内周面策定補助部材との間に配置する工程、2)配置された板材と各内周面策定補助部材との間の溝に、複数個の楔をそれぞれ打ち込み、板材を各外周面設定部材に向けて圧着する工程、3)2)の状態で所定時間保持し板材の曲げを固定する工程、および4)溝から複数個の楔を外し、製造した湾曲板材を取り出す工程よりなる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13