(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品等の大量の被冷却物を順次冷却するために冷却装置が用いられる。一般に、この冷却装置は、断熱箱体の一方に被冷却物を搬入するための搬入口を備え、他方に冷却された被冷却物を搬出するための搬出口を備える。搬入口と搬出口とはコンベヤでつながれている。被冷却物は、搬入口でコンベヤに載せられ、断熱箱体内を搬送され、搬出口で取り出される。被冷却物は、断熱箱体内の内部空間を通過する間に冷却される。
【0003】
このような冷却装置は、一般に、断熱箱体内に、冷媒が移動する冷却コイルの外周面に冷却フィンを取り付けた冷却器と、冷気をコンベヤ上の被冷却物に向かって送り出すファンとを備えている。
【0004】
特許文献1には、コンベヤの走行方向に対して垂直な断面内に、冷却器とファンとを設置した冷却装置が記載されている。ファンから送り出された空気は、コンベヤを下から上へ通り抜け、冷却器を通ってファンに戻るという空気の循環路が当該断面に沿って形成される。このように、空気を、ファン、コンベヤ(被冷却物)、冷却器、ファンの順に循環させる冷却方式は、強制循環方式と呼ばれる。コンベヤ上の被冷却物(例えば、水産物、農産物、加工食品など)を冷却した後の環流空気は、被冷却物から発生した多量の水蒸気を含む。強制循環方式では、この環流空気が冷却器を通過して冷却されるので、冷却器が着霜する。冷却器の着霜は、冷却効率の低下や、除霜による稼働率の低下を招く。
【0005】
そこで、コンベヤに対して、上方又は側方に対向するように冷却器を配置し、コンベヤと冷却器との間にファンを配置した冷却装置が記載されている(特許文献2の
図9,10、特許文献3の
図14〜
図18)。ファンは、ファンと冷却器との間の冷気をコンベヤ(被冷却物)に向かって送り出す。被冷却物を冷却した後の水蒸気を含む環流空気は、ファンの半径方向の外側を通って、ファンと冷却器との間の空間に戻る。この冷却方式は、被冷却物からの環流空気の大半が冷却器を通過(貫流)しないことから「非貫流方式」と呼ばれる。非貫流方式では、冷却器を通過する環流空気が少ない(または、ほとんどない)ので、冷却器の着霜が飛躍的に低減される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の本発明の冷却装置において、前記撹拌ファンは、前記冷却ファンが前記冷気を送り出す前方空間に対して、前記コンベヤを挟んで対向する位置に設けられていてもよい。かかる態様によれば、冷却ファンから送り出された空気と、撹拌ファンから送り出された空気とが衝突し、複雑な撹拌流が形成される。これは、被冷却物を、温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0014】
本発明の冷却装置は、前記冷却器の前記コンベヤに対向する面を覆う遮蔽板を更に備えていてもよい。前記撹拌ファンは、前記冷却器に対して前記コンベヤを挟んで対向する位置に設けられていてもよい。かかる態様は、冷却器への着霜を防止しながら、被冷却物を急速冷却するのに有利である。
【0015】
前記撹拌ファンにはベルマウスが設けられていないことが好ましい。かかる態様によれば、コンベヤ上の被冷却物に、乱流を衝突させることができる。これは、被冷却物を、温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0016】
前記コンベヤの下方には、冷却器は設けられていないことが好ましい。かかる態様によれば、撹拌ファンがコンベヤ上の被冷却物に冷気を吹き付けるのを回避できる。これは、冷却過程での被冷却物内の温度ムラを低減するのに有利である。
【0017】
複数の前記冷却ユニットが前記コンベヤの走行方向に沿って隣り合って配置されていてもよい。この場合、隣り合う2つの冷却ユニットのうちの一方の冷却ユニットの前記冷却ファンと、隣り合う前記2つの冷却ユニットのうちの他方の冷却ユニットの前記冷却ファンとが対向していることが好ましい。かかる態様によれば、対向する冷却ファンからそれぞれ送り出された空気が衝突し、複雑な撹拌流が形成される。これは、被冷却物を、温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0018】
複数の前記冷却ユニットが前記コンベヤの走行方向に沿って隣り合って配置されていてもよい。この場合、隣り合う2つの冷却ユニットのうちの一方の冷却ユニットの前記冷却ファンと、隣り合う前記2つの冷却ユニットのうちの他方の冷却ユニットの前記冷却器とが対向していないことが好ましい。かかる態様によれば、冷却器を通過する空気流を少なくすることができる。これは、冷却器の着霜を少なくするのに有利である。
【0019】
前記断熱箱体は、隔壁を介して隔てられた第1室、第2室、第3室を前記搬入口から前記搬出口に向かってこの順に備えていてもよい。この場合、前記第1室及び前記第3室のそれぞれに、前記冷却ユニット及び前記撹拌ファンが設けられていてもよい。これは、被冷却物を、温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0020】
前記第2室には、前記冷却ユニット及び前記撹拌ファンが設けられていないことが好ましい。これにより、第1室を通過した被冷却物内の温度差を、第2室にて緩和することができる。
【0021】
前記第1室は、前記第3室よりも低温であってもよい。これにより、第1室で被冷却物を急速冷却し、第3室で、被冷却物の内部と外表面との温度差が拡大しないようにしながら、被冷却物全体を目標温度にまで冷却することができる。
【0022】
前記第2室は、前記第1室及び前記第3室よりも高温であってもよい。これにより、第1室を通過した被冷却物内の温度差を、第2室にて緩和することができる。
【0023】
前記第1室は、前記第3室より、前記コンベヤの走行方向に沿った寸法が長くてもよい。これにより、第1室で被冷却物を急速冷却することができる。
【0024】
前記断熱箱体は、前記被冷却物を冷却する冷却ゾーンと前記搬入口との間に、前記冷却ゾーンに対して隔壁を介して隔てられた入口側緩衝室を更に備えていてもよい。これは、冷却ゾーンと断熱箱体の外界との間での搬入口を介した空気の出入りを低減し、冷却ゾーン内を所望する温度に維持するのに有利である。
【0025】
前記入口側緩衝室と前記冷却ゾーンとを隔てる隔壁に開口が設けられ、前記開口に送気ファンが設けられていてもよい。これは、冷却ゾーン内を所望する温度に維持するのに更に有利である。
【0026】
前記断熱箱体は、前記被冷却物を冷却する冷却ゾーンと前記搬出口との間に、前記冷却ゾーンに対して隔壁を介して隔てられた出口側緩衝室を更に備えていてもよい。これは、冷却ゾーンと断熱箱体の外界との間での搬出口を介した空気の出入りを低減し、冷却ゾーン内を所望する温度に維持するのに有利である。
【0027】
前記出口側緩衝室と前記冷却ゾーンとを隔てる隔壁に開口が設けられ、前記開口に送気ファンが設けられていてもよい。これは、冷却ゾーン内を所望する温度に維持するのに更に有利である。
【0028】
前記被冷却物は食品であってもよい。この場合、前記冷却装置は、前記食品を凍結させることなく10℃以下に冷却してもよい。食品を、その外表面を凍結させることなく冷蔵することができるので、凍結による食品の品質の低下を回避できる。
【0029】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。
【0030】
図1Aは、本発明の一実施形態にかかる冷却装置1の平面図、
図1Bは、
図1Aの1B−1B線を含む上下方向面に沿った冷却装置1の矢視断面図である。
【0031】
本実施形態の冷却装置1は、全体として中空の略直方体形状を有する断熱箱体10を備える。断熱箱体10は、強固に組み立てられたフレーム(骨格)に、壁材を固定して構成されている。壁材は、例えば断熱材を内壁板及び外壁板で挟んだ断熱板で構成することができる。断熱箱体10の外界及びその内部空間に露出する部材(内壁板、外壁板、フレームなど)は、その表面に防錆処理が施されているか、ステンレス鋼などの防錆性に優れた金属材料からなることが好ましい。
【0032】
断熱箱体10の長手方向の一端には搬入口16が設けられ、他端には搬出口17が設けられている。搬入口16及び搬出口17は、いずれも水平方向に延びたスロット状の開口であり、外界と断熱箱体10の内部空間とを連通させる。
【0033】
断熱箱体10内には、断熱箱体10を長手方向に貫通するようにコンベヤ19が設けられている。コンベヤ19は、一定幅の帯状物を環状に接続した部材である。コンベヤ19は、厚さ方向に通気性を有している。コンベヤ19の形状は任意であり、例えば、多数の貫通孔が形成されたベルトコンベヤ、または、網状のネットコンベヤであってもよい。コンベヤ19の材料も、特に制限はないが、洗浄性の観点から、防錆性に優れたテンレス鋼や防錆処理が施された金属材料、あるいは樹脂材料等を用いることが好ましい。コンベヤ19の一端は搬入口16からわずかに突出し、コンベヤ19の他端は搬出口17からわずかに突出している。コンベヤ19は、駆動装置(図示せず)によって一定速度で矢印19a,19bの向きに循環駆動される。コンベヤ19の循環経路うち、搬入口16から搬出口17に向かって矢印19aの向きに移動する部分を「往路」といい、これとは逆に搬出口17から搬入口16へ向かって矢印19bの向きに移動する部分を「復路」という。往路は復路よりも上側に配置される。往路でのコンベヤ19の移動方向19aを、コンベヤ19の「走行方向」という。往路のコンベヤ19が水平面と平行になるようにコンベヤ19は搬送ローラや支持プレートなど(いずれも図示せず)で支持される。被冷却物(図示せず)は、搬入口16側においてコンベヤ19上に載置され、コンベヤ19に載って搬入口16から断熱箱体10内に入り、断熱箱体10内を搬送され、搬出口17を出た後、コンベヤ19から取り上げられる。被冷却物は、断熱箱体10内を通過する過程で冷却される。このような冷却装置1は、トンネル式冷却装置とも呼ばれる。なお、本発明において、「冷却」とは、被冷却物の温度を下げることを意味し、冷蔵及び冷凍のいずれをも含む。
【0034】
断熱箱体10内に、第1隔壁21a,21b、第2隔壁22a,22b、第3隔壁23a,23b、第4隔壁24a,24bが、コンベヤ19の走行方向に沿ってこの順に設けられている。水平方向に沿って延びたコンベヤ19に対して、隔壁21a,22a,23a,24aは上側に配置され、隔壁21b,22b,23b,24bは下側に配置されている。コンベヤ19を挟んで隔壁21a,22a,23a,24aと隔壁21b,22b,23b,24bとがそれぞれ上下方向に対向する。これらの隔壁によって断熱箱体10内の空間は、コンベヤ19の走行方向に沿って5つの空間に分割されている。5つの空間は、搬入口16と第1隔壁21a,21bとの間の入口側緩衝室14、第1隔壁21a,21bと第2隔壁22a,22bとの間の第1室11、第2隔壁22a,22bと第3隔壁23a,23bとの間の第2室12、第3隔壁23a,23bと第4隔壁24a,24bとの間の第3室13、第4隔壁24a,24bと搬出口17との間の出口側緩衝室15からなる。第1室11、第2室12、第3室13は、それぞれ所望する冷却温度に維持される。第1室11、第2室12、第3室13は、被冷却物を冷却するための冷却ゾーン18を構成する。
【0035】
第1室11及び第3室13には、コンベヤ19の上方に冷却ユニット30が設けられ、コンベヤ19の下方に撹拌ファン33が設けられている。
【0036】
冷却ユニット30は、冷却器31と冷却ファン32とを備え、冷却器31と冷却ファン32とは、コンベヤ19の走行方向に平行な方向に対向している。冷却器31は、冷媒が通過する冷却コイルの外周面に多数の冷却フィンが取り付けられたものである。多数の冷却フィンは互いに平行に且つ一定のピッチで離間して配置されている。冷却フィンの主面(面積が最大である面)は、上下方向に平行であり且つコンベヤ19の走行方向に平行である。冷却器31の構成は、特に制限はなく、冷却装置や冷凍装置において使用される周知の冷却器を用いることができる。冷却器31は、全体として略直方体形状を有し、
図1A及び
図1Bでは、図面を簡単化するために、冷却器31の輪郭のみが示されている。遮蔽板31aが、冷却器31とコンベヤ19との間に配置されている。遮蔽板31aは、無孔(非通気性)の平板であって、冷却器31の下面(コンベヤ19に対向する面)と同じか、これよりわずかに大きく、冷却器31の下面を覆う。コンベヤ19の幅方向において、冷却器31は、コンベヤ19の幅と略同じかこれよりわずかに大きな寸法を有することが好ましい。冷却ファン32は、いわゆるプロペラファンであり、駆動モータ(図示せず)の出力軸に取り付けられている。本実施形態では、各冷却ユニット30は、1つの冷却器31と複数の冷却ファン32とで構成される。複数の冷却ファン32は、コンベヤ19の走行方向に垂直な共通する上下方向面に互いに離間して配置されている。冷却ユニット30を構成する冷却ファン32の数は、冷却器31のサイズや冷却ファン32の径などにより任意に設定することができ、1つであってもよい。冷却器31に対する冷却ファン32の配置も任意である。例えば、コンベヤ19の走行方向に平行な方向に沿って見たとき、複数の冷却ファン32を、冷却器31の略矩形の前面(冷却ファン32が対向する面)からはみ出さないように、格子点状に、または、ジグザグ状に、配置することができる。
【0037】
本実施形態では、第1室11に4つの冷却ユニット30が設けられ、第3室13に1つの冷却ユニット30が設けられている。第1室11の4つの冷却ユニット30は、コンベヤ19の走行方向に沿って配置されている。4つの冷却ユニット30は、2組の冷却ユニット対30a,30bを構成する。冷却ユニット対30a,30bのそれぞれは2つの冷却ユニット30で構成され、当該2つの冷却ユニット30は、それぞれの冷却ファン32が互いに対向するように、コンベヤ19の走行方向に平行な方向に離間している。2組の冷却ユニット対30a,30bが、コンベヤ19の走行方向に沿って配置されている。第3室13の冷却ユニット30は、冷却ファン32を搬出口17側に向けて配置されている。
【0038】
撹拌ファン33は、冷却ファン32と同様に、いわゆるプロペラファンであり、駆動モータ(図示せず)の出力軸に取り付けられている。本実施形態では、第1室11及び第3室13のそれぞれにおいて、複数の撹拌ファン33がコンベヤ19に対向して設けられている。複数の撹拌ファン33は、共通する水平面に互いに離間して配置されている。第1室11及び第3室13のそれぞれに設けられる撹拌ファン33の数や配置は、コンベヤ19の幅や第1室11及び第3室13の寸法などにより任意に設定することができる。例えば、複数の撹拌ファン33が、第1室11及び第3室13のそれぞれにおいて、コンベヤ19の走行方向及び幅方向において略均等に配置されるように、格子点状に、または、ジグザグ状に、配置される。もちろん、第1室11及び/又は第3室13に配置される撹拌ファン33の数は1つであってもよい。
【0039】
図2は、第1室11内の冷却ユニット対30aを構成する冷却ユニット30近傍の空気の流れを示した側面図である。以下、冷却ユニット対30aの冷却ユニット30について説明するが、
図2と同様の空気の流れは、冷却ユニット対30bを構成する冷却ユニット30及び第3室13内の冷却ユニット30についても発生する。
【0040】
コンベヤ19に対して上側の空間(上側空間)35において、冷却ファン32は、冷却ファン32と冷却器31との間の冷気を、矢印A1に示すように、コンベヤ19の走行方向に略平行(即ち、水平方向)に、冷却器31とは反対側の空間(これを冷却ユニット30の「前方空間」という)34に向かって送り出す。これにより、矢印A2に示すように、前方空間34からの環流空気が、冷却ファン32の半径方向の外側を通って、冷却器31と冷却ファン32との間に入り込む。環流空気は、冷却器31と冷却ファン32との間の隙間を通過する際に、冷却器31の近傍の冷却された空気との間で熱交換され冷却される。冷却された冷気は矢印A1に沿って再度前方空間34に向かって送り出される。冷却ファン32は、このような矢印A1,A2で示す空気の流れを冷却ユニット30の近傍に発生させる。図示を省略するが、冷却ファン32は、これと同様の空気の流れを、上方から見た冷却ユニット30の近傍においても発生させる。
【0041】
矢印A2に沿った環流空気の大半は、冷却器31を通過することなく、冷却ファン32によって前方空間34に向かって送り出される。本実施形態の冷却ユニット30を備えた冷却装置1は、特許文献2,3の冷却装置と同様に、非貫流方式の冷却装置である。冷却装置1には、強制循環方式のトンネル式冷却装置で一般的な、環流空気が必ず冷却器を通過するように空気の循環路を規定するダクト(空気流路)が存在しない。
【0042】
環流空気の大半は、冷却器31を通過しない。また、仮に環流空気の一部が冷却器31を通過することがあっても、そのような環流空気は、冷却器31内に入る前に冷却器31の近傍の冷気との間の熱交換によって冷却されるので、環流空気中の水蒸気は冷却器31内に入る前に固化されてしまう。従って、本実施形態の冷却装置1では、冷却器31の着霜が少ない。このため、冷却器31の除霜作業が不要または除霜作業の頻度を少なくすることができる。
【0043】
撹拌ファン33は、冷却ユニット30(または冷却ユニット対30a)に対して、コンベヤ19を挟んで対向するように配置されている。撹拌ファン33は、矢印Bに示すように、コンベヤ19に向かって(即ち、上方に向かって)空気を送り出す。コンベヤ19は厚さ方向に通気性を有するので、撹拌ファン33からの空気は、コンベヤ19を通過して上側空間35に向かう。上側空間35内の空気は、コンベヤ19と断熱箱体10の側壁との間の隙間や、コンベヤ19を通過して、コンベヤ19に対して下側の空間(下側空間)36に移動し、再度、撹拌ファン33によって上方に向かって送り出される。
【0044】
撹拌ファン33からの矢印Bの向きの空気流は、コンベヤ19を通過する際に、コンベヤ19及びコンベヤ19上の被冷却物によってかき乱される。この空気流が、冷却ファン32による矢印A1,A2に沿った空気の流れに衝突する。このため、冷却ユニット30の前方空間34の空気が撹拌され、前方空間34及びその周囲に、空気の流れ方向が一方向に定まらない、複雑な撹拌流(いわゆる乱流)が形成される。コンベヤ19上の被冷却物は、この撹拌流内を通過する。相対的に高温である被冷却物によって、被冷却物のごく近傍の空気は温められる。温められた空気は、様々な方向から被冷却物に衝突する空気(冷気)によって吹き飛ばされるので、被冷却物の近傍にとどまることができない。このように、冷気の撹拌流が被冷却物を冷却するので、被冷却物を急速冷却することができるのである。また、撹拌流は、コンベヤ19の幅方向における温度ムラを低減させるので、コンベヤ19の幅方向にそって配置された複数の被冷却物間での温度ムラ(冷却ムラ)は少ない。
【0045】
冷却ユニット30の冷却ファン32は、コンベヤ19上の被冷却物に向いていない。しかも、撹拌ファン33から送り出された上向きの空気流は、冷却ファン32から送り出された冷気を、被冷却物とは反対側(上側)に偏向させる。冷気は、被冷却物に直接吹き付けられない。このため、被冷却物の外表面及びその近傍は急速に冷却されるのに、被冷却物の内部はほとんど冷却されないという、冷却過程での被冷却物内の温度ムラ(即ち、冷却速度の不均一)を抑えることができる。被冷却物の外表面のみが過剰に冷却されるということもない。また、例えば被冷却物の上面側は冷却されるが、底面側は冷却されない等のような被冷却物の外表面における温度ムラ(冷却ムラ)も抑えることができる。このようにして、被冷却物の外表面の全体を略均一に冷却することができる。
【0046】
本実施形態の冷却装置1が備える冷却器は、コンベヤ19の上方に設置された、冷却ユニット30を構成する冷却器31のみである。コンベヤ19の下方には冷却器は設けられていない。本実施形態とは異なり、例えば撹拌ファン33を挟んでコンベヤ19とは反対側(撹拌ファン33の下側)に冷却器を配置して、撹拌ファン33とその下の冷却器とで、冷却ユニット30と同様の非貫流方式の冷却ユニットを構成することも考えられる。この場合、撹拌ファン33から冷気をコンベヤ19上の被冷却物に向かって吹き付けることができる。コンベヤ19の上方の冷却ユニット30と下方の冷却ユニットとで、被冷却物を上下から冷却することができるので、被冷却物を急速冷却するのに有利であると考えられる。しかしながら、撹拌ファン33からの冷気は被冷却物の底面及びその近傍を真っ先に冷却するので、被冷却物の外表面における温度ムラや、被冷却物の外表面と内部との間での温度ムラが生じてしまう。
【0047】
このように、本実施形態では、冷気を被冷却物に向かって直接吹き付けないという、被冷却物の急速冷却の観点からは不利と思われる構成を敢えて選択することにより、被冷却物間の温度ムラ、及び、各被冷却物内での温度ムラを抑え、被冷却物の全体を略均一に冷却することを可能にしている。例えば、被冷却物である食品を冷蔵温度(例えば5〜10℃)に冷却する場合に、食品の外表面が凍結してしまうことがないので、食品の品質(例えば食感や風味など)が損なわれない。また、コンベヤ19の下方に冷却器を配置しないことは、冷却装置1の構造の簡単化やコストの低減にも有利である。
【0048】
撹拌ファン33は、冷却ファン32が空気を送り出す前方空間34に対して、コンベヤ19を挟んで対向して配置されることが好ましい。これにより、冷却ファン32から送り出された空気流に、撹拌ファン33から送り出された空気流が衝突する。これは、冷却ファン32の前方空間34に複雑な撹拌流を形成するのに有利である。
【0049】
撹拌ファン33は、冷却ファン32に対して、コンベヤ19を挟んで対向して配置されていてもよい。これにより、冷却ファン32から前方空間34に向かう空気流及び前方空間34から冷却ファン32の背後に戻る環流空気流に、撹拌ファン33から送り出された空気流が衝突する。これは、冷却ファン32の前方空間34及びその周囲の空間に複雑な撹拌流を形成するのに有利である。
【0050】
更に、撹拌ファン33は、冷却器31に対して、コンベヤ19を挟んで対向する位置に配置されていてもよい。これは、冷却器31の下方に位置する被冷却物に対しても撹拌ファン33からの空気流が吹き付けられるので、限られた空間を移動する被冷却物を急速冷却するのに有利である。冷却器31の下面は遮蔽板31aで覆われているので、撹拌ファン33から送り出され、被冷却物を冷却した後の、水蒸気を含み且つ相対的に暖かい空気流は、冷却器31を通過しない。このため、冷却器31に対向して撹拌ファン33を配置しても、冷却器31の着霜を少なくすることができる。遮蔽板31aに衝突した撹拌ファン33からの空気流の一部は、冷却ファン32や前方空間34へ流れ、冷却ファン32の周囲の空間や前方空間34に複雑な撹拌流を形成するのに寄与する。なお、遮蔽板31aは、冷却装置1の運転開始直後等において冷却器31のフィンに付着した水滴がコンベヤ19上に落下するのを防止する、いわゆるドレンパンとしても用いうる。
【0051】
冷却ファン32及び撹拌ファン33の各回転速度(即ち、各ファン32,33からの空気流の風速)によって、冷却ユニット30の周囲の空気流が変化し、これは被冷却物の冷却速度や温度ムラに影響を与える。このため、コンベヤ19の近傍の温度をモニタして、冷却ファン32及び撹拌ファン33の各回転速度を、インバータ制御等により独立して適切に制御することが好ましい。
【0052】
一般に、ファンを用いた送風機には、吸い込み側から送り出し側へ空気を案内して、送り出し側に空気の層流を形成するために、筒状又は環状のベルマウスが設けられることが多い。ところが、本実施形態では、冷却ファン32及び撹拌ファン33のいずれにもベルマウスやそれと同等の部材が設けられていない。このため、冷却ファン32及び撹拌ファン33から送り出される矢印A1,Bに沿った空気流は、層流ではなく、乱流となる。冷却ファン32からの乱流と撹拌ファン33からの乱流とが衝突し混じり合うことにより、冷却ユニット30の周囲に更に複雑な複雑な撹拌流(乱流)が形成される。特に、コンベヤ19上の被冷却物に向かって空気を送り出す撹拌ファン33にベルマウスが設けられていないので、被冷却物に乱流を衝突させることができる。これは被冷却物を温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0053】
第1室11では、冷却ユニット対30a,30bのそれぞれを構成する2つの冷却ユニット30は、それぞれの冷却ファン32が互いに対向するように向かい合って配置される。このため、冷却ファン32は、対向する冷却ファン32に向かって空気を送り出す。対向する冷却ファン32からそれぞれ送り出された空気が、対向する冷却ファン32間で衝突し、複雑な撹拌流(乱流)が形成される。これも、被冷却物を温度ムラを抑えながら急速冷却するのに有利である。
【0054】
冷却ユニット対30aと冷却ユニット対30bとは、それぞれの冷却器31の背面(冷却ファン32とは反対側の面)が対向するように配置される。冷却ファン32の送り出し側が冷却器31の背面に対向していないので、当該冷却器31を通過する空気流を少なくすることができる。これは、冷却器31の着霜を少なくするのに有利である。
【0055】
冷却ユニット30は、コンベヤ19の上方に配置されている。本実施形態とは異なり、冷却ユニット30を、コンベヤ19の側方に、即ちコンベヤ19の幅方向の両端よりも外側に、配置する構成も考えられる(例えば特許文献2の
図9,10参照)。しかしながら、冷却ユニット30をコンベヤ19の側方に配置する構成は、特にコンベヤ19の幅が大きい場合に、冷却ユニット30に近いコンベヤ19の幅方向の端近傍に配置された被冷却物と、冷却ユニット30から遠いコンベヤ19の幅方向の中央部分に配置された被冷却物とで、温度ムラ(冷却ムラ)が生じやすい。これに対して、冷却ユニット30をコンベヤ19の上方に配置する本実施形態は、コンベヤ19の幅方向での温度ムラが生じにくい。このため、広幅のコンベヤ19上に、被冷却物を幅方向に複数個配置しても、これら複数の被冷却物をムラなく冷却することができる。冷却ユニット30がコンベヤ19の側方に配置されていないので、広幅のコンベヤ19を用いても、冷却装置1の幅寸法の増大が抑えられた、設置面積が小さな冷却装置1を実現できる。
【0056】
図1A及び
図1Bに示されているように、第1室11及び第3室13には冷却ユニット30及び撹拌ファン33が設けられているのに対して、第2室12には冷却ユニット30及び撹拌ファン33のいずれもが設けられていない。第1室11内の冷却ユニット30及び撹拌ファン33の数は、第3室13の冷却ユニット30及び撹拌ファン33の数よりも多い。これにより、第1室11は、第3室13よりも低温に管理される。第2室12は、、第2隔壁22a,22b間及び第3隔壁23a,23b間の、コンベヤ19が通過する開口を通じて流れ込む第1室11及び第3室13からの冷気によって冷却されるが、第1室11及び第3室13よりも高温である。コンベヤ19の走行方向に沿った寸法は、第1室11が最も長く、次いで第3室13が長く、第2室12は最も短い。コンベヤ19上の被冷却物は、第1室11、第2室12、第3室13を順に通過して、目標とする温度に向かって徐々に冷却される。被冷却物の温度変化は、最も低温であり且つ滞在時間が最も長い第1室11において最も大きい。冷却装置1に投入前の被冷却物の温度と第1室11内の雰囲気温度との差は非常に大きい。第1室11では、被冷却物の特に外表面及びその近傍部分の温度が急速に低下する。次の第2室12では、被冷却物の外表面及びその近傍部分を緩やかに冷却しながら、相対的に高温である被冷却物の内部(中心部分)の熱を外表面へ伝導させる。外表面に対する内部の冷却遅れが解消され、内部と外表面との温度差が小さくなる。そして、第1室11より高温であるが、第2室12より低温である第3室13では、内部と外表面との温度差が再び拡大しないようにしながら、被冷却物全体を目標温度にまで冷却する。
【0057】
好適な一実施例では、冷却装置1は、被冷却物としての調理直後の約85℃の加工食品(例えば直径150mmの樹脂容器に収容されたグラタン)を約10℃にまで冷却するために使用することができる。この例では、被冷却物は、約2.3mの幅を有するコンベヤ19上に、幅方向に13個並べられて、第1室11は−35℃、第2室12は0℃、第3室13は−15℃に設定された冷却装置1を約20分かけて通過する。被冷却物は上記のように温度管理された第1〜第3室11,12,13を通過するので、氷点下以下の雰囲気を通過するにも関わらず、被冷却物の外表面は凍結することなく、被冷却物の全体が目標温度にまで略均一に冷却される。被冷却物を、その外表面を凍結させることなく冷蔵温度に冷却させることができるので、被冷却物である食品の品質(例えば食感や風味など)が損なわれない。コンベヤ19の幅方向に並ぶ13個の被冷却物間で温度ムラ(冷却ムラ)も生じない。
【0058】
第1室11と搬入口16との間の入口側緩衝室14は、第1室11と断熱箱体10の外界との間での搬入口16を介した空気の出入りを低減し、第1室11内を所望する温度に維持するのに有利である。同様に、第3室13と搬出口17との間の出口側緩衝室15は、第3室13と断熱箱体10の外界との間での搬出口17を介した空気の出入りを低減し、第3室13内を所望する温度に維持するのに有利である。
【0059】
入口側緩衝室14と第1室11とを隔てる第1隔壁21aに開口が設けられ、当該開口に正逆回転が可能な送気ファン26が設けられている。断熱箱体10の外界、入口側緩衝室14、及び第1室11の各圧力が所望する相対的関係になるように、送気ファン26の回転方向及び回転速度を制御する。これにより、第1室11と断熱箱体10の外界との間での搬入口16を介した空気の出入りを更に低減することができるので、第1室11内を所望する温度に維持することが容易になる。同様に、出口側緩衝室15と第3室13とを隔てる第4隔壁24aに開口が設けられ、当該開口に正逆回転が可能な送気ファン27が設けられている。断熱箱体10の外界、出口側緩衝室15、及び第3室13の各圧力が所望する相対的関係になるように、送気ファン27の回転方向及び回転速度を制御する。これにより、第3室13と断熱箱体10の外界との間での搬出口17を介した空気の出入りを更に低減することができるので、第3室13内を所望する温度に維持することが容易になる。送気ファン26を、第1隔壁21aに加えて、または、第1隔壁21aに代えて、第1隔壁21bに設けてもよい。同様に、送気ファン27を、第4隔壁24aに加えて、または、第4隔壁24aに代えて、第4隔壁24bに設けてもよい。
【0060】
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず適宜変更することができる。
【0061】
第1室11及び第3室13に設けられる冷却ユニット30及び撹拌ファン33の数は、上記の実施形態に限定されず、任意である。好ましくは、第1室11及び第3室13のそれぞれに、少なくとも1つの冷却ユニット30と少なくとも1つの撹拌ファン33が設けられる。第1室11及び第3室13では、コンベヤ19に乗って移動する被冷却物が、撹拌ファン33から常に略一定の空気流を受けるように、コンベヤ19の走行方向において撹拌ファン33が略一定ピッチで配置されることが好ましい。第2室12に冷却ユニット30及び/又は撹拌ファン33が設けられていてもよい。第2隔壁22aもしくは22b及び/又は、第3隔壁23aもしくは23bに、送気ファン26,27と同様の送気ファンを設け、当該送気ファンを用いて第2室12の温度を適切に管理してもよい。
【0062】
上記の実施形態では、断熱箱体10内の内部空間が、入口側緩衝室14、第1室11、第2室12、第3室13、出口側緩衝室15の5つに分割されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却ゾーン18を構成する第1室11、第2室12、第3室13のうちの少なくとも1つが省略されてもよい。第2隔壁22a,22b及び第3隔壁23a,23bを省略して、冷却ゾーン18が連続する1つの冷却室で構成されてもよい。冷却ゾーン18が、第1室11、第2室12、第3室13以外に、冷却室として機能する別の室を有していてもよい。
【0063】
入口側緩衝室14及び出口側緩衝室15の構成も任意に変更しうる。送気ファン26,27の数は任意である。送気ファン26及び/又は送気ファン27を省略してもよい。入口側緩衝室14及び/又は出口側緩衝室15を省略してもよい。
【0064】
上記の例では、被冷却物を凍結させることなく10℃以下に冷却する場合を説明したが、本発明の冷却装置は、被冷却物を冷凍するために使用することも可能である。本発明の冷却装置は、冷気が被冷却物に向かって吹き付けられないので、冷気を被冷却物に吹き付けて冷凍する冷凍装置に比べると冷却速度に関してやや劣るかも知れないが、冷却過程での被冷却物内の温度ムラ(あるいは、冷却速度の不均一)を抑えながら冷凍することが可能である。
【0065】
本発明の冷却装置が対象とする被冷却物は、制限はないが、各種食品(例えば水産物、農産物、食肉、各種加工食品など)が好ましい。本発明の冷却装置は、上述したように、比較的高温の被冷却物を、外表面を凍結させることなく冷蔵温度に急速冷却することができることから、冷蔵温度で保存される、調理直後の加工食品を冷却するために好ましく利用することができる。