特許第6818269号(P6818269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818269体内埋込型カテーテルポート、および、体内埋込型カテーテルポートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818269
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】体内埋込型カテーテルポート、および、体内埋込型カテーテルポートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20210107BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61M39/02 100
   A61M37/00 550
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-132453(P2015-132453)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-12481(P2017-12481A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592078597
【氏名又は名称】タマチ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397048335
【氏名又は名称】宮野医療器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】田中 利洋
(72)【発明者】
【氏名】福岡 靖史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】阪口 浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 邦博
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−506591(JP,A)
【文献】 特開2006−170031(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1940105(CN,A)
【文献】 特表平08−501008(JP,A)
【文献】 米国特許第05951512(US,A)
【文献】 特開2000−015351(JP,A)
【文献】 特開平05−076943(JP,A)
【文献】 特開平02−255221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 37/00
B21D 7/00
B21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺可能な隔壁と、
前記隔壁よりも第1方向側に配置され、流路を有するガイド部材と、
前記隔壁と、前記ガイド部材とを保持する保持部材と
前記保持部材と別部材として構成され、前記ガイド部材を収容する筒形状のハウジング部材と、
前記ハウジング部材と前記ガイド部材との間に充填され、前記ガイド部材を前記ハウジング部材に固定する充填材と
を具備し、
前記ガイド部材の前記流路は、
前記第1方向に延びる漏斗状流路と、
前記漏斗状流路よりも下流側に配置された湾曲流路と、
前記湾曲流路よりも下流側に配置され、前記第1方向と異なる第2方向に延び、カテーテルに接続可能である出口流路と
を備え、
前記ガイド部材は、外周ネジ部を有し、
前記保持部材は、
前記ガイド部材の前記外周ネジ部に螺合する内周ネジ部と、
前記隔壁の外表面に接触する係合部と
を備え、
前記保持部材は、前記隔壁の前記外表面の外周の部分で前記係合部と前記ガイド部材との間で前記隔壁を挟んで前記隔壁を固定しており、
前記保持部材は、前記隔壁の前記外表面のうち前記係合部に挟まれている部分より内側の部分の全体が露出されるように前記隔壁を保持している
体内埋込型カテーテルポート。
【請求項2】
前記漏斗状流路を規定する壁面は、ガイドワイヤを前記湾曲流路に向けて案内可能であり、
前記壁面の表面粗さRaは、0.1μm以下である
請求項1に記載の体内埋込型カテーテルポート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の体内埋込型カテーテルポートの製造方法であって、
前記ガイド部材を成形する工程と、
前記隔壁よりも下方側に前記ガイド部材が配置されるように、前記隔壁と前記ガイド部材とを一体化する工程とを含み、
前記ガイド部材を成形する工程は、
前記ガイド部材に、前記第1方向に沿って延びる漏斗形状部と、前記漏斗形状部よりも下流側に配置され、前記第1方向に沿って延びる直線状筒部とを形成する工程と、
前記直線状筒部に、前記ガイド部材の材料よりも融点の低い低融点材料を充填する工程と、
前記直線状筒部を曲げる工程と、
前記ガイド部材を加熱して、前記低融点材料を除去する工程と
を含む
体内埋込型カテーテルポートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内埋込型カテーテルポート、および、体内埋込型カテーテルポートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤等を患部に送出するために、体内埋込型カテーテルポートが用いられる場合がある。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、カテーテルポートが記載されている。特許文献1に記載のカテーテルポートは、ハウジングと、活性物質を収容するチャンバーが形成された挿入部と、チャンバー上に配置されるメンブレンと、チャンバーと流体接続を行うカテーテル用の接続部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−233445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガイドワイヤ、マイクロカテーテル等を案内可能な体内埋込型カテーテルポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
いくつかの実施形態の体内埋込型カテーテルポートは、穿刺可能な隔壁(20)と、前記隔壁(20)よりも第1方向側に配置され、流路(31)を有するガイド部材(30)と、を具備する。前記ガイド部材(30)の前記流路(31)は、前記第1方向に延びる漏斗状流路(33)と、前記漏斗状流路(33)よりも下流側に配置された湾曲流路(36)と、前記湾曲流路(36)よりも下流側に配置され、前記第1方向と異なる第2方向に延び、カテーテル(2)に接続可能である出口流路(38)とを備える。
【0008】
上記体内埋込型カテーテルポートにおいて、前記隔壁(20)と、前記ガイド部材(30)とを保持する保持部材(50)を更に具備してもよい。前記ガイド部材(30)は、外周ネジ部(32)を有してもよい。前記保持部材(50)は、前記ガイド部材(30)の前記外周ネジ部(32)に螺合する内周ネジ部(54)と、前記隔壁(20)の上面に接触する係合部(52)とを備えてもよい。
【0009】
上記体内埋込型カテーテルポートにおいて、前記ガイド部材(30)を収容するハウジング部材(60)と、前記ハウジング部材(60)と前記ガイド部材(30)との間に充填され、前記ガイド部材(30)を前記ハウジング部材(60)に固定する充填材(70)とを更に具備してもよい。
【0010】
上記体内埋込型カテーテルポートにおいて、前記漏斗状流路(33)を規定する壁面(430)は、ガイドワイヤ(9)を前記湾曲流路(36)に向けて案内可能であってもよい。前記壁面(430)の表面粗さRaは、0.1μm以下であってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態の体内埋込型カテーテルポートの製造方法は、ガイド部材(30)を成形する工程と、隔壁(20)よりも下方側に前記ガイド部材(30)が配置されるように、前記隔壁(20)と前記ガイド部材(30)とを一体化する工程とを含む。前記ガイド部材(30)を成形する工程は、前記ガイド部材(30)に、第1方向に沿って延びる漏斗形状部(43)と、前記漏斗形状部(43)よりも下流側に配置され、前記第1方向に沿って延びる直線状筒部(47)とを形成する工程と、前記直線状筒部(47)に、前記ガイド部材(30)の材料よりも融点の低い低融点材料(80)を充填する工程と、前記直線状筒部(47)を曲げる工程と、前記ガイド部材(30)を加熱して、前記低融点材料(80)を除去する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガイドワイヤ、マイクロカテーテル等を案内可能な体内埋込型カテーテルポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、比較例における体内埋込型カテーテルポートの断面図である。
図2図2は、実施形態における体内埋込型カテーテルポートの概略断面図である。
図3図3は、実施形態における体内埋込型カテーテルポートの概略断面図である。
図4図4は、体内埋込型カテーテルポートの概略平面図である。
図5図5は、体内埋込型カテーテルポートの概略側面図である。
図6図6は、保持部材の概略断面図である。
図7図7は、ガイド部材の概略断面図である。
図8図8は、実施形態における体内埋込型カテーテルポートの製造方法を示すフローチャートである。
図9図9は、孔開け加工前のガイド部材を示す概略断面図である。
図10図10は、孔開け加工後のガイド部材を示す概略断面図である。
図11図11は、低融点材料を充填後のガイド部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態の説明を行う。
【0015】
(発明者によって認識された事項)
図1は、比較例における体内埋込型カテーテルポートの断面図である。図1に記載のカテーテルポート1は、穿刺可能な隔壁3と、チャンバー5と、出口ポート7とを備える。カテーテルポート1の使用に際しては、薬剤等を収容した注射器等の中空針8が隔壁3に刺し込まれる。中空針8を介して、チャンバー5内に薬剤等が注入されると、注入された薬剤は、出口ポート7および出口ポート7に接続されたカテーテルを介して、患部に向けて供給される。
【0016】
図1に記載の例において、カテーテルポート1を用いて、ガイドワイヤ9等を患部に向けて案内することを想定する。図1に記載の例では、中空針8の延出方向と、出口ポート7の延出方向とは一致していない。このため、中空針8を介して導入されるガイドワイヤ9を、出口ポート7に向けて案内することが困難である。
【0017】
(カテーテルポートの概要)
図2は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の概略断面図である。図2に記載のカテーテルポート10は、穿刺可能な隔壁20と、流路31を有するガイド部材30とを備える。ガイド部材30は、隔壁20よりも第1方向側(下側)に配置される。ガイド部材30は、ガイド部材30の上面と隔壁20の下面とが互いに接触するように配置されてもよい。ガイド部材30の流路31は、第1方向に延びる漏斗状流路33と、漏斗状流路33よりも下流側に配置される湾曲流路36と、湾曲流路36よりも下流側に配置される出口流路38とを備える。漏斗状流路33は、薬剤等を収容するチャンバーとして機能する。また、出口流路38は、第1方向とは異なる第2方向に延びている。なお、第2方向は、例えば、第1方向に対して、垂直な方向である。本明細書において、垂直には、略垂直(より具体的には、85°以上95°以下の角度)が包含される。
【0018】
図2に記載の例では、カテーテルポート10が、漏斗状流路33と、漏斗状流路よりも下流側に配置される湾曲流路36とを備える。このため、中空針8を介して導入されるガイドワイヤ9を、出口流路38を規定する出口ポートに向けて案内することが容易である。
【0019】
一例として、ガイドワイヤ9の先端は、血管A内の患部、あるいは、血管Aを介して養分が供給される患部に向けて案内される。また、ガイドワイヤ9の外側、かつ、カテーテル2の内側には、マイクロカテーテル(図示せず)が導入されてもよい。マイクロカテーテルは、例えば、がん細胞に養分を送る血管を閉塞するために使用される。血管の閉塞は、例えば、マイクロカテーテルを介して、血管閉塞用のビーズを供給することによって行われる。
【0020】
図2に記載の例では、カテーテルポート10を用いて、ガイドワイヤ9、マイクロカテーテル等を案内することが可能である。このため、ガイドワイヤ9を案内するために、患者の皮膚をメス等により別途切開する必要がない。よって、患者の負担が軽減される。
【0021】
次に、図3乃至図6を参照して、カテーテルポート10を構成する各部材について説明する。なお、カテーテルポート10を構成する部材のうち必須の部材は、隔壁20およびガイド部材30である。また、カテーテルポート10に、隔壁20およびガイド部材30以外の部材を付加することにより、カテーテルポート10の機能又は性能が向上する。
【0022】
図3は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の概略断面図である。なお、図3は、図5のB−B矢視断面図である。図4は、体内埋込型カテーテルポート10の概略平面図である。図5は、体内埋込型カテーテルポート10の概略側面図である。図6は、保持部材50の概略断面図である。
【0023】
カテーテルポート10は、隔壁20およびガイド部材30に加え、保持部材50と、ハウジング部材60と、充填材70とを備える。
【0024】
(隔壁20)
隔壁20は、中空針によって穿刺可能な隔壁である。隔壁20は、平面視で、円形状を有する。本明細書において、円形状には、略円形状が包含される。なお、カテーテルポート10を体内に配置するに際して、隔壁20の外表面22は、例えば、皮膚面と平行となるように配置される。隔壁20の材質は、例えば、シリコーンゴム等の弾性材料である。
【0025】
(ガイド部材30)
ガイド部材30は、上述のように、漏斗状流路33と、湾曲流路36と、出口流路38とを備える。また、ガイド部材30は、外周ネジ部32(例えば、雄ネジ部)と、出口ポート39とを備える。図3に記載の例では、外周ネジ部32は、ガイド部材30の頭部42に設けられている。外周ネジ部32は、保持部材50の後述の内周ネジ部54と螺合する。出口ポート39は、カテーテル2に接続されるポートである。なお、ガイド部材30の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0026】
(保持部材50)
保持部材50は、隔壁20と、ガイド部材30とを保持する保持部材である。保持部材50は、隔壁20を、ガイド部材30に、直接的または間接的に固定する。図3に記載の例では、隔壁20は、保持部材50の係合部52とガイド部材30の上面との間に挟まれることによって、ガイド部材30に固定される。保持部材50は、筒形状を有する。
【0027】
保持部材50は、隔壁20の上面に接触する係合部52と、外周ネジ部32に螺合する内周ネジ部(例えば、雌ネジ部)とを備える。図3に記載の例では、係合部52は、保持部材50の中心軸(第1方向に平行な中心軸)に向かって突出している。また、内周ネジ部54(必要であれば、図6を参照)は、ガイド部材30の外周ネジ部32に螺合する。隔壁20が保持部材50の内部に配置された状態で、外周ネジ部32が内周ネジ部54に螺合されることにより、隔壁20は、ガイド部材30に、液密固定される。なお、保持部材50の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0028】
係合部52と内周ネジ部54とを有する保持部材50を採用することにより、隔壁20とガイド部材30とを、迅速かつ液密に、互いに固定することが可能となる。
【0029】
(ハウジング部材60)
ハウジング部材60は、ガイド部材30を収容する部材である。図3に記載の例では、ハウジング部材60は、後述の充填材70を介して、ガイド部材30に固定される。ハウジング部材60は、筒形状を有する。ハウジング部材60は、環状凸部62と、突出部63と、切り欠き部66とを備える。なお、ハウジング部材60の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0030】
環状凸部62は、保持部材50の環状凹部56(必要であれば、図6を参照。)に嵌合する。図3に記載の例では、環状凸部62の外周面は、保持部材50の外周面と面一である。
【0031】
突出部63は、ハウジング部材60の底部に配置され、ハウジング部材60の径外方向に向かって突出する部分である。突出部63には、突出部を第1方向に貫通する貫通孔64(例えば、長孔)が設けられる。図4に記載の例では、ハウジング部材60は、3つの突出部63と、3つの貫通孔64とを備える。しかし、突出部63の数および貫通孔64の数は、図4に記載の例に限定されず、任意である。貫通孔64は、ハウジング部材60を、体の一部(例えば、筋肉)に固定(例えば、縫合)するために用いられる。
【0032】
切り欠き部66は、出口流路38を規定する出口ポート39を収容する切り欠きである。切り欠き部66は、ハウジング部材60の底面に設けられる。なお、切り欠き部66は、第1方向側が開放されている。このため、出口ポート39を、第1方向の反対方向に向けて移動することにより、出口ポート39を切り欠き部66に配置することが容易である。
【0033】
(充填材70)
充填材70は、ハウジング部材60とガイド部材30との間に充填される。そして、充填材70は、ガイド部材30をハウジング部材60に固定する。充填材70の材質は、例えば、シリコーンゴムである。
【0034】
ガイド部材30とハウジング部材60との間の固定を、充填材70によって実現することにより、ハウジング部材60およびガイド部材30の形状または構造をシンプルにすることが可能である。加えて、ハウジング部材60に固定されたガイド部材30と、保持部材50とを螺合させるだけで、ハウジング部材60に固定されたガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とを一体化できるため、カテーテルポート10の組み立て作業を容易に実行することが可能である。
【0035】
(流路31)
次に、図7を参照して、流路31について、より詳細に説明する。図7は、ガイド部材30の概略断面図である。
【0036】
漏斗状流路33は、漏斗形状部43の内周面430(壁面)によって規定される流路である。漏斗状流路33は、第1方向に沿って延びる。漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて減少する。図7に記載の例では、漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて連続的に減少する。図7に記載の例では、漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて滑らかに減少する(すなわち、ガイド部材30の上面44からの距離をxと表し、距離xにおける漏斗状流路33の断面積をyと表すとき、導関数dy/dxは、xに対して連続的に変化する関数である)。また、図7に記載の例では、漏斗状流路33は、漏斗形状部43の中心軸Cに対して、軸対称形状である。
【0037】
漏斗形状部43の中心軸Cをとおる断面(図7を参照)において、内周面430上の任意の位置における内周面430の接線Tと、中心軸Cとのなす角θは、例えば、0°以上45°以下、または、0°以上40°以下である。なす角θが、0°以上45°以下、または、0°以上40°以下であるとき、内周面430によるガイドワイヤ9の湾曲流路36への案内が、より円滑に実施される。
【0038】
漏斗形状部43の内周面の平均粗さRaは、ガイドワイヤを滑らかに案内するために、0.1μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粗さRaは、日本工業規格JIS−B0601−2001、換言すれば、ISO4287−1997による算術平均粗さRaの定義と表示に従う。
【0039】
漏斗状流路33よりも下流側には湾曲流路36が配置される。湾曲流路36は、湾曲部46の内周面(壁面)によって規定される流路である。湾曲流路36の上流端は、漏斗状流路33の下流端に接続されている。図7に記載の例では、湾曲流路36の流れ方向に垂直な断面積は、実質的に一定である。当該断面積は、漏斗状流路33の下流端の断面積と等しい。湾曲流路36の中心線(すなわち、湾曲流路36の流れ方向に垂直な断面の面積中心をとおる曲線)の曲率半径は、ガイドワイヤ9を滑らかに案内するために、例えば、3mm以上に設定される。また、カテーテルポート10の高さ(すなわち、第1方向に沿う長さ)を小さくするために、湾曲流路36の中心線の曲率半径は、例えば、10mm以下に設定される。
【0040】
湾曲流路36の下流側には出口流路38が配置される。図7に記載の例では、出口流路38は、直線流路である。そして、出口流路38は、出口ポート39の内周面(壁面)によって規定される流路である。出口流路38の上流端は、湾曲流路36の下流端に接続されている。図7に記載の例では、出口流路38の流れ方向に垂直な断面積は、実質的に一定である。当該断面積は、湾曲流路36の下流端の断面積と等しい。
【0041】
(カテーテルポートの製造方法)
次に、図8乃至図10を参照して、カテーテルポートの製造方法について説明する。図8は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の製造方法を示すフローチャートである。図9は、孔開け加工前のガイド部材30を示す概略断面図である。図10は、孔開け加工後のガイド部材30を示す概略断面図である。図11は、低融点材料80を充填後のガイド部材30を示す概略断面図である。
【0042】
図8および図9に示されるように、第1ステップS1において、孔開け加工前のガイド部材30が準備される。ガイド部材30は、例えば、中心軸Cに対して軸対称である。
【0043】
図8および図10に示されるように、第2ステップS2において、孔開け加工が実行される。孔開け加工により、第1方向に沿って延びる漏斗形状部43と、漏斗形状部43よりも下流側に配置され、第1方向に沿って延びる直線状筒部47とが形成される。図10に記載の例では、漏斗形状部43の下流端は、直線状筒部47の上流端である。漏斗形状部43の内周面430が中心軸Cに対して軸対称であり、直線状筒部47の内周面が中心軸Cに対して軸対称であるように孔開け加工を行う場合には、旋盤を用いて、孔開け加工を行うことが可能である。なお、穴開け加工において、内周面430の表面粗さRaは、上述のとおり、0.1μm以下に設定される。直線状筒部47の表面粗さRaも、0.1μm以下に設定されてもよい。
【0044】
図8および図11に示されるように、第3ステップS3において、少なくとも直線状筒部47の内部に、低融点材料80(図11の斜線部を参照)が充填される。なお、低融点材料80(例えば、融点が、70℃以上100℃以下である材料)は、ガイド部材30の融点よりも低い材料と定義される。低融点材料80は、直線状筒部47が曲げられる際に、直線状筒部47の内部通路が潰れることを防止する。
【0045】
第4ステップS4では、直線状筒部47が曲げられる。より具体的には、まず、直線状筒部47の外径よりもわずかに大きな内径の孔を有する型部材90が準備され、型部材90の当該孔の内部に、直線状筒部47が挿入される。型部材90の上端部の内周面は、第1方向に向かうにつれて内径が小さくなる湾曲面92(R部)である。次に、漏斗形状部43を、直線状筒部47に対して、中心軸Cに垂直な軸まわりに、相対回転移動させることにより、直線状筒部47が曲げられる。直線状筒部47の曲げ加工は、例えば、型部材90を固定した状態で、漏斗形状部43を図11に示されるRt方向に曲げることにより行われる。
【0046】
曲げ加工により、湾曲流路36および出口流路38(直線流路)が形成される(必要であれば、図7を参照。)。曲げ加工により、漏斗形状部43の中心軸C(第1方向)と、出口流路38の中心軸(第2方向)とのなす角は、例えば、85°以上95°以下に設定される。
【0047】
第5ステップS5では、ガイド部材30は、低融点材料80の融点以上の温度に加熱される。低融点材料80は溶融され、ガイド部材30から除去される。
【0048】
第6ステップS6では、第1ステップS1乃至第5ステップS5を実行することにより得られたガイド部材30とハウジング部材60とが一体化される。より具体的には、まず、ガイド部材30がハウジング部材60の内部に挿入される。次に、ガイド部材30とハウジング部材60との間に、流動性を有する充填材70が充填され、その後、充填材70が固化される。以上により、ガイド部材30とハウジング部材60とが一体化される。なお、第6ステップS6は、後述の第7ステップS7の後に実行されてもよい。
【0049】
第7ステップS7では、ガイド部材30と、隔壁20とが一体化される。より具体的には、まず、隔壁20が保持部材50の内部に挿入される。次に、ガイド部材30の外周ネジ部32と、保持部材50の内周ネジ部54とが螺合される。螺合により、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とが一体化される。以上により、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50と、ハウジング部材60と、充填材70とが一体化される。
【0050】
なお、第8ステップS8において、第1ステップS1乃至第7ステップS7により製造されたカテーテルポート10の外面にコーティングが施されてもよい。代替的に、コーティングを施す工程は、カテーテルポート10を組み立てる工程の前に、組立前の各構成部材に対して実行されてもよい。
【0051】
実施形態による製造方法では、低融点材料80が、直線状筒部47に充填された後に、直線状筒部47の曲げ加工が実行される。このため、曲げ加工時に、流路(通路)が潰れることがない。また、実施形態による製造方法では、ガイド部材30とハウジング部材60とは、充填材70を介して固着されるため、ガイド部材30およびハウジング部材60の形状および構造をシンプルにすることが可能である。さらに実施形態による製造方法では、ガイド部材30の外周ネジ部32が、保持部材50の内周ネジ部54に螺合することにより、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とが一体化される。このため、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50との組立作業を、容易に実施することが可能である。
【0052】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または変形例にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 :カテーテルポート
2 :カテーテル
3 :隔壁
5 :チャンバー
7 :出口ポート
8 :中空針
9 :ガイドワイヤ
10 :体内埋込型カテーテルポート
20 :隔壁
22 :外表面
30 :ガイド部材
31 :流路
32 :外周ネジ部
33 :漏斗状流路
36 :湾曲流路
38 :出口流路
39 :出口ポート
42 :頭部
43 :漏斗形状部
44 :上面
46 :湾曲部
47 :直線状筒部
50 :保持部材
52 :係合部
54 :内周ネジ部
56 :環状凹部
60 :ハウジング部材
62 :環状凸部
63 :突出部
64 :貫通孔
66 :切り欠き部
70 :充填材
80 :低融点材料
90 :型部材
92 :湾曲面
430 :内周面
A :血管
C :中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11