(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態の説明を行う。
【0015】
(発明者によって認識された事項)
図1は、比較例における体内埋込型カテーテルポートの断面図である。
図1に記載のカテーテルポート1は、穿刺可能な隔壁3と、チャンバー5と、出口ポート7とを備える。カテーテルポート1の使用に際しては、薬剤等を収容した注射器等の中空針8が隔壁3に刺し込まれる。中空針8を介して、チャンバー5内に薬剤等が注入されると、注入された薬剤は、出口ポート7および出口ポート7に接続されたカテーテルを介して、患部に向けて供給される。
【0016】
図1に記載の例において、カテーテルポート1を用いて、ガイドワイヤ9等を患部に向けて案内することを想定する。
図1に記載の例では、中空針8の延出方向と、出口ポート7の延出方向とは一致していない。このため、中空針8を介して導入されるガイドワイヤ9を、出口ポート7に向けて案内することが困難である。
【0017】
(カテーテルポートの概要)
図2は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の概略断面図である。
図2に記載のカテーテルポート10は、穿刺可能な隔壁20と、流路31を有するガイド部材30とを備える。ガイド部材30は、隔壁20よりも第1方向側(下側)に配置される。ガイド部材30は、ガイド部材30の上面と隔壁20の下面とが互いに接触するように配置されてもよい。ガイド部材30の流路31は、第1方向に延びる漏斗状流路33と、漏斗状流路33よりも下流側に配置される湾曲流路36と、湾曲流路36よりも下流側に配置される出口流路38とを備える。漏斗状流路33は、薬剤等を収容するチャンバーとして機能する。また、出口流路38は、第1方向とは異なる第2方向に延びている。なお、第2方向は、例えば、第1方向に対して、垂直な方向である。本明細書において、垂直には、略垂直(より具体的には、85°以上95°以下の角度)が包含される。
【0018】
図2に記載の例では、カテーテルポート10が、漏斗状流路33と、漏斗状流路よりも下流側に配置される湾曲流路36とを備える。このため、中空針8を介して導入されるガイドワイヤ9を、出口流路38を規定する出口ポートに向けて案内することが容易である。
【0019】
一例として、ガイドワイヤ9の先端は、血管A内の患部、あるいは、血管Aを介して養分が供給される患部に向けて案内される。また、ガイドワイヤ9の外側、かつ、カテーテル2の内側には、マイクロカテーテル(図示せず)が導入されてもよい。マイクロカテーテルは、例えば、がん細胞に養分を送る血管を閉塞するために使用される。血管の閉塞は、例えば、マイクロカテーテルを介して、血管閉塞用のビーズを供給することによって行われる。
【0020】
図2に記載の例では、カテーテルポート10を用いて、ガイドワイヤ9、マイクロカテーテル等を案内することが可能である。このため、ガイドワイヤ9を案内するために、患者の皮膚をメス等により別途切開する必要がない。よって、患者の負担が軽減される。
【0021】
次に、
図3乃至
図6を参照して、カテーテルポート10を構成する各部材について説明する。なお、カテーテルポート10を構成する部材のうち必須の部材は、隔壁20およびガイド部材30である。また、カテーテルポート10に、隔壁20およびガイド部材30以外の部材を付加することにより、カテーテルポート10の機能又は性能が向上する。
【0022】
図3は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の概略断面図である。なお、
図3は、
図5のB−B矢視断面図である。
図4は、体内埋込型カテーテルポート10の概略平面図である。
図5は、体内埋込型カテーテルポート10の概略側面図である。
図6は、保持部材50の概略断面図である。
【0023】
カテーテルポート10は、隔壁20およびガイド部材30に加え、保持部材50と、ハウジング部材60と、充填材70とを備える。
【0024】
(隔壁20)
隔壁20は、中空針によって穿刺可能な隔壁である。隔壁20は、平面視で、円形状を有する。本明細書において、円形状には、略円形状が包含される。なお、カテーテルポート10を体内に配置するに際して、隔壁20の外表面22は、例えば、皮膚面と平行となるように配置される。隔壁20の材質は、例えば、シリコーンゴム等の弾性材料である。
【0025】
(ガイド部材30)
ガイド部材30は、上述のように、漏斗状流路33と、湾曲流路36と、出口流路38とを備える。また、ガイド部材30は、外周ネジ部32(例えば、雄ネジ部)と、出口ポート39とを備える。
図3に記載の例では、外周ネジ部32は、ガイド部材30の頭部42に設けられている。外周ネジ部32は、保持部材50の後述の内周ネジ部54と螺合する。出口ポート39は、カテーテル2に接続されるポートである。なお、ガイド部材30の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0026】
(保持部材50)
保持部材50は、隔壁20と、ガイド部材30とを保持する保持部材である。保持部材50は、隔壁20を、ガイド部材30に、直接的または間接的に固定する。
図3に記載の例では、隔壁20は、保持部材50の係合部52とガイド部材30の上面との間に挟まれることによって、ガイド部材30に固定される。保持部材50は、筒形状を有する。
【0027】
保持部材50は、隔壁20の上面に接触する係合部52と、外周ネジ部32に螺合する内周ネジ部(例えば、雌ネジ部)とを備える。
図3に記載の例では、係合部52は、保持部材50の中心軸(第1方向に平行な中心軸)に向かって突出している。また、内周ネジ部54(必要であれば、
図6を参照)は、ガイド部材30の外周ネジ部32に螺合する。隔壁20が保持部材50の内部に配置された状態で、外周ネジ部32が内周ネジ部54に螺合されることにより、隔壁20は、ガイド部材30に、液密固定される。なお、保持部材50の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0028】
係合部52と内周ネジ部54とを有する保持部材50を採用することにより、隔壁20とガイド部材30とを、迅速かつ液密に、互いに固定することが可能となる。
【0029】
(ハウジング部材60)
ハウジング部材60は、ガイド部材30を収容する部材である。
図3に記載の例では、ハウジング部材60は、後述の充填材70を介して、ガイド部材30に固定される。ハウジング部材60は、筒形状を有する。ハウジング部材60は、環状凸部62と、突出部63と、切り欠き部66とを備える。なお、ハウジング部材60の材質は、例えば、チタン等の金属材料である。
【0030】
環状凸部62は、保持部材50の環状凹部56(必要であれば、
図6を参照。)に嵌合する。
図3に記載の例では、環状凸部62の外周面は、保持部材50の外周面と面一である。
【0031】
突出部63は、ハウジング部材60の底部に配置され、ハウジング部材60の径外方向に向かって突出する部分である。突出部63には、突出部を第1方向に貫通する貫通孔64(例えば、長孔)が設けられる。
図4に記載の例では、ハウジング部材60は、3つの突出部63と、3つの貫通孔64とを備える。しかし、突出部63の数および貫通孔64の数は、
図4に記載の例に限定されず、任意である。貫通孔64は、ハウジング部材60を、体の一部(例えば、筋肉)に固定(例えば、縫合)するために用いられる。
【0032】
切り欠き部66は、出口流路38を規定する出口ポート39を収容する切り欠きである。切り欠き部66は、ハウジング部材60の底面に設けられる。なお、切り欠き部66は、第1方向側が開放されている。このため、出口ポート39を、第1方向の反対方向に向けて移動することにより、出口ポート39を切り欠き部66に配置することが容易である。
【0033】
(充填材70)
充填材70は、ハウジング部材60とガイド部材30との間に充填される。そして、充填材70は、ガイド部材30をハウジング部材60に固定する。充填材70の材質は、例えば、シリコーンゴムである。
【0034】
ガイド部材30とハウジング部材60との間の固定を、充填材70によって実現することにより、ハウジング部材60およびガイド部材30の形状または構造をシンプルにすることが可能である。加えて、ハウジング部材60に固定されたガイド部材30と、保持部材50とを螺合させるだけで、ハウジング部材60に固定されたガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とを一体化できるため、カテーテルポート10の組み立て作業を容易に実行することが可能である。
【0035】
(流路31)
次に、
図7を参照して、流路31について、より詳細に説明する。
図7は、ガイド部材30の概略断面図である。
【0036】
漏斗状流路33は、漏斗形状部43の内周面430(壁面)によって規定される流路である。漏斗状流路33は、第1方向に沿って延びる。漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて減少する。
図7に記載の例では、漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて連続的に減少する。
図7に記載の例では、漏斗状流路33の第1方向に垂直な断面積は、湾曲流路36に近づくにつれて滑らかに減少する(すなわち、ガイド部材30の上面44からの距離をxと表し、距離xにおける漏斗状流路33の断面積をyと表すとき、導関数dy/dxは、xに対して連続的に変化する関数である)。また、
図7に記載の例では、漏斗状流路33は、漏斗形状部43の中心軸Cに対して、軸対称形状である。
【0037】
漏斗形状部43の中心軸Cをとおる断面(
図7を参照)において、内周面430上の任意の位置における内周面430の接線Tと、中心軸Cとのなす角θは、例えば、0°以上45°以下、または、0°以上40°以下である。なす角θが、0°以上45°以下、または、0°以上40°以下であるとき、内周面430によるガイドワイヤ9の湾曲流路36への案内が、より円滑に実施される。
【0038】
漏斗形状部43の内周面の平均粗さRaは、ガイドワイヤを滑らかに案内するために、0.1μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粗さRaは、日本工業規格JIS−B0601−2001、換言すれば、ISO4287−1997による算術平均粗さRaの定義と表示に従う。
【0039】
漏斗状流路33よりも下流側には湾曲流路36が配置される。湾曲流路36は、湾曲部46の内周面(壁面)によって規定される流路である。湾曲流路36の上流端は、漏斗状流路33の下流端に接続されている。
図7に記載の例では、湾曲流路36の流れ方向に垂直な断面積は、実質的に一定である。当該断面積は、漏斗状流路33の下流端の断面積と等しい。湾曲流路36の中心線(すなわち、湾曲流路36の流れ方向に垂直な断面の面積中心をとおる曲線)の曲率半径は、ガイドワイヤ9を滑らかに案内するために、例えば、3mm以上に設定される。また、カテーテルポート10の高さ(すなわち、第1方向に沿う長さ)を小さくするために、湾曲流路36の中心線の曲率半径は、例えば、10mm以下に設定される。
【0040】
湾曲流路36の下流側には出口流路38が配置される。
図7に記載の例では、出口流路38は、直線流路である。そして、出口流路38は、出口ポート39の内周面(壁面)によって規定される流路である。出口流路38の上流端は、湾曲流路36の下流端に接続されている。
図7に記載の例では、出口流路38の流れ方向に垂直な断面積は、実質的に一定である。当該断面積は、湾曲流路36の下流端の断面積と等しい。
【0041】
(カテーテルポートの製造方法)
次に、
図8乃至
図10を参照して、カテーテルポートの製造方法について説明する。
図8は、実施形態における体内埋込型カテーテルポート10の製造方法を示すフローチャートである。
図9は、孔開け加工前のガイド部材30を示す概略断面図である。
図10は、孔開け加工後のガイド部材30を示す概略断面図である。
図11は、低融点材料80を充填後のガイド部材30を示す概略断面図である。
【0042】
図8および
図9に示されるように、第1ステップS1において、孔開け加工前のガイド部材30が準備される。ガイド部材30は、例えば、中心軸Cに対して軸対称である。
【0043】
図8および
図10に示されるように、第2ステップS2において、孔開け加工が実行される。孔開け加工により、第1方向に沿って延びる漏斗形状部43と、漏斗形状部43よりも下流側に配置され、第1方向に沿って延びる直線状筒部47とが形成される。
図10に記載の例では、漏斗形状部43の下流端は、直線状筒部47の上流端である。漏斗形状部43の内周面430が中心軸Cに対して軸対称であり、直線状筒部47の内周面が中心軸Cに対して軸対称であるように孔開け加工を行う場合には、旋盤を用いて、孔開け加工を行うことが可能である。なお、穴開け加工において、内周面430の表面粗さRaは、上述のとおり、0.1μm以下に設定される。直線状筒部47の表面粗さRaも、0.1μm以下に設定されてもよい。
【0044】
図8および
図11に示されるように、第3ステップS3において、少なくとも直線状筒部47の内部に、低融点材料80(
図11の斜線部を参照)が充填される。なお、低融点材料80(例えば、融点が、70℃以上100℃以下である材料)は、ガイド部材30の融点よりも低い材料と定義される。低融点材料80は、直線状筒部47が曲げられる際に、直線状筒部47の内部通路が潰れることを防止する。
【0045】
第4ステップS4では、直線状筒部47が曲げられる。より具体的には、まず、直線状筒部47の外径よりもわずかに大きな内径の孔を有する型部材90が準備され、型部材90の当該孔の内部に、直線状筒部47が挿入される。型部材90の上端部の内周面は、第1方向に向かうにつれて内径が小さくなる湾曲面92(R部)である。次に、漏斗形状部43を、直線状筒部47に対して、中心軸Cに垂直な軸まわりに、相対回転移動させることにより、直線状筒部47が曲げられる。直線状筒部47の曲げ加工は、例えば、型部材90を固定した状態で、漏斗形状部43を
図11に示されるRt方向に曲げることにより行われる。
【0046】
曲げ加工により、湾曲流路36および出口流路38(直線流路)が形成される(必要であれば、
図7を参照。)。曲げ加工により、漏斗形状部43の中心軸C(第1方向)と、出口流路38の中心軸(第2方向)とのなす角は、例えば、85°以上95°以下に設定される。
【0047】
第5ステップS5では、ガイド部材30は、低融点材料80の融点以上の温度に加熱される。低融点材料80は溶融され、ガイド部材30から除去される。
【0048】
第6ステップS6では、第1ステップS1乃至第5ステップS5を実行することにより得られたガイド部材30とハウジング部材60とが一体化される。より具体的には、まず、ガイド部材30がハウジング部材60の内部に挿入される。次に、ガイド部材30とハウジング部材60との間に、流動性を有する充填材70が充填され、その後、充填材70が固化される。以上により、ガイド部材30とハウジング部材60とが一体化される。なお、第6ステップS6は、後述の第7ステップS7の後に実行されてもよい。
【0049】
第7ステップS7では、ガイド部材30と、隔壁20とが一体化される。より具体的には、まず、隔壁20が保持部材50の内部に挿入される。次に、ガイド部材30の外周ネジ部32と、保持部材50の内周ネジ部54とが螺合される。螺合により、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とが一体化される。以上により、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50と、ハウジング部材60と、充填材70とが一体化される。
【0050】
なお、第8ステップS8において、第1ステップS1乃至第7ステップS7により製造されたカテーテルポート10の外面にコーティングが施されてもよい。代替的に、コーティングを施す工程は、カテーテルポート10を組み立てる工程の前に、組立前の各構成部材に対して実行されてもよい。
【0051】
実施形態による製造方法では、低融点材料80が、直線状筒部47に充填された後に、直線状筒部47の曲げ加工が実行される。このため、曲げ加工時に、流路(通路)が潰れることがない。また、実施形態による製造方法では、ガイド部材30とハウジング部材60とは、充填材70を介して固着されるため、ガイド部材30およびハウジング部材60の形状および構造をシンプルにすることが可能である。さらに実施形態による製造方法では、ガイド部材30の外周ネジ部32が、保持部材50の内周ネジ部54に螺合することにより、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50とが一体化される。このため、ガイド部材30と、隔壁20と、保持部材50との組立作業を、容易に実施することが可能である。
【0052】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または変形例にも適用可能である。