(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる種類の二止水液をそれぞれ貯留する二つのタンクと、前記各タンクに接続されて前記二止水液をそれぞれ供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプから供給された前記二止水液を合流させて注入する注入具と、前記注入具で合流された止水液を撹拌・混合してセメント系組成体構造物の漏水箇所へ注入する止水液混合注入プラグを備え、
前記注入具は、前記二止水液を合流させる合流ヘッドを有し、
前記止水液混合注入プラグは、内部に前記二止水液を撹拌・混合するミキサーが内蔵されており、
前記注入具の前記合流ヘッドと前記止水液混合注入プラグとは、前記止水液混合注入プラグを前記漏水箇所に残したまま分離可能な結合手段で結合されていることを特徴とする止水液混合注入システム。
前記各タンクに接続された前記各高圧ポンプは一つの動力源に連結され、また、前記各高圧ポンプのピストン径は同一径乃至径が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の止水液混合注入システム。
前記結合手段は、前記合流ヘッドに設けたプラグチャックと、前記止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付き結合具とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の止水液混合注入システム。
前記ヘッド本体は、前記第1、第2流路にそれぞれ連通した注入ニップルが装着され、前記各注入ニップルから前記第1、第2流路に非硬化性材が充填されることを特徴とする請求項4に記載の止水液混合注入システム。
前記二止水液は、一方がウレタンプレポリマー、他方が水性エマルションであって、当該水性エマルションは水とヒドロキシル基を有した分子構造の樹脂固形分及びアニオン系界面活性剤で構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の止水液混合注入システム。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、名称を「セメント系組成体製構造物の止水工法」と称し、コンクリート製構造物などのセメント系組成体製構造物のひび割れや打ち継目等の細隙からなどの水漏れする箇所に2液型の止水材を注入して止水する工法に関する特許出願を行った(下記特許文献1)。
【0003】
この止水工法の発明は、セメント系組成体製構造物の漏水箇所に種類の異なる2液型の止水材を混合・注入し、それらを硬化させて止水する工法であって、種類の異なる2液型の止水材の新規な組み合わせを選択して、これらの止水材を専用の注入装置を使用して漏水箇所に混合・注入し、硬化させて止水することを特徴としたものである。
【0004】
注入装置は、種類の異なる2液型の止水材の一方の止水材(以下、A液ともいう。)を供給するA液供給ポンプ及び他方の止水材(以下、B液ともいう。)を供給するB液供給ポンプと、これらの供給ポンプから供給されたA液、B液を混合する混合部を有する注入ヘッドとを備えている。A液は親水性ウレタン樹脂、B液は水性ポリマーエマルションであって、これらのA、B液は混合により硬化して止水材を生成する。
【0005】
図14を参照して、下記特許文献1に記載の注入装置の概要を説明する。なお、
図14は従来技術の注入装置を示し、
図14Aは注入装置の概略図、
図14Bは注入ヘッドの一部断面図である。
【0006】
注入装置1は、A液及びB液をそれぞれ貯留する二つのタンク2、2と、これらのタンクに接続されたA液を供給する高圧ポンプ及びB液を供給する高圧ポンプ3、3と、それぞれの高圧ポンプ3、3から高圧ホース4、4を介して供給されたA液とB液を混合する注入ヘッド5とを備えている。
【0007】
注入ヘッド5は、二股形状の基部5aと、この基部5aに一体に設けられた基部側筒部5bと、この基部側筒部5bに管継手5jを介して略同軸且つ着脱自在に設けられる先端側筒部5cとを有している。
【0008】
基部5aは、二つの流路R5a、R5aが設けられ、これらの流路R5a、R5aには、それぞれ二本の高圧ホース4、4のうちの対応する各高圧ホース4、4が接続されている。また、これら二つの流路R5a、R5aは基部5a内の所定位置で合流して一つの流路R5a1となっており、この流路5a1は基部側筒部5bの筒内流路SP5bに繋がって、この筒内流路SP5bはミキサー6内蔵の先端側筒部5cの筒内流路SP5cに繋がっている。
【0009】
ミキサー6は、先端側筒部5cと略同軸に筒内流路SP5cに収容された軸部と、当該軸部の外周面から螺旋状に突出するリブ部と、を有したものを本体としている。そして、かかる筒内流路SP5cを通過する際に、A液とB液とは、螺旋状のリブ部によって撹拌・混合される。
【0010】
この注入装置1により、2台の高圧ポンプ3、3から圧送されたA液及びB液は、注入ヘッド5内の基部5a内で合流し、基部側筒部5bを経て先端側筒部5cを通る際に、これらA液とB液とはミキサー6で撹拌・混合され、当該混合状態で先端側筒部5cの吐出口5hか ら吐出される。なお、2台の高圧ポンプ3、3の吐出圧力の大きさは、注入対象のひび割れの幅や深さに応じて、0(MPa)よりも大きく50(MPa)以下の範囲から適宜選択され、ひび割れの深部まで確実に注入させる観点から10(MPa)以上50(MPa)以下の範囲に選択される。
【0011】
この発明によれば、注入ヘッド内の流路でA液とB液とが混合される。このとき、A液を発泡硬化する加水発泡反応に必要な水はB液から供給され、他方、この供給により、B液からは水が抜かれて、B液は硬化する。よって、従来技術のように事前に漏水箇所への水の注入を行わずに、B液の発泡硬化を確実に引き起こすことができるとともに、漏水箇所でのB液の硬化も短時間なる。また、吐出口に連通する流路内ではA液とB液とを混合しながら漏水箇所に注入する。よって、A液とB液との混合物の流動性が高いうちに、当該混合物を漏水箇所に注入することができて、これにより、漏水箇所の深部まで円滑且つ確実に注入することができる。
【0012】
この止水工法によれば、上記の優れた効果を奏し、止水を短時間で効率よく且つ効果的に行うことができる。しかし、この程、この工法の注入装置に、いくつかの改善点(以下、課題ともいう。)が見つかった。
【0013】
一つの改善点(課題1)は、A液、B液は合流乃至混合後、直ちに硬化反応が始まり、この硬化物が管内壁に付着或いは硬化塊が管を塞ぐので、注入装置の故障の原因になること、また、これらの硬化物乃至塊の除去や管内の清掃などは面倒で時間が掛かり、止水作業の支障になること等が挙げられる。すなわち、A液及びB液は、注入ヘッド5内の基部5a内で合流し、基部側筒部5bを経て先端側筒部5cを通る際に、これらA液とB液とがミキサー6で撹拌・混合され、この混合状態で先端側筒部5cの吐出口5hか ら吐出される。これらの流路で基部5a及び基部側筒部5bの管内壁に硬化物が付着し、或いはこれらの箇所が硬化塊で塞がれると、基部5a及び基部側筒部5bが直角に折曲しているので、硬化物の除去、管内の清掃が極めて困難、面倒で手間が掛かり、一方でまた先端側筒部5cで詰まると、この筒部を分離、分解しなければ、硬化物の除去、管内の清掃ができず、そのためにさらに深刻で、さらに困難で、手間も掛かることになる。
【0014】
また、他の改善点(課題2)は、注入装置を作業員の休憩などで一時停止、或いは作業終了乃至装置の休止で所定の時間乃至期間止めることがあるが、これらの間に流路が硬化物で詰まると、さらに困難になり、作業の再開などに支障をきたすことが挙げられる。すなわち、一時停止乃至休止期間などが長時間乃至長期間に亘ると、管内壁に硬化物がこびり付き、また、硬化塊が管を固く塞ぎ、簡単な作業では除去できない。さらに除去が不完全であると、注入装置の運転に支障をきたし、それに拘わらず、無理に運転させると装置部品が損傷乃至破壊して、最悪の場合、装置全体が壊れてしまう恐れがある。
【0015】
これらの課題に対して、上記課題1、すなわち流路の詰まり防止策を講じた工法などが提案されている。上記特許文献1に記載の止水工法は、A液、すなわち親水性ウレタン樹脂に硬化の進行が遅い遅延硬化型の材料を使用して、硬化を遅らせる方法である。
【0016】
また、上記特許文献2に記載の二液混合装置は、止水作業の終了後に、混合機構内に非硬化性液体である第1液のみを一定量導入し、混合機構内の混合液体をノズルから外部に排出させておくものであり、これにより、混合機構内には非硬化性液体である第1液のみが残存するものとなり、混合液体の固化に伴う弊害を防止することが可能となると説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に記載の詰まり防止策は、A液(親水性ウレタン樹脂)に遅延硬化型樹脂を使用して硬化を遅らせる方法を採っているので、使用樹脂が特定の材料に制限され、また止水に時間が掛かる。また、上記特許文献2に記載の詰まり防止策は、止水作業の終了後に非硬化性液体を導入し混合機構内の混合液体をノズルから外部に排出させるので、非硬化性液体を導入する導入口を硬化性液体の流入口よりも高い位置に形成しなければならない。このために装置が複雑になる。また、硬化性液体が混合機構内から完全に排出されず残っていると、詰まりを防止できない。以上から、これらの防止策は作業の一時停止には有効であるが、他の例えば休止期間など(上記課題2)には採用できない。
【0019】
ところで、二液混合注入工法は、一液注入工法に比べて硬化反応が外的要素(予め水を注入孔に注入して置く作業が必要になる。)に依存しないので、品質が安定し、確実に硬化した止水材を生成できる利点がある。しかし一方で、二液(上記A液、B液に相当)は合流乃至混合後に、直ちに、硬化反応が始まり、硬化物によって装置が詰まり易くなる欠点がある。
【0020】
この欠点に対して、これまでの二液混合注入工法に使用される注入装置は、「詰まりが発生し難い構造」にすることが可能との発想の基で設計され製品化されてきている。上記特許文献1、2及び追加した特許文献3〜5に記載の装置は、いずれもこの発想の基に開発されていると思われる。すなわち、いずれの装置も二液の混合と二液の撹拌とが一体構造になっているからである。しかし、作業現場では、硬化物による詰まりが様々なタイミング、態様、箇所で発生し、この硬化物の除去及び管内の清掃に多くの手間と時間が掛かり、メンテナンス性の改善が強く要請されている。
【0021】
そこで、本発明者らは、この要請に応えるために、詰まりの原因を探求したところ、これまでの注入装置は、「詰まりが発生し難い構造」が可能との発想の基で二液の合流部と撹拌・混合部とを一体の構造にしているが、詰まりは、前者の合流部より撹拌・混合部でより多く発生し、撹拌・混合部で発生すると硬化物の除去及び清掃がより面倒で困難になることが判明した。
【0022】
この知見に基づき、二液の混合部と撹拌・混合部とを分離し、詰まりが多く発生する撹拌・混合部をメンテナンスが不要な使い捨ての構造(いわゆる消耗品とする。)にすれば、除去及び清掃作業は混合部のみとなって格段に軽減ができ、一方でまた、発想を転換して、「詰まりが発生し難い構造」から「詰まることを前提」にした設計を採用し、「詰まりが発生した後は容易に硬化物を除去及び清掃し易い構造」にすれば、メンテナンス性がさらにアップし、品質の安定、効果の確実性及び効果の即効性が実現できることに想到し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0023】
なお、止水液注入プラグは、上記特許文献6、7に記載されて既に公知であるが、これららの注入プラグはいずれも止水液を注入孔へ注入するものであって、撹拌・混合する機能はない。
【0024】
そこで、本発明の目的は、二液混合注入工法に用いる止水液混合注入システムにあって、当該混合注入システムを構成する注入具などの部材に硬化物が詰まるのを軽減し、また、それらに硬化物が詰まっても簡単に除去及び清掃ができるようにしてメンテナンス性を改善した止水液混合注入システムを提供することにある。
【0025】
また、本発明の他の目的は、注入作業の一時停止、終了時或いは休止期間などに、簡単な構成により止水液の硬化による止水液混合注入システムを構成する部材に硬化物が詰まるのを防止した止水液混合注入システムを提供することにある。
【0026】
さらに、本発明の他の目的は、止水液を撹拌・混合する部材を使い捨て、いわゆる消耗品にして、同部材のメンテナンスを不要にした止水液混合注入プラグを提供することにある。
【0027】
さらにまた、本発明の他の目的は、止水作業中に止水液混合注入システムを構成する部材に硬化物が詰まっても、その除去及び清掃に掛かるメンテナンス作業を軽微且つ時間短縮を可能にし、全体の止水作業が略迅速に且つ効率よく実行できるセメント系組成体構造物の止水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の止水液混合注入システムは、異なる種類の二止水液をそれぞれ貯留する二つのタンクと、前記各タンクに接続されて前記二止水液をそれぞれ供給する高圧ポンプと、前記高圧ポンプから供給された前記二止水液を合流させて注入する注入具と、前記注入具で合流された止水液を撹拌・混合してセメント系組成体構造物の漏水箇所へ注入する止水液混合注入プラグを備え、
前記注入具は、前記二止水液を合流させる合流ヘッドを有し、
前記止水液注入プラグは、内部に前記二止水液を撹拌・混合するミキサーが内蔵されており、
前記注入具の前記合流ヘッドは、前記止水液混合注入プラグを前記漏水箇所に残したまま分離可能な結合手段で結合されていることを特徴とする。
【0029】
第2の態様の止水液混合注入システムは、第1の態様の止水液混合注入システムおいて、前記各タンクに接続された前記各高圧ポンプは一つの動力源に連結され、また、前記各高圧ポンプのピストン径は同一径乃至径が異なっていることを特徴とする。
【0030】
第3の態様の止水液混合注入システムは、第1または2の態様の止水液混合注入システムおいて、前記結合手段は、前記合流ヘッドに設けたプラグチャックと、前記止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付き結合具とからなることを特徴とする。
【0031】
第4の態様の止水液混合注入システムは、第1〜3のいずれかの態様の止水液混合注入システムおいて、
前記合流ヘッドは、前記二止水液を合流させるヘッド本体と前記プラグチャックが固定されるチャック装着体とからなり、
前記ヘッド本体は、前記各高圧ポンプにそれぞれ接続される第1、第2結合部と前記第1、第2結合部から離れた箇所に位置する合流部とを有し、前記第1、第2結合部と前記合流部とは貫通孔で連通されて第1、第2流路が形成され、
前記チャック装着体は前記合流部に対峙して合流液を通流させる流通孔を有し、
前記ヘッド本体と前記プラグ装着体とは前記二止水液の合流箇所で分離自在な固定手段で結合されていることを特徴とする。
【0032】
第5の態様の止水液混合注入システムは、第1〜4のいずれかの態様の止水液混合注入システムおいて、前記ヘッド本体は、前記第1、第2流路にそれぞれ連通した注入ニップルが装着され、前記各注入ニップルから前記第1、第2流路に非硬化性材が充填されることを特徴とする。
【0033】
第6の態様の止水液混合注入システムは、第1〜5のいずれかの態様の止水液混合注入システムおいて、前記注入具は、前記合流ヘッドと前記各高圧ポンプとの間に逆止弁付きジョイントが介在されて結合されていることを特徴とする。
【0034】
第7の態様の止水液混合注入システムは、第1〜6のいずれかの態様の止水液混合注入システムおいて、前記二止水液は、一方がウレタンプレポリマー、他方が水性エマルションであって、当該水性エマルションは水とヒドロキシル基を有した分子構造の樹脂固形分及びアニオン系界面活性剤で構成されていることを特徴とする。
【0035】
第8の態様の止水液混合注入プラグは、長さ方向の中心軸方向に所定大きさの中空孔を形成した所定長さ及び形状の筒状体からなるプラグ本体を備え、前記プラグ本体は、一端が注入口及び他端が吐出口となり、前記注入口に止水液注入具が着脱自在に結合される結合具が装着され、前記中空孔内にミキサーが収容されていることを特徴とする。
【0036】
第9の態様の止水液混合注入プラグは、第8の態様の止水液混合注入プラグにおいて、前記プラグ本体は前記注入口及び吐出口のいずれか一方に逆止弁が装着され、前記注入口の逆止弁は前記結合具を兼ねていることを特徴とする。
【0037】
第10の態様の止水液混合注入プラグは、第8または9の態様の止水液混合注入プラグにおいて、前記プラグ本体は、内部に前記ミキサーが挿入される大きさの中空孔を有した混合体と、止水液を流通させる中空孔を有し端部が前記吐出口となった吐出体とに分離され、前記混合体と前記吐出体とは、前記混合体の前記中空孔内にミキサーが収納されて着脱自在な結合手段で結合されていことを特徴とする。
【0038】
第11の態様の止水液混合注入プラグは、第8〜10のいずれかの態様の止水液混合注入プラグにおいて、前記ミキサーはスタティックミキサーであることを特徴とする。
【0039】
本発明の第12の態様のセメント系組成体構造物の止水工法は、以下の(a)〜(d)のステップを含むことを特徴とする。
(a)セメント系組成体構造物のひび割れなどの漏水箇所に所定の大きさ深さの注入孔を穿設する穿孔ステップ、
(b)前記注入孔にミキサーを内蔵し二止水液を撹拌・混合する前記請求項8〜11のいずれかに記載の止水液混合注入プラグを挿入し固定するプラグ挿入・固定ステップ、
(c)前記二止水液を合流させて注入する注入具を前記止水液混合注入プラグに結合して、当該止水液混合注入プラグで前記合流液を撹拌・混合して前記漏水箇所へ注入する止水液注入ステップ、
(d)前記(c)ステップ後に、前記止水液混合注入プラグを前記注入孔に残したまま注入具を該止水液混合注入プラグから取外す注入具取外しステップ。
【0040】
第13の態様のセメント系組成体構造物の止水工法は、第12の態様のセメント系組成体構造物の止水工法おいて、
前記(b)ステップの止水液混合注入プラグに、前記請求項8〜11のいずれかに記載の止水液混合注入プラグを用い、前記(d)ステップの後に、前記注入孔に前記吐出体を残して前記混合体を取り外して引き抜き、該引き抜いた前記注入孔の開口へ補修材を充填して補修する補修ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の第1の態様の止水液混合注入システムによれば、注入具の合流ヘッドは止水液混合注入プラグを漏水箇所に残したまま分離可能な結合手段で結合されているので、二止水液の混合時における硬化物による詰まりは、止水液混合注入プラグの除去及び清掃が不要になり、注入具のみの硬化物の除去及び清掃となり、硬化物の除去及び清掃のメンテナンスは大幅に軽減される。
【0042】
第2の態様の止水液混合注入システムによれば、各高圧ポンプは一つの動力源に連結されているので、小型、コンパクトにでき、また、各高圧ポンプのピストン径は同一径乃至径が異なっているので、止水液吐出量の調節ができるよういになる。
【0043】
第3の態様の止水液混合注入システムによれば、結合手段は合流ヘッドに設けたプラグチャックと、止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付き結合具とで構成され、結合具はチャックとの結合及び逆流防止を兼ねるので、構成が簡素になる。
【0044】
第4の態様の止水液混合注入システムによれば、注入具が二止水液を合流させるヘッド本体とプラグチャックが固定されるチャック装着体とからなり、ヘッド本体とチャック装着とは二止水液の合流箇所で分離・分解自在な固定手段で結合されているので、注入具が詰まった際に、簡単に分離・分解して、硬化物の除去及び注入具の清掃ができる。
【0045】
第5の態様の止水液混合注入システムによれば、注入作業の一時停止、終了時或いは休止期間などに、注入ニップルから第1、第2流路に非硬化性材が充填することによって、簡単な構成で混合液の硬化による流路の詰まりを防止できる。
【0046】
第6の態様の止水液混合注入システムによれば、注入具は、合流ヘッドと各高圧ポンプとの間に逆止弁付きジョイントが介在されて結合されているので、二止水液が逆流して高圧ポンプ側へ流れ込むことを防止できる。
【0047】
第7の態様の止水液混合注入システムによれば、二止水液は、一方が液状のウレタンプレポリマー、他方が水性エマルションであって、当該水性エマルションは水とヒドロキシル基を有した分子構造の樹脂固形分及びアニオン系界面活性剤で構成されているので、二止水液が反応して分解し難い硬化物を形成し、止水効果を速やかに発揮すると共に、より長期間に亘って安定した止水効果を持続できる。
【0048】
第8の態様の止水液混合注入プラグによれば、止水液混合注入プラグ及びこのプラグに結合して止水液を注入する止水液注入具が止水液硬化物によって詰まり、その硬化物の除去乃至清掃などのメンテナンスが容易乃至不要になる。すなわち、まず、止水液混合注入プラグと止水液注入具とが着脱自在な結合手段により結合されるので、硬化物が詰まった際に、両者を分離して、硬化物の除去乃至部品の清掃が可能になる。また、プラグ本体内にミキサーが収容されているので、ミキサーにより撹拌・混合するので、止水液注入具に混合機能を持たせる必要がなくなり、止水液注入具を合流のみにできる、さらに、止水液混合注入プラグを消耗品にできるので、メンテナンスが不要になる。
【0049】
本発明の第9の態様の止水液混合注入プラグによれば、止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付き結合具を有し、この結合具はチャックとの結合及び逆流防止を兼ねるので、構成が簡素になる。
【0050】
第10の態様の止水液混合注入プラグによれば、プラグ本体が混合体と吐出体とに分離されているので、各々で機能が分担され、付属品の装着、組立てが簡単になる。
【0051】
第11の態様の止水液混合注入プラグによれば、ミキサーにスタティックミキサーを使用することによって、安価に且つ効率よく二止水液を撹拌・混合できるようになる。
【0052】
本発明の第12の態様のセメント系組成体構造物の止水工法によれば、止水液注入装置や注入具に硬化物が詰まっても、それらの除去及びそれらの止水液注入装置、注入具の清掃に掛かるメンテナンス作業が軽微で作業時間の短縮が可能になり、全体の止水作業を略迅速に且つ効率よく実行できるようになる。
【0053】
第13の態様のセメント系組成体構造物の止水工法によれば、注入孔内は止水液混合注入プラグの一部、すなわち、吐出体のみが残り、セメント系組成体構造物よりも内部側には止水液の硬化物が充填されているため、漏水することがない。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための止水液混合注入システム、止止水液混合注入プラグ及びセメント系組成体構造物の止水工法を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0056】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る止水液混合注入システムの概要を説明する。なお、
図1は本発明の実施形態に係る止水液混合注入システムの平面図である。
【0057】
本発明の実施形態に係る止水液混合注入システム10は、異なる二種類のC液及びD液(以下、二液、或いは止水液ともいう。)をそれぞれ貯留する二つのタンクT
1、T
2と、これらのタンクに接続された高圧ポンプP
1、P
2と、この高圧ポンプから高圧ホースH
1、H
2を介して供給されたC液とD液を合流させて注入する注入具10Aと、この注入具からの合流液を撹拌・混合して漏水・補修箇所に注入する止水液混合注入プラグ(以下、注入プラグと略称することがある。)34を備えた、いわゆる二液混合注入工法に使用する止水液混合注入システムである。C液及びD液は、一方がウレタンプレポリマー、他方が水性エマルションであって、これらの液の混合により硬化した止水材が生成される。なお、各高圧ポンプP
1、P
2は一つの動力源(モーター)に連結されて運転するものを使用するのが好ましい、これによりポンプ回りの構成がコンパクトになる。
【0058】
注入具10Aは、止水液注入時に止水液混合注入プラグ34に結合されて当該注入プラグ内のミキサーで撹拌・混合して漏水・補修箇所に注入し、注入後は止水液混合注入プラグ34をこの補修箇所に残して分離される構成となっている。この構成によれば、注入具は注入時に注入プラグに結合されてC液及びD液をミキサーで撹拌・混合して漏水・補修箇所に注入し、注入後は注入プラグをこの補修箇所に残して分離されるので、二液混合時における硬化物による装置の詰まりは、注入具のみ側の硬化物の除去及び清掃となり、注入プラグの除去及び清掃対応が不要になるので、硬化物の除去及び清掃のメンテナンスを大幅に軽減できる。
【0059】
以下、この止水液混合注入システム10を構成する個々の部材を説明する。止水液混合注入システム10は、二つのタンクT
1、T
2、2台の高圧ポンプP
1、P
2、注入具10Aを備え、注入具10Aは、止水液の注入時毎に止水液混合注入プラグ34に結合される。これらのうち、二つのタンクT
1、T
2は、例えば20〜30リットルの容量を有し、金属材乃至合成樹脂材で形成され、また、各高圧ポンプP
1、P
2は、例えば、最高吐出力700kg/cm
2、注入時の吐出圧力は100kg/cm
2前後で使用されるものであり、これらのポンプは電源(100V)に接続されて、コントローラによって制御される。なお、2台の高圧ポンプP
1、P
2は、2個のピストンを使用し1個の動力源で運転するものを使用するのが好ましい。
【0060】
なお、各高圧ポンプは一つの動力源で運転されるので、C液、D液の吐出量の調節が必要な場合は、各高圧ポンプのピストン径を変えたものを用いて調節する。ピストン径の変更は簡単にでき、吐出量の調節は従来技術で行われている複雑な制御装置などが不要になる。この止水液混合注入システム10は、小型、コンパクト化され、狭い場所での作業性がよいなどの特徴を備えたものになる。これらの特徴は以下の説明からも明らかになる。
【0062】
この注入具10Aは、合流ヘッド11と、付属部品16〜33とを備えており、合流ヘッド11は、ヘッド本体12とチャック装着体15とで構成されている。ヘッド本体12は、載置面に載置したときに所定高さで立直し比較的肉厚な板状体からなる頭片部12Aと、この頭片部の略中央から略水平に延設し比較的肉厚な板状体からなる胴片部12Bとを有し、頭片部12Aと胴片部12Bとは側面視で略横T字型のブロック(
図4B参照)からなり、金属材乃至硬質合成樹脂材で形成されている。これらの寸法は、任意でよいが、頭片部12Aの肉厚は、例えば15mm、高さは54mm、胴片部12Bの肉厚は24mm、長さ54mmである。
【0063】
頭片部12Aは、前壁面12a、すなわち、胴片部12Bに対して前方の面を平坦にし、
図4Dに示したように、この平坦な前壁面12aの略中央部に二液が合流する合流孔12
0と、この合流孔の周囲にリング状パッキンが嵌め込まれる環状溝12
1と、この環状溝の外周に複数(4個)のネジ穴12
2が形成されている。各ネジ穴12
2は、所定の直径及び深さの穴であってその内周壁に雌ネジが刻設されている。これらのネジ穴には、チャック装着体15を挿通したボルト17(
図3参照)が羅合される。また、合流孔12
0は、後記する2つの流路13a、13bが合流する合流部となっている(
図5参照)。合流孔12
0は流路を構成する貫通孔の径より若干大きくするのが好ましい。大きくすることによって、流路の清掃が容易になる。
【0064】
また、胴片部12Bは、所定大きさの下壁面12b及び上壁面12cと、これら下上壁面の左右の側壁面と、後壁面12d(
図4A参照)とを有し、後壁面12dは、両端に逆止弁付きジョイント23A、23B(
図3参照)が結合される2つの結合部12
3、12
4(
図4C参照)が形成され、これらの間は後壁面に凹んだU字溝が形成されている。なお、2つの結合部12
3、12
4は、特許請求の範囲で第1、第2結合部と表記しており、以下、第1、第2結合部ともいう。
【0065】
第1、第2結合部12
3、12
4は、それぞれ逆止弁付きジョイント23A、23Bが連結される所定の径及び深さで内周壁に雌ネジが刻設されたネジ穴からなり、これらのネジ穴の奥に開口(図示省略)が形成されている。なお、各結合部12
3、12
4と逆止弁付きジョイントとは、径変換部材、例えば異径ニップルで結合される。
【0066】
これらの第1、第2結合部12
3、12
4の各ネジ穴の開口と前壁面12aの合流孔12
0とは、それぞれ横T字型のブロックを直線状に貫通する貫通孔で挿通し、これらの貫通孔は二つの流路13a、13b(
図5参照)を形成している。なお、2つの流路13a、13bは、特許請求の範囲では第1、第2流路と表記しており、以下、第1、第2流路ともいう。
【0067】
第1、第2流路13a、13bは、
図5に示したように、合流孔12
0から第1、第2結合部12
3、12
4へ向かって略V字型となっている。このV字型流路により、第1、第2結合部から流体が流れ込んだときに、合流孔に集中して流れ込み、ここで効率よく合流される。また、各流路(貫通孔)は直線状になっているので、流体抵抗は折曲したものと比べて低減される。さらに、各貫通孔(流路)は合流孔12
0から内部を覗き込むことができ、孔内壁に硬化物が付着していると、その付着状況を簡単に発見できて、簡単に除去及び清掃ができる。また貫通孔が硬化塊で塞がれているときも簡単に発見できて、しかも簡単に除去、清掃ができる。寸法は任意でよいが、V字角は例えば60°、各流路(貫通孔)の長さは55mm、各貫通孔の径は7.0mmである。
【0068】
以上説明したように、第1、第2流路13a、13bは、短長な直線状の貫通孔で形成されているので、孔内の状況が簡単に目視できて、付着した硬化物乃至硬化塊を容易に除去し、清掃ができる。また、前壁面12aの合流孔12
0及びその付近は、硬化物で詰まり、汚れ易くなるが、チャック装着体15とは分離自在な結合手段で結合されているので、詰まり物の除去、結合部分の清掃が簡単に行え、メンテナンス性が大幅に改善される。
【0069】
また、胴片部12Bの上壁面12cには、
図4Aに示したように、第1、第2結合部12
3、12
4に近接した箇所に、それぞれ所定大きさのネジ穴12
5、12
6が穿設されて、これらのネジ穴は第1、第2流路13a、13bを構成する各貫通孔に連通している。これらのネジ穴12
5、12
6には、それぞれグリスニップル14(
図3参照)が装着される。これらのグリスニップル14は、内部に逆止弁が内蔵されており、外部からグリスが注入されるが、各流路を流れる液体が外部へ流出しない。なお、このニップルは既に公知であり、汎用品を使用するので、詳細な説明は省略する。
【0070】
各グリスニップル14には、図示を省略したグリス注入具を結合して、第1、第2流路13a、13bにグリスが充填される。第1、第2流路13a、13bへのグリスの充填により、各流路内は残留する液体がグリスにより置換されて、各流路が硬化物で詰まることがない。このグリスの充填は、装置を長時間乃至長期間休止する際に行う。これにより、装置の詰まりは防止でき、再起動は何ら支障なく実施できる。
【0071】
この装置の詰まり防止は、装置を改造することなく、合流ヘッドにグリスニップルを装着するだけで実現できるので、極めて簡単で安価になる。なお、充填材は、グリスに限定するものでなく、非硬化性の材料であればよく、例えばオイルでもよい。
【0073】
チャック装着体15は、略正方形状の前後壁面15a、15bと、外周壁面15c〜15fを有し、所定肉厚の直方体からなり、金属材乃至硬質合成樹脂材で形成されている。寸法は任意でよいが、前後壁面の長さは、例えば54mm、肉厚は15mmである。なお、このチャック装着体15は、頭片部12Aの前壁面12aと同じ大きさになっている。
【0074】
前壁面15aは、中央部に合流液を流通させる貫通孔からなる流通孔15
0と、その周囲に複数のボルト挿通孔15
2が形成されている(
図6C参照)。また、後壁面15bは、中央部に流通孔15
0に挿通した孔口15
1、この孔口の周辺にパッキン収容溝15
3、及びこの収容溝の外周囲にボルト挿通孔15
2の孔口15
4が形成されている。流通孔15
0と孔口15
1とは、流通孔15
0の径を孔口15
1より大きくして、流通孔15
0の入り口から奥に向かって内壁に雌ネジが刻設されて、径変換部材18(
図3参照)が結合される。また、ボルト挿通孔15
2は、ボルト頭部が嵌まり込む形状及び大きさにするのが好ましい。ボルトは、六角穴付きボルト17(
図3参照)が好ましい。
【0075】
このチャック装着体15は、ヘッド本体12に4本の六角穴付きボルト17により、ネジ結合により固定される。この固定により、両部品を分離できるので、硬化物が詰まったときには、簡単に分離・分解して、硬化物の除去・部品の清掃ができる。なお、この分離箇所は、二止水液の合流箇所であって、硬化物で詰まり易く、汚れやすくなっている。
【0076】
次に、
図7、
図8を参照して逆止弁付きジョイントを説明する。なお、
図7は内部の弁機構が見えるようにした逆止弁付きジョイントを示し、
図7Aは常時・逆流時の止水液の流れを説明する側面図、
図7Bは注入時に止水液を説明する側面図、
図8は
図7の逆止弁付きジョイントの筒状ケースを示し、
図8Aは横側面図。
図8Bは
図8Aの右側面図、
図8Cは
図8Aの左側の側面図である。なお、逆止弁付きジョイント23A、23Bは、同じ構造を有しているので、一方のジョイント23Aを用いてその詳細な構成を説明する。
【0077】
逆止弁付きジョイント23Aは、
図7に示したように、長さ方向の中心軸に所定大きさの中空孔25を形成した所定長さの筒状ケース24と、この中空孔25内に収容される弁機構26とを有している。筒状ケース24は、一方端に一端結合部24a、他方端に他端結合部24b(
図8参照)を有し、金属材乃至硬質樹脂材で形成されている。
【0078】
一端結合部24aは、中空孔25の端部にあって、所定径及び深さのネジ孔で形成されている。このネジ孔には異径ニップル22(
図3参照)の一端がネジ結合される。他端結合部24bは、筒状ケース24の端部を縮径して突出させ、この突出部の外周囲に雄ネジを刻設されている。この突出部は、切換弁31A(
図3参照)に結合される。
【0079】
中空孔25は、孔径φ1の小径孔25
1、孔径φ2の中径孔25
2、孔径φ3の大径孔25
3、孔径φ4の結合孔25
4とからなり、それらの孔径φ1〜φ3の大きさは、φ1<φ2<φ3<φ4となっている。中径孔25
2及び大径孔2
3には、
図7に示したように、球形ボール27、伸長コイルバネ28及び止め具29が収容される。なお、大径孔25
3の内壁には雌ネジが刻設されている。
【0080】
球形ボール27は金属材からなり、その径はφ2より若干小さく、孔径φ1を塞ぐ大きさになっている。なお、この球形ボール27は小径孔25
1の一端、すなわち、小径孔25
1と中径孔25
2との境目を開閉する弁となっている。また、伸長コイルバネ28は、その径をφ2より若干小さくして、バネ力により球形ボール27を小径孔25
1の孔口を塞ぐように押動する。さらに、止め具29は、中心に貫通孔及び外周に雄ネジが刻設され、大径孔25
3にネジ結合されてコイルバネ28の抜け止めをする。
【0081】
なお、止め具29は大径孔25
3に結合されても、中心が貫通しているので、液体の流通の支障にならない。球形ボール27、伸長コイルバネ28及び止め具29で弁機構26を構成している。逆止弁付きジョイント23Aの寸法は、任意でよいが、長さは例えば100mm、φ1は5.0mm、φ4は12mmである。
【0082】
この逆止弁付きジョイント23Aは、二止水液(C液、D液のいずれか一方)が高圧ポンプから圧送されるときは、
図7Bに示したように、弁機構26の弁が開き、矢印(注入時、止水液吐出方向)へ送られる。一方、切換弁19(
図3参照)が閉られると、圧送されていた液が逆流される。このとき、
図7Aに示したように、弁機構26の弁が閉じられて、逆流された液体がストップされて、高圧ホース、高圧ポンプへ送られることがない。その結果、逆流液に、硬化物が含まれていても、高圧ポンプへの逆流を阻止し、装置の故障を未然に防止できる。
【0083】
他方の逆止弁付きジョイント23Bも逆止弁付きジョイント23Aと同じ構造を有しており、いずれも、市販のジョイントとはサイズが大きく、しかも弁機構26を構成する球形ボール27、伸長コイルバネ28及び止め具29の取り外しができるようになっている。したがって、硬化物が詰まったとき、取り外し、分解して簡単に除去、清掃ができる。
【0084】
逆止弁付きジョイント23A、23Bに代えて、公知の逆止弁を用いてもよい。これらの逆止弁を合流ヘッドに組込んでもよい。しかし、組込むと合流ヘッドが大型、複雑になり、また、詰まったときに取外し、分解・洗浄が面倒になる。このため、上記のように、大型にして、合流ヘッドと別体にした方がよい。
【0085】
C液及びD液は、一方が液状のウレタンプレポリマーであり、他方が水性エマルションである。ウレタンプレポリマーは、遅延硬化型のウレタン樹脂を使用する。この樹脂は、ウレタン樹脂と上水道水の総重量に対してウレタン樹脂を10重量%の濃度で添加したときの硬化時間が常温(20℃)で30分以上となるものである。
【0086】
また、水性エマルションは、分散媒としての水と、分子末端にヒドロキシル基(水酸基、OH基)を有した分子構造(分子式)の樹脂固形分とアニオン系界面活性剤を有したものを用いる。
【0087】
この組成の水性エマルションにより、この水性エマルションがウレタンプレポリマーと混合されると、化学反応によりウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水性エマルションの樹脂固形分のヒドロキシル基とが化学的に結合して一体化して、これにより、分解し難い硬化物、すなわち止水材が形成される。この止水材により、より長期間に亘って高い耐久性が得られる。また、ウレタンプレポリマー及び樹脂固形分の大半が上記の反応で費消されるので、水との反応で個別形成されるポリウレタン樹脂の硬化物の量は、少なくなり、また、同様に水性エマルションの樹脂固形分同士の融着で個別形成される樹脂後継分の硬化物も少なくなる。そのため、これらの界面の大きさも小さくなって、このことも、止水材の耐久性の向上に有効に寄与する。
【0088】
なお、この水性エマルションによれば、従来の水性エマルション、例えば、樹脂固形分としてヒドロキシル基を有しない分子構造のアクリル樹脂をアニオン系またはノ二オン系の界面活性剤で水に乳化させたもの、或いは、樹脂固形分としてヒドロキシル基を有しない分子構造のアクリル樹脂及び石油樹脂を界面活性剤としてのポリビニルアルコールで水に乳化させたものが抱える課題、例えば、硬化形成された止水材がより長期間に亘って安定した止水効果が得られない、また止水効果を速やかに得難いなどの課題を解決できる。
【0089】
水性エマルションは、その樹脂固形分の重量平均分子量を1000よりも大きく、より望ましくは100000以上が好ましい。これにより、より安定した硬化物(止水材)が生成される。また、架橋反応(重合反応)を円滑に行うために、樹脂固形分の重量平均分子量は2000000以下、望ましくは1500000以下が好ましい。
【0090】
さらに、樹脂固形分の水酸基価は1〜100の範囲、望ましくは20〜80の範囲が好ましい。この範囲であると、樹脂固形分は比較的多くのヒドロキシル基を有している。そのため、このヒドロキシル基は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と速やかに化学的に結合して一体化され、分解し難い硬化物(止水材)が形成される。水性エマルションとウレタンプレポリマーとの配合比は、重量比で100:21〜100:100の範囲から選択される。
なお、C液及びD液は、上記のウレタンプレポリマー及び水性エマルションに限定するものではなく、他の種類のものを用いてもよい。
【0091】
ここで、
図3を参照して、注入具10Aの付属部品及び止水液混合注入システムの組みたてを説明する。なお、
図3は
図2の注入具の分解平面図である。
【0092】
注入具10Aには、2個の逆止弁付きジョイント23A、23Bの他に複数個の付属部品が装着される。先ず、ヘッド本体12には、2個のグリスニップル14、2個の径変換部材(継手)22、六角ナット30、2個のハンドル付き切換弁(以下、切換弁といい、またこれは高圧コックとも言われている。)31A、31B、及び高圧ホース結合金具33が装着され、また、チャック装着体15には、リングパッキン16、六角穴付ボルト17、2個の径変換部材(継手)18、20、1個の切換弁19、及びプラグチャック21が装着される。なお、このプラグチャックと後記する止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付きニップルとで、止水液混合注入プラグを漏水箇所に残したまま分離可能な結合手段を構成する。
【0093】
これらの部品、すなわち、グリスニップル、径変換部材(継手)、六角ナット、切換弁、高圧ホース結合金具、及びリングパッキン、六角穴付ボルト、チャックは、いずれも既に公知の汎用品であって、詳細な説明を省略する。また、3個の切換弁のうち、一方の切換弁31A、31Bは作業停止用、他方の切換弁19は注入用に使用される。なお、これらの切換弁は、ハンドルを回すことによって、内部の弁が開閉されるものである。
【0094】
止水液混合注入システム10の組立ては、以下により、行う。
先ず、注入具10Aを組立てる。この組立ては、ヘッド本体12とチャック装着体15との間にリングパッキン16を介在して六角穴付ボルト17でネジ止め固定して行う。
【0095】
組立てた注入具10Aは、先ず、ヘッド本体12に径変換部材32を介在して各逆流防止弁付きジョイント23A、23Bを結合し、さらに六角ナット30、30を介してそれぞれ切換弁31A、31B、径変換部材32及び高圧ホース結合金具33、33に結合する。次いで、これらの高圧ホース結合金具33、33と各高圧ポンプP
1、P
2はそれぞれ高圧ホースH
1、H
2で接続する。
【0096】
一方、チャック装着体15には、径変換部材18を介在して切換弁19、径変換部材20を介して、プラグチャック21を結合して、組立てを完了する。組立てた止水液混合注入システム10は、すべての部品、すなわち、注入具10A及び逆流防止弁付きジョイント23A、23B、切換弁31A、31B、19、及びプラグチャック21などは径変換部材32などを介してネジ結合により、連結・結合されている。
【0097】
したがって、止水液混合注入システムは硬化物で詰まったとき、個々の部品のネジ結合を解くことによって、いずれの部品をも分離・分解が可能になる。
すなわち、この構造は、従来の「詰まりが発生し難い構造」から「詰まることを前提」に、「詰まりが発生した後は容易に硬化物を除去・清掃し易い構造」としたものであって、この構成により、メンテナンス性がアップし、品質の安定、効果の確実性及び効果の即効性がある。また、後記するように、注入プラグは一回限りの使用、いわゆる使い捨て、消耗品としたので、装置のメンテナンスは、合流させる注入具のみとなり、しかも、この注入具は前記したように簡単に分離・分解ができて、メンテナンスが容易であるので、装置のメンテナンス性は格段にアップする。この止水液混合注入システム10は、止水液混合注入プラグ34を消耗品として使用する。
【0098】
以下、
図9、
図10を参照して、この注入プラグを説明する。なお、
図9は止水液混合注入プラグの側面図、
図10は
図9の止水液混合注入プラグの部品を示し、
図10Aはプラグ本体の側面図、
図10Bは吐出体の側面図、
図10Cはニップルの側面図、
図10Dは拡張スリーブ及びワッシャーの斜視図、
図10Eはミキサーの斜視図である。
【0099】
注入プラグ(止水液混合注入プラグの略称)34は、端部に注入口及び内部にミキサー36が挿入される大きさの中空孔35
0を有する混合体35と、中空孔35
0に連通し止水液を流通させる中空孔を有し端部が吐出口となった吐出体38と、付属部品37、39A、39B、40A、40Bとで構成されている。
【0100】
混合体35は、長さ方向の中心軸に所定大きさの中空孔35
0を形成した所定長さのパイプ材からなり、中空孔35
0はミキサーを収納できる径及び長さであって、一端にニップルが結合されるニップル結合部35a、他端に吐出体が結合されるノズル結合部35bを有し、外形が円形乃至多角形(6角形)であって、金属材乃至硬質合成樹脂材で形成されている。一方のニップル結合部35aは、中空孔35
0の端部の内壁に雌ネジを刻設したものであり、他方のノズル結合部35bは中空孔35
0の端部の内壁に雌ネジを刻設したものである。寸法は、任意でよいが、長さは例えば100mm、外形直径は10mm、中空孔径は5mmである。
【0101】
ミキサー36は、螺旋状の翼を設けたスクリュー棒、例えば180°回転する螺旋状の案内部が90°度にずらして積層した形状の棒状体からなり、プラスチックで形成されている(
図10E参照)。これはスタティックミキサーとも呼ばれている。なお、このミキサーはこのスクリュー棒に限定されるものではなく他のもの、例えば、単に凹凸を付けた棒状体であってもよい。
【0102】
吐出体38は、長さ方向の中心軸に所定大きさの中空孔38
0を形成し、一端に外方へ膨出した鍔部38
2とこの鍔部から所定長さ延設した筒部の外周に雄ネジ部38
1が刻設された筒状体であって、金属材乃至硬質合成樹脂材で形成されている。筒状部には2個の拡張スリーブ39A、39Bが挿着され、また雄ネジ部38
1には混合体35が羅合され、この混合体を時計方向へ回すことによって、各拡張スリーブが圧縮・膨大されて、注入孔101(
図12参照)内壁に圧接されて注入プラグの抜け止め、いわゆるアンカー機能を果たす。なお、鍔部38
2は拡張スリーブなどの抜け止めストッパーとなる。寸法は、長さは例えば45mm、中空孔の径は4mmである。
【0103】
付属部品は、ニップル37、2個の拡張スリーブ39A、39B及び2枚のワッシャー40A、40Bとなっている。先ず、ニップル37は、内部に逆止弁が内蔵され、外殻は工具を装着して混合体35を回動できるように多角形(例えば六角形)に形成されている(
図10C参照)。このニップル37は、合流ヘッドに設けたプラグチャックとの結合及び逆流防止を兼ねたものとなる。このニップルは、逆止弁が内蔵され、プラグチャックに結合できる結合具であれば上記のものに限定されるものでない。なお、特許請求の範囲では、ニップルを結合具と表記している。また、2個の拡張スリーブ39A、39Bは、同じ形状の弾性体、例えばゴムからなり、長さ方向の中心に貫通孔、外周面に滑り止め凹凸が設けられている。外径は、パイプ部材の径と同じになっている。さらに、2枚のワッシャー40A、40Bは、同じ形状の金属板からなり、長さ方向の中心に貫通孔が形成されている。
【0104】
止水液混合注入プラグ34の組立ては、先ず、混合体35及び吐出体38を組立てる。混合体35の組立ては、ニップル結合部35aにニップル37をネジ止め固定し、他端のノズル結合部35b側からスタティックミキサー36を挿入して置く。また、吐出体38の組立ては、筒状体の雄ネジ部38
1に、先ず、拡張スリーブ39B、次いで順にワッシャー40B、拡張スリーブ39A、ワッシャー40Aを挿入する。これらの拡張スリーブ及びワッシャーを装着した吐出体38は、筒状体の雄ネジ部38
1部分がこれらの部品から飛び出している。
【0105】
次いで、組立てた混合体35を吐出体38に連結する。この連結は、ノズル結合部35bを吐出体38の筒状体の雄ネジ部38
1に結合する。この連結は、2個の拡張スリーブ39A、39Bは圧縮・膨大されていない状体での結合となっている。止水液混合注入プラグ34は、注入口、すなわちニップル37から止水液が注入され、ミキサーで撹拌・混合されて、吐出体38の吐出口から吐出、すなわち噴射される。なお、注入された止水液は逆流することがあるが、ニップルには逆止弁が内蔵されているので、外へ出ることはない。
【0106】
この注入プラグによれば、使い捨てにできるので、メンテナンスが不要になる。すなわち、まず、注入プラグと注入具とが分離自在な結合手段により結合されるので、硬化物が詰まった際に、両者を分離して、注入具側のみの硬化物の除去乃至部品の清掃でよくなる。また、プラグ本体内にミキサーが収容されているので、ミキサーにより撹拌・混合するので、注入器具に混合機能を持たせる必要がなくなり、注入具は合流のみにできる。なお、結合手段は、合流ヘッドに設けたプラグチャックと、止水液混合注入プラグの注入口に装着した逆止弁付きニップルとで構成され、ニップルはチャックとの結合及び逆流防止を兼ねるので、構成が簡素になる。
【0107】
図11を参照して止水液混合注入プラグの変形例を説明する。なお、
図11は変形例に係る止水液混合注入プラグの側面図である。止水液混合注入プラグ34は、上記構成のものに限定されるものでなく、ミキサー内蔵型であれば任意に変形したものであってもよい。
【0108】
図11に示した止水液混合注入プラグ34Aは、混合体35Aの注入口にニップル41を装着し、注入口側に外周溝42を刻設し、また、混合体35Aの吐出口に逆流防止弁43を固定したものである。この注入プラグによれば、止水液混合注入プラグ34と同じ作用効果を奏し、さらに、注入孔への止水液の注入後に混合体35Aの先端をハンマーで叩くことによって、先端部が外周溝42から折れる。これにより、止水液混合注入プラグ34のように混合体35の全体を注入孔から引き抜かなくてもよくなる。
【0109】
また、図示を省略するがさらに変形して、以下の構成にしてもよい。例えば、混合体と吐出体と二つに分けずに1本のパイプ材で形成する。すなわち、長さ方向の中心軸方向に所定大きさの中空孔を形成した所定長さ及び形状の筒状体からなるプラグ本体を備え、プラグ本体は、一端が注入口及び他端が吐出口となり、前記注入口に止水液注入具が着脱自在に結合される結合具が装着され、前記中空孔内にミキサーが収容されているようにする。その際、プラグ本体は、注入口及び吐出口のいずれか一方に逆止弁を装着する。以下の構成は上記の注入プラグと同じである。
【0110】
図12、
図13を参照して、止水液混合注入システムの使用したセメント系組成体構造物の止水工法及び同止水液混合注入システムの休止時等におけるメンテナンスを説明する。なお、
図12はセメント系組成体構造物の止水工法コンクリート構造物における漏水箇所の概略断面図、
図13は止水液混合注入システムを使用して漏水箇所を止水するステップを示し、
図13Aは注入具を止水液混合注入プラグに結合する概略図、
図13Bは止水液混合注入プラグに止水液を注入する概略図、
図13Cは注入終了状態の概略図、
図13Dは混合体を取外した状態の概略図である。
【0111】
ア セメント系組成体構造物の止水工法
セメント系組成体構造物の止水工法は、止水液混合注入システム及び注入プラグを用い、セメント系組成体構造物(以下、コンクリート製構造物ともいう。)のひび割れ漏水箇所(以下、漏水箇所という。)を止水する工法であって、以下の(a)〜(e)のステップ(工程)を含んでいる。
(a)穿孔ステップ
コンクリート製構造物100の漏水箇所100aに繋がるように、所定大きさ及び深さの注入孔101を穿孔する。
【0112】
(b)注入プラグ挿入・固定ステップ
この注入孔101に止水液混合注入プラグ34をニップル37が構造物100の壁面ら飛び出させて状態にして挿入し、ニップル37に工具(図示省略)を結合して、混合体35を時計方向へ回して、拡張スリーブ39A、39Bを膨らませて、注入孔101内に止水液混合注入プラグ34を取付け・固定する。なお、
図12Aでは注入孔は1個であるが、複数個の注入孔を穿孔して、それぞれの注入孔に止水液混合注入プラグ34を取付け・固定する。複数の注入孔は、例えば、水平方向及び鉛直方向の各方向に対して所定間隔、例えば200mm等の間隔をあけて穿孔する。
【0113】
(c)止水液注入ステップ
漏水箇所100aに取付け・固定した複数本の注入プラグのうち、先ず、1本目の止水液混合注入プラグ34に、止水液混合注入システム10の注入具10Aのプラグチャック21を結合し、注入孔101へ止水液を注入する。符号abは止水液を示している、なお、この止水液の注入は、止水液混合注入システム10の高圧ポンプP
1、P
2を作動させ、切換弁19のハンドル回して、弁を開き、C液、D液を貯留したタンクT
1、T
2からこれらの止水液を合流ヘッド11へ所定の圧力で圧送し、止水液混合注入プラグ34でこれらを撹拌・混合して注入する。
【0114】
この注入された混合物は、短時間で硬化する。すなわち、C液及びD液のうち、一方のウレタンプレポリマーの発泡硬化に必要な水およびヒドロキシル基は水性エマルションから供給され、他方、この供給により、他方の水性エマルションからは水が消費されて、かつ水性エマルション中のヒドロキシル基を有した分子構造の樹脂固形分とウレタンプレポリマー中のイソシアネート基が反応して、水性エマルションは硬化する。よって、ウレタンプレポリマーの発泡硬化が比較的短時間でなされるだけでなく、水性エマルションの硬化も比較的短時間でなされる。なお、高圧ポンプP
1、P
2は、最高700kg/cm
2の吐出力を保有し、注入孔へは100kg/cm
2で注入するが、一般的なコンクリートの圧縮強度は21N/mm
2で、一時的に圧力を上げ過ぎるとコンクリートが割れてしまうことがあるが、割れてもそこへ止水液が注入されるので何ら問題はない。
【0115】
(d)注入具取外しステップ
注入終了後は、切換弁19を閉じて止水液の吐出を止め、注入具10Aを止水液混合注入プラグ34から取外す。この取り外しは、止水液混合注入プラグ34を注入孔101内に残したままにしてニップル37から離脱させる。次いで、止水液混合注入プラグ34の混合体35を工具により、上記アと反対の反時計方向に回動して、吐出体38を注入孔101内に残したまま抜き去る。吐出体38を注入孔内に残しても、吐出体は短長・小部品でしかも孔内は止水液が注入され、硬化しているので、この箇所から漏水することがない。
【0116】
(e)注入孔口塞ぎステップ
混合体35を抜き去った注入孔101は、その入り口に、モルタル等の適宜な充填材(補修材)を充填等して孔の無い状態に仕上げる。これにより、1本目の注入孔の補修を終了する。以後、同様の方法で、順次、漏水箇所に取付けた複数本の注入プラグに止水液を注入して、水漏れ箇所の止水を行う。
【0117】
この一連の止水作業にあって、仮に止水液混合注入システムを構成する部材に詰まりが発生しても、止水液混合注入プラグ34の対応が不要であり、注入具10Aだけの対応となり、しかも、この注入具の部品は前記したように分離・分解が簡単にできるので、硬化物の除去及び清掃を素早く且つ簡単に行うことができ、止水作業の中断は最小限にできる。すなわち、注入具に硬化物が詰まっても、その除去及びそれらの注入具の清掃に掛かるメンテナンス作業が軽微で作業時間の短縮が可能になり、全体の止水作業を略迅速に且つ効率よく実行できる。また、注入孔内には注入プラグの一部、すなわち、すなわち、吐出体のみが残り、セメント系組成体構造物よりも内部側には止水液の硬化物が充填されているため、漏水することがない。
【0118】
イ 一時停止、終了、休止期間における止水液混合注入システムのメンテナンス
止水液混合注入システムは、一時停止、終了、休止などで長時間乃至長い期間止めることがあるが、この場合、合流ヘッド11の各グリスニップル14には、図示を省略したグリス注入具を結合して、第1、第2流路13a、13bにグリスを充填する。第1、第2流路13a、13bへのグリスの充填により、各流路内は残留する液体がグリスにより置換されて、各流路が硬化物で詰まることがない。
【0119】
この止水液混合注入システムの再起動の際は、起動により各流路に充填されているグリスは止水液によってそのまま押し出され、続いて、止水液が注入されるので、止水の支障になることはない。この一時停止、終了、休止における止水液混合注入システムの詰まりは、簡単な注入具の変更で、容易に実施できる。