(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気調和対象の室内空間に面する開口部を有して前記室内空間の床に配設され、床下の空気供給用通路を通じて供給される調和空気を前記開口部から室内空間に吹出す吹出口装置を複数備える空気調和システムにおいて、
前記各吹出口装置の開口部からの調和空気の吹出状態を調整する制御部を備え、
前記吹出口装置が、
前記開口部に通じる吹出口装置内部と前記空気供給用通路との間で開閉可能として配設され、空気供給用通路から吹出口装置内部へ向かう調和空気の流量を調整する流量調整部と、
前記吹出口装置内部に配設され、所定の制御に基づき作動して前記開口部へ向けて調和空気の送風を実行する送風用ファンと、
室内空間での使用者の入力操作を受けて、前記制御部に調和空気の吹出状態変更指示を送る操作部とを有してなり、
前記制御部が、床の複数の吹出口装置に対し同様の吹出状態調整制御をまとめて実行する中央制御部と、吹出口装置ごとに設けられて、前記中央制御部の制御指示に基づく前記流量調整部及び送風用ファンの制御、及び、吹出口装置単独の吹出状態調整制御をそれぞれ実行可能とされる局所吹出制御部とを有してなり、
前記局所吹出制御部が、使用者の入力操作を受けた前記操作部からの吹出状態変更指示に対応して、前記中央制御部からの制御指示に対応した自動制御状態と、中央制御部からの制御指示に関わりなく吹出口装置の流量調整部及び送風用ファンを作動可能とする個別制御状態とを切替可能とされ、
前記中央制御部が、前記局所吹出制御部を個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替可能とされ、前記自動制御状態では、各吹出口装置の流量調整部を所定の開放状態とすると共に、送風用ファンを所定の作動状態として、各吹出口装置に同じ所定風量の調和空気吹出を実行させるようにされ、
前記局所吹出制御部は、前記個別制御状態として、流量調整部を閉止状態とし且つ送風用ファンを停止状態とする停止モードと、流量調整部を少なくとも開放状態とすると共に、送風用ファンをあらかじめ設定された吹出量に対応させて作動させる固定吹出モードとを有し、使用者の入力操作を受けた前記操作部からの指示に基づいて、前記各モードのいずれかに切替可能とされ、
前記中央制御部が、複数の吹出口装置ごとの局所吹出制御部に対する制御指示を制御電流として与え、所定の制御電流出力で局所吹出制御部を個別制御状態から自動制御状態に強制的に移行させると共に、所定範囲内の制御電流の大小に基づいて、自動制御状態の局所吹出制御部に流量調整部及び送風用ファンの作動制御を行わせることを
特徴とする空気調和システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1、2に示されるような従来の吹出口装置を用いたシステムによる空気調和では、床に設けられる吹出口において、居住域でのドラフトが生じない吹出し状態となるようにするのが一般的である。また、近年ではエネルギー消費抑制の観点から空気調和で得られる室内温度と外気温度との差を小さくする傾向にある。このような空気調和状態で、外気温が極端に高い場合や低い場合には、人が外部から室内空間に入ってきて、外気の温度に慣れた状態から室内空気に接して体感する冷感や温感に物足りなさを感じることが多い。
【0006】
しかしながら、従来の拡散性を重視した床吹出口を採用して室内全体を対象とするシステムでは、こうした一部の人の体感する冷感や温感を満足のいくものとするために、局所的に空気調和を行うことはできず、室内空間全体の空気調和状態を調整せざるを得なかった。室内空間全体の空気調和状態の調整では、温度変化を望む使用者の期待する室内温度になるのに時間がかかり、また、室内空間に当初から居て室内温度に慣れた人には、調整の結果不快と感じる温度にもなり得るなど、適切な対応を採りにくい上、空間全体を調整する分、空気調和に投入するエネルギー量が多くなってしまうという課題を有していた。
【0007】
一方、前記特許文献3に記載されたシステムのように、風向調整可能で吹出気流の指向性に優れる吹出口を、使用者に対する局所的な空気調和に用いるようにすれば、使用者近傍へ集中的に達する調和空気により使用者の周囲領域に温度変化を生じさせやすくなり、使用者の好む温度に到達するまでの時間を短縮できるなど、使用者に対するより効果的な空気調和が期待できる。
【0008】
しかしながら、室内空間全体の空気調和を対象とする床吹出機構と別途に、使用者の求める空気調和状態を得るための指向性の強い吹出口を併設する場合、当然ながら空調システム全体の構成が複雑化し、コストの上昇を招くという課題を有していた。
【0009】
また、前記特許文献3に示された従来システムでは、指向性のある独立の吹出口と、それ以外の床吹出機構において、調和空気は同じ給気通路から同様に供給される仕組みであり、指向性のある吹出口から全体空調用の吹出を超える強さで調和空気を吹出すことはできなかった。そのため、局所的な空気調和の効果が限定的であり、使用者の要求に十分対応できないという課題を有していた。
【0010】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、室内空間全体の空気調和に対応する複数の吹出口装置で、それぞれ使用者の操作に応じて吹出状態を調整可能とし、使用者ごとに局所的に吹出を行う吹出口を併用することなく、使用者の所望する吹出状態が必要に応じて得られるようにして、室内空間全体に対応した空気調和状態をできるだけ維持しつつ、使用者の体感温度を快適な状態に速やかに移行させられ、効率よく空気調和を実行できる、空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る空気調和システムは、空気調和対象の室内空間に面する開口部を有して前記室内空間の床に配設され、床下の空気供給用通路を通じて供給される調和空気を前記開口部から室内空間に吹出す吹出口装置を複数備える空気調和システムにおいて、前記各吹出口装置の開口部からの調和空気の吹出状態を調整する制御部を備え、前記吹出口装置が、前記開口部に通じる吹出口装置内部と前記空気供給用通路との間で開閉可能として配設され、空気供給用通路から吹出口装置内部へ向かう調和空気の流量を調整する流量調整部と、前記吹出口装置内部に配設され、所定の制御に基づき作動して前記開口部へ向けて調和空気の送風を実行する送風用ファンと、室内空間での使用者の入力操作を受けて、前記制御部に調和空気の吹出状態変更指示を送る操作部とを有してなり、前記制御部が、床の複数の吹出口装置に対し同様の吹出状態調整制御をまとめて実行する中央制御部と、吹出口装置ごとに設けられて、前記中央制御部の制御指示に基づく前記流量調整部及び送風用ファンの制御、及び、吹出口装置単独の吹出状態調整制御をそれぞれ実行可能とされる局所吹出制御部とを有してなり、前記局所吹出制御部が、使用者の入力操作を受けた前記操作部からの吹出状態変更指示に対応して、前記中央制御部からの制御指示に対応した自動制御状態と、中央制御部からの制御指示に関わりなく吹出口装置の流量調整部及び送風用ファンを作動可能とする個別制御状態とを切替可能とされ、前記中央制御部が、前記局所吹出制御部を個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替可能とされ、前記自動制御状態では、各吹出口装置の流量調整部を所定の開放状態とすると共に、送風ファンを所定の作動状態として、各吹出口装置に同じ所定風量の調和空気吹出を実行させるようにされ、前記局所吹出制御部は、前記個別制御状態として、流量調整部を閉止状態とし且つ送風用ファンを停止状態とする停止モードと、流量調整部を少なくとも開放状態とすると共に、送風用ファンをあらかじめ設定された吹出量に対応させて作動させる固定吹出モードとを有し、使用者の入力操作を受けた前記操作部からの指示に基づいて、前記各モードのいずれかに切替可能とされるものである。
【0012】
このように本発明によれば、室内空間の床に設置される複数の吹出口装置の吹出状態を使用者により切替可能として、室内空間に対し各吹出口装置が中央制御部の制御指示に応じて同じ吹出状態となる自動制御状態と、吹出口装置ごとに使用者の操作指示に応じた吹出状態となる個別制御状態とを切替えて、各吹出口装置から室内空間に調和空気の気流を吹出して室内空間全体に対し空気調和を行いつつ、吹出口装置ごとに使用者の求める吹出状態を選択できるようにすることにより、室内空間に調和空気を確実に拡散させて空気調和を行えることに加え、必要に応じて使用者の存在する特定の領域に対応する吹出口装置から局所的に使用者の求めに応じた状態で吹出せることとなり、室内空間に対する一括の吹出制御のみでは使用者が空気調和による快適感を得にくい場合でも、使用者に対応する吹出口装置を適宜活用して、使用者の体感温度を良好なものとすることができ、空気調和に係るコストを抑えつつ使用者の快適感を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る空気調和システムを前記
図1ないし
図11に基づいて説明する。本実施形態では、空気調和対象の室内空間に面する、いわゆるフリーアクセスフロア(二重床)である床に、吹出口装置を配置して用いるシステムの例について説明する。
【0015】
前記各図において本実施形態に係る空気調和システム1は、室内空間70に面する開口部を有して室内空間の床80に配設され、供給される調和空気を前記開口部から室内空間70に吹出す複数の吹出口装置10と、各吹出口装置10の開口部からの調和空気の吹出状態を調整する制御部50とを備える構成である。
【0016】
前記吹出口装置10は、円形断面の中空部分を取囲んだ略箱状体として形成され、床80の所定箇所に取り付けられて、床下の空気供給用通路81に通じて調和空気を供給される吹出口本体11と、吹出口本体11の室内空間寄り部位に支持されて床80の一部をなし、前記開口部としての吹出孔12a、12bを複数穿設されてなるフェース部12と、吹出口本体11下部の空気供給用通路81との連通部分に配設され、空気供給用通路81から吹出口本体11内へ向かう調和空気の流量を調整する流量調整部13と、吹出口本体11内部におけるフェース部12と流量調整部13との間の所定位置に配設され、外部からの制御に基づいて作動する送風用ファン14と、室内空間70での使用者の入力操作を受けて、制御部50に調和空気の吹出状態変更指示を送る操作部15とを備える構成である。
【0017】
前記吹出口本体11は、上端部が床80の一部をなして室内空間側に露出するように床80に取り付けられる略円環状の上枠部11aと、一端が閉じた略円筒箱状で上枠部11aの下部外周側に固定される下枠部11bとの組合わせで、全体として上部が開口すると共に底部を有する略箱状体として形成される構成である。
【0018】
この吹出口本体11下部の下枠部11b下面部分には、下枠部11b内部と床下の空気供給用通路81とを連通させる床下側開口部11cが複数穿設され、また、下枠部11b下側には各床下側開口部11cを含む下面に沿う略円板体のシャッター部13aが回動自在に配設される構成である。このシャッター部13aが流量調整部13の一部をなす。
【0019】
さらに、吹出口本体11上部の上枠部11a内側は、円形開口断面とされる室内側開口部11dとなっており、この室内側開口部11dを閉塞する状態で、吹出口本体11とは別体となる前記フェース部12が上枠部11aに対し嵌合配設される構成である。室内側開口部11dに面する上枠部11a内周には、フェース部12を載置可能な段部分が形成されており、フェース部12表面を上枠部11a上端部と略同じ高さに支持する仕組みである。
【0020】
この吹出口本体11においては、空気供給用通路81である床下空間(又は床下ダクト)から床下側開口部11cを通じて調和空気が供給されることとなる。この調和空気を、吹出口本体11上部の室内側開口部11dに配置されたフェース部12の吹出孔を通じて室内空間に送出す仕組みである。
【0021】
前記フェース部12は、複数の吹出孔12a、12bが穿設される円板状体とされ、円板中心を吹出口本体11の室内側開口部11dの中心位置と一致させて吹出口本体11に着脱可能に嵌合配設される構成である。フェース部12の上面は周囲の吹出口本体11の上枠部11aと略同じ高さ位置とされて床80の一部となる。また、フェース部12の下面周縁部には、位置合せ用の凹凸が形成され、この周縁部の凹凸が吹出口本体11側の凹凸と係合することで、フェース部12が吹出口本体11に対し意図しない回転によってずれることの無いように固定できる仕組みである。
【0022】
フェース部12の複数の吹出孔12a、12bのうち、第一吹出孔12aは、円板状であるフェース部12の中心を配列の中心として、等角度間隔で且つ回転対称をなす配置で複数穿設される、略スリット状の長孔である。また、第二吹出孔12bは、各第一吹出孔12a間の領域に第一吹出孔12aと同じ角度間隔となる配置で、且つ第一吹出孔12aより短い長孔形状としてそれぞれ穿設されるものである。そして、各吹出孔12a、12bはいずれも、フェース部12表裏面において略スリット状の長孔形状とされる孔開口の長手方向延長線がフェース部12中心を通る配置として穿設されている。
【0023】
各吹出孔12a、12bはいずれも、フェース部12表面において略スリット状の長孔形状とされる孔開口の長手方向延長線がフェース部12中心を通ると共に、フェース部12表面と裏面の孔開口位置を、フェース部厚さ方向における重なりが一部のみとなる状態まで、孔長手方向に直交する向きへ互いにずらした配置として穿設される。こうして、各吹出孔12a、12bは、フェース部表面と直角をなすフェース部厚さ方向に対し全体的に傾斜した孔形状となる構成である。
これにより、各吹出孔12a、12bを通過する調和空気を室内空間に対し斜め向きに吹出せることとなる。
【0024】
吹出口装置全体としての気流の吹出状態は、各吹出孔12a、12bのフェース部12中心について回転対称となる配置、及び孔形状に由来する床面と直角をなす方向から所定角度傾いた斜め向きとなる気流の吹出方向との関係から、各吹出孔12a、12bから斜め上向きに吹出した気流が互いにぶつかって影響し合い、気流全体が旋回する速度成分を有する状態に合成され、略渦巻状の旋回流となる。こうして、フェース部12の各吹出孔12a、12bに沿って調和空気を進行させ、調和空気を旋回流として室内空間に拡散状態で吹出せる仕組みである。
【0025】
前記流量調整部13は、吹出口本体11内部に回転可能として配設されるシャッター部13aと、吹出口本体11内部に固定配設され、シャッター部13aを駆動して吹出口本体13に対し回転させるモータ13bとを備える構成である。流量調整部13は、フェース部12の開口部としての各吹出孔12a、12bに通じる吹出口本体11内部と空気供給用通路81との間で開閉可能とされて、空気供給用通路81から吹出口本体11内部へ向かう調和空気の流量を調整することとなる。
【0026】
この流量調整部13は、制御部50による制御で作動可能とされており、制御に基づいて作動するモータ13bによりシャッター部13aが駆動されて、吹出口本体11に対して回転し、床下側開口部11cの吹出口本体11内部に対する連通状態を変化させ、床下の空気供給用通路81から吹出口本体11内部へ流入する調和空気の流量調整を実行する。
【0027】
前記送風用ファン14は、吹出口本体11内部におけるフェース部12より下側となる所定位置に配設され、外部からの制御に基づいて作動し、調和空気を上向きに送出してフェース部12の各吹出孔12a、12bに流入させる構成である。
【0028】
この送風用ファン14は、制御部50により作動状態と非作動状態を切替えられる仕組みである。送風用ファン14の構成自体は、公知の軸流ファンと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0029】
送風用ファン14とフェース部12との間の吹出口本体11内部には、調和空気中の塵埃等を捕捉すると共に、送風用ファン14により生じた気流の旋回速度成分を減衰させて気流の直進性を高める機能を有する公知のフィルター14aが、吹出口本体11内部を横断して配設される。
【0030】
前記操作部15は、フェース部12の中央部に配設される公知のスイッチ等であり、室内空間での使用者の入力操作を受けて、各吹出口装置10に対応する局所吹出制御部52に対し吹出口装置10での調和空気の吹出状態をそれまでと異なるものに変更する指示を送るものである。具体的には、中央制御部51の制御指示に基づいて各吹出口装置10が同様に吹出を行う自動制御状態と、吹出口装置10からの吹出を停止した状態(停止モード)と、吹出口装置10から最大限の風量で吹出を行う状態(固定吹出モード)とを、使用者によるスイッチ等の操作に基づき切替可能とするものである。この操作部15と共に、局所吹出制御部52の制御に基づいて吹出口装置10がどのような吹出状態にあるかを表示するLED等の表示部を設けるようにすることもできる。
【0031】
前記制御部50は、床の複数の吹出口装置10に対し同様の吹出状態調整制御をまとめて実行する中央制御部51と、吹出口装置10ごとに設けられて、中央制御部51の制御指示に基づく流量調整部13及び送風用ファン14の制御、及び、吹出口装置単独の吹出状態調整制御をそれぞれ実行可能とされる局所吹出制御部52とを有する構成である。
【0032】
前記中央制御部51は、複数の吹出口装置10に対し吹出状態調整制御として、流量調整部13及び送風用ファン14の作動に係る制御指示を制御電流として吹出口装置10ごとの局所吹出制御部52に向け出力可能とされる構成である。
【0033】
中央制御部51は、詳細には、主に温度等の室内空間の状況を示す情報に基づいて、室内空間の適切な空気調和状態をもたらす吹出口装置10全体の調和空気吹出状態を求めて、それに対応して各吹出口装置10の流量調整部13と送風用ファン14を作動させるための制御指示を吹出口装置10ごとの局所吹出制御部52に対し出力して、各吹出口装置10の吹出状態を一様に調整できるようにするものである。
【0034】
前記局所吹出制御部52は、各吹出口装置10に配設される流量調整部13、送風用ファン14、及び操作部15とそれぞれ接続されて吹出口装置10ごとに設けられると共に、中央制御部51と接続されてその制御指示を入力可能とされ、流量調整部13と送風用ファン14の作動を制御して、調和空気の吹出状態調整を行わせるものである。
【0035】
局所吹出制御部52は、具体的には、中央制御部51の制御指示としての所定範囲内の制御電流の大小に基づいて吹出口装置10の流量調整部13及び送風用ファン14の作動制御を実行する自動制御状態と、中央制御部51からの制御指示に関わりなく、使用者の入力操作を受けた操作部15からの指示に対応した所定の設定に基づいて、流量調整部13及び送風用ファン14を作動可能とする個別制御状態とを、操作部15からの吹出状態変更指示に対応して切替可能とされる。ただし、この局所吹出制御部52は、中央制御部51により個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替可能とされてなる。
【0036】
局所吹出制御部52は、自動制御状態では、中央制御部51の制御指示としての制御電流の大きさにより、各吹出口装置10の流量調整部13を所定の開放状態とすると共に、送風用ファン14を所定の作動状態として、各吹出口装置に同じ所定風量の調和空気吹出を実行させるようにする。より詳細には、局所吹出制御部52は、中央制御部51からの制御電流の大きさが、所定の第一の範囲(例えば、4.0ないし4.5mA)にある場合は、流量調整部13を閉止状態とし且つ送風用ファン14を停止状態とする。また、制御電流の大きさが前記第一の範囲より大きい第二の範囲(例えば、5.0ないし18.0mA)にある場合は、流量調整部13を最大限開放した状態とすると共に、送風用ファン14を制御電流の大きさと比例して変化する送風量となるよう作動させる状態とする。さらに、制御電流の大きさが前記第二の範囲より大きい第三の範囲(例えば、19.0ないし20mA)にある場合は、流量調整部13を最大限開放した状態とすると共に、送風用ファン14を送風量最大となるよう作動させることとなる(
図9参照)。
【0037】
なお、中央制御部51が局所吹出制御部52に対し自動制御状態で出力する制御電流における、前記第一の範囲と第二の範囲は、互いに重ならないように第一の範囲の最大値より第二の範囲の最小値を大きくして設定され、且つ、前記第二の範囲と第三の範囲は、互いに重ならないように第二の範囲の最大値より第三の範囲の最小値を大きくして設定される。そして、局所吹出制御部52は、中央制御部51からの制御電流の大きさが、前記第一の範囲と第二の範囲との間、又は、前記第二の範囲と第三の範囲との間の値である場合には、流量調整部13及び送風用ファン14を直前の状態にそのまま維持する。すなわち、制御電流の第一の範囲と第二の範囲との間、及び、第二の範囲と第三の範囲との間を、それぞれ遷移区間(不感帯)として取り扱い、吹出状態を変化させないようにすることで、中央制御部51に接続される局所吹出制御部52の数が多い場合に制御電流が多少変動する事態が生じても、誤って吹出状態を変化させることが無く、安定した吹出状態が得られる。
【0038】
この他、局所吹出制御部52は、個別制御状態として、流量調整部13を閉止状態とし且つ送風用ファン14を停止状態とする停止モードと、流量調整部13を最大限開放した状態とすると共に、送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させる固定吹出モードとを有する。そして、局所吹出制御部52は、使用者の入力操作を受けた操作部15からの指示に基づいて、自動制御状態と、個別制御状態の前記各モードとのいずれかに切替可能とされる構成である。
【0039】
一方、局所吹出制御部52は、中央制御部51によって、個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替可能とされる構成であるが、この局所吹出制御部52を個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替える制御指示は、中央制御部51が制御電流の大きさを前記第三の範囲として出力することで行われる。仮に、個別制御状態にある局所吹出制御部52が、第三の範囲にある制御電流を入力された場合には、対応する吹出口装置10の流量調整部13を最大限開放した状態とし、且つ送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させると共に、自動制御状態に移行することとなる。
【0040】
次に、前記構成に基づく空気調和システムによる室内空間への空気調和状態について説明する。前提として、床下の空気供給用通路81から各吹出口装置10に調和空気が十分に供給されており、複数の吹出口装置10により調和空気を室内空間70に吹出可能となっている状況にあるものとする。
【0041】
使用者が特に操作を行わない場合、局所吹出制御部52は自動制御状態にあって、中央制御部51の制御指示に基づいて吹出口装置10の流量調整部13及び送風用ファン14の作動制御を実行する。
【0042】
自動制御状態では、中央制御部51からの制御電流の大きさが、前記第一の範囲(例えば、4.0ないし4.5mA)にある場合、局所吹出制御部52は、流量調整部13を閉止状態とし、且つ送風用ファン14を停止状態とする。これにより、吹出口装置10からの吹出は停止となる。
【0043】
また、中央制御部51からの制御電流の大きさが前記第二の範囲(例えば、5.0ないし18.0mA)にある場合、局所吹出制御部52は、流量調整部13のモータ13bを作動させてシャッター部13aを回転させ、床下側開口部11cを最大限開放し、床下側開口部11cを通じて空気供給用通路81と吹出口本体11の内部空間とを連通させた状態とすると共に、送風用ファン14を制御電流の大きさと比例して変化する送風量となるよう作動させる状態とする。
【0044】
これにより、床下の空気供給用通路81から供給された調和空気は、吹出口本体11の床下側開口部11cを通じてスムーズに吹出口本体11の内部空間へ進行し、吹出口本体11内部を上昇して送風用ファン14に達する。そして、送風用ファン14による送風で吹出口本体上部の室内側開口部13dに達した調和空気は、さらにフェース部12に到達し、各吹出孔12a、12bを通過する。調和空気の気流は、孔延長方向が垂直方向から傾斜している各吹出孔12a、12bの、フェース部12中心について回転対称となる配置に基づき、各吹出孔12a、12bを出た後合成され、旋回流となって室内空間に至る。
【0045】
こうして、吹出口装置10から調和空気の気流を、旋回流として室内空間へそれぞれ吹出して(
図1参照)、気流を旋回速度成分に基づいて拡散させ、室内空間の広範囲の領域に、調和空気を確実に到達させて空気調和を行い、室内空間を一様に温度調節する状態が得られる。
【0046】
さらに、中央制御部51からの制御電流の大きさが前記第三の範囲(例えば、19.0ないし20mA)にある場合、局所吹出制御部52は、流量調整部13を最大限開放した状態とすると共に、送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させる状態とする。
【0047】
この場合、吹出口装置10から吹き出される調和空気は最大風量となって、旋回流としての室内空間各部への到達能力も最大となって、室内空間に対する空気調和能力を最大限発揮して室内空間の温度調節を強力に進行させる状態が得られる。
【0048】
一方、使用者が近くの吹出口装置10の操作部15に対し調和空気の吹出状態を変える操作を行うと、局所吹出制御部52は、使用者の入力操作を受けた操作部15からの指示に基づいて、自動制御状態から、個別制御状態の停止モード又は固定吹出モードのいずれかに切替えられる。通常は、使用者が操作部15に対し入力操作を行うごとに、個別制御状態の停止モードと、自動制御状態と、個別制御状態の固定吹出モードとが順次切り替わる仕組みである。
【0049】
使用者による操作部15の操作で、個別制御状態の停止モードに切り替えられた場合、局所吹出制御部52は、中央制御部51からの制御指示に関わりなく、流量調整部13が開放状態にある時はモータ13bを作動させてシャッター部13aを回転させ、床下側開口部11cを閉止し、空気供給用通路81と吹出口本体11の内部空間とを連通させない状態として、流量調整部13を閉止状態とする。加えて、送風用ファン14を停止状態として、吹出口装置10からの吹出を停止とする(
図10参照)。
【0050】
使用者が近くの吹出口装置の吹出について、冷えすぎや暖めすぎなど不快と感じている場合、吹出口装置10の過剰な吹出を抑えられることで、冷えすぎや暖めすぎを防止でき、快適感を得られることとなる。
【0051】
また、使用者による操作部15の操作で、個別制御状態の固定吹出モードに切り替えられた場合、局所吹出制御部52は、中央制御部51からの制御指示に関わりなく、流量調整部13が閉止状態にある時はモータ13bを作動させてシャッター部13aを回転させ、床下側開口部11cを最大限開放し、床下側開口部11cを通じて空気供給用通路81と吹出口本体11の内部空間とを連通させた状態とすると共に、送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させる状態とする。
【0052】
これにより、床下の空気供給用通路81から供給された調和空気は、吹出口本体11の床下側開口部11cを通じて吹出口本体11の内部空間へ進行し、吹出口本体11内部を上昇して送風用ファン14に達する。そして、送風用ファン14による強力な送風で調和空気はフェース部12の各吹出孔12a、12bに達してこれらを通過する。そして、調和空気の気流は、各吹出孔12a、12bを出た後合成され、旋回流となり、最大風量として室内空間への進行能力を最大とされると共に、使用者の存在する吹出口装置周囲領域に調和空気を効率よく拡散させることとなる(
図11参照)。
【0053】
こうして、室内空間全体に対する空気調和とは別に、使用者の周囲に適量の調和空気を到達させて、使用者の体に当たる気流から涼しさ又は暖かさを使用者に直接体感させられるなど、使用者を快適な状態に早期に移行させる優れた体感温度調整状態を得ることができる。
【0054】
さらに、室内空間全体への空気調和の始動時や休止時などの、全ての吹出口装置10を自動制御状態に復帰させたい状況には、中央制御部51からの制御指示により、局所吹出制御部52が個別制御状態から自動制御状態に強制的に切替えられる。具体的には、個別制御状態のいずれかのモードにある局所吹出制御部52に対し、中央制御部51が制御電流の大きさを前記第三の範囲(例えば、19.0ないし20mA)として出力し、局所吹出制御部52がこの制御電流を入力された場合には、対応する吹出口装置10の流量調整部13を最大限開放した状態とし、且つ送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させると共に、自動制御状態に移行することとなる。すなわち、局所吹出制御部52は、流量調整部13が閉止状態にある時はモータ13bを作動させてシャッター部13aを回転させ、床下側開口部11cを最大限開放し、床下側開口部11cを通じて空気供給用通路81と吹出口本体11の内部空間とを連通させた状態とすると共に、送風用ファン14を送風能力最大となるよう作動させる状態とする。
【0055】
そして、それ以降、局所吹出制御部52は、中央制御部51からの制御電流の大きさに基づいて吹出口装置10の流量調整部13及び送風用ファン14の作動制御を実行する自動制御状態となる。
【0056】
このように、本実施形態に係る空気調和システムにおいては、室内空間70の床80に設置される複数の吹出口装置10の吹出状態をそれぞれ使用者により切替可能として、室内空間70に対し各吹出口装置10が中央制御部51の制御指示に応じて同じ吹出状態となる自動制御状態と、吹出口装置10ごとに使用者の操作指示に応じた吹出状態となる個別制御状態とを切替えて、各吹出口装置10から室内空間70に調和空気の気流を吹出して室内空間全体に対し空気調和を行いつつ、吹出口装置10ごとに使用者の求める吹出状態を選択できるようにすることから、室内空間に調和空気を確実に拡散させて空気調和を行えることに加え、必要に応じて使用者の存在する特定の領域に対応する吹出口装置10から局所的に使用者の求めに応じた状態で吹出せることとなり、室内空間70に対する一括の吹出制御のみでは使用者が空気調和による快適感を得にくい場合でも、使用者に対応する吹出口装置10を適宜活用して、使用者の体感温度を良好なものとすることができ、空気調和に係るコストを抑えつつ使用者の快適感を確保できる。
【0057】
なお、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、室内空間の床に四つの吹出口装置10を等間隔に配設する構成としているが、吹出口装置の数や配置はこれに限られず、室内空間の状況や用途に応じて、各吹出口装置を適宜配置するようにしてかまわない。
【0058】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、使用者の操作部15の操作に基づいて局所吹出制御部52が個別制御状態となって、流量調整部13や送風用ファン14を作動させて吹出口装置10を通じて調和空気が吹出される状態にいったん移行させたら、中央制御部51から強制的に自動制御状態に移行させるように制御電流が入力されるまで、局所吹出制御部52は個別制御状態に基づく吹出状態を維持する構成としているが、これに限らず、吹出口装置10に対応する人感センサを設け、この人感センサで使用者の存在を検出した情報を用いるようにし、吹出口装置10からの調和空気吹出しの対象となる、吹出口装置近傍の所定領域における人(使用者)の不在を人感センサで識別したら、局所吹出制御部が自動制御状態に移行する構成とすることもできる。
【0059】
この場合、使用者の操作に基づいて所定の吹出口装置の吹出状態を変えて局所的に異なる吹出としたまま、操作された吹出口装置近傍から使用者が所定時間以上離れると、速やかに吹出口装置を制御する局所吹出制御部を自動制御状態に移行させ、吹出口装置を他の吹出口装置同様に室内空間全体を対象とした吹出状態に復帰させることで、吹出口装置を有効に活用でき、室内空間に対し効率よく空気調和が行えることとなる。