(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また
図1及び
図2では、ガスケット3の構成要素の形状をわかり易く説明するため、弾性変形していない原形状のガスケット3を実線で示しているが、実際には
図3、
図4等に示すように弾性変形した状態で組み付けられる。
【0010】
本実施形態に係るガスケット3は、壁体101に設けられた貫通孔10と貫通孔10に挿入される配管1との間を密封し、配管1に装着される筒状の弾性体製のものである。配管1の外周面1aaに弾接する内周リップ部32と、貫通孔10の内周面10aに弾接する外周リップ部31とを有し、内周リップ部32が配された内周側の内シール領域S1は、外周リップ部31が配された外周側の外シール領域S2と径方向に重ならない位置に設けられている。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態のガスケット3は、例えば自動車用電子機器を冷媒によって冷却する冷却器の冷却パイプと外部ホースとを接続する配管接続構造の接続部材として適用することができる。この場合、冷媒の漏洩防止だけでなく外部からの雨水等の浸入、車両等を高圧洗浄する際の水の噴射にも耐えられ、さらには配管が偏心しても維持できるシール性が求められる。そしてこのようなシール性を有するとともに、上述のとおり、偏心によるシール面圧への影響を抑制するとともに、挿入荷重を低減し組付け性の向上を図ることも求められる。以下では、自動車用のインバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とを接続部材となるガスケット3によって接続する配管接続構造について説明する。
【0012】
自動車の駆動源として電動機を備えたものの場合、電動機の動作はインバータにより制御されている。電動機はバッテリから電力を得て駆動力を発生するモータ等として働き、インバータは、バッテリ等から供給される直流電源をスイッチング作用により交流電源に変換して電動機に電力の供給を行っている。このような自動車に用いられるインバータは大きな電力量を求められ、スイッチング素子等に大電流が流れるため、発熱量が多い。そこで、インバータを収容するインバータケース100内に冷却水や冷却液等の冷媒が流れる冷媒流路を構成し、インバータを冷却するシステムが採用されている。
【0013】
<配管接続構造>
インバータケース100は、上下に分割して構成された略直方体形状の箱体とされ、
図1では壁体101として示す上ケースと下ケースとを備えている。インバータケース100は、断面視して略凹状の下ケースの上に断面視して略凹状の上ケースが被さるようにして接合されて構成されており、互いがボルト等の連結具で締結され一体とされる。インバータケース100はアルミニウム等の金属材等からなり、インバータケース100内には、インバータを冷却するための冷却水や冷却液などの冷媒を流通させるための冷媒流路が設けられ、第二配管2(冷却パイプ)は、その冷媒流路の一部を構成するように配設されている。上ケースと下ケースとの側壁には、両者が接合されインバータケース100とした際に貫通孔10が形成されるように向かい合う位置に半円形の切欠孔が形成されている。第二配管2は、
図1に示すようにその接続端部2aの先側が、貫通孔10内に位置するように配されているので、インバータケース100の外側から貫通孔10を通じてインバータケース100の内部を覗くと、第二配管2の接続端部2aの先側を視認することができる。貫通孔10の形状は特に限定されるものではなく、第二配管2と接続される第一配管1(外部ホース)の形状、大きさに応じて形成されている。貫通孔10の径は、挿通される第一配管1の外径よりも大になるよう形成される。
なお、ここで第二配管2は、冷媒流路の一部を構成するものとして説明するが、これに限定されず、別途設けられる冷媒流路と連通するものであってもよい。また図中、Lはインバータケース100に設けられた貫通孔10の軸心を示し、L1は第一配管1の軸心、L2は第二配管2の軸心、L3はガスケット3の軸心を示す。よって、
図1のように軸心L、軸心L1〜L3が一致している状態が接続状態として望ましいが、本実施形態の接続構造はこれら軸心L〜L3が偏心することを想定した構造である。
【0014】
<ガスケット>
ガスケット3は、第一配管1と第二配管2とを接続し、冷媒流路を形成するための部材であり、全体がエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等のゴム材、エラストマー、合成樹脂等からなる弾性体による筒状の成型体とされている。ガスケット3は、第1保持部30と、第2保持部40と、繋ぎ部50とを有している。第1保持部30は、第一配管1の接続端部1aに被さるように外嵌されるとともに貫通孔10の内周面10aに内嵌される。第2保持部40は、第二配管2の接続端部2aに被さるように外嵌される。繋ぎ部50は、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ部材であり、繋ぎ部50自体が弾性を備えているので、これによって、第一配管1、第二配管2が偏心しても、径方向の変位が可能となる。
第一配管1の外径は、第二配管2の外径より若干大とされ、これに伴い、第1保持部30の内径は、第2保持部40の内径より大とされている。よって、これら第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50は、第1保持部30から第2保持部40に向けて漸次縮径するテーパ形状とされている。
【0015】
<第一配管,第二配管>
第一配管1は、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、インバータケース100内の冷媒流路となる第二配管2へ冷媒を送り込むよう構成されている。第二配管2は、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、第一配管1から供給された冷媒が内部を流通する。
第一配管1の接続端部1aには、環状の凹部11と、凹部11のさらに外周に径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12とが設けられている。凹部11は、底部11cと外周面1aaとなる内壁11aと外壁11bと開口部11dとを有し、ガスケット3の第1保持部30には、環状部材を構成する凹部11が嵌合される。この凹部11と第1保持部30との嵌合部位には、空気通路となる筋状のスリット部(不図示)が軸方向に沿って形成されているものとしてもよい。スリット部が凹部11の底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿って形成されたものとすれば、第1保持部30を嵌合する際にスリット部から空気が抜け、ガスケット3の第1保持部30を第一配管1の外周面1aa(凹部11の内壁11aにも相当する)に挿入しやすい。鍔部12は、第一配管1と第二配管2とがガスケット3によって接続された状態で、壁体101に当接するように貫通孔10よりも大きい径とされ、この鍔部12には、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。そしてこの鍔部12を不図示の固定具によって壁体101の外側面に固着することにより外部配管である第一配管1が壁体101に固定される。
一方、第二配管2の接続端部2aの先側は、ガスケット3が脱着され易いように若干径が他の部位より小さい傾斜した先側部2abを備えている。
なお、環状部材を構成する凹部11は、
図1のように第一配管1に一体に形成されていてもよいし、別体として、筒状の配管に嵌合させる構成としてもよい。鍔部12も同様に
図1のように第一配管1に一体に形成されていてもよいし、別体として、筒状の配管に嵌合させる構成としてもよい。
【0016】
<第1保持部>
第1保持部30は、内周リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35とを有している。内周リップ部32は、周方向に連続した環状のリップであり、第一配管1の外周面1aaに弾接し、内周リップ部32は弾性変形した状態で凹部11に嵌合される。内周突部33は、内周リップ部32に隣接して設けられている。外周リップ部31は、周方向に連続した環状のリップであり、貫通孔10の内周面10aに曲げ変形に伴う締め代を有して弾接する。平坦部34は、凹部11の外壁11bに沿って当接するように平坦に形成されている。端部35は、凹部11の底部11cに沿って当接するように平坦に形成されている。
【0017】
図2及び
図3は、
図1に示すガスケット3のX部の部分拡大図である。
図2は、上述のとおり、ガスケット3が弾性変形していない原形状を示しており、
図3は、ガスケット3が第一配管1及び貫通孔10に組み付けられ、弾性変形した状態を示している。
図2に示すように外周リップ部31の突出量Houtは、内周リップ部32の突出量Hinより大とされている。内周リップ部32は、複数、並んで設けられ、複数の内周リップ部32,32が配された内周側の領域を内シール領域S1という。また外周リップ部31が配された外周側の領域を外シール領域S2という。これら内シール領域S1と外シール領域S2とは、径方向に重ならない位置に設けられ、内シール領域S1が一方の配管、すなわち第一配管1に外嵌され、外シール領域S2が貫通孔10に内嵌される。
第1保持部30に設けられた内シール領域S1と外シール領域S2とが、
図2に示すように径方向に重ならない位置に設けられているので、第一配管1の接続端部1aにガスケット3を嵌合し組み付けた状態で、壁体101の貫通孔10に挿入する際、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また例えば第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。
【0018】
内シール領域S1と、外シール領域S2との径方向に重ならないように離して設けた距離Dは、
図2に示すように
内周リップ部32の突出量Hin以上、すなわち、D>Hinとされている。
内シール領域S1に配された
内周リップ部32は、
図3に示すように第一配管1の外周面1aaに倒れた状態で弾接する。このとき、
内周リップ部32の内部応力が上昇するが、以上の構成とすることで、外周リップ部31の基部にその影響が及ばす、応力が集中することを防止できる。
【0019】
また
図2に示すように外周リップ部31の突出量Houtは、内周リップ部32の突出量Hinより大とされている。よって、
図3に示すように外周リップ部31の貫通孔10の内周面10aへの接触面が広くなり、貫通孔10とのシール性が向上する。
また内シール領域S1は、外シール領域S2より第一配管1の挿入方向(
図2の白抜き矢印方向参照)に対して反対側に設けられ、内シール領域S1が形成された部位に対応する外周面30bが平坦部34とされ、平坦部34は、環状部材を構成する凹部11の外壁11bが平坦部34に沿って嵌合されている。よって、第一配管1が偏心しても内シール領域S1に配された内周リップ部32,32は安定したシール性を確保できる。
【0020】
内周突部33は、内シール領域S1に設けられた内周リップ部32,32に隣接して設けられ、外周リップ部31が形成された位置に対応する内周面30aに形成されている。内周突部33は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。内周リップ部32は、
図3等に示すように、弾性変形し倒れる程の長さを有して形成され、内壁11aに弾接する弾接部分が先細の断面山型形状に形成されている。内周突部33は、内周リップ部32より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。
【0021】
内周突部33が、外周リップ部31の形成された位置に対応する内周面30aに設けられているので、第一配管1に偏心しようとする力が加わっても、第一配管1の姿勢を正しい位置(第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lとがほぼ一致する位置)保持することができる。また第一配管1が偏心した場合でも、内周突部33が第一配管1の外周面1aaに当接して過圧縮を抑制し、内周リップ部32のシール面圧に影響を与えることを防止するので、シール性を維持できる。さらに第一配管1を通じる冷媒の圧力があがると、第一配管1に装着された第1保持部30は凹部11から抜けようとする力が生じるが、内周リップ部32と内周突部33、さらに外周リップ部31の押し付ける力で第1保持部30が抜けないように作用する。
なお、本実施形態は、内周突部33は、第一配管1の外周面1aaに当接する例を図示しているが、偏心したときには弾接するが、正しい位置にある場合には、外周面1aaに近接(若干隙間がある)するものとしてもよい。
【0022】
第1保持部30の外周面30bには、貫通孔10の内周面10aに弾性変形した状態で当接する外周リップ部31が設けられている。外周リップ部31は、
図2に示すように第一配管1の挿入方向に対して反対側となる一方の面31Aは直線状をなし、他方の面31Bは先端部に向けて次第に先細になる傾斜状をなしている。一方の面31Aの外周リップ部31の基部には、貫通孔10の内周面10aに弾接する際に外周リップ部31の屈曲点となる屈曲部31bを有している。屈曲部31bは、外周面30bから一方の面31Aへと傾斜して形成された傾斜部31aと一方の面31Aとの交点とされる。また外周リップ部31は、
図3に示すように倒れた状態に変形して貫通孔10の内周面10aに弾接する。よって、第一配管1の偏心時も貫通孔10の内周面10aとのシール性が維持でき、外周リップ部31の曲げ変形により、高い追従性を実現できる。また貫通孔10の内周面10aに外周リップ部31を弾接させる際、屈曲部31bを屈曲点として外周リップ部31を撓ませることができ、屈曲部31bが外周リップ部31の基部にあるので、滑らかな撓みでなく、急激に折れるように屈曲させることできる(
図3参照)。これにより、貫通孔10に第一配管1を挿入するときの挿入荷重を下げることができ、挿入性能を高めることができる。また、貫通孔10の内周面10aへの接触面が広くなり、シール性が向上する。さらに貫通孔10の内周面10aに鋳巣や傷、異物のかみこみ等があっても、外周リップ部31の弾接によりシール機能を保持することができる。
【0023】
<繋ぎ部>
繋ぎ部50は、第一配管1の接続端部1aに装着される第1保持部30と、第二配管2の接続端部2aに装着される第2保持部40とを繋ぎ、弾性変形可能とされている。第1保持部30及び第2保持部40は第一配管1及び第二配管2の径に応じて互いに径が異なるため、繋ぎ部50はテーパ形状とされている。すなわち、繋ぎ部50はガスケット3の軸心L3に対し傾斜して形成され、繋ぎ部50に角度がある。そのため、ガスケット3の成型時に、抜き勾配の役目を果たし、離型しやすい。
【0024】
繋ぎ部50には、外周リップ部31の挿入方向側(第2保持部40側)に隣接して断面山型形状で且つ貫通孔10の内周面10aに弾接する外周突部51が設けられている。外周突部51は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。外周突部51は、外周リップ部31より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。
なお、本実施形態は、外周突部51は、貫通孔10の内周面10aに当接する例を図示しているが、偏心したときには弾接するが、正しい位置にある場合には、内周面10aに近接(若干隙間がある)するものとしてもよい。
【0025】
図4には、第二配管2が偏心した状態の断面図を示している。
ここに示すように外周突部51が、外周リップ部31の挿入方向側に隣接して設けられているので、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに確実に当接し、この外周突部51の存在によっても、偏心しようとする第一配管1の姿勢を上述と同様、正しい位置に保持することができる。またこのように第二配管2が偏心した場合でも、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに当接して外周リップ部31の過圧縮を抑制し、外周リップ部31のシール面圧に影響を与えることを防止してシール性を維持できる。
【0026】
またこのように貫通孔10の内周面10aとガスケット3との間は、外周リップ部31によってシールされ、第一配管1と第二配管2の軸心L1,L2がいずれかの方向に偏心するような場合でも、リップ部42が配された内周面30a側の内シール領域S1と、前記外周リップ部が配された外周面30b側の外シール領域S2とが、径方向に重ならない位置に設けられているので、独立したシール構造を保つことができ、シール面圧への影響を抑制することができる。また偏心によって繋ぎ部50に撓みが生じた際も、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに当接することでガスケット3が支持され、第1保持部30及び第2保持部40のシール面圧への影響を抑制することができる。また外周突部51によって、ガスケット3が支持され、径方向の変位によるくぼみや座屈等の発生を防止するので、第一配管1を貫通孔10に挿入し、第二配管2にガスケット3を介して接続する組付け作業がしやすくなる。
【0027】
<第2保持部>
第2保持部40の内周面40aは、
図1に示すように第二配管2の外周面2aaに当接され環状のリップ部42が設けられたリップ形成領域Aを有している。この内周面40aに形成されたリップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bには、底部41bと一対の溝壁部41a,41aとを有する環状の凹条部41が設けられている。凹条部41は周方向に沿って環状に形成されており、凹条部41には、第二配管2への嵌合を補強する補強リング4が嵌合した状態で収容されている。補強リング4は金属材、合成樹脂材等からなる環状体であり、凹条部41の溝深さ及び溝幅の寸法に応じて形成されている。リップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bに補強リング4が配される。補強リング4は、第2保持部40の凹条部41に収容された状態で、第二配管2に外嵌された際には、求心方向に締め付け作用を発揮し、補強リング4及びリップ部42による第二配管2への密封力を強固にすることができ、第二配管2をより安定して保持できる。
【0028】
ガスケット3の他方端3b側には、リップ部42に隣接して、突部43が形成されている。突部43は、周方向に沿って連続して形成され、第二配管2にガスケット3を挿入しやすいように、その頂部は、挿入方向とは反対側に傾斜した断面山型形状に形成されている。突部43は、第二配管2の外周面2aaに弾接するように形成されている。突部43の突出量及び隣接するリップ部42との間隔は、突部43が第二配管2の外周面2aaに嵌合され頂部が若干弾性変形し、リップ部42側に倒れた際でも、リップ部42には当接しない程度の突出量及び間隔を空けて形成されることが望ましく、リップ部42の突出量よりも突部43の突出量の方が小さい構造としている。
【0029】
第2保持部40に設けられた凹条部41の底部41bは、補強リング4の内周面4aに当接する当接部41baと、補強リング4の内周面4aに当接しない凹状の窪み部41cとを有している。当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部50側(ガスケット3の一方端3a側)の基部42aに対応する位置に形成され、窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側(ガスケット3の他方端3b側)の基部42bに対応する位置に形成されている。
【0030】
このように第2保持部40の外周面40bに設けられた底部41bに窪み部41cを有しているので、補強リング4と第2保持部40の外周面40bとの間に隙間を形成することできる。これにより、補強リング4と第2保持部40との接触面積を減らし、第二配管2に第2保持部40を挿入する時及び引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を低減し、挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。さらに補強リング4が収容される凹条部41に窪み部41cが形成されていることにより、補強リング4自体を第2保持部40の外周面40bに外嵌する際、接触面が少なくなり、摩擦による抵抗が低減され、補強リング4が組付けやすくなるという効果も奏する。また、当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置に形成され、窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側の基部42bに対応する位置に形成されているので、挿入後はリップ部42のシール面圧を適度に確保できると共に、ガスケット3の挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。
【0031】
複数のリップ部42は、いずれも同大同形の断面山型形状でなり、周方向に沿って環状に形成されている。当接部41baは、リップ部42の頂部42cに対応する位置及びリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置を含んで形成されている。当接部41baがリップ部42の頂部42cに対応する位置及びリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置を含んで形成されているので、リップ部42の頂部42cに対応する位置及びリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置が補強リング4によって支えられた構造となるため、シール面圧をより高めることができ、シール性能を向上させることができる。
【0032】
また窪み部41cは、リップ部42が形成されていない部位に対応する位置に形成されている。具体的には、
図1に示す例は、窪み部41cが計3個形成されており、そのうち、最も繋ぎ部50に設けられた窪み部41cは、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、隣接するリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置まで形成されている。また繋ぎ部50側から2つ目に形成された窪み部41cも、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、隣接するリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置まで形成されている。そして最も反繋ぎ部側、すなわち他方端3bに設けられた窪み部41cは、最も反繋ぎ部側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、最も反繋ぎ部側に配されたリップ部42の基部42bに対応する位置よりも、さらに他方端3b側まで形成されている。
このように設けられた窪み部41cにより、第二配管2に第2保持部40を挿入する時及び引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を十分に低減し挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。
【0033】
さらに凹条部41はリップ部42の形成個数と同数の窪み部41cを有している。
図1の例では、3個のリップ部42に対応して、3個の窪み部41cが設けられている。窪み部41cは、リップ部42と同様に周方向に環状に設けてもよいが、不連続に適宜間隔を空けて形成されるものとしてもよい。このように窪み部41cをリップ部42の個数に対応して設けているので、リップ部42の増加による面圧の過度な上昇を抑制することができる。また、リップ部42が複数あることで、第二配管2が傾いて偏心した場合であっても、第2保持部40が追従してシール面圧を確保することができる。さらに、個々のリップ部42に対して窪み部41cを設けているので、補強リング4を凹条部41に組付けする際の接触面積が小さくなり、組付性を向上させることができる。
【0034】
第2保持部40に設けられたリップ部42,42,42は、一定の距離(間隔)を空けて形成されている。リップ部42,42,42の突出量は、隣接するリップ部42,42間の距離より大とされる。リップ部42は、第二配管2に対し、締め代を持って弾接するよう構成され、隣接するリップ部42,42間の距離は、リップ部42の締め代より大とされる。
第二配管2は振動したり、第二配管2の素材によっては第二配管2に熱膨潤が生じる場合があるが、そのような場合でも、複数のリップ部42,42同士が上述のように設けられていれば、第二配管2への組み付け状態で接触せず(
図3及び
図4参照)、第二配管2の動きに追従し、シール性を維持できる。また、隣接するリップ部42,42同士が第二配管2への組み付け状態で接触しないため、リップ部42の相互の固着(リップ部42,42に貼り付きが発生しない)によってリップ反力が過度に上昇することはなく挿入及び引き抜き荷重の上昇を防止し、挿抜性能を向上させることができる。
【0035】
続いて、前記のように構成されたガスケット3を用いて、第一配管1及び第二配管2を貫通孔10において接続する要領を説明する。
<接続要領>
先ず、ガスケット3には、補強リング4を予め第2保持部40の凹条部41に嵌合させ収容しておく。このとき、補強リング4が収容される凹条部41に窪み部41cが形成されているので、補強リング4の接触面が少なくなり、摩擦による抵抗が低減され、補強リング4が組付けやすい。
次いで
図3に示すように第一配管1の凹部11にガスケット3の第1保持部30を嵌合し、第一配管1にガスケット3を組み付けた状態とする。この組み付け時に内周リップ部32は、底部11cから11dに向かって斜めに倒れた状態に弾性変形する。
【0036】
そして、壁体101の貫通孔10に外部よりガスケット3、続いて第一配管1を挿通させていく(
図1の白抜き矢印方向参照)。ガスケット3の他方端3bが、第二配管2の接続端部2aに至り、はじめに突部43の頂部が、第二配管2の先側部2abに弾接する。先側部2abは、第二配管2の他部位より、径が小さく漸次拡径するように傾斜して形成されているので、挿入方向とは反対側に傾斜した突部43はスムーズに弾性変形する。そして、次いで他方端3b側に配置されたリップ部42が第二配管2の外周面2aaに弾接して、圧縮されながら弾性変形し、斜めに傾斜した状態で第二配管2に被さるように外嵌される。
【0037】
そして、第一配管1の鍔部12が壁体101に当接する程度まで、ガスケット3を第二配管2に向けて挿通させていく。すると、貫通孔10の内周面10aに外周リップ部31が弾接した状態となる。このとき、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。またこのとき、繋ぎ部50が弾性を有して径方向に変位することができるので、貫通孔10の軸心Lと、第二配管2の軸心L2とに多少の芯ずれがあっても、繋ぎ部50の弾性変形によって吸収される。特に、繋ぎ部50はテーパ形状とされているから、繋ぎ部50自体が弾性体からなることと相俟って、偏心のずれ分の吸収が効果的になされる。さらに外周リップ部31は屈曲部31bを備えているので、貫通孔10の内周面10aに弾接される際、屈曲部31bを屈曲点として外周リップ部31を急激に折れるように屈曲させることできる。これにより、貫通孔10に第一配管1を挿入するときの挿入荷重を下げることができ、挿入性能を高めることができる。
最後に、第一配管1の鍔部12を固定具(不図示)によって壁体101に固定すれば、2本の配管1,2の接続が完了する。
【0038】
このガスケット3による接続状態では、第1保持部30の第一配管1に対する外嵌部分及び第2保持部40の第二配管2に対する外嵌部分には、それぞれ環状の内周リップ部32、リップ部42が圧縮状態で介在するので、シール性の高い接続構造とすることができ、第一配管1と第二配管2との間を、冷媒がガスケット3を介して流通可能となる。また、第1保持部30と貫通孔10との間に環状の外周リップ部31が圧縮状態で介在することによって、貫通孔10を通じたインバータケース100の内外がシールされ、貫通孔10を通じて外部から塵埃等がインバータケース100内に侵入することを防止できる。
【0039】
次いで、前記のように接続された第一配管1を引き抜く際の引き抜き要領を説明する。
<引き抜き要領>
まずは、第一配管1の鍔部12の挿通孔に挿通され、第一配管1を壁体101に固定する固定具を外し、第一配管1の鍔部12等をつかんで第二配管2から引き離す方向、すなわち引き抜き方向に力を加える。すると、リップ部42,突部43及び外周リップ部31が反転して、これらの頂部が挿入方向に倒れた状態となる。このとき、凹条部41に窪み部41cが設けられているので、引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を低減することができる。また複数のリップ部42が所定の距離(間隔)を空けて形成され、リップ部42は所定の突出量で形成されているので、隣り合うリップ部42,42同士の相互の固着が発生せず、リップ反力が上昇することもない。よって、引き抜き荷重の上昇を防止できる。
【0040】
そして、上述の状態で、そのまま引く抜き方向に力を加えていけば、ガスケット3が第二配管2から離脱し、第一配管1とともにガスケット3も、第二配管2からスムーズに引き抜くことができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に
図5を参照しながら、第2実施形態のガスケット3Aについて、説明する。
第1実施形態のガスケット3と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は省略する。図中、LAは配管1Aの軸心を示す。
第2実施形態のガスケット3Aは、ハウジングを構成する壁体101に設けられた貫通孔10に1本の配管1Aを接続するガスケットとして適用した例である。ガスケット3Aは、壁体101に設けられた貫通孔10と貫通孔10に挿入される配管1Aとの間を密封する。配管1Aは、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、配管1Aの接続端部1aの外周には、径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12を備えている。第1実施形態に示す第一配管1とは、環状部材を構成する凹部11を備えていない点で形状が異なる。鍔部12には、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されており、この鍔部12を不図示の固定具によって壁体101の外側面に固着することにより、配管1Aが壁体101に固定される。ガスケット3Aは、配管1Aに外嵌され、第1実施形態で説明したものと同様に構成された第1保持部30を備えている。よって、ガスケット3Aは、内周リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35と有した第1保持部30を備えている。また、第1保持部30に設けられた内シール領域S1と外シール領域S2とが、
図5(a)及び
図5(b)に示すように径方向に重ならない位置に設けられている点、さらに内シール領域S1は、外シール領域S2より配管1Aの挿入方向に対して反対側に設けられている点は、第1実施形態と同様である。
【0042】
第2実施形態に示すガスケット3Aのように繋ぎ部及び第2保持部を備えていないガスケットであても、第1保持部30に設けられた内シール領域S1と外シール領域S2とが、径方向に重ならない位置に設けたものとすれば、配管1Aの接続端部1aにガスケット3Aを嵌合し組み付けた状態で、壁体101の貫通孔10に挿入する際、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また
図5(b)に示すように配管1Aの軸心LAと貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。
【0043】
<第3実施形態>
次に
図6を参照しながら、第3実施形態のガスケット3Bについて、説明する。
第1実施形態のガスケット3と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は省略する。図中、LBは配管1Bの軸心を示す。
第3実施形態のガスケット3Bは、ハウジングを構成する壁体101に設けられた貫通孔10に1本の配管1Bを接続するガスケットとして適用した例であり、配管1Bはハウジング内に深く挿入される長さを備えている。ガスケット3Bは、壁体101に設けられた貫通孔10と貫通孔10に挿入される配管1Bとの間を密封する。配管1Bは、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、配管1Bの外周には、径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12を備えている。配管1Bは、第2実施形態に示す配管1Aと同様、第1実施形態に示す第一配管1とは、凹部11を備えていない点で形状が異なるが、第3実施形態のガスケット3Bの内シール領域S1が形成された部位に対応する外周面30bには、環状部材13が嵌合されている。鍔部12には、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されており、この鍔部12を不図示の固定具によって壁体101の外側面に固着することにより、配管1Bが壁体101に固定される。ガスケット3Bは、鍔部12近傍の配管1Bの外周にガスケット3Bが外嵌され、第1実施形態で説明したものと同様に構成された第1保持部30を備えるとともに、第1実施形態では繋ぎ部50に設けられた外周突部51が、外周リップ部31に隣接して設けられている。よって、ガスケット3Bは、内周リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35と有した第1保持部30と、外周突部51とを備えている。また、第3実施形態に係るガスケット3Bにおいても、第1保持部30に設けられた内シール領域S1と外シール領域S2とが、
図6(a)及び
図6(b)に示すように径方向に重ならない位置に設けられている点は、さらに内シール領域S1は、外シール領域S2より配管1Bの挿入方向に対して反対側に設けられている点は、第1実施形態と同様である。
【0044】
第3実施形態に示すガスケット3Bのように繋ぎ部及び第2保持部を備えていないガスケットであても、第1保持部30に設けられた内シール領域S1と外シール領域S2とが、径方向に重ならない位置に設けたものとすれば、配管1Bにガスケット3Bを嵌合し組み付けた状態で、壁体101の貫通孔10に挿入する際、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また
図6(b)に示すように配管1Bの軸心LBと貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。さらに外周突部51が、外周リップ部31の挿入方向側に隣接して断面山型形状で且つ貫通孔10の内周面10aに弾接するように設けられているので、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに確実に当接させることができる。よって、この外周突部51の存在によっても、
図6(b)に示すように偏心しようとする配管1Bの姿勢を第1実施形態の
図4と同様、正しい位置に保持することができる。またこのように配管1Bが偏心した場合でも、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに当接して外周リップ部31の過圧縮を抑制し、外周リップ部31のシール面圧に影響を与えることを防止してシール性を維持できる。さらに第3実施形態に示すガスケット3Bにおいても、内シール領域S1は、外シール領域S2より配管1Bの挿入方向に対して反対側に設けられ、内シール領域S1が形成された部位に対応する外周面30bが平坦部34とされ、平坦部34は、環状部材13が平坦部34に沿って嵌合されている。よって、配管1Bが偏心しても内シール領域S1に配された内周リップ部32,32は安定したシール性を確保できる。
【0045】
なお、前記実施形態では、自動車用のインバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とをガスケット3によって接続する配管接続構造及びこれに用いられるガスケット3に適用した例について述べたが、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であれば、他の配管接続構造にも同様に適用可能である。また、ガスケット3の構成も一例であって、図例に限定されるものではなく、リップ部42,突部43,外周リップ部31,内周リップ部32,内周突部33,外周突部51の個数・形状(突出量、突出幅等)等も図例に限定されるものではない。さらに図示していないが、例えば第2保持部40に設けられる当接部41ba及び窪み部41cの構成も図例に限定されず、当接部41ba及び窪み部41cの形成面積に大小があってもよいし、リップ部42の形成個数と一致していなくてもよい。