(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ネット部材10を上方から押さえる部材として、湾曲可能な弾性を有する固定具20が用いられている。この固定具20は、一端部が樋30の内側に引っ掛けられ、中間部が湾曲し、さらに他端部が樋30の隅部35に挿し込まれた状態で、樋30の内側に嵌め込まれている。この構造では、固定具20の湾曲により生じる弾発力が、樋30の内側において固定具20の両端が係止する被係止部に加わり、被係止部に大きな負荷が掛かるという問題がある。また上記特許文献2では、固定具12の両端の係止部が露出し、外部から見え易い構造となっているため、屋根の外観上好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定具が係止する被係止部に掛かる負荷を抑制すると共に外観に優れた屋根構造及びその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る屋根構造は、屋根と、前記屋根の縁部に沿って延びると共に、屋根上面側に開口する溝を有する樋と、前記樋の溝内に配置されたネット部材と、前記樋の溝の幅方向に間隔を空けて配置され、前記幅方向における前記溝の内側面よりも内側に位置する一対の被係止部と、前記ネット部材を前記樋に固定する固定具と、を備える。前記ネット部材は、前記溝の底に向かって押圧されることにより弾性変形可能に構成されている。前記固定具は、前記ネット部材を前記溝の底に向かって上方から押圧可能な形状を有する押圧部と、前記押圧部の幅方向の両側に設けられ、前記押圧部が前記ネット部材を押圧することによる反力を利用して、前記一対の被係止部に下方から係止する一対の係止部と、を有する。
前記固定具は、一方の前記係止部と、第1接続部と、を含む第1固定具と、他方の前記係止部と、前記第1接続部に対して着脱可能に接続される第2接続部と、を含む第2固定具と、を有している。前記第1接続部及び前記第2接続部の少なくとも一方は、他方の接続部の途中部を受け入れ可能となるように前記樋の前記溝が延びる方向に開くスリットを有している。前記第1固定具及び前記第2固定具の少なくとも一方は、前記スリットが延びる方向における前記第1固定具及び前記第2固定具の移動が許容される非拘束状態と、前記移動が規制されると共に、両接続部における前記スリットの一方側の部分同士の移動を規制する拘束状態と、を切り替える拘束部を有している。
【0008】
上記屋根構造では、樋の溝内に配置されたネット部材を固定具によって上方から押圧することにより、ネット部材の弾性変形に起因する反力により固定具の係止部を被係止部に対して係止させ、ネット部材を樋に対して固定することができる。このため、ネット部材を下方に押圧するだけで係止部を被係止部から外すことができ、固定具を樋から容易に取り外すことができる。従って、固定具を樋から取り外した後、ネット部材を樋に対して着脱することが可能になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0009】
また固定具は、固定具自身の弾発力ではなく、ネット部材の弾発力(反力)を利用して被係止部に係止されている。ネット部材の弾発力は、固定具の弾発力よりも小さいため、被係止部に大きな負荷が加わるのを抑制することができる。しかも、被係止部は樋の内側面よりも内側に位置すると共に、係止部は被係止部に対して下方から係止している。このため、樋の外側から見て係止部が露出せず、外観に優れた屋根構造を提供することができる。
また上記構成によれば、固定具を2つの部材(第1固定具及び第2固定具)により構成することで、単一の部材により固定具を構成する場合に比べて、固定具をより容易に取り付けることが可能になる。また第1及び第2固定具を着脱可能に構成することで、メンテナンス時における固定具の取り外しが容易になる。また上記構成によれば、幅方向のスペースが制限された樋に対して固定具を取り付ける際に、第1及び第2固定具をスリットに沿って樋の溝が延びる方向にスライドさせることで、第1固定具と第2固定具を容易に接続させることができる。しかも、ネット部材の反力により両接続部におけるスリットの一方側の部位同士が移動するのを規制することで、ネット部材に対して押圧力をより確実に伝えることができる。
【0014】
上記屋根構造において、前記第1接続部及び前記第2接続部の少なくとも一方は、基部と、前記基部に対して折り曲げ可能な折り曲げ部と、を有していてもよい。前記折り曲げ部が前記拘束部を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、折り曲げ部を基部に対して折り曲げ、また元に戻すだけで、上記非拘束状態と拘束状態を容易に切り替えることができる。
【0016】
本発明の他の局面に係る屋根構造は、屋根と、前記屋根の縁部に沿って延びると共に、屋根上面側に開口する溝を有する樋と、前記樋の溝内に配置されたネット部材と、前記樋の溝の幅方向に間隔を空けて配置され、前記幅方向における前記溝の内側面よりも内側に位置する一対の被係止部と、前記ネット部材を前記樋に固定する固定具と、を備える。前記ネット部材は、前記溝の底に向かって押圧されることにより弾性変形可能に構成されている。前記固定具は、前記ネット部材を前記溝の底に向かって上方から押圧可能な形状を有する押圧部と、前記押圧部の幅方向の両側に設けられ、前記押圧部が前記ネット部材を押圧することによる反力を利用して、前記一対の被係止部に下方から係止する一対の係止部と、を有する。上記屋根構造は、前記樋より上方の部位において水を受ける受け部と、前記受け部において受けた水を前記樋の溝内に案内する案内部と、を有してい
る。前記案内部が前記被係止部を有してい
る。
【0017】
この構成によれば、固定具の係止部を係止するための被係止部として案内部を利用することにより、案内部以外の部位を被係止部として別に設ける場合に比べて、屋根構造をより簡易化することができる。
【0018】
本発明の他の局面に係る屋根構造の施工方法は、屋根と、前記屋根の縁部に沿って延びると共に屋根上面側に開口する溝を有する樋と、前記樋の溝内に配置されたネット部材と、前記樋の溝の幅方向に間隔を空けて配置されると共に前記幅方向における前記溝の内側面よりも内側に位置する一対の被係止部と、を備えた屋根構造において、前記ネット部材を前記樋に固定するための施工方法である。上記施工方法は、前記ネット部材を前記溝の底に向かって上方から押圧可能な形状を有する押圧部と、前記押圧部の幅方向の両側に設けられた一対の係止部と、を有する固定具を準備する準備ステップと、前記押圧部により前記ネット部材を押圧して弾性変形させると共に、前記ネット部材の弾性変形に起因する反力によって前記一対の係止部を前記一対の被係止部に対して下方から係止させることにより、前記固定具を用いて前記ネット部材を前記樋に固定する固定ステップと、を備える。
【0019】
上記屋根構造の施工方法では、樋の溝内に配置されたネット部材を固定具によって上方から押圧することにより、ネット部材の弾性変形に起因する反力により固定具の係止部を被係止部に対して係止させ、ネット部材を樋に対して固定することができる。このため、ネット部材を下方に押圧するだけで係止部を被係止部から外すことができ、固定具を樋から容易に取り外すことができる。従って、固定具を樋から取り外した後、ネット部材を樋に対して着脱することが可能になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0020】
また固定具は、固定具自身の弾発力ではなく、ネット部材の弾発力(反力)を利用して被係止部に係止される。ネット部材の弾発力は、固定具の弾発力よりも小さいため、被係止部に大きな負荷が加わるのを抑制することができる。しかも、被係止部は樋の内側面よりも内側に位置すると共に、係止部は被係止部に対して下方から係止する。このため、樋の外側から見て係止部が露出せず、外観に優れた屋根構造を得ることができる。
【0021】
上記屋根構造の施工方法において、前記準備ステップでは、一方の前記係止部及び第1接続部を含む第1固定具と、他方の前記係止部及び前記第1接続部に対して着脱可能に接続される第2接続部を含む第2固定具と、を準備してもよい。前記固定ステップは、一方の前記係止部を一方の前記被係止部に係止させることにより、前記第1固定具を取り付ける第1係止ステップと、他方の前記係止部を他方の前記被係止部に係止させることにより、前記第2固定具を取り付ける第2係止ステップと、前記第1接続部と前記第2接続部とを接続し、前記押圧部により前記ネット部材を押圧する押圧ステップと、を有していてもよい。
【0022】
この方法によれば、第1固定具及び第2固定具を順に取り付けた後、これらを接続するという手順によって、固定具を簡単に取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、固定具が係止する被係止部に掛かる負荷を抑制すると共に外観に優れた屋根構造及びその施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
<屋根構造>
まず、本発明の実施形態1に係る屋根構造1の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る屋根構造1における軒先側の領域を拡大して示している。
【0027】
屋根構造1は、建物の外壁から外側に向かって突き出るように設けられる大型庇に適用される構造である。この屋根構造1は、軒下空間の上部を覆う屋根10と、屋根10の縁部11に沿って延びる溝21Dを有する樋21と、樋21の溝内に配置されたネット部材40と、ネット部材40を樋21に固定する固定具50と、樋21を屋根10に対して支持するためのブラケット22と、を備える。
【0028】
屋根10は、上側屋根材12と、下側屋根材13と、上側屋根材12と下側屋根材13との間に配置されると共にこれらを支持する屋根フレーム24,26と、を有する。上側屋根材12は、屋根上面10Aを含み、先端が屋根フレーム24,26よりも樋21側に延びている。
【0029】
屋根フレーム24,26は、上側屋根材12に固定される上側屋根フレーム24と、上側屋根フレーム24の下面に固定されると共に下側屋根材13の上面13Aに固定される下側屋根フレーム26と、を有する。上側及び下側屋根フレーム24,26は、樋21と平行に延びる長尺な部材であり、C形鋼により各々構成されている。
【0030】
上側屋根フレーム24は、上下に延びる板状のウェブ24Aと、ウェブ24Aの上端に接続された板状の上端フランジ24Bと、ウェブ24Aの下端に接続された板状の下端フランジ24Cと、を有する。
図1に示すように、上端及び下端フランジ24B,24Cは、ウェブ24Aに対して略直角を成すと共に、ウェブ24Aの上端及び下端から樋21と反対側に向かって各々延びている。また上端フランジ24B及び下端フランジ24Cの先端は、各々内向きに折り曲げられている。上側屋根フレーム24は、上端フランジ24Bにおいて上側屋根材12の下面10Bに固定されている。
【0031】
下側屋根フレーム26は、上下に延びる板状のウェブ26Aと、ウェブ26Aの上端に接続された板状の上端フランジ26Bと、ウェブ26Aの下端に接続された板状の下端フランジ26Cと、を有する。
図1に示すように、上端及び下端フランジ26B,26Cは、ウェブ26Aに対して略直角を成すと共に、ウェブ26Aの上端及び下端から樋21に向かって各々延びている。即ち、下側屋根フレーム26は、上側屋根フレーム24と反対側に開口している。下側屋根フレーム26は、下端フランジ26Cにおいて下側屋根材13の上面13Aに固定されている。
【0032】
上側屋根フレーム24の下端フランジ24C及び下側屋根フレーム26の上端フランジ26Bには、ボルト25を挿入可能な孔(不図示)が各々形成されている。上側屋根フレーム24と下側屋根フレーム26は、下端フランジ24Cの下面と上端フランジ26Bの上面を接触させた状態でボルト25を挿入し、当該ボルト25に取り付けられた上下一対のナット25Aによって上下に締め込むことにより、互いに連結されている。
【0033】
樋21は、屋根上面10Aを伝って軒先に向かって流れる水を集め、この水を地上又は下水に導くための部材である。
図1に示すように、樋21は、屋根上面10A側に開口すると共に、屋根10の縁部11に沿って紙面奥行方向に延びる溝21Dを有する。
【0034】
樋21は、底壁21Aと、底壁21Aにおける幅方向両端から立設された前壁21B及び後壁21Cと、を有する。
図1に示すように、前壁21Bは、ネット部材40の側部が嵌まり込むように屈曲した形状を有すると共に、底壁21Aから離れるに従い徐々に広がるように立ち上がっている。後壁21Cは、底壁21Aに対して略垂直に立ち上がっている。
【0035】
ブラケット22は、樋21を上側屋根フレーム24に対して支持するための部材である。
図1に示すように、ブラケット22は、樋21の外面全体を覆うように当該樋21よりも一回り大きい形状を有する。より具体的には、ブラケット22は、樋21の底壁21Aの下面に沿うブラケット底部22Aと、樋21の前壁21Bの前面に沿うブラケット前部22Bと、樋21の後壁21Cの後面に沿うブラケット後部22Cと、を有する。ブラケット22は、ブラケット底部22Aにおいて樋21を支持し、樋21の長手方向に間隔を空けて複数設けられている。また
図1に示すように、ブラケット22は、ブラケット後部22Cにおいて蝶ネジ23により上側屋根フレーム24(ウェブ24A)に取り付けられている。
【0036】
ネット部材40は、屋根上面10Aを伝って樋21へ流れ落ちる水から枯葉などのゴミを除去するための部材である。ネット部材40は、水が透過可能で且つ枯葉などのゴミの通過を阻止することが可能な網目構造を有している。このネット部材40を樋21内に配置することで、屋根上面10Aから樋21内へ流れ落ちる水から枯葉などのゴミを除去し、樋21の底部に枯葉などのゴミが堆積するのを防止することができる。
【0037】
ネット部材40は、樋21の長手方向に延びる略円筒形状の部材であり、
図1に示すように樋21の底部側の一部が開いている。ネット部材40は、樋21の前壁21B及び後壁21Cの内側面に各々接するように配置され、樋21の溝21Dの底全体を塞いでいる。またネット部材40は、樋21の溝21Dの底に向かって押圧されることにより、弾性変形可能に構成されている。
【0038】
上記屋根構造1は、樋21が前側から見えないよう隠すための化粧部70をさらに備える。即ち、上記屋根構造1は、
図1に示すように樋21が化粧部70よりも後側(屋根10側)に配置され、化粧部70により樋21が外観上遮られた内樋構造となっている。
【0039】
化粧部70は、上側屋根フレーム24(ウェブ24A)に固定された支持フレーム61と、樋21を前側及び底側から覆う外側化粧部71と、外側化粧部71を支持フレーム61に固定する内側化粧部72と、を有する。
【0040】
図1に示すように、外側化粧部71は、H形鋼からなり、樋21の前側を覆う部分と、樋21の底側を覆う部分と、を有する。外側化粧部71は、上側フランジ71Aの内側に上側爪部71AAを有し、ウェブ71Bにおける高さ方向中央よりもやや下方に下側爪部71BBを有する。
【0041】
内側化粧部72は、L形鋼からなり、
図1に示すように長辺部の上端72Aが上側爪部71AAに嵌入されると共に、短辺部の先端72B(長辺部に接続される側と反対側の端部)が下側爪部71BBに嵌入されている。
【0042】
支持フレーム61は、屋根上面10A側に開口する形状を有する。支持フレーム61の一方の側壁(
図1中左側の側壁)には、ボルト62及びナット63により内側化粧部72の長辺部が固定されている。また支持フレーム61の他方の側壁(
図1中右側の側壁)は、上側屋根フレーム24(ウェブ24A)に固定されている。
【0043】
上記屋根構造1は、樋21より上方の部位において水を受ける受け部71A,12と、受け部71A,12において受けた水を樋21の溝内に案内する水切り部30(案内部)と、を備える。受け部71A,12は、外側化粧部71の上側フランジ71Aと、上側屋根材12と、を有する。
【0044】
水切り部30は、屋根側水切り部32と、化粧側水切り部31と、を有する。
図1に示すように、屋根側水切り部32と化粧側水切り部31は、溝21Dの幅方向において互いに間隔を空けて配置されている。屋根側水切り部32は、溝21Dの一方の内側面(後壁21Cの内側面)よりも内側に位置している。また化粧側水切り部31は、溝21Dの他方の内側面(前壁21Bの内側面)よりも内側に位置している。
【0045】
屋根側水切り部32は、屋根上面10Aを覆うと共に屋根上面10Aから前方に延びる平坦部32Aと、平坦部32Aの前端から樋21に向かって下方に傾斜しつつ後壁21Cよりも前方の位置まで延びる傾斜部32Bと、を有する。この構成により、樋21よりも上方にある屋根上面10Aで受けた水を傾斜部32Bに沿って流し、当該水を樋21の内側に案内することができる。
【0046】
化粧側水切り部31は、前壁21Bの前方から後方まで延びる平坦部31Aと、平坦部31Aの先端から樋21に向かって下方に傾斜しつつ前壁21Bよりも後方の位置まで延びる傾斜部31Bと、を有する。この構成により、傾斜部31Bに沿って水を流し、当該水を樋21の内側に案内することができる。
図1に示すように、化粧側水切り部31は、シーリング60により外側化粧部71(上側フランジ71A)の上面に固定されている。また水切り部30(屋根側水切り部32及び化粧側水切り部31)は、樋21の全長に亘って設けられている。
【0047】
固定具50は、ネット部材40を樋21に固定するための部材である。固定具50は、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)などの板材により構成されている。また
図1に示すように、固定具50の幅は、傾斜部31B,32Bの先端間の距離よりも大きくなっている。
【0048】
固定具50は、押圧部55と、押圧部55の幅方向の両側に設けられた一対の係止部56,57と、を有する。押圧部55は、ネット部材40を樋21の溝21Dの底に向かって上方から押圧可能な形状を有する。一対の係止部56,57は、屋根側係止部56と、化粧側係止部57と、を有する。
図1に示すように、屋根側係止部56は、屋根側水切り部32に対して下方から係止し、化粧側係止部57は、化粧側水切り部31に対して下方から係止している。即ち、本実施形態では、固定具50の一対の係止部56,57を係止するための一対の被係止部として、水切り部31,32(案内部)が利用されている。
【0049】
上記屋根構造1では、ネット部材40を固定具50(押圧部55)によって上方から押圧することにより生じるネット部材40からの反力F1を利用して固定具50を樋21に固定することにより、ネット部材40を樋21に対して固定することができる。より具体的には、ネット部材40は固定具50によって押圧されることにより弾性変形するため、固定具50にはネット部材40の弾性変形に起因する上向きの反力F1が加わる。そして、固定具50は、この反力F1によって上向きに押されることにより、一対の係止部56,57が水切り部31,32(被係止部)に対して下方から係止した状態になる。即ち、固定具50は、ネット部材40を押圧することによる反力F1を利用して、水切り部31,32に対して下方から係止している。
【0050】
このため、上記屋根構造1では、ネット部材40を下方に押圧するだけで係止部56,57を水切り部31,32から外すことができ、固定具50を樋21から容易に取り外すことができる。従って、固定具50を樋21から取り外した後、ネット部材40を樋21に対して着脱することが可能になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0051】
また固定具50は、固定具50自身の弾発力ではなく、ネット部材40の弾発力(反力)を利用して水切り部31,32に係止されている。ネット部材40の弾発力は、固定具50の弾発力よりも小さいため、水切り部31,32に大きな負荷が加わるのを抑制することができる。しかも、水切り部31,32は樋21の内側面よりも内側に位置すると共に、係止部56,57は水切り部31,32に対して下方から係止している。このため、樋21の外側から見て係止部56,57が露出せず、外観に優れた屋根構造1が得られる。
【0052】
次に、固定具50の構成について、
図2を参照して詳細に説明する。固定具50は、第1固定具51と、第1固定具51に対して着脱可能に嵌合する第2固定具52と、を有する。
図2に示すように、第1固定具51と第2固定具52は、同じ大きさ及び形状に形成されている。従って、第1及び第2固定具51,52に共通する構成は、一方についてのみ説明する。
【0053】
第1固定具51は、ガルバリウム鋼板(登録商標)により構成されると共に、その表面にフッ素塗装が施されている。このフッ素塗装により、ガルバリウム鋼板(登録商標)の耐候性が向上すると共に、日射等の紫外線による退色を抑えることもできる。第1固定具51は、第1固定片101と、第1固定片101に対して折り曲げ可能な第1折り曲げ部102と、を含む板材からなる。
【0054】
第1固定片101は、前端101A、後端101B及び前端101Aから後端101Bまで延びる一対の側端101Cを含む長方形状の板からなり、後端101B側の部位が折り曲げられている。第1固定片101には、一方の側端101Cから幅方向略中央まで切り込まれた第1スリット58Aが形成されている。第1スリット58Aは、第1固定片101の幅方向に延びている。また固定具50が樋21に取り付けられた状態(
図1)において、第1スリット58Aは、樋21の溝21Dが延びる方向に開いた状態になる。
【0055】
第1折り曲げ部102は、四角形状に形成されており、第1スリット58Aよりも前端101A側において、一方の側端101Cに設けられている。第1固定片101と第1折り曲げ部102との接続部には、切欠部102Aが両側に設けられている。これにより、第1折り曲げ部102を第1固定片101に対して折り曲げ易くなっている。
【0056】
第2固定具52は、第1固定具51と基本的に同じ構成を有する。即ち、第2固定具52は、第2スリット59Aが形成された第2固定片111と、第2固定片111に対して折り曲げ可能な第2折り曲げ部112と、を含む板材からなる。第2固定片111と第2折り曲げ部112との接続部には、切欠部112Aが両側に設けられている。
【0057】
第1固定具51は、一方の係止部56と、第1接続部58と、を含む。一方の係止部56は、第1固定片101を折り曲げた部分である。第1接続部58は、第1固定片101において第1スリット58Aが形成された部位である第1基部103と、第1基部103に対して折り曲げ可能な第1折り曲げ部102と、を有する部分である。
【0058】
第2固定具52は、他方の係止部57と、第1接続部58に対して着脱可能に接続される第2接続部59と、を含む。他方の係止部57は、第2固定片111を折り曲げた部分である。第2接続部59は、第2固定片111において第2スリット59Aが形成された部位である第2基部113と、第2基部113に対して折り曲げ可能な第2折り曲げ部112と、を有する部分である。
【0059】
第1及び第2固定具51,52は、第1及び第2スリット58A,59Aを介して互いに嵌合することができる。より具体的には、第1スリット58Aにより第2接続部59のスリット隣接部59AA(途中部)を受け入れると共に、第2スリット59Aにより第1接続部58のスリット隣接部58AA(途中部)を受け入れることができる。
【0060】
また第1及び第2固定具51,52を嵌合させた場合、第2接続部59の第2スリット前方部52Aが第1接続部58の第1スリット後方部51Bの上に重なると共に、第1接続部58の第1スリット前方部51Aが第2接続部59の第2スリット後方部52Bの上に重なる。第2スリット前方部52A及び第1スリット後方部51Bはスリット58A,59Aの一方側に位置し、第1スリット前方部51A及び第2スリット後方部52Bはスリット58A,59Aの他方側に位置する。
【0061】
また第1及び第2固定具51,52を嵌合させた後、第1及び第2折り曲げ部102,112を折り曲げる前の状態では、スリット58A,59Aが延びる方向における第1及び第2固定具51,52の移動が許容される。即ち、第1固定具51を第2スリット59Aから抜くことができると共に、第2固定具52を第1スリット58Aから抜くことができる(非拘束状態)。
【0062】
一方、第1及び第2折り曲げ部102,112を折り曲げた状態では、第1固定片101の両面が第2固定片111と第2折り曲げ部112とにより挟まれると共に、第2固定片111の両面が第1固定片101と第1折り曲げ部102とにより挟まれる。この場合、スリット58A,59Aが延びる方向における第1及び第2固定具51,52の移動が規制される。またネット部材40から上向きの反力F1(
図1)を受けた場合でも、第1スリット前方部51Aと第2スリット後方部52Bがスリット58A,59Aを支点として互いに離れる方向に移動するのが規制される。同様に、第2スリット前方部52Aと第1スリット後方部51Bがスリット58A,59Aを支点として互いに離れる方向に移動するのが規制される(拘束状態)。即ち、本実施形態では、第1及び第2折り曲げ部102,112(拘束部)を折り曲げることにより、上述した非拘束状態と拘束状態と、を切り替えることができる。
【0063】
<屋根構造の施工方法>
次に、本実施形態に係る屋根構造の施工方法について、
図2〜
図7を参照して説明する。この施工方法では、以下の手順により、上記本実施形態に係る屋根構造1において固定具50によりネット部材40が樋21に固定される。
【0064】
まず、固定具50を準備するステップS1が行われる。このステップS1では、
図2を参照して説明した第1固定具51及び第2固定具52がそれぞれ準備される。
【0065】
次に、ネット部材40を樋21に固定するステップS2が行われる。このステップS2では、まず、
図3に示すように、一方の係止部56を屋根側水切り部32に対して下方から係止させる(引っ掛ける)ことにより、第1固定具51が取り付けられる(第1係止ステップ)。ここで、第1固定具51は、ガルバリウム鋼板(登録商標)側が上を向くように取り付けられる。
【0066】
次に、
図4に示すように、他方の係止部57を化粧側水切り部31に対して下方から係止させる(引っ掛ける)ことにより、第2固定具52が取り付けられる(第2係止ステップ)。ここで、第2固定具52は、第1固定具51に対して樋の長手方向にずれた位置に取り付けられる。また取り付け後の状態において、第1及び第2固定具51,52の各スリットは、樋の溝が延びる方向に開いた状態になる。また第2固定具52も、ガルバリウム鋼板(登録商標)側が上を向くように取り付けられる。
【0067】
次に、
図5に示すように、第2固定具52を第1固定具51側にスライドさせる。これにより、各スリットを介して第1及び第2固定具51,52が互いに嵌合(交差)した状態になる。
【0068】
次に、
図6に示すように、第1及び第2固定具51,52によりネット部材40を上方から押圧し、両固定具51,52をネット部材40の上面に沿うように曲げる。次に、
図6及び
図7に示すように、第1及び第2折り曲げ部102,112を各々裏面側に折り曲げる。これにより、第1接続部58と第2接続部59が接続され、スリットを支点として第1固定具51と第2固定具52が互いに回動するのが規制される。そして、押圧部55によりネット部材40が樋の溝の底に向かって押圧された状態で、ネット部材40が弾性変形する(押圧ステップ)。
【0069】
そして、固定具50は、ネット部材40の弾性変形に起因する反力F1(
図1)によって、一対の係止部56,57が水切り部31,32に対して下方から係止した状態になる。以上の手順により、固定具50を用いてネット部材40を樋に固定することができる。なお、メンテナンス時には、上記手順と逆の順序によって固定具50を簡単に取り外すことができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る屋根構造2について、
図8を参照して説明する。本実施形態に係る屋根構造2は、基本的に上記実施形態1に係る屋根構造1と同様の構成を有し、同様の効果を奏するが、内樋形式ではなく軒樋形式である点で上記実施形態1と異なっている。
【0071】
図8に示すように、屋根構造2は、屋根10と、屋根10の縁部に沿って延びる溝81Aを有する軒樋81と、軒樋81の溝内に配置されたネット部材40と、ネット部材40を軒樋81に固定する固定具50と、軒樋81を屋根10に固定するブラケット82と、を備える。
【0072】
屋根10は、図略の垂木上に配置され、防水用のルーフィング層が形成された野地板92と、野地板92上に敷設され、屋根上面10Aを含むスレートや瓦などの屋根材91と、軒先において野地板92の下方に配置された板材からなる鼻隠し94と、を有する。屋根材91の下方には、軒樋81の後壁81Cの内側面よりも内側に位置する水切り部83(被係止部)が設けられている。
【0073】
軒樋81の内側には、ブラケット82が嵌め込まれている。ブラケット82は、ネジ95により鼻隠し94に取り付けられており、これによって軒樋81が屋根10に対して支持されている。軒樋81の前側上端81Bには、軒樋81の底部に向かって折り返されたフック部120(被係止部)が設けられている。このフック部120は、軒樋81の前壁81Dの内側面よりも内側に位置している。
【0074】
本実施形態では、固定具50は、上記実施形態1と同様にネット部材40を上方から押圧することにより上向きの反力F1を受ける。これにより、第1固定具51に設けられた一方の係止部56が水切り部83(被係止部)に対して下方から係止すると共に、第2固定具52に設けられた他方の係止部57がフック部120(被係止部)に対して下方から係止している。これにより、上記実施形態1と同様に、被係止部(水切り部83,フック部120)に掛かる負荷を抑制すると共に、メンテナンス性及び外観に優れた屋根構造が実現されている。
【0075】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0076】
上記実施形態1,2のように第1及び第2固定具51,52がスリット58A,59Aを介して互いに嵌合する構成に限定されず、例えば一方の固定具に形成された孔に他方の固定具に形成された突起を挿入する構成としてもよい。また両方の固定具に設けられたフック同士を互いに引っ掛ける構成としてもよい。また第1及び第2固定具51,52を任意の止め具によって接続する構成としてもよい。
【0077】
上記実施形態1,2のように固定具50が第1及び第2固定具51,52により構成される場合に限定されず、1枚の板材により構成されていてもよい。
【0078】
上記実施形態1,2のように水切り部31,32(案内部)を被係止部として利用する場合に限定されず、水切り部31,32以外の部位が被係止部として別途設けられてもよい。
【0079】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。