特許第6818325号(P6818325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818325人工知能を活用したコンテナターミナルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818325
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】人工知能を活用したコンテナターミナルシステム
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   B65G63/00 K
   B65G63/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-237272(P2017-237272)
(22)【出願日】2017年12月11日
(65)【公開番号】特開2019-104576(P2019-104576A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515334979
【氏名又は名称】国土交通省港湾局長
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】菊地 身智雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 保之
(72)【発明者】
【氏名】上原 修二
(72)【発明者】
【氏名】川俣 満
(72)【発明者】
【氏名】服部 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】美野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
(72)【発明者】
【氏名】吉江 宗生
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−075592(JP,A)
【文献】 特開2008−007270(JP,A)
【文献】 特開平08−319027(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061252(WO,A1)
【文献】 港湾の中長期政策の概要(報道発表資料、「第1回港湾における中長期政策検討のための懇親会」の開催、添付資料),2017年 8月23日,全文、全図
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナターミナルの管理システムにおいて、
ニューラルネットワークを構築した人工知能を備え、
前記人工知能には少なくとも、ガントリークレーンに関する処理関連情報と、構内トレーラにおける処理関連情報、およびヤードクレーンにおける処理関連情報を入力データとして入力し、
ディープラーニングの手法を用いて前記ガントリークレーンと前記構内トレーラ、および前記ヤードクレーンそれぞれの待ち時間が最少となる作業タイミングを出力データとして求め、
前記ガントリークレーン、前記構内トレーラ、および前記ヤードクレーンに対して前記出力データに基づく作業指示情報を送信する構成とし、
前記ガントリークレーンに関する処理関連情報には、気象状況や体調の影響により変化する荷役速度の実測値に基づくオペレータの処理能力が含まれることを特徴とする人工知能を活用したコンテナターミナルシステム。
【請求項2】
前記入力データには、前記コンテナターミナルへの外来トレーラにおける処理関連情報を含み、
前記出力データには、前記外来トレーラの到着予測時間と前記外来トレーラの行先情報が含まれ、
前記作業指示情報は、前記外来トレーラにも送信されることを特徴とする請求項1に記載の人工知能を活用したコンテナターミナルシステム。
【請求項3】
前記ガントリークレーンに関する処理関連情報には、本船におけるハッチカバーの取り扱いに関するデータ、前記ガントリークレーンの現在の作業状況、及び前記本船のコンテナ位置が含まれ、
前記構内トレーラにおける処理関連情報には、前記構内トレーラの位置情報や、前記構内トレーラのステータス情報、ドライバー情報、気象情報、ヤードマップ、およびコンテナ搬出入情報が含まれ、
前記ヤードクレーンにおける処理関連情報としては、前記ヤードクレーンの処理能力や、前記ヤードクレーンの位置、前記ヤードクレーンのステータス情報、オペレータ情報、前記ヤードクレーンの荷役速度、本船荷役計画、およびヤードプランが含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の人工知能を活用したコンテナターミナルシステム。
【請求項4】
前記外来トレーラにおける処理関連情報には、前記外来トレーラの位置情報や、前記外来トレーラがゲートを通過する時間、前記外来トレーラに対する前記ゲートの割り当て状況、前記ゲートにいる車両情報、およびゲート前における前記外来トレーラの並び状況が含まれることを特徴とする請求項2を含む請求項3に記載の人工知能を活用したコンテナターミナルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナターミナルを運用する際のシステムに係り、特に、当該システムの効率的な運用に人工知能を活用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾におけるコンテナ物流において、その効率化とコストダウンのために最も重視されているのが、本船の荷役時間を短縮することである。このため、コンテナターミナルでは、本船荷役を行う際、岸壁側に構内トレーラやヤードクレーンなどの配置を集中させ、ガントリークレーン(以下、GCと称す)の作業を停滞させる事無くコンテナの引き渡しが成されるような作業形態が採られている。
【0003】
また、特許文献1には、GCとコンテナを蔵置する蔵置レーンの間を往復する搬送台車と、蔵置レーン上を移動するヤードクレーン、および蔵置レーンに沿ってコンテナを搬送可能なカートとを配備するコンテナターミナルの運用方法が提案されている。そして、特許文献1に開示されている方法では、各蔵置レーンに複数(例えば2台)のヤードクレーンを配備すると共に、蔵置レーン側に、コンテナの受け渡し場所を2箇所設ける構成としている。2箇所のコンテナ受け渡し場所は、ヤードクレーン用の受け渡し場所と、カート用の受け渡し場所であり、受け渡し場所近傍のヤードクレーンが稼働中である場合には、カートが受け渡し場所から離れたヤードクレーンの稼働場所までクレーンを搬送するという形態を採っている。このため、搬送台車、ヤードクレーンは、それぞれその稼働効率を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−196556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているような方法であれば、搬送台車がコンテナヤード内で待機する事が無くなるこのため、GCの稼働効率を上げる事はできる。しかしながら、上記特許文献1に開示されているような方法では、搬送台車やヤードクレーンなどが過剰配置となる可能性が高い。さらに、蔵置レーンに沿って移動するカートも追加されている。このため、本船の荷役時間は短くすることが出来るものの、コンテナヤード全体として見た場合には、搬送台車やヤードクレーンの稼働率は高くなく、コストの低減を図る余地が残されている。
【0006】
そこで本発明では、上記課題を解決し、作業効率の向上を図ると共に、本船の荷役時間を短縮し、コンテナ物流のコスト低減を図ることのできる人工知能を活用したコンテナターミナルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステムは、コンテナターミナルの管理システムにおいて、ニューラルネットワークを構築した人工知能を備え、前記人工知能には少なくとも、ガントリークレーンに関する処理関連情報と、構内トレーラにおける処理関連情報、およびヤードクレーンにおける処理関連情報を入力データとして入力し、ディープラーニングの手法を用いて前記ガントリークレーンと前記構内トレーラ、および前記ヤードクレーンそれぞれの待ち時間が最少となる作業タイミングを出力データとして求め、前記ガントリークレーン、前記構内トレーラ、および前記ヤードクレーンに対して前記出力データに基づく作業指示情報を送信する構成とし、前記ガントリークレーンに関する処理関連情報には、気象状況や体調の影響により変化する荷役速度の実測値に基づくオペレータの処理能力が含まれることを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する人工知能を活用したコンテナターミナルシステムにおいて前記入力データには、前記コンテナターミナルへの外来トレーラにおける処理関連情報を含み、前記出力データには、前記外来トレーラの到着予測時間と前記外来トレーラの行先情報が含まれ、前記作業指示情報は、前記外来トレーラにも送信されるようにすることができる。このような特徴を有する事によれば、外来トレーラに対する荷役作業も含めたコンテナターミナルにおける総合的な荷役作業の効率化を図る事が可能となる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する人工知能を活用したコンテナターミナルシステムにおける前記ガントリークレーンに関する処理関連情報には、本船におけるハッチカバーの取り扱いに関するデータ、前記ガントリークレーンの現在の作業状況、及び前記本船のコンテナ位置が含まれ、前記構内トレーラにおける処理関連情報には、前記構内トレーラの位置情報や、前記構内トレーラのステータス情報、ドライバー情報、気象情報、ヤードマップ、およびコンテナ搬出入情報が含まれ、前記ヤードクレーンにおける処理関連情報としては、前記ヤードクレーンの処理能力や、前記ヤードクレーンの位置、前記ヤードクレーンのステータス情報、オペレータ情報、前記ヤードクレーンの荷役速度、本船荷役計画、およびヤードプランが含まれていると良い。このような各種情報は、コンテナターミナルの場所を選ばず、いずれのコンテナターミナルでも取得する事ができる。よって、コンテナターミナルの効率化に特化した人工知能の学習情報とすることができ、解析における基板作りを安定させることができる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する人工知能を活用したコンテナターミナルシステムにおける前記外来トレーラにおける処理関連情報には、前記外来トレーラの位置情報や、前記外来トレーラがゲートを通過する時間、前記外来トレーラに対する前記ゲートの割り当て状況、前記ゲートにいる車両情報、およびゲート前における前記外来トレーラの並び状況が含まれるようにすると良い。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する人工知能を活用したコンテナターミナルシステムによれば、作業効率の向上を図ると共に、本船の荷役時間を短縮し、コンテナ物流のコスト低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステムを構成する要素とコンテナターミナルとの関係を示す図である。
図2】第1実施形態に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステムの概略構成を示す図である。
図3】第2実施形態に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステムを構成する要素とコンテナターミナルとの関係を示す図である。
図4】第2実施形態に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の人工知能を活用したコンテナターミナルシステムに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、図1図2を参照して、第1実施形態に係る人工知能を活用したコンテナターミナルシステム(以下、単にAI活用システム10と称す)について説明する。
【0014】
[第1実施形態:ターミナル内のみでのシステム]
本実施形態に係るAI活用システム10は、例えば図1に示すようなコンテナターミナル12で採用される。コンテナターミナル12には、例えばコンテナ40を蔵置する蔵置場所14が設けられると共に、岸壁側には、コンテナ40を運ぶコンテナ船(本船16)が着岸するバースが設けられている。また、着岸している本船16には、コンテナ40を荷役するためのガントリークレーン(以下、GC18と称す)と、コンテナターミナル内でのコンテナ40の移送を行うトレーラ(以下、構内トレーラ20と称す)、および蔵置場所14においてコンテナ40の荷役作業を行うヤードクレーン22とを有する。
【0015】
また、このようなコンテナターミナル12では、管理塔24内などに設けられたターミナルオペレーションシステム(以下、TOS26と称す)により、GC18に対する作業指示、構内トレーラ20の作業指示、ヤードクレーン22の作業指示、およびコンテナ40の搬出入管理等が行われている。本実施形態に係るAI活用システム10では、TOS26上、あるいはTOS26に付帯されたコンピュータ上に、ニューラルネットワークを構築した人工知能(以下、artificial intelligence:AI28と称す)が構成されており、主にTOS26によって管理、蓄積されている情報に基づいて、コンテナ荷役の最適化を図るための指示情報の出力が成される。
【0016】
[AI入力情報]
AI28が指示情報の出力のために利用する入力情報としては、主に、GC18に関する処理関連情報や、構内トレーラ20における処理関連情報、およびヤードクレーン22における処理関連情報などである。各処理情報の具体例としては、次の通りであるが、以下に示す情報は、絶対的なものでは無く、適宜取捨選択が成される事があると共に、その情報区分も変動することがある。
【0017】
GC18に関する処理関連情報としては、GC18のオペレータの処理能力や、本船16におけるハッチカバーの取り扱いに関するデータ、GC18の現在の作業状況、荷役速度、及び本船16のコンテナ位置等とすることができる。ここで、オペレータの処理能力とは、例えば、1個のコンテナ40を荷役する際に要する作業時間などである。また、荷役速度は、平均的、あるいは最高速度では無く、実測されるリアルタイムな荷役速度とすると良い。リアルタイムな荷役速度を入力情報とすることで、AI28は、気象状況や体調等の影響による荷役速度の変化を考慮することが可能となるからである。
【0018】
構内トレーラ20における処理関連情報としては、構内トレーラ20の位置情報や、ステータス情報、ドライバー情報、気象情報、ヤードマップ、およびコンテナ搬出入情報などとすることができる。位置情報は、リアルタイムな位置情報の取得であり、構内トレーラ20に付帯された端末、あるいはドライバーが保有する携帯端末等と、GPS(Global Positioning System)などを利用する事ができる。なお、GPSによる取得位置情報についての誤差を補正する場合には、短距離無線通信網などを利用して位置情報の解析を行うようにすれば良い。また、ステータス情報とは、該当する構内トレーラ20が作業中であるのか、フリーであるのかといった情報である。気象情報は、天候によるトレーラの移動速度の変化を考慮するための情報である。ヤードマップは、蔵置場所14などを含むコンテナヤード全体の地図である。また、コンテナ搬出入情報とは、バンニング登録情報や保税運送承認情報、CLS情報などを含むコンテナ情報である。なお、位置情報の検出については、GPS以外の技術を利用しても良い。
【0019】
ヤードクレーン22における処理関連情報としては、ヤードクレーン22の処理能力や、位置、ステータス情報、オペレータ情報、荷役速度、本船荷役計画、およびヤードプランなどとすることができる。ヤードクレーン22の処理能力とは、1個のコンテナ40を荷役する際の作業時間などであり、ステータス情報とは、移動速度などである。また、荷役速度は、GC18と同様に、リアルタイムな荷役速度である。本船荷役計画は、事前に作成されたもの、および作業状況に応じてリアルタイムに修正を加えたものを含む。さらにヤードプランは、コンテナヤード全体のコンテナ配置計画、およびリアルタイムでのコンテナ配置状況などである。
【0020】
このような情報は、主に、TOS26に入力、蓄積され、AI28の入力情報として利用される。情報の取得は、実状の変化の把握や、解析時の負荷などを考慮し、入力データの転送が一定間隔で行われることが望ましい。
【0021】
[AI解析]
TOS26を介して得られる上記のような入力情報に基づき、AI28は、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングの手法による解析を行う。本実施形態の場合における解析事項は、例えば次のような事項とすることができる。
【0022】
まず、本船荷役状況によるGC18の荷役タスクの順序予測である。次に、ヤードクレーン22の荷役タスクの順序予測。そして、本船荷役タスクの順序予測や、ヤードクレーン22の荷役タスクの順序予測に基づく構内トレーラ20への最適指示情報の解析である。構内トレーラ20への最適指示情報は、前述した荷役タスクの順序予測(GC18、ヤードクレーン22)と、構内トレーラ20の位置やステータスに基づき、GC18やヤードクレーン22への到達時間(移動距離)と、待機時間が最少化されるように、荷役タスク毎に求められる。なお、到達時間は、GPS等を介して取得された位置情報と、ヤードマップに基づいて求められる最短経路と、構内トレーラ20の移動速度に基づいて算出する事ができる。また、待機時間は、予測される到達時間と、GC18やヤードクレーン22の荷役タスクの順序や、現在の作業状況などに基づいて算出されることとなる。そして、構内トレーラ20への最適指示情報は、到達時間と待機時間の和が最小となる荷役位置への移動指示となる。
【0023】
[AI出力情報]
AI28によって求められた構内トレーラ20への最適指示情報は、TOS26へ出力されると共に、TOS26からネットワークを介して構内トレーラ20へ、荷役場所(移動場所)の指示が成される。また、TOS26は、ヤードクレーン22に対しても、構内トレーラ20の荷役場所、およびタイミングに基づく移動指示が出力される。また、GC18に対しては、必要に応じて(荷役タスクの順序変更が生じた場合など)、変更情報の出力が成される。
【0024】
[効果]
上記のようなAI活用システム10によれば、GC18と構内トレーラ20、及びヤードクレーン22における作業待機時間の最小化を図る事ができる。よって、作業効率の向上を図る事ができる。また、構内トレーラ20に対する最適指示情報を求める事により、構内トレーラ20の移動に無駄が無く、コンテナターミナル12内に配備する構内トレーラ20の数を最小化する事ができる。これにより、本船16の荷役時間の短縮と共に、コンテナターミナル全体において物流のコスト低減を図ることが可能となる。
【0025】
[第2実施形態:外来トレーラを含む場合]
次に、第2実施形態に係るAI活用システム10Aについて、図3図4を参照して説明する。本実施形態に係るAI活用システム10Aの殆どの構成は、上述した第1実施形態に係るAI活用システム10と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には、図面に同一符号を附して、詳細な説明は省略することとする。
【0026】
本実施形態に係るAI活用システム10Aと、第1実施形態に係るAI活用システム10との相違点は、コンテナターミナル12に対する外来トレーラ32の存在の考慮である。外来トレーラ32は、コンテナターミナル12を基点として、ゲート30を介して陸運側におけるコンテナ40の搬出入を行う。このため、外来トレーラ32に対する蔵置場所14でのコンテナ荷役は、本船荷役と同時、あるいは前後して成されることとなる。よって、本船荷役作業を重視した場合には、外来トレーラ32に対する荷役作業が遅滞し、コンテナターミナル12におけるゲート30の内外での渋滞等の問題を生じさせることとなってしまう。
【0027】
本実施形態では、こうした外来トレーラ32に対する荷役作業も含めたコンテナターミナル12における総合的な荷役作業の効率化を図る事を目的としている。具体的には、AI28に対する入力データとして、外来トレーラ32における処理関連情報を含ませて、AI28によるディープラーニングを実施するシステムとする。
【0028】
[AI入力情報]
外来トレーラ32における処理関連情報とは、例えば、外来トレーラ32の位置情報や、ゲート30に対するIN/OUT時間、ゲート30の割り当て状況、ゲート30にいる車両情報、およびゲート30前における並び状況などである。外来トレーラ32の位置情報は、コンテナターミナル12に対する外来トレーラ32の来場時期を予測するための情報であり、GPSや、既存の地図情報、ETC情報などに基づいて導く事ができる。また、ゲート30にいる車両情報とは、その車両が実入り運送なのか、空運送なのかの判定情報などである。ゲート30前における並び状況とは、例えばゲート30に設置されたカメラ(不図示)などによる取得映像を利用した解析データであり、ゲート30前における渋滞状況などの実状に基づき、来場して蔵置場所14まで移動する際の時間を予測するためのデータ等として用いることができる。
【0029】
このような入力データは、第1実施形態に係るAI活用システム10と同様に、TOS26へ入力され、AI28による解析に利用される。
【0030】
[AI解析]
第1実施形態に記載したように、TOS26を介して得られる上記のような入力情報(第1実施形態に記載した情報を含む)に基づき、AI28は、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングの手法による解析を行う。本実施形態の場合における解析事項は、外来トレーラ32が指定された蔵置場所14へ到達する時刻の予測である。
【0031】
具体的には、上述した位置情報や、ゲート30に対するIN/OUT時間(到達に関してはゲートIN時間)、ゲート30の割り当て状況、車両情報、ゲート30前における並び状況等に基づいて、予測を行う事ができる。なお、第1実施形態において説明した構内トレーラ20に対する最適指示情報についても同様に解析を行う。ここで、構内トレーラ20に対する最適指示情報の解析を行う際に必要となるヤードクレーン22の荷役タスクの順序予測を行う際には、外来トレーラ32の到達時刻や、荷役時間が考慮されることとなる。
【0032】
[AI出力情報]
AI28によって求められた構内トレーラ20への最適指示情報は、TOS26へ出力されると共に、TOS26からネットワークを介して構内トレーラ20へ、荷役場所(移動場所)の指示が成される。また、TOS26からヤードクレーン22に対して出力される移動指示には、構内トレーラ20の荷役場所、およびタイミングに加え、外来トレーラ32の到達時刻と荷役場所が付加される。また、外来トレーラ32には、適宜、通過ゲートや、蔵置場所14等の作業指示情報が出力される。外来トレーラ32は、この指示に従う事で、ゲート通過時の待ち時間や、荷役作業時の待ち時間を最小に抑える事が可能となる。さらに、本実施形態におけるAI活用システム10Aでは、日単位でのコンテナターミナル12に投入する人員(構内作業者数の他、構内トレーラ20やヤードクレーン22を含む)の数や、ゲートレイアウト(IN側とOUT側の数の割合等)の算出、および出力も行われる。
【0033】
[効果]
上記のようなAI活用システム10Aによれば、GC18と構内トレーラ20、及びヤードクレーン22における作業待機時間の最小化を図る事ができることに加え、外来トレーラ32がコンテナ40を搬出入する際の待ち時間も低減することができる。このため、コンテナターミナル12における総合的な荷役作業の効率化を図る事が可能となる。よって、本船16の荷役時間の短縮と共に、コンテナ物流のコスト低減を図ることが可能となる。
【0034】
[応用例]
上記実施形態では、AI28が解析に利用する入力データとして、作業者等の判断による影響が無い事項のみを選定要素として挙げている。しかしながら、作業者等の操作や判断、すなわちコンテナターミナル12内に人が居る事による影響(波動的な変化)を入力データに含ませる事で、AI28による解析が、人による影響を踏まえたものとなり、より実状に最適な結果を得る事が可能となると考えられる。
【0035】
このため、AI28が解析に利用する入力データには、作業者認知情報を含むようにすると良い。具体的には、GC18やヤードクレーン22などの荷役機械のオペレータ、ターミナルオペレータ、構内トレーラ20や外来トレーラ32のドライバー等における判断や対応を含むようにすれば良い。
【0036】
作業者認知情報の入力については、専用の入力機器の他、携帯端末等におけるタッチパネルや、カメラ、音声入力手段等を介してなされるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0037】
10………AI活用システム、12………コンテナターミナル、14………蔵置場所、16………本船、18………GC、20………構内トレーラ、22………ヤードクレーン、24………管理塔、26………TOS、28………AI、30………ゲート、32………外来トレーラ、40………コンテナ。
図1
図2
図3
図4