(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
通常時は開放されている陸閘も、台風による高波や高潮、河川の増水、地震による津波発生時のような緊急時においては閉鎖される。一般的な横引き式の陸閘においては、横方向(左右方向)に陸閘を移動させて堤防等の開口部を閉鎖した後、下方向に移動させて地面と陸閘の下端部との水密性を確保する。更には、陸閘の両端部を堤防等に固定させるための締め付け機構を備えるものもある。
【0003】
最も簡易的な陸閘は、人力によって上記の開閉操作が行われる。但し、当然のことながら非常に労力が掛かると共に、開閉操作に時間も掛かる。緊急時には速やかに陸閘の閉鎖作業を行わなければならない。そこで、電動モータや油圧モータ、油圧シリンダ等を適宜組み合わせて、開閉操作の労力軽減を図ったものが種々、開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に開示された横引きゲートシステムは、箱形に形成された扉体が、その内部に走行用の電動モータによって車輪を回転させる走行機構と、昇降用の電動モータによって車輪を基点として扉体を上下させる昇降機構とが構成され、堤防の開口部を当該扉体が横移動することによって開閉する横引きゲートシステムであって、前記扉体によって開口部を開閉する横引きゲート部分に設けられ、前記扉体に設置された走行用及び昇降用の電動モータの駆動を制御し、横引きゲートの開閉を操作する開閉操作装置と、遠隔地において緊急遮断状況を検出して前記開閉操作装置を介して横引きゲートの開閉を遠隔操作する遠隔操作装置とを有することを特徴とする。当該構成とすることによって、遠隔操作による横引きゲートの開閉を可能としている。
【0005】
また、特許文献2には、ハンドルによって扉体内の左右に延設した伝動軸を回動し、該伝動軸の回動をその端部に設けた傘歯車に接続した昇降機構を介して上下動に変換し、該昇降機構に連結された車輪を連動させる横行式防潮扉において、一端を扉体に枢支し、他端を前記昇降機構に軸支した腕杆の中間部に前記車輪を軸着したことを特徴とする防潮扉の昇降装置が開示されている。当該構成によって、車輪を上下移動させるための伝動軸の応力及びハンドルの回転力を軽減できるようにしている。
【0006】
更に、圧縮気体を利用した陸閘・水門の開閉装置も開示されている(特許文献3参照)。特許文献3に開示された陸閘・水門の開閉装置は、圧縮気体タンクと、前記圧縮気体タンクに蓄えられた圧縮気体を動力源とするモータ(エアモータ)と、前記モータにより陸閘又は水門を駆動する駆動機構と、前記モータに設けられたモータギアと噛合可能な駆動ギアと、前記駆動機構に含まれ、前記駆動ギアの回転により動力が伝えられる車輪とを具備し、前記モータが、前記圧縮気体で伸縮され得るアクチュエータにより揺動可能であり、前記圧縮気体を開放し、陸閘又は水門を駆動することを特徴とする。当該構成によって、災害時などの非常事態において、陸閘又は水門を作動させる電気が供給されない場合においても、外部からの電気エネルギーを使用することなく、陸閘又は水門を駆動させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された横引きゲートシステムでは、走行用の電動モータによる走行機構と、昇降用の電動モータによる昇降機構とが構成されている。つまり、扉体を開閉操作するために別々のモータを使用しており、システム構成は簡単であるが、システム全体のコンパクト化が困難である。
【0009】
また、特許文献2に開示された昇降装置によると、扉体の昇降操作に掛かる労力はある程度、軽減されるものと思料するが、横方向の移動については特に記載されておらず、従来の人力による横行操作が必要であれば、非常に労力が掛かると共に、開閉操作に時間も掛かる。
【0010】
更に、特許文献3に開示された開閉装置においても、通常時は横行用のモータと昇降用のモータによって扉体が開閉駆動されており、非常時におけるエアモータも併設されていることから、装置構成が複雑になると共に、装置全体のコンパクト化も困難である。
【0011】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、堤防等の開口部に設置される横引き式の陸閘を、比較的簡単な構成で開閉することが可能な陸閘開閉装置を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、堤防等の開口部において陸閘を開閉するための陸閘開閉装置であって、前記陸閘を開閉駆動するための駆動装置と、前記陸閘を横行移動させるための横行機構と、前記陸閘を昇降移動させるための昇降機構と、を含んで成り、前記駆動装置が、モータと、前記モータが備える駆動ギヤに噛合する第1従動ギヤと、前記第1従動ギヤの回動軸に電磁クラッチを介して連結される第1出力軸と、前記第1従動ギヤにアイドラギヤを介して直列に噛合する第2従動ギヤと、前記第2従動ギヤの回動軸に電磁クラッチを介して連結される第2出力軸と、を含んで構成され、前記第1出力軸と前記横行機構とが連結され、前記第2出力軸と前記昇降機構とが連結されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の陸閘開閉装置において、前記陸閘を前記開口部に固定するための締め付け機構を備え、前記アイドラギヤの回動軸に電磁クラッチを介して第3出力軸が連結され、該第3出力軸と前記締め付け機構とが連結されていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の陸閘開閉装置において、前記締め付け機構が、前記第3出力軸の回動によって回動する締め付け用ロッドと、前記締め付け用ロッドに対して垂直方向に配設され、前記締め付け用ロッドの回動に伴って水平方向に回動する締め付け用アームと、を含んで構成され、前記締め付け用アームの基部が、前記締め付け用ロッドと共に回動するアーム取付用プレートに、取付軸によって回動自在に軸支され、前記締め付け用ロッドの回動軸心と、前記取付軸の回動軸心とが偏心していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の陸閘開閉装置において、前記モータが電動モータ又はエアモータであることを特徴とする。
【0016】
更にまた、本発明の陸閘開閉装置において、前記モータが電動モータであると共に、別のエアモータを備え、前記エアモータが備える駆動ギヤが前記第2従動ギヤに噛合可能に配設され、前記電動モータと前記エアモータを切り替えて前記陸閘を開閉することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の陸閘開閉装置によると、一つのモータで陸閘を横行及び昇降させることができる。つまり、非常に単純な装置構成によって2軸の切り替え駆動を行うことができると共に、装置自体、特に駆動装置をコンパクトに構成することができる。
【0018】
また、本発明の陸閘開閉装置に係る駆動装置以外の構成、例えば横行機構や昇降機構などの構成は、陸閘の大きさや回動力の伝達距離などに応じて適宜、変更することが可能である。従って、新設の陸閘への摘要は勿論であるが、既存の陸閘への設置も容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明の陸閘開閉装置において、更に締め付け機構を備えると共に、アイドラギヤの回動軸に電磁クラッチを介して第3出力軸を連結し、第3出力軸と締め付け機構とを連結することによって、アイドラギヤの回動を利用して陸閘を堤防に締め付け固定することができ、装置構成は簡単でありながら、陸閘の開閉操作の更なる省力化を図ることができる。
【0020】
更に、本発明に係る駆動装置は構成が単純でありながら3軸駆動を一のモータで実現することができ、本発明の陸閘開閉装置の低コスト化、コンパクト化、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0021】
また更に、本発明の陸閘開閉装置に係る締め付け機構を、締め付け用ロッドと、締め付け用ロッドの回動に伴って水平方向に回動する締め付け用アームとを含んで構成し、締め付け用ロッドの回動軸心と、締め付け用アームの取付軸の回動軸心とを偏心させることによって、装置構成は観でありながら、人手を要することなく陸閘を堤防に締め付け固定することができ、締め付け作業の省力化を図ることができると共に、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【0022】
また、本発明の陸閘開閉装置に係るモータには電動モータ又はエアモータが適用でき、頻繁に開閉操作を行う場所に設置される陸閘には、商用電源を動力源とする電動モータを適用することが、装置自体も簡単に構成することができるため好ましい。一方、エアモータを適用することによって、ガス圧で陸閘の開閉駆動を行うことができ、停電時でも陸閘の開閉操作を行うことが可能となる。
【0023】
更にまた、本発明の陸閘開閉装置に係るモータに電動モータを適用すると共に、エアモータを併用することによって、停電等の緊急時であっても陸閘の開閉操作を人手に頼ることなく、行うことができる。
【0024】
特に、通常時に使用するモータは商用電源を動力源とする電動モータとし、併用するモータは緊急時のみに使用するエアモータとすることによって、エアタンクの容量を少なくすることができると共に、制御用のバッテリも小型のもので対応可能であるため、本発明の陸閘開閉装置のコンパクト化、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の陸閘開閉装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る陸閘開閉装置1の全体構成を示した正面図、
図2(a)は、
図1に示した陸閘開閉装置1に係る駆動装置3の概略正面図、同図(b)は駆動装置3の概略平面図である。これら
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る陸閘開閉装置1は、堤防Lの開口部において横引き式の陸閘2を開閉するために設置される。
【0027】
本実施形態の陸閘開閉装置1は、主に陸閘2を開閉駆動するための駆動装置3と、陸閘2を開口部において横行移動させるための横行機構4と、陸閘2を昇降移動させるための昇降機構5とから成る。
【0028】
陸閘開閉装置1に係る駆動装置3は、
図2に示すように、一のモータ10と、モータ10が備える駆動ギヤ11に噛合する第1従動ギヤ12と、この第1従動ギヤ12の回動軸12aに電磁クラッチ15aを介して連結される第1出力軸12bと、第1従動ギヤ12にアイドラギヤ13を介して直列に噛合する第2従動ギヤ14と、第2従動ギヤ14の回動軸14aに電磁クラッチ15bを介して連結される第2出力軸14bと、を含んで構成されている。
【0029】
そして、第1従動ギヤ12の回動軸12aに電磁クラッチ15aを介して連結される第1出力軸12bには、横行機構4が連結されている。横行機構4の構成は特に限定されず、第1出力軸12bの回動を車輪20に伝達して車輪20を回動させることができればよい。本実施形態に係る横行機構4は、第1出力軸12bに配設されたスプロケットS1と、車輪20と、スプロケットS1から車輪20までの間に配設され、第1出力軸12bの回動を車輪20に伝達するためのチェーンC1〜C3及びスプロケットS4、S5とによって構成されている。つまり、第1出力軸12bの回動は、スプロケットS1からチェーンC1〜C3及びスプロケットS4、S5によって車輪20に伝達され、車輪20を回動させることができる。
【0030】
一方、第2従動ギヤ14の回動軸14aに電磁クラッチ15bを介して連結される第2出力軸14bには、昇降機構5が連結されている。昇降機構5についても、その構成は特に限定されず、第2出力軸14bの回動を車輪20に伝達して、車輪20を昇降させることができればよい。本実施形態に係る昇降機構5は、第2出力軸14bに配設されたスプロケットS2と、第2出力軸14bの回動を伝達するためのチェーンC4、C5及びスプロケットS6、S7と、スプロケットS7の回動をシャフトSH1、SH2に伝達するためのべベルギヤボックスB1と、車輪20を昇降させるための昇降用シャフト21と、シャフトSH1及びSH2の回動を昇降用シャフト21に伝達するためのウォームギヤボックスWG1、WG2とを含んで構成されている。つまり、第2出力軸14bの回動は、スプロケットS2からチェーンC4、C5及びスプロケットS6、S7、そしてベベルギヤボックスB1を介してシャフトSH1、SH2に伝達され、シャフトSH1、SH2の回動がウォームギヤボックスWG1、WG2を介して昇降用シャフト21に伝達されることによって、車輪20を昇降させることができる。
【0031】
なお、本実施形態の陸閘開閉装置1においては、上記の駆動装置3、横行機構4、昇降機構5の他、駆動装置3に電力を供給するための引込開閉基盤6、電源用コードリール7、陸閘2の開閉信号を送出するための操作盤8、駆動装置3の開閉制御を行う制御盤9、横行時における陸閘2の開閉状態を検出するための横行用リミットスイッチSL、昇降時における陸閘2の昇降状態を検出するための昇降用リミットスイッチLL、陸閘2の開閉駆動時に周囲に注意を促すための回転灯Rlなどを備えている。なお、本発明の陸閘開閉装置においては、これらの構成を備えるものに限定されず、各構成のレイアウトも図示したものに限定されない。更には、地震センサーや水位センサーを備え、これらのセンサーで異常を検出した場合には自動的に陸閘2を閉駆動するように構成することも可能である。
【0032】
以上の構成を含んで成る本実施形態の陸閘開閉装置1によると、陸閘2を以下のようにして開状態から閉状態へすることができる。まず、陸閘2を閉駆動するための信号を操作盤8から送出すると、制御盤9を介して駆動装置3に伝達される。駆動装置3ではモータ10が駆動され、駆動ギヤ11が回動すると共に、駆動ギヤ11の回動に伴って、駆動ギヤ11に噛合する第1従動ギヤ12、第1従動ギヤ12に噛合するアイドラギヤ13、アイドラギヤ13に噛合する第2従動ギヤ14が回動する。なお、この段階では、電磁クラッチ15a、15bはオフの状態である。即ち、第1従動ギヤ12の回動軸12a及び第2従動ギヤ14の回動軸14aは回動しているが、第1出力軸12b及び第2出力軸14bは回動していない。
【0033】
制御盤9からの制御信号によって電磁クラッチ15aがオンになると、第1従動ギヤ12の回動軸12aと第1出力軸12bが電磁クラッチ15aによって連結され、回動軸12aの回動が第1出力軸12bに伝達される。この第1出力軸12bには上記の通り横行機構4が連結されている。従って、第1出力軸12bの回動が、スプロケットS1からチェーンC1〜C3及びスプロケットS4、S5によって車輪20に伝達され、車輪20を回動させることによって陸閘2を横行させる。そして、横行用リミットスイッチSLによって陸閘2の横行完了を検出すると、電磁クラッチ15aがオフとなり、陸閘2の横行が終了する。
【0034】
次に、制御盤9からの制御信号によって電磁クラッチ15bがオンになると、第2従動ギヤ14の回動軸14aと第2出力軸14bが電磁クラッチ15bによって連結され、回動軸14aの回動が第2出力軸14bに伝達される。この第2出力軸14bには上記の通り昇降機構5が連結されている。従って、第2出力軸14bの回動が、スプロケットS2からチェーンC4、C5及びスプロケットS6、S7、そしてベベルギヤボックスB1を介してシャフトSH1、SH2に伝達され、シャフトSH1、SH2の回動がウォームギヤボックスWG1、WG2を介して昇降用シャフト21に伝達され、車輪20を上昇させて陸閘2内へ収容することによって陸閘2の下端面を地面に接地させる。昇降用リミットスイッチLLによって車輪20の上昇完了を検出すると、電磁クラッチ15bがオフとなり、陸閘2の下方向への移動(=車輪20の上方向への移動)が完了する。
【0035】
以上のように、本実施形態の陸閘開閉装置1によると、一つのモータで陸閘2を横行及び昇降させることができる。つまり、非常に単純な装置構成によって2軸の切り替え駆動を行うことができると共に、装置自体、特に駆動装置3をコンパクトに構成することができる。
【0036】
また、本実施形態の陸閘開閉装置1に係る駆動装置3以外の構成、例えば横行機構4や昇降機構5などの構成は、陸閘2の大きさや回動力の伝達距離などに応じて適宜、変更することが可能である。従って、新設の陸閘への摘要は勿論であるが、既存の陸閘への設置も容易に行うことができる。
【0037】
なお、上記実施形態の陸閘開閉装置1では、第1出力軸12bに横行機構4が連結され、第2出力軸14bに昇降機構5が連結されているが、横行機構4と昇降機構5が逆に連結されてもよい。つまり、第1出力軸12bに昇降機構5を連結し、第2出力軸14bに横行機構4を連結し、陸閘2を閉状態にする際には、電磁クラッチ15bを先にオンにすることによって、陸閘2を横行させ、次に電磁クラッチ15aをオンにすることによって、車輪20を収容することができる。
【0038】
また、上記実施形態の陸閘開閉装置1において、モータ10の種類は特に限定されないが、頻繁に開閉操作を行う場所に設置される陸閘には、商用電源を動力源とする電動モータを適用することが、装置自体も簡単に構成することができるため好ましい。電動モータを適用する場合には、停電時のバックアップ用電源として、バッテリや発電機を併設しておいてもよい。
【0039】
また更に、上記の電動モータの他、エアモータを適用することも可能である。エアモータによると、ガス圧で陸閘の開閉駆動を行うことができるため、停電時でも陸閘の開閉操作を行うことができる。なお、エアモータを搭載した陸閘開閉装置の実施形態については後述する。
【0040】
以上、本発明の一実施形態に係る陸閘開閉装置1について説明したが、本実施形態に係る駆動装置3において、上記の2軸駆動のみならず3軸駆動を行うこと可能である。即ち、駆動装置3を構成するアイドラギヤ13の回動軸13aに電磁クラッチ15cを介して第3出力軸13bを連結することによって、第3出力軸13bの回動を他の駆動機構に伝達することが可能となる。
【0041】
以下に、他の駆動機構の一例として、締め付け機構30について説明する。締め付け機構30は、陸閘2の横行及び下方向への移動が完了した後、陸閘2を堤防Lに固定するための機構である。機械式のフック型ロック機構などが公知であるが、依然として人手によるボルトでの締め付け作業が必要な陸閘が多く、本実施形態に係る締め付け機構30によると、陸閘2の締め付け作業の省力化が図られる。
【0042】
具体的には、締め付け機構30は、アイドラギヤ13の回動軸13aに電磁クラッチ15cを介して連結された第3出力軸13bに連結される。締め付け機構30は、
図3に示すように、主として第3出力軸13bの回動によって回動する締め付け用ロッド32と、締め付け用ロッド32の回動に伴って水平方向に回動する締め付け用アーム34とを含んで構成されている。締め付け用ロッド32は、陸閘2の長手方向両端部に垂直方向に配設されている。そして、この締め付け用ロッド32に第3出力軸13bの回動が伝達されるように連結されている。
【0043】
本実施形態では、第3出力軸13bにベベルギヤBGを介して出力用シャフト22が連結され、出力用シャフト22にスプロケットS3が配設されている。スプロケットS3に巻き回されたチェーンC6は、陸閘2の長手方向に配設された締め付け用シャフト24に配設されたスプロケットS8に巻き回され、第3出力軸13bの回動が締め付け用シャフト24に伝達される。そして、締め付け用シャフト24の両端部に配設されたスプロケットS9、S10及びチェーンC7、C8と、締め付け用ロッド32側のスプロケットS11、S12と、ウォームギヤボックスWG3、WG4などを介して、締め付け用シャフト24の回動が陸閘2の両端部に配設された締め付け用ロッド32に伝達される。なお、第3出力軸13bの回動を締め付け用ロッド32に伝達する構成は当該実施形態に限定されず、公知のあらゆる伝達機構によって伝達することが可能である。また、図中の符号BBで示すベベルギヤボックスは、手動操作を行うためのハンドルを取り付けるために配設されたベベルギヤボックスであり、手動操作を行う必要が無ければ、
図3における左側の伝達機構と同様に構成することも可能である。
【0044】
垂直方向に配設された締め付け用ロッド32には、この締め付け用ロッド32に対して垂直方向に複数の締め付け用アーム34が配設されている。締め付け用アーム34は締め付け用ロッド32の回動に伴って水平方向に回動する。具体的には
図4に示すように、締め付け用アーム34の基部34aが、締め付け用ロッド32と共に回動するアーム取付用プレート35、35に、取付軸36によって回動自在に軸支されている。締め付け用アーム34の取付軸36の回動軸心Pは、締め付け用ロッド32の回動軸心Oから距離Qだけ偏心させている。
【0045】
更に、締め付け用アーム34は、ねじりバネ39によって取付軸36の回動軸心Pを中心として
図4(b)中、X方向に付勢されており、ピン31によって締め付け用アーム34のX方向への回動を規制している。従って、締め付け用アーム34は、締め付け用ロッド32の回動に伴って回動軸心Oを中心として水平方向に回動すると共に、取付軸36の回動軸心Pを中心として、締め付け用ロッド32とピン31との間を水平方向に回動する。
【0046】
図3において、陸閘2の締め付け時には、左側の締め付け用ロッド32が時計回りに回動するのに伴って締め付け用アーム34も時計回りに水平方向に供回りし、右側の締め付け用ロッド32が反時計回りに回動するのに伴って締め付け用アーム34も反時計回りに水平方向に共回りする。なお、締め付け用ロッド32の先端部34bには、堤防Lに設けられた係止部40に係合する係合ねじ37及び取付軸36の軸心Oから係合ねじ37までの寸法を調整するための調整用ナット38が配設されている。
【0047】
図5に、締め付け機構30による陸閘2の締め付け操作を示す。なお、同図に示した締め付け操作は、
図3における左側の締め付け機構30によるものである。陸閘2の横行及び下方向への移動が完了すると、駆動装置3に係る電磁クラッチ15cがオン(電磁クラッチ15a、15bはオフ状態)になって、アイドラギヤ13の回動軸13aと第3出力軸13bが電磁クラッチ15cによって連結され、回動軸13aの回動が第3出力軸13bに伝達される。この第3出力軸13bには上記の通り締め付け機構30が連結されている。従って、第3出力軸13bの回動が、スプロケットS3からチェーンC6〜C8、スプロケットS8〜S12、締め付け用シャフト24、ウォームギヤボックスWG3、WG4などを介して締め付け用ロッド32に伝達され、締め付け用ロッド32が時計回りに回動する(
図5(a))。
【0048】
すると、それに伴って、締め付け用ロッド32にアーム取付用プレート35を介して配設された締め付け用アーム34も、回動軸心Oを中心に時計回りに回動し、堤防Lに予め設けられた係止部40に締め付け用アーム34の先端部34bが当接する(
図5(b))。
【0049】
ここで、
図5からも明らかなように、締め付け用ロッド32の回動軸心Oと、締め付け用アーム34の取付軸36の回動軸心Pが偏心している。従って、
図5(b)の状態から締め付け用ロッド32を更に回動させると、アーム取付用プレート35は締め付け用ロッド32と共に回動するが、締め付け用アーム34は、その先端部34bが係止部40に当接しているため水平方向の回動が規制される。一方、締め付け用アーム34を軸支する取付軸36は、アーム取付用プレート35の回動に伴って移動する。従って、締め付け用アーム34はねじりバネ39による付勢力に対抗して取付軸36の回動軸心Pを中心に反時計回りに回動することとなり、その結果、締め付け用アーム34が陸閘2に対して垂直方向に移動することとなる(
図5(c))。つまり、締め付け用アーム34は、陸閘2の方向に引き込まれるような動きをすることとなる。
【0050】
締め付け用ロッド32を更に回動させていくことによって、締め付け用アーム34は陸閘2の方向に更に引き込まれる。そして、締め付け用アーム34の引き込み動作に伴って陸閘2が堤防Lに引き寄せられることとなり、最終的に陸閘2を堤防Lに締め付け固定することができる(
図5(d)〜(e))。
【0051】
なお、本実施形態において、アイドラギヤ13の回動力を締め付け用ロッド32に伝達する機構では、ウォームギヤボックスWG3を介在させて締め付け用ロッド32を回動させている。従って、締め付け用シャフト24の回動は締め付け用ロッド32側に伝達され、締め付け用ロッド32を正逆方向に回動させることができるが、締め付け用ロッド32の回動は締め付け用シャフト24側に伝達されることがない。つまり、締め付け機構30による締め付け作業が完了し、締め付け用シャフト24の回動を停止すると、ウォームギヤボックスWG3が締め付け用ロッド32のロック機構の役割を果たすこととなり、別途、回動規制手段などを設けずとも、締め付け用ロッド32及び締め付け用アーム34の回動を規制することが可能となる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る締め付け機構30によると、駆動装置30に係るアイドラギヤ13の回動を利用して陸閘2を堤防Lに締め付け固定することができ、装置構成は簡単でありながら、陸閘2の開閉操作の更なる省力化を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る駆動装置30は構成が単純でありながら3軸駆動を一のモータ10で実現することができ、本発明の陸閘開閉装置の低コスト化、コンパクト化、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態に係る陸閘開閉装置1について詳述したが、本発明の陸閘開閉装置は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、
図6に示した本発明の他の実施形態に係る陸閘開閉装置1aは、この陸閘開閉装置1aに係る駆動装置50に、モータ10とモータ51の二つのモータを備える。そして、モータ10が電動モータであると共に、モータ51にはエアモータが採用されている。なお、本実施形態の陸閘開閉装置1aは、この駆動装置50及びエアモータを駆動するための構成以外、即ち陸閘2の横行機構4や昇降機構5、締め付け機構30といった基本的な構成は上記で詳述した陸閘開閉装置1と同様である。図中において同一の符号を付した構成や機構については、上記実施形態の陸閘開閉装置1に係る構成や機構と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
本実施形態の陸閘開閉装置1aに係る駆動装置50は、
図7に示すように、上記実施形態に係る駆動装置3と同様、モータ10と、モータ10が備える駆動ギヤ11に噛合する第1従動ギヤ12と、この第1従動ギヤ12の回動軸12aに電磁クラッチ15aを介して連結される第1出力軸12bと、第1従動ギヤ12にアイドラギヤ13を介して直列に噛合する第2従動ギヤ14と、第2従動ギヤ14の回動軸14aに電磁クラッチ15bを介して連結される第2出力軸14bと、を含んで構成されている。更に、アイドラギヤ13の回動軸13aには電磁クラッチ15cを介して第3出力軸13bも連結され、基本的にはモータ10による3軸駆動が可能な構成となっている。
【0056】
そして、本実施形態に係る駆動装置50では、モータ10と共に、モータ51が併設されており、モータ10は商用電源を動力源とする電動モータであり、モータ51はエアタンクATに蓄えられたエアーを動力源とするエアモータである。モータ10とモータ51は、モータブラケット52に取り付けられ、取付軸53を軸心として揺動自在に軸支されている。モータブラケット52は、その端部52aがリンク機構54(本実施形態ではトグルリンク)を介してエアシリンダ55に連結されている。つまり、エアシリンダ55が備えるピストンロッド56の伸縮に伴って、取付軸53を軸心としてモータブラケット52が揺動することとなる。そして、通常時、即ち商用電源を動力源としてモータ10(電動モータ)による開閉操作時は、
図7に示すように、モータ10に係る駆動ギヤ11を第1従動ギヤ12に噛合させる。一方、停電時などにおいてモータ10(電動モータ)が使用できない場合は、
図8に示すようにモータブラケット52を揺動させてモータ51(エアモータ)の駆動ギヤ11aを第2従動ギヤ14に噛合させることによって、陸閘2の開閉操作を行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態の陸閘開閉装置1aにおいては、エアモータであるモータ51を駆動するため、モータ51の動力源となるエアーを蓄えておくエアタンクAT、エアーの圧力を一定に保つためのレギュレータ57、エアタンクATからのエアーの供給を制御して、モータ10からモータ51へ切り替えるためにエアシリンダ55を作動させたり、エアモータであるモータ51を駆動したりするためのエア機器制御用電磁弁ボックス58、停電時制御用のバッテリ59などを備える。
【0058】
以下に、本実施形態の陸閘開閉装置1aにおいて、エアモータであるモータ51による陸閘2の開閉操作について説明する。通常時は、
図7に示すように、電動モータであるモータ10に係る駆動ギヤ11が第1従動ギヤ12に噛合しており、上記実施形態の陸閘開閉装置1と同様にして横行機構4、昇降機構、締め付け機構30を駆動して陸閘2の開閉操作が行われる。
【0059】
停電等の緊急時において、モータ10による駆動ができなくなった場合、バッテリ59から供給される電力によってエア機器制御用電磁弁ボックス58内の電磁弁が制御される。まず、エアシリンダ55にエアーが供給されると、縮んだ状態であったピストンロッド56が伸び、リンク機構54によってモータブラケット52が取付軸53を軸心として揺動し、モータ51の駆動ギヤ11aが第2従動ギヤ14に噛合する(
図8参照)。そして、エアタンクATから供給されるエアーによってモータ51を駆動しつつ、駆動装置50が備える電磁弁15a、15b、15cを適宜、制御することによって、横行機構4、昇降機構5及び締め付け機構30を駆動し、陸閘2の開閉操作を行うことができる。
【0060】
以上のように、本実施形態の陸閘開閉装置1aによると、駆動装置50が電動モータであるモータ10とエアモータであるモータ51とを備えているため、停電等の緊急時であっても陸閘2の開閉操作を人手に頼ることなく、行うことができる。
【0061】
また、通常時に使用するモータ10は商用電源を動力源とする電動モータとし、モータ51は緊急時のみに使用するエアモータとすることによって、エアタンクATの容量を少なくすることができると共に、制御用のバッテリ59も小型のもので対応可能であるため、陸閘開閉装置1aのコンパクト化、低コスト化を図ることができる。
【0062】
以上、本発明の陸閘開閉装置の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。