(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818369
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】外出判定システム、外出判定方法および外出判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20210107BHJP
【FI】
G06Q10/10
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-66111(P2019-66111)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-166532(P2020-166532A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】519113882
【氏名又は名称】株式会社メトロリー
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】大城 祐介
【審査官】
山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−191486(JP,A)
【文献】
特開2019−023833(JP,A)
【文献】
特開2017−215721(JP,A)
【文献】
特開2010−055352(JP,A)
【文献】
交通費精算のためのAI,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」, [online],2018年 8月30日,[令和2年8月13日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20180830052106/https://www.metroly.io/>
【文献】
ビジネスマンを「めんどくさい」から解放する,「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」, [online],2019年 3月25日,[令和2年8月13日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190325085712/https://rodem.valwebservices.com/>
【文献】
西野 正彬、外3名,あいまいな表現を含むスケジューラデータとGPSデータとの時間的共起関係を利用した行動予測手法の検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2010年 2月25日,第109巻,第450号,p.73−78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外出判定システムであって、
スケジュールデータに基づき、少なくとも交通結節点を、検出する検出手段と、
少なくとも前記交通結節点に基づき、前記スケジュールデータに係る外出の有無を決定する判定手段と、を有し、
前記検出手段は、前記スケジュールデータに基づき、前記スケジュールデータに含まれる1以上の語句に対応する生起コストまたは連接コストを決定し、少なくとも前記生起コストに基づき前記1以上の語句のコスト総和を決定し、前記コスト総和が最大または最小となる語句および語句の組み合わせを決定することで、決定された前記語句が示す前記交通結節点を検出する、外出判定システム。
【請求項2】
前記検出手段は、前記語句が示す前記交通結節点の文字数を変数とする指数関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する、
請求項1に記載の外出判定システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記語句が示す前記交通結節点の文字数が所定文字数に満たない場合、当該交通結節点から第1の距離の範囲内における交通結節点数を変数とする、第1のガウシアン減衰関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する、
請求項1または2に記載の外出判定システム。
【請求項4】
前記検出手段は、ユーザ交通結節点から前記語句が示す前記交通結節点までの直線距離を変数とし、第2の距離をハーフライフとする、第2のガウシアン減衰関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する、
請求項1〜3のいずれかに記載の外出判定システム。
【請求項5】
前記判定手段は、深層学習モデルに基づき、前記外出の有無を決定する、
請求項1〜4のいずれかに記載の外出判定システム。
【請求項6】
前記深層学習モデルは、前記スケジュールデータに含まれる予定と対応する感情極性、外出性および非外出性のそれぞれと、前記スケジュールデータに含まれる時刻および人物のそれぞれと、前記検出手段により検出された前記交通結節点と、に係るベクトル値を入力値とし、外出可能性および非外出可能性の少なくとも1つに係るベクトル値を出力値と
する、請求項5に記載の外出判定システム。
【請求項7】
前記深層学習モデルは、外出または非外出を示すユーザ入力データを教師信号とする、再帰型ニューラルネットワークモデルである、
請求項5または6に記載の外出判定システム。
【請求項8】
外出判定システムであって、
少なくとも、ユーザ交通結節点、前記交通結節点、および、前記外出の有無に基づき、交通費を決定する精算手段を有する、
請求項1〜7のいずれかに記載の外出判定システム。
【請求項9】
外出判定方法であって、
スケジュールデータに基づき、少なくとも交通結節点を、検出する検出ステップと、
少なくとも前記交通結節点に基づき、前記スケジュールデータに係る外出の有無を判定する判定ステップと、
をコンピュータのプロセッサに実行させ、
前記検出ステップは、前記スケジュールデータに基づき、前記スケジュールデータに含まれる1以上の語句に対応する生起コストまたは連接コストを決定し、少なくとも前記生起コストに基づき前記1以上の語句のコスト総和を決定し、前記コスト総和が最大または最小となる語句および語句の組み合わせを決定することで、決定された前記語句が示す前記交通結節点を検出する、外出判定方法。
【請求項10】
外出判定プログラムであって、コンピュータを、
スケジュールデータに基づき、少なくとも交通結節点を、検出する検出手段と、
少なくとも前記交通結節点に基づき、前記スケジュールデータに係る外出の有無を判定する判定手段と、
として機能させ、
前記検出手段は、前記スケジュールデータに基づき、前記スケジュールデータに含まれる1以上の語句に対応する生起コストまたは連接コストを決定し、少なくとも前記生起コストに基づき前記1以上の語句のコスト総和を決定し、前記コスト総和が最大または最小となる語句および語句の組み合わせを決定することで、決定された前記語句が示す前記交通結節点を検出する、外出判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外出判定システム、外出判定方法および外出判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人もしくは法人による所在地外での活動は、公共交通機関による人員の移動を必要とする場合がある。当該活動は、一例として、営業活動を指す。当該移動に要する交通費は、一般的には、ユーザにより入力処理された移動経路情報に基づき、経理担当者による承認を以て、精算される。
【0003】
交通費精算において、公共交通機関の種別および交通結節点に係る情報を含む移動経路情報を、都度、入力処理する場合、ユーザは、移動の度に当該移動経路情報を記録する必要がある。当該記録に要する作業時間の発生は、業務効率化に支障をきたす恐れがある。
【0004】
特許文献1に記載された発明においては、公共交通機関を利用するための情報記憶カードを用いて交通費精算を行う。当該文献に記載された技術においては、外出精算の申請を受け付ける外出精算申請サーバと、通信可能に接続された複合機におけるIC(Integrated Circuit)カード読み取り機から読み込まれたバスや鉄道の利用履歴と、勤怠管理データと、を連動することで、交通費の精算処理を行なう。
【0005】
しかしながら、情報記憶カードに対応する利用履歴に基づき交通費精算を行う場合、当該情報記憶カードを要さない移動に係る交通費精算を行うために、ユーザは、当該移動経路に係る情報の入力作業を行わなければならない。一方、ユーザの行動履歴を、当該利用履歴ではなく、ユーザのスケジュールデータに基づき管理する技術が報告されている。
【0006】
特許文献2に記載された発明においては、ユーザによって登録されたスケジュールと、ユーザの行動履歴とを組み合わせて利用することによって、ユーザの行動をより正確に把握することを可能にする。当該文献に記載された技術においては、当該スケジュールを取得するスケジュール取得部と、位置情報を含む行動履歴を取得する行動履歴取得部と、当該行動履歴に基づいて、当該スケジュールのうちの過去スケジュールを補正する過去スケジュール補正部とを含む情報処理装置が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011―118881号公報
【特許文献2】特開2015―011431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報記憶カードに対応付けられる交通機関の利用履歴は、交通費精算を行う上で、有用となり得るが、移動後でなければ移動経路の特定が出来ない。そのため、未来スケジュールの交通費精算は、困難である。
【0009】
未来スケジュールに基づき交通費の算出を行うためにスケジュールデータを解析する場合、ユーザ毎に生ずる行動予定に係る表記揺れを一例とするノイズを除去し、外出判定および移動経路の特定を行う必要がある。過去スケジュールのノイズ除去は当該利用履歴や位置情報に基づき実現できるが、未来スケジュールのノイズ除去は困難である。
【0010】
本発明では、交通費精算のための移動経路の特定を含む外出判定を、交通機関の利用履歴を用いることなく、ユーザの過去スケジュールおよび/または未来スケジュールを含むスケジュールデータに基づき、実現すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、外出判定システムであって、スケジュールデータに基づき、少なくとも交通結節点を、検出する検出手段と、少なくとも当該交通結節点に基づき、スケジュールデータに係る外出の有無を決定する判定手段と、を有する。
このような構成とすることで、交通費精算のための外出判定を、交通機関の利用履歴を用いることなく、ユーザのスケジュールデータに基づき、実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、ユーザにより入力されたテキストデータを主とするスケジュールデータに基づき、外出判定システムの実現のためのトラフィック量を軽減できる。これは、本発明が、ユーザ端末などの位置情報の経時変化を一例とする、データサイズがテキストデータより大きいデータに係るトラフィックを必ずしも要さないことを、意味する。これにより、本発明は、外出の有無を決定するまでの処理時間を短縮できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、検出手段は、スケジュールデータに基づき、スケジュールデータに含まれる1以上の語句に対応する生起コストまたは連接コストを決定し、少なくとも生起コストに基づき、交通結節点を検出する。
このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、スケジュールデータに基づく形態素解析を行い、交通結節点を精度よく検出できる。
また、このような構成とすることで、検出手段は、少なくとも生起コストに基づき、スケジュールデータに含まれる文字列のコスト総和を決定する。例として、検出手段は、当該コスト総和が最大/最小となる場合の語句を、交通結節点として検出する。これにより、本発明は、ユーザ入力にともなう表記揺れの影響を抑えながら、交通結節点の検出を実現できる。外出判定に係るトラフィックがテキストデータのためのトラフィックに占められるため、本発明は、外出の有無を決定するまでの処理時間を短縮できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、検出手段は、語句が示す交通結節点の文字数を変数とする指数関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する。
このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、文字数が多く、固有名詞である可能性を有する語句を、優先的に検出できる。このため、本発明は、スケジュールデータに基づく交通結節点の検出を、好適に実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、生起コストの決定をデータベース参照などに基づく一意的な処理としない。このため、本発明は、生起コストの決定に係るデータ格納/参照の頻度を減らし、データベース負荷を軽減できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、検出手段は、語句が示す交通結節点の文字数が所定文字数に満たない場合、当該交通結節点から第1の距離の範囲内における交通結節点数を変数とする、第1のガウシアン減衰関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する。
このような構成とすることで、文字数が少ない複数以上の交通結節点の名称の内、利用客数が多い交通結節点を、優先的に検出する。このため、本発明は、スケジュールデータに基づく交通結節点の検出を、好適に実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、生起コストの決定をデータベース参照などに基づく一意的な処理としない。このため、本発明は、生起コストの決定に係るデータ格納/参照の頻度を減らし、データベース負荷を軽減できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、検出手段は、ユーザ交通結節点から語句が示す交通結節点までの直線距離を変数とし、第2の距離をハーフライフとする、第2のガウシアン減衰関数に基づき、当該語句の生起コストを決定する。
このような構成とすることで、スケジュールデータの入力元であるユーザの行動範囲内の交通結節点を、優先的に検出できる。このため、本発明は、スケジュールデータに基づく交通結節点の検出を、好適に実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、生起コストの決定をデータベース参照などに基づく一意的な処理としない。このため、本発明は、生起コストの決定に係るデータ格納/参照の頻度を減らし、データベース負荷を軽減できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、深層学習モデルに基づき、外出の有無を決定する、
このような構成とすることで、本発明は、スケジュールデータの入力元であるユーザのそれぞれにおいて、高精度に最適化された、外出判定を実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムは、外出の有無に係る決定を、データベース参照などに基づく一意的な処理としない。このため、本発明は、当該決定に係るデータ格納/参照の頻度を減らし、データベース負荷を軽減できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0017】
本発明の好ましい形態では、深層学習モデルは、スケジュールデータに含まれる予定と対応する感情極性、外出性および非外出性のそれぞれと、スケジュールデータに含まれる時刻および人物のそれぞれと、検出手段により検出された交通結節点と、に係るベクトル値を入力値とし、外出可能性および非外出可能性の少なくとも1つに係るベクトル値を出力値とする。
このような構成とすることで、本発明は、スケジュールデータを構成する各種情報を多元的に取扱う、好適な外出判定のための深層学習モデルを、実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明は、多元的なベクトル値を入力値とする深層学習モデルに基づくため、学習に係る処理時間の短縮と、当該深層学習モデルに基づく推論の精度向上と、を両立できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、深層学習モデルは、外出または非外出を示すユーザ入力データを教師信号とする、再帰型ニューラルネットワークモデルである。
このような構成とすることで、本発明に係る外出判定システムでは、外出判定の推論結果に係る正否がユーザにより入力処理される。このとき、当該ユーザ入力データは、好ましくは、スケジュールデータの入力画面上、または、スケジュールデータの入力画面に重ねて表示された画面において、ユーザにより入力される。このため、ユーザは、簡便に教師データの入力処理を行える。本発明は、上記の効果により、外出判定の精度向上を、好適に実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明は、簡便な教師データの入力により、外出判定の精度向上までの深層学習モデルの学習時間を短縮できる、という更なる技術的効果を奏する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、外出判定システムであって、少なくとも、ユーザ交通結節点、交通結節点、および、外出の有無に基づき、交通費を決定する精算手段を有する。
このような構成とすることで、本発明は、単なる移動経路の登録に基づかない、高精度な外出判定を含む交通費精算を、実現できる。
また、このような構成とすることで、本発明は、交通費の決定をスケジュールデータおよびデータベース参照に基づく一意的な処理としない。このため、本発明は、交通費の決定に係るデータ格納/参照の頻度を減らし、データベース負荷を軽減できる、という更なる技術的効果を、奏する。
【0020】
本発明は、外出判定方法であって、スケジュールデータに基づき、予定、人物および交通結節点の少なくとも1つを、検出する検出ステップと、少なくとも当該交通結節点に基づき、スケジュールデータに係る外出の有無を判定する判定ステップと、をコンピュータのプロセッサに実行させる。
【0021】
本発明は、外出判定プログラムであって、コンピュータを、スケジュールデータに基づき、少なくとも交通結節点を、検出する検出手段と、少なくとも当該交通結節点に基づき、スケジュールデータに係る外出の有無を判定する判定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、交通費精算のための移動経路の特定を含む外出判定が、交通機関の利用履歴を用いることなく、ユーザのスケジュールデータに基づく形態素解析ならびに機械学習により、ユーザのそれぞれに最適化され、実現される。また、過去スケジュールならびに未来スケジュールを示すスケジュールデータに基づく、外出判定が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る外出判定システムの概要である。
【
図2】本発明の実施形態に係る外出判定システムのハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る外出判定システムのフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る外出判定システムにおける深層学習モデルの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明に係る外出判定システム1について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0025】
例えば、本実施形態では、外出判定システム1の構成、動作などについて説明するが、同様の構成の方法、サーバ装置、コンピュータプログラム、記録媒体なども、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、一例として、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0026】
本発明における、外出判定システム1が利用されるサービス形態には、制限はない。
【0027】
また、本実施形態では、外出判定システム1に係る通知処理は、ユーザ端末2に記憶したアプリケーションを用いて行う、当該通知処理はこれに限らず、例えば、ユーザ端末2に紐付けられたメールアドレスに対して電子メールを送信する方法や、その他、SMS(Short Message Service)等、種々の方法を利用できる。
【0028】
図1は、本実施形態に係る外出判定システム1の概要を示す図である。
【0029】
本実施形態では、スケジュールデータSCLに含まれる文字列の形態素解析を行い、交通結節点または拠点の名称を検出する。外出判定システム1は、検出された当該名称を含む入力値に基づき、深層学習モデルRNNに基づき学習/推論を行い、外出判定を行う。
【0030】
図2に示す通り、外出判定システム1は、ユーザ端末2およびサーバ装置3を備える。
【0031】
本実施形態において、ユーザ端末2は、演算装置201と、主記憶装置202と、補助記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、通信装置206と、相互接続のためのバスインタフェースと、を備える。サーバ装置3は、演算装置301と、主記憶装置302と、補助記憶装置303と、通信装置304と、相互接続のためのバスインタフェースと、を備える。
【0032】
本実施形態における演算装置201および301は、命令セットを実行可能なプロセッサを備える。
【0033】
本実施形態における主記憶装置202および302は、RAM(Random Access Memory)を一例とする揮発性メモリを備える。
【0034】
本実施形態における補助記憶装置203および303は、一例として、不揮発性メモリを備え、その記録方式に制限はない。
【0035】
本実施形態における補助記憶装置203には、オペレーティングシステム(OS)2001が記録されている。
【0036】
本実施形態における補助記憶装置303には、オペレーティングシステム(OS)3001と、OS3001と協調してその機能を発揮する外出判定プログラム3002と、入力処理を種々の経路から行うためのアプリケーションプログラミングインタフェース(API)3003と、が記録されている。
【0037】
本実施形態における入力装置204は、一例として、タッチパネルを備え、その入力方式に制限はない。
【0038】
本実施形態における出力装置205は、描画情報を保持するためのフレームバッファとしてビデオメモリを備え、また、ディスプレイ装置を備える。
【0039】
本実施形態では、演算装置201及び主記憶装置202を少なくとも含む、SoC(System−on−Chip)が、ユーザ端末2に備えられている構成としてもよい。このとき、当該SoCには、一例として、特定用途に最適化された集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、が備えられる構成としてもよい。
【0040】
本実施形態における通信装置206および304は、無線通信を行うために用いられる。当該通信は、Wi−Fi(登録商標)等の無線通信規格に基づく。通信媒体は、電波、音波及び光波などが利用でき、その種別に制限はない。なお、本実施形態における通信装置206は、Ethernet(登録商標)を一例とする有線通信規格を用いてもよい。
【0041】
外出判定システム1は、通信プロトコルにTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等を用いてデータ通信ができる。なお、ネットワークNWは、CATV(Community Antenna Television)回線や、外出体通信網、航空通信網、衛星通信網等、種々の回線を利用することができ、その通信方式に、制限はない。
【0042】
図3は、本実施形態における外出判定システム1のフローチャートを示す。
【0043】
本実施形態における外出判定システム1は、スケジュールデータSCLの入力プロセス(ステップS10)、当該スケジュールデータSCLに基づく自然言語処理による、交通結節点の検出プロセス(ステップS20)、深層学習モデルによる推論処理に基づく外出判定プロセス(ステップS30)、外出/非外出を示すユーザ入力データを教師信号として入力処理するプロセス(ステップS40)、および、スケジュールデータSCLの交通費精算プロセス(ステップS50)を、有する。
【0044】
本実施形態における外出判定システム1は、登録手段11と、検出手段12と、判定手段13と、精算手段14と、を有する。検出手段12、判定手段13及び精算手段14の機能は、サーバ装置3により実現される構成が好ましく、このとき、ユーザ端末2はスケジュールデータSCLの入力処理と、外出判定システム1に係る表示処理と、のために用いられる。なお、登録手段11、検出手段12、判定手段13および精算手段14の少なくとも一部の機能が、ユーザ端末2により行われてもよい。
【0045】
本実施形態では、スケジュールデータSCLはユーザ端末2を介してサーバ装置3へ入力処理される(ステップS10)。このとき、API3003を介する構成としてもよい。本実施形態におけるスケジュールデータSCLは、一例として、Google Calendar(登録商標)においてユーザにより入力処理された過去スケジュールおよび未来スケジュールを示すテキストデータを、有する。
【0046】
登録手段11は、スケジュールデータSCLの入力処理のために用いられる。また、登録手段11は、外出判定システム1における初期設定として、コンフィグデータの入力処理のために用いられる。当該コンフィグデータには、ユーザ交通結節点、ユーザ拠点、交通定期区間、勤務時間、外出性または非外出性を示す語句が含まれる。
【0047】
ユーザ交通結節点は、ユーザ自宅住所の最寄駅や、ユーザ勤務先住所の最寄駅が含まれる。ユーザ拠点には、ユーザ自宅住所や、ユーザ勤務先住所が含まれる。なお、当該ユーザ交通結節点およびユーザ拠点には、それぞれ、取引先や営業先の組織に対応付けられた住所の最寄駅や、住所が含まれてもよい
【0048】
検出手段12は、スケジュールデータSCLに含まれる文字列(テキストデータ)の自然言語処理を行い、語句に分割する(ステップS20)。当該自然言語処理は、Mecab(登録商標)を一例とする、形態素解析エンジンを用いて行われる。
【0049】
検出手段12は、生起コストおよび連接コストの計算を行い、検出手段12は、スケジュールデータSCLに含まれる文字列における単語に対応付けられる生起コストと、単語間を繋ぐ品詞を含む語句に対応付けられる連接コストとに基づき、当該文字列におけるコスト総和を計算する(ステップS20)。検出手段12は、当該文字列におけるコスト総和が最大または最小となる語句および語句の組み合わせを、決定する。このとき、検出手段12が、交通結節点のみならず、スケジュールデータSCLに含まれる、予定や人物などの語句を検出することは、自明である。
【0050】
本実施形態では、スケジュールデータSCLに含まれる交通結節点を示す単語の生起コストは、当該交通結節点の重要度スコアに基づき決定される。当該重要度スコアは、当該交通結節点から第1の距離の範囲内における交通結節点数を独立変数とする、第1のガウシアン減衰関数に基づき、決定される。このとき、当該第1の距離は、ユーザ毎に、一意的に定められる。なお、本実施形態における当該第1のガウシアン減衰関数は、線形的または指数関数的減衰の特性を有する減衰関数に代替されてもよい。
【0051】
本実施形態における交通結節点は、駅、空港、タクシー乗場、バスターミナル、インターチェンジおよびジャンクションを含む交通網と、人の往来を可能とする道路などとの結節点を示す。よって、本実施形態における交通結節点は、単一の交通手段を利用可能な交通拠点を含む。なお、当該人の往来を可能とする道路の内の、車両の往来が可能なあらゆる場所は、タクシー乗降の場として、本実施形態における交通結節点となり得る。
【0052】
本実施形態では、交通結節点の名称と生起コストとが登録された専用辞書が、スケジュールデータSCLに含まれる文字列の形態素解析において用いられる。
【0053】
本実施形態では、交通結節点の文字数に基づき、当該交通結節点の生起コストが決定される。当該生起コストは、文字数を変数とする指数関数に基づき決定される。このとき、当該生起コストは、文字数の増加に伴い、コストの絶対量が増加する。
【0054】
本実施形態では、語句の文字数が所定数に満たない交通結節点の名称に係る生起コストは、当該交通結節点に対応付けられる重要度スコアに基づき決定される。当該生起コストは、重要度スコアおよび補正係数に基づき、決定されてもよい。なお、補正係数は、経験的に導入される構成が好ましい。
【0055】
本実施形態では、交通結節点の関連性スコアが、文字一致性および地域一致性に基づき決定される。当該関連性スコアは、当該交通結節点を示す語句に対応する生起コストの補正のために用いられる。
【0056】
本実施形態における文字一致性は、単語を構成する文字と、単語が示す発音と、に基づき評価される。当該文字一致性は、Elasticsearch(登録商標)により提供されるTerm FrequencyおよびInverse Document Frequencyによって決定される。
【0057】
本実施形態における地域一致性は、ユーザ交通結節点および交通結節点の直線距離に基づき、決定される。このとき、関連性スコアは、当該直線距離を独立変数とする、第2のガウシアン減衰関数に基づき、決定される。当該第2のガウシアン減衰関数は、第2の距離をハーフライフとする。当該第2の距離は、ユーザ毎に、一意的に決定される。
【0058】
本実施形態における交通結節点の生起コストは、直前/直後の語句に基づき補正される構成としてもよい。交通結節点を示す単語の直後に所定語句が付属する場合、当該単語の生起コストは補正される。
【0059】
判定手段13は、スケジュールデータSCLに基づくベクトル値を入力値とする深層学習モデルRNNに基づき、外出可能性および非外出可能性の少なくとも1つに係るベクトル値を、出力値として取得し、当該出力値に基づき外出の有無を判定する(ステップS30)。このとき、当該外出の有無は、外出可能性および非外出可能性のいずれかが、任意に決定された閾値を超過するか否かに基づき、決定されてもよい。また、当該外出の有無は、外出可能性を示すベクトル値および非外出可能性を示すベクトル値の大小関係に基づいて、決定されてもよい。
【0060】
図4は、本実施形態における深層学習モデルRNNの概要を示す。
【0061】
本実施形態において、深層学習モデルRNNにおける入力値D11、D12、D13、D14、D15およびD16は、それぞれ、感情分析データ、交通結節点データ、外出イベントデータ、非外出イベントデータ、同席者データおよび時刻データに対応付けられる。
【0062】
深層学習モデルRNNは、入力層、中間層、状態層および出力層を有する再帰型ニューラルネットワークモデルである構成が好ましい。入力層、中間層、状態層および出力層は、1以上のニューロンを有する。一例として、入力層および出力層におけるニューロンの応答関数は、リニア関数である。また、一例として、中間層におけるニューロンの応答関数は、シグモイド関数である。入力層および出力層は、それぞれ、ベクトル値(入力値)の入力と、ベクトル値(出力値)の出力と、のために用いられる。当該中間層は、入力値および出力値に基づくフィードバック処理のために用いられ、その層数に制限はない。
【0063】
本実施形態では、判定手段13が、出力値および教師信号(教師データ)に基づき、学習処理を行う。当該学習処理では、フィードバック処理には、一例として、バックプロパゲーション法に準じた手法が用いられる。フィードバック処理により、ニューロン間の重み付け係数は、更新される。このとき、出力値および教師データの、例えば、差分が最小となるような重み付け係数や入力値の一部の決定を含む最適化が、最急降下法に基づき、行われる。当該最適化のための数値計算アルゴリズムは、最急降下法に限らない。
【0064】
深層学習モデルRNNの状態層には、一例として、中間層に保持された情報が記憶される。本実施形態では、状態層に出力層に保持された情報が記憶される構成としてもよい。なお、本実施形態における深層学習モデルRNNは、一例として、LSTM(Long Short−Term Memory)ネットワークである。本実施形態における、判定手段13による外出の有無に係る決定は、学習処理が行われた後の深層学習モデルRNNに基づき行われるが、外出の有無に係る決定が行われる都度、教師信号の入力が行われた場合に、適宜、学習処理は行われる。
【0065】
本実施形態における感情分析データは、スケジュールデータSCLに含まれる語句の感情極性を示す。具体的には、会議の語句は負の感情極性に対応し、飲み会の語句は正の感情極性に対応する。当該正および負は、それぞれ、0から1の範囲のベクトル値に対応付けられる。このとき、深層学習モデルRNNに基づき、感情分析データは更新される。
【0066】
本実施形態における交通結節点データは、スケジュールデータSCLにおいて検出手段12により検出された交通結節点の有無または生起コストなどに基づき、決定されるベクトル値を示す。当該ベクトル値は、一例として、交通結節点の名称を示す語句が含まれる場合は1となり、交通結節点の名称を示す語句が含まれない場合は0となる。
【0067】
本実施形態における外出イベントのベクトル値は、スケジュールデータSCLにおける、外出性を示唆する語句の有無に基づき決定される。具体的には、対象語句が出張である場合、当該ベクトル値は1となる。当該ベクトル値は、1もしくは0に限らず、外出性を強く示唆する語句である場合、>1としてもよい。外出性を示唆する語句が複数ある場合、最大の当該ベクトル値を採用する。
【0068】
本実施形態における非外出イベントのベクトル値は、スケジュールデータSCLにおける、非外出性を示唆する語句の有無に基づき決定される。具体的には、対象語句が社内会議である場合、当該ベクトル値は1となる。当該ベクトル値は、1もしくは0に限らず、>1としてもよい。非外出性を示す語句が複数ある場合、最大の当該ベクトル値を採用する。
【0069】
本実施形態における外出性および非外出性を示す語句のそれぞれは、コンフィグデータとして、予め、登録される。なお、当該コンフィグデータは、ユーザ入力により、都度、更新される。このとき、深層学習モデルRNNに基づき、当該コンフィグデータが更新される構成としてもよい。
【0070】
本実施形態における同席者データは、スケジュールデータSCLにおける人物名称もしくは電子メールアドレスに対応付けられる人物情報に基づき決定されるベクトル値を示す。当該同席者データは、予め、登録され、ユーザ入力により、都度、更新される。当該ベクトル値は、0から1の範囲に限定されず、人物もしくは電子メールアドレスに固有に割り振られる構成が好ましい。
【0071】
本実施形態における時刻データは、ルールベースで分類された時間帯情報に対応付けられるベクトル値を指す。一例として終日、半日、午前および午後のいずれかとなり、それぞれに対応するベクトル値が、入力値として扱われる。
【0072】
本実施形態における深層学習モデルRNNに係る入力値は、少なくとも、検出手段12により検出された交通結節点に係るベクトル値を含んでいればよく、外出の有無に係る判定の精度を確保する上で、入力値と対応するベクトルに係る次元数が、適宜、調整されることは、自明である。
【0073】
本実施形態では、判定手段13により出力された外出判定の結果に対しユーザが正否を判断する。その後、外出/非外出を示すユーザ入力データが、ユーザにより入力処理される(ステップS40)。このとき、当該ユーザ入力データを教師データとする深層学習モデルRNNの学習処理が行われる。なお、本実施形態では、当該ユーザの位置情報履歴、および/または、情報記憶カードによる公共交通機関の利用履歴が、当該ユーザ入力データに加えて、深層学習モデルRNNにおける教師データとして用いられてもよい。
【0074】
精算手段14は、判定手段13により外出が行われた旨の判定がされたスケジュールデータSCLに係る、交通費の決定を行う(ステップS50)。当該決定は、検出手段12により検出された交通結節点、自宅の最寄駅、勤務先の最寄駅および定期区間に基づいて行われる。このとき、交通機関の利用料金に係る情報を含む交通料金データベースに基づき、交通費は決定される。なお、勤務時間外の移動に係る交通費の決定は、無効とする構成としてもよい。このとき、勤務時間外の移動に係る交通費は、ゼロと決定される。
【0075】
本実施形態における交通結節点は、拠点の名称と対応付けられる構成としてもよい。
【0076】
本発明によれば、交通費精算のための外出判定が、交通機関の利用履歴を用いることなく、スケジュールデータに基づく機械学習により、実現される。
【符号の説明】
【0077】
1 外出判定システム
11 登録手段
12 検出手段
13 判定手段
14 精算手段
2 ユーザ端末
3 サーバ装置
201、301 演算装置
202、302 主記憶装置
203、303 補助記憶装置
204 入力装置
205 出力装置
206、304 通信装置
2001、3001 オペレーティングシステム(OS)
3002 外出判定プログラム
3003 アプリケーションプログラミングインタフェース(API)
D11、D12、D13、D14、D15、D16 入力値
D21、D22 出力値
NW ネットワーク
RNN 深層学習モデル
S10、S20、S30、S40、S50 ステップ
SCL スケジュールデータ