特許第6818484号(P6818484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818484基板洗浄方法、基板洗浄レシピ作成方法、および基板洗浄レシピ作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818484
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】基板洗浄方法、基板洗浄レシピ作成方法、および基板洗浄レシピ作成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 643A
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-187098(P2016-187098)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-56184(P2018-56184A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】小森 香奈
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−278387(JP,A)
【文献】 特開平07−022365(JP,A)
【文献】 特開2006−203161(JP,A)
【文献】 特開2014−067936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成方法であって、
前記基板洗浄処理が、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含み、
前記基板洗浄レシピ作成方法が、
前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成工程と、
前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成工程と、
前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備して記憶ユニットに格納された適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合工程と、を含み、
前記部分エッチングステップ作成工程が、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件を含むステップデータを作成する工程を含み、
前記条件適合工程において、演算ユニットが、前記部分エッチングステップ作成工程で作成されたステップデータに含まれるエッチング条件に適合する物理洗浄条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する工程を実行する、基板洗浄レシピ作成方法。
【請求項2】
表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成方法であって、
前記基板洗浄処理が、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含み、
前記基板洗浄レシピ作成方法が、
前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成工程と、
前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成工程と、
前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備して記憶ユニットに格納された適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合工程と、を含み、
前記物理洗浄ステップ作成工程が、前記物理洗浄工程における物理洗浄条件を含むステ
ップデータを作成する工程を含み、
前記条件適合工程において、演算ユニットが、前記物理洗浄ステップ作成工程で作成されたステップデータに含まれる物理洗浄条件に適合するエッチング条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する工程を実行する、基板洗浄レシピ作成方法。
【請求項3】
表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成装置であって、
前記基板洗浄処理が、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含み、
前記基板洗浄レシピ作成装置が、
使用者による指令入力を受け付ける指令入力手段と、
前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成手段と、
前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成手段と、
前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備して記憶ユニットに格納された適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合手段と、を含み、
前記部分エッチングステップ作成手段が、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件を設定したステップデータを作成する手段を含み、
前記条件適合手段が、前記部分エッチングステップ作成手段によって作成されたステップデータに含まれるエッチング条件に適合する物理洗浄条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する手段を含む、基板洗浄レシピ作成装置。
【請求項4】
表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成装置であって、
前記基板洗浄処理が、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含み、
前記基板洗浄レシピ作成装置が、
使用者による指令入力を受け付ける指令入力手段と、
前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成手段と、
前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成手段と、
前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備して記憶ユニットに格納された適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合手段と、を含み、
前記物理洗浄ステップ作成手段が、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記物理洗浄工程における物理洗浄条件を設定したステップデータを作成する手段を含み、
前記条件適合手段が、前記物理洗浄ステップ作成手段によって作成されたステップデータに含まれる物理洗浄条件に適合するエッチング条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する手段を含む、基板洗浄レシピ作成装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項3または4に記載の基板洗浄レシピ作成装置として機能させるように実行ステップ群が組み込まれたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を洗浄する方法、ならびに基板洗浄のためのレシピを作成する方法および装置に関する。この発明は、さらに、コンピュータを基板洗浄レシピ作成装置として機能させるためのコンピュータプログラムに関する。洗浄対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板の洗浄のために、いわゆる物理洗浄が適用される場合がある。物理洗浄とは、物理的な作用、より具体的には力学的なエネルギーによって基板表面の異物(以下「パーティクル」という。)を除去する処理をいう。物理洗浄の具体例は、超音波洗浄、二流体洗浄、インクジェット洗浄、固化溶解洗浄などであり、これらは、それぞれ、特許文献1〜3等に記載されている。
【0003】
たとえば、二流体洗浄は、二流体ノズルを用いて、気体および液体を混合した混合流体を基板の表面に供給する処理である。混合流体中の液滴が基板の表面に衝突し、その衝撃によって基板の表面のパーティクルが基板から離脱させられて除去される。混合流体が持つ運動エネルギーが大きいほど大きな除去性能が得られる一方で、運動エネルギーが大き過ぎれば、基板表面のデバイス形成用のパターンが損傷(たとえばパターン倒壊)を受けるおそれがある。すなわち、パーティクル除去とパターン損傷とはトレードオフの関係にある。したがって、パターン損傷が生じない範囲で可能な限り大きな運動エネルギーを持つ混合流体を用いることが好ましい。
【0004】
この事情は、他の物理洗浄においても同様である。すなわち、パターン損傷が生じない範囲で可能な限り大きな物理力(エネルギー)を基板上のパーティクルに与えるように、各洗浄処理において、物理力を調整するためのパラメータが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−214757号公報
【特許文献2】特開2003−275696号公報
【特許文献3】特開2014−179449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板の表面に形成されるパターンの微細化に伴い、より小さい物理力でパターン損傷が生じるようになってきている。それに応じて、基板上のパーティクルを除去でき、かつ基板上のパターンの損傷を回避できる物理力または物理エネルギーの範囲、すなわち、プロセスウィンドウが小さくなってきている。そのため、物理洗浄によって、パターン損傷を回避しながら優れたパーティクル除去性能を実現することが難しくなってきている。
【0007】
そこで、この発明の一つの目的は、物理洗浄を適用して基板上のパーティクルを効率的に除去でき、かつ基板上のパターンの損傷を抑制できる基板洗浄方法を提供することである。
この発明の他の目的は、前記のような基板洗浄方法を実行するための基板洗浄レシピを作成する方法および装置を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、コンピュータを基板洗浄レシピ作成装置として機能させるためのコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄方法であって、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含む基板洗浄方法を提供する。
この方法によれば、基板の表面の酸化膜が所定の膜厚まで部分的にエッチングされる。すなわち、酸化膜の表面部分がエッチングされることによって、所定の膜厚の酸化膜が残される。酸化膜の表面部分がエッチングされることにより、酸化膜に部分的または全体的に取り込まれているパーティクルが露出し、かつその露出部分の割合が大きくなる。したがって、その後に物理洗浄を実行すれば、比較的小さいエネルギーでパーティクルを取り除くことができる。こうして、小さいエネルギーの物理洗浄で必要なパーティクル除去性能を実現できるから、基板表面に形成されたパターンの損傷を抑制または回避できる。
【0010】
酸化膜は表面部分が選択的にエッチングされるので、酸化膜の下地に悪影響を及ぼすことがない。したがって、下地に悪影響を及ぼすことなく、基板上のパーティクルを除去できる。
この発明の一実施形態では、前記酸化膜が、パーティクルを少なくとも部分的に取り込んだ自然酸化膜である。そして、前記部分エッチング工程が、前記パーティクルを前記自然酸化膜から露出させるか、または前記自然酸化膜からの露出部分を増加させる工程である。さらに、前記物理洗浄が、前記自然酸化膜を前記基板の表面に残しながら、前記自然酸化膜から露出したパーティクルを物理的な作用によって除去する工程である。
【0011】
基板表面にパーティクルが付着した後に自然酸化膜が基板表面に形成されると、自然酸化膜中にパーティクルが部分的または全体的に取り込まれる。また、自然酸化膜の形成途中にもパーティクルが基板表面(厳密には形成途中の自然酸化膜の表面)に付着する可能性がある。このような場合にも、自然酸化膜中にパーティクルが部分的または全体的に取り込まれる。
【0012】
そこで、自然酸化膜を部分的にエッチング(とくにその表面部分をエッチング)することによって、パーティクルの露出部分の割合を大きくできるから、その後の物理洗浄では比較的小さいエネルギーでパーティクルを除去できる。その結果、パターン損傷を抑制または回避しながら、基板上のパーティクルを除去できる。
この発明の一実施形態では、前記部分エッチング工程が、前記基板の表面に希釈フッ酸を供給する工程を含む。この方法では、希釈フッ酸によって、酸化膜(たとえば自然酸化膜)の部分エッチングが行われる。希釈フッ酸を用いて酸化膜の全体を除去することは、基板表面の荒れを招くおそれがあるので好ましくない。そこで、酸化膜を膜厚途中まで部分的にエッチングすることで、基板表面を優れた状態に保持しながら、パターン損傷を抑制または回避しつつ、基板上のパーティクルを除去できる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記希釈フッ酸が、0.1%〜0.5%の濃度(質量濃度)のフッ酸(フッ化水素酸)である。これにより、酸化膜(とくに自然酸化膜)の部分的なエッチング(ライトエッチング)を精度良く行うことができる。それにより、基板表面を優れた状態に保持しながら、パターン損傷を抑制または回避しつつ、基板上のパーティクルを除去できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記物理洗浄工程が、前記酸化膜の表面に気体と液体とを混合した混合流体を供給する二流体洗浄工程、前記酸化膜の表面に超音波を付与した液体を供給する超音波洗浄工程、前記酸化膜の表面にインクジェットヘッドから液滴を供給するインクジェット式液滴洗浄工程、および前記酸化膜の表面に液膜を形成した後に固化して凝固体膜を形成し、前記凝固体膜を融解して除去する固化溶解洗浄工程のうちの少なくとも一つを含む。
【0015】
このように、物理洗浄は、二流体洗浄、超音波洗浄、インクジェット洗浄、または固化溶解洗浄のいずれかであってもよく、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。いずれの場合にも物理的なエネルギーを小さくできるので、パターン損傷を抑制または回避しながら、パーティクルを除去できる。
この発明の一実施形態、表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成方法を提供する。前記基板洗浄処理は、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含む。前記基板洗浄レシピ作成方法は、前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成工程と、前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成工程と、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備した適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合工程と、を含む。適合基準データは、記憶ユニットに格納されていてもよい。
【0016】
この方法により、前述のような基板洗浄方法を実行するためのレシピデータが作成される。レシピデータは、基板処理装置に登録される。基板処理装置がそのレシピデータに従って作動することによって、前述の基板洗浄方法が実行される。部分エッチング工程のエッチング条件と、物理洗浄工程における物理洗浄条件とは、適合基準データに基づいて、適合させられる。それにより、エッチング条件と物理洗浄条件とが適合したレシピデータを作成できるので、全体として適切な基板洗浄処理、すなわち、パターン損傷を抑制または回避しながら必要なパーティル除去性能を達成できる基板洗浄処理を実現できるレシピデータを作成できる。
【0017】
適合基準データは、予め準備される。具体的には、エッチング条件と物理洗浄条件との様々な組み合わせに基づいてそれらの間の適合関係が見出され、その適合関係に基づいて、適合基準データが作成されてもよい。より具体的には、パターン損傷を生じない範囲またはパターン損傷が許容できる範囲の物理洗浄エネルギーを設定する一方で、様々なエッチング条件を設定して、基板洗浄(部分エッチング工程および物理洗浄工程)を複数回試行する。各試行について、パーティクル除去率を求める。パーティクル除去率が合格の範囲で、当該物理洗浄エネルギーに適合するエッチング条件を定める。パターン損傷を生じない範囲またはパターン損傷が許容できる範囲で物理洗浄エネルギーを様々に変更しながら、それらにそれぞれ適合するエッチング条件を求めれば、エッチング条件と物理洗浄エネルギーとの適合関係を表す適合基準データを得ることができる。
【0018】
この発明の一実施形態に係る基板洗浄レシピ作成方法では、前記部分エッチングステップ作成工程が、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件を含むステップデータを作成する工程を含む。また、前記条件適合工程が、たとえば演算ユニットによって、前記部分エッチングステップ作成工程で作成されたステップデータに含まれるエッチング条件に適合する物理洗浄条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する工程を含む。
【0019】
この方法では、部分エッチングステップ作成工程においてエッチング条件が設定され、そのエッチング条件に適合する物理洗浄条件が提示または設定される。それにより、エッチング条件に適合する物理洗浄条件を含む物理洗浄ステップデータを容易に作成できる。
この発明の一実施形態に係る基板洗浄レシピ作成方法では、前記物理洗浄ステップ作成工程が、前記物理洗浄工程における物理洗浄条件を含むステップデータを作成する工程を含む。そして、前記条件適合工程が、たとえば演算ユニットによって、前記物理洗浄ステップ作成工程で作成されたステップデータに含まれる物理洗浄条件に適合するエッチング条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する工程を含む。
【0020】
この方法では、物理洗浄ステップ作成工程において物理洗浄条件が設定され、その物理洗浄条件に適合するエッチング条件が提示または設定される。それにより、物理洗浄条件に適合するエッチング条件を含む部分エッチングステップデータを容易に作成できる。
この発明の一実施形態、表面に酸化膜を有する基板を洗浄する基板洗浄処理を基板処理装置で実行するために前記基板処理装置に登録すべきレシピデータを作成する基板洗浄レシピ作成装置を提供する。前記基板洗浄処理は、前記酸化膜を所定の膜厚までエッチングする部分エッチング工程と、前記部分エッチング工程の後に、前記基板の表面に対して物理洗浄を実行する物理洗浄工程と、を含む。そして、前記基板洗浄レシピ作成装置は、使用者による指令入力を受け付ける指令入力手段と、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記部分エッチング工程を実行するためのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成手段と、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成手段と、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件と前記物理洗浄工程における物理洗浄条件との関係を、予め準備した適合基準データに基づいて互いに適合させる条件適合手段と、を含む。適合基準データは記憶ユニットに格納されていてもよい。
【0021】
この装置により、前述のような基板洗浄方法を実行するためのレシピデータを作成できる。作成されたレシピデータは、基板処理装置に登録される。基板処理装置がそのレシピデータに従って作動することによって、前述の基板洗浄方法が実行される。部分エッチング工程のエッチング条件と、物理洗浄工程における物理洗浄条件とは、適合基準データに基づいて、適合させられる。それにより、エッチング条件と物理洗浄条件とが適合したレシピデータを作成できるので、全体として適切な基板洗浄処理、すなわち、パターン損傷を抑制または回避しながら必要なパーティル除去性能を達成できる基板洗浄処理を実現できるレシピデータを作成できる。
【0022】
この発明の一実施形態に係る基板洗浄レシピ作成装置では、前記部分エッチングステップ作成手段が、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記部分エッチング工程におけるエッチング条件を設定したステップデータを作成する手段を含む。また、前記条件適合手段が、前記部分エッチングステップ作成手段によって作成されたステップデータに含まれるエッチング条件に適合する物理洗浄条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する手段を含む。
【0023】
この構成により、部分エッチングステップ作成手段によってエッチング条件を設定したステップデータを作成できる。そして、そのエッチング条件に適合する物理洗浄条件が提示または設定される。それにより、エッチング条件に適合する物理洗浄条件を含む物理洗浄ステップデータを容易に作成できる。
この発明の一実施形態に係る基板洗浄レシピ作成装置では、前記物理洗浄ステップ作成手段が、前記指令入力手段から入力される指令に応じて、前記物理洗浄工程における物理洗浄条件を設定したステップデータを作成する手段を含む。また、前記条件適合手段が、前記物理洗浄ステップ作成手段によって作成されたステップデータに含まれる物理洗浄条件に適合するエッチング条件を前記適合基準データに基づいて提示または設定する手段を含む。
【0024】
この構成により、物理洗浄ステップ作成手段によって物理洗浄条件を設定したステップデータが作成される。そして、その物理洗浄条件に適合するエッチング条件が提示または設定される。それにより、物理洗浄条件に適合するエッチング条件を含む部分エッチングステップデータを容易に作成できる。
前述のような特徴を有する基板レシピ作成装置は、基板処理装置に組み込まれていてもよく、基板処理装置とは別に設けられていてもよい。
【0025】
この発明は、さらに、コンピュータを前記基板洗浄レシピ作成装置として機能させるように実行ステップ群が組み込まれた(すなわち、プログラムされた)コンピュータプログラムを提供する。これにより、コンピュータによって前述のような基板洗浄レシピ作成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1A図1Bおよび図1Cは、この発明の一実施形態に係る基板洗浄方法を説明するための図解的な断面図である。
図2図2Aおよび図2Bは、二流体洗浄等の物理洗浄におけるプロセスウィンドウを説明するための図である。
図3図3は、前記基板洗浄方法の部分エッチング工程における希釈フッ酸によるエッチング時間とパーティクル除去率との関係について調べた実験結果を示す。
図4図4Aおよび図4Bは、前記部分エッチング工程のエッチング条件とパーティクル除去率との関係についてのさらに詳しい実験結果を示す。
図5図5は、前述のような基板洗浄処理を実行するための基板処理装置の構成例を説明するための概念図である。
図6図6は、前記基板処理装置に備えられた二流体ノズルの構成例を示す縦断面図である。
図7図7は、基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図8図8は、前述のような基板洗浄処理を実行するためのレシピデータの一例を示す。
図9図9は、前述のような基板洗浄方法を実行するためのレシピデータ作成の具体例を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、この発明の他の実施形態を説明するためのブロック図である。
図11図11は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための概念図である。
図12図12は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための概念図である。
図13図13は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための概念図である。
図14図14は、適合基準データの概念を示すためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1A図1Bおよび図1Cは、この発明の一実施形態に係る基板洗浄方法を説明するための図解的な断面図である。図1Aは、洗浄処理前の基板Wの表面の状態を拡大して示す。洗浄対象の基板Wは、たとえば、半導体ウエハである。基板Wの表面には、デバイスを構成する微細パターン(図示省略)が形成されている。そして、基板Wの表面には、パーティクルPが付着している。パーティクルPは、基板Wの表面に形成された自然酸化膜70(たとえばSiO)に部分的に取り込まれている。したがって、自然酸化膜70が基板Wに対するパーティクルPの付着を補強している。
【0028】
この実施形態の基板洗浄方法は、図1Bに示す部分エッチング工程と、図1Cに示す物理洗浄工程とを含む。物理洗浄工程は、部分エッチング工程の後に実行される。
この実施形態では、部分エッチング工程(図1B)において、基板Wの表面に希釈フッ酸80が供給される。それにより、自然酸化膜70が所定膜厚まで部分的にエッチングされる。すなわち、自然酸化膜70は全部が除去されるのではなく、表面部分71(図1C参照)が膜厚途中までエッチング(ライトエッチング)され、所定の膜厚の部分72が基板Wの表面に残される。この部分エッチング工程によって、パーティクルPの露出部分が増加する。部分エッチング工程の前の段階で自然酸化膜70に全体が取り込まれているパーティクルPがあれば、このようなパーティクルPは、部分エッチング工程によって、自然酸化膜70から部分的に露出し、さらにその露出部分が増加する。なお、図1Bには、自然酸化膜70に部分的に取り込まれているパーティクルPのみを示してある。
【0029】
希釈フッ酸80の濃度(質量濃度)は、たとえば、0.1%〜0.5%で一定である。この一定濃度の希釈フッ酸80によるエッチング量は、エッチング液としての希釈フッ酸80の供給流量と、その供給時間(エッチング時間)とに依存する。たとえば、一定流量で希釈フッ酸80を供給するとすれば、エッチング量はエッチング時間に依存する。したがって、部分エッチング工程におけるエッチング条件は、希釈フッ酸80の供給流量およびエッチング時間を含む。希釈フッ酸80の供給流量が一定であれば、エッチング条件の変動パラメータはエッチング時間(希釈フッ酸供給時間)である。
【0030】
物理洗浄工程(図1C参照)は、この実施形態では、二流体洗浄工程である。具体的には、二流体ノズル(図1Cでは図示省略)によって液体と気体とを混合した混合流体81が形成され、その混合流体81が基板Wの表面に供給される。さらに具体的には、二流体ノズルには、液体の一例としてのDIW(脱イオン水)と、気体の一例としての不活性ガス(たとえば窒素ガス)が供給される。これらが二流体ノズルによって混合されることにより、混合流体81が形成され、その混合流体81が基板Wの表面に向けて供給される。混合流体81は、DIWの微小液滴を含む、その微小液滴が不活性ガスの流れに乗って基板Wの表面に衝突する。その衝突による衝撃によって、基板Wの表面のパーティクルPが基板Wから剥がれる。
【0031】
混合流体81の持つエネルギーは、主として、二流体ノズルへの不活性ガスの供給流量および供給時間によって制御可能である。すなわち、一定流量でDIWを二流体ノズルに供給する一方で、不活性ガス流量および混合流体供給時間を所望のエネルギーに応じて制御する。それにより、混合流体81中の液滴の粒径および密度ならびに液滴が持つ運動エネルギーが変動する。それにより、混合流体81が持つ物理力、すなわち物理的なエネルギーを制御することができる。したがって、物理洗浄工程としての二流体洗浄工程における物理洗浄条件は、不活性ガスの供給流量および混合流体の供給時間を変動パラメータとして含む。
【0032】
部分エッチング工程で自然酸化膜70が部分的に除去されることにより、パーティクルPが露出するか、あるいはパーティクルPの露出部分が増大する。したがって、その後の二流体洗浄工程では、物理的なエネルギーが小さくても、パーティクルPを十分に除去することができる。すなわち、小さな物理エネルギーの二流体洗浄工程を適用できるので、基板Wの表面に形成されたデバイス形成のためのパターンの損傷を抑制または回避できる。
【0033】
図2Aおよび図2Bは、二流体洗浄等の物理洗浄におけるプロセスウィンドウを説明するための図である。横軸は物理洗浄のエネルギー(力学的なエネルギー)または物理力を示し、縦軸は相対度数を表す。曲線LPは、物理洗浄後に基板上に残るパーティクルの個数を表す。物理洗浄のエネルギーが大きいほど、残留パーティクル個数が少なくなることが分かる。物理洗浄によってほぼ全てのパーティクルを基板上から除去するために、曲線LPが横軸と接する境界付近に物理洗浄エネルギーの下限が設定される。曲線LDは、物理洗浄後に基板上で観測されるパターン損傷の個数を表す。物理洗浄エネルギーが小さければパターン損傷は生じない。物理洗浄エネルギーが大きくなるほどパターン損傷の個数が多くなる。物理洗浄によるパターンの損傷を抑制または回避するために、曲線LDが横軸と接する境界付近に物理洗浄エネルギーの上限が設定される。物理洗浄エネルギーの下限と上限との間は、プロセスウィンドウPWと呼ばれる。プロセスウィンドウPW内で物理洗浄エネルギーを設定することにより、パターン損傷を抑制または回避しながら、基板上のパーティクルを良好に除去できる。物理洗浄エネルギーには広がりがあり、たとえば曲線LEのとおりとなる。
【0034】
基板上に形成されたパターンが微細であるときには、小さい物理洗浄エネルギーでパターンの損傷が生じる。すると、曲線LP,LDの間が狭く、すなわち、プロセスウィンドウPWが狭くなる。その結果、図2Aに示すように、曲線LEで示す物理洗浄エネルギーの分布が曲線LP,LDの少なくとも一方と重なるおそれがある。曲線LP,LEの重なり部分PR(斜線を付して示す)、パーティクル残留の原因となり、曲線LE,LDの重なり部分PD(斜線を付して示す)は、パターン損傷の原因となる。したがって、プロセスウィンドウPWが小さいときには、適切な物理洗浄エネルギーを設定することが困難である。
【0035】
そこで、この実施形態では、物理洗浄工程を実行する前に、部分エッチング工程を実行している。これにより、物理洗浄によってパーティクルを除去するために必要なエネルギーが小さくなる。すなわち、曲線LPが、図2Bに示すように、物理洗浄のエネルギーまたは物理力の小さい側、換言すれば図2Bの左側にシフトする。その結果、プロセスウィンドウPWが広がるので、物理洗浄エネルギーの分布(曲線LE)が曲線LP,LDと重ならないように物理洗浄の条件を設定できる。こうして、適切な物理洗浄条件の設定が可能になる。
【0036】
図3は、部分エッチング工程における希釈フッ酸によるエッチング時間とパーティクル除去率との関係について調べた実験結果を示す。より具体的には、前述の基板洗浄方法において、基板上に形成されたパターンの損傷を抑制または回避できる物理洗浄エネルギーを設定した。すなわち、物理洗浄工程における物理洗浄条件を一定に設定した。その一方で、部分エッチング工程では、一定濃度の希釈フッ酸を一定流量で供給し、複数のサンプルに対して異なるエッチング時間(希釈フッ酸処理時間)を設定した。そして、基板洗浄の前(部分エッチング工程の前)と、基板洗浄の後(物理洗浄工程の後)とで、それぞれ基板上のパーティクル数を検出し、パーティクル除去率を求めた。
【0037】
パーティクル除去率は、ここでは、予め微粒子(パーティクル)を付着させた基板から除去された当該微粒子の割合をいう。具体的には、基板表面の粒子数Nを計測し、その後に基板の表面にパーティクル(たとえばSi粒子)を付着させて基板表面の粒子数Nを計測し、さらに、洗浄後に基板表面の粒子数Nを計測する。この場合のパーティクル除去率は、次式によって計算される。
【0038】
パーティクル除去率(%)=100×(N−N)/(N−N
図3から、部分エッチング工程を実行しない場合のパーティクル除去率が27%程度であるのに対して、希釈フッ酸による処理時間(エッチング時間)を長くするに従って、パーティクル除去率が増加することが分かる。すなわち、部分エッチング工程を実行することによって、パーティクル除去率が向上している。さらに、エッチング時間を120秒以上とすることにより、100%に近いパーティクル除去率を達成できることが分かる。
【0039】
したがって、この例では、エッチング時間を120秒程度に定めて部分エッチング工程を実行し、その後に上記の物理洗浄条件で物理洗浄工程を実行すれば、パターン損傷を抑制または回避しながら、ほぼ100%の除去率で基板上のパーティクルを除去できる。
図4Aおよび図4Bは、部分エッチング工程のエッチング条件とパーティクル除去率との関係についてのさらに詳しい実験結果を示す。図4Aおよび図4Bにおいて、シンボル「◆」は、物理洗浄工程に二流体洗浄処理を適用した場合の実験結果を示す。また、シンボル「◇」は、物理洗浄工程に固化溶解法(後述の図13参照。ただし、この例では高分子膜を用いた。)を適用した場合の実験結果を示す。
【0040】
図4Aにおいて、縦軸はパーティクル除去率を表す。横軸は、自然酸化膜中に取り込まれた部分におけるパーティクルの表面積の比率(酸化膜内表面積比率)を表す。すなわち、パーティクルの全表面積に対する、自然酸化膜に接している部分の部分表面積の割合である。この表面積比率は、希釈フッ酸を用いた部分エッチング工程のエッチング条件に対応している。すなわち、エッチング条件(希釈フッ酸の濃度および供給時間)により、部分エッチング工程でエッチングされる膜厚が求まる。一方、部分エッチング工程の前の自然酸化膜の膜厚は、予め計測しておくことができる。したがって、部分エッチング工程後の自然酸化膜の膜厚を求めることができる。そして、基板表面に接する一定半径の球体でパーティクルをモデル化する。すると、部分エッチング後に基板上に残留している自然酸化膜内に取り込まれた部分の部分表面積を計算によって求めることができる。この部分表面積の全表面積に対する割合、すなわち、表面積比率は、部分エッチング工程後の自然酸化膜の膜厚に対応しているので、結局、エッチング条件に対応している。
【0041】
一方、図4Bにおいて、縦軸はパーティクル除去率を表す。横軸は、自然酸化膜中に取り込まれた部分におけるパーティクルの体積の比率(酸化膜内体積比率)を表す。すなわち、パーティクルの全体積に対する、自然酸化膜に取り込まれている部分の部分体積の割合である。この体積比率は、希釈フッ酸を用いた部分エッチングのエッチング条件に対応している。すなわち、前述のとおり、エッチング条件が分かれば、部分エッチング後の自然酸化膜の膜厚が求まる。そして、基板表面に接する一定半径の球体でパーティクルをモデル化すると、部分エッチング後の自然酸化膜内に取り込まれた部分の部分体積を計算によって求めることができる。この部分体積の全体積に対する割合、すなわち体積比率は、部分エッチング工程後の自然酸化膜の膜厚に対応しているので、結局、エッチング条件に対応している。
【0042】
物理洗浄工程については、前述の場合と同様に、基板上に形成されたパターンの損傷を抑制または回避できる物理洗浄エネルギーを設定した。すなわち、物理洗浄工程における物理洗浄条件を一定に設定した。
図4Aおよび図4Bから、自然酸化膜中に取り込まれている割合(表面積または体積の割合)が小さくほど、すなわち、自然酸化膜からより多くの部分が露出しているほど、除去率が高くなることが分かる。すなわち、図4および図5は、自然酸化膜のエッチングによりパーティクル除去率が向上することを示している。なお、自然酸化膜のエッチングのみ、すなわち、物理洗浄工程を行わない場合にはパーティクルがほとんど除去されないことは、別の実験により確認された。
【0043】
図5は、前述のような基板洗浄処理を実行するための基板処理装置の構成例を説明するための概念図である。基板処理装置は、基板を一枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、スピンチャック10と、第1移動ノズル11と、第2移動ノズル12と、固定ノズル13とを備えている。
スピンチャック10は、処理対象の基板Wを水平に保持する基板保持機構である。スピンチャック10は、鉛直な回転軸線3まわりに回転可能である。スピンチャック10を回転させるために、電動モータ2が備えられている。電動モータ2は、基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。この構成により、基板Wを水平に保持し、その中心を通る回転軸線3まわりに回転させることができる。
【0044】
第1および第2移動ノズル11,12は、それぞれ、基板Wを処理するための処理流体(この実施形態では処理液)をスピンチャック10に保持された基板Wに向けて吐出する処理流体ノズル(この実施形態では処理液ノズル)である。第1移動ノズル11および第2移動ノズル12は、第1スキャンアーム21および第2スキャンアーム22にそれぞれ取り付けられている。第1スキャンアーム21および第2スキャンアーム22は、それぞれ、水平に延びており、それらの先端部に第1および第2移動ノズル11,12がそれぞれ固定されている。
【0045】
第1および第2スキャンアーム21,22は、第1および第2アーム駆動機構31,32によってそれぞれ駆動され、それによって、それらの先端部がそれぞれ水平方向および鉛直方向に移動される。それに応じて、第1および第2移動ノズル11,12がそれぞれ水平方向および鉛直方向に移動される。よって、第1および第2移動ノズル11,12は、スピンチャック10に保持された基板Wに対して接近および離反する方向にそれぞれ移動可能であり、かつ当該基板Wの表面に沿って水平にそれぞれ移動可能である。より具体的には、第1移動ノズル11が処理液を吐出しながら水平に移動するとき、基板Wの上面における着液点は、回転中心付近から基板Wの周縁に至る範囲で移動する。同様に、第2移動ノズル12が処理液を吐出しながら水平に移動するとき、基板Wの上面における着液点は、回転中心付近から基板Wの周縁に至る範囲で移動する。それにより、処理液によって、基板Wの上面がスキャンされる。スピンチャック10を回転させて基板Wを回転させておけば、処理液の着液点が渦巻き状の軌跡を描いて基板Wの上面を走査する。第1アーム駆動機構31は、第1スキャンアーム21を水平方向に移動させる水平移動ユニットと、第1スキャンアーム21を鉛直方向に移動させる垂直移動ユニットとを備えていてもよい。同様に、第2アーム駆動機構32は、第2スキャンアーム22を水平方向に移動させる水平移動ユニットと、第2スキャンアーム22を鉛直方向に移動させる垂直移動ユニットとを備えていてもよい。水平移動ユニットは、対応するスキャンアーム21,22をその基端部に設定した鉛直な揺動軸線まわりに揺動させ、それによって、対応するスキャンアーム21,22の先端部を水平方向に移動させる揺動機構を含んでいてもよい。
【0046】
第1および第2移動ノズル11,12は、処理液によって基板表面を走査する代わりに、固定位置で処理液を吐出することもできる。具体的には、第1移動ノズル11から吐出される処理液が回転軸線3上、すなわち、基板Wの回転中心に着液するように設定した処理位置で第1移動ノズル11を停止させる。この停止状態の第1移動ノズル11から基板Wの回転中心に処理液を吐出させる。吐出された処理液は、基板Wの表面に着液し、回転状態の基板W上で遠心力を受けて外方へと広がる。それによって、基板Wの表面全域を処理液で処理できる。第2移動ノズル12についても同様である。
【0047】
この実施形態では、第1移動ノズル11は、エッチング液としての希釈フッ酸を吐出するエッチング液ノズルとして用いられる。希釈フッ酸を基板Wの表面に供給するとき、基板Wが回転される一方で、第1移動ノズル11は、前述の処理位置で停止するように制御され、基板Wの回転中心に向けて希釈フッ酸を供給する。一方、第2移動ノズル12は、この実施形態では、混合流体を供給する二流体ノズルとしての形態を有している。混合流体を供給するとき、基板Wが回転される一方で、第2移動ノズル12は、基板Wの回転中心とその外周縁との間で移動される。それにより、混合流体が基板Wの全面を走査する。
【0048】
固定ノズル13は、固定位置から基板Wに向けて処理流体(この実施形態では処理液)を吐出する処理流体ノズル(この実施形態では処理液ノズル)である。固定ノズル13は、スピンチャック10に保持された基板Wの中心付近に向けて処理液を吐出する。基板Wの表面に達した処理液は、基板Wの上面で広がる。とくに、スピンチャック10が回転していれば、処理液は遠心力によって基板Wの上面の全域に速やかに広がる。この実施形態では、固定ノズル13は、リンス液としてのDIWを供給する。また、固定ノズル13は、第2移動ノズル12が混合流体を基板Wに供給するときにも、DIWをカバーリンス液として供給する。このDIWは、少なくとも混合流体が到達する領域において基板Wの表面を覆い、混合流体が基板Wの表面に直接到達することによるパターンの損傷を抑制する。
【0049】
第1移動ノズル11は、第1処理液供給路41に結合されている。第1処理液供給路41は、フッ酸供給源51(エッチング液供給源)に接続されている。第1処理液供給路41には、第1処理液バルブV1が介装されている。第1処理液バルブV1を開閉することによって、第1移動ノズルからのエッチング液(希釈フッ酸(DHF))の供給/停止を切り替えることができる。第1処理液供給路41には、第1流量計F1および第1流量調整弁FV1が介装されている。第1流量調整弁FV1は、たとえば電動モータ付の流量調整弁であり、流路の開度調整が可能な弁である。したがって、第1流量調整弁FV1を制御することによって、エッチング液の供給流量を調整できる。第1流量計F1は、第1処理液供給路41を通るエッチング液の流量、すなわち、第1移動ノズル11から吐出されるエッチング液の流量を監視する。
【0050】
第2移動ノズル12は、第2処理液供給路42に結合されている。第2処理液供給路42は、混合流体を構成する液体の一例であるDIWを供給するDIW供給源52(液体供給源)に接続されている。第2処理液供給路42には、第2処理液バルブV2が介装されている。第2移動ノズル12には、さらに、気体供給路44が接続されている。気体供給路44は、窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給源54(気体供給源)に接続されている。気体供給路44には、不活性ガスバルブV21が介装されている。第2移動ノズル12は、第2処理液供給路42から供給されるDIWと、気体供給路44から供給される不活性ガスとを混合して、気液混合された混合流体を生成し、その混合流体を基板Wに向けて供給する。混合流体は、微小な液滴を含み、その液滴が不活性ガスの気流によって基板Wに供給される。第2処理液バルブV2および不活性ガスバルブV21を開閉することにより、混合流体の供給/停止を切り替えることができる。
【0051】
第2処理液供給路42には、第2流量計F2および第2流量調整弁FV2が介装されている。第2流量調整弁FV2は、たとえば電動モータ付の流量調整弁であり、流路の開度調整が可能な弁である。したがって、第2流量調整弁FV2を制御することによって、DIWの供給流量を調整できる。第2流量計F2は、第2処理液供給路42を通るDIWの流量、すなわち、第2移動ノズル12に供給されるDIWの流量を監視する。
【0052】
気体供給路44には、不活性ガス流量計F21および不活性ガス流量調整弁FV21が介装されている。不活性ガス流量調整弁FV21は、たとえば電動モータ付の流量調整弁であり、流路の開度調整が可能な弁である。したがって、不活性ガス流量調整弁FV21を制御することによって、不活性ガスの供給流量を調整できる。不活性ガス流量計F21は、気体供給路44を通る不活性ガスの流量、すなわち、第2移動ノズル12に供給される不活性ガスの流量を監視する。
【0053】
二流体ノズルとしての形態を有する第2移動ノズル12が吐出する混合流体の力学的なエネルギーは、主として、不活性ガスの流量に依存する。そこで、第2処理液供給路42を通るDIWの流量を一定値とし、気体供給路44を通る不活性ガスの流量を必要なエネルギーに応じて制御することにより、適切なエネルギーを持つ混合流体による物理洗浄を実現できる。
【0054】
固定ノズル13は、第3処理液供給路43に結合されている。第3処理液供給路43は、リンス液供給源53に接続されている。リンス液供給源53は、DIWや炭酸水等のリンス液を供給する。第3処理液供給路43には、第3処理液バルブV3が介装されている。第3処理液バルブV3を開閉することによって、リンス液の供給/停止を切り替えることができる。第3処理液供給路43には、第3流量計F3および第3流量調整弁FV3が介装されている。第3流量調整弁FV3は、たとえば電動モータ付の流量調整弁であり、流路の開度調整が可能な弁である。したがって、第3流量調整弁FV3を制御することによって、リンス液の供給流量を調整できる。第3流量計F3は、第3処理液供給路43を通るリンス液の流量、すなわち、固定ノズル13から吐出されるリンス液の流量を監視する。
【0055】
図6は、第2移動ノズル12を構成する二流体ノズル(以下「二流体ノズル12」という場合がある。)の構成例を示す縦断面図である。二流体ノズル12は、2種類の流体(気体および液体)を混合することにより微小液滴を生成するノズルである。二流体ノズル12は、円筒状の内側ノズル部材121と、その周囲に配置された外側ノズル部材122とを含む。内側ノズル部材121に第2処理液供給路42を構成する液体供給管が接続されており、外側ノズル部材122に気体供給路44を構成するガス供給管が接続されている。内側ノズル部材121は下端に液体噴出口123を有しており、この液体噴出口123は基板Wの被処理面である表面(上面)に対向するように位置している。したがって、第2処理液供給路42から供給された液体(DIW)は液体噴出口123から基板Wの表面に向かって噴出される。
【0056】
一方、内側ノズル部材121と外側ノズル部材122との間には隙間125が形成されており、隙間125に気体供給路44が連通している。隙間125は液体噴出口123の周囲に円環状に開口したガス噴出口124を有している。隙間125の径および径方向の幅は、液体噴出口123に向かって小さくなっており、それにより、気体供給路44から供給された不活性ガスがガス噴出口124から勢いよく噴出される。
【0057】
噴出された不活性ガスは液体噴出口123から所定の距離離れた混合点126へと収束するように進み、液体噴出口123から噴出された液体と混合点126で混合される。この混合により液相のDIWは微小液滴となり、生成された微小液滴は不活性ガスにより加速され、高速な液滴流となって基板Wへと向かう。すなわち、DIWの微小液滴と不活性ガスとの高速流で形成された混合流体81が基板Wの表面に向けて供給される。
【0058】
このようにして基板Wの表面に向けて供給される混合流体81に含まれる微小液滴は、高速で基板Wの表面と衝突する。その微小液滴の運動エネルギーによって、基板Wの表面のパーティクルを物理的に除去することができる。
図6に示した二流体ノズル12は、ノズルの外部で液体と不活性ガスとを混合して微小液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルである。このような外部混合型の二流体ノズルに代えて、ノズル内部で気体と液体とを混合する内部混合型の二流体ノズルが適用されてもよい。
【0059】
図7は、基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。基板処理装置1は、コントローラ90を備えている。コントローラ90は、コンピュータとしての基本構成を有している。コントローラ90は、基板処理装置1に備えられた制御可能なリソースを制御する制御手段の一例である。制御可能なリソースは、スピンチャック10を回転させるための電動モータ2(スピンモータ)、第1アーム駆動機構31、第2アーム駆動機構32を含む。制御可能なリソースは、さらに、開閉バルブV1〜V3,V21および流量調整弁FV1〜FV3,FV21を含む。コントローラ90には、さらに、流量計F1〜F3,F21を含む各種センサ類の出力信号が入力されている。
【0060】
コントローラ90は、演算ユニット(CPU)91および記憶ユニット92を備えている。記憶ユニット92は、メモリ(ROMおよびRAMを含む)、大容量記憶装置(HDD,SDD等)を含んでいてもよい。コントローラ90には、ディスプレイ95および入力ユニット96が接続されている。入力ユニット96は、キーボード、ポインティングデバイスのように、コントローラ90に対する指令または情報の入力のために使用者によって操作される装置であり、指令入力手段の一例である。
【0061】
記憶ユニット92には、演算ユニット91が実行するプログラム100、基板処理手順を記述したデータであるレシピデータ111等のデータ110が格納される。
プログラム100は、レシピデータ111に基づいて基板処理装置1のリソースを制御し、それによって基板Wに対する処理を実現する基板処理プログラム101を含む。また、プログラム100は、レシピデータ111を作成するためのレシピ作成プログラム102を含んでいてもよい。
【0062】
レシピデータ111は、基板Wの処理手順を記述した複数のステップを表すステップデータを含む。記憶ユニット92に格納されるデータ110は、レシピデータ111の他に、適合基準データ112を含む。適合基準データ112は、レシピデータ111の作成の際に参照され、複数の処理の処理条件を適合させるための基準データである。より具体的には、適合基準データ112は、部分エッチング工程のためのステップデータで規定されるエッチング条件と、物理洗浄工程のためのステップデータで規定される物理洗浄条件との適合関係を表す基準データを含む。記憶ユニット92は、レシピデータ記憶手段の一例であり、かつ適合基準データ記憶手段の一例である。
【0063】
適合基準データ112は、予め準備されて記憶ユニット92に格納される。具体的には、エッチング条件と物理洗浄条件との様々な組み合わせに基づいてそれらの間の適合関係が見出され、その適合関係に基づいて、適合基準データ112が作成される。より具体的には、パターン損傷を生じない範囲またはパターン損傷が許容できる範囲の物理洗浄エネルギーを設定する一方で、様々なエッチング条件を設定して、基板洗浄(部分エッチング工程および物理洗浄工程)を複数回試行する。各試行について、パーティクル除去率を求める。それにより、前述の図3に示すような結果が得られる。そして、パーティクル除去率が合格の範囲で、当該物理洗浄エネルギーに適合するエッチング条件を定める。パターン損傷を生じない範囲またはパターン損傷が許容できる範囲で物理洗浄エネルギーを様々に変更しながら、それらにそれぞれ適合するエッチング条件を求めれば、エッチング条件と物理洗浄エネルギーとの適合関係を表す適合基準データ112を得ることができる。
【0064】
図14は適合基準データ112の概念を示すためのグラフである。図14は、横軸に二流体ノズル12に供給される不活性ガス流量(すなわち、不活性ガス流量調整弁FV21の開度)を、縦軸に第1移動ノズル11から基板Wに供給される希釈フッ酸の供給時間(すなわち、第1処理液バルブV1の開放時間)を取ったグラフである。不活性ガス流量n1乃至n4の範囲で物理洗浄を行えば基板W上に形成されたパターンの損傷を抑制または回避することができるものとする。本グラフ中、r1、r2、r3およびr4で示す時間範囲(以下、適正エッチング時間範囲という)は基板W上に形成されたパターンの損傷を抑制又は回避しつつ、所望のパーティクル除去率を達成することが可能な希釈フッ酸の供給時間の範囲を示している。例えば、二流体ノズル12に供給される不活性ガス流量がn1の場合、時間t4〜t8の範囲内で希釈フッ酸を供給すれば、基板W上に形成されたパターンの損傷を抑制又は回避しつつ、所望のパーティクル除去率を達成することが可能である。しかし、希釈フッ酸の供給時間がt4を下回ると(範囲r11の場合)、所望のパーティクル除去率が達成できない。逆に、希釈フッ酸の供給時間がt8を超えると過剰エッチングになる。したがって、不活性ガス流量がn1の場合、時間範囲r1でエッチングを行えばよい。
【0065】
適正エッチング時間範囲r1乃至r4の上限および下限は不活性ガス流量の流量と共に変化する。すなわち、図14に示すように、適正エッチング時間範囲r1乃至r4の上限値(t5、t6、t7、t8)および下限値(t1、t2、t3、t4)は不活性ガスの流量の増加と共に減少している。
以上では、適合基準データ112の概念を、不活性ガス流量と希釈フッ酸の供給時間との対応関係のみで説明したが、実際の適合基準データ112は様々なエッチング条件と物理洗浄条件の組み合わせにおける適合関係が考えられる。例えば、不活性ガス流量と希釈フッ酸の供給時間・供給流量との組み合わせや、不活性ガス流量・供給時間と希釈フッ酸供給時間・供給流量との組み合わせなどが考えられる。
【0066】
また、図14では不活性ガス流量は離散的なデータ(n1、n2、n3およびn4)として図示されているが、試行結果を適宜補完することにより、適合基準データ112では連続的な不活性ガス流量のデータであってもよい。
図8は、前述のような基板洗浄処理を実行するためのレシピデータの一例を示す。レシピを構成する各ステップのステップデータは、たとえば、ステップ番号、ジャンプ先ステップ、基板回転数(rpm)、処理時間(秒)、第1〜第4バルブ、第1〜第4流量、ノズル制御1,2などの処理条件に関する記述を含む。原則としてステップ番号に従って処理が実行され、ステップ番号に従わない順序を指定するときには、ジャンプ先ステップの欄に次のステップのステップ番号が記述される。基板回転数は、スピンチャック10を回転させて基板Wを回転させるときの回転数である。処理時間は当該ステップの時間であり、たとえばスピンチャック10の回転数が指定回転数に維持される時間を表す。第1〜第4バルブの欄には、制御対象のバルブが記入される。第1〜第4流量の欄には、それぞれ第1〜第4バルブを通る処理流体の流量が記入される。
【0067】
図8の例において、ステップ番号1は、基板Wの回転を開始するステップである。この例では、基板Wの回転数が1000rpmまで加速される。
ステップ番号2は、希釈フッ酸を基板Wに供給する部分エッチングステップを規定している。この例では、基板Wの回転数が1000rpmに制御される。第1バルブとして、第1処理液バルブV1が指定されている。すなわち、ステップ番号2では、第1処理液バルブV1を開く制御動作が指定されている。さらに、第1処理液バルブV1に対応する流量、すなわち、第1処理液供給路41を通る希釈フッ酸の流量が指定されている。この例では、500ミリリットル/分である。また、処理時間は60秒に指定されている。「ノズル制御1」には、第1移動ノズル11が基板Wの中央で停止するノズル移動制御が指定されている。したがって、ステップ番号2が実行されるとき、コントローラ90は、第1アーム駆動機構31を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの回転中心上に配置して停止させる。そして、基板Wが1000rpmで回転されている状態で第1処理液バルブV1が開かれる。それにより、第1移動ノズル11から基板Wの表面の回転中心に向けて希釈フッ酸が供給される。そのときの希釈フッ酸の流量は、コントローラ90が流量計F1の出力を監視しながら流量調整弁FV1を制御することによって、500ミリリットル/分に制御される。その状態で、希釈フッ酸が60秒間にわたって基板Wの表面に供給される。
【0068】
ステップ番号3は、基板Wの上面の薬液(希釈フッ酸)をリンス液(たとえばDIW)で洗い流すリンス処理ステップである。この例では、基板Wの回転数が1000rpmに制御される。制御対象の第1バルブとして第3処理液バルブV3が登録されている。さらに、第3処理液供給路43を通るリンス液の流量が指定されている。この例では、1500ミリリットル/分である。これらの流量の指定に従い、流量計F3の出力が監視され、それに応じて流量調整弁FV3が制御される。処理時間は、15秒とされている。したがって、リンス液によるリンス処理は15秒間に渡って行われることになる。
【0069】
ステップ番号4は、基板Wを二流体ノズルから吐出される混合流体を用いて物理洗浄するためのステップを規定している。この例では、基板Wの回転数が1000rpmに制御される。第1バルブとして第2処理液バルブV2が指定されており、第2バルブとして不活性ガスバルブV21が指定されており、第3バルブとして第3処理液バルブV3が指定されている。すなわち、ステップ番号4では、第2処理液バルブV2、不活性ガスバルブV21および第3処理液バルブV3を開く制御動作が指定されている。さらに、第2処理液バルブV2に対応する流量、すなわち、第2処理液供給路42を通るDIWの流量が指定されている。この例では、100ミリリットル/分である。また、不活性ガスバルブV21に対応する流量、すなわち、気体供給路44を通る不活性ガスの流量が指定されている。この例では、20000ミリリットル/分である。さらに、さらに、第3処理液バルブV3に対応する流量、すなわち、第3処理液供給路43を通るリンス液(たとえばDIW)の流量が指定されている。この例では、200ミリリットル/分である。また、処理時間は60秒に指定されている。「ノズル制御1」には、第2移動ノズル12が基板Wの回転中心と外周縁との間で移動するスキャン動作が指定されている。したがって、ステップ番号4が実行されるとき、コントローラ90は、第2アーム駆動機構32を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの表面に沿って往復動させる。そして、基板Wが1000rpmで回転されている状態で第2処理液バルブV2および不活性ガスバルブV21、ならびに第3処理液バルブV3が開かれる。それにより、第2移動ノズル12(二流体ノズル)から基板Wの表面の回転中心に向けて混合流体が供給され、固定ノズル13から基板Wの表面の回転中心に向けてリンス液が供給される。第2移動ノズル12(二流体ノズル)に供給されるDIWの流量は、コントローラ90が流量計F2の出力を監視しながら流量調整弁FV2を制御することによって、100ミリリットル/分に制御される。また、不活性ガスの流量は、コントローラ90が流量計F21の出力を監視しながら流量調整弁FV21を制御することによって、20000ミリリットル/分に制御される。その状態で、第2移動ノズル12は、基板Wの表面上を走査しながら、混合流体を60秒間わたって基板Wの表面に供給する。また、コントローラ90は、流量計F3の出力を監視しながら流量調整弁FV3を制御することにより、固定ノズル13から供給されるリンス液の流量を200ミリリットル/分に制御する。
【0070】
ステップ番号5は、混合流体による物理洗浄処理後の基板W上に残る異物をリンス液(たとえばDIW)で洗い流すリンス処理ステップである。この例では、基板Wの回転数が1000rpmに制御される。制御対象の第1バルブとして第3処理液バルブV3が登録されている。さらに、第3処理液供給路43を通るリンス液の流量が指定されている。この例では、1500ミリリットル/分である。これらの流量の指定に従い、流量計F3の出力が監視され、それに応じて流量調整弁FV3が制御される。処理時間は、15秒とされている。したがって、リンス液によるリンス処理は15秒間に渡って行われることになる。
【0071】
ステップ番号6は、基板Wの上面および下面の液成分を基板Wの高速回転によって振り切るスピン乾燥ステップである。この例では、基板Wの回転数が2500rpmに指定されている。処理時間は15秒とされている。
ステップ番号7は、基板Wの回転を停止するステップであり、基板Wの回転数が0rpmに指定されている。
【0072】
コントローラ90において、演算ユニット91がレシピ作成プログラム102を実行することにより、前述のようなレシピデータを作成するレシピデータ作成機能が提供される。使用者は、このレシピデータ作成機能を利用することにより、ディスプレイ95および入力ユニット96をマンマシンインタフェースとして利用しながら、レシピデータを作成することができる。具体的には、個々のステップに対して処理条件を記述する操作を実行してステップデータを作成でき、複数のステップデータを含むレシピデータを作成できる。作成されたレシピデータは、記憶ユニット92に登録される。
【0073】
図9は、前述のような基板洗浄方法を実行するためのレシピデータ作成の具体例を説明するためのフローチャートである。この処理は、演算ユニット91がレシピ作成プログラム102を実行することによって提供される。
使用者は、入力ユニット96を操作することにより、レシピ作成プログラム102を起動し、レシピデータの作成を開始する。レシピデータ作成においては、使用者は、レシピデータを構成するステップを表すステップデータを作成して登録する操作を繰り返す(S1,S2,S3)。すなわち、図8のレシピデータの場合であれば、ステップ番号1〜7のステップデータが順次作成される。ステップ番号2のステップデータの作成が、部分エッチングステップのステップデータの作成に対応する。また、ステップ番号4のステップデータの作成が、物理洗浄ステップのステップデータの作成に対応する。したがって、演算ユニット91がレシピ作成プログラム102を実行することにより、入力ユニット96から入力される指令に応じて部分エッチングステップのステップデータを作成する部分エッチングステップ作成手段としての機能が提供される。同様に、演算ユニット91がレシピ作成プログラム102を実行することにより、入力ユニット96から入力される指令に応じて物理洗浄工程を実行するためのステップデータを作成する物理洗浄ステップ作成手段としての機能が提供される。なお、レシピデータの作成順序は、必ずしもステップ番号に従う必要はない。
【0074】
使用者がレシピデータを構成する全てのステップデータを作成して登録し終えると(S3:YES)、演算ユニット91は、作成されたレシピデータを適合基準データ112と照合する(S4)。より具体的には、部分エッチング工程のステップデータ(図8の例ではステップ番号2)により表されるエッチング条件と、物理洗浄工程のステップデータ(図8の例ではステップ番号4)により表される物理洗浄条件とが、適合基準データ112の内容と適合しているかどうかが判断される。適合していると判断されると(S5:YES)、演算ユニット91は、レシピデータ作成処理を終了する。
【0075】
ステップS5の判断工程につき、図14を用いて具体的に説明する。演算ユニット91は、ステップS2で作業者が登録したステップ番号2のデータから部分エッチング工程における希釈フッ酸の供給流量のデータを取得する。また、演算ユニット91は、ステップS2で作業者が登録したステップ番号S4のデータから物理洗浄工程における不活性ガスの供給流量のデータを取得する。そして、エッチング液の供給時間と不活性ガスの供給流量との組み合わせが、図14に示す適合基準データ112中の適正エッチング時間範囲r1乃至r4のいずれかに含まれるか判断する。適正エッチング時間範囲r1乃至r4のいずれかに含まれる場合には、演算ユニット91はステップS2で作業者が登録したエッチング条件と物理洗浄条件とが適合基準データ112の内容に適合すると判断する(S5:YES)。一方、適正エッチング時間範囲r1乃至r4のいずれにも含まれない場合には、演算ユニット91はステップS2で作業者が登録したエッチング条件と物理洗浄条件とが適合基準データ112の内容に適合しないと判断する(S5:NO)。
【0076】
不適合と判断されると、レシピデータを修正するための処理が行われる。図9では、レシピデータを修正するための2つの処理例を併記してある。
第1の処理例(S11〜S13)では、演算ユニット91が使用者に対してレシピデータの修正を促し、それに応じて、使用者が入力ユニット96を操作して、レシピデータを修正する。より具体的には、演算ユニット91は、使用者に対してレシピデータが不適合であることを通知する(S11)。この通知は、たとえば、ディスプレイ95に不適合の通知表示を表示させることで行える。演算ユニット91は、さらに、使用者に対して、エッチング条件に適合する物理洗浄条件、物理洗浄条件に適合するエッチング条件、またはそれらの両方を提示する(S12)。この提示もディスプレイ95での表示によって行える。この提示を受けて、使用者は、入力ユニット96を操作することによって、部分エッチング工程のステップデータ、物理洗浄工程のステップデータ、またはそれらの両方のステップデータを修正する(S13)。その後、再び、レシピデータが適合基準データ112と照合される(S4)。こうして、適合基準データ112に適合するレシピデータを作成して、記憶ユニット92に登録することができる。
【0077】
第2の処理例(S21〜S24)では、演算ユニット91が適合基準データ112に適合するようにレシピデータを修正し、その修正に対して使用者の承認を求める。より具体的には、演算ユニット91は、レシピデータが適合基準データに適合するように、部分エッチング工程のステップデータ、物理洗浄工程のステップデータ、またはそれらの両方のステップデータを修正する(S21)。例えば、作業者が指定した条件が図14中の点Pで示す条件だった場合、演算ユニット91は希フッ酸供給時間をt4以上に変更して部分エッチング工程のステップデータを再設定する。あるいは、不活性ガスの流量をn2に変更して物理洗浄工程のステップデータを再設定する。あるいは希フッ酸供給時間および不活性ガスの両方を修正して、部分エッチング工程および物理洗浄工程のステップデータを再設定する。
そして、使用者に対して、ステップデータの変更、すなわち、エッチング条件および/または物理洗浄条件を変更したことを通知し(S22)、その変更についての承認を求める(S23)。使用者への通知は、ディスプレイ95にメッセージ等を表示することによって行える。このとき、使用者が設定したレシピデータが適合基準データ112に適合しないことを併せて通知してもよい。使用者は、入力ユニット96を操作することによって、変更を承認することができる(S23:YES)。これにより、演算ユニット91は、レシピデータ作成処理を終了する。一方、使用者は、入力ユニット96を操作することによって、レシピデータの変更を否認することもできる(S23:NO)。この場合には、使用者は、レシピデータを修正する(S24)。具体的には、部分エッチング工程のステップデータ、物理洗浄工程のステップデータ、またはそれらの両方のステップデータを修正する(S21)。その後、再び、レシピデータが適合基準データ112と照合される(S4)。このような処理を繰り返すことにより、適合基準データ112に適合するレシピデータを作成して、記憶ユニット92に登録することができる。
【0078】
以上のように、この実施形態の基板洗浄方法によれば、基板Wの表面の自然酸化膜70が所定の膜厚まで部分的にエッチングされる。すなわち、自然酸化膜70の表面部分71がエッチングされることによって、所定の膜厚の自然酸化膜70(72)が残される。自然酸化膜70の表面部分71がエッチングされることにより、自然酸化膜70に部分的または全体的に取り込まれているパーティクルPが露出し、かつその露出部分の割合が大きくなる。したがって、その後に物理洗浄を実行すれば、比較的小さいエネルギーでパーティクルPを取り除くことができる。こうして、小さいエネルギーの物理洗浄で必要なパーティクル除去性能を実現できるから、基板Wの表面に形成されたパターンの損傷を抑制または回避できる。
【0079】
また、自然酸化膜70は表面部分71が選択的にエッチングされるので、自然酸化膜70の下地に悪影響を及ぼすことがない。したがって、下地に悪影響を及ぼすことなく、基板上のパーティクルを除去できる。
より具体的には、この実施形態では、部分エッチング工程において、希釈フッ酸が用いられる。希釈フッ酸を用いて自然酸化膜70の全体を除去することは、基板Wの表面の荒れを招くおそれがあるので好ましくない。そこで、自然酸化膜70を膜厚途中まで部分的にエッチングすることで、基板Wの表面を優れた状態に保持しながら、パターン損傷を抑制または回避しつつ、基板W上のパーティクルPを除去できる。
【0080】
また、希釈フッ酸の濃度は、0.1%〜0.5%の濃度であるので、自然酸化膜70の部分的なエッチング(ライトエッチング)を精度良く行うことができる。それにより、基板Wの表面を優れた状態に保持しながら、パターン損傷を抑制または回避しつつ、基板W上のパーティクルPを除去できる。
また、この実施形態では、前述のような基板洗浄方法を実行するためのレシピデータ111が作成される。レシピデータ111は、基板処理装置1に登録され、基板処理装置1がそのレシピデータ111に従って作動することによって、前述の基板洗浄方法が実行される。部分エッチング工程のエッチング条件と、物理洗浄工程における物理洗浄条件とは、適合基準データ112に基づいて、適合させられる。それにより、エッチング条件と物理洗浄条件とが適合したレシピデータ111を作成できるので、全体として適切な基板洗浄処理、すなわち、パターン損傷を抑制または回避しながら必要なパーティル除去性能を達成できる基板洗浄処理を実現できるレシピデータを作成できる。
【0081】
また、この実施形態では、レシピデータの作成段階において、部分エッチング工程におけるエッチング条件に適合する物理洗浄条件、物理洗浄工程における物理洗浄条件に適合するエッチング条件、またはそれらの両方が使用者に提示される。それにより、互いに適合するエッチング条件および物理洗浄条件をそれぞれ含む部分エッチングステップデータおよび物理洗浄ステップデータを容易に作成できる。
【0082】
図10は、この発明の他の実施形態を説明するためのブロック図である。この実施形態の説明において、前述の図1図9を再び参照する。図10において、前述の図7に示されたプログラムおよびデータと同等の内容のプログラムおよびデータには同一参照符号を付す。
この実施形態では、レシピデータ111の作成が、基板処理装置1とは別に設けられたコンピュータシステム200によって作成される。そして、作成済みのレシピデータ111が基板処理装置1に登録される。
【0083】
レシピデータ111を登録するために、基板処理装置1は、データ入力インタフェース120(図7を併せて参照)を備えている。データ入力インタフェース120は、レシピデータ111を格納した記録媒体を読み取るリーダユニットであってもよい。記録媒体は、光ディスクや磁気ディスク等であってもよいし、USBメモリやメモリカード等のポータブルメモリであってもよい。データ入力インタフェース120は、通信ユニットを含んでいてもよい。すなわち、たとえば、ネットワークからデータ入力インタフェース120を介して基板処理装置1にレシピデータ111が登録されてもよい。
【0084】
コンピュータシステム200は、コンピュータ本体201と、ディスプレイ202と、入力ユニット203と、データ入出力インタフェース204とを含む。入力ユニット203は、キーボード、ポインティングデバイス等のように、使用者によってコンピュータ本体201に対する入力操作を行うための装置であり、指令入力手段の一つの例である。コンピュータ本体201は、演算ユニット211と記憶ユニット212とを含む。演算ユニット211は、CPU等を含む。記憶ユニット212は、メモリ(ROMおよびRAMを含む)、大容量記憶ユニット(HDD、SDD等)を含んでいてもよい。記憶ユニット212には、演算ユニット211が実行するプログラム300や各種データ310が格納される。各種データ310は、レシピデータ111および適合基準データ112を含む。
【0085】
プログラム300は、レシピデータ111を作成するためのレシピ作成プログラム102を含んでいてもよい。
データ入出力インタフェース204は、データの書込みおよび読出しが可能な記録媒体に対する書き込み/読み出しを行うリーダ・ライタユニットであってもよい。記録媒体は、光ディスクや磁気ディスク等であってもいし、USBメモリやメモリカード等のポータブルメモリであってもよい。データ入出力インタフェース204は、通信ユニットを含んでいてもよい。すなわち、たとえば、ネットワークを介してデータの入出力が行われてもよい。
【0086】
記憶ユニット212に格納されるレシピデータ111は、基板Wの処理手順を記述した複数のステップを表すステップデータを含む。
レシピ作成プログラム102を演算ユニット211によって実行することで、コンピュータシステム200でレシピデータ111を作成して記憶ユニット212に格納することができる。また、他のコンピュータ等でレシピデータを作成し、そのレシピデータをデータ入出力インタフェース204を介して取得し、記憶ユニット212に格納し、必要に応じて編集することもできる。
【0087】
レシピデータ111の作成に関する動作は、前述の図9を参照して説明した動作と同様である。ただし、この実施形態では、レシピデータ作成のためのアシスト機能がコンピュータシステム200の演算ユニット211によって提供される。
こうして、コンピュータシステム200で予め作成されたレシピデータ111が、基板処理装置1に登録される。したがって、基板処理装置1のコントローラ90は、レシピ作成プログラムを備えている必要はない。また、基板処理装置1の記憶ユニット92には、適合基準データ112が格納されている必要もない。
【0088】
このように、この実施形態によれば、基板処理装置1とは別のコンピュータシステム200においてレシピデータ111を作成できる。
図11は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置1Aの構成を説明するための概念図である。図11において、図5に示した各部と同様の部分には同一参照符号を付す。この実施形態では、物理洗浄手段として、二流体ノズルに代えて、超音波ノズルからなる第2移動ノズル12Aが備えられている。第2移動ノズル12Aは、第2処理液供給路42に結合されており、DIW供給源52からDIWの供給を受けるように構成されている。第2移動ノズル12A内においてDIWが通る処理液流路に対向するように振動板401が配置されている。振動板401は、高周波発振回路402が生成する駆動信号によって駆動され、超音波周波数で振動する。それにより、第2移動ノズル12Aを通るDIWに超音波振動が付与され、その超音波振動が付与されたDIWが基板Wの表面に供給される。したがって、超音波振動が基板Wおよび基板Wの表面に存在するパーティクルに伝搬し、それによって、パーティクルが基板Wの表面から離脱する。こうして、基板Wの表面に超音波振動を付与した液体を供給する超音波洗浄工程が物理洗浄工程として実行される。この場合の物理洗浄のエネルギーは、超音波振動の振幅、すなわち、高周波発振回路402の出力を調整することによって制御される。なお、超音波ノズルの詳細な構造例は、たとえば、特開2015−65355号公報、特開2013−214757号公報などに記載されている。
【0089】
図12は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置1Bの構成を説明するための概念図である。図12において、図5に示した各部と同様の部分には同一参照符号を付す。この実施形態では、物理洗浄手段として、二流体ノズルに代えて、インクジェットヘッドの形態を有する吐出ヘッドからなる第2移動ノズル12Bが備えられている。第2移動ノズル12Bは、第2処理液供給路42に結合されており、DIW供給源52からDIWの供給を受けるように構成されている。また、第2移動ノズル12Bには、ヘッド駆動回路411が接続されている。
【0090】
第2移動ノズル12Aは、基板Wに対向する基板対向面412を有している。基板対向面412には、複数の吐出口が整列して配置されている。第2移動ノズル12Aは、インクジェット方式によって、複数の吐出口からDIWの液滴を基板Wに向けて吐出する。この液滴の運動エネルギーによって、基板Wの表面のパーティクルが基板Wの表面から離脱させられる。こうして、基板Wの表面にインクジェットヘッドの形態を有する吐出ヘッドからなる第2移動ノズル12Bから液滴が供給され、それによって、物理洗浄工程としてのインクジェット式液滴洗浄工程が実行される。この場合の物理洗浄のエネルギーは、液滴の吐出速度、すなわち、ヘッド駆動回路411の出力を調整することによって制御される。なお、インクジェットヘッドの形態を有する吐出ヘッドの詳細については、たとえば、特開2014−179449号公報に記載がある。
【0091】
図13は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置1Cの構成を説明するための概念図である。図13において、図5に示した各部と同様の部分には同一参照符号を付す。この実施形態では、物理洗浄手段として、二流体ノズルに代えて、冷却ガスノズル(冷却ヘッド。液膜固化手段の一例)からなる第2移動ノズル12Cが備えられている。第2移動ノズル12Cは、気体供給路44に結合されており、不活性ガス供給源54から不活性ガス(たとえば窒素ガス)の供給を受けるように構成されている。気体供給路44の途中には、不活性ガスを冷却する冷却器421が配置されている。したがって、第2移動ノズル12Cには、冷却された不活性ガス(冷却ガス)が供給される。
【0092】
この実施形態では、物理洗浄工程は、基板Wの表面に液膜を形成する工程と、第2移動ノズル12Cから冷却ガスを供給して液膜を凝固(凍結)させて凝固体膜を形成する工程と、その凝固体膜を融解して基板W外に除去する工程とを含む。基板W上のパーティクルは凝固体膜に取り込まれることにより、基板Wの表面から離脱し、その後、凝固体膜の融解に伴って基板W外に排除される。
【0093】
液膜は、たとえば、固定ノズル13から供給されるリンス液(たとえばDIW)によって形成される。第2移動ノズル12Cから吐出される冷却ガスは、液膜を構成する液体の凝固点よりも低温に冷却されたガスである。
凝固体膜の融解は、固定ノズル13からリンス液(たとえばDIW)を供給して行ってもよい。
【0094】
このようにして、基板Wの表面、より正確には自然酸化膜の表面に液膜を形成した後に固化して凝固体膜を形成し、その凝固体膜を融解して除去する固化溶解洗浄工程(この実施形態では凍結洗浄工程)を、物理洗浄工程として用いて基板洗浄が行われる。この場合の物理洗浄のエネルギーは、凝固体膜の厚さ、より具体的には冷却時間等で調整できる。なお、固化溶解洗浄(凍結洗浄)の詳細については、たとえば、特開2013−30612号公報に記載がある。
【0095】
固化溶解洗浄において液膜を形成するために用いられる液体は、高分子材料であってもよい。すなわち、高分子材料の液膜を基板上に形成し、その高分子材料を固化して凝固体膜とし、その後にその凝固体膜を溶解することによって、基板W上のパーティクルを融解した高分子材料とともに除去できる。液膜を固化させる液膜固化手段、および凝固体膜を融解させる融解手段は、用いられる高分子材料に応じて選択される。
【0096】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では基板Wの表面の自然酸化膜70にパーティクルが部分的に取り込まれている例を示したが、パーティクルが自然酸化膜以外の酸化膜に取り込まれている場合にもこの発明の基板洗浄方法を適用できる。
また、前述の実施形態では、部分エッチング工程のエッチング液として、希釈フッ酸を例示したが、それ以外のエッチング液によって部分エッチングが行われてもよい。
【0097】
また、前述の実施形態では、物理洗浄として、物理洗浄は、超音波洗浄、二流体洗浄、インクジェット洗浄、および固化溶解洗浄を示したが、これら以外の物理洗浄が適用されてもよい。また、2種類以上の物理洗浄が行われてもよい。たとえば、二流体洗浄と固化溶解洗浄とを組み合わせてもよい。
また、前述の実施形態では、ステップデータの作成後にレシピデータを適合基準データと照合しているが、ステップデータの作成段階で適合基準データとの照合が行われてもよい。たとえば、レシピ作成プログラム102は、部分エッチングステップデータを作成し、その後に物理洗浄ステップデータを作成する場合において、物理洗浄ステップデータの作成時に、部分エッチングステップデータで指定されたエッチング条件に適合する物理洗浄条件を提示(たとえばディスプレイ95に表示)してもよい。より具体的には、レシピ作成プログラム102は、物理洗浄ステップデータの作成時に、適合基準データに適合する物理洗浄条件をプリセットするように構成されていてもよい。また、逆に、レシピ作成プログラム102は、物理洗浄ステップデータを作成し、その後に部分エッチングステップデータを作成する場合において、部分エッチングステップデータの作成時に、物理洗浄ステップデータで指定された物理洗浄条件に適合するエッチング条件を提示(たとえばディスプレイ95に表示)してもよい。より具体的には、レシピ作成プログラム102は、部分エッチングステップデータの作成時に、適合基準データに適合するエッチング条件をプリセットするように構成されていてもよい。
【0098】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 :基板処理装置
1A :基板処理装置
1B :基板処理装置
1C :基板処理装置
10 :スピンチャック
11 :第1移動ノズル(エッチング液ノズル)
12 :第2移動ノズル(二流体ノズル)
12A :第2移動ノズル(超音波ノズル)
12B :第2移動ノズル(吐出ヘッド)
12C :第2移動ノズル(冷却ヘッド)
13 :固定ノズル
21 :第1スキャンアーム
22 :第2スキャンアーム
31 :第1アーム駆動機構
32 :第2アーム駆動機構
41 :第1処理液供給路
42 :第2処理液供給路
43 :第3処理液供給路
44 :気体供給路
51 :フッ酸供給源
52 :DIW供給源
53 :リンス液供給源
54 :不活性ガス供給源
70 :自然酸化膜
71 :表面部分
72 :エッチング後に残される部分
80 :希釈フッ酸
81 :混合流体
90 :コントローラ
91 :演算ユニット
92 :記憶ユニット
95 :ディスプレイ
96 :入力ユニット
100 :プログラム
101 :基板処理プログラム
102 :レシピ作成プログラム
110 :データ
111 :レシピデータ
112 :適合基準データ
120 :データ入力インタフェース
200 :コンピュータシステム
201 :コンピュータ本体
202 :ディスプレイ
203 :入力ユニット
204 :データ入出力インタフェース
211 :演算ユニット
212 :記憶ユニット
300 :プログラム
310 :データ
401 :振動板
402 :高周波発振回路
411 :ヘッド駆動回路
412 :基板対向面
421 :冷却器
V1 :第1処理液バルブ
V2 :第2処理液バルブ
V3 :第3処理液バルブ
V21 :不活性ガスバルブ
F1〜F3,F21 :流量計
FV1〜FV3,FV21 :流量調整弁
LD :パターン損傷度数分布を表す曲線
LE :物理洗浄エネルギーの分布を表す曲線
LP :残留パーティクル度数分布を表す曲線
P :パーティクル
PW :プロセスウィンドウ
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14