特許第6818493号(P6818493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧 ▶ 神戸電機産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6818493-低圧乾式変圧器 図000002
  • 特許6818493-低圧乾式変圧器 図000003
  • 特許6818493-低圧乾式変圧器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818493
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】低圧乾式変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20210107BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20210107BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01F30/10 T
   H01F30/10 H
   H01F30/10 J
   H01F27/26 130C
   H01F27/30
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-196091(P2016-196091)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-60874(P2018-60874A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年11月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501398709
【氏名又は名称】神戸電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松木 常樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建太
(72)【発明者】
【氏名】森島 毅英
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−164205(JP,A)
【文献】 特公昭45−007882(JP,B1)
【文献】 実公昭46−008537(JP,Y1)
【文献】 特表2008−510297(JP,A)
【文献】 特開平08−115826(JP,A)
【文献】 特開平06−163286(JP,A)
【文献】 特開平09−330826(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0247266(US,A1)
【文献】 特開平02−168607(JP,A)
【文献】 実開平07−029823(JP,U)
【文献】 実開平05−082030(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/26
H01F 27/30
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側巻線と外側巻線とからなる複数のコイルを備え、各々の上記コイルの内方に鉄心が挿通され、上記コイルの鉄心挿通方向に沿った下端と上端には、上記鉄心の上記コイルからの突出部を挿通するとともに、複数の上記コイルの間に渡ってその下端面と上端面を全て覆うそれぞれ1枚の絶縁部材が配置され、下側の上記絶縁部材は上記鉄心の上記突出部と一体化された支持部材で支持され、また上側の上記絶縁部材と上記鉄心の上記突出部との間には締結具が介在され、上記締結具の締結により上記コイルが上下の上記絶縁部材によって挟着される一方、上記コイルを構成する上記外側巻線、上記内側巻線、および上記内側巻線に対向する上記鉄心の相互間の隙間が全て絶縁材料と接着材料とからなる充填材で充填固定されている低圧乾式変圧器。
【請求項2】
上記締結具は、上記鉄心の上記突出部と一体化されたナット、および上記ナットに螺合されて上側の上記絶縁部材を押圧するボルトからなる請求項1に記載の低圧乾式変圧器。
【請求項3】
上記鉄心は上記コイルの挿通方向に直交する方向の断面が長方形であり、上記鉄心の短辺側とその外方に位置する上記内側巻線との間には、上記内側巻線に対する変形防止用の樹脂片と絶縁材とが介在されている請求項1または請求項2に記載の低圧乾式変圧器。
【請求項4】
上記接着材料は、エポキシ系のプリプレグ、およびエポキシ系ワニスを含浸、硬化して得られたエポキシ材で構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の低圧乾式変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高い耐震性を備えた低圧乾式変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、AC600V以下程度の電圧を扱う低圧乾式変圧器においては、例えば、下記の特許文献1、2に記載された構成のものが提案されている。
すなわち、従来技術では、アクリル系ワニスでコイルを含浸することにより、コイルの変形を防止している。また、鉄心の中空部もしくは変圧器に取り付けたアングル上に樹脂片を設置し、この樹脂片の上にコイルを載置することにより、下面からコイルを支持している。
【0003】
また、コイルについては、その内側巻線と鉄心との間にはアクリル系ワニスが介在されており、それらの接着力により内側巻線が鉄心に側面から支持されている。また、コイルの内側巻線と外側巻線との間には空気道確保用の樹脂片が挿入され、その樹脂片との摩擦力により外側巻線が内側巻線に側面から支持されている。
【0004】
したがって、内側巻線と外側巻線からなるコイル全体は、側面からの支持によって自重および鉛直方向の振動による鉛直方向への移動や脱落を防いでいる。また、コイルの外側巻線に対する水平方向の振動については、空気道確保用の樹脂片の圧縮応力により移動や偏心を防止している。さらに、コイルの内側巻線については鉄心との間に介在されているアクリル系ワニスの接着力により、水平方向の移動や偏心を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−225616号公報
【特許文献2】特開昭58−164205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の低圧乾式変圧器は、コイル下面からの支持は樹脂片のみであり、自重程度の応力を想定している。このため、鉛直方向に大きな地震力が作用した場合には、樹脂片が塑性変形してコイル全体が鉄心から垂直方向にずれる可能性があった。また、コイル下面の一部のみを局部的に支持する構造であるため、コイルに不均一な抗力が作用し、コイルが変形する可能性があった。
【0007】
また、コイルの外側巻線は空気道確保用の樹脂片からの摩擦力により側面から支持されており、かつコイルの内側巻線が外側巻線の自重や振動による荷重も負担している。さらに、コイルの内側巻線と鉄心の間の接着力で、内側巻線と外側巻線の双方の自重および振動を支持している。したがって、鉛直方向に大きな地震力が作用した場合には、その反作用がコイルの内側巻線と鉄心との間に介在されたアクリル系ワニスに集中して加わる。そのため、その接着力以上の大きな鉛直地震力が作用すると、コイル全体が鉄心から垂直方向に位置ずれして変形する可能性があった。
【0008】
また、水平地震力下では、その応力が空気道確保用の樹脂片に集中するため、樹脂片の弾性変形領域の地震力には耐えられるものの、強大な地震力が加わった場合には樹脂片が塑性変形を起こし、水平方向のコイルの外側巻線の位置が偏心する可能性がある。また、摩擦力喪失により側面からコイルの外側巻線を支持できなくなり、鉄心からコイルが脱落する可能性があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、地震発生により鉛直方向や水平方向の力が作用した場合でも、破損することなく給電継続が可能な低圧乾式変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の低圧乾式変圧器は、内側巻線と外側巻線とからなる複数のコイルを備え、各々の上記コイルの内方に鉄心が挿通され、上記コイルの鉄心挿通方向に沿った下端と上端には、上記鉄心の上記コイルからの突出部を挿通するとともに、複数の上記コイルの間に渡ってその下端面と上端面を全て覆うそれぞれ1枚の絶縁部材が配置され、下側の上記絶縁部材は上記鉄心の上記突出部と一体化された支持部材で支持され、また上側の上記絶縁部材と上記鉄心の上記突出部との間には締結具が介在され、上記締結具の締結により上記コイルが上下の上記絶縁部材によって挟着される一方、上記コイルを構成する上記外側巻線、上記内側巻線、および上記内側巻線に対向する上記鉄心の相互間の隙間が全て絶縁材料と接着材料とからなる充填材で充填固定されている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の低圧乾式変圧器によれば、複数のコイルは、各々のコイルの間に渡って配置された上下それぞれ1枚の絶縁部材により狭着されるとともに、鉄心に一体化された支持部材で支持され、かつ、コイルの外側巻線、内側巻線、およびその内方の鉄心との相互間の隙間が全て絶縁材料と接着材料とからなる充填材で充填固定されているので、地震発生により鉛直方向および水平方向のいずれの力が作用した場合でも、変形や変位を起こさず、破損することがない。このため、安定して給電継続が可能で、高い耐震性を備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態1による低圧乾式変圧器の正面図である。
図2】この発明の実施の形態1による低圧乾式変圧器の側面図である。
図3図1のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による低圧乾式変圧器の正面図、図2はこの発明の実施の形態1による低圧乾式変圧器の側面図、図3図1のA−A線に沿った断面図である。
【0014】
この実施の形態1の低圧乾式変圧器1は、図1および図2に示すように、左右2つのコイル2を備え、各コイル2は、その内方に鉄心3がそれぞれ挿通され、各鉄心3のコイル2から上下に突出した突出部同士は互いに一体的に連結されている。
【0015】
なお、この実施の形態1の低圧乾式変圧器1は、左右2つのコイル2を備えているが、この発明はこのような構成に限定されるものではなく、コイル2が3つ以上ある構成の場合についても適用可能である。
【0016】
そして、各コイル2の鉄心挿通方向に沿った下端と上端には、それぞれ鉄心3のコイル2からの突出部を挿通する挿通穴(図示せず)が形成されるとともに、左右の各コイル2の下端面と上端面を覆う平板状の絶縁部材8、9が配置されている。この場合、上下の各絶縁部材8、9は、共にガラスエポキシ材で構成されているが、このような材料に限定されるものではなく、強度に優れ弾性がある難燃の絶縁材料であれば好適に使用することができる。
【0017】
なお、ここでは左右の2つのコイル2間に渡ってその下端面と上端面とを全て覆うように上下それぞれ1枚の絶縁部材8、9を設けた構成としている。この構成とする方が地震に対する抑止効果が発揮できる点で好ましいが、コイル2ごとに個別に絶縁部材を上下に設けることも可能である。
【0018】
各鉄心3のコイル2から下方に突出した突出部の両側面にはそれぞれ鉄心固定用の平鋼11がネジ止めされ、各々の平鋼11には、鉄心3のコイル挿通箇所に対応する長手方向の左右2箇所にそれぞれ支持部材としての断面L字状のアングル13がネジ止めされている。これにより、鉄心3のコイル2から下方に突出した突出部、平鋼11、およびアングル13が一体化されるとともに、アングル13によって下側の絶縁部材8が支持されている。
【0019】
このように、下側の絶縁部材8を各コイル2の下端面の全面を覆う大きな寸法とすることにより、コイル2の荷重を均等に受け止めるとともに、コイル2は絶縁部材8からの抗力を均等に受ける。したがって、下側の絶縁部材8は、鉛直地震力によりコイル2から加わる応力、および鉄心3とアングル13からの抗力による曲げ応力、せん断応力で塑性変形しない厚みを持たせている。
【0020】
また、アングル13については、地震により発生するせん断応力、引張応力、曲げ応力を事前評価し、それらの応力がアングル13として使用する材料について予め規定された強度の許容値内に収まるように選定している。さらに、アングル13と絶縁部材8との間に発生する圧縮応力が絶縁部材8の強度の許容値を超えないよう、アングル13の寸法を選定している。
【0021】
一方、各鉄心3のコイル2から上方に突出した突出部の両側面にはそれぞれ鉄心3固定用の平鋼12がネジ止めされ、各々の平鋼12には、前述のアングル13の取り付け箇所に対応する長手方向の左右2箇所にそれぞれナット14が溶接されている。これにより、鉄心3のコイル2から上方に突出した突出部、平鋼12、およびナット14が一体化されている。そして、各ナット14にはボルト15が螺合されており、各ボルト15を締め付けることにより、コイル2が上下の絶縁部材8、9によって挟着されている。したがって、ボルト15とナット14が特許請求の範囲における締結具に対応している。
【0022】
このように、各ナット14の締め付けによりコイル2が上下の絶縁部材8、9によって挟着されるので、鉛直方向の振動によるコイル2の移動を防止し、コイル2の位置が固定される。したがって、上側の絶縁部材9は、鉛直地震力によりコイル2から加わる応力、および鉄心3とアングル13からの抗力による曲げ応力、せん断応力で塑性変形しない厚みを持たせている。
【0023】
また、ナット14とボルト15については、地震により発生するせん断応力、引張応力を事前評価し、それらの応力がナット14およびボルト15として使用する材料について予め規定された強度の許容値内に収まるように選定している。さらに、ボルト15と絶縁部材9との間に発生する圧縮応力が絶縁部材9の強度の許容値を超えないよう、ボルト15の寸法を選定している。なお、低圧乾式変圧器1は、製作工程中に、全体をエポキシ系ワニスに含浸して高温処理されるので、ナット14とボルト15は、エポキシ系ワニスによって固められるため、地震による振動下でもボルト15が緩みにくい構造となっている。
【0024】
図3に示すように、左右2つのコイル2は、それぞれ内側巻線4と外側巻線5とからなり、内側巻線4の内方に鉄心3が挿通されている。この場合の内側巻線4と外側巻線5は、いずれか一方が一次側、他方が二次側となる。内側巻線4と外側巻線5のうち、いずれが一次側、あるいは二次側になるかはこの変圧器の使用状況に応じて決定される。
【0025】
コイル2の内側の鉄心3は、コイル挿通方向と直交する方向の断面が長方形であり、この鉄心3の短辺側とその外方に位置する内側巻線4との間の空隙には、エポキシ系ワニスの含浸前に鉄心3の角部によって内側巻線4が損傷したり変形したりするのを防止するなどの目的で、樹脂片17とその樹脂片17を挟むように左右に絶縁材18が介在されている。
【0026】
この場合の樹脂片17は、ガラスファイバをエポキシ系の樹脂で固めて形成されたものである。また、絶縁材18は、ガラスファイバを予め詰めておき、その後の製作工程で、エポキシ系ワニスに含浸して高温処理後、乾燥して得られたものであり、ガラスエポキシ材と類似の強度および弾性を持つとともに、内側巻線4と鉄心3とを接着する役割を果たしている。
【0027】
そして、鉄心3の長辺側および上記の樹脂片17と絶縁材18を覆って、プリプレグおよび絶縁紙が巻装されている。この場合のプリプレグは、例えばアラミド繊維にエポキシ樹脂を含浸してなるシート状のものであり、鉄心3、樹脂片17、絶縁材18と内側巻線4との間に確実にエポキシ材を充填する役割を果たす。また、内側巻線4と外側巻線5とは、それぞれ銅線の外周を優れた絶縁耐力を持つ絶縁紙(例えばアラミド絶縁紙)で巻装して構成されている。
【0028】
前述のように、この低圧乾式変圧器1は、製作工程中に、全体をエポキシ系ワニスに含浸して高温処理後、乾燥される。したがって、鉄心3と内側巻線4との間には、エポキシ系のプリプレグと絶縁紙が介在されるとともに、エポキシ系ワニスを含浸、硬化して得られたエポキシ材が充填されており、エポキシ材による強力な接着力が働いている。この場合、地震により内側巻線4と鉄心3との間に働く応力が、エポキシ材の引張接着強さ、および引張せん断接着強さを超えないよう、エポキシ系ワニスの素材が選定されている。なお、図3において、鉄心3と内側巻線4との間に充填されているプリプレグ、絶縁紙、およびエポキシ材の各層は、個々に区別せずにその全体を充填材として符号21で示している。
【0029】
また、内側巻線4と外側巻線5との間には絶縁紙が介在されるとともに、エポキシ系ワニスの含浸によりエポキシ材が充填されており、エポキシ材による強力な接着力が作用して内側巻線4と外側巻線5とが一体化されている。ただし、内側巻線4と外側巻線5との間に絶縁紙に加えてプリプレグを介在させた構成とすることも可能である。なお、図3において、内側巻線4と外側巻線5の間に充填されている絶縁紙、およびエポキシ材の各層は、個々に区別せずにその全体を充填材として符号22で示している。
【0030】
このように、この実施の形態1では、鉄心3、内側巻線4、および外側巻線5の相互間の隙間は、全て絶縁材料(絶縁紙)と接着材料(エポキシ系プリプレグ、およびエポキシ系ワニスを含浸、硬化して得られたエポキシ材)とからなる充填材21、22で充填固定されている。よって、外側巻線5、内側巻線4、およびこの内側巻線4の相互間の隙間には、従来のような空気道確保用の樹脂片は設けられていない。このように、空気道を確保する必要がないのは、コイル2を構成する内側巻線4と外側巻線5の直径を従来のものよりも幾分大きくすることにより、通電抵抗による発熱を抑えたためである。
【0031】
次に、上記構成を備えた低圧乾式変圧器1における、地震時の挙動について説明する。
【0032】
高い地震力が鉛直方向に発生した場合、地震応力は絶縁部材8、9を通してアングル13や、ボルト15、ナット14に加わるが、地震により発生する応力がアングル13や、ボルト15、ナット14の強度の許容値を超えないように選定しているので、アングル13や、ボルト15、ナット14が破断することはない。また、地震の曲げ応力および局所的な圧縮応力により絶縁部材8、9が塑性変形しないように、絶縁部材8、9の厚さや、アングル13やボルト15の寸法を選定しているので、絶縁部材8、9が過剰に変形することはなく、コイル2を確実に支持固定できる。
【0033】
一方、高い地震力が水平方向に発生した場合、地震応力はコイル2および鉄心3を分離させる方向に作用するが、鉄心3、内側巻線4、および外側巻線5の相互間の隙間は、全てエポキシ系ワニスを含浸、硬化して得られたエポキシ材を含む充填材21、22で充填固定されているので、鉄心3と内側巻線4との間、および内側巻線4と外側巻線5との間のいずれについてもエポキシ材による強力な接着力が接触面全面に働き、かつ、引張応力およびせん断応力がエポキシ材の接着強さを超えないようにエポキシ系ワニスの素材が選定されているため、コイル2と鉄心3とが分離することはない。
【0034】
鉄心3の短辺側には、内側巻線4との間に樹脂片17と絶縁材18とが介在されているが、コイル2はエポキシ系ワニスに含浸して形成されるため、地震発生時もコイル2はわずかな変形しか生じない。また、絶縁材18と鉄心3、および絶縁材18と内側巻線4との間にエポキシ系の強力な接着力が働くため、絶縁材18と鉄心3、および絶縁材18と内側巻線4とが分離することもない。さらに、鉄心3と内側巻線4との間には絶縁材18に加えて、プリプレグが介在されているので、これらが水平方向の変形を抑制する方向に作用するため、鉄心3の長辺側と短辺側のいずれの方向についてもコイル2の変形量はごくわずかとなる。よって、コイル2が偏心したり、鉄心3から脱落することはない。
【0035】
以上のように、この実施の形態1の低圧乾式変圧器1は、コイル2が上下の絶縁部材8、9により狭着されるとともに、鉄心3に一体化されたアングル13で支持され、かつ、コイル2の外側巻線5、内側巻線4、およびその内方の鉄心3との相互間の隙間が全て絶縁材料と接着材料とからなる充填材21、22で充填固定されているので、地震発生により鉛直方向および水平方向のいずれの力が作用した場合でも、変形や変位を起こさず、破損することがない。このため、安定して給電継続が可能で、高い耐震性を備えたものが得られる。
【0036】
なお、この発明は、上記の実施の形態1の構成のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態1の構成の一部に変形を加えたり、構成の一部を省略することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 低圧乾式変圧器、2 コイル、3 鉄心、4 内側巻線、5 外側巻線、
8,9 絶縁部材、11,12 平鋼、13 アングル、14 ナット、
15 ボルト、17 樹脂片、18 絶縁材、21,22 充填材。
図1
図2
図3