特許第6818503号(P6818503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818503
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20210107BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20210107BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   E04B1/30 G
   E04H9/02 301
   E04B1/98 E
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-206385(P2016-206385)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-66222(P2018-66222A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】平林 聖尊
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山田 基裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正人
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−140972(JP,A)
【文献】 特開2004−257130(JP,A)
【文献】 特開2016−135977(JP,A)
【文献】 特開2011−032635(JP,A)
【文献】 特開2006−022639(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104775649(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/98
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部のみ配置され、一以上の平面構面を構成する鉄筋コンクリート架構と、
前記鉄筋コンクリート架構に接合された鉄骨梁と鉄骨柱とで構成された鉄骨架構と、
を備え
前記外周部は、外柱と内柱との間の1スパンである、
建物。
【請求項2】
前記鉄筋コンクリート架構は、前記外周部の一辺部以上を構成する、
請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記鉄筋コンクリート架構は、前記外周部の全体に亘って設けられ、
前記鉄骨架構は、前記鉄筋コンクリート架構で囲まれた内側を構成する、
請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記鉄筋コンクリート架構は、コンクリート柱及びコンクリート梁で構成され、
前記鉄骨梁は、前記コンクリート梁よりも梁成が小さく、
前記鉄骨柱は、前記コンクリート柱よりも細い、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物外周構面の柱や梁、および建物外周の壁材を鉄筋コンクリート造で構成することで、鉄骨に比べて、外周構面の工事費と耐火被覆工事費を低減することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、地震力を主に負担させる鉄筋コンクリートの柱・梁からなる耐震架構構面を、外周構面の少なくとも一部に集中配置し、外周構面以外には耐震架構構面を設けないことで、低コストの耐震架構構造を実現することが記載されている。
【0004】
ここで、鉄筋コンクリート造の建物は、鉄骨造の建物と比較し、柱梁の寸法が大きいので、その分、建物内部の空間が狭くなり、例えば設備配管や水廻り設備の配置に制約を受ける。しかし、鉄骨造の建物は、振動に対する剛性は鉄筋コンクリート造と比較して低いので、建物内部に振動が伝達されやすく、居住性が低い。
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、建物の外周構面のみを鉄筋コンクリート造で構成している。しかし、建物の外周構面のみを鉄筋コンクリート造で構成しても、建物内部の鉄骨架構への振動の伝達に関しては、十分な効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−22639号公報
【特許文献2】特開2005−350860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を鑑み、鉄骨架構への振動の影響を抑えつつ、建物内部の空間を広くすることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、外周部に一以上の平面構面を構成する鉄筋コンクリート架構と、前記鉄筋コンクリート架構に接合された鉄骨架構と、を備えた建物である。
【0009】
第一態様の建物では、一以上の鉄筋コンクリート架構の平面構面を建物の外周部に配置することで、鉄骨架構への振動の伝達が効果的に抑制される。また、鉄骨架構は柱梁の寸法が、鉄筋コンクリート架構よりも小さくなるので、建物内部の空間が広く確保される。このように、鉄骨架構への振動の影響を抑えつつ、建物内部の空間を広くすることができる。
【0010】
第二態様は、前記鉄筋コンクリート架構は、前記外周部の一辺部以上を構成する、第一態様に記載の建物である。
【0011】
第二態様の建物では、鉄筋コンクリート架構の平面構面が外周部の一辺部以上構成するので、鉄骨架構への振動の伝達が更に効果的に抑制される。
【0012】
第三態様は、前記鉄筋コンクリート架構は、前記外周部の全体に亘って設けられ、前記鉄骨架構は、前記鉄筋コンクリート架構で囲まれた内側を構成する、第一態様に記載の建物である。
【0013】
第一態様の建物では、鉄筋コンクリート架構が、建物の外周部全体に亘って設けられると共に、鉄筋コンクリート架構で囲まれた内側に鉄骨架構が設けられているので、鉄骨架構への振動の伝達が更に抑えられる。また、建物のねじり剛性が高くなるので、地震力に対して効果的に抵抗する
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄骨架構への振動の影響を抑えつつ、建物内部の空間を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の建物の柱梁架構の構造を模式的に示す平面図である。
図2】実施形態の建物の柱梁架構の構造を模式的に示す立面図である。
図3】実施形態の建物における図1の3−3線に沿った拡大断面図である。
図4】(A)は実施形態の建物の鉄筋コンクリート架構の配置構造を模式的に示す平面図であり、(B)は第一変形例の建物の鉄筋コンクリート架構の配置構造を模式的に示す平面図であり、(C)は第二変形例の建物の鉄筋コンクリート架構の配置構造を模式的に示す平面図であり、(D)は第三変形例の建物の鉄筋コンクリート架構の配置構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態の建物10について説明する。なお、各図において適宜示される矢印X及び矢印Yは水平方向における直交する2方向を示し、矢印Zは鉛直方向を示している。
【0017】
[構造]
まず、本実施形態の建物10の構造について説明する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の建物10は、地盤12の上に、フーチング14等で構成された基礎上に構築されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、平面視矩形状とされ、外周部30は鉄筋コンクリート造の鉄筋コンクリート架構32で構成され、その鉄筋コンクリート架構32で囲まれた内部50は鉄骨造の鉄骨架構52で構成されている(図4(A)及び図3も参照)。
【0020】
図1図3に示すように、建物10の外周部30の鉄筋コンクリート架構32は、鉄筋コンクリート造のコンクリート柱34A、34Bとコンクリート梁36とで構成されている(図4(A)も参照)。また、建物10の内部50の鉄骨架構52は鉄骨造の鉄骨柱54及び鉄骨梁56で構成されている。
【0021】
つまり、外周構面31のコンクリート柱34Aと内側の一つ目のコンクリート柱34Bの1スパンが外周部30であり、1スパンの外周部30全体が鉄筋コンクリート架構32で構成されている。なお、コンクリート柱34Aとコンクリート柱34Bとを区別する必要がない場合は、コンクリート柱34とする。
【0022】
別の観点から説明すると、平面視において、丸い破線で囲まれた四本のコンクリート柱34A、34Bと四本のコンクリート梁36とで構成された構面をコンクリート造の平面構面60とし、このコンクリート造の平面構面60が建物10の外周部30の全体に亘って設けられている(図4も参照)。
【0023】
なお、本実施形態では、鉄骨柱54は鋼管で構成され、鉄骨梁56はH形鋼で構成され、鉄骨柱54と鉄骨梁56とはピン接合となっている。しかし、これらに限定されるものではない。
【0024】
図3に示すように、鉄骨梁56はコンクリート梁36よりも梁成が小さく、鉄骨柱54はコンクリート柱34A、34Bよりも細い。
【0025】
なお、本実施形態では、鉄筋コンクリート架構32で構成された外周部30のスラブ16はリブ付プレキャストコンクリート板で構成され、鉄骨架構52で構成された内部50のスラブ18はデッキプレートで構成されている。なお、スラブ16、18は、これらに限定されるものではない。
【0026】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
鉄筋コンクリート架構32を建物10の外周部30に配置することで、鉄骨架構52で構成された内部50への振動の伝達が効果的に抑制される。よって、居住性が向上する。
【0028】
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート架構32は外周部30の全体に亘って設けられ、鉄骨架構52は鉄筋コンクリート架構32で囲まれた内部50を構成している。よって、外周部30の一部が鉄骨で構成されている場合と比較し、内部50への振動の伝達が更に抑えられる。
【0029】
また、鉄筋コンクリート架構32を外周部30の全体に亘って設けることで、建物10のねじり剛性が高くなるので、地震力に対して効果的に抵抗する。
【0030】
また、鉄骨架構52を構成する鉄骨柱54及び鉄骨梁56は、鉄筋コンクリート架構32を構成するコンクリート柱34及びコンクリート梁36よりも寸法が小さいので、建物10の内部50の空間(鉄骨架構52で構成された空間)が広く確保される。
【0031】
このように、鉄筋コンクリート架構32を建物10の外周部30に配置することで、鉄骨架構52で構成された内部50への振動の影響を抑えつつ、建物10の内部50の空間を広く確保することができる。
【0032】
<変形例>
上記実施形態では、図4(A)に示すように、鉄筋コンクリート架構32は外周部30の全体に亘って設けられ、鉄骨架構52は鉄筋コンクリート架構32で囲まれた内部50を構成している。しかし、このような構成に限定されない。鉄筋コンクリート架構32は外周部30の一部のみを構成していてもよい。
【0033】
図4(B)の第一変形例の建物110では、外周部30にコ字状に鉄筋コンクリート架構32を設けている。
【0034】
図4(C)の第二変形例の建物120では、外周部30にL字状に鉄筋コンクリート架構32を設けている。
【0035】
図4(D)の第三変形例の建物130では、外周部30の対向する辺部(「二」の字状)に鉄筋コンクリート架構32を設けている。
【0036】
ここで、本実施形態の建物10、第一変形例の建物110、第二変形例の建物120、及び第三変形例の建物130では、鉄筋コンクリート架構32は、外周部30の一辺部以上を構成している。よって、鉄筋コンクリート架構32が外周部30の一辺部未満を構成する場合と比較し、鉄骨架構52への振動の伝達が抑制される。
【0037】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0038】
上記実施系では、建物10、建物110、建物120、及び建物130に特定されるものではない、図1に示す鉄筋コンクリート架構32で構成された平面構面60が、外周部30に一以上あればよい。
【0039】
なお、本実施形態の建物10、110、120、130は、説明を判り易くするため平面視矩形状であるが、これに限定されるものではない。どのような形状の建物であってもよい、例えば、平面視円形状であってもよい。
【0040】
また、内側の一つ目のコンクリート柱34Bまでの1スパンの外周部30の全部又は一部が鉄筋コンクリート架構32で構成されていたが、これに限定されない。1スパン以上、鉄筋コンクリート架構32で構成されていてもよい。
【0041】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 建物
30 外周部
32 鉄筋コンクリート架構
52 鉄骨架構
60 平面構面
110 建物
120 建物
130 建物
図1
図2
図3
図4