特許第6818638号(P6818638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818638
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】作業機の出力変更システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20210107BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20210107BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F02D29/00 B
   F02D29/02 L
   F02D29/02 K
   F02D45/00 370Z
   F02D45/00 376H
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-120646(P2017-120646)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-7356(P2019-7356A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬典
(72)【発明者】
【氏名】市川 信繁
(72)【発明者】
【氏名】荒木 浩之
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−299950(JP,A)
【文献】 特開2017−066902(JP,A)
【文献】 特開2004−124801(JP,A)
【文献】 特開2005−196399(JP,A)
【文献】 特開2013−016119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 1/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機に設けられ且つ原動機の最高出力を制御可能であって、前記原動機の回転数に対して最高出力のピークを有する標準制御マップと、前記原動機の回転数に対して前記標準制御マップとは異なる最高出力のピークを有する変更制御マップとのいずれかに基づいて、前記原動機の出力を制御する制御装置と、
前記原動機の出力の変更に関する変更情報を出力する外部機器と、
を備え、
前記外部機器は、設定画面に前記最高出力を入力する情報入力部を表示し且つ、前記情報入力部に入力された最高出力を前記変更情報として前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記情報入力部に入力された最高出力が前記標準制御マップで示された最高出力に対応している場合は前記標準制御マップに基づいて前記原動機の出力を制御し、前記情報入力部に入力された最高出力が前記変更制御マップで示された最高出力に対応している場合は前記変更制御マップに基づいて前記原動機の出力を制御する作業機の出力変更システム。
【請求項2】
前記作業機の位置である機械位置を検出する位置検出装置を備え、
前記外部機器は、前記最高出力の変更する位置である出力変更位置を前記変更情報として設定する位置設定部を有し、且つ、前記位置設定部で設定した前記出力変更位置を前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記機械位置が前記出力変更位置に一致する場合に前記最高出力を変更する請求項1に記載の作業機の出力変更システム。
【請求項3】
前記位置設定部は、設定画面に圃場を含む圃場マップを表示し、且つ、前記圃場マップで選択された圃場に対応する位置を出力変更位置として設定する請求項2に記載の作業機の出力変更システム。
【請求項4】
時間を計時する計時部を備え、
前記外部機器は、前記最高出力の変更する時間である出力変更時間を前記変更情報として設定する時間設定部を有し、且つ、前記時間設定部で設定した出力変更時間を前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記計時部で計時した時間が前記出力変更時間と一致した場合に前記最高出力を変更する請求項1に記載の作業機の出力変更システム。
【請求項5】
前記時間設定部は、設定画面に最高出力の変更を開始する開始時刻と、最高出力の変更を終了する終了時刻とを表示し、
前記制御装置は、前記計時部で計時した時間が開始時刻である場合に最高出力の変更を開始し、終了時刻である場合に前記最高出力の変更を終了する請求項1に記載の作業機の出力変更システム。
【請求項6】
前記作業機の設けられた作業装置を備え、
前記外部機器は、前記出力の変更可能な作業装置の装置情報を前記変更情報として設定する装置設定部を有し、且つ、前記装置設定部で設定した装置情報を前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記装置情報が前記作業機に設けられた作業装置を示している場合に前記最高出力を変更する請求項1に記載の作業機の出力変更システム。
【請求項7】
前記外部機器は、前記変更情報として外部認証情報を送信し、
前記制御装置は、記憶認証情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された記憶認証情報と前記外部認証情報との認証を行い且つ認証が成立した場合に出力を許可する認証部とを備えている請求項1〜6のいずれかに記載の作業機の出力変更システム。
【請求項8】
前記出力の変更後の前記作業機の機械状態を前記外部機器に送信する通信装置を備え、
前記外部機器は、前記機械状態に基づいて前記作業機に対応付けられたユーザに対して金融に関する金融処理を行う金融処理部を有している請求項1〜7のいずれかに記載の作業機の出力変更システム。
【請求項9】
前記金融処理部は、前記機械状態に基づいて、前記金融処理として前記ユーザに出力の変更による費用に関する情報を生成する請求項8に記載の作業機の出力変更システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業機の出力変更システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを備えたトラクタとして特許文献1に示された技術が知られている。特許文献1のトラクタは、耕深を行う自動耕深制御モードと作業装置を昇降するドラフト制御モードとを備え、自動耕深モードでは、エンジンの最大トルクをエンジン回転数に対して高速側に設定し、ドラフト制御モードでは、最大トルクをエンジン回転数に対して低速側に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3295411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトラクタでは、エンジン回転数に対するエンジンの最大トルクを、自動耕深制御モードとドラフト制御モードとで変更することによって作業をスムーズに行えるようにしている。しかしながら、特許文献1のトラクタだけでなく従来のトラクタでは、エンジンの最大出力を変更することができないのが実情であり、より様々な状況に応じて作業を行うのが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、様々な状況に応じて作業を行うことができる作業機の出力変更システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業機の出力変更システムは、作業機に設けられ且つ原動機の最高出力を制御可能であって、前記原動機の回転数に対して最高出力のピークを有する標準制御マップと、前記原動機の回転数に対して前記標準制御マップとは異なる最高出力のピークを有する変更制御マップとのいずれかに基づいて、前記原動機の出力を制御する制御装置と、前記原動機の出力の変更に関する変更情報を出力する外部機器と、を備え、前記外部機器は、設定画面に前記最高出力を入力する情報入力部を表示し且つ、前記情報入力部に入力された最高出力を前記変更情報として前記制御装置に出力し、前記制御装置は、前記情報入力部に入力された最高出力が前記標準制御マップで示された最高出力に対応している場合は前記標準制御マップに基づいて前記原動機の出力を制御し、前記情報入力部に入力された最高出力が前記変更制御マップで示された最高出力に対応している場合は前記変更制御マップに基づいて前記原動機の出力を制御する
【0007】
作業機の出力変更システムは、前記作業機の位置である機械位置を検出する位置検出装置を備え、前記外部機器は、前記最高出力の変更する位置である出力変更位置を前記変更情報として設定する位置設定部を有し、且つ、前記位置設定部で設定した前記出力変更位置を前記制御装置に出力し、前記制御装置は、前記機械位置が前記出力変更位置に一致する場合に前記最高出力を変更する
前記位置設定部は、設定画面に圃場を含む圃場マップを表示し、且つ、前記圃場マップで選択された圃場に対応する位置を出力変更位置として設定する
【0009】
作業機の出力変更システムは、時間を計時する計時部を備え、前記外部機器は、前記最高出力の変更する時間である出力変更時間を前記変更情報として設定する時間設定部を有し、且つ、前記時間設定部で設定した出力変更時間を前記制御装置に出力し、前記制御装置は、前記計時部で計時した時間が前記出力変更時間と一致した場合に前記最高出力を変更する
前記時間設定部は、設定画面に最高出力の変更を開始する開始時刻と、最高出力の変更を終了する終了時刻とを表示し、前記制御装置は、前記計時部で計時した時間が開始時刻である場合に最高出力の変更を開始し、終了時刻である場合に前記最高出力の変更を終了する
【0010】
作業機の出力変更システムは、前記作業機の設けられた作業装置を備え、前記外部機器は、前記出力の変更可能な作業装置の装置情報を前記変更情報として設定する装置設定部を有し、且つ、前記装置設定部で設定した装置情報を前記制御装置に出力し、前記制御装置は、前記装置情報が前記作業機に設けられた作業装置を示している場合に前記最高出力を変更する。
前記外部機器は、前記変更情報として外部認証情報を送信し、前記制御装置は、記憶認証情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された記憶認証情報と前記外部認証情報との認証を行い且つ認証が成立した場合に出力を許可する認証部とを備えている。
【0011】
作業機の出力変更システムは、前記出力の変更後の前記作業機の機械状態を前記外部機器に送信する通信装置を備え、前記外部機器は、前記機械状態に基づいて前記作業機に対応付けられたユーザに対して金融に関する金融処理を行う金融処理部を有している。
前記金融処理部は、前記機械状態に基づいて、前記金融処理として前記ユーザに出力の変更による費用に関する情報を生成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部機器によって、例えば、原動機の出力を増加させることによってより大きな駆動力で作業を行うことができ、原動機の出力を減少させることによって小さな駆動力で作業を行うことができる。つまり、様々な状況に応じて作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における作業機の出力変更システムを示す図である。
図2A】圃場と最大出力との関係を示す図である。
図2B】時間と最大出力との関係を示す図である。
図2C】作業装置と最大出力との関係を示す図である。
図3A】設定画面M1を示す図である。
図3B】設定画面M2を示す図である。
図3C】設定画面M3を示す図である。
図3D】設定画面M4を示す図である。
図4A】標準制御マップを示す図である。
図4B】変更制御マップを示す図である。
図5】第2実施形態における作業機の出力変更システムを示す図である。
図6】確認画面M5を示す図である。
図7】トラクタの識別情報とユーザの識別情報との関係を示す図である。
図8】トラクタの識別情報、トラクタの出力及び費用との関係を示す図である。
図9】設定画面M10を示す図である。
図10】第3実施形態における作業機の出力変更システムを示す図である。
図11】原動機と変速装置の動力伝達系を示す図である。
図12】作業機の全体図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、作業機の出力変更システムを示している。作業機の出力変更システムでは、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械、バックホー等の建設機械に設けた原動機の出力を変更することが可能である。まず、トラクタ1を例にとり作業機について説明する。
【0015】
図12に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する車両(車体)3と、原動機4とを備えている。
走行装置7は、前輪及び後輪を有する装置である。前輪、後輪は、タイヤ型であっても、クローラ型であってもよい。原動機4は、車体3に設けられた内燃機関、電動モータ等である。原動機4は、内燃機関のみであってもいし、内燃機関と電動モータとを組み合わせたハイブリッド式であってもよい。内燃機関は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンである。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジンである。
【0016】
車体3は、作業装置3を連結可能である。車体3は、前部又後部に3点リンク機構等で構成された連結部8を含んでいる。作業装置2を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。なお、図12では、作業装置2として成形装置を取り付けた例を示している。
【0017】
トラクタ1は、変速装置5を備えている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。また、トラクタ1は、車体3に設けられた運転席10と、操縦装置11を備えている。運転席10及び操縦装置11は、車体3に設けられたキャビン9内に配置されている。操縦装置11は、例えば、ステアリング等で構成されていて、操縦装置11を操縦することによってトラクタ1の進行方向を変更可能である。
【0018】
図11は、原動機4と、変速装置5の動力伝達系を示している。
図11に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cとを備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0019】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
また、変速装置5は、シャトル部5dを備えている。シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切替部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。シャトル軸12には、後輪デフ装置14が設けられている。後輪デフ装置14には、後輪を支持する後車軸が回転自在に支持されている。前後切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。
【0020】
PTO動力伝達部5eは、PTOクラッチ15と、PTO軸16とを有している。PTO軸16は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO軸16は、PTO推進軸16aと、PTO出力軸16bとを有している。PTO推進軸16aは、ギア等を介してPTO出力軸16bに接続されている。PTOクラッチ15は、推進軸5aの動力をPTO軸16に伝達する接続状態と、推進軸5aの動力をPTO軸16に伝達しない切断状態とに切換可能なクラッチである。具体的には、PTOクラッチ15は、推進軸5aと、PTO推進軸16aとの間に設けられている。PTOクラッチ15は、油圧クラッチで構成され、油圧クラッチの入切によって、原動機4の動力(推進軸5aの動力)をPTO軸16に伝達したり、推進軸5aの動力をPTO軸16に伝達しないようにすることができる。
【0021】
図1に示すように、原動機4は、最大出力を変更可能なコモンレール型のディーゼルエンジンであって、回転自在に支持されたクランクシャフト20aと、クランクシャフト20aに連結されシリンダ20b内を移動するピストン20cと、管等で構成されるコモンレール20dと、燃料を高圧にしてコモンレール20dに送るサプライポンプ20eと、コモンレール20dの高圧の燃料をシリンダ20bに噴射するインジェクタ20fとを含んでいる。なお、原動機4の構成は、上述した構成に限定されない。
【0022】
原動機4は、トラクタ1又は作業装置2の位置が予め定められた位置になった場合(第1例)、時間(時刻)が予め定められた時間になった場合(第2例)、所定の作業装置2がトラクタ1に連結された場合(第3例)、原動機4を搭載したトラクタ1に外部から出力情報が入力された場合(第4例)などに、最大出力の変更を行う。
次に、原動機4の最大出力の変更の例(第1例〜第4例)について順番に説明する。
【0023】
トラクタ1は第1例〜第4例のいずれかを行えるものであればよく、全ての例(第1例〜第4例)を行えるものでなくてもよい。また、第1例〜第4例の少なくとも2つの組み合わせをトラクタ1に適用してもよい。第1例〜第4例の説明では、説明の便宜上、原動機4の最大出力を変更する前の最大出力は、「標準最大出力」に設定されているとし、原動機4の最大出力の変更後は「標準最大出力」よりも高い「変更最大出力」に変更されるとして説明を進める。また、標準最大出力の数値(180PS)、変更最大出力の数値(200PS)は、説明を分かりやすくするための数値であり、限定されない。
【0024】
図1に示すように、トラクタ1は、位置検出装置41を備えている。位置検出装置41は、車体3又は作業装置2に取付けられ、車体3又は作業装置2の位置(緯度、経度)である機械位置を検出する装置である。位置検出装置41は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて機械位置を検出する。原動機4は、位置検出装置41で検出された機械位置に基づいて最大出力の変更を行う。
【0025】
図2Aに示すように、複数の圃場がある場合において、圃場B及び圃場Cにおける原動機4の最大出力が標準の最大出力(標準最大出力)である180PSに設定され、圃場Aにおける原動機4の最大出力が標準最大出力よりも高い変更最大出力である200PSに設定されているとする。ここで、トラクタ1が圃場B及び圃場Cで作業を行っているとき、即ち、位置検出装置41で検出された機械位置が圃場B及び圃場Cである場合、原動機4は、最大出力を標準最大出力の180PSにする。また、トラクタ1が圃場Aに移動して位置検出位置41で検出された機械位置が圃場Aに一致すると、原動機4は、最大出力を標準最大出力から変更最大出力である200PSに変更する。
【0026】
図1に示すように、トラクタ1は、時間を計時する計時部42を備えている。計時部42は、時刻等を演算するタイマ等であって、例えば、西暦、月、日、時刻を演算する。原動機4は、計時部42で計時された時間に基づいて最大出力の変更を行う。
図2Bに示すように、「6月2日、8時〜18時」における原動機4の最大出力が変更最大出力に設定されているとする。ここで、計時部42で検出された時間が、出力変更時間である「6月2日、8時〜18時」に一致していない場合、原動機4は最大出力を標準最大出力にする。また、計時部42で検出された時間が、出力変更時間(6月2日、8時〜18時)に一致すると、原動機4は、最大出力を標準最大出力から変更最大出力に変更する。
【0027】
図2Cに示すように、作業装置2が「作業装置B」である場合の原動機4の最大出力が変更最大出力に設定されていたとする。ここで、トラクタ1の連結部8に連結された作業装置2が「作業装置A、作業装置C」であり、「作業装置B」でない場合は、原動機4は、最大出力を標準最大出力にする。また、トラクタ1の連結部8に連結された作業装置2が「作業装置B」である場合は、原動機4は最大出力を、原動機4は最大出力を、標準最大出力から変更最大出力に変更する。
【0028】
図1に示すように、トラクタ1は、取得装置101を備えている。取得装置101はトラクタ1(作業装置2)の外部からの情報(データ、信号)を取得する装置である。取得装置101が外部から所定の情報を取得していない場合は、原動機4の最大出力が標準最大出力に設定され、外部からの所定の情報を取得した場合は、原動機4の最大出力が変更最大出力に設定されているとする。原動機4は、外部から所定の情報を取得していない場合は、最大出力を標準最大出力に維持し、外部から所定の信号を取得した場合は、最大出力を標準最大出力から変更最大出力である200PSに変更する。
【0029】
図1に示すように、作業機の出力変更システムは、外部機器100を備えている。外部機器100は、原動機4の出力の変更に関する変更情報を出力可能な機器である。外部機器100は、スマートフォン、タブレット、PDA等の携帯端末、サーバ、パーソナルコンピュータ等の固定型のコンピュータ、或いは、USBメモリ、SDカード等の電子記憶媒体等である。この実施形態では、外部機器100は、サーバ100aと、サーバ100aに接続可能なパーソナルコンピュータ(管理コンピュータ)100bとを含んでいる。
【0030】
サーバ100aは、トラクタ1をユーザに提供する提供者側(トラクタのサービス会社、トラクタのレンタル会社、トラクタの製造会社等)に設置されている。管理コンピュータ100bは、トラクタ1を使用する側であるユーザ側(オペレータ、作業者、管理者、会社等)に設置されている。
また、作業機の出力変更システムは、取得装置101を備えている。取得装置101は外部装置100の情報(データ)を取得する装置であって、トラクタ1に設けられている。取得装置101は、サーバ100a、管理コンピュータ100bに無線通信によってデータの送受信が可能な通信装置である。通信装置101は、近距離、長距離の通信を行う通信装置で構成され、例えば、通信規格IEEE802.15.1シリーズのBluetooth(登録商標)の仕様におけるBluetooth(登録商標) Low Energy、通信規格IEEE802.11.nシリーズのWiFi(登録商標)等によって無線通信を行う。また、通信装置101は、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等によって無線通信を行うことも可能である。したがって、通信装置101は、サーバ100aから出力した変更情報を取得することが可能である。
【0031】
図1に示すように、サーバ100aは、位置設定部110を備えている。位置設定部110は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。位置設定部110は、最高出力の変更する位置である出力変更位置を設定する。
具体的には、管理コンピュータ100bがサーバ100aにログインをして、所定の操作を行うと、図3Aに示すように、位置設定部110は、管理コンピュータ100bに設定画面M1を表示させる。設定画面M1では、圃場を示す圃場マップ45が表示される。圃場マップ45には、位置(緯度、経度)が関連付けられている。設定画面M1において、圃場マップ45の中から所定の圃場(例えば、圃場A)を選択後、当該設定画面M1に示された完了ボタン51を選択すると、位置設定部110は、当該設定画面M1にて選択された圃場A(選択圃場)に対応する位置(緯度、経度)を出力変更位置に設定する。即ち、図3Aに示すように、位置設定部110は、圃場マップ45に示された選択圃場内(圃場A)の全ての位置を出力変更位置に設定する。管理コンピュータ100bは、設定画面M1で設定された出力変更位置を、サーバ100aに送信する。サーバ100aは、受信した出力変更位置を変更情報として通信装置101に送信する。これによって、通信装置101は、管理コンピュータ100b(サーバ100a)によって設定された出力変更位置を取得することができる。
【0032】
図1に示すように、サーバ100aは、時間設定部111を備えている。時間設定部111は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。時間設定部111は、出力変更時間を設定する。
具体的には、管理コンピュータ100bがサーバ100aにログインをして、所定の操作を行うと、図3Bに示すように、時間設定部111は、管理コンピュータ100bに設定画面M2を表示させる。設定画面M2では、時間を入力する時間入力部52が表示される。時間入力部52には、出力変更を開始する開始時刻と、出力変更を終了する終了時刻とを入力可能である。例えば、管理コンピュータ100bに設けられたスイッチ等の設定具(第1設定具)、或いは、管理コンピュータ100bの画面に表示された設定具(第2設定具)の操作により、時間入力部52に入力する時刻(開始時刻、終了時刻)が入力される。設定画面M2に示された完了ボタン51を選択すると、時間設定部111は、当該設定画面M2の時間入力部52に入力された時刻を出力変更時間に設定する。即ち、図3Bに示すように、時間設定部111は、設定画面M2の時間入力部52に入力された開始時刻(6月2日8時)から終了時刻(6月2日18時)の全ての時刻を出力変更時間に設定する。管理コンピュータ100bは、設定画面M2で設定された出力変更時間を、サーバ100aに送信する。サーバ100aは、受信した出力変更時間を変更情報として通信装置101に送信する。これによって、通信装置101は、管理コンピュータ100b(サーバ100a)によって設定された出力変更時間を取得することができる。
【0033】
図1に示すように、サーバ100aは、装置設定部112を備えている。装置設定部112は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。装置設定部112は、最大出力の変更する作業装置2の情報(装置情報という)を設定する。例えば、装置設定部112によって出力変更をする作業装置(対象装置という)2が設定される。
【0034】
具体的には、管理コンピュータ100bがサーバ100aにログインをして、所定の操作を行うと、装置設定部112は、管理コンピュータ100bに設定画面M3を表示させる。設定画面M3では、対象装置2の情報(装置情報)を入力する情報入力部53が表示される。情報入力部53には、装置情報として、装置の名称、機種、型番、シリアルコード等の識別情報等が入力可能である。例えば、第1設定具、第2設定具の操作により、情報入力部53に入力する装置情報(名称、機種、型番、識別情報等)を入力可能である。設定画面M3に示された完了ボタン51を選択すると、装置設定部112は、当該設定画面M3の情報入力部53に入力された装置情報を、最大出力の変更する作業装置2の装置情報に設定する。即ち、図3Cに示すように、装置設定部112は、設定画面M3の情報入力部53に入力された「作業装置B」を装置情報に設定する。管理コンピュータ100bは、設定画面M3で設定された装置情報を、サーバ100aに送信する。サーバ100aは、受信した装置情報を変更情報として通信装置101に送信する。これによって、通信装置101は、管理コンピュータ100b(サーバ100a)によって設定された装置情報を取得することができる。
【0035】
このように、サーバ100a等によって、トラクタ1の最大出力を変更する出力変更位置、出力変更時間、装置情報等を変更情報として、当該トラクタ1に送信することができる。
図1に示すように、サーバ100aは、出力設定部113を備えている。出力設定部113は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。出力設定部113は、原動機4の出力を変更情報として設定する。
【0036】
具体的には、管理コンピュータ100bがサーバ100aにログインをして、所定の操作を行うと、図3Dに示すように、出力設定部113は、管理コンピュータ100bに設定画面M4を表示させる。設定画面M4では、原動機4の搭載したトラクタ1の情報(原動機情報)が表示される。原動機情報は、例えば、ユーザ等によって予めサーバ100aに登録された情報であり、原動機4又はトラクタ1を識別するための識別情報(名称、機種、型番、シリアルコード等)が表示される、設定画面M4には、原動機4の出力(最高出力)を入力する情報入力部54が表示される。情報入力部54には、トラクタ1の最高出力を入力可能である。例えば、第1設定具、第2設定具の操作により、原動機4の最高出力を入力し、設定画面M4に示された完了ボタン51を選択すると、出力設定部113は、当該設定画面M4の情報入力部54に入力された最高出力を出力情報として設定する。管理コンピュータ100bは、設定画面M4で設定された出力情報を、サーバ100aに送信する。サーバ100aは、受信した出力情報を変更情報として通信装置101に送信する。これによって、通信装置101は、管理コンピュータ100b(サーバ100a)によって設定された出力情報を取得することができる。
【0037】
さて、図1に示すように、作業機の出力変更システムは、変更情報に基づいて原動機4を制御する制御装置30を備えている。制御装置30による制御について、最大出力を変更する第1例〜第4例と共に説明をする。
制御装置30は、クランク位置を検出するクランクセンサ21a、カム位置を検出するカムセンサ21b、原動機4の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転センサ21c、アクセルの設定値を検出するアクセルセンサ21dが接続されている。制御装置30は、クランクセンサ21a、カムセンサ21b、エンジン回転センサ21等で検出されたクランク位置、カム位置、エンジン回転数等の信号に基づいて求めた制御信号を、インジェクタ20f、コモンレール20d、サプライポンプ20e等に出力することで、原動機4を制御する。なお、インジェクタの制御では燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が示された制御信号を当該インジェクタ20fに出力する。また、サプライポンプ20eやコモンレールの制御では燃料噴射圧等が示された信号を、当該サプライポンプ20eやコモンレール20dに出力する。
【0038】
制御装置30は、変更取得部31を有している。変更取得部31は、制御装置30に設けられた電気・電子部品、当該制御装置30等に組み込まれたプログラム等から構成されている。変更取得部31は、原動機4の最大出力を変更する変更指令を取得可能である。例えば、変更取得部31は、最大出力の変更を取得する。制御装置30は、変更取得部31が変更指令を取得した場合に、原動機4の最大出力を変更する。
【0039】
制御装置30は、記憶部32と、標準制御部33と、変更制御部34とを有している。記憶部32は不揮発性のメモリ等から構成されている。標準制御部33及び変更制御部34は、制御装置30に設けられた電気・電子部品、当該制御装置30等に組み込まれたプログラム等から構成されている。
図4Aに示すように、記憶部32は、原動機4の回転数(エンジン回転数)と出力との関係を示す標準制御マップSCMを記憶している。標準制御マップSCMにおいて、エンジン回転数と出力との関係は、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率、燃料噴射圧等の複数の制御パラメータによって設定されるもので、制御パラメータの設定値によって、標準制御マップSCMが設定されている。標準制御マップSCMは、原動機4の最大出力の変更をしていない状況下で適用されるマップであって、図4Aに示すように、原動機4の最大出力は、180PSに設定されている。
【0040】
図4Bに示すように、記憶部32は、標準制御マップSCMとは別に、エンジン回転数と出力との関係を示す変更制御マップPCMを記憶している。変更制御マップPCMにおいてもエンジン回転数と出力との関係は、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率、燃料噴射圧等の複数の制御パラメータによって設定されるもので、制御パラメータの設定値によって、変更制御マップPCMが設定されている。変更制御マップPCMは、原動機4の最大出力の変更をしている状況下で適用されるマップであって、図4Bに示すように、原動機4の最大出力は、標準制御マップSCMよりも高い200PSに設定されている。
【0041】
標準制御部33は、変更取得部31が変更指令を取得していない場合に、標準制御マップSCMに基づいて原動機4を制御する。即ち、標準制御部33は、変更取得部31が変更指令を取得していない状況では、記憶部32に記憶された標準制御マップSCMを参照し、エンジン回転センサ21cで検出されたエンジン回転数と、標準制御マップSCMに示す出力との関係が一致するように、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率、燃料噴射圧等を制御する。
【0042】
変更制御部34は、変更取得部31が変更指令を取得した場合に、変更制御マップPCMに基づいて原動機4を制御する。即ち、変更制御部34は、変更取得部31が変更指令を取得した状況では、記憶部32に記憶された変更制御マップPCMを参照し、エンジン回転センサ21cで検出されたエンジン回転数と、変更制御マップPCMに示す出力との関係が一致するように、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率、燃料噴射圧等を制御する。
【0043】
なお、標準制御マップSCM及び変更制御マップPCMは、エンジン回転数と出力との関係を示す制御マップであればよく、エンジン回転数に対して燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率、燃料噴射圧のそれぞれを対応付けたマップを、標準制御マップSCM及び変更制御マップPCMに採用してもよいし、その他、エンジン回転数に対して吸入空気量を対応付けたマップを標準制御マップSCM及び変更制御マップPCMに採用してもよく、上述した例に限定されない。
【0044】
以上によれば、制御装置30は、変更取得部31を有し、変更取得部31が変更指令を取得した場合に、最大出力を変更する。これによれば、制御装置30は、変更取得部31が変更指令を取得した様々なタイミングで任意に原動機4の最大出力を変更することができ、作業装置2による作業を様々な状況に応じて行うことができる。
また、制御装置30の記憶部32は、標準制御マップSCMと変更制御マップPCMとを記憶している。標準制御部33は、変更取得部31が変更指令を取得していない場合に標準制御マップSCMに基づいて原動機4を制御し、変更制御部34は、変更取得部31が変更指令を取得した場合に変更制御マップPCMに基づいて原動機4を制御する。これによれば、標準制御部33によって原動機4の最大出力を標準最大出力(例えば、180PS)に設定した状態で、原動機2の駆動力によって作業装置2を作動させることができる。一方、変更制御部34によって原動機4の最大出力を、標準最大出力よりも増加させた状態である変更最大出力(例えば、200PS)に設定した状態で、原動機2の駆動力によって作業装置2を作動させることができる。原動機4の標準最大出力が180PSであるトラクタ1であっても、一時的に、最大出力を200PSに増加させた状態で、作業装置2を原動機4の駆動力で作動させることができる。
【0045】
次に、制御装置30が原動機4の最大出力を機械位置によって変更する構成及び動作について詳しく説明する。
制御装置30は、変更位置取得部35aと、変更位置設定部35bとを有している。変更位置取得部35a及び変更位置設定部35bは、制御装置30に設けられた電気・電子部品、当該制御装置30等に組み込まれたプログラム等から構成されている。変更位置取得部35aは、通信装置101が受信した変更情報に出力変更位置が含まれている場合、当該通信装置101が受信した出力変更位置を取得する。制御装置30の記憶部32は、変更位置取得部35aが取得した出力変更位置を記憶する。
【0046】
変更位置設定部35bは、変更位置取得部35aで取得した出力変更位置と、位置検出装置41が検出した機械位置とが一致した場合に、制御装置30の変更取得部31に変更指令を出力する。例えば、トラクタ1のイグニッションスイッチがONに設定されると、変更位置設定部35bは、記憶部32に記憶された出力変更位置を参照する。変更位置設定部35bは、イグニッションスイッチがON後に位置検出装置41が検出した機械位置が参照した出力変更位置と一致していない場合、変更指令を変更取得部31に出力しない。この場合、原動機4は、標準制御部33により標準制御マップSCMに基づいて制御される。一方、イグニッションスイッチがON後に位置検出装置41が検出した機械位置が出力変更位置と一致した場合、即ち、トラクタ1が圃場Aに入った場合、変更位置設定部35bは、変更指令を変更取得部31に出力する。この場合、制御装置30における制御は、標準制御部33による制御から変更制御部34による制御に切り換わり、原動機4は、変更制御マップPCMに基づいて制御される。
【0047】
上述した第1例によれば、トラクタ1の機械位置に応じて、原動機4の最大出力を標準最大出力と変更最大出力とに使い分けをすることができる。例えば、複数の圃場に跨って作業を行う場合に、圃場Bではトラクタ1(作業装置2)は標準最大出力にて作業を行い、圃場Aではトラクタ1(作業装置2)は標準最大出力よりも高い変更最大出力にて作業を行うことができる。また、圃場以外の場所であって、農道や道路をトラクタ1が自走する場合は、標準最大出力にて走行させることができる。
【0048】
次に、制御装置30が原動機4の最大出力を時間によって変更する構成及び動作について詳しく説明する。
制御装置30は、変更時間取得部36aと、変更時間設定部36bとを有している。変更時間取得部36a及び変更時間設定部36bは、制御装置30に設けられた電気・電子部品、当該制御装置30等に組み込まれたプログラム等から構成されている。変更時間取得部36aは、通信装置101が受信した変更情報に出力変更時間が含まれている場合、当該通信装置101が受信した出力変更時間を取得する。制御装置30の記憶部32は、変更時間取得部36aが取得した出力変更時間を記憶する。
【0049】
変更時間設定部36bは、変更時間取得部36aで取得した出力変更時間と、計時部42で計時した時間(計時時間)とが一致した場合に、制御装置30の変更取得部31に変更指令を出力する。例えば、トラクタ1のイグニッションスイッチのON後に、変更時間設定部36bは、記憶部32に記憶された出力変更時間を参照する。変更時間設定部36bは、イグニッションスイッチがON後に計時部42の時刻が参照した出力変更時間と一致していない場合、変更指令を変更取得部31に出力しないため、原動機4は、標準制御部33により標準制御マップSCMに基づいて制御される。一方、イグニッションスイッチがON後に計時部42の時刻が出力変更時間と一致した場合、即ち、6月2日8時から6月2日18時の場合、変更時間設定部36bは、変更指令を変更取得部31に出力される。このため、6月2日8時から6月2日18時の場合は、原動機4は、変更制御マップPCMに基づいて制御される。
【0050】
上述した第2例によれば、トラクタ1の任意の時間に応じて、原動機4の最大出力を、標準最大出力と変更最大出力とに使い分けをすることができる。普段は、トラクタ1(作業装置2)を標準最大出力にて使用し、一時的にトラクタ1(作業装置2)を変更最大出力にて使用したい状況が発生した場合に、時間(出力変更時間)を設定することによって、変更最大出力にて使用することができる。
【0051】
次に、制御装置30が原動機4の最大出力を作業装置2によって変更する構成及び動作について詳しく説明する。
制御装置30は、変更装置取得部37aと、変更装置設定部37bとを有している。変更装置取得部37a及び変更装置設定部37bは、制御装置30に設けられた電気・電子部品、当該制御装置30等に組み込まれたプログラム等から構成されている。変更装置取得部37aは、通信装置101が受信した変更情報に装置情報が含まれている場合、当該通信装置101が受信した装置情報を取得する。制御装置30の記憶部32は、変更装置取得部37aが取得した装置情報を記憶する。
【0052】
変更装置設定部37bは、変更装置取得部37aで取得した装置情報が、連結部8に連結された作業装置2を示している場合に、制御装置30の変更取得部31に変更指令を出力する。例えば、トラクタ1のイグニッションスイッチのON後に、変更装置設定部37bは、記憶部32に記憶された装置情報(記憶装置情報という)を参照する。また、トラクタ1のイグニッションスイッチのON後に、変更装置設定部37bは、連結部8に連結した作業装置2に対して装置情報(取付装置情報)の要求を行う。変更装置設定部37bは、記憶装置情報が、作業装置2から送信された装着装置情報を示している場合(記憶装置情報で示された名称と取付装置情報で示された名称とが一致している場合、記憶装置情報で示された機種又は型番と取付装置情報で示された機種又は型番とが一致している場合、記憶装置情報で示された識別情報と取付装置情報で示された識別情報とが一致している場合)などに、制御装置30の変更取得部31に変更指令を出力する。つまり、変更装置設定部37bは、記憶装置情報と取付装置情報とが対応している(紐づいている)場合、制御装置30の変更取得部31に変更指令を出力する。このように、記憶装置情報と取付装置情報とが対応している場合は、原動機4は、変更制御マップPCMに基づいて制御される。
【0053】
一方、変更時間設定部36bは、イグニッションスイッチがON後、記憶装置情報と取付装置情報とが対応していない場合、変更指令を変更取得部31に出力しない。即ち、変更時間設定部36bは、変更装置取得部36aで取得した装置情報が作業装置2を示していない場合、変更指令を変更取得部31に出力しない。この場合、原動機4は、標準制御マップSCMに基づいて制御される。
【0054】
上述した第3例によれば、トラクタ1に連結した作業装置2に応じて、原動機4の最大出力を、標準最大出力と変更最大出力とに使い分けをすることができる。
次に、制御装置30が原動機4の最大出力を作業装置2によって変更する構成及び動作について詳しく説明する。
図1に示すように、トラクタ1のイグニッションスイッチがON後に、制御装置30は、通信装置101が受信した変更情報に出力情報が含まれている場合、当該出力情報を参照する。出力情報で示された最高出力が変更制御マップPCMで示された最高出力の場合、制御装置30(変更取得部31)は、原動機4の制御を標準制御マップSCMから変更制御マップPCMに切り換え、変更制御マップPCMに基づいて制御する。
【0055】
上述した第4例によれば、原動機4は、外部から送信された出力情報(原動機の出力)に基づいて、原動機4の最大出力の変更を行うことができる。これによれば、オペレータがトラクタ1の最大出力を、変更したいタイミングで変更したい最大出力を、任意に外部機器100で設定してトラクタ1に送信するだけで、トラクタ1の原動機4の最大出力を変更することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態では、変更位置取得部35a、変更位置設定部35b、変更時間取得部36a、変更時間設定部36b、変更装置取得部37a、変更装置設定部37bを制御装置30に設けているが、これら少なくとも1つ、又は、全部を表示装置50に設けてもよい。トラクタ1は、第1例〜第4例で説明したように、変更位置取得部35a、変更位置設定部35b、変更時間取得部36a、変更時間設定部36b、変更装置取得部37a、変更装置設定部37bの全てを備えている必要はなく、上述した構成について少なくとも1つ、或いは、複数の組み合わせた構成を備えいればよい。
【0057】
上述した実施形態では、作業機の出力変更システムは、原動機4の最大出力を変更するシステムであったが、最大出力でなくてもよく、原動機4の出力を変更するシステムであってもよい。例えば、標準制御マップSCMと変更制御マップPCMとは最大出力が同じであって、出力特性が異なるマップであってもよい。このような場合、制御装置30は、原動機4の出力の変更前は、最大出力が変更制御マップPCMと同じであり且つ出力特性の異なる標準制御マップSCMを用いて原動機4の制御を行い、原動機4の出力の変更を行う場合は、最大出力が標準制御マップSCMと同じであり且つ出力特性の異なる変更制御マップPCMを用いて原動機4の制御を行う。つまり、出力特性の異なる標準制御マップSCMと変更制御マップPCMとを、変更情報等に応じて切り換えることによって、原動機4の出力を変更することができる。
【0058】
作業機の出力変更システムは、制御装置30と外部機器100とを備え、制御装置30は、外部機器100から出力された変更情報に基づいて原動機4の出力を変更する。このため、トラクタ1等を使用するユーザなどが当該トラクタ1とは別の外部機器100を用いて変更情報を出力するだけで、トラクタ1の原動機1の出力を変更することができる。
外部機器100は、原動機4の出力を変更情報として設定する出力設定部113を有している。このため、ユーザ等が外部機器110によって原動機4の出力を設定するだけで、原動機4の出力を増加させたり減少させたりすることができる。
【0059】
作業機の出力変更システムは、位置検出装置41を備え、外部機器100は、出力変更時間を設定する位置設定部110を有している。また、外部機器110は、出力変更位置を変更情報として出力する。制御装置30は、機械位置が出力変更位置と一致している間は、原動機4の出力を変更する。このため、ユーザ等が外部機器100を用いて、原動機4の出力を増加させたい出力変更位置(場所)、原動機4の出力を減少させた出力変更位置を設定することにより、出力変更位置に応じて任意に原動機4の出力を変更することができる。
【0060】
作業機の出力変更システムは、計時部41を備え、外部機器100は、出力変更時間を設定する時間設定部111を有している。また、外部機器100は、出力変更時間を変更情報として出力する。制御装置30は、計時部41で計時した時間が出力変更時間と一致した場合に原動機4の出力を変更する。このため、ユーザ等が外部機器100を用いて、原動機4の出力を増加させたい出力変更時間、原動機4の出力を減少させた出力変更時間を設定することにより、出力変更時間に応じて任意に原動機4の出力を変更することができる。
【0061】
作業機の出力変更システムは、作業装置2を備え、外部機器100は、装置情報を設定する装置設定部112を有している。また、外部機器100は、作業装置2の装置情報を変更情報として出力する。制御装置30は、装置情報がトラクタ1に設けられた作業装置2を示している場合に原動機4の出力を変更する。このため、ユーザ等が外部機器100を用いて、原動機4の出力を増加させて作業を行いたい作業装置2、原動機4の出力を減少させて作業を行いたい作業装置2を設定することにより、トラクタ1に装着した作業装置2に応じて任意に原動機4の出力を変更することができる。
【0062】
なお、外部機器100は、位置設定部110、時間設定部111、装置設定部112、出力設定部113の全てを備える必要はなく、上述した構成について少なくとも1つ、或いは、複数の組み合わせた構成を備えいればよい。
また、外部機器100は、携帯端末であってもよく、携帯端末に、位置設定部110、時間設定部111、装置設定部112、出力設定部113のいずれかを設けることが好ましい。この場合、ユーザは、作業を行う際などに携帯端末を所持することにより、変更情報(出力変更場所、出力変更時間、装置情報、出力情報等)を作業前、作業中、作業後のいずれにおいても設定することができる。携帯端末は、通信装置101に設定後の変更情報(出力変更場所、出力変更時間、装置情報、出力情報等)を送信することができる。
【0063】
また、外部機器100は、管理コンピュータのみであってもよく、管理コンピュータに、位置設定部110、時間設定部111、装置設定部112、出力設定部113のいずれかを設けることが好ましい。管理コンピュータは、通信装置101に設定後の変更情報(出力変更場所、出力変更時間、装置情報、出力情報等)を送信することができる。
また、携帯端末、管理コンピュータ、電子記憶媒体、サーバを任意に組み合わせることで外部機器100としてもよい。この場合、携帯端末、管理コンピュータ、サーバのいずれかに、位置設定部110、時間設定部111、装置設定部112、出力設定部113のいずれかを設けることが好ましい。
【0064】
また、外部機器100で設定された変更情報のトラクタ1への入力は、電子記憶媒体を経由して、電子記憶媒体を接続可能な取得装置101によってトラクタ1は変更情報を取得してもよい。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態における作業機の出力変更システムを示している。第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0065】
作業機の出力変更システムは、原動機4の出力の変更を実行する前に、トラクタ1を運転するオペレータ等に対して費用を通知し、オペレータが費用の通知に対して確認(了承)が行われた場合に最大出力の変更を行うことが可能なシステムである。
トラクタ1は、表示装置50を備えている。表示装置50は様々な情報を表示する装置であって液晶パネル等で構成されている。表示装置50は、原動機4の出力の変更によって発生する費用を表示する。原動機4の最大出力を変更する際(機械位置が出力変更位置に一致した場合、計時時間が出力変更時間に一致した場合、作業装置が装置情報を示している場合)に、図6に示すように、表示装置50は、出力の変更によって発生する費用が示された確認画面M5を表示し、当該確認画面M5に割り当てられた費用表示部81に費用を表示する。確認画面M5に表示された確認部材[費用が発生することを確認(了承)したことを示すボタン]57が選択されると、制御装置30は、原動機4の出力の変更、例えば、標準最大出力から変更最大出力に変更する。表示装置50は、確認画面M5に割り当てられた出力表示部82に変更予定の最大出力を表示してもよい。
【0066】
費用とは、トラクタ1のユーザ側(オペレータ、作業者、管理者、会社等)と、トラクタ1の提供者側(トラクタのサービス会社、トラクタのレンタル会社、トラクタの製造会社等)との間で支払われる金銭的な取引(金融取引)を行うためのものであって、貨幣、又は、予めサービスで設定されたポイント等である。また、標準最大出力に対して変更最大出力を増加させる場合(V1<V2)、ユーザ側の費用(トラクタ1に表示する費用)はプラスで示される。一方、標準最大出力に対して変更最大出力を減少させる場合(V1>V2)、ユーザ側の費用はマイナスで示される。
【0067】
なお、変更後の変更最大出力と費用との関係は、制御装置30、表示装置50等に記憶されている。例えば、標準最高出力に対して変更最高出力が1PS増加する毎に、ユーザが支払う費用を増加させ、標準最高出力に対して変更最高出力を1PS毎に、提供者が支払う費用を増加させる。費用の設定方法等は上述した方法に限定されない。
図6に示したように、確認画面M5の確認部材57が選択され、ユーザが費用を発生することを了承すると、費用についての処理がサーバ100a等によって行われる。
【0068】
図5に示すように、サーバ100aは、金融処理部71と、ユーザデータベース(DB)72とを備えている。図7に示すように、ユーザデータベース72は、トラクタ1の識別情報(機械識別情報)とユーザの識別情報(ユーザ識別情報)とが関連付けて記憶している。トラクタ1の識別情報とは、トラクタ1の名称、機種、号機、製造番号等であり、トラクタ1の固有のユニークな情報が割り当てられている。ユーザの識別情報とは、ユーザの名前、住所、電話番号、メールアドレス等であり、ユーザの固有の情報が割り当てられている。トラクタ1の識別情報とユーザの識別情報との関連付けは、トラクタ1の購入時、トラクタ1のレンタル時など、ユーザがトラクタ1を使用する際に行われる。
【0069】
金融処理部71は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。金融処理部71は、出力を変更したトラクタ1に対応付けられたユーザに対して金融に関する金融処理を行う。金融処理部71は、金融処理として、トラクタ1の識別情報から当該トラクタ1に対応付けられたユーザ(ユーザの識別情報)を特定し、ユーザに対して費用に関する情報(費用情報)を生成する。金融処理部71は、使用者側からユーザに費用を請求する場合は、費用情報としてユーザの請求データを生成し、金融機関等のサーバとの間で所定の処理を行った後に、金融機関に請求データを送信する。金融機関は、金融処理部71から送信された請求データに基づき、ユーザに対して費用の請求処理を行った後に、使用者側にユーザから支払われた費用を使用者側に入金等を実行する。
【0070】
一方、金融処理部71は、使用者側からユーザに費用を支払う場合は、費用情報として使用者の支払データを生成し、金融機関等のサーバとの間で所定の処理を行った後に、金融機関に支払いデータを送信する。金融機関は、金融処理部71から送信された支払データに基づき、ユーザの所定の口座等に費用の入金を実行する。なお、金融処理部71の処理は一例であり、上述した方法に限定されない。
【0071】
なお、作業を管理する管理ソフトウェア等を用いて費用の表示等を行ってもよい。この場合、図5に示すように、サーバ100aは、費用管理部115と、機械データベース(DB)116とを備えている。費用管理部115は、サーバ100aに設けられた電気・電子部品、当該サーバ100a等に組み込まれたプログラム等から構成されている。費用管理部115は、トラクタ等を用いた作業における作業計画等の設定時に少なくとも費用を表示する。図8に示すように、機械データベース116は、トラクタ1を識別するための識別情報と、トラクタ1の出力(標準最大出力、変更最大出力)と、費用との関係を記憶している。
【0072】
具体的には、管理コンピュータ100bがサーバ100aにログインをして、所定の操作を行うと、図9に示すように、費用管理部115は、管理コンピュータ100bに、作業計画を設定する設定画面M10を表示させる。設定画面M10は、圃場を設定する圃場設定部121と、時間を設定する時間設定部122と、作業を設定する作業設定部123と、機械を設定する機械設定部124とを有している。圃場設定部121では、作業を行う圃場名、圃場面積等を設定する。日付設定部122には、作業を行う時間(日付等)を設定する。作業設定部123は、耕耘、肥料散布、薬剤散布、草刈、収穫等の作業を設定する。機械設定部124は、作業に使用するトラクタの機械情報(名称、機種、号機、製造番号等)、トラクタに連結する作業装置の装置情報(名称、機種、号機等)を設定する。圃場設定部121、時間設定部122、機械設定部124における設定(入力)は、管理コンピュータ100bの入力インタフェース(キーボード、マウス等)によって行うことができる。
【0073】
また、設定画面M10は、ガイダンス表示部125を有している。ガイダンス表示部125は、機械設定部124で設定されたトラクタにおいて、当該トラクタの最高出力を標準最高出力から変更最高出力に変更した場合のガイダンスを表示する。例えば、ガイダンス表示部125は、標準最高出力から変更最高出力に変更した場合の費用と、作業計画で示された作業を標準最高出力から変更最高出力に変更した場合のメリット(利点)と表示する。
【0074】
費用管理部115は、例えば、機械設定部124で設定された機械情報に基づいてトラクタ1を特定した後、機械データベース116を参照することで、特定したトラクタ1の変更最大出力に対応する費用を抽出する。そして、費用管理部115は、抽出した費用及び変更最大出力をガイダンス表示部125に表示する。
また、費用管理部115は、作業、機械等の様々な評価パラメータ等を用いて、作業計画で示された作業を標準最高出力から変更最高出力に変更した場合の評価値を算出する。例えば、評価パラメータを「日数」とした場合、費用管理部115は、標準最大出力によって作業した場合の通常日数と、変更最大出力で作業した場合の特別日数との日数差を評価値として算出する。費用管理部115は、標準最大出力で作業した場合の日数を日付設定部122で示された通常日数に設定する。費用管理部115は、標準最大出力を変更最大出力で除算した比率(標準最大出力/変更最大出力)を求め、通常日数に比率を積算することで特別日数を算出[特別日数=通常日数×比率(標準最大出力/変更最大出力)]し、特別日数と通常日数とを除算することで日数差を求める。なお、特別日数、通常日数と特別日数との差等は、上述した方法に限定されない。また、費用管理部115は、評価パラメータは、日数に限定されず、燃費、人件費等の労務費であってもよいし、その他であってもよく限定されない。
【0075】
費用管理部115は、算出した評価値をガイダンス表示部125に表示する。例えば、上述したように評価値が日数差である場合、費用管理部115は、ガイダンス表示部125に、「最高出力を180PSから200PSに変更して、作業した場合は、日数がD1日短縮できます。」と表示する。
なお、上述した実施形態では、費用を貨幣として算出していたが、これに代えて、提供者側が設定したポイント(サービスポイント)に置き換えてもよい。ユーザ側が費用を提供者に支払う場合、当該ユーザに割り当てられたサービスポイントを減算し、提供者が費用をユーザに支払う場合、当該ユーザに割り当てられたサービスポイントを加算する。サービスポイントが所定以上になった場合は、ユーザが提供者に対してサービスポイントを支払うことによって、提供者が提供するサービス(部品の交換、修理、作業機のメンテナンス等)を受けることができる。
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態における作業機の出力変更システムを示している。第3実施形態では、第1実施形態又は第3実施形態と異なる構成について説明する。
【0076】
図10に示すように、サーバ100aは、トラクタ1(通信装置101)に認証情報(記憶認証情報)を送信する。通信装置101が認証情報を受信すると、受信した認証情報は、制御装置30の記憶部32に記憶される。
例えば、トラクタ1のレンタル時や購入時などに、ユーザ登録を行う際、サーバ100aはトラクタ1(通信装置101)に記憶認証情報を送信して、記憶認証情報を記憶部32に記憶する。一方、使用者は、ユーザに、サーバ100aで通知した記憶認証情報に対応する認証情報(外部認証情報)を記憶した外部機器の1つであるキー装置73を渡す。キー装置73は、イグニッションスイッチをONするための装置であって、始動キー、ICカード、携帯端末等である。
【0077】
キー装置73が始動キーである場合、当該始動キーはトラクタ1に設けられたキーシリンダ74に挿入することが可能である。始動キーは、キーシリンダ74に挿入時に、当該キーシリンダ74を介して制御装置30に外部認証情報を送信する。制御装置30は、外部認証情報と記憶認証情報との認証成立後にイグニッションスイッチをOFFからONにする。制御装置30は、原動機4の始動時に認証情報による認証が成立後、原動機4の出力の変更を無効から有効に切り換わる。即ち、制御装置30は、記憶認証情報と外部認証情報との認証を行い且つ認証が成立した場合に、原動機4における出力の変更等を許可する。
【0078】
また、キー装置73がICカードである場合、当該ICカードはトラクタ1に設けられた読取装置(リーダ装置)75に、外部認証情報を出力可能である。読取装置75は外部認証情報の取得後に、取得した外部認証情報を制御装置30に送信する。制御装置30は、始動キーと同様に、認証情報が成立すると、イグニッションスイッチをOFFからONにすると共に原動機4の出力の変更を無効から有効に切り換わる。
【0079】
また、キー装置73が携帯端末である場合、当該携帯端末は原動機4の始動の開始時に、トラクタ1に設けられた通信装置101に外部認証情報を送信する。通信装置101は外部認証情報の取得後に、取得した外部認証情報を制御装置30に送信する。制御装置30は、始動キーと同様に、認証情報が成立すると、イグニッションスイッチをOFFからONにすると共に原動機4の出力の変更を無効から有効に切り換わる。上述したキー装置73(外部機器)に、外部機器100で示した構成を設けてもよい。
【0080】
したがって、制御装置30は、記憶認証情報と外部認証情報との認証を行い且つ認証が成立した場合に、原動機4における出力の変更等を許可する。このように、原動機4の始動時等に、認証情報の認証を行い、認証が成立後に原動機4の出力の変更ができるようにすることで、原動機4の出力を不正な手段で変更することを抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0081】
上述した実施形態では、時間(出力変更時間)、位置(出力変更位置)、装置(装置情報)、出力情報によって、原動機4の出力を変更しているが、この他に、人(オペレータ)によって原動機4の出力を変更してもよい。例えば、オペレータである場合、トラクタ1と関連付けられたオペレータが乗車した場合に、制御装置30は原動機4の出力、例えば、標準最大出力を変更最大出力に変更する。オペレータの検出は、トラクタ1に設けたカメラ等の撮像装置、指紋認証等によって、オペレータがトラクタ1に紐付られているか否かの判断を行う。
【0082】
また、サーバ等の外部機器100は、出力変更時間、出力変更位置、装置情報、出力情報をトラクタ1(通信装置101)に送信する際に、最大出力を有する変更制御マップPCMのデータ又は設定パラメータを送信してもよい。この場合、制御装置30は通信装置101が受信後に変更制御マップPCMを記憶部32に転送して一時的に記憶する。また、制御装置30は、最大出力の変更終了後に、記憶部32に記憶している変更制御マップPCMを削除する。このようにすれば、制御装置30の記憶部32に予め変更制御マップPCMを記憶させていなくても、最大出力等を変更することができる。また、最大出力を変更する時のみ記憶部32に変更制御マップPCMが記憶されているため、不正に最大出力を変更するようなことを防止することができ、セキュリティを向上させることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 トラクタ
2 作業装置
3 車両(車体)
4 原動機
100 外部機器
110 位置設定部
111 時間設定部
112 装置設定部
113 出力設定部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12