(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
摩擦パッドをロータ側に押圧するための電動アクチュエータを少なくとも1つ備える電動ブレーキと、前記電動アクチュエータを駆動するドライバと、相互に接続された複数のコントローラと、複数の電源装置と、を備える車両用ブレーキシステムにおいて、
前記複数のコントローラは、
前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、車両の挙動を制御する挙動制御部と、を含むマスタコントローラと、
前記マスタコントローラの前記ドライバ制御部によって制御される前記ドライバとは異なる前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、を含むサブコントローラと、を含み、
前記マスタコントローラは、前記複数の電源装置と接続され、
前記サブコントローラは、前記複数の電源装置の一部と接続され、
前記マスタコントローラに接続される電源装置の数が、前記サブコントローラに接続される電源装置の数より多いことを特徴とする、車両用ブレーキシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電動ブレーキを備えた車両用ブレーキシステムであって、低コストで信頼性の高い車両用ブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例に係る車両用ブレーキシステムは、
摩擦パッドをロータ側に押圧するための電動アクチュエータを少なくとも1つ備える電動ブレーキと、前記電動アクチュエータを駆動するドライバと、相互に接続された複数のコントローラと、複数の電源装置と、を備える車両用ブレーキシステムにおいて、
前記複数のコントローラは、
前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、車両の挙動を制御する挙動制御部と、を含むマスタコントローラと、
前記マスタコントローラの前記ドライバ制御部によって制御される前記ドライバとは異なる前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、を含むサブコントローラと、を含み、
前記マスタコントローラは、前記複数の電源装置と接続され、
前記サブコントローラは、前記複数の電源装置の一部と接続され、
前記マスタコントローラに接続される電源装置の数が、前記サブコントローラに接続される電源装置の数より多いことを特徴とする。
【0007】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、マスタコントローラが複数の電源装置に接続されるとともに、マスタコントローラに接続される電源装置の数が、サブコントローラに接続される電源装置の数より多いため、当該システムの冗長化を実現でき、当該システムの信頼性を向上することができる。また、サブコントローラは複数の電源装置の一部に接続されるため、配線の増加を極力抑え、低コスト化を図ることができる。
【0008】
[適用例2]
本適用例に係る車両用ブレーキシステムは、
前記マスタコントローラは、前記複数の全ての電源装置と接続されることができる。
【0009】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、マスタコントローラが複数の全ての電源装置に接続されるため、マスタコントローラの電源の冗長性がより向上される。
【0010】
[適用例3]
本適用例に係る車両用ブレーキシステムは、
前記マスタコントローラは、前記複数の電源装置のうち少なくとも3つと接続され、
前記サブコントローラは、前記複数の電源装置のうち少なくとも2つと接続されることができる。
【0011】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、マスタコントローラが少なくとも3つの電源装置に接続されるため、マスタコントローラの電源の冗長性がより向上される。また、サブコントローラは少なくとも2つの電源装置に接続されるため、冗長化を実現しつつ配線の増加を極力抑え、低コスト化を図ることができる。
【0012】
[適用例4]
上記適用例に係る車両用ブレーキシステムにおいて、
前記複数の電源装置は、並列接続されるとともに、前記複数の電源装置と前記コントローラの間には、前記複数の電源装置から前記コントローラへの一方向のみの電流の流れを許容するダイオードが設けられることができる。
【0013】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、並列接続される複数の電源装置からコントローラへの一方向のみの電流の流れを許容するダイオードを設けることで、電源装置からの電流が他の電源装置に逆流することを防止し、システム全体としての故障率を抑えつつ電流の逆流を防止することができる。
【0014】
[適用例5]
上記適用例に係る車両用ブレーキシステムにおいて、
前記マスタコントローラの前記ドライバ制御部は、複数輪に備えられた前記電動アクチュエータの前記ドライバを制御可能であることができる。
【0015】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、複数輪に備えられた電動アクチュエータのドライバを制御可能なマスタコントローラの電源が冗長化されるため、当該システムの信頼性をより向上することができる。
【0016】
[適用例6]
上記適用例に係る車両用ブレーキシステムにおいて、
前記マスタコントローラの前記ドライバ制御部は、前輪両輪に備えられた前記電動アクチュエータの前記ドライバを制御可能であることができる。
【0017】
本適用例に係る車両用ブレーキシステムによれば、前輪両輪の電動アクチュエータのドライバを制御可能なマスタコントローラの電源が冗長化されるため、当該システムの信頼性をより向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。この説明に用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0020】
本実施形態に係る車両用ブレーキシステムは、摩擦パッドをロータ側に押圧するための電動アクチュエータを少なくとも1つ備える電動ブレーキと、前記電動アクチュエータを駆動するドライバと、相互に接続された複数のコントローラと、複数の電源装置と、を備える車両用ブレーキシステムにおいて、前記複数のコントローラは、前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、車両の挙動を制御する挙動制御部と、を含むマスタコントローラと、前記ドライバを制御するドライバ制御部と、前記電動ブレーキの制動力を演算する制動力演算部と、を含むサブコントローラと、を含み、前記マスタコントローラは、前記複数の電源装置と接続され、前記サブコントローラは、前記複数の電源装置の一部と接続され、前記マスタコントローラに接続される電源装置の数が、前記サブコントローラに接続される電源装置の数より多いことを特徴とする。
【0021】
1.車両用ブレーキシステム
図1及び
図2を用いて本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1について詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1を示す全体構成図であり、
図2は本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1のマスタコントローラ30、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、車両用ブレーキシステム1は、図示しない摩擦パッドを図示しないロータ側に押圧するための電動アクチュエータであるモータ80〜85を少なくとも1つ備える電動ブレーキ16a〜16dと、モータ80〜85を駆動するドライバ60〜65と、相互に接続された複数のコントローラ(マスタコントローラ30、第1サブコントローラ40、第2サブコントローラ41、スレーブコントローラ50)を備える制御装置(10,11)と、を備える。図示しないロータは、4輪車である車両VBの各車輪Wa〜Wdに設けられて車輪Wa〜Wdと一体に回転する。なお、車両VBは4輪車に限られない。また、1つの電動ブレーキに対して複数のモータを備えていてもよいし、1つの車輪に複数の電動ブレーキを備えていてもよい。
【0023】
1−1.電動ブレーキ
前輪左側(FL)の車輪Waに設けられる電動ブレーキ16aは、ブレーキキャリパ5aと、ブレーキキャリパ5aに減速機4aを介して固定されたモータ80,81と、モータ80,81によって図示しない摩擦パッドに加えられる荷重を検出する荷重センサ6aと、を備える。モータ80は、自身のステータに対する回転軸の相対位置を検出する回転角センサ90を備える。モータ81は、モータ80と同軸であるため回転角センサは不要である。荷重センサ6aの検出信号は、第1サブコントローラ40(及び第1サブコントローラ40を介してマスタコントローラ30)に入力され、回転角センサ90の検出信号は、ドライバ60,61を介して第1サブコントローラ40及びマスタコントローラ30に入力される。
【0024】
前輪右側(FR)の車輪Wbに設けられる電動ブレーキ16bは、ブレーキキャリパ5bと、ブレーキキャリパ5bに減速機4bを介して固定されたモータ82,83と、モータ82,83によって図示しない摩擦パッドに加えられる荷重を検出する荷重センサ6b
と、を備える。モータ82は、自身のステータに対する回転軸の相対位置を検出する回転角センサ92を備える。モータ83は、モータ82と同軸であるため回転角センサは不要である。荷重センサ6bの検出信号は、スレーブコントローラ50(及びスレーブコントローラ50を介してマスタコントローラ30)に入力され、回転角センサ92の検出信号は、ドライバ62,63を介してスレーブコントローラ50及びマスタコントローラ30に入力される。
【0025】
後輪左側(RL)の車輪Wcに設けられる電動ブレーキ16cは、ブレーキキャリパ5cと、ブレーキキャリパ5cに減速機4cを介して固定されたモータ84と、モータ84によって図示しない摩擦パッドに加えられる荷重を検出する荷重センサ6cと、を備える。モータ84は、自身のステータに対する回転軸の相対位置を検出する回転角センサ94を備える。荷重センサ6cの検出信号は、第2サブコントローラ41に入力され、回転角センサ94の検出信号は、ドライバ64を介して第2サブコントローラ41に入力される。
【0026】
後輪右側(RR)の車輪Wdに設けられる電動ブレーキ16dは、ブレーキキャリパ5dと、ブレーキキャリパ5dに減速機4dを介して固定されたモータ85と、モータ85によって図示しない摩擦パッドに加えられる荷重を検出する荷重センサ6dと、を備える。モータ85は、自身のステータに対する回転軸の相対位置を検出する回転角センサ95を備える。荷重センサ6dの検出信号は、第2サブコントローラ41に入力され、回転角センサ95の検出信号は、ドライバ65を介して第2サブコントローラ41に入力される。
【0027】
ブレーキキャリパ5a〜5dは、略C字型に形成されて図示しないロータを跨いで反対側へ延びる爪部が一体的に設けられている。
【0028】
減速機4a〜4dは、ブレーキキャリパ5a〜5dに固定されて、モータ80〜85の回転によって発生したトルクをブレーキキャリパ5a〜5dに内蔵された図示しない直動機構に伝える。
【0029】
直動機構は、電動ブレーキにおいて公知の機構を採用することができる。直動機構は、モータ80〜85の回転を減速機4a〜4dを介して摩擦パッドの直線運動に変換する。直動機構は、摩擦パッドをロータに押し付けて車輪Wa〜Wdの回転を抑制する。
【0030】
モータ80〜85は、公知の電動モータを採用することができ、例えばブラシレスDCモータである。モータ80〜85の駆動により、減速機4a〜4d及び直動機構を介して摩擦パッドを移動させる。電動アクチュエータとしてモータを採用した例について説明するが、これに限らず、他の公知のアクチュエータを採用してもよい。
【0031】
1−2.入力装置
車両用ブレーキシステム1は、入力装置であるブレーキペダル2と、ブレーキペダル2に接続されたストロークシミュレータ3と、を含む。ブレーキペダル2は、運転者のブレーキペダル2の操作量を検出する第2ストロークセンサ21及び第3ストロークセンサ22を備える。ストロークシミュレータ3は、ブレーキペダル2の操作量を検出する第1ストロークセンサ20を備える。
【0032】
各ストロークセンサ20〜22は、ブレーキペダル2の操作量の一種である踏込ストローク及び/または踏力に対応した電気的な検出信号を互いに独立して発生させる。第1ストロークセンサ20は後述するマスタコントローラ30へ検出信号を送信し、第2ストロークセンサ21は後述する第1サブコントローラ40へ検出信号を送信し、第3ストロー
クセンサ22は後述する第2サブコントローラ41へ検出信号を送信する。
【0033】
車両VBは、車両用ブレーキシステム1への入力装置として、車両用ブレーキシステム1以外のシステムに設けられた複数の制御装置(以下「他の制御装置1000」という)を備える。他の制御装置1000は、CAN(Controller Area Network)によって第1の制御装置10のマスタコントローラ30及び第2の制御装置11の第2サブコントローラ41に接続され、相互にブレーキ操作に関する情報を通信する。
【0034】
1−3.制御装置
制御装置は、第1の制御装置10と第2の制御装置11とを含む。第1の制御装置10は、第2の制御装置11とは独立して車両VBの所定位置に配置される。第1の制御装置10及び第2の制御装置11は、電子制御ユニット(ECU)である。第1の制御装置10及び第2の制御装置11のそれぞれは、合成樹脂製の筐体に収容される。したがって、第1の制御装置10と第2の制御装置11という2つの制御装置によって、冗長化されている。なお、制御装置を2つ用いた例について説明するが、車両VBにおける配置を考慮して1つとしてもよいし、さらに冗長性を高めるために3つ以上としてもよい。
【0035】
第1の制御装置10と第2の制御装置11との間はCANによって接続され、通信が行われる。CANの通信においては、一方向および双方向の情報の送信が行われる。なお、ECU間の通信はCANに限定されない。
【0036】
第1の制御装置10及び第2の制御装置11は、互いに独立した3つのバッテリ100,101,102(電源装置)と電気的に接続される。バッテリ100,101,102は、第1の制御装置10及び第2の制御装置11が備える電子部品に電力を供給する。車両用ブレーキシステム1のバッテリ100,101,102は、車両VBの所定の位置に配置される。電源装置による電力供給の詳細については後述する。
【0037】
第1の制御装置10は、マスタコントローラ30及び第1サブコントローラ40を少なくとも1つずつ備え、第2の制御装置11は、少なくとも1つのサブコントローラ(第2サブコントローラ41)を備える。第1の制御装置10がマスタコントローラ30及び第1サブコントローラ40を搭載することにより、第1の制御装置10における冗長化と信頼性が向上する。
【0038】
また、第1の制御装置10は、さらにスレーブコントローラ50を備える。安価なスレーブコントローラ50を用いることで低コスト化を実現できる。なお、スレーブコントローラ50の代わりにサブコントローラを設けることも可能である。
【0039】
マスタコントローラ30、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50はそれぞれ、マイクロコンピュータである。
【0040】
第1の制御装置10は、マスタコントローラ30、第1サブコントローラ40及びスレーブコントローラ50を備える。複数のコントローラを使用することによる冗長化を達成しながらも、比較的高価なマスタコントローラを複数搭載しないので低コスト化を実現できる。マスタコントローラ30は、挙動制御部303(挙動制御部303については後述する)を設けるために高い性能が必要となり、第1、第2サブコントローラ40,41に比べて比較的高価なコントローラとなる。
【0041】
図1及び
図2に示すように、マスタコントローラ30は、ドライバ61,63を制御するドライバ制御部301と、電動ブレーキ16a〜16dの制動力を演算する制動力演算
部302と、車両VBの挙動を制御する挙動制御部303と、を含む。
【0042】
第1サブコントローラ40は、ドライバ60を制御するドライバ制御部400と、電動ブレーキ16a〜16dの制動力を演算する制動力演算部402と、を含む。第2サブコントローラ41は、ドライバ64,65を制御するドライバ制御部410と、電動ブレーキ16a〜16dの制動力を演算する制動力演算部412と、を含む。第1、第2サブコントローラ40,41は、挙動制御部を備えない分、マスタコントローラ30より安価なマイクロコンピュータを採用できるため、低コスト化に貢献する。
【0043】
スレーブコントローラ50は、制動力演算部を有しておらず、マスタコントローラ30及び第1、第2サブコントローラ40,41の少なくとも1つのコントローラの制動力演算結果に基づいてドライバ62を制御するドライバ制御部500を含む。スレーブコントローラ50は、制動力演算部を有していないため、第1、第2サブコントローラ40,41に比べて比較的安価なマイクロコンピュータを採用することができる。
【0044】
ドライバ60〜65は、モータ80〜85の駆動を制御する。具体的には、ドライバ60はモータ80の駆動を制御し、ドライバ61はモータ81の駆動を制御し、ドライバ62はモータ82の駆動を制御し、ドライバ63はモータ83の駆動を制御し、ドライバ64はモータ84の駆動を制御し、ドライバ65はモータ85の駆動を制御する。ドライバ60〜65は、モータ80〜85を例えば正弦波駆動方式によって制御する。また、ドライバ60〜65は、正弦波駆動方式に限らず、例えば矩形波の電流で制御してもよい。
【0045】
ドライバ60〜65は、ドライバ制御部301,400,410,500の指令に応じた電力をモータ80〜85に供給する電源回路及びインバータを備える。
【0046】
制動力演算部302,402,412は、ブレーキペダル2の操作量に応じた各ストロークセンサ20〜22の検出信号に基づいて制動力(要求値)を算出する。また、制動力演算部302,402,412は、他の制御装置1000からの信号に基づいて制動力(要求値)を算出することができる。
【0047】
ドライバ制御部301,400,410,500は、制動力演算部302,402,412が算出した制動力(要求値)と、各荷重センサ6a〜6dの検出信号と、回転角センサ90,92,94,95の検出信号とに基づいてドライバ60〜65を制御する。ドライバ60〜65は、ドライバ制御部301,400,410,500からの指令に従ってモータ80〜85に駆動用の正弦波電流を供給する。モータ80〜85に供給された電流は、電流センサ70〜75によって検出される。
【0048】
挙動制御部303は、車両VBの挙動を制御するための信号をドライバ制御部301,400,410,500に出力する。通常のブレーキペダル2の操作に応じた単純な制動以外の挙動であり、例えば、車輪Wa〜Wdのロックを防ぐ制御であるABS(Antilock Brake System)、車輪Wa〜Wdの空転を抑制する制御であるTCS(Traction Control System)、車両VBの横滑りを抑制する制御である挙動安定化制御である。
【0049】
マスタコントローラ30及び第1、第2サブコントローラ40,41は、各コントローラの制動力演算結果を比較して各コントローラが正常であるか否かを判断(診断)する判定部304,404,414を含む。
【0050】
判定部304,404,414は、マスタコントローラ30の制動力演算部302における演算結果と、第1サブコントローラ40の制動力演算部402における演算結果と、
第2サブコントローラ41の制動力演算部412における演算結果とを比較し、多数決によって、各コントローラが正常か否かを判断する。例えば、制動力演算部302の演算結果だけが他の演算結果(制動力演算部402,412の演算結果)と異なる場合(例えば、制動力演算部302の演算結果と他の演算結果との差分が所定の閾値を超える場合、或いは、制動力演算部302からの演算結果を取得できなかった場合)には、マスタコントローラ30が正常でないと判断し、第1、第2サブコントローラ40,41が正常であると判断する。また、制動力演算部402の演算結果だけが他の演算結果(制動力演算部302,412の演算結果)と異なる場合には、第1サブコントローラ40が正常でないと判断し、マスタコントローラ30及び第2サブコントローラ41が正常であると判断する。また、制動力演算部412の演算結果だけが他の演算結果(制動力演算部302,402の演算結果)と異なる場合には、第2サブコントローラ41が正常でないと判断し、マスタコントローラ30及び第1サブコントローラ40が正常であると判断する。
【0051】
各ドライバ制御部は、正常であると判断されたコントローラの演算結果を制動力として採用して、当該演算結果に基づいてドライバを制御する。例えば、マスタコントローラ30が正常でないと判断された場合には、ドライバ制御部400は、制動力演算部402の演算結果に基づいてドライバ60を制御し、ドライバ制御部410は、制動力演算部412の演算結果に基づいてドライバ64,65を制御し、ドライバ制御部500は、制動力演算部402又は制動力演算部412の演算結果に基づいてドライバ62を制御する。また、第1サブコントローラ40が正常でないと判断された場合には、ドライバ制御部301は、制動力演算部302の演算結果に基づいてドライバ61,63を制御し、ドライバ制御部410は、制動力演算部412の演算結果に基づいてドライバ64,65を制御し、ドライバ制御部500は、制動力演算部302又は制動力演算部412の演算結果に基づいてドライバ62を制御する。また、第2サブコントローラ41が正常でないと判断された場合には、ドライバ制御部301は、制動力演算部302の演算結果に基づいてドライバ61,63を制御し、ドライバ制御部400は、制動力演算部402の演算結果に基づいてドライバ60を制御し、ドライバ制御部500は、制動力演算部302又は制動力演算部402の演算結果に基づいてドライバ62を制御する。
【0052】
判定部304,404,414は、正常でないと判断されたコントローラの出力を遮断する出力遮断手段を備える。コントローラの出力とは、例えばドライバに対する制御信号(指令)や、他のコントローラに対する自己の演算結果である。出力遮断手段は、正常でないと判断されたコントローラ(或いは、当該コントローラが制御するドライバ)への電源供給を遮断することで、当該コントローラの出力を遮断する。なお、判定部304,404,414は、正常でないと判定したコントローラの出力を遮断した結果、正常に動作しているコントローラ(マスタコントローラ、サブコントローラ)が2つ以下となった場合には、多数決による正常性判断を行うことができなくなるため、それ以降、各コントローラの演算結果を比較する処理を行わない。
【0053】
1−4.電源装置
図1に示すように、車両用ブレーキシステム1は、本実施形態においては、複数の電源装置として3つのバッテリ100,101,102を備える。マスタコントローラ30は、バッテリ100,101,102と接続され、第1サブコントローラ40は、バッテリ100,101と接続され、第2サブコントローラ41は、バッテリ101,102と接続され、スレーブコントローラ50は、バッテリ100,102と接続される。すなわち、マスタコントローラ30は、車両用ブレーキシステム1が備える複数のバッテリと接続され、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50は、車両用ブレーキシステム1が備える複数のバッテリの一部と接続され、マスタコントローラ30に接続されるバッテリの数は、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50に接続されるバッテリの数より多い。本実施形態においては、マスタコント
ローラ30は、車両用ブレーキシステム1が備える全て(3つ)のバッテリと接続され、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50は、車両用ブレーキシステム1が備える3つのバッテリの一部(2つ)と接続される。
【0054】
図3は、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1の各コントローラ(30,40,41,50)と各ストロークセンサ(20〜22)の電源配線の詳細を示す図である。
【0055】
第1の制御装置10は、電源電圧生成回路110,120,130を含み、第2の制御装置11は、電源電圧生成回路140を含む。
【0056】
電源電圧生成回路110は、並列接続される3つのバッテリ100,101,102の出力電圧から電源電圧を生成する。電源系統PS
1は、3つのバッテリ100,101,102から電力が供給される電源系統(3つのバッテリ100,101,102の全てを含む電源系統)であり、マスタコントローラ30は、レギュレータ200を介して電源系統PS
1に接続される。電源電圧生成回路110は、ダイオード111,112,113を含む。ダイオード111は、バッテリ100とマスタコントローラ30の間に設けられ、ダイオード112は、バッテリ101とマスタコントローラ30の間に設けられ、ダイオード113は、バッテリ102とマスタコントローラ30の間に設けられる。ダイオード111,112,113は、バッテリ100,101,102からマスタコントローラ30への一方向のみの電流の流れを許容する(電流の逆流を防止する)。マスタコントローラ30に接続される第1ストロークセンサ20は、電源端子201を介して電源系統PS
1に接続される。すなわち、マスタコントローラ30と第1ストロークセンサ20は、同一の電源系統PS
1に接続される。マスタコントローラ30は、電源端子201にINH信号を出力して第1ストロークセンサ20への電源供給を制御することができる。
【0057】
電源電圧生成回路120は、並列接続される2つのバッテリ100,101の出力電圧から電源電圧を生成する。電源系統PS
2は、2つのバッテリ100,101から電力が供給される電源系統(2つのバッテリ100,101を含む電源系統)であり、第1サブコントローラ40は、レギュレータ210を介して電源系統PS
2に接続される。電源電圧生成回路120は、ダイオード121,122を含む。ダイオード121は、バッテリ100と第1サブコントローラ40の間に設けられ、ダイオード122は、バッテリ101と第1サブコントローラ40の間に設けられる。ダイオード121,122は、バッテリ100,101から第1サブコントローラ40への一方向のみの電流の流れを許容する。第1サブコントローラ40に接続される第2ストロークセンサ21は、電源端子211を介して電源系統PS
2に接続される。すなわち、第1サブコントローラ40と第2ストロークセンサ21は、同一の電源系統PS
2に接続される。第1サブコントローラ40は、電源端子211にINH信号を出力して第2ストロークセンサ21への電源供給を制御することができる。
【0058】
電源電圧生成回路130は、並列接続される2つのバッテリ100,102の出力電圧から電源電圧を生成する。電源系統PS
3は、2つのバッテリ100,102から電力が供給される電源系統(2つのバッテリ100,102を含む電源系統)であり、スレーブコントローラ50は、レギュレータ220を介して電源系統PS
3に接続される。電源電圧生成回路130は、ダイオード131,132を含む。ダイオード131は、バッテリ100とスレーブコントローラ50の間に設けられ、ダイオード132は、バッテリ102とスレーブコントローラ50の間に設けられる。ダイオード131,132は、バッテリ100,102からスレーブコントローラ50への一方向のみの電流の流れを許容する。
【0059】
電源電圧生成回路140は、並列接続される2つのバッテリ101,102の出力電圧
から電源電圧を生成する。電源系統PS
4は、2つのバッテリ101,102から電力が供給される電源系統(2つのバッテリ101,102を含む電源系統)であり、第2サブコントローラ41は、レギュレータ230を介して電源系統PS
4に接続される。電源電圧生成回路140は、ダイオード141,142を含む。ダイオード141は、バッテリ101と第2サブコントローラ41の間に設けられ、ダイオード142は、バッテリ102と第2サブコントローラ41の間に設けられる。ダイオード141,142は、バッテリ101,102から第2サブコントローラ41への一方向のみの電流の流れを許容する。第2サブコントローラ41に接続される第3ストロークセンサ22は、電源端子231を介して電源系統PS
4に接続される。すなわち、第2サブコントローラ41と第3ストロークセンサ22は、同一の電源系統PS
4に接続される。第2サブコントローラ41は、電源端子231にINH信号を出力して第3ストロークセンサ22への電源供給を制御することができる。
【0060】
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1によれば、マスタコントローラ30が3つのバッテリ100,101,102の全てと接続され、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50が3つのバッテリ100,101,102のうちの2つと接続されるため、車両用ブレーキシステム1(各コントローラの電源)の冗長化を実現できる。特に、前輪両輪(FL,FR)のモータ81,83のドライバ61,63を制御可能なマスタコントローラ30の電源の冗長性を高めることで、車両用ブレーキシステム1の信頼性を向上することができる。また、第1、第2サブコントローラ40,41及びスレーブコントローラ50の電源の冗長性を最小限にとどめることで、配線の増加を極力抑え、低コスト化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム1によれば、並列接続される複数のバッテリ100,101,102から各コントローラ(30,40,41,50)への一方向のみの電流の流れを許容するダイオードを設けることで、バッテリからの電流が他のバッテリ(電圧が低下したバッテリ)に逆流することを防止し、システム全体としての故障率を抑えつつ電流の逆流を防止することができる。
【0062】
なお、車両ブレーキシステムが複数のバッテリを備え、マスタコントローラに接続されるバッテリの数が、サブコントローラに接続されるバッテリの数より多くなる構成とすればよい。例えば、車両用ブレーキシステムが3つ以上のバッテリを備える場合、マスタコントローラが3つ以上のバッテリと接続され、サブコントローラが2つ以上のバッテリと接続されるように構成することができる。また、車両用ブレーキシステムが2つのバッテリを備える場合、マスタコントローラが2つのバッテリの全てと接続され、サブコントローラが2つのバッテリのうちいずれか1つと接続されるように構成することができる。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。なお、上述した実施形態では、3つのバッテリを備えた構成を例として説明したが、バッテリの数はこれに限定されない。