【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、少なくとも一方が螺旋状に巻回された複数の繊維状要素を備える、M1の繊維状要素及びM2の繊維状要素の少なくとも第1及び第2の組立体を製造するための方法であって、
−仮組立体を形成するためにMの繊維状要素を仮コアの周りでMの繊維状要素の層に組み合わせるステップと、
−仮組立体をM1の繊維状要素及びM2の繊維状要素の少なくとも第1及び第2の組立体に分割するステップと、
を含む方法である。
【0011】
本発明の方法により、得られた組立体の構造的伸び率を制御し、必要である場合、比較的大きな構造的伸び率を、予備成形ステップを使用することなく得ることが可能になる。
【0012】
具体的には、仮組立体を組み合わせるステップの間に、Mの繊維状要素は、該繊維状要素が分割ステップの間及びその後に維持する曲率が与えられる。ここで、この仮組立体の分割ステップの間、仮コアは繊維状要素の第1及び第2の組立体間で分割される、つまり、繊維状要素の第1及び第2の組立体から分離されるので、得られた組立体(複数を含む)は、仮コアの直径の低減又は排除、及び繊維状要素が曲率を維持することに起因して非常に開放的である。この開放性により、大きな構造的伸び率が必要である場合に大きな構造的伸び率を呈する組立体を得ることが可能である。
【0013】
本発明の方法により、M1の繊維状要素及びM2の繊維状要素の第1及び第2の組立体が同時に製造される。
【0014】
各第1及び第2の組立体は、単一螺旋組立体である。定義上、単一螺旋組立体は、各繊維状要素の軸線が、組立体の軸線周りの第1の螺旋と、組立体の軸線が描く螺旋周りの第2の螺旋とを描く二重螺旋組立体とは対照的に、各繊維状要素の軸線が単一の螺旋を描く組立体である。
【0015】
換言すると、組立体が実質的に直線的方向に延在する場合に、各組立体は、螺旋状に巻回された繊維状要素の1又は2以上の層を備え、層の各繊維状要素は、実質的に直線的方向に螺旋の形態の経路を描き、所定の層の各繊維状要素の中心と、実質的に直線的方向の軸線との間の距離は、所定の層の全ての繊維状要素に関して実質的に一定かつ等しい。対照的に、二重螺旋組立体が実質的に直線的方向に延在する場合、所定の層の各繊維状要素の中心と実質的に直線的方向との間の距離は、所定の層の全ての繊維状要素に関して異なる。
【0016】
繊維状要素とは、横断面の形状が例えば円形、長方形、矩形、又は正方形、もしくは平坦であるか否かに関わらず、横断面に対して大きな長さを有する何らかの長直線(longilinear)要素を意味し、この繊維状要素は、例えば、捻り合わせること又は波形を付けることができる。繊維状要素の形状が円形である場合、直径は好ましくは3mm未満である。
【0017】
1つの実施形態において、各繊維状要素は、単一の基本モノフィラメントを備える。
【0018】
別の実施形態において、各繊維状要素は、複数の基本モノフィラメントの組立体を備える。従って、例えば、各繊維状要素は、複数の基本モノフィラメントの撚糸を備える。各撚糸は、好ましくは螺旋状に巻回された基本モノフィラメントの1又は2以上の層を備える。
【0019】
これらの2つの実施形態において、各基本モノフィラメントは、好ましくは金属製である。金属製とは、大部分が(質量の50%を上回るという意味)又は全体として(質量の100%)金属材料から成る基本モノフィラメントである。各基本モノフィラメントは、好ましくは鋼製、更に好ましくは、以下「炭素鋼」と示されるパーライト(又はフェライトーパーライト)炭素鋼製、又は、代替的に(定義上少なくとも10.5%のクロミウムを含有する鋼である)ステンレス鋼製である。
【0020】
炭素鋼が使用される場合、炭素含有量(鋼の重量%)は、好ましくは、0.5%〜0.9%である。好ましくは2000MPaを上回り、更に好ましくは2500MPaを上回り3500MP未満の(2009年の規格ISO 6892−1による引張試験の下で取得した測定値)引張強さ(Rm)を有する標準張力(NT)鋼コードの鋼又は高張力(HT)鋼コード形式の鋼が利用される。
【0021】
1つの好適な実施形態では、前記又は各基本モノフィラメントは、0.05mm〜0.50mm、好ましくは0.10mm〜0.40mm、更に好ましくは0.15mm〜0.35mmの範囲の直径を有する。
【0022】
第1の実施形態では、仮組立体を分割するステップは、仮コアを第1及び第2の組立体から分離する手段を備える。
【0023】
従って、この第1の実施形態において、各々がそれぞれ螺旋状に巻回されたM1、M2の繊維状要素の層を備える繊維状要素の2つの組立体が得られる。繊維状要素の各組立体は、センタワイヤを有していない。この実施形態では、第1の組立体は、第1の組立体の軸線周りに巻回されかつ単一の層に分配されたM1の繊維状要素で構成される。同様に、この実施形態の第2の組立体は、第2の組立体の軸線周りに巻回されかつ単一層に分配されたM2の繊維状要素で構成される。これらは、1xM1及び1xM2構造の組立体、又はオープンコード構造の組立体と呼ばれる場合もある。
【0024】
換言すると、この第1の実施形態において、少なくとも1つのスレッドを備える仮コアに関して、仮コアの各スレッドは、M1の繊維状要素及びM2の繊維状要素の第1及び第2の組立体に属さない。従って、M1+M2=Mである。
【0025】
この第1の実施形態の第1の好適な代替形態において、分割ステップの間に、第1の組立体は、第2の組立体及び仮コアにより形成された仮集合体から分離され、次に、第2の組立体及び仮コアは、互いに分離される。従って、最初に第1の組立体を仮集合体から分離することで、第2の組立体を仮コアから分離する場合、仮コアは、第2の組立体の繊維状要素で形成される層から容易に取り出すことができる。
【0026】
第2の好適な代替形態において、分割ステップの間、仮コア、第1の組立体、及び第2の組立体は、互いにペアで同時に分離される。
【0027】
好都合には、本方法は、仮コアを再利用するステップを含み、このステップの間に、
−仮コアは、分割ステップの下流側で回収され、
−以前に回収された仮コアは組み合わせステップの上流側に導入される。
【0028】
従って、仮コアは再利用される。
【0029】
好適な実施形態において、仮コアを再利用するステップは連続的に実行することができ、すなわり、分離ステップを出た仮コアは、仮コアの中間貯蔵ステップなしに組立体ステップに再導入される。
【0030】
別の実施形態において、仮コアを再利用するステップは不連続である、つまり仮コアの中間貯蔵のステップがある。
【0031】
更に好ましくは、織物で作られている仮コアが利用される。織物とは、仮コアが非金属製であることを意味する。具体的には、組み合わせ及び分割ステップの間に仮コアが受ける、撚り合わせ−撚り戻し捻れサイクルが発生し、仮コアが金属製である場合、残留捻れにより、再利用された仮コアは使用しづらくなる。仮コアは、織物で作られる場合、残留捻れを呈さないので再利用が容易になる。
【0032】
1つの実施形態において、織物仮コアは、織物基本モノフィラメントを備える。
【0033】
別の実施形態において、織物仮コアは、複数の織物基本モノフィラメントを備える1又は2以上の織物マルチフィラメント撚糸を含む。代替形態では、仮コアは、複数の基本モノフィラメントを含むオーバーツイストと呼ばれる単一のマルチフィラメント撚糸を備える。代替形態では、仮コアは、複数のマルチフィラメント撚糸を備え、各々はオーバーツイストと呼ばれ、各々は複数の基本モノフィラメントを備え、合撚糸を形成するために螺旋状に組み合わせられる。
【0034】
好都合には、前記又は各織物基本モノフィラメントの各繊維材料は、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース、無機繊維、天然繊維、又はこれらの材料の混合物から選択される。
【0035】
ポリエステルの中で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタル酸塩(PPT)、又はポリプロピレンナフタレート(PPN)を挙げることができる。ポリアミドの中で、アラミドなどのナイロン、又は芳香族ポリアミドなどの脂肪族ポリアミドを挙げることができる。ポリビニルアルコールの中で、Kuralon(登録商標)を挙げることができる。セルロースの中で、レーヨンを挙げることができる。無機繊維の中で、ガラス繊維及び炭素繊維を挙げることができる。天然繊維の中で、麻又は麻繊維を挙げることができる。
【0036】
第2の実施形態において、仮コアを分割するステップは、少なくとも第1及び第2の組立体の間で仮コアを分割するステップを含む。
【0037】
従って、この第2の実施形態において、繊維状要素の2つの組立体が得られ、各々は、それぞれ螺旋状に巻回されたP1、P2の繊維状要素の層と、組立体のうちの少なくとも1つに関して、層の繊維状要素が巻回される仮コアの少なくとも一部を備えるか又はこれを構成するセンタワイヤとを備える。
【0038】
換言すると、この第2の実施形態において、Nの繊維状要素を備える仮コアについて、仮コアのNの繊維状要素のうちの少なくとも1つは、M1の繊維状要素及びM2の繊維状要素の第1及び第2の組立体のうちの少なくとも1つに属する。
【0039】
好都合には、分割ステップの間に、第1の組立体を形成するように、仮コアのうちの少なくとも第1の部分は、第1の繊維状要素と一緒に仮組立体から分割される。
【0040】
従って、第1の組立体は、螺旋状に巻回されたP1の繊維状要素の層と、仮コアのNの繊維状要素の第1の部分(N1の繊維状要素)を備えるか又はこれを構成するP1の繊維状要素が螺旋状に巻回されるセンタワイヤとを備える。従って、P1+N1=M1である。
【0041】
好都合には、分割ステップの間に、第2の組立体を形成するように、仮コアのうちの少なくとも第2の部分は、第2の繊維状要素と一緒に仮組立体から分割される。
【0042】
従って、第2の組立体は、螺旋状に巻回されたP2の繊維状要素の層と、仮コアのNの繊維状要素の第2の部分(N2の繊維状要素)を備えるか又はこれを構成するP2の繊維状要素が螺旋状に巻回されるセンタワイヤを備える。従って、P2+N2=M2である。
【0043】
好ましくは、第1及び第2の組立体は、同時に形成される。
【0044】
好ましくは、分割ステップの前に、仮コアの第1及び第2の部分は、仮コアを構成する。従って、仮コアの第1及び第2の部分は相互補完的である。従って、N1+N2=Nである。代替形態において、N1+N2<Nとすることができる。
【0045】
代替形態において、第1の組立体は、仮コアを備えるか又はこれを構成するセンタワイヤの周りに螺旋状に巻回されたP1の繊維状要素の層を備え、第2の組立体は、センタワイヤなしで螺旋に巻回されたP2=M2の繊維状要素の層を備える。
【0046】
1つの実施形態において、組み合わせステップは、撚り合わせることで実行される。この場合、スレッド又は撚糸は、自身の軸線の周りで集合的な撚り合わせ及び個別の撚り合わせを受け、スレッド又は撚糸の各々の上に撚り戻しトルクが発生する。
【0047】
別の実施形態において、組み合わせステップは、ケーブリングを用いて実行される。この場合、スレッド又は撚糸は回転が組み合わせ箇所の前後で同期しているので、自身の軸線の周りの捻れを受けない。
【0048】
好ましくは、撚り合わせを用いた組み合わせステップの場合、本方法は、仮組立体を撚り釣り合わせするステップを含む。従って、撚り釣り合わせステップが、Mの繊維状要素及び仮コアで構成されている組立体で実行されると、撚り釣り合わせステップは、分割ステップの上流側で非明示的に実行される。これにより、組み合わせステップの下流側でコードが追従する経路において、特に例えばプーリーの案内手段において、組み合わせステップの間に課された残留捻れを管理する必要性が回避される。更に、撚り釣り合わせステップは、予備成形ステップなしでケーブリングによる組み合わせステップで得られた曲率よりも大きな曲率を繊維状要素に課す。このより大きな曲率は、大きな構造的伸び率の好適な実現に寄与する。
【0049】
好都合には、本方法は、分割ステップの後で、第1及び第2の組立体のうちの少なくとも一方において撚り釣り合わせするステップを含む。
【0050】
好都合には、本方法は、それぞれの移動方向の周りの第1及び第2の組立体の回転を維持するステップを含む。このステップは、分割ステップの後で、並びに第1及び第2の組立体のうちの少なくとも一方において撚り釣り合わせするステップの前で実行される。
【0051】
好ましくは、本方法は、繊維状要素の各々を個別に予備成形するステップを含んでいない。繊維状要素の各々を個別に予備成形するステップを使用する従来の方法では、繊維状要素は、ホイール等の予備成形工具により与えられる形状を有し、これらの工具により、欠陥が繊維状要素の表面に発生する。これらの欠陥により、繊維状要素、従って、組立体の耐久性が著しく低下する。逆に、本方法は、好ましくは、予備成形ステップを実行すること、従って、欠陥を発生させること回避することを可能にする。従って、得られた組立体は、同じ構造的伸び率を有するが予備成形された少なくとも1つの繊維状要素を含む組立体よりも耐久性が非常に良好である。
【0052】
本発明の他の主題は、螺旋状に巻回された複数の繊維状要素の層を備える単一螺旋組立体であり、規格ASTM A931−08に従って測定された2.0%以上の構造的伸び率を有することを特徴とし、前記の方法を用いて得ることができる。
【0053】
好都合には、層の各繊維状要素は、自身の回転軸の周りの捻れを呈する。このような組立体は、撚りステップを用いる方法を使用して製造される。このような捻れは、各繊維状要素を顕微鏡で見ることで確かめることができる。
【0054】
好都合には、層の各繊維状要素は、予備成形の痕跡を呈さない。従って、コードに与えられる開放性、従って、その構造的伸び率は、結果的に痕跡が各繊維状要素上に残ると思われる予備成形ステップによってではなく本明細書で前述した方法で与えられる。このような痕跡は、各繊維状要素を顕微鏡で調べることで見ることができるはずである。
【0055】
好都合には、繊維状要素の組立体は、規格ASTM A931−08に従って測定された3.0%、好ましくは4.0%、更に好ましくは5.0%以上の構造的伸び率を有する。
【0056】
1つの実施形態において、繊維状要素の組立体は、螺旋状に巻回された複数の繊維状要素の単一の層を備え、センタワイヤを有していない。換言すると、組立体は、一緒に巻回された複数の繊維状要素の単一の層で構成される。
【0057】
別の実施形態において、繊維状要素の組立体は、螺旋状に巻回された複数の繊維状要素の層と、層の繊維状要素が螺旋状に巻回されたセンタワイヤとを備える。
【0058】
1つの実施形態において、単一の撚糸で構成される組立体に関して、組立体は2.4mm以下直径を有する。
【0059】
別の実施形態において、組立体が少なくとも2つの撚糸で形成される場合、組立体は6.5mm以下の直径を有する。
【0060】
組立体の直径は、組立体の全ての繊維状要素が内接する最小円の直径である。このような直径は、投影器を使用して観察することで測定することができる。
【0061】
本発明の他の主題は、前記の方法を用いて得ることができる螺旋状に巻回された複数の繊維状要素の層を備える繊維状要素の組立体である。
【0062】
本発明のさらに他の主題は、前記の方法を用いて得ることができる組立体を備えたタイヤである。
【0063】
このようなタイヤは、特に、乗用車、SUV(スポーツ多目的車)、2輪(特に自転車、バイク)の動力車、航空機タイプ、及び、バン、大型車両−すなわち、地下鉄、バス、大型道路輸送車両(トラック、トラクタ、トレーラ)、農業用又は土木用工事車両などのオフロード車両、又は他の輸送又は運送車両から選択された産業用車両に取り付けられることが意図される。
【0064】
好ましくは、タイヤは、トレッド及び該トレッドの円周方向内側に配置されたクラウン補強体を備える。クラウン補強体は、好ましくはワーキング補強体及び保護補強体を備え、保護補強体は、トレッドとワーキング補強体との間に半径方向に配置される。好適な実施形態において、各保護プライは、保護要素と呼ばれる1又は2以上の補強要素を備え、各保護補強要素は、本明細書で前述したような組立体を備える。
【0065】
タイヤの随意的な特徴によれば、保護補強要素は、タイヤの円周方向に対して少なくとも10°に等しい、好ましくは10°〜35°、更に好ましくは15°〜35°の角度を成す。
【0066】
タイヤの他の随意的な特徴によれば、ワーキング補強要素と呼ばれる補強要素を備える各ワーキングプライに関して、ワーキング補強要素は、タイヤの円周方向に対して、最大でも60°に等しい、好ましくは15°〜40°の範囲の角度を成す。
【0067】
好適な実施形態では、クラウン補強体は、少なくとも1つのフーププライを含むフープ補強体を備える。好適な実施形態において、各フーププライは、フープ補強要素と呼ばれる1又は2以上の補強要素を備え、各フープ要素は、本明細書で前述したような組立体を備える。
【0068】
タイヤの随意的な特徴によれば、フープ補強要素は、タイヤの円周方向に対して最大でも10°に等しい、好ましくは5°〜10°の範囲の角度を成す。
【0069】
好適な実施形態において、カーカス補強体は、クラウン補強体の半径方向内側に配置される。
【0070】
好都合には、カーカス補強体は、カーカス補強要素と呼ばれる補強要素を備える少なくとも1つのカーカスプライを備え、カーカス補強要素は、タイヤの円周方向に対して、65°以上、好ましくは80°以上、更に好ましくは80°〜90°の範囲の角度を成す。
【0071】
本発明は、単に非限定的な例として図面を参照して示されており、以下の説明を読むことでより良好に理解されるであろう。