特許第6818761号(P6818761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818761
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/20 20060101AFI20210107BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20210107BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20210107BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C08F220/20
   C09D4/02
   C09J4/02
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   H05B33/04
   G09F9/30 365
   G09F9/30 309
【請求項の数】24
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-545056(P2018-545056)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2017037047
(87)【国際公開番号】WO2018070488
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2020年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-202585(P2016-202585)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
(72)【発明者】
【氏名】中島 剛介
(72)【発明者】
【氏名】徳田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】林 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−520170(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/080155(WO,A1)
【文献】 特開2005−170981(JP,A)
【文献】 特開平03−131605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/20
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)3〜70質量部、(B)15〜95質量部、(C)2〜40質量部を含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項2】
(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)3〜10質量部、(B)85〜95質量部、(C)2〜10質量部を含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項3】
(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、(D)0.05〜6質量部を含有する請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項4】
25℃においてE型粘度計により測定される粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項5】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーを含有しない請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤から得られる硬化体のガラス転移温度が200℃以上である有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項7】
(A)がトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項8】
(B)が、炭素数6以上のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートである請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項9】
(B)が、炭素数12以下のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートである請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項10】
(B)が、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上である請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項11】
(B)が、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートを含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項12】
(C)が、炭素数8以上のアルキル(メタ)アクリレートである請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項13】
(C)が、ラウリル(メタ)アクリレートである請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項14】
(C)が、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項15】
(C)が、単官能メタクリレートと単官能アクリレートを含有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項16】
(D)が、アシルホスフィンオキサイド誘導体である請求項1〜15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を硬化した硬化体。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤で被覆した被覆体。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤で接合した接合体。
【請求項20】
380nm以上500nm以下の波長で硬化する請求項1〜16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤の硬化方法。
【請求項21】
発光ピーク波長395nmのLEDランプで硬化する請求項1〜16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤の硬化方法。
【請求項22】
インクジェット法を用いて塗布する請求項1〜16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤の塗布方法。
【請求項23】
請求項17に記載の硬化体を含む有機EL装置。
【請求項24】
請求項17に記載の硬化体を含むディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。本発明は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子用封止剤に使用できる、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は高い輝度発光が可能な素子体として注目を集めている。しかしながら、水分により劣化し、発光特性が低下してしまう課題があった。
【0003】
このような課題を解決するために、有機EL素子を封止し、水分による劣化を防止する技術が検討されている。例えば、フリットガラスからなるシール材で封止する方法が挙げられる(特許文献1参照)。
【0004】
封止層が少なくともバリア層、樹脂層、バリア層を順次形成した積層体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示素子(特許文献2参照)、有機EL素子を封止する無機物膜と有機物膜とを交互に積層した封止層と、前記封止層の最上位有機物膜上に密着して、前記最上位有機物膜の上面の全てを覆うように配置される封止ガラス基板と、を備えることを特徴とする有機EL装置(特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
有機EL素子封止用の樹脂組成物として、環状エーテル化合物と、カチオン重合開始剤と、多官能ビニルエーテル化合物とを含有する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤(特許文献4参照)、カチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤又は熱カチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性樹脂組成物が提案されている(特許文献5参照)。有機EL素子封止用の樹脂組成物として、(メタ)アクリル系樹脂組成物が提案されている(特許文献6〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−74583号公報
【特許文献2】特開2001−307873号公報
【特許文献3】特開2009−37812号公報
【特許文献4】特開2014−225380号公報
【特許文献5】特開2012−190612号公報
【特許文献6】特開2014−229496号公報
【特許文献7】特開2014−196387号公報
【特許文献8】特開2014−193970号公報
【特許文献9】特開2014−193971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0008】
特許文献1では、量産化を行う際には、有機EL素子を、水分の透過性が低い基材、例えば、ガラス等で挟み込み、外周部を封止する方法を採用する。この場合、この構造は中空封止構造となっているため、中空封止構造内部へ水分が浸入することを防げず、有機EL素子の劣化につながる課題があった。
【0009】
特許文献2〜3では、有機物膜を蒸着によって成膜するため有機物膜の厚さが3μm以下となってしまうという課題があった。有機物膜の厚みが3μm以下であると素子形成時に発生するパーティクルを完全に被覆できないだけでなく、無機物膜上に平坦性を保ちながら塗布することも難しい課題があった。
【0010】
特許文献4では、エポキシ系材料を用いた封止剤が提案されているが、このような材料は硬化するのに加熱を要するため、有機EL素子にダメージを与え、歩留まりの点で課題があった。特許文献5では、エポキシ系材料を用いた光硬化型の封止剤が提案されているが、このような材料は、UV光により硬化するため、UV光により有機EL素子にダメージを与え、歩留まりの点で課題があった。特許文献6〜9は、(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレートと(B)非環式2官能(メタ)アクリレートを特定量併用することについて、記載がない。特許文献6〜9は、塗布性について記載がない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、例えば、有機EL素子封止用に用いた場合に塗布性や低透湿性に優れる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態は以下を提供できる。
【0013】
<1>(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)3〜70質量部、(B)15〜95質量部、(C)2〜40質量部を含有する組成物。
【0014】
<2>(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)3〜10質量部、(B)85〜95質量部、(C)2〜10質量部を含有する組成物。
【0015】
<3>(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、(D)0.05〜6質量部を含有する<1>又は<2>に記載の組成物。
【0016】
<4>25℃においてE型粘度計により測定される粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下である<1>〜<3>のいずれか一項に記載の組成物。
【0017】
<5>多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーを含有しない<1>〜<4>のいずれか一項に記載の組成物。
【0018】
<6><1>〜<5>のいずれか一項に記載の組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が200℃以上である組成物。
【0019】
<7>(A)がトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである<1>〜<6>のいずれか一項に記載の組成物。
【0020】
<8>(B)が、炭素数6以上のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートである<1>〜<7>のいずれか一項に記載の組成物。
【0021】
<9>(B)が、炭素数12以下のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートである<1>〜<8>のいずれか一項に記載の組成物。
【0022】
<10>(B)が、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上である<1>〜<9>のいずれか一項に記載の組成物。
【0023】
<11>(B)が、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートを含有する<1>〜<10>のいずれか一項に記載の組成物。
【0024】
<12>(C)が、炭素数8以上のアルキル(メタ)アクリレートである<1>〜<11>のいずれか一項に記載の組成物。
【0025】
<13>(C)が、ラウリル(メタ)アクリレートである<1>〜<11>のいずれか一項に記載の組成物。
【0026】
<14>(C)が、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートである<1>〜<11>のいずれか一項に記載の組成物。
【0027】
<15>(C)が、単官能メタクリレートと単官能アクリレートを含有する<1>〜<11>のいずれか一項に記載の組成物。
【0028】
<16>(D)が、アシルホスフィンオキサイド誘導体である<1>〜<15>のいずれか一項に記載の組成物。
【0029】
<17>有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤である<1>〜<16>のいずれか一項に記載の組成物。
【0030】
<18><1>〜<17>のいずれか1項に記載の組成物からなる被覆剤。
【0031】
<19><1>〜<17>のいずれか1項に記載の組成物からなる接着剤。
【0032】
<20><1>〜<17>のいずれか1項に記載の組成物を硬化した硬化体。
【0033】
<21><1>〜<17>のいずれか1項に記載の組成物で被覆した被覆体。
【0034】
<22><1>〜<17>のいずれか1項に記載の組成物で接合した接合体。
【0035】
<23>380nm以上500nm以下の波長で硬化する<1>〜<17>のいずれか一項に記載の組成物の硬化方法。
【0036】
<24>発光ピーク波長395nmのLEDランプで硬化する<1>〜<17>のいずれか一項に記載の組成物の硬化方法。
【0037】
<25>インクジェット法を用いて塗布する<1>〜<17>のいずれか一項に記載の組成物の塗布方法。
【0038】
<26><20>に記載の硬化物を含む有機EL装置。
【0039】
<27><20>に記載の硬化物を含むディスプレイ。
【0040】
<28>(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)1〜70質量部、(B)15〜98質量部、(C)1〜40質量部を含有する組成物。
【0041】
<29>(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物であり、(A)、(B)、(C)の合計100質量部中、(A)1〜10質量部、(B)85〜98質量部、(C)1〜10質量部を含有する組成物。
【発明の効果】
【0042】
本発明の実施形態に係る組成物は、塗布性や低透湿性に優れる効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本実施形態を説明する。本明細書においては、別段の断わりがない限りは、数値範囲はその上限値と下限値を含むものとする。
【0044】
以下、基板上に形成された有機EL素子の基板と反対側から光を照射するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明する。トップエミッション型の有機EL装置は、基板上に、陽極と、発光層を含む有機EL層と、陰極と、が順に積層された有機EL素子と、この有機EL素子全体を覆う無機物膜と有機物膜の積層体からなる封止層と、封止層上に設けられる封止基板と、が順に形成された構造を有する。
【0045】
基板としては、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板等種々のものを用いることができる。これらの中では、ガラス基板、プラスチック基板からなる群のうちの1種以上が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0046】
プラスチック基板に用いられるプラスチックとしては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリアクリル等が挙げられる。これらの中では、低水分透過性、低酸素透過性、耐熱性に優れる点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンからなる群のうちの1種以上が好ましく、紫外線又は可視光線等のエネルギー線の透過性が高い点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0047】
陽極としては、比較的仕事関数の大きな(4.0eVより大きな仕事関数を持つものが好適である)、導電性の金属酸化物膜や半透明の金属薄膜等が一般的に用いられる。陽極の材料に含められるものとしては例えば、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOという)、酸化スズ等の金属酸化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属又はこれらのうちの少なくとも1つを含む合金、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜等が挙げられる。これらの中では、ITOが好ましい。陽極は、必要があれば2層以上の層構成により形成することができる。陽極の膜厚は、電気伝導度を(ボトムエミッション型の場合には、光の透過性も)考慮して、適宜選択することができる。陽極の膜厚は、10nm〜10μmが好ましく、20nm〜1μmがより好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。トップエミッション型の場合には、基板側に照射される光を反射させるための反射膜を陽極の下に設けてもよい。
【0048】
有機EL層は、少なくとも有機物からなる発光層を含んでいる。この発光層は、発光性材料を含有する。発光性材料としては、蛍光又は燐光を発光する有機物(低分子化合物又は高分子化合物)等が挙げられる。発光層は、更に、ドーパント材料を含んでいてもよい。有機物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子材料等が挙げられる。ドーパント材料は、有機物の発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的で、有機物中にドープされるものである。これらの有機物と必要に応じてドープされるドーパントからなる発光層の厚さは通常20〜2,000Åである。
【0049】
(色素系材料)
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0050】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等といった、金属錯体等が挙げられる。金属錯体としては、中心金属に、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)等の希土類金属、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)等を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等が挙げられる。これらの中では、中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体が好ましい。中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体の中では、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウムが好ましい。
【0051】
(高分子材料)
高分子材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化した物等が挙げられる。
【0052】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0053】
緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0054】
赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0055】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。有機EL層は、発光層以外に、発光層と陽極との間に設けられる層と、発光層と陰極との間に設けられる層と、を適宜設けることができる。まず、発光層と陽極との間に設けられる層としては、陽極からの正孔注入効率を改善する正孔注入層や、陽極、正孔注入層又は陽極により近い正孔輸送層から発光層への正孔注入を改善する正孔輸送層等が挙げられる。発光層と陰極との間に設けられる層としては、陰極からの電子注入効率を改善する電子注入層や、陰極、電子注入層又は陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する電子輸送層等が挙げられる。
【0056】
(正孔注入層)
正孔注入層を形成する材料としては、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。これらの中では、フタロシアニン系が好ましい。
【0057】
(正孔輸送層)
正孔輸送層を構成する材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等が挙げられる。これらの中では、ベンジジン誘導体が好ましい。
【0058】
これらの正孔注入層又は正孔輸送層が、電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの正孔輸送層や正孔注入層を電子ブロック層ということもある。
【0059】
(電子輸送層)
電子輸送層を構成する材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、金属錯体等が挙げられる。これらの中では、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体が好ましい。8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の中では、発光層中に含有する、蛍光又は燐光を発光する有機物としても使用できる点で、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウムが好ましい。
【0060】
(電子注入層)
電子注入層としては、発光層の種類に応じて、カルシウム(Ca)層の単層構造からなる電子注入層、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5〜3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層の単層構造、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5〜3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層とCa層との積層構造からなる電子注入層等が挙げられる。仕事関数が1.5〜3.0eVの、周期律表IA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、リチウム(Li)、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。仕事関数が1.5〜3.0eVの、周期律表IIA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、ストロンチウム(Sr)、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中では、フッ化リチウムが好ましい。
【0061】
これらの電子輸送層又は電子注入層が、正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの電子輸送層や電子注入層を正孔ブロック層ということもある。
【0062】
陰極としては、仕事関数が比較的小さく(4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適である)、発光層への電子注入が容易な透明又は半透明の材料が好ましい。陰極の材料に含められるものとしては例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等の金属、又は上記金属のうち2種以上からなる合金、若しくはそれらのうち1種以上と、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、スズ(Sn)のうち1種以上とからなる合金、又は、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物、又は、ITO、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0063】
陰極を2層以上の積層構造としてもよい。2層以上の積層構造としては、上記の金属、金属酸化物、フッ化物、これらの合金と、Al、Ag、Cr等の金属との積層構造等が挙げられる。これらの中では、Alが好ましい。陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができる。陰極の膜厚は、10nm〜10μmが好ましく、15nm〜1μmがより好ましく、20nm〜500nmが最も好ましい。陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
【0064】
これらの発光層と陽極との間と、発光層と陰極との間に設けられる層は、製造する有機EL装置に求められる性能に応じて、適宜選択可能である。例えば、本実施形態で使用される有機EL素子の構造としては、下記の(i)〜(xv)の層構成のいずれかを有することができる。
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(v)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(vii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(viii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(ix)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(x)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
(xi)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xii)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xiii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(xiv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0065】
封止層は、水蒸気や酸素等の気体が有機EL素子に接触することを防ぐために、上記気体に対して高いバリア性を有する層で有機EL素子を封止するために、設けられる。この封止層は、無機物膜と有機物膜とが下から交互に形成される。無機/有機積層体は2回以上繰り返して形成されてもよい。
【0066】
無機/有機積層体の無機物膜は、有機EL装置が置かれる環境に存在する水蒸気や酸素等の気体に有機EL素子が曝されることを防止するために設けられる膜である。無機/有機積層体の無機物膜は、ピンホール等の欠陥が少ない連続的な緻密な膜であることが好ましい。無機物膜としては、SiN膜、SiO膜、SiON膜、Al23膜、AlN膜等の単体膜やこれらの積層膜等が挙げられる。
【0067】
無機/有機積層体の有機物膜は、無機物膜上に形成されたピンホール等の欠陥を被覆するために、表面に平坦性を付与するために、設けられる。有機物膜は、無機物膜が形成される領域よりも狭い領域に形成される。これは、有機物膜を無機物膜の形成領域と同じか又はそれよりも広く形成すると、有機物膜が露出する領域で劣化してしまうからである。但し、封止層全体の最上層に形成される最上位有機物膜は、無機物膜の形成領域とほぼ同じ領域に形成される。そして、封止層の上面が平坦化されるように形成される。有機物膜としては、上記した無機物膜との密着性能が良好な接着機能を有する組成物が用いられる。
【0068】
本実施形態は、例えば、短時間で膜厚3μm以上の平坦性に優れる塗布が可能なインクジェット塗布に好適であり、インクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性に優れ、水蒸気等に対するバリア性(以下、低透湿性とも言う)に優れる上記有機物膜を形成する有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を提供することを目的とする。インクジェット法による塗布方法を用いれば、高速かつ均一に有機物膜を形成することができる。
【0069】
本実施形態の組成物は、(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレート、(B)非環式2官能(メタ)アクリレート、(C)単官能(メタ)アクリレート、(D)光重合開始剤を含有する組成物である。(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中では、(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物が好ましい。多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物をいう。3官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を3個有する化合物をいう。2官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物をいう。単官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物をいう。本実施形態の組成物において、(メタ)アクリレートの含有量は、組成物100質量部中、70質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が最も好ましく、95質量部以上が尚更好ましい。本実施形態の(メタ)アクリレートにおいて、(A)、(B)、(C)の合計の含有量は、(メタ)アクリレート100質量部中、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上が最も好ましく、100質量部が尚更好ましい。
【0070】
(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレートとしては、非環式であり、かつ、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい(以下、(メタ)アクリレートモノマーを(メタ)アクリレートということもある。)。(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、式(1)、(2)又は(3)で表される非環式多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0071】
【化1】
【0072】
【化2】
【0073】
【化3】
【0074】
【化4】
【0075】
(式中、R1は独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は式(4)で表される基を示し、式(1)〜(3)においてR1の少なくとも3つは式(4)で表される基であり、R2は水素原子又は炭素数1以上のアルキル基を示し、R3は独立に水素原子又はメチル基を示し、mは0〜10の整数である。)。
【0076】
式(1)、(2)又は(3)で表される非環式多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、低透湿性とインクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性への効果が大きい点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0077】
(A)3官能以上の非環式多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、1〜70質量部であることが好ましく、3〜70質量部であることがより好ましい。(A)の含有量が1質量部未満であると低透湿性の点で劣り、70質量部を超えると組成物の粘度と表面張力が高くなりすぎるため、インクジェット塗布後の平坦性が低下する。低透湿性とインクジェット塗布後の平坦性との両立の点で、7〜60質量部が好ましく、9〜55質量部がより好ましい。また、インクジェット塗布後の平坦性と硬化率の低さに特化した場合、1〜10質量部の範囲にあることが好ましく、3〜10質量部の範囲にあることがより好ましい。
【0078】
(B)非環式2官能(メタ)アクリレートとしては、非環式であり、かつ、2官能の多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。(B)非環式2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、低透湿性とインクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性への効果が大きい点で、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。アルカンジオールジ(メタ)アクリレートの中では、α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。アルカンの炭素数は6以上が好ましい。アルカンの炭素数は12以下が好ましい。α,ω−直鎖アルカンジオールジ(メタ)アクリレートの中では、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0079】
(B)非環式2官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、15〜98質量部含有することが好ましく、15〜95質量部含有することがより好ましく、20〜95質量部含有することが最も好ましい。(B)の含有量が15質量部未満であると低透湿性の点で劣り、98質量部を超えると表面張力が高くなりすぎインクジェット塗布後の平坦性が低下する。低透湿性とインクジェット塗布後の平坦性との両立の点で、25〜75質量部が好ましく、40〜72質量部がより好ましい。一方、インクジェット塗布後の平坦性と硬化率の低さに特化した場合、85〜98質量部の範囲にあることが好ましく、85〜95質量部の範囲にあることがより好ましい。
【0080】
(B)非環式2官能(メタ)アクリレートは、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートを含有することが好ましい。非環式2官能メタクリレートは低透湿性の点で効果が大きい。非環式2官能アクリレートはインクジェット塗布後の平坦性への効果が大きい。低透湿性とインクジェット塗布後の平坦性を両立させる点で、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートの含有比率は、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートの合計100質量部中、質量比で、非環式2官能メタクリレート:非環式2官能アクリレート=10〜90:90〜10が好ましく、25〜75:75〜25が好ましく、40〜60:60〜40が最も好ましい。
【0081】
(C)単官能(メタ)アクリレートとしては、単官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0082】
(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーの中では、インクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性への効果が大きい点で、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートの中では、アルキル基の炭素数が8以上であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの中では、アルキル基の炭素数が16以下であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル基の炭素数が8以上16以下であるアルキル(メタ)アクリレートの中では、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の中では、非置換の飽和炭化水素基が好ましい。飽和炭化水素基の中では、鎖式化合物が好ましい。
【0083】
(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーの中では、低透湿性の点で、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。脂環式炭化水素基としては、ジシクロペンタニル基やジシクロペンテニル基等のジシクロペンタジエン骨格を有する基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、シクロデカトリエン基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらの中では、ジシクロペンタジエン骨格を有する基が好ましい。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートの中では、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上がより好ましく、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。脂環式炭化水素基の中では、非置換が好ましい。
【0084】
(C)単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、1〜40質量部含有することが好ましく、2〜40質量部含有することがより好ましい。(C)の含有量が1質量部未満であると表面張力が高くなりすぎインクジェット塗布後の平坦性が低下し、40質量部を超えると低透湿性の点で劣る。インクジェット塗布後の平坦性と低透湿性との両立の点で、1〜30質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましく、7〜20質量部が最も好ましく、7〜10質量部の範囲にある方が尚更一層好ましい。
【0085】
(C)単官能(メタ)アクリレートは、単官能メタクリレートと単官能アクリレートを含有することが好ましい。単官能メタクリレートは低透湿性の点で効果が大きい。単官能アクリレートはインクジェット塗布後の平坦性への効果が大きい。低透湿性とインクジェット塗布後の平坦性を両立させる点で、単官能メタクリレートと単官能アクリレートの含有比率は、単官能メタクリレートと単官能アクリレートの合計100質量部中、質量比で、単官能メタクリレート:単官能アクリレート=5〜95:95〜5が好ましく、25〜75:75〜25が好ましく、40〜60:60〜40が最も好ましい。
【0086】
本実施形態の組成物においては、インクジェット吐出性の点で、(メタ)アクリレートはモノマーが好ましい。(A)、(B)、(C)は、特にモノマーが好ましい。モノマーの分子量は、1000以下が好ましい。インクジェット吐出性の点で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーは、組成物100質量部中、3質量部以下含有することが好ましく、1質量部以下含有することが好ましく、含有しないことが最も好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとは、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能(メタ)アクリレートポリマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと多官能(メタ)アクリレートポリマーの混合物からなる群の1種以上が好ましい。
【0087】
(D)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために使用するものである。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、フェニル−グリオキシリックアシッド−メチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。光重合開始剤は1種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、硬化させる時に390nm以上の可視光線のみを用いて硬化させることができ、有機エレクトロルミネッセンス表示素子にダメージを与えないで硬化させることができる点で、アシルホスフィンオキサイド誘導体が好ましい。アシルホスフィンオキサイド誘導体の中では、ディスプレイとした時に可視光線での透過性が低下せずに、395nm以上の光のみを用いて硬化させることができる点で、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドが最も好ましい。
【0088】
(D)光重合開始剤の含有量は、(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して、0.05〜6質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜4質量部が最も好ましい。0.05質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られるし、6質量部以下であれば、ディスプレイとした時に可視光線での透過性が低下することも無い。
【0089】
本実施形態の組成物から得られる硬化体のガラス転移温度は、200℃以上が好ましい。硬化体のガラス転移温度が200℃以上だと、本実施形態の組成物の硬化体上に無機パッシベーション膜を、CVD等の手法によって成膜する際に、熱膨張により無機パッシベーション膜の成膜ムラによるピンホールの発生が起こらなくなり、有機EL素子の信頼性が向上する。
【0090】
本実施形態の組成物から得られる硬化体のガラス転移温度の測定方法は特に制限はないが、DSCや動的粘弾性スペクトル等の公知の方法で測定され、好ましくは動的粘弾性スペクトルが用いられる。動的粘弾性スペクトルでは、該硬化体に昇温速度一定で応力及び歪みを加え、損失正接(以下、tanδと略す)のピークトップを示す温度をガラス転移温度とすることができる。−150℃程度の十分に低い温度からある温度(Ta℃)まで昇温してもtanδのピークが現れない場合、ガラス転移温度としては、−150℃以下若しくはある温度(Ta℃)以上と考えられるが、ガラス転移温度が−150℃以下である組成物はその構造故に考えられないため、ある温度(Ta℃)以上とすることができる。
【0091】
本実施形態の組成物は、貯蔵安定性向上のために、重合禁止剤を使用できる。
【0092】
本実施形態の組成物は、樹脂組成物として使用できる。本実施形態の組成物は、(メタ)アクリル系樹脂組成物として使用できる。本実施形態の組成物は、光硬化性樹脂組成物として使用できる。本実施形態の組成物は、被覆剤や接着剤として使用できる。本実施形態の組成物は、有機EL表示素子用封止剤として使用できる。
【0093】
可視光線又は紫外線を照射して、組成物を硬化させる方法としては、組成物に可視光線又は紫外線の少なくとも一方を照射して硬化する方法等が挙げられる。このような可視光線又は紫外線を照射するためのエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等のエネルギー照射源が挙げられる。本実施形態の組成物は、有機EL素子にダメージを与えづらい点で、380nm以上の波長で硬化させることが好ましく、395nm以上の波長で硬化させることがより好ましく、395nmの波長で硬化させることが最も好ましい。エネルギー照射源の波長としては、赤外光を発光することにより照射部の温度が上がり、有機EL素子にダメージを与える可能性が生じるため、500nm以下であることが好ましい。エネルギー照射源としては、発光波長が短波長であるLEDランプが好ましく、例えば発光ピーク波長が395nmであるLEDランプがより好ましく使用できる。
【0094】
可視光線又は紫外線を照射して、組成物を硬化させる際は、波長395nmにおいて100〜8000mJ/cm2のエネルギーを組成物に照射し硬化させる。100〜8000mJ/cm2であれば組成物が硬化し、十分な接着強度が得られる。100mJ/cm2以上であれば組成物が十分に硬化し、8000mJ/cm2以下であれば有機EL素子にダメージを与えない。組成物を硬化させる際のエネルギー量は、300〜2000mJ/cm2がより好ましい。
【0095】
本実施形態の組成物の粘度は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。粘度が2mPa・s未満であると、塗工した有機EL表示素子用封止剤が、硬化前に有機EL表示素子から流出する場合がある。粘度が50mPa・sを超えると、インクジェットによる塗布が困難となる場合がある。組成物の粘度は5mPa・s以上が好ましい。組成物の粘度は20mPa・s以下が好ましい。
【0096】
本実施形態の組成物の透明性は、有機物膜の厚さが1μm以上10μm以下のとき、360nm以上800nm以下の紫外−可視光線領域の分光透過率が97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。97%以上であれば、輝度、コントラストに優れた有機EL装置を提供することができる。
【0097】
本実施形態の組成物からなる封止層は、無機/有機積層体を1セットとして数えると、1〜5セットであることが好ましい。無機/有機積層体が6セット以上の場合には、有機EL素子に対する封止効果が5セットの場合とほぼ同じとなるからである。無機/有機積層体の無機物膜の厚さは、50nm〜1μmが好ましい。無機/有機積層体の有機物膜の厚さは1〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。有機物膜の厚みが1μm未満であると、素子形成時に発生するパーティクルを完全に被覆できず、無機物膜上に平坦性良く塗布することが難しい場合がある。有機物膜の厚みが15μmを超えると、有機物膜の側面より水分が侵入し、有機EL素子の信頼性が低下する場合がある。
【0098】
封止基板は、封止層の最上位有機物膜の上面全体を覆うように密着して形成される。この封止基板としては、前述の基板が挙げられる。これらの中では、可視光線に対して透明な基板が好ましい。可視光線に対して透明な基板(透明封止基板)の中では、ガラス基板、プラスチック基板からなる群のうちの1種以上が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0099】
透明封止基板の厚さは、1μm以上1mm以下が好ましく、50μm以上300μm以下がより好ましい。透明封止基板を封止層の更に上層に設けることによって、最上位有機物膜の表面が気体に触れると進行する劣化を抑えることができ、有機EL装置のバリア性を高めることができる。
【0100】
次に、このような構成を有する有機EL装置の製造方法について説明する。まず、第1の基板上に、従来公知の方法によって、所定の形状にパターニングした陽極、発光層を含む有機EL層、及び陰極を順に形成して、有機EL素子を形成する。例えば、有機EL装置をドットマトリックス表示装置として使用する場合、発光領域をマトリックス状に区切るためにバンクが形成され、このバンクで囲まれる領域に発光層を含む有機EL層が形成される。
【0101】
次いで、有機EL素子が形成された基板上に、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等のCVD法等の成膜方法によって、所定の厚さを有する第1の無機物膜を形成する。その後、溶液塗布法やスプレー塗布法等の塗膜形成方法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等を用いて、第1の無機物膜上に本実施形態の組成物を付着させる。これらの中では、インクジェット法が好ましい。その後、紫外線や電子線、プラズマ等のエネルギー線の照射によって、組成物が硬化し、第1の有機物膜が形成される。以上の工程によって、1セットの無機/有機積層体が形成される。
【0102】
以上に示される無機/有機積層体の形成工程が、所定の回数だけ繰り返される。但し、最後のセット、即ち最上層の無機/有機積層体に関しては、上面が平坦化するように組成物を、塗布法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等によって、無機物膜の上面に付着させても良い。
【0103】
次いで、基板上の組成物を付着させた面に、透明封止基板を貼り合わせる。貼り合わせの際、位置合わせを行う。その後、透明封止基板側から、エネルギー線を照射することによって、最上層の無機物膜と透明封止基板との間に存在する、本実施形態の組成物を硬化させる。これによって、組成物が硬化し、最上位有機物膜を形成すると共に、最上位有機物膜と透明封止基板とが接着される。以上によって、有機EL装置の製造方法が終了する。
【0104】
無機物膜上に組成物を付着させた後、部分的にエネルギー線を照射して重合させてもよい。このようにすることで、透明封止基板を載置したときに、最上位有機物膜となる組成物の形状の崩れを防止することができる。無機物膜と有機物膜の厚さは、各無機/有機積層体で同じにしてもよいし、各無機/有機積層体で異なっていてもよい。
【0105】
上述した説明では、トップエミッション型の有機EL装置を例に挙げて説明した。有機EL層で生じる光を基板側から出射するボトムエミッション型の有機EL装置にも、本実施形態を適用することができる。
【0106】
本実施形態の有機EL素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置として用いることができる。
【0107】
本実施形態の実施の形態によれば、第1のプラスチック基板上に形成された有機EL素子を外気と遮断するための封止層を形成し、更にその封止層上に透明封止基板を配置したので、有機EL素子に対する十分な水蒸気と酸素に対するバリア性を有する封止構造を得ることができる。本実施形態の実施の形態によれば、透明封止基板と封止層との間で十分な接着強度を有する封止構造を得ることができる。
【0108】
本実施の形態によれば、封止層の最上位有機物膜を構成する本実施形態の組成物を付着させた後に、組成物を硬化させることなく透明封止基板を載置して、その後に組成物を硬化させるようにしたので、封止層を構成する最上位有機物膜の形成と同時に、封止層と透明封止基板との間の接着を行うことができる。その結果、本実施形態は、封止層と透明封止基板とを接着剤で接着する場合に比して、工程を簡略化できるという効果を有する。
【0109】
本実施形態の組成物は、JIS Z 0208:1976に準拠して、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度の値が、250g/m2以下であることが好ましい。上記透湿度が250g/m2を超えると、有機発光材料層に水分が到達し、ダークスポットが発生することがある。
【0110】
本実施形態によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、硬化性、硬化物の透明性及びバリア性に優れる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。本実施形態によれば、有機EL表示素子用封止剤を用いた有機EL表示素子の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0111】
(実験例1〜15)
以下の方法により組成物を作製し、評価した。
【0112】
(組成物の作製)
表1の使用材料を用いた。表2の組成で各使用材料を混合して、組成物を調製した。得られた組成物を使用して、以下に示す評価方法にてE型粘度、透湿度、塗布面積の拡大率、硬化率、透明性、ガラス転移温度、有機EL評価の測定を行った。結果を表2に示す。表2の組成物名には、表1に示す略号を用いた。
【0113】
〔E型粘度〕
組成物の粘度はE型粘度計を用い、1°34’×R24のコーンローター、温度25℃、回転数100rpmの条件下で測定した。
【0114】
〔光硬化条件〕
組成物の硬化物性の評価に際し、下記光照射条件により、組成物を硬化させた。395nmの波長を発光するLEDランプ(HOYA社製UV−LED LIGHT SOURCE H−4MLH200−V1)により、395nmの波長の積算光量1,500mJ/cm2の条件にて、組成物を光硬化させ、硬化体を得た。
【0115】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で測定した。
【0116】
〔硬化率〕
各実験例で得られた組成物に対して、上記インクジェット装置を使用して10μmの厚みとなるように上述の方法で洗浄した無アルカリガラス上に、組成物を10mm×10mmの大きさに塗布し、酸素濃度0.1%未満の窒素雰囲気中にて前記光硬化条件で硬化させ、硬化率を以下の手順で測定した。 硬化後の上記組成物及び硬化前の上記組成物に、赤外分光装置(サーモサイエンティフィック社製、Nicolet is5、DTGS検出器、分解能4cm-1)を用い、該測定試料に赤外光を入射して赤外分光スペクトルを測定した。得られた赤外分光スペクトルにて、硬化前後でピーク変化を生じない、2950cm-1付近に観測されるメチレン基の炭素−水素結合の伸縮振動ピークを内部標準とし、この内部標準の硬化前後のピーク面積と、(メタ)アクリレートの炭素−炭素二重結合に結合する炭素−水素結合の面外変角振動のピークに帰属される、810cm-1付近のピークの硬化前後の面積から、次式を用い硬化率を算出した。
硬化率(%)=[1−(Ax/Bx)/(Ao/Bo)]×100
ここで、
Ao:810cm-1付近の硬化前のピーク面積を表す。
Ax:810cm-1付近の硬化後のピーク面積を表す。
Bo:2950cm-1付近の硬化前のピーク面積を表す。
Bx:2950cm-1付近の硬化後のピーク面積を表す。
【0117】
〔透明性〕
各実験例で得られた組成物をそれぞれ25mm×25mm×1mmtのガラス板(無アルカリガラス、Corning社製 Eagle XG)2枚の間に10μmの厚みに形成し、LEDランプを用いて波長395nmの紫外線を照射量が1500mJ/cm2となるように照射することにより硬化させて硬化体を得た。得られた硬化体について、紫外−可視分光光度計(島津製作所社製「UV−2550」)にて380nm、412nm、800nmの分光透過率を測定し、透明性とした。
【0118】
〔ガラス転移温度〕
各実験例で得られた組成物を、1mm厚のシリコンシートを型枠とし、PETフィルムに挟み込んだ。該組成物を、前記光硬化条件にて、上面から硬化させた後、更に下から前記光硬化条件にて、硬化させ、厚さ1mmの該組成物の硬化体を作製した。作製した硬化体をカッターにて長さ50mm幅5mmに切断し、ガラス転移温度測定用硬化体とした。得られた硬化体をセイコー電子産業社製、動的粘弾性測定装置「DMS210」により、窒素雰囲気中にて前記硬化体に1Hzの引張方向の応力及び歪みを加え、昇温速度毎分2℃の割合で−150℃から200℃まで昇温しながらtanδを測定し、該tanδのピークトップの温度をガラス転移温度とした。tanδのピークトップはtanδが0.3以上の領域における最大値とした。tanδが−150℃から200℃の領域で0.3以下であった場合、tanδのピークトップは200℃を超えるとし、ガラス転移温度は200℃を超える(200<)とした。
【0119】
〔塗布面積の拡大率〕
各実験例で得られた組成物を70mm×70mm×0.7mmtの基材(無アルカリガラス(Corning社製 Eagle XG))上にインクジェット吐出装置(武蔵エンジニアリング社製MID500B、溶剤系ヘッド「MIDヘッド」)を用いて4mm×4mm×10μmtとなるようにパターン塗布した。無アルカリガラスは使用前に、アセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄し、その後にテクノビジョン社製UVオゾン洗浄装置UV−208を用いて5分間洗浄した。パターン塗布後に雰囲気温度23℃、相対湿度50%の条件で5分間放置し、塗布面積の拡大率(下記式参照)によりインクジェット塗布後の平坦性を評価した。塗布面積の拡大率が大きい程、インクジェット塗布後の平坦性に優れ、塗布性が大きい。
(塗布面積の拡大率)=((パターン塗布してから5分後に、基材表面に接触した組成物の接触面積)/(パターン塗布直後の、基材表面に接触した組成物の接触面積))×100(%)
【0120】
〔有機EL評価〕
【0121】
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板を、アセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極 ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層 銅フタロシアニン
・正孔輸送層 N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン(α−NPD)
・発光層 トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å、発光層は電子輸送層としても機能する。
・電子注入層 フッ化リチウム
・陰極 アルミニウム、陽極の膜厚250nm
【0122】
〔有機EL素子の作製〕
各実験例で得られた組成物を、窒素雰囲気下にて上記インクジェット装置を用いて2mm×2mmの有機EL素子基板上に厚み10μmで塗布し、前記光硬化条件にて、この組成物を硬化させた後、該硬化体の全体を覆うように、4mm×4mmの開口部を有するマスク(覆い)を設置し、プラズマCVD法にてSiN膜を形成して有機EL表示素子を得た。形成されたSiNの厚さは、約1μmであった。その後、4mm×4mm×25μmtの透明な基材レス両面テープを用いて4mm×4mm×0.7mmtの無アルカリガラス(Corning社製 Eagle XG)と貼り合わせ、有機EL素子を作製した(有機EL評価)。
【0123】
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0124】
〔耐久性〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。ダークスポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことが最も好ましい。
【0125】
上記実験例から以下のことが判った。
本実施形態は、高精度なインクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性に優れ、低透湿性、透明性、耐久性(長期耐久性を含む)に優れた組成物を提供できる。(B)として、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートを併用し、(C)として、ラウリル(メタ)アクリレートもしくはn−オクチルアクリレートを使用した場合、低透湿性、耐久性(長期耐久性を含む)が優れる(実験例1〜4)。(B)として、非環式2官能メタクリレートと非環式2官能アクリレートを併用しない場合、塗布面積の拡大率が大きく、塗布性が優れる(実験例5〜11)。(C)として、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートを使用した場合、低透湿性が優れる(実験例6)。(A)3〜10質量部、(B)85〜95質量部、および(C)2〜10質量部という条件を満たした場合には、硬化率の低さと塗付後の平坦性に優れた(実験例12)。(C)を使用しない場合、インクジェットによる塗布ができなかった(実験例13)。(B)を使用しない場合、インクジェットによる塗布ができなかった(実験例14)。(A)を使用しない場合、低透湿性、長期耐久性が得られなかった(実験例15)。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本実施形態の組成物は、高精度なインクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性に優れ、低透湿性、透明性を有し、有機EL素子を劣化させない。本実施形態は、短時間でインクジェット塗布ができる。本実施形態の組成物は、エレクトロニクス製品、特に、有機EL等のディスプレイ部品や、CCD、CMOSといったイメージセンサー等の電子部品、更には半導体部品等で用いられる素子パッケージ等の接着において、好適に適用できる。特に、有機EL封止用の接着において最適であり、有機EL素子等の素子パッケージ用接着剤に要求される特性を満足する。
【0129】
上記組成物は本実施形態の一態様であり、本実施形態の接着剤、有機EL素子用封止剤、硬化体、被覆体、接合体、有機EL装置、ディスプレイ、それらの製造方法等も、同様の構成および効果を有する。