(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生体認証装置は、前記生体情報として前記ユーザの心電図を用いて前記生体情報測定部、前記特徴量抽出部、前記変動パタン抽出部、前記テンプレート管理部、前記テンプレート登録判定部、前記認証部の処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
最初に、心電図について、
図5を用いて簡単に説明する。心電図とは、心臓の電気的活動を体表面から波形として記録したものであり、心臓の動きを表現したものである。心電図は、縦軸を電位(mV)、横軸を時間(ms)として示される。
図5の(B)に、心電図の基本波形を示す。心電図の波形には、P波(541)、Q波(542)、R波(543)、S波(544)、T波(545)、U波(546)という波が現れる。Q波(542)、R波(543)、S波(544)を併せた波をQRS波(547)という。それぞれの波は高さと時間幅を持つ。
【0020】
図5(B)の心電図の基本波形は、心臓の鼓動1回分を示したものである(P波の始まりから次のP波の始まりまで)。従って、生体の心電図測定の結果は、
図5の(B)に示したような波形が連続的に繰り返されたものとなる。P波の始まりから次のP波の始まりを結んだ直線のことを基線(548)という。基線より上に現れる波形は陽性波形、下に現れる波形は陰性波形という。心電図波形の中でR波がもっとも高い波となるため、R波は心電図波形分析の際の参照ポイントとなる。
【0021】
生体認証における心電図の波形分析では、これら基本波形の波を参考にして波形を分析する。体調の変化や疾患の発症によりこれら波の振幅や時間幅が変化する場合がある。また一部の波が消失する場合もある。
<生体認証装置の機能ブロックの説明(
図1)>
【0022】
図1は、本実施例の生体認証装置の機能ブロック図である。
【0023】
本実施例の生体認証装置(101)は、心電図を測定する生体情報測定部(102)、測定された心電図を測定時刻に対応付けて記憶する生体情報格納部(103)、生体情報から一定周期分の生体情報を読み込んで波形の特徴量を抽出し、平均値あるいは中央値を算出し、ユーザにとって通常であり、典型的なあるいは標準的な範囲の波形の特徴量の平均値あるいは中央値となるテンプレート(第1のテンプレート)を生成する特徴量抽出部(104、以下では説明の簡易化のため平均値を求める場合について説明する)、前記特徴量抽出部(104)と連携して記憶された生体情報から変動パタンを抽出し、その変動パタンの特徴量(平均値あるいは中央値、これを第1のテンプレートと区別して、第2のテンプレート)を求める生体情報変動パタン抽出部(106、以下では説明の簡易化のため平均値を求める場合について説明する)、前記特徴量抽出部(104)及び生体情報変動パタン抽出部(106)で求めた特徴量の平均値をテンプレートとして登録するテンプレート管理部(105)、抽出された生体情報の変動パタンの特徴量の登録可否を決定するテンプレート登録判定部(107)、前記生体情報を用いて個人を認証する本人認証部(115)、ユーザが操作を行うための操作部(108)、外部の機器と通信を行う通信部(109)、ユーザに各種情報の表示を行う表示部(110)、を有して構成される。以下、単にテンプレートと記載した場合には第1のテンプレート、第2のテンプレートを含むものとする。
【0024】
生体認証装置(101)は、心電図を使用した認証機能と心電図をヘルスケア情報として測定/記録する機能の両方の機能を備える。心電図をヘルスケア情報として測定/記録する機能も、生体情報測定部(102)と生体情報格納部(103)により実現される。また、生体認証装置(101)は、ヘルスケア用途も兼ねることから、認証を目的として生体情報を測定した場合においても必ず測定情報を生体情報格納部(103)に記録する。また、ヘルスケア用途での体調分析にも活用可能なように、生体情報を測定する際には、測定時刻も併せて記録する。
<生体認証装置のハードウェア構成の説明(
図2)>
【0025】
次に
図2を用いて、
図1で説明した生体認証装置(101)のハードウェアの構成について説明する。
【0026】
生体認証装置(101)は、心電図の電位を測定するための電極(プラスとマイナス)(201)、電極で取得した電位から心電図信号を獲得する獲得モジュール(202)、本生体認証装置(101)の機能ブロックに係る全ての動作を制御するCentral Processing Unit(CPU)(203)、本生体認証装置(101)に係る全てのプログラムおよび各機能ブロックで使用する各種データ、生体情報の測定結果を記憶する記憶装置(204)、前記プログラム及び各種データを記憶装置(204)より読み出して一時的に記憶したり、キャッシュやワークメモリとして使用するRandom Access Memory (RAM)(205)、電極で測定したアナログの電位信号をディジタル信号に変換するAnalog to Digital Converter(ADC)(206)、生体情報測定時の時刻の計測やタイマー設定などに使用するためのTimer(207)、外部機器と通信するための有線/無線の通信モジュール(208)、ユーザが操作するあるいはユーザに情報を提供するための操作/表示用ディスプレイ(209)、を有して構成される。
【0027】
電極(201)、獲得モジュール(202)、CPU(203)、RAM(205)、ADC(206)、Timer(207)、記憶装置(204)が、生体認証/測定部の機能ブロック(116)に対応し、通信モジュール(208)は通信部(109)に対応し、操作/表示用ディスプレイ(209)は操作部(108)及び表示部(110)に対応する。
<一般的な認証処理のフロー(
図3、4、5)>
【0028】
次に
図4、
図5を用いて、心電図技術を用いた認証処理の一般的なフローを示す。認証処理は、大きくテンプレート登録フローと検証フローからなる。これらの処理は、生体認証装置(101)により行われる。まず初めに、テンプレート登録フローについて説明する。
【0029】
テンプレート登録フロー(401)では、生体情報測定部(102)は、心電図信号を測定(402)すると、その信号を前処理(403)で品質チェックを行う。次に、生体情報測定部(102)は、心電図抽出(404)において心電図の波形抽出を行う。心電図抽出(404)では心電図のQRS波形(547)が抽出され、P波(541)とT波(545)が抽出される。次に、特徴量抽出部(104)は、特徴抽出(405)において波形中の特徴量を抽出する。抽出される主な特徴量は、波形中の間隔、振幅、そして角度である。以下図を用いて抽出する特徴量を説明する。
【0030】
図5の(A)に、抽出される波形の間隔を示す。図中に示される、間隔RP(501、P波ピークとR波ピークの間隔)、RP_L(502、P波の始まりとR波のピークとの間隔)、RT_R(503、R波のピークとT波の終わりまでの間隔)、RP_R(504、P波の終わりからR波のピークまでの間隔)、RT_L(505、R波のピークからT波の始まりまでの間隔)、PR_S(506)、ST_S(507)、PR_I(508)、ST_I(509)、RQ(510、Q波のピークからR波のピークまでの間隔)、RS(511、R波のピークからS波のピークまでの間隔)、QT(512)に加えR波の間隔を示すRR_Iを加える。
【0031】
図5の(B)に、抽出される波形の振幅の種類を示す。R波ピークから、P波、Q波、S波、T波のピークの間の振幅を示すRP_A(520)、RQ_A(521)、RS_A(522)、RT_A(523)の4つがある。
【0032】
図5の(C)に、抽出される波形の角度の種類を示す。抽出される角度には、P波−Q波−R波の間の角度(530、AN_Qとした)、Q波−R波−S波の間の角度(531、AN_Rとした)、R波−S波−T波の間の角度(532、AN_Sとした)がある。特徴抽出(405)では、特徴量抽出部(104)及び生体情報変動パタン抽出部(106)が波形の特徴量を抽出するとともに、それらの特徴量の平均値を算出し、テンプレート管理部(105)がその結果をテンプレートとして登録する。生体情報変動パタン抽出部(106)の動作については、
図17を用いて後述する。
【0033】
図3を用いてテンプレート登録までの処理の概要を説明する。特徴量抽出部(104)は、生体情報測定部(102)が測定した波形(301)からRピークを検出(302)し、波形を1つ1つの波形に分割する(303)。特徴量抽出部(104)は、この時分割した波形はR波などを参照ポイント(304)にして波形をそろえる(303)。その後、特徴量抽出部(104)及び生体情報変動パタン抽出部(106)は、波形ごとに特徴量を抽出しさらに抽出した特徴量についての平均値を求め(305)、テンプレート管理部(105)は、その結果をテンプレートとして登録する(306、406)。波形ごとの特徴量の平均値を求めるところも
図4の特徴抽出(405)及び生体情報変動パタン抽出部(106)で行われる。
【0034】
次に、心電図の検証フローについて説明する。検証フローでは、生体情報測定部(102)は、心電図信号を測定する(407)と、その信号を前処理(408)で品質チェックを行う。次に、特徴量抽出部(104)は、心電図抽出(409)において心電図の波形抽出を行う。心電図抽出では心電図のQRS波形が抽出され、P波とT波が抽出される。次に、特徴量抽出部(104)は、特徴抽出(410)で波形中の特徴量を抽出する。抽出される主な特徴量は、波形中の間隔、振幅、そして角度である。特徴抽出(410)の処理内容は、テンプレート登録フローで説明した内容と同様である。
【0035】
一般に、テンプレート登録時に使用する波形の数の方が検証時に使用する波形の数よりも多い。テンプレートは、より平均的な値を出すために多くの波形を使用して作成される。一方、検証フローでは、検証時間を短くするために検証に使用する波形の数をできるだけ少なく設定している。照合(411)では、本人認証部(115)が、特徴抽出で求められた特徴量と、テンプレートとして登録されている特徴量とを照合し、認証の結果を出す。照合に際しては、テンプレートの値との差が、設定されている閾値以内に収まった場合に認証OKとする。設定された閾値以内に収まらなかった場合には、認証失敗とする。
<本実施例の認証フローと上記一般な認証フローとの対応>
【0036】
ここで、生体認証装置(101)では、
図4の心電図信号の測定(402)から前処理(403)、心電図抽出(404)までの流れを生体情報測定部(102)で行っている。また、
図4で説明したテンプレート登録のフローの特徴量抽出(405)からテンプレート登録(406)まで流れは、生体情報格納部(103)からテンプレート管理部(105)までの波線の矢印(登録フローA)で示された流れとなり、それぞれ、特徴量抽出部(104)、テンプレート登録判定部(107)で実行される。
【0037】
同様に、
図4の検証フロー(412)の特徴抽出(410)から照合(411)に該当する箇所は、
図1の実線で示した処理の流れとなり、それぞれ、特徴量抽出部(104)、本人認証部(115)で実行される。すなわち、特徴量抽出部(104)が、生体情報格納部(103)から測定した波形データを取得し、その波形データを特徴量抽出(104)の入力とし、特徴抽出(104)で特徴量を求める。本人認証部(115)は、特徴量抽出(104)で抽出された特徴量と、テンプレート管理部(105)が登録するテンプレートの特徴量(
図8)とを照合し、特徴量の差が閾値内であれば、認証OKとなり、閾値を越える場合は認証失敗となる。
<生体情報格納部が管理するデータ構成(
図7)>
【0038】
次に、
図7を用いて、生体情報格納部(103)が記憶する生体情報管理テーブル(700)の構成について説明する。生体情報管理テーブル(700)は、ユーザの生体測定情報(例えば、心電図)が記録されたテーブルであり、生体情報測定部(102)が取得した心電図波形と測定時の測定時刻とが対応付けて記録されている。
【0039】
図7に、生体情報管理テーブル(700)の例を示す。生体情報管理テーブル(700)には、心電図の測定開始時刻(701)と測定修了時刻(702)を記録する項目と測定データ(703)を記録する項目がある。測定データは、例えば40msごとの電位を記録する。電位を記録するための間隔は、ヘルスケア用と認証用に十分な精度の波形を記録するために必要な間隔であればよく、40msに限定されるものではない。
<テンプレート管理部が管理するデータ構成(
図8、
図9)>
【0040】
次に、
図8、
図9を用いて、テンプレート管理部(105)が管理する1つ以上のテンプレート(800)、およびテンプレート管理テーブル(900)について説明する。生体認証装置(101)は、ヘルスケア用途も兼ねることから、テンプレート管理部(105)は、テンプレート(
図8)を登録するとともに、テンプレートの元データとなる心電図を測定した時刻も併せてテンプレート管理テーブル(900)に記録する。
【0041】
図8に、テンプレート管理部(105)に記憶するテンプレート(800)の例を示す。テンプレート(800)には、
図5の(A)、(B)、(C)で説明した、波形内の特徴(間隔801、振幅802、角度803)ごとに、その特徴量の平均値が記述される。特徴変数(805)は、それぞれ、
図5の(A)(間隔の特徴)、(B)(振幅の特徴)、(C)(角度の特徴)で説明した特徴量となる。間隔の単位は「ms」、振幅の単位は「mV」、角度の単位は「°」となる(807)。
【0042】
生体認証装置(101)は、複数のテンプレートを登録することを特徴としているため、テンプレート(800)を識別するための識別子(804)を示す番号も記録される。登録されたテンプレート(800)に関するデータは、後述のテンプレート管理テーブル(900)に登録する。
【0043】
図9に、テンプレート管理テーブル(900)の構成を示す。テンプレート管理テーブル(900)は、テンプレート(800)のIDであるテンプレートNo(901)、テンプレートを求める際に使用した心電図波形を測定した時刻(測定開始時刻902と測定終了時刻903)、照合処理で使用された回数を示す使用頻度(904)を含む。
<テンプレート登録判定部が管理するデータ構成(
図11、
図12、
図13)>
【0044】
次に、
図12、
図13を用いて、テンプレート登録判定部(107)が管理し、記憶装置(204)に記憶されるリスク評価テーブル(1200)、追加テンプレート最大値管理テーブル(1300)について説明する。
【0045】
図12は、リスク評価テーブル(1200)の例を示す。リスク評価テーブル(1200)は、心電図に基づいて判断されるユーザのリスクを評価するためのテーブルである。リスク評価管理テーブル(1200)は、年齢(1201)、身長(1202)、体重(1203)、疾患有無と種類(1204)、お酒、煙草、カフェインの摂取状況(1205)、薬の服用(1206)、運動(1207)、睡眠(1208)など、心電図により評価対象となる項目を含む。
【0046】
リスク評価管理テーブル(1200)の各項目の評価は、
図11に示す表示部(110)を介して表示した一連のユーザ情報登録画面からユーザにより設定された情報に基づき評価を行う。一連の登録画面では、年齢、身長、体重、疾患の有無と種類などのユーザの基本的な特徴を示すユーザ基本情報(1101)、お酒や煙草などの嗜好品の摂取状況(1102)、薬の服用状況(1103)、生活習慣の情報(1104)が、操作部(108)を介してユーザにより入力される。
【0047】
図11に記載した一連のユーザ情報登録画面は、ユーザが機器の使用開始時に表示され、ユーザによる情報の入力を促す(一連の初期設定の手続きについては後述する)。ここで、ユーザにより入力された結果は、表示画面に示したユーザ基本情報(1101)、嗜好品の摂取状況(1102)、薬の服用状況(1103)、生活習慣の情報(1104)に示された各テーブルと同様の構成で、テンプレート登録判定部(107)により記憶される。
【0048】
ここで、リスク評価管理テーブル(1200)の各項目の評価方法(1209)について説明する。年齢の項目では年齢によるリスクを評価する。一般に年齢が増すに従って不整脈などが増えることがわかっているため、年齢ごとにリスクを評価できるようにしている。例えば、不整脈は中高年でより発生することがわかっているため31歳から50歳はリスク評価+1、51歳から70歳はリスク評価+2、71歳以上はリスク評価+3とした(1210)。
【0049】
身長については、平均身長よりも低い場合に心疾患のリスクが高くなる傾向があるため、平均身長より10cm以上低い場合にリスク+1とした(1211)。
【0050】
体重については、平均よりも多い場合は心臓に負担がかかりやすくなるため、平均体重よりも+10kg以上の場合にリスク+1とした(1212)。
【0051】
疾患の有無と種類の項目では、心臓への影響がある疾患について調べリスクを評価できるようにしている。具体的には、心臓病、脳卒中、腎臓病、糖尿病、高血圧、高脂血症、貧血の有無を調べ、リスクを評価している。心臓病はリスク+3、脳卒中はリスク+2、腎臓病はリスク+2、糖尿病+2、高血圧リスク+2、高脂血症リスク+2、貧血リスク+1とした(1213)。
【0052】
また、嗜好品も心臓に影響を与えることが分かっているため、アルコール、煙草、カフェインの摂取状況を調べ、リスクを評価した。具体的には、1日1回以上アルコールを摂取する場合リスク+1、また1日のアルコールの摂取量30cc以上(日本酒1合、ビール大瓶1本に相当)には、 リスク+1とした(1214)。
【0053】
煙草については、喫煙頻度を調べ、喫煙頻度1日1回以上5回未満の場合はリスク+1、1日5回以上の場合はリスク+2とした(1215)。カフェインについては、カフェインの摂取頻度が1日1回以上の場合にリスク+1とした(1216)。
【0054】
また、薬服用状況についても調べリスクを評価するようにした。薬については種類ごとに心臓に影響の出やすいといわれているものを調査しリスクを評価する(1217)。
【0055】
運動に関しては、運動量が少ない人は虚血性心疾患にかかりやすいことがわかっているため、1日20分が20分以下の場合にリスク+1とした(1218)。
【0056】
睡眠に関しては睡眠不足も心臓に影響を与えることが分かっているため平均睡眠時間が5時間以下の場合はリスク+1とした(1219)。
【0057】
上記したリスク評価テーブルによる評価は、男女で体重や身長の平均値などが異なるため、男女別に行う。なお、各項目のリスク評価は一例でありこの例に限定されるものではない。
【0058】
次に、
図13を用いて、テンプレート(800)の登録数の最大値を記録する追加テンプレート最大値管理テーブル(1300)の例を示す。このテーブルでは、追加テンプレート数のデフォルト値(1301)と最大値(1302)とが記憶される。追加可能なテンプレート数(Na)は、デフォルトでは1(1303)に設定している。このため、リスク評価の結果0であった人でも新たに1つテンプレート登録可能である。
図13の例では、最大値として5を設定している(1304)。追加テンプレート最大値管理テーブル(1300)は、テンプレート登録判定部(107)が記憶装置(204)に登録する。
<本実施例の生体認証装置の実装例(
図22)>
【0059】
次に、
図22を用いて、生体認証装置(101)の実装例を説明する。本実施例では、以降のフローや画面の説明に
図22の生体認証装置の例を用いることとする。
図22の(A)と(B)は、リストバンド型のウェアラブル機器の実装例である。このウェアラブル機器は、本体(2201)、リストバンド(2202)を有し、本体部分には、ユーザが操作を行うあるいは、ユーザへの情報を表示するディスプレイ(2203)、生体情報測定部(102)の一例である電極(1つは本体の表面2204に、1つは背面に設置している
図22Bの2205)、電源ON/OFFするためのボタン(2206)、認証の状態を表示するためのLED(2207)を備えている。
<生体認証装置の初期登録フロー(
図1の登録フローA、
図10、
図6)>
【0060】
次に、
図10を用いて、生体認証装置(101)の
図1の登録フローAについて説明する。説明では、
図6を用いてユーザに表示するディスプレイ画面のイメージも使用する。
【0061】
図22の生体認証装置(101)は、本体(2201)の電源ボタン(2206)の電源ON操作を受け付ける(ステップ1001)。これにより生体認証装置(101)は、テンプレート(800)の登録を開始する画面をディスプレイ(2203)に表示(
図6の(A))する。画面では登録にかかる時間を表示する。当該時間は、例えば、生体認証装置(101)が、本処理を実行する都度、上記画面を表示してから登録完了までの処理時間をタイマー(207)により計測して不図示のメモリに蓄積しておき、過去の上記処理時間の平均値を算出して表示すればよい。製品出荷前にあらかじめ記憶装置(204)に保持しておいた時間(おおよその見積もり時間)を表示してもよい。
【0062】
次に、生体認証装置(101)は、テンプレート登録画面を表示し、ユーザにテンプレート(800)の登録を促す(
図6の(B))。当該画面には、ユーザによる操作のイメージが、上記登録を促すメッセージとともに表示される。生体認証装置(101)は、ユーザにより本体の電極(2204)に手が添えられたことを検知し、測定を開始する(ステップ1002)。
【0063】
生体認証装置(101)は、上記測定の途中、テンプレートを登録中である旨の画面を表示し、測定の残り時間を表示する(
図6の(C))。生体認証装置(101)は、所定時間(
図6の(A)では30秒)測定されたか確認し(ステップ1003)、所定時間測定されていれば(ステップ1003;Yes)、その測定された心電図の波形から特徴量を抽出して平均値を求める(ステップ1004)。
【0064】
次に、生体認証装置(101)は、その結果を初回テンプレートとして登録する(ステップ1005)。テンプレートの登録が完了すると、生体認証装置(101)は、登録完了の画面を表示する(
図6の(D))。
【0065】
次に生体認証装置(101)は、認証画面を表示し、前記登録したテンプレートを使用して認証できるか否かを確認するために、ユーザに対して認証の実行を促す(
図6の(E))。これに対し、生体認証装置(101)は、ユーザから再度本体(2201)の電極(2204)に手が添えられたことを検知すると、生体認証装置(101)は前記した検出フローを用いて認証を実施する(ステップ1006)。
【0066】
次に、生体認証装置(101)は、認証が成功したか確認する(ステップ1007)。ステップ1007の結果、認証が失敗した場合(ステップ1007;No)、生体認証装置(101)は、認証失敗の結果を表示し再度認証を促す(
図6の(F)の表示後、
図6の(E)を表示)。認証が失敗した場合は、生体認証装置(101)は、失敗回数をカウントしておき、認証失敗回数がN回以下か確認する(ステップ1011)。
【0067】
生体認証装置(101)は、失敗回数がN回以下であることを確認すると(ステップ1011;Yes)、再度認証を行う(ステップ1006)。生体認証装置(101)は、失敗回数がN回よりも多いことを確認すると(ステップ1011;No)、登録したテンプレートを破棄して(ステップ1012)処理を終了する(1010)。失敗許容回数Nは、生体認証装置側で任意に設定可能である。
【0068】
一方、ステップ1007の結果、認証が成功した場合(ステップ1007;Yes)、生体認証装置(101)は、認証成功の画面を表示し(
図6の(G))、ユーザに対して基本情報等の入力を促す画面を表示し(
図6の(H))、ユーザ基本情報等の設定画面を表示する(
図6の(I):登録画面の一部、
図11のユーザ基本情報(1101))。生体認証装置(101)は、ユーザから操作部(108)を介した基本情報等の入力を受け付ける(ステップ1008)。
【0069】
生体認証装置(101)は、全ての項目について入力が完了したか判定し(ステップ1009)、ユーザによる基本情報等の登録が完了すると(ステップ1009;Yes)、一連の初期登録処理を終了する(ステップ1010)。
【0070】
生体認証装置(101)は、ユーザによる基本情報等の登録が完了すると、その結果を画面に表示する(
図6の(J))。
【0071】
生体認証装置(101)は、全ての項目について入力が完了していないと判定すると(ステップ1009;No)、ステップ1006に戻る。
<生体認証処理の認証フローと生体情報の測定(
図1の検証フロー、
図14)>
【0072】
次に、
図14を用いて、
図1の検証フロー及び生体情報測定の方法について説明する。
【0073】
ユーザは
図22の生体認証装置(101)を装着し、生体認証装置(101)は、電源ボタン(2206)の電源ON操作を受け付ける(ステップ1401)。
【0074】
生体認証装置(101)は、
図15の(A)に示す画面を表示して認証を促す。生体認証装置(101)は、ユーザが電極(2204)に手を添えられたことを検知し、認証を開始する(ステップ1402)。生体認証装置(101)は、認証中である旨を通知する画面を表示する(
図15の(B)、認証にかかる残り時間も表示する)。
【0075】
生体認証装置(101)は、本人認証が成功したか否かを判定し(ステップ1403)、認証に失敗した場合(ステップ1403;No)は、処理を終了する。ただし、例えば、あらかじめ設定しておいた許容回数分、認証をリトライできるようにしてもよい。
図22の生体認証装置(101)は、認証に失敗した時には認証NGの画面(
図15の(C))を表示する。
【0076】
本人認証に成功した場合(ステップ1403;Yes)、生体認証装置(101)は、生体情報測定部(102)を用いて生体情報の測定を開始する(ステップ1404)。生体認証装置(101)は、測定開始の画面を表示し(
図15の(E))、測定中は測定時間などの情報を表示する(
図15の(F))。
【0077】
生体認証装置(101)が、ユーザが電極から手を放したことを検知すると、測定処理は終了し、測定した生体情報を記憶し(ステップ1405)、処理を終了する(ステップ1406)。なお、本人認証が終了した時点で測定を行わずに処理を中断することも可能である。その場合、本認証OKの画面(
図15の(D))が表示された直後に電極から指を離すようにする。
<タイマー設定を使用した時の認証と生体情報測定(
図15)>
【0078】
生体認証装置(101)は、
図14記載の認証フローおよび生体情報の測定を実施した後、以降は例えばタイマー(207)を用いて、定期的に認証や測定を実行する。
【0079】
生体認証装置(101)は、要求されるセキュリティーレベルの高さに応じて一定時間間隔ごとに、認証の実行を求めるようにしてもよい。
図22の生体認証装置(101)の例では、あらかじめ設定されていた時間になると、再認証の画面を表示し再認証を促す(
図15の(G))。
【0080】
また、生体認証装置(101)は、タイマーで設定された時間ごとに、生体情報の測定を促すようにしてもよい。タイマーで設定する時間は、例えば、生体情報格納部に測定データがない時間帯に設定してもよいし、不整脈や疾患が比較的起きやすい時間に設定してもよい。
図22の生体認証装置(101)の例では、あらかじめ設定されていた朝の時間になると、測定画面を表示し測定を促す(
図15の(H))。
<ユーザ指示による認証と生体情報測定(
図16)>
【0081】
次に、
図22の生体認証装置(101)を用いて、本人認証と生体情報測定をユーザが指示する場合の例を示す。
【0082】
生体認証装置(101)は、本人認証実施後、再認証及び生体情報の測定をすることができる。本人認証OKの状態は、装置装着中はその状態が継続するようにしてもよい。例えば、
図22の生体認証装置(101)において、本体裏側の電極(2205)からの電位が検知されている間は、装着中と判断してもよい。本人認証OKの状態は、生体認証装置(101)を外した時と電源がOFFになった場合破棄され、それまでは本人認証OKの状態が保持される。
【0083】
生体認証装置(101)は、装置装着中、認証OKの状態が継続している場合においても、再認証する場合や生体情報を測定する場合に、ユーザの指示により認証や生体情報の測定を可能にすることができる。
【0084】
図16の(A)に、認証OKの状態が継続している場合(本人認証後、生体認証装置を装着し続ける)のメイン画面の例を示す。画面には本人認証のための認証用アイコンと、心電図測定のための測定用アイコンが表示されている。この状態で、生体情報の測定を実施する場合には、ユーザは、表示されている測定用アイコンにタッチする(1601)ことにより、心電図の測定を開始することができる(
図16の(B))。本人認証についても同様に、認証用アイコンにタッチすることにより実施することができる。
<生体情報変動パタン抽出部の変動パタン抽出処理フロー(
図1の登録フローB、
図17)>
【0085】
次に、
図17を用いて、本実施例の特徴である生体情報変動パタン抽出部(106)で実行する変動パタン抽出処理内容について説明する。
【0086】
生体認証装置(101)の生体情報変動パタン抽出部(106)は、生体情報格納部(103)にあらかじめ設定しておいた時間分の生体情報が記憶された場合に、変動パタン抽出処理を開始する。心電図は、一日の活動の中で時間帯によって緩やかに変化する場合があることがわかっている。このため、数時間程度の生体情報が生体情報格納部(103)に蓄積されてから生体情報変動パタン抽出部(106)の処理を開始することが望ましい。ただし開始の目安となる生体情報の記憶時間を限定するものではない。
【0087】
生体情報変動パタン抽出部(106)は、生体情報格納部(103)から測定データの測定開始時刻(
図7参照)を読み出し、変数Timeにセットする(ステップ1701)。また、変動パタン連続カウンタNの値をリセット(0に設定)する(ステップ1702)。
【0088】
次に、生体情報変動パタン抽出部(106)は、生体情報格納部(103)より所定時間(T)分の波形を読み出し、特徴量抽出部(104)に入力する(ステップ1703)。この時、変数Timeに所定時間Tを加算する(ステップ1704)。ここで、生体情報格納部(103)より読み出す波形の数は、特徴量がある程度平均化する数に設定する。少なくとも数拍分の波形が必要である。
【0089】
特徴量抽出部(104)及び生体情報変動パタン抽出部(106)は、入力された所定時間T分の波形の特徴量を算出し、平均値を求める(ステップ1705)。求めた平均値は
図17の処理が完了するまで保持しておく。
【0090】
次に、生体情報変動パタン抽出部(106)は、前記ステップ1705で算出した平均値と、テンプレート管理部(105)で管理しているテンプレートとを比較して(ステップ1706)、認証時に使用した閾値の範囲で照合可能か否かを判定する(ステップ1708)。
【0091】
ステップ1708で照合可能であれば(ステップ1708;Yes)、ステップ1702に戻る。照合可能でなかった場合には(ステップ1708;No)、生体情報変動パタン抽出部(106)は、カウンタNに1を加算する(ステップ1709)。次に、生体情報変動パタン抽出部(106)は、Nがあらかじめ設定しておいた所定値(WN)以上かを判定する(ステップ1710)。
【0092】
WNの値は、個人の波形の変動パタンの特性に合わせて設定値を変更できるようにする。上記設定値の設定や変更は、例えば、
図6の(I)で示したユーザ基本情報等の設定画面を介して、基本情報等とともに入力を受け付ければよい。この値が大きければ比較的長く続く変動パタンを抽出することになり、この値が小さければ短い変動パタンを抽出することになる。変動パタンの連続性は人によって異なる可能性があるため、この値は柔軟に設定可能であることが望ましい。
【0093】
生体情報変動パタン抽出部(106)は、前記ステップ1710において、所定値(WN)以上と判定した場合には(ステップ1710;Yes)、ステップ1705で抽出された波形の特徴量をすべて加算し、その結果をカウンタNの値で除す(1711)。その結果を生体情報変動パタン抽出部(106)の結果とし、テンプレート登録判定部(107)の入力値とする。また変数Timeもテンプレート登録判定部(107)の入力値とする。上記結果が、そのユーザの変動パタンとなる。変動パタンは、ユーザの体調の変化を示すパタンであり、ユーザを正しく認証することができない程度の波形のパタンである。言い換えると、そのユーザにとって通常ではない、典型的なあるいは標準的な範囲から外れた波形のパタンであるといえる。このような波形のパタンがあらわれると、不整脈や心疾患の可能性があると判断することができる一方、本実施例の生体認証装置(101)では、後述するように、さらにこのような変動パタンの波形を登録しておくことにより、ユーザの認証精度を向上させることができる。
【0094】
以上テンプレートを使用した、変動パタンの抽出方法について述べたが、テンプレートを生成する際に周波数分析した心電図波形の振幅スペクトルを求め、その振幅スペクトルと異なる振幅スペクトルを持つパタンを変動パタンとして抽出してもよい。すなわち、標準的な生体情報を周波数分析して得られる振幅スペクトルと周波数分析の結果が異なる生体情報を変動パタンとして抽出してもよい。
<テンプレート登録判定部のテンプレート登録処理フロー(
図18、
図19、
図20)>
【0095】
次に、本実施例の特徴であるテンプレート登録判定部(107)で実行するテンプレート登録判定処理について説明する。
【0096】
テンプレート登録判定部(107)は、前記生体情報変動パタン抽出部(106)で抽出した変動パタンを、テンプレート管理部(105)にテンプレートとして登録するか否かを判断する。その際、テンプレート登録判定部(107)は、リスク評価テーブル(
図12)を用いてユーザごとの変動パタン発生リスクを評価し、その結果に基づいて追加登録可能なテンプレートの数を制限する。
【0097】
図18を用いて、テンプレート登録判定部(107)が実行するリスク評価方法について説明する。
【0098】
まず、機器使用開始時の初期設定処理(
図10のステップ1008)において、生体認証装置(101)がユーザから初期設定(
図11の画面使用)を受け付ける(ステップ1801)と、テンプレート登録判定部(107)は、それらの値に基づきリスク評価テーブル(1200)を参照(ステップ1802)しながら、ユーザが設定した項目ごとのリスクを評価する(ステップ1803)。そして、ステップ1803で評価した各項目のリスク評価結果を加算して総合点を算出する(ステップ1804)。テンプレート登録判定部(107)は、この総合点を追加可能なテンプレートの上限値(Na)として設定する(ステップ1805)。
【0099】
次に、
図19を用いて、前記生体情報変動パタン抽出部(106)で抽出した変動パタンを、テンプレート登録判定部(107)が追加テンプレートとして登録するテンプレート登録処理について説明する。
【0100】
テンプレート登録判定部(107)は、生体情報変動パタン抽出部(106)より特徴量と測定時間が入力されると、現行の追加テンプレート総数Nが加算可能なテンプレートの上限値Na以上となっているか判定する(ステップ1901)。テンプレート登録判定部(107)は、Na以上になっていないと判定した場合(ステップ1901;No)、入力された特徴量をテンプレートとしてテンプレート管理に登録し(ステップ1902)、テンプレートの測定時刻も併せて記録する(ステップ1905)。
【0101】
生体情報変動パタン抽出部(106)より入力された測定時刻は、測定終了時刻となっているため、テンプレート登録判定部(107)は、測定終了時刻としてテンプレート管理テーブル(900)に登録する。生体情報変動パタン抽出部内変数WNとTを参照し、測定終了時間よりWN*Tの時間分を差し引いた時間を測定開始時刻とし、テンプレート管理部のテンプレート管理テーブル(900)に登録する。
【0102】
一方、テンプレート登録判定部(107)は、ステップ1901において、現行の追加テンプレート総数NがNa以上になっていると判定した場合(ステップ1901;Yes)、テンプレート管理テーブル(900)を参照し、使用頻度のもっとも少ないテンプレートを選定する(ステップ1903)。そして、テンプレート登録判定部(107)は、該テンプレートを新たなテンプレートと入れ替え(ステップ1904)、新たなテンプレートの測定時刻も併せて記録する(ステップ1905)。テンプレート管理テーブルへの測定時刻の登録方法については上記と同様である。
【0103】
生体認証装置(101)は、テンプレートの追加登録が完了すると、その結果を表示部(110)に表示し、ユーザに新にテンプレート追加されたことを通知する。
【0104】
図20に、テンプレート追加登録完了後に、その内容を通知するテンプレート登録通知画面の例を示す。当該通知画面では、追加登録の通知、登録日時、登録されているテンプレートの数の合計値、登録可能なテンプレート数の最大値、テンプレートの追加により使い始めのころより体調変動に応じた認証が可能となり、利便性が向上したことなどを表示する。
<脈波を使用した場合のハードウェア構成(
図21)>
【0105】
心電図技術をベースにして実施例1を説明してきたが、脈波についても同様のことが可能である。脈波の場合は、測定原理が異なるため、脈波認証を実装するためのハードウェアの構成を
図21に示す。脈波の場合は、容積脈波を測定し、その測定結果を認証に使用する。容積脈波はLED(2101)とフォトダイオード(PD、2102)を用いて、血管の容積を測定したものである。電極の代わりに、LEDとPDを用い、獲得モジュール(202)がLEDとPDで測定した容積脈波から脈波信号を獲得する。それ以外のハードウェア構成は、心電図を用いる際のハードウェア構成と同様である。
<生体認証装置の外観(
図23〜28)>
【0106】
生体認証装置(101)の実装例を
図22で示したが、リストバンド型のウェアラブル型生体認証装置だけではなく、その他の実装例を示す。
【0107】
図23は、シャツ型の生体認証装置(101)の例である。シャツ本体に体に密着する、布タイプの電極が縫い込まれている。この布型の電極(2301、2302)は、心臓付近の位置に対応するシャツ胴体部分の上下に装着されるように配置されている。電極には配線がつながっており本体装置(2303)に接続されている。本体装置(2303)において、プラスとマイナスの電極で測定された電位の差が算出され、その結果は、本体装置(2303)に備わった無線装置を使用して、スマートフォン(2304)に送信される。
【0108】
スマートフォン(2304)は、内蔵の無線装置を使用して本体から送信された電位差情報をもとにスマートフォン側で本人認証及び生体情報の測定が可能である。
図1で示した生体情報測定部(102)以外の機能ブロックをスマートフォン側に構成する。シャツ型の生体認証装置では、両方の電極が常に体に密着しているため、継続的な本人認証や心電図測定が可能である。
図23ではスマートフォンを例に説明したが、これに限らず無線通信機能を有した様々な端末を用いることができる。
【0109】
図24は、生体認証装置(101)をスマートフォンに実装した場合の例である。生体情報測定部(102)である電極をスマートフォンの表面(
図24の(A))と背面(
図24の(B))に配置している(それぞれ2401、2402)。使い方は、
図24の(C)に示した。背面の電極(2402)を一方の手のひらに乗せて接触させ、もう一方の手でスマートフォン表面に配置された電極(2401)に接触させる。(C)の例では、親指を電極(2401)に接触させ、ユーザが片手でブラウジングするときの指の位置関係(親指が他の指よりもユーザの手元側にある関係)を考慮し、電極(2401)をブラウジング面よりも下側(ユーザの手元側)となるように配置した。このように、一方の電極をユーザが操作するブラウジング面と同じ面に配置すれば、心電図測定中もスマートフォンのブラウズが可能である。
図24ではスマートフォンを例に説明したが、これに限らず無線通信機能を有した様々な端末を用いることができる。このように、本例では、周期的な変動を有した生体情報を用いてユーザを認証する生体情報認証部と、ユーザの認証に用いられる生体情報を検出するために人体との接触を検出する生体情報検出部である生体情報測定部とを備えたスマートフォンにおいて、上記生体情報検出部は、ユーザが操作する操作面側であるブラウジング面側とその操作面に対する裏面である背面側とに設けられている(
図28における構成でも同様)。
【0110】
図25に、生体認証装置(101)をリング型の装置に実装した場合の例である。ユーザの両手の指に着脱可能な第1の生体認証装置および第2の生体認証装置である2つのリング(2501、2502)を1組としたセットとなっている(ペアリングされている)。どちらのリングにも生体情報測定部である電極(2503、2504)が備えられている。片方のリングに備えられた無線装置から、測定した電位情報が送信される。これにより、お互いに、送信された側のリングの本体(2505、2506)内で、左右の手の電位差を求めることができる。例えば、本体(2505)は、本体(2506)が測定した電位情報を受信すると、その受信情報と、リング(2501)に備えられた電極(2503)から測定された電位情報との電位差を算出する。
【0111】
上記以外の機能については、
図22のリストバンド型の生体認証装置と同じ機能が搭載されている(ただし片方のリングに通信機能以外の機能を集約してもよい)。リング型生体認証装置のメリットは、左右の手にリングをはめている間、継続して本人認証と心電図の測定が可能であることである。
図25にリング装着時の例を併せて示した(本例では、心電図を測定するために左右の指に1つずつ装着した)。
【0112】
図26、
図27、
図28に脈波技術を採用した場合の実装例に示す。脈波(容積脈波)の測定は、LEDとPDにより測定する。脈波の測定では、LEDとPDを体の一部分に接触させるだけでよい。しかし外光などによるノイズの影響が出やすいため、比較的体に密着する場所での測定が望ましい。
【0113】
図26は、イヤホンに脈波による生体認証装置を実装した例である。イヤホン(2601)に、LED(2602)とPD(2603)を内蔵している。イヤホン(2601)は本体(2604)に接続されている。イヤホン(2601)で測定された脈波の信号は、本体(2604)で処理する。本体(2604)は、
図22で示したような電源ボタン(2605)、表示用ディプレイ(2606)、状態表示用のLED(2607)を備えている。
図26では、イヤホン(2601)と本体(2604)を有線のケーブルで接続したが、無線で接続してもよい。
【0114】
図27は、イヤークリップに脈波による生体認証装置を実装した例である。イヤークリップ(2701)に、LED(2702)とPD(2703)を内蔵している。イヤークリップ(2701)は本体(2704)に接続されている。イヤークリップ(2701)で測定された脈波の信号は、本体(2704)で処理される。本体(2704)は、
図22で示したような、電源ボタン(2705)、表示用ディプレイ(2706)、状態表示用のLED(2707)を備えている。
図27では、イヤークリップ本体を有線のケーブルで接続したが無線で接続してもよい。
【0115】
図28はスマートフォンに脈波による生体認証装置を実装した例である。スマートフォンの背面にLED(2801)とPD(2802)が実装されている。LED(2801)による脈波の測定では、外光の影響を受けやすいため、できるだけLED(2801)とPD(2802)に体(指)を密着させる必要がある。このため、本体背面のLED(2801)とPD(2802)を設置したところに、指が固定されるためのガイド(2803)を設置した。すなわち、本体背面には、スマートフォンを持つためのガイド(例えば、指型の溝。
図28では、人差し指、中指、薬指をかたどった溝。)に対応する位置にLED(2801)およびPD(2802)が設けられている。このガイドにより、中指がLED(2801)とPD(2802)の部分に密着するようになる。ガイドはユーザの利き手に合わせて、右手用と左手用のガイドが必要である。ガイドは、本体の背面に設けずに、カバーケース等のように本体に着脱可能なタイプのものでもよい。
【0116】
以上、本実施例における生体認証装置は、体調に応じて認証率が低下することを防ぐために、生体情報変動パタン抽出部(106)において、ヘルスケア用に測定した生体情報から波形が大きく変動した時の変動パタンを抽出し、そのパタンの特徴量をテンプレートとして新たに追加することにより、体調の変動に依存せずに高い認証率が維持できるようにしている。
【0117】
またその際、登録するテンプレートの数を増やすことによって他人を本人と誤って受け入れてしまう、他人受け入れ率を増加させないようにするために、テンプレート登録判定部(107)において追加で登録可能なテンプレートの数を制限するようにしている。
【実施例2】
【0118】
本実施例では、前記実施例1と異なる実施形態を示す。実施例1では、リスク評価管理テーブルによる評価結果に基づいてテンプレート登録判定部(107)で追加可能なテンプレートの数を制限していたが、本実施例では、別の方式を持たせる。
【0119】
すなわち、実施例1の
図1記載の生体認証装置(101)に新たに属性情報測定部を設け、テンプレート登録判定部(107)において、属性情報測定部で測定した属性データと、生体情報変動パタン抽出部(106)で抽出した変動パタンの特徴量との相関を求め、それらの間に相関が認められたと判定された場合に、テンプレート登録判定部(107)で抽出された生体変動パタンの特徴量(平均値あるいは中央値)をテンプレートとして登録可能にする。それ以外の機能は、実施例1と同じである。
【0120】
図29は、本実施例の生体認証装置(2901)の機能ブロック図である。
【0121】
本実施例の生体認証装置(2901)は、生体情報測定部(2902)、生体情報格納部(2903)、特徴量抽出部(2904)、テンプレート管理部(2906)、生体情報変動パタン抽出部(2907)、テンプレート登録判定部(2908)、生体情報測定時の属性情報を取得する属性情報測定部(2909)、本人認証部(2913)、操作部(2910)、通信部(2911)、表示部(2912)を有して構成される。上記各部の機能は、基本的には実施例1と同様であるため、共通する部分についてはその説明を省略し、以下では主に異なる部分について説明している。
【0122】
図30を用いて、
図29の機能ブロックで説明した生体認証装置(2901)のハードウェア構成を示す。
【0123】
実施例1のハードウェア構成(
図2)との違いは、新たに、属性情報測定部(2909)を実現するために、体温・加速度センサ(3001)やGPS(3002)が加わっている。なお、スピーカ(3003)は、必須ではない。
【0124】
本実施例で説明する処理プログラムと各種テーブル(
図31、
図32、
図33)は、記憶装置に記憶される。処理プログラムやテーブルは、一時的にRAM(205)に読み込まれて実行される。また、処理の途中で生成されるデータやテーブル(
図34)は、RAM(205)に記憶される。また、追加したテンプレートおよびテンプレート管理テーブルは、記憶装置(204)に記憶される。なお、
図29で示した生体情報認証装置(2901)も、実施例1の場合と同様に、
図22から
図28の形態で実装可能である。
【0125】
以下に、実施例1と異なる部分について説明する。
図31を用いて、本実施例で新たに追加した属性情報測定部(2909)で測定する属性データの種類(3101)を示す。
【0126】
属性データは、心電図測定中に測定した心電図以外のデータであり、測定対象となるユーザに関するものである。例えば、ユーザ属性(3102)に関する、体温(3103)、体中水分比率(3104)、体脂肪率(3105)を含む。また、ユーザの習慣属性(3106)に関する、起床時刻(3107)、食事時刻(3108)、就寝時刻(3109)、運動時刻(3110)を含む。
【0127】
次に、
図32を用いて、生体情報報格納部(2903)が管理する生体情報管理テーブル(3200)の構成について説明する。
【0128】
生体情報管理テーブル(3200)には、実施例1と同様の生体情報測定時刻(開始時刻3201と終了時刻3202)と測定データ(3203)に加え、生体情報測定時の属性データ(3204)を記録して記憶する。
図32の例では、生体情報測定中の、ユーザの生体情報(体中水分比率3205、体脂肪率3206)と活動イベント(3207)を記録している。活動イベントとしては、例えば、起床や食事等のように、ユーザが日常生活を送る際に行われる様々なイベントを含む。
【0129】
次に、
図33を用いて、変動パタン抽出テーブル(3300)の例を示す。変動パタン抽出テーブル(3300)では、変動パタンの種類(3301)とその変動パタンの波形の特徴(3302)が記述されている。
【0130】
例えば、パタンAは、RR間隔(R波とR波の間隔)0.6秒以下の特徴となっている(3303)。パタンBはRR間隔1.0秒以上(3304)、パタンCはP波識別不可(3305)である。このように、変動パタン抽出テーブル(3300)には、変動パタンの抽出条件が定められている。
図33にはこれら3種類のパタンについて記述されているが、これに限定されるものではない。
【0131】
テンプレート登録判定部(2908)は、
図33の変動パタン抽出テーブル(3300)の波形の特徴(3302)を参照し、生体情報変動パタン抽出部(2907)より入力された特徴量を分析し、どのパタンに該当するかを判定する。パタンを判定した結果を登録するテーブル(以下パタン判定結果テーブル)を
図34に示す。このテーブルは、特徴量(3401)、測定時刻(3407)、属性情報(3402)、変動パタン(3403)、解析状況(3404、未分析あるいは分析済のいずれか)、相関分析の結果(3406、相関のあった属性データ種類)を記録するための項目を持つ。このテーブルは、テンプレート登録判定部(2908)が記憶装置(204)に記憶して保持する。
【0132】
テンプレート登録判定部(2908)は、生体情報変動パタン抽出部(2907)より入力された特徴量のパタン判定を実施すると、その判定結果と、生体情報変動パタン抽出部(2907)に入力された測定時刻と属性情報を
図34のテーブルに記録する。解析状況(3404)の値は、初期値として未分析とする。
【0133】
特徴量は、実施例1で説明したように、心電図波形中の間隔や振幅、角度の特徴の平均値を記録したものである。実施例1では説明した20の特徴量(501〜512、806、520〜523、531〜533)のすべてを記録する(3401の[]内の特徴変数)。
図34のテーブルの特徴量の項目には、特徴量ごとに数値が入るが、説明に際してわかりにくいので便宜的に文字列を使って示した。
【0134】
テンプレート登録判定部(2908)では、特徴量と属性情報(3402)の属性データ(
図34では、体温、体中水分比率、体脂肪率)との間の相関を分析する。
【0135】
次に、
図36を用いて、テンプレート管理部(2906)が記憶装置(204)に記憶し、管理するテンプレート管理テーブル(3600)の構成例を示す。
【0136】
テンプレート管理テーブル(3600)は、テンプレートNo(3601)、測定時刻(測定開始時刻3602、測定終了時刻3603)、波形の特徴(3604)、属性情報(3605)、使用頻度(3606)の項目を含む。波形の特徴(3604)、属性情報(3605)以外の項目は実施例1の場合と同様の項目である。登録される属性情報のデータ(属性データ)は、パタンごとの平均値を登録しておく。属性情報(3605)の項目では、
図34の相関結果(3406)を参照し、特徴量との相関が認められた属性データの種類を記録しておく(3607は体温と相関があったことを示した例である)。
【0137】
次に、
図37を用いて、本実施例の特徴となるテンプレート登録判定部(2908)における属性データと特徴量の相関を分析する処理の内容について説明する。
【0138】
テンプレート登録判定部(2908)は、変動パタン抽出テーブル(3300)を参照し、生体情報変動パタン抽出部(2907)で抽出された特徴量の変動パタンの種類を特定し結果をパタン判定結果テーブル(
図34)に記憶する(ステップ3701)。
【0139】
次に、テンプレート登録判定部(2908)は、
図34のパタン判定結果テーブル(3400)から変動パタン種類の総数を求め、その値をTに代入する。また、テンプレート登録判定部(2908)は、パタンカウンタ値Nを設け、その値を0に設定する(ステップ3702)。
【0140】
次に、テンプレート登録判定部(2908)は、
図34のパタン判定結果テーブル(3400)から未分析データのパタンを選択し、パタンカウンタNを1加算する(ステップ3703)。そして、相関分析のされていない属性情報のデータを1つ選定しパタンの特徴量との相関を分析する(ステップ3704)。
【0141】
例えば、テンプレート登録判定部(2908)は、
図35に示す相関式を用いて、
図34の属性情報(3402)の1つ(属性データ)である体温と特徴量(3401)の構成要素との相関の有無を判定する。
【0142】
相関の有無の判定は、特徴量の構成要素の1つ1つについて行われる。
図35の相関式は、2変数X(例えば、特徴量RP)、Y(例えば、属性データの体温T)の間の相関を見るための式である。この値の結果であるr(3501)の値を用いて、属性データと特徴量の構成要素の間に相関があるか否かを確認する(ステップ3705)。例えば、rの絶対値が0.4より大きくなる場合に(r>0.4は、一般に「相関あり」以上と判断される値の範囲)、相関があると判断できる。相関の有無を判断するrの値は、r>0.4に設定したがこれに限定されるものではない。生体情報認証装置側で任意に設定できるようにしてもよい。
【0143】
図34の例では、テンプレート登録判定部(2908)は、特徴量の1つであるRP変数と属性データの体温T変数の相関を取りr(3501)の値を算出する。例えば、
図34の変数RPの値を
図35の変数X(X0= RP1、X1=RPN)とし、
図34の変数Tの値を
図35の変数Y(Y0=T1、Y1=TN)とし(この場合、
図35でN=2)、相関係数rを算出し、相関があるか否かを分析する。
【0144】
ステップ3705において、テンプレート登録判定部(2908)は、選択した特徴量の構成要素と属性データとの相関がないと判定した場合(ステップ3705;No)、別の特徴量(構成要素)と属性データとの相関を分析する(ステップ3706)。
【0145】
ステップ3706の分析の結果、テンプレート登録判定部(2908)は、さらに別の特徴量(構成要素)と属性データとの相関があるか否かを判断する(ステップ3707)。
【0146】
ステップ3707において、テンプレート登録判定部(2908)は、相関がないと判定した場合(ステップ3707;No)は、分析していない構成要素があるか否かを判定する(ステップ3708)。
【0147】
ステップ3708において、テンプレート登録判定部(2908)は、分析していない構成要素があると判定した場合(ステップ3708;Yes)は、ステップ3706に戻る。分析していない構成がない場合(ステップ3708;No)は、さらに分析していない属性があるか否かを判定する(ステップ3709)。テンプレート登録判定部(2908)は、分析していない属性があると判定した場合(ステップS3709;Yes)、ステップ3704に戻り、分析していない属性がないと判定した場合(ステップS3709;No)は、ステップ3713へ進む。
【0148】
一方、ステップ3707において、別の特徴量(構成要素)と属性データとの相関があると判定された場合(ステップ3707;Yes)には、テンプレート登録判定部(2908)は、
図34のパタン判定結果テーブル(3400)の相関結果(3406)に相関の認められた属性データの種類を格納する(ステップ3710)。
【0149】
テンプレート登録判定部(2908)は、テンプレートとして登録する該当パタンの特徴量の平均値をテンプレート管理部(2906)に入力し、テンプレート管理部(2906)がテンプレートとして登録する(ステップ3711)。テンプレート登録判定部(2908)は、該当パタンの測定時刻、属性情報、波形の特徴(3302)、相関結果(3406)をテンプレート管理部(2906)に入力し、新しく追加したテンプレートのNo.(3601)とともに、テンプレート管理部(2906)が
図36のテンプレート管理テーブル(3600)に登録する(ステップ3712)。テンプレート登録判定部(2908)は、すべてのパタンについて相関分析したか(T<=N)否かを判定し(ステップ3713)、すべてのパタンについて相関分析したと判定した場合(ステップ3713;Yes)、処理を終了する。テンプレート登録判定部(2908)は、すべてのパタンについて相関分析していないと判定した場合(ステップ3713;No)、ステップ3703に戻る。なお、
図37のフローでは、すべての特徴量の構成要素と、属性データについて相関分析を行ったが、計算量が多いので、パタンごとの特徴を示す特徴量に絞り、相関分析を行ってもよい。
【実施例3】
【0150】
本実施例では、前記実施例1、実施例2で記載した生体認証装置を構成要素とする生体認証システムの構成と機能について説明する。
【0151】
実施例1および実施例2との違いは、生体情報変動パタン抽出部をリソース資源豊富なスマートフォンやクラウド上のサーバに実装し、生体認証装置がそれらのスマートフォンやサーバと連携して、生体情報変動パタンを抽出可能にしているところである。上記スマートフォンやサーバは、ハードウェアとしては、CPUやHDD等の記憶装置を備えた一般的なコンピュータから構成される。
【0152】
また、実施例1および実施例2との別な違いは、生体認証装置に属性情報取得部を新たに備えるところである。実施例2では属性情報測定部(2909)で属性データを取得していたが、実施例3では、生体認証装置の通信部を通して接続された外部のセンサや生体情報測定機器、スマートフォン、サーバから、生体情報測定時の周辺データやユーザに関する情報を示す属性データを取得する。それ以外の機能は、実施例1、実施例2と同じである。
以下実施例1、実施例2との違いの部分を説明する。
<生体認証システムの構成(
図38、
図40)>
【0153】
図38に、本実施例の生体認証システムを示す。本実施例の生体認証システムは、生体認証装置(3801)、生体情報装置とペアリングされたスマートフォン(3830)、生体認証装置が登録されたサーバ(3840)、ネットワークに接続可能な外部センサ(3850)と生体情報測定機器(3860)よりなる。ここでペアリングとは、通信における機器のペアリングであり、アプリケーション上でのペアリングの両方を意味する(以下同様)。
【0154】
上記生体認証装置(3801)は、生体情報測定部(3802)、生体情報格納部(3803)、特徴量抽出部(3804)、テンプレート管理部(3805)、スマートフォン(3830)に備えられたセンサ(3833)やネットワークに接続された外部のセンサ(3850)や生体情報測定機器(3860)より属性情報を取得する属性情報取得部(3807)、生体情報測定時に得られた属性情報として記録した測定環境などの属性情報と、抽出された変動パタンの特徴量との相関を調べ、相関を有する変動パタンの特徴量をテンプレート(
図8)として登録するテンプレート登録判定部(3808)、本人認証部(3815)、操作部(3809)、通信部(3810)、表示部(3811)を備える。上記各部の機能は、基本的には実施例1、2と同様であるため、共通する部分についてはその説明を省略し、以下では主に異なる部分について説明している。
【0155】
上記スマートフォン(3830)は、生体認証装置(3801)で測定した生体情報を格納した生体情報格納部(3831)、生体情報格納部(3831)に記録した生体情報から生体情報の変動パタンを抽出しその特徴量を求める生体情報変動パタン抽出部(3832)と、センサ(3833)を備える。
【0156】
また、同様に、上記サーバ(3840)も、上記生体認証装置(3801)で測定した生体情報を格納した生体情報格納部(3841)、生体情報格納部(3841)に記録した生体情報から生体情報の変動パタンを抽出しその特徴量を求める生体情報変動パタン抽出部(3842)、センサ(3843)を備える。
【0157】
実施例1および実施例2との違いは、生体情報変動パタン抽出部(3832、3842)をリソース資源豊富なスマートフォン(3830)やクラウド上のサーバ(3840)に実装し、生体認証装置(3801)とスマートフォン(3830)やサーバ(3840)を連携動作するようにしているところである。生体情報変動パタンは、生体認証装置(3801)内で測定された生体情報を生体認証装置(3801)からスマートフォン(3830)やサーバ(3840)にアップして解析する。
【0158】
実施例1及び実施例2では、変動パタンの抽出に際して生体認証装置(101、2901)内のテンプレート(
図8)を活用していた。実施例3はで、同様にテンプレート(
図8)をスマートフォン(3830)やサーバ(3840)にコピーして、それを活用して変動パタンを抽出してもよい。しかし、テンプレート(
図8)を生体認証装置(3801)の外に出せない場合は、最初に標準的な心電図波形の振幅スペクトルを求め、その振幅スペクトルと異なる振幅スペクトルを持つパタンを変動パタンとして抽出してもよい。
【0159】
また、実施例1および実施例2との他の違いは、生体認証装置(3801)側に属性情報取得部(3807)を備えるところである。実施例2では属性情報測定部(2909)で属性データを取得していたが、生体情報認証装置(3801)では、通信部(3810)を通して接続された、外部のセンサ(3850)や生体情報測定機器(3860)、スマートフォン(3830)、サーバ(3840)から生体認証装置(3801)の生体情報測定時の周辺データや、生体認証装置(3801)のユーザに関する情報を示す属性データを取得する。外部のセンサ(3850)が存在しない場合には、センサ(3833)やセンサ(3843)から同様の情報を取得しても良い。
【0160】
属性データは、実施例2のように生体認証装置(3801)内部に、属性情報測定部(2909)を備えそこから取得してもよい。
【0161】
図38の生体認証装置(3801)は、アプリケーション上でスマートフォン(3830)とペアリングをしておく。また、連携するクラウド上のサーバ(3840)には、スマートフォン(3830)の表示部に表示されるWeb画面などを通して、あらかじめ生体認証装置(3801)を登録しておく。この登録は、例えばFast IDentity Online(FIDO)の認証用プラットフォームを活用することにより実施することができる。
【0162】
図40に、本実施例の生体認証システムにおける生体認証装置(3801)とセンサ(3850)などの外部機器との通信方法を示す。通信手段として無線通信のBluetooth/WiFi(いずれも登録商標。以下同様。)を使用した場合の例を示している。本実施例の生体認証システムにおける、生体認証装置(3801)は、スマートフォン(3830)とBluetooth/WiFiを使用して通信可能である。また、生体認証装置(3801)は、Bluetoothを使用して、通信可能な生体情報測定機器(3860)や外部センサ(3850)と通信が可能である。また、IoTゲートウェイ(4001)あるいは、WiFiのアクセスポイント(4002)に接続してインターネット(4003)に接続し、インターネット(4003)上のクラウドサーバ(3840)と連携が可能である。
図40では、通信手段としてBluetooth/WiFiを使用した場合の例について説明したが、生体情報装置(3801)が、外部のセンサ(3850)や生体情報測定機器(3860)、スマートフォン(3830)、サーバ(3840)に接続する手段は、これらの通信手段に限定されるわけではない。
<属性情報取得部が管理する属性データ種類テーブル(
図39)>
【0163】
図39に、属性情報取得部(3807)で測定するデータ種類(3901)の例を示す。外部のセンサ(3850)や生体情報測定機器(3860)、スマートフォン(3830)、サーバ(3840)からデータが取得可能であるため、実施例2の属性情報測定部(2909)で測定するよりも多くの種類のデータが取得できる。ユーザ属性(3902)のデータについては、ネットワークに接続された他の生体情報測定機器(3860)で同時に測定したデータなどを取得できる。また、周辺情報(3903)のデータについては、例えば、外部センサ(3850)を介した無線通信により、天候(3904)、気圧(3905)、湿度(3906)、照度(3907)、騒音量(3908)を取得できる。
<属性情報取得部の処理フロー(
図43)>
【0164】
図43を用いて、属性情報取得部(3807)の処理について説明する。生体認証装置(3801)は、生体情報の測定を開始すると、通信部(3810)を通して接続可能なセンサや機器があるか否かを判定する(ステップ4301)。生体認証装置(3801)は、可能な装置がないと判定した場合(ステップ4301;No)、一定時間を待ち(ステップ4302)、再度接続可能なセンサや機器があるか判定し(ステップ4301)、接続可能な機器があると判定した場合(ステップ4301;Yes)、BluetoothやWiFiを使用して接続可能な機器と接続する(ステップ4303)。生体認証装置(3801)は、生体情報測定機器(3860)のユーザに関する情報を示す属性データを、テンプレート登録判定部(3808)内に記憶する(ステップ4304)。実施例1では、属性データはユーザが入力したが、一部のデータ(例えば体重など)を、無線通信を介して外部の機器から取得することも可能である。次に、生体認証装置(3801)は、センサ(3850、3843、3833)が検知したデータを取得し、生体情報測定データとともに生体情報格納部(3803)に記憶する(ステップ4305)。
【0165】
図43に戻り、生体認証装置(3801)は、生体情報測定継続するか否かの判定(ステップ4306)を行い、継続しないと判定した場合(ステップ4306)、処理を終了する。一方、生体認証装置(3801)は、継続すると判定した場合(ステップ4306;Yes)、接続可能なセンサや機器があるか判定し(ステップ4307)、接続可能なセンサや機器がないと判定した場合(ステップ4307)、処理を終了する。一方、生体認証装置(3801)は、接続可能なセンサや機器があると判定した場合(ステップ4307;Yes)、ステップ4305に戻る。
【0166】
なお、IoTゲートウェイ(4001)に接続可能なセンサや機器、あるいはそこから取得可能なデータの種類が記録されており、それらの情報が接続した生体認証装置(3801)から取得可能であれば、それらのデータを活用して、ユーザや生体認証装置(3801)が積極的にデータを取りに行ってもよい。
<属性情報取得部(生体情報測定機器センサを選択する)の処理フロー(
図41)>
【0167】
本実施例の生体認証装置に接続可能な生体情報測定機器やセンサが沢山ありすべての生体情報測定機器やセンサの情報を取得できない場合の処理について説明する。
【0168】
図41では、ユーザの活動内応によって記憶する属性データを選択する場合の例について説明する。活動内容に着目するのは、活動内容によって生体に影響を及ぼす要因が大きく変化するためである。例えば食事中、通勤中、睡眠中では、生体に影響を及ぼす要因が異なる。食事中であれば、摂取する食べ物の種類や量が生体に大きな影響を与える可能性が高い。また通勤中であれば交通機関の混雑度や乗物内の空気中成分などが影響を与える可能性が高い。また、睡眠中であれば、部屋の温度、騒音、照度などが影響を与える可能性が高い。このため、一度に取得/記憶可能な属性データの数が限られている場合は、ユーザの活動内容によって取得する属性データを変更するようにする。
【0169】
すなわち、本実施例の生体認証装置は、例えば、活動計と無線通信することによりユーザの活動を検出し(ステップ4101)、活動が起床であるか否かを判定し(ステップ4102)、活動が起床であると判定した場合(ステップ4102;Yes)、例えば、活動計から体温、脈拍、呼吸、血圧などの生体情報や、照度、外気温などの起床時の環境属性データを優先して読み取り、生体認証装置内の記憶装置(204)に記録する(ステップ4103)。
【0170】
また、生体認証装置は、活動が起床でないと判定した場合(ステップ4102;No)、さらに、活動が食事であるか否かを判定し(ステップ4104)、食事であると判定した場合(ステップ4104;Yes)、例えば、活動計から経口摂取物に関する属性データを優先して読み取り、生体認証装置内の記憶装置(204)に記録する(ステップ4105)。
【0171】
さらに、生体認証装置は、食事でないと判定した場合(ステップ4104;No)、通勤/移動中であるか否かを判定し(ステップ4106)、通勤/移動中であると判定した場合(ステップ4106;Yes)、例えば、活動計から混雑度、外気温、空気中の化学成分などの環境に関する属性データを優先して読み取り、生体認証装置内の記憶装置(204)に記録する(ステップ4107)。
【0172】
また、生体認証装置は、通勤/移動中でないと判定した場合(ステップ4106;No)、睡眠中であるか否かを判定し(ステップ4108)、睡眠中であると判定した場合(ステップ4108;Yes)、例えば、活動計から体温、脈拍、呼吸、血圧などの生体情報や照度、騒音、外気温などの環境に関する属性データを優先して読み取り、生体認証装置内の記憶装置(204)に記録する(ステップ4109)。上記のように、本実施例の生体認証装置は、ユーザの活動内容に応じて、接続可能な生体情報測定機器やセンサの中から取得するデータの種類を選択し、記録する。なお
図41では、起床、食事、通勤/移動、睡眠についての属性データの選定方法について示したが、本生体認証装置で扱う活動は、これらに限定されるものではない。選択した生体情報や環境情報に多くの種類の属性データがある場合には、大きな変化が認められた(あらかじめ大きな変化と判断する変化量を定義しておく)属性データを取得するようにする。
【0173】
活動の検出は、上記のように活動計により実施してもよいし、スマートフォンなどに記録されているユーザのスケジュールなどを参照して検出してもよい。食事などの動きの少ない活動は、別な生体情報(心拍の変動や、口の動きなど)により検出することができる。
【0174】
図41では、ユーザの活動内容に応じて属性データを選定するようにしたが、別な方法として1日の時間帯に応じて取得する属性データの種類を変えてもよい。一般に生体には概日リズム(サーカディアンリズム)があることが知られている。生体はおよそ24時間周期での変化し、一定の変化のリズムがある。心筋梗塞や不整脈などの発症時刻にも、概日リズムがあることわかっている。このため、概日リズムにより疾患や不整脈の発症しやすい時間帯(主に午前中や夕方)には、生体に関する情報と概日リズムに影響を与える属性データ(例えば起床時の光の照度、外気温など)を取得するようにしてもよい。
【0175】
上記は一般的な傾向により属性データの選択方法を決定したが、ユーザごとの体質や疾患の罹患状況などにより取得する属性データを選定してもよい。例えば、狭心症に罹患しているユーザの場合には、運動により心臓の活動に変化が出ることが知られているため、心臓の活動量に関する属性データを取得する。また呼吸器官に疾患のあるユーザは、空気中の成分や、湿度に関する属性データを中心に取得する。高血圧の人は、摂取した食べ物の塩分濃度や脂質量などの属性データを中心に取得する。また遺伝子解析などによりあらかじめ遺伝的な体質がわかっていればその結果を使用して取得する属性データを選定するようにしてもよい。
【0176】
ユーザに関するビッグデータの解析結果で、個々のユーザごとに影響の大きい属性データの種類がわかっていればその結果を活用して選定するようにしてもよい。また、花粉症など、季節的な環境要因に影響を受けやすいユーザは、季節ごとに取得する属性データの種類を変更してもよい。また、高齢者の場合は、体調を維持する上で、水分管理が重要であり、また脱水症状になると心臓への影響も大きくなるため、水分摂取に関する属性データを優先して取得するようにしてもよい。また、旅行等で時差や環境が変わる場合には、GPSなどでその変化を検出し、時差ボケに影響を与える属性データ(照度など)を選定するようにしてもよい。
【0177】
上記では、異なる種類の属性データの選定方法について説明したが、同種の属性データを取得可能な生体情報測定機器や、センサが多数あった場合においてデータを取得する生体情報測定機器やセンサを選定する方法について説明する。
【0178】
生体に関する属性データは、もっとも時間の新しいデータを取得可能な生体情報測定機器やセンサから取得する。経口摂取物に関する属性データは、もっとも時間的に新しいデータを取得可能な生体情報測定機器やセンサから取得する。呼吸器系器官を通して体に取り込まれるものは、空間的にもっとも近い生体情報測定機器やセンサから取得する。周囲の環境に関する属性データは、空間的な距離がもっとも近い生体情報測定機器やセンサから取得する。
【0179】
ユーザが空間を移動することにより、周囲の環境データを取得可能なセンサは大きく変化する。この場合は特に、ユーザへの空間的な距離が近く、大きな変化が検出できたセンサのデータを優先して取得する。特に外気温の変化などは心臓への負担が大きいことが知られているため、温度変化は正確に取得できるようにする。
【0180】
上記は、身体的に影響を与える内容を中心に取得する属性データの選定方法を説明したが、心理的要因についても考慮する必要がある。このため、例えば、進学、就職、結婚などの生活が大きく変わるような人生イベントを受けて、選定する属性データの種類を変えてもよい。人生のイベントはユーザにより、記録する。生活が大きく変わるイベントの前後では特に生活習慣に関する属性データを優先して取得する。引越しなど周囲の環境(気温や降水量)が大きく変わるイベントの場合には、周囲環境に関する属性データを優先して取得する。
【0181】
また、家族との死別で独居生活になった場合などには、人とのコミュニケーションの量が心理的な健康を維持するために重要となるため、一日に接触した人の数や、会話時間などに関する属性データを優先して取得する。心理的な要因についてもユーザに関するビッグデータの解析結果で、個々のユーザごとに影響の大きい属性データの種類がわかっていればその結果を活用して属性データを選定するようにしてもよい。
<スマートフォン/サーバ生体認証装置間の生体情報変動パタン抽出処理フロー(
図42)>
【0182】
最後に
図42を用いて、スマートフォン(3830)及びサーバ(3840)と生体認証装置(3801)との間の生体情報変動パタン抽出処理フローについて説明する。
【0183】
図42に、本実施例の生体認証システムにおける生体認証装置(3801)とスマートフォン(3830)及びクラウド上サーバ(3840)の処理フローを示す。処理は、生体認証装置(3801)において本人認証完了後、任意のタイミングで開始する。本実施例の生体認証システムにおける生体認証装置(3801)は、WiFiによる通信を開始する(ステップ4201)。次に、生体認証装置(3801)はスマートフォン(3830)あるいはWiFiアクセスポイントに接続する(ステップ4202)。接続が完了すると、生体認証装置(3801)は生体情報格納部(3803)内の生体情報をスマートフォン(3830)あるいはクラウド上のサーバ(3840)に送信する(ステップ4203)。生体情報格納部(3803)内のデータ構造は、
図32に示した通りである。
【0184】
スマートフォン(3830)クラウド上のサーバ(3840)が変動パタン分析する(ステップ4204)。生体認証装置(3801)は、スマートフォン(3830)あるいはクラウド上のサーバ(3840)から変動パタン分析結果を受信する(ステップ4205)。生体認証装置(3801)は、受信完了したか否かを判定し(ステップ4206)、受信完了したと判定した場合(ステップ4206;Yes)、処理を終了する。一方、生体認証装置(3801)は、完了していないと判定した場合(ステップ4206;No)、ステップに4205に戻り、引き続きスマートフォン(3830)あるいはクラウド上のサーバ(3840)から変動パタン分析結果を受信する。
【0185】
上記では、生体認証装置とスマートフォンとの間の通信をWiFiとしたが、Bluetoothを使用してもよい。
【0186】
図38では、テンプレート登録判定部(3808)を生体認証装置(3801)内に設ける例を示したが、テンプレート登録判定部(3808)をスマートフォン(3830)あるいはサーバ(3840)に設け、テンプレートを登録できるようにしてもよい。またスマートフォン(3830)上の生体情報は、解析後、サーバ(3840)上に送信してもよい。そして、サーバ(3840)への送信後に空いた領域に新しい生体情報を上書きしてもよい。また、解析後、生体情報を記憶しない場合には、スマートフォン(3830)あるいはサーバ(3840)上の解析後の生体情報は新しい生体情報で上書きされるようにしてもよい。
【実施例4】
【0187】
本実施例では、前記実施例1、実施例2、実施例3の生体認証装置及びシステムを適用した医療サービスの構成と機能について説明する。
【0188】
実施例1〜3との違いは、生体認証装置(4401)において、予測波形パタン管理部(4411)、疾患診断部(4409)を備え、心疾患や不整脈の検出が可能となっているところである。また、特徴量抽出部(4404)において、基線ベースでQ波、ST、T波の振幅を抽出する機能を新たに備え、テンプレートや予測波形パタンにおいてそれらの特徴量が含まれるところである。また、予測波形パタンは、初回登録のテンプレートと、変動パタンごとの特徴から生成されるところである。
【0189】
実施例3との違いは、連携するスマートフォン(4430)やクラウド上のサーバ(4440)において疾患対策検討部(4433、4443)をさらに備え、疾患発症時の対策検討が行えるようにしたところである。また生体認証装置(4401)と連携するスマートフォン(4430)やサーバ(4440)を他の連携機関のサーバ(4450)と連携可能にし、ユーザの支援を行うようにしたところである。
<生体認証システムの構成(
図44)>
【0190】
図44に、本実施例の生体認証システムの別の実施形態を示す。本実施例の生体認証システムは、生体認証装置(4401)、生体情報装置(4401)とペアリングされたスマートフォン(4430)、生体認証装置(4401)が登録されたサーバ(4440)、生体認証装置(4401)が登録されたサーバ(4440)やスマートフォン(4430)と連携する連携サーバ(4450)、センサ群(4470)及び生体情報測定機器群(4480)を有して構成される。
【0191】
上記生体認証装置(4401)は、生体情報測定部(4402)、生体情報格納部(4403)、特徴量抽出部(4404)、テンプレート管理部(4406)、属性情報取得部(4407)、テンプレート登録判定部(4408)、本人認証部(4421)、生体情報の測定結果を分析することにより疾患の診断を行う疾患診断部(4409)、ユーザの初回登録テンプレートから疾患発症時の特徴波形(
図45)を予測し、それらを管理する予測波形パタン管理部(4411)、操作部(4412)、通信部(4413)、表示部(4414)を備える。上記各部の機能は、基本的には実施例1〜3と同様であるため、共通する部分についてはその説明を省略し、以下では主に異なる部分について説明している。
【0192】
上記スマートフォンは、上記生体認証装置で測定した生体情報を格納した、生体情報格納部(4431)、生体情報格納部(4431)に記録した生体情報から生体情報の変動パタンを抽出しその特徴量を求める生体情報変動パタン抽出部(4432)と、疾患発症時の対応策を検討する疾患対応策検討部(4433)、センサ(4434)を備える。
【0193】
また同様に、上記サーバ(4440)も、上記生体認証装置(4401)で測定した生体情報を格納した、生体情報格納部(4441)、生体情報格納部(4441)に記録した生体情報から生体情報の変動パタンを抽出しその特徴量を求める生体情報変動パタン抽出部(4442)、疾患対応策検討部(4443)、センサ(4444)を備える。
【0194】
生体情報格納部(4403、4431、4441)のデータ構造(
図32)及び生体情報認証装置(4401)内のテンプレート管理テーブルの構造は実施例2と同じである(
図36)。生体認証装置(4401)は、あらかじめ連携するサーバ(4440)に登録を行っておく。また、生体認証装置(4401)とペアリングしているスマートフォン(4430)も、連携するサーバ(4440)に登録しておく。またペアリングしているスマートフォン(4430)は、連携機関サーバ(4450)にも登録しておく。
【0195】
重篤な疾患が発症した場合には、救急車による救援が到着するまでに、身近な人の助けが必要となる場合がある。このため、ユーザだけではなく、ユーザの救助協力を依頼することができる人(4460)を識別するための救助者情報(例えば、氏名、住所、電話番号等のユーザ情報)を、サーバ(4440)にあらかじめ登録しておく。
<救助協力者登録画面(
図49)>
【0196】
図49は、救助協力者(4460)の登録する画面の例である。当該画面は、例えば、サーバ(4440)が有するキーボード等の入力装置から入力され、サーバ(4440)が有するディスプレイ等の表示装置に表示される。本例では、サーバ(4440)から救助協力者(4460)が登録される場合について説明しているが、救助協力者(4460)が有するスマートフォン等の携帯端末やPCが有する入力装置から入力され、ネットワークを介してサーバ(4440)に登録されても良い。
図49に示すように、当該画面には、救助協力者の登録欄が設けられ、氏名、年齢、連絡先等の救助協力者に関するユーザ情報が表示されている。このように、当該画面から主に連絡先を登録しておき、救急の場合にユーザの救助を依頼できるようにしておく。
<変動パタンの特徴を管理するテーブルと狭心症診断指標(
図48、
図47)>
【0197】
生体認証装置(4401)は、予測波形パタン管理部(4411)において、変動パタンの特徴を管理するテーブル(
図48)を記憶装置(204)に記憶する。この変動パタンの特徴は、主に疾患の特徴や注意を要する不整脈などのパタンである。
【0198】
心電図の波形変化の特徴から、心疾患や不整脈の種類を診断する目安となる指標がある。例えば、狭心症ではS波とT波の間(以下STと表記)に変化が起きる。
図47の(A)、(B)に、狭心症発症時の心電図の波形の変化を示す。STは通常、基線(4703)の位置にあるが、狭心症が発症すると、この部分が下降し陰性化してくる(ST水平4701、ST下降4702)。上記のような特徴を予測波形パタン管理部(4411)が記憶するテーブル(
図48)に記述しておく。
【0199】
図48に、予測波形パタン管理部(4411)が記憶装置(204)に記憶するテーブルの構成を示す。このテーブルは、変動パタンの種類(4801)、変動パタン特徴と指標となる特徴量(4802)、そしてその変動パタンの特徴量により診断可能な疾患名(4805)、その疾患の緊急度(4803)と対応策(4804)を記録した項目を含む。ここで記述される対応策(4804)は、生体認証装置(4401)と連携するサービス機関(4450)のサービス内容によって異なる。
<疾患診断のための特徴量と認証で使用される特徴量の説明とテンプレート及びパタン別波形特徴量の構成(
図45)>
【0200】
なお、疾患の指標で使用される特徴量と認証に際して使用される特徴量は必ずしも一致しない。例えば、
図5の(B)で認証の際に使用する、振幅の特徴量として、RP_A(520)、RQ_A(521)、RS_A(522)、RT_A(523)の4つの特徴量について説明したが、これらの指標にはQ波(542)、S波(544)、T波(545)についての、基線(548)からの振幅を示す特徴量が入っていない。このため、
図44に示す生体認証装置(4401)においては、基線(548)ベースのQ波、ST、T波の振幅、それぞれQ_A(524)、ST_A(525)、T_A(526)を、新たに分析の対象とする特徴量に加え、予測波形パタン管理部(4411)のテーブル(
図48)内の指標となる特徴量(4802)の一部に加えている。ST_A(525)についてはピークがないため、STの平均振幅を記録するようにした。また、基線ベースで振幅を見ているため、基線(548)より上方はプラス、下方はマイナスの変動とする。基線ベースでの波形特徴量の分析機能は、実施例1〜実施例3の生体認証装置には含まれていないため、特徴量抽出部(4404)において、基線ベースでQ波、ST、T波の振幅を抽出する機能を新たに備えることが必要である。
【0201】
図45にテンプレート及びパタン別波形特徴量の構成を示す。生体認証装置(4401)では、実施例1〜実施例3における、認証用の特徴量(4500)に加え、疾患/不整脈用の分析指標(4501)を新たに加えている。基線ベースのQ波、S波、T波の振幅Q_A(4502)、ST_A(4503)、T_A(4504)の3つを加えている。ただし疾患/不整脈用の分析指標(4501)はこの3つに限定されるものではない。
【0202】
予測波形パタン管理部(4411)は、テーブル(
図48)を参照し、初回登録のテンプレート(ステップ1005で登録、
図45のID=000として識別)を用いて、疾患や不整脈などにより波形が変動した時の波形特徴量を予測した、パタン別波形の特徴量(
図45)を生成する。この処理は、
図10で示した初期登録処理が終了した直後に実施する。ただし、新たな特徴パタンが認知された場合には、サーバ(4440)により、スマートフォン(4430)、サーバ(4440)、生体認証装置(4401)の変動パタン管理テーブル(
図48及び
図50)に新たなパタンを登録することができる。さらに、それを受けて、生体認証装置(4401)は、そのパタンに対応する予測波形パタンを新に生成し登録できるようにしてもよい。
【0203】
図45は、パタンA(4801)の特徴量の例でもある。パタンA(4801)はST_Aが0.1以下になることが特徴となっているため、パタンAの波形特徴量では、ST_A値を-0.1以下としている(4505)。その他の特徴量は初回登録のテンプレート(ステップ1005で登録、
図45でID=000として識別)の特徴量と同じである。パタンAではその他の特徴量は同じであるとしたが、パタンによって影響の出る特徴量は異なり、すべてのパタンがパタンAのように特定の特徴量にだけ変化が限定されるものではない。
<疾患診断処理と診断結果を登録するテーブル(
図46)>
【0204】
生体認証装置(4401)は、生体情報測定部(4402)で心電図を測定し、その結果を測定時刻、属性情報とともに、生体情報格納部(4403)に記憶する。特徴量抽出部(4404)は、直後に、情報格納部(4403)に記憶された心電図データ(3203)、測定時刻(3201、3202)、属性情報(3204)を読み出し、特徴量を算出した後、その結果と、測定時刻、属性情報を疾患診断部(4409)に入力する。
【0205】
次に、疾患診断部(4409)は、入力された特徴量と、予測波形パタン管理部(4411)のパタン別波形特徴量(
図45の構造で記述)とを比較する。疾患診断部(4409)は、指標となる特徴量の部分に関しては、設定された条件に合うか否かを判定し、それ以外の特徴量に関しては、認証時と同様に設定された閾値内に収まっているか否かを判定する。疾患診断部(4409)は、設定された条件と閾値の範囲にマッチすれば、パタン検出と判断し、そのパタンを特徴とする疾患を検出できたと判断する。そして、その結果を、登録番号、疾患名、発生時刻から成るテーブル(
図46)に記録する。
【0206】
図46にテーブルの構成を示す。登録番号(4601)には、パタン検出の結果に固有の番号を付与し、その番号が登録される。疾患名(4602)には、検出したパタンを特徴とする疾患名が登録される(パタンと疾患の関係はテーブル
図48を参照して判定される)。発生時刻(4603、4604)には、疾患診断部(4409)に特徴量とともに入力された測定時刻(測定開始時刻と測定終了時刻)が記述される。
<疾患検出後の処理とサービス提供機関のサーバが送信する情報の例(
図52)>
【0207】
次に、疾患診断部(4409)で疾患を検出した後の処理について説明する。生体認証装置(4401)は、疾患の発症を検出すると、診断結果に関する情報、ユーザの状況に関する情報、周囲の状況に関する情報を、あらかじめ登録しておいたサーバ(4440)に送信する。
【0208】
図52に、サーバに送信する情報の例を示す。
図52の(A)は、診断結果に関する情報の例である。検出された疾患名(5201)と変動パタン(5202)、その疾患の緊急度(5203)、発生時刻(5204)に関するものである。検出された疾患名(5201)と緊急度(5203)は、疾患診断部(4409)が、予測波形管理部内のテーブル(
図48)を参照して取得する。また、発生時刻(5204)は、疾患診断部(4409)内から取得する。
【0209】
図52の(B)は、ユーザ状況に関する情報の例である。意識レベル(5205)、年齢/性別(5206)、バイタル情報(血圧5207、脈拍5208、呼吸数5209、体温5216)、発症時の状況(5210運動中など)、救助協力者登録の有無(5211)、GPS情報(5215)などの情報である。
【0210】
意識レベル(5205)は、診断された疾患の内容で判断してもよいし、生体認証装置(4401)内の属性情報取得部(4407)で取得された属性データにより判断してもよい。年齢や性別(5206)は、装置使用開始時にユーザが登録したもの(テンプレート登録判定部4408内に記憶されている)が使用される。バイタル情報(血圧5207、脈拍5208、呼吸数5209、体温5216)、発症時状況(5210)、GPS情報(5215)は、疾患診断部(4409)に入力された属性情報より取得される。救助協力者登録の有無(5211)に関する情報は、最初にユーザにより登録されたものが使用される(
図49の内容、生体情報格納部4403内に記憶)。
【0211】
図52の(C)は、疾患発症時の周辺情報の例である。これも、疾患診断部(4409)内に入力された属性情報が使用される。
<疾患対応検討部の機能と内部で管理されているテーブル(
図50)>
【0212】
次に、スマートフォン(4430)あるいはサーバ(4440)上に設けられた疾患対応検討部(4433、4443)の機能について説明する。疾患対応検討部(4433、4443)は、生体認証装置(4401)から送信された、診断結果に関する情報(
図52の(A))とユーザ状況に関する情報(
図52の(B))、周辺情報(52の(C))などの情報に基づいて対応策を検討する。具体的な処理については後述する。
【0213】
図50に、スマートフォン(4430)及びサーバ(4440)上の疾患対応検討部(4433、4443)が記憶装置(204)に記憶して管理されているテーブルの構成を示す。当該テーブルには、生体認証装置(4401)と同様のテーブルが記憶されている。これにより、送付された診断結果に対しての追試が可能となる(ただし追試のためには生体情報を共有するために、別途生体認証装置4401からの生体情報の送付が必要となる)。
【0214】
生体認証装置(4401)でも、予測波形パタン管理部(4411)内のテーブル(
図48)において対応策(4804)が決められているが、生体認証装置(4401)単独で対応可能な対応策が記述されている。一方、スマートフォン(4430)及びサーバ(4440)の疾患対応検討部(4433、4443)のテーブルでは、連携機関(4450)や救援協力者(4460)が考慮された対応策が設定されている。スマートフォン(4430)及びサーバ(4440)の疾患対応検討部(4433、4443)では、発症時のユーザ状況に関する情報(
図52の(B)の内容)や連携機関(4450)の状況(混雑度など)を考慮して最終的な対策を決定する。
<心筋梗塞発症検出時の処理シーケンス(
図51)>
【0215】
図51に本実施例の生体認証システムにおける心筋梗塞発症検出時の処理シーケンスを示す。構成要素は生体認証装置(4401)、スマートフォン(4430)、サーバ(4440、サービス提供機関)、連携機関サーバ(4450、連携サービス機関)、救援協力者(4460)である。救援協力者(4460)は、サーバ(4440)と通信可能なスマートフォン等の携帯端末を有している。
【0216】
生体認証装置(4401)は、心筋梗塞の発症を検出する(5101)。その結果を受けて、装置内のアラーム(スピーカ、3003)をONにする(5102)。
【0217】
次に、診断結果に関する情報(
図52の(A))、ユーザ状況に関する情報(
図52の(B))、疾患発症時の周辺情報(
図52の(C))をスマートフォン(4430)とサーバ(4440、サービス提供機関)に送信する(5103、5104)。ここまでの生体認証装置(4401)における処理は、ユーザによる操作の必要は必要なく、すべて自動で行われる。
【0218】
スマートフォン(4430)は、生体認証装置(4401)より受け取った情報をそのまま登録先のサーバ(4440)に送信する(5105)。生体認証装置(4401)とスマートフォン(4430)の両方からサーバ(4440)に情報を送信する理由は、通信回線の不通によるリスクを低減するためである。
【0219】
情報を受け取ったサーバ(4440、サービス提供機関)とスマートフォン(4430)の疾患対応策検討部(4433、4443)は、診断結果に関する情報(
図52の(A))やユーザ状況に関する情報(
図52の(B))、疾患発症時の周辺情報(
図52の(C))を受け対応策を検討した検討情報を出力し、連携機関サーバ(4450、連携サービス機関)に救急車の発動を依頼する(5106、5107)。
【0220】
例えば、上記疾患対応策検討部(4433、4443)は、上記診断結果に関する情報を参照して疾患名(例えば、狭心症)を読み取り、さらに、あらかじめ登録されている医療機関が取り扱う診療項目にその疾患名が含まれているか否かを判定し、当該疾患名が含まれていると判定した場合、その医療機関の連絡先(例えば、メールアドレス)に、救急車の発動依頼を通知するとともに、当該通知に上記診断結果に関する情報、ユーザ状況に関する情報、疾患発症時の周辺情報を添付する。なお、心筋梗塞のようなもっとも緊急度の高い疾患の場合には、スマートフォン(4430)とサービス提供機関のサーバ(4440)の両方から救急車の発動依頼をかけてもよい。このように、それぞれの疾患対応策検討部は、生体認証装置の疾患診断部が診断したユーザの心疾患の診断結果である検出結果に基づいて、外部サーバと通信する連携サーバに、ユーザの救助協力要請を通知する。
【0221】
また、上記疾患対応策検討部(4433、4443)は、あらかじめ登録済のユーザの救援協力者の携帯端末(例えば、メールアドレス)に援助要請通知を送信する(5108)。併せて、上記疾患対応策検討部(4433、4443)は、救援協力者の携帯端末にAutomated External Defibrillator(AED)情報を通知する(5109)。例えば、上記疾患対応策検討部(4433、4443)は、上記携帯端末に、最寄りのAEDの設置場所を示す情報を送信する。最寄りのAEDの設置場所は、例えば、上記ユーザ状況に関する情報に含まれるGPS情報と、あらかじめ登録されているAEDの設置場所のマップを比較して判定すればよい。
【0222】
救援協力者(4460)の携帯端末は、上記通知を受け取ると、要請に対する対応状況をサーバ(4440、サービス提供機関)に通知(報告)する(5110)。上記対応状況は、救援協力者により携帯端末の入力部(例えば、タッチパネル)から入力される。対応状況としては、例えば、救援した日時、どのような救援をしたのか等、実際に救援協力者が救援した内容を示す情報が含まれる。なお、心筋梗塞のような重篤の場合は本人による対応が困難なため直接ユーザへの指示は行わない。
<サービス提供機関のサーバがユーザに送付する情報の例(
図53)>
【0223】
サーバ(4440、サービス提供機関)の疾患対応策検討部(4443)は、上記検討の結果、医療機関情報、原因分析結果、対策情報を含む診断結果を、ユーザのスマートフォン(4430)に送信する。
図53に、サーバ(4440、サービス提供機関)がユーザに送付した、医療機関情報、原因分析結果、対策情報の例を示す。
【0224】
サーバ(4430、サービス提供機関)は、検出した疾患や不整脈の注意レベルを通知する(5301)とともに、検出した疾患や不整脈の診断や治療の可能な医療機関の情報(5302)を提供する。この情報はユーザから送信された、ユーザ状況(
図52の(B))内のGPS情報(5215)などを受け、例えば、疾患対応策検討部(4443)が、ユーザにとって利便性の高い最寄りの医療機関の情報を提供すればよい。原因分析(5303)では、検出した疾患や不整脈の原因について分析した結果を表示する。この分析結果は、実施例3のように、生体認証装置(4401)から測定した生体情報をスマートフォン(4430)やサーバ(4440)に送信し、そのデータを連携するサーバ(4450)と共有して分析したものでもよい。
【0225】
図53の原因分析結果(5303)では、疲労やストレスなども原因として分析されている。心臓は交感神経と副交感神経の両方の影響を受けて鼓動している。このため、心電図の測定データを解析することにより、交感神経と副交感神経のバランスを解析でき、そのバランスの状態によって、ストレスや疲労度を分析することができる。
【0226】
一般的な方法は以下の通りである。心電
図RピークとRピークの間隔(以下RRI、4506)の分布をとりその分布グラフの周波数成分ごとのパワースペクトル密度を求めることにより分析できる。低周波成分0.05-0.15Hzのパワースペクトルの密度の積分値は交感神経と副交感神経の両方の活性度を反映する。一方、0.15-0.45Hzのパワースペクトルの密度の積分値は、副交感神経の機能の指標となっている。またRRI変動係数(RRIの標準偏差値をRRIの平均値で除したもの)は、自律神経の活性度の指標となっている。以上のような指標を分析することによって、自律神経の活性度や、交感神経/副交感神経の活動を分析することにより、ストレスや疲労度の度合いを分析することができる。
【0227】
以上の分析は連携する機関(4450)を活用して実施し、その分析結果を活用することもできるし、生体認証装置(4401)内部に解析機能を設けることにより、実施することもできる。また、その機能を連携するスマートフォン(4430)やサーバ(4440)上に設置して実施することも可能である。
図53に戻り、対策の内容は、原因分析の結果(5303)を受け、それを解消するための対策(アドバイス)を記述する(5304)。これらの対策は上記分析結果に対応付けてあらかじめ登録しておけばよい。
【実施例5】
【0228】
実施例5では、前記実施例1〜4の生体認証装置及びシステムを活用したアプリケーションの例を示す。
<医療サービス及び保険サービスへの適用例(
図54)>
【0229】
図54に、本実施例の生体認証装置のユーザが、医療サービスと保険サービスの両方に加入して実施されるアプリケーションの例を示す。
【0230】
ユーザ(5401)は、本実施例の生体認証装置と医療サービスから通知を受ける端末(例えば、スマートフォン等の携帯端末のメールアドレス)を、加入した医療サービスのサーバに登録しておく。次に、ユーザ(5401)は、登録した生体認証装置を使用して、本人認証後に測定した生体情報を医療サービス機関(5402)のサーバに送信する。医療サービス機関(5402)のサーバは、登録された生体認証装置から受信した生体情報を参照して疾患の兆候等を分析する。疾患の兆候等検出されたらその結果を上記連絡先に通知し、医療機関の情報を提供して通院を促す。
【0231】
ユーザ(5401)は、あらかじめ登録された上記端末を操作する等して、このサービスに対して、サービス使用料を支払う決済処理を実行する。当該決済の方法については、あらかじめアプリケーションをインストールしておき、従来から知られている様々な決済方法を用いることができる。また、ユーザ(5401)は一方で上記の医療サービス機関(5402)と提携している保険サービス機関(5403)にも加入し、上記端末を操作して保険料を支払う決済処理を実行する。保険サービス機関(5403)のサーバは、上記の医療サービス機関(5402)のサーバから、保険加入者の健康管理の状況を示す情報を、ユーザ(5401)の許可を得て受信し、その内容を確認する。保険サービス機関(5403)のサーバは、保険加入者の健康管理の状況を確認すると、上記支払い済みの保険料の一部をキャッシュバックする処理を実行し、その結果を上記端末に送信する。このような処理を実行する理由は、保険加入者が提携医療機関のサービスを利用して健康管理している方が疾患に罹患するリスクが低減されるというメリットがあるためである。
<年金支給サービスへの適用例(
図55)>
【0232】
図55に、本実施例の生体認証装置を、年金支給に適用した場合のアプリケーションの例を示す。日本年金機構(5502)は、年金受給者(5501)に対して(年金受給開始時に)本実施例の生体認証装置を支給する。
【0233】
年金受給者(5501)は、本実施例の生体認証装置を用いて心電図を測定して、テンプレートを登録する。テンプレートが登録された生体認証装置は、あらかじめ日本年金機構(5502)のサーバに登録する(ペアリングしたスマートフォンを活用して登録することもできる)。
【0234】
年金受給者(5501)は、本実施例の生体認証装置を使用して、年金受給月に、本人認証を行う(生体認証装置はあらかじめ日本年金機構のサーバに登録されているため、本人認証の結果を送信することができる)。
【0235】
日本年金機構(5502)のサーバは、年金受給者(5501)の本人を認証すると、年金の支給を許可できると判断し、あらかじめ登録されている年金受給者(5501)金融機関(5503)に年金を振り込む処理を実行する。なお、上記認証により、生存確認を兼ねることも可能である。
【0236】
年金受給者(5501)は、年金振込の登録を行っている金融機関(5503)において、本人認証を実施する。例えば、銀行のATMの管理サーバに、本実施例の生体認証装置との連携登録を事前に実施しておけば、認証済(かつ認証OKが継続している)の本実施例の生体認証装置をATMの生体認証端末にかざすだけで、年金受給者(5501)の年金振込口座から年金の受取を行うことができる。
【0237】
本実施例の生体認証装置は、本人認証を行うとともに、ユーザの生存も確認することができる。このため、年金受給者死亡後の年金の不正受給を防ぐことができる。
<本実施例のその他の適用例>
【0238】
本実施例の生体認証装置のその他のアプリケーションは、決済、入退室管理、情報機器やデータへのアクセス制御、自動車のドアやエンジンのキー、公共機関の運転手の認証と健康管理、独居者の見守りサービスなどである。
【0239】
このように、上記の各実施例に示した生体認証装置、生体認証システム、携帯端末によれば、体調に応じたテンプレートを自動で作成/登録できる。その際、装置に新たに部品を追加せずに実施できる。また、体調に依存せずに本人認証率を向上させることができるとともに、不要なテンプレートを登録することによる他人受入れ率増加のリスクを低減することができる。
【0240】
なお、上記の各実施例で示した生体認証装置、スマートフォン、サーバをはじめとする各装置で行われる処理は、実際には、CPU(203)等の演算装置が記憶装置(204)等のメモリに記憶されたプログラムを読み出して不図示の主記憶装置上にロードして実行することにより、上記各部の機能が実現される。上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供したり、インターネット等のネットワークに接続された他のコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供または配布するように構成しても良い。