(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリアペプチド核酸は、前記生理活性核酸と一部もしくは全部が相補的な配列で構成されることを特徴とし、前記一部が相補的な配列で構成されるキャリアペプチド核酸は、1つ以上のユニバーサル塩基を含む、請求項1に記載の核酸複合体。
前記キャリアペプチド核酸は、全体的に陽電荷を有するように1個以上のガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体を含むことを特徴とし、前記ガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体は、陽電荷のアミノ酸を有する単量体が、陰電荷のアミノ酸を有する単量体に比べてより多く含まれ、全体的にキャリアペプチド核酸の電荷が陽性となることを特徴とする、請求項1に記載の核酸複合体。
前記ガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体は、電気的陽性を有するようにリジン(Lysine, Lys, K), アルギニン(Arginine, Arg, R), ヒスチジン (Histidine, His, H), ジアミノ酪酸(Diamino butyric acid, DAB), オルニチン(Ornithine, Orn)およびアミノ酸類似体で構成された群から選択される1つ以上の陽電荷を有するアミノ酸をバックボーンに含むことを特徴とする請求項5に記載の核酸複合体。
前記ガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体は、陰電荷を有するアミノ酸であるグルタミン酸(Glutamic acid,Glu,E)、アスパラギン酸(Aspartic acid,Asp,D)またはアミノ酸類似体をバックボーンに含むことを特徴とする請求項6に記載の核酸複合体。
前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の結合は、それぞれの5´−方向性と3´−方向性に基づいて、平行(parallel)または逆平行(antiparallel)の結合であることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、平行結合(parallel binding)または部分的特異的結合(Partial specific binding)により互いに結合することによって、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との間の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)が、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子との間の結合力よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記キャリアペプチド核酸は、リンカー、ユニバーサル塩基(universal base)、および生理活性核酸の対応する塩基と相補的ではないペプチド核酸塩基から選択される1つ以上のペプチド核酸塩基を有することにより、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との間の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)が、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子との間の結合力よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との間の結合力を調節することで、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の分離時点および生理活性核酸と生理活性核酸の標的遺伝子との結合時点が調節されることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記ユニバーサル塩基(universal base)は、アデニン(adenine)、グアニン(guanine)、シトシン(cytosine)、チミン(thymine)およびウラシル(Uracil)などの天然塩基、並びに、イノシンPNA(inosine PNA)、インドールPNA(indole PNA)、ニトロインドールPNA(nitroindole PNA)、および無塩基(abasic)といった、選択性なしに結合し、相補的な結合力より低い結合力を有する塩基からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の核酸複合体。
疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、消光剤、蛍光マーカーおよび発光マーカーからなる群から選択される1つ以上の物質が、生理活性核酸および/またはキャリアペプチド核酸に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、消光剤、蛍光マーカーおよび発光マーカーからなる群から選択される1つ以上の物質と、生理活性核酸および/またはキャリアペプチド核酸との結合は、単純共有結合またはリンカー媒介性の共有結合であることを特徴とする請求項13に記載の核酸複合体。
前記核酸複合体は、5nm〜300nmの粒子サイズを有することを特徴とし、前記核酸複合体の粒子サイズは、核酸複合体の電荷平衡を調節することで調節されることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
前記核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、サバイビン(Survivin)、VEGF、アンドロゲンレセプター(Androgen receptor)、KRAS、クラスタリン(Clusterin)、TGFβR2、ERBB3、トランスグルタミナーゼ 2(Transglutaminase 2)、ABCB1、Hsp27、STAT3、PD−L1、IFI16、TLR6、TIEG1、PDE4B、Pellino−1、SMN2、ApoB−100、ICAM−1、ApoCIII、TTR、HTT、GHr、SOD1、ANGPTL3、PKK、miR−21、TMPRSS6、FMR1およびConnexin 26からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する實驗方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0028】
本発明は、下記構造式(1)の構造を有する核酸複合体に関する:
【0030】
前記構造式(1)中、
Aは、標的とする遺伝子と結合可能な配列、または標的とする遺伝子配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)であり、
Cは、生理活性核酸と結合可能なキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)であり、
「≡」は、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との相補的な結合を意味し、
Aで表される生理活性核酸は、全体的に陰電荷または中性を有し、
C
(+)は、キャリアペプチド核酸が全体的に陽電荷を有することを意味し
キャリアペプチド核酸は、キャリアペプチド核酸が全体的に陽電荷を帯びるように改変されたペプチド核酸単量体を1つ以上含む。
【0031】
本発明において、「生理活性核酸」は、発現を減少させようとする標的の標的遺伝子と結合可能な相補的な配列、特に、その標的遺伝子のmRNAに結合可能な相補的な配列を有するか、発現させようとする標的遺伝子の発現を促進する配列を含む核酸であって、該遺伝子の発現を抑制または促進するなどの遺伝子発現調節に関与する核酸を意味し、発現を減少または増加させようとする標的遺伝子に相補的な配列を有する核酸であるか、pre−mRNA、miRNA、mRNAなどの1本鎖RNA配列に相補的な配列の核酸であってもよい
【0032】
特に、本発明における「生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)」は、生体外(in vitro)または生体内(in vivo)で標的遺伝子、およびそれを含む塩基配列と結合し、該遺伝子の固有機能(例えば、転写体(transcript)の発現またはタンパク質の発現)を活性化または阻害し、pre−mRNAのスプライシング(splicing)を調節(例えば、エキソンスキッピング(exon skipping))するなどの機能を果たし、前記塩基配列は、遺伝子調節部位(gene regulatory sequence)または遺伝子部位(gene coding sequence)またはスプライシング調節部位(splicing regulatory sequence)であることを特徴とする。前記遺伝子調節部位は、プロモーター、転写エンハンサー、5´非翻訳領域、3´非翻訳領域、ウイルスパッケージング配列、および選択マーカーから選択されることを特徴とする。前記遺伝子部位はエキソンまたはイントロンであってもよく、前記遺伝子部位は、遺伝子の転写開始部位の10、5、3、または1kbもしくは500、300、または200bp内に、例えば、開始部位の上流(upstream)または下流(downstream)にあってもよい。また、前記スプライシング調節部位は、exon skipping、cryptic splicing、pseudo−splice site activation、intron retention、alternative splicing deregulation関連配列を含んでもよい。
【0033】
本発明において、「キャリアペプチド核酸」は、生理活性核酸と一部もしくは全部の塩基が相補的に結合して機能性を付与する核酸を意味し、本発明で用いられるキャリアペプチド核酸としては、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)だけでなく、これと類似の改変された核酸を用いてもよく、ペプチド核酸が好ましいが、これに限定される意味ではない。
【0034】
本発明において、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、それぞれ2個〜50個、好ましくは5個〜30個、さらに好ましくは10個〜25個、最も好ましくは15個〜17個の核酸単量体を含んでもよい。
【0035】
また、前記生理活性核酸は、天然(natural)の核酸塩基および/または改変された核酸単量体からなっていることを特徴とし、前記キャリアペプチド核酸は、前記生理活性核酸と一部もしくは全部が相補的な塩基配列を有することを特徴とする。
【0036】
特に、キャリアペプチド核酸は、ユニバーサル塩基(universal base)を1つ以上含んでもよく、キャリアペプチド核酸の全てがユニバーサル塩基からなってもよい。
【0037】
本発明において、前記生理活性核酸は、DNA、RNAおよび改変された核酸であるPNA(peptide nucleic acid)、PMO(phosphorodiamidate morpholino oligonucleotide)、LNA(locked nucleic acid), GNA(glycol nucleic acid)およびTNA(threose nucleic acid)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、アプタマー(aptamer)、siRNA(small interfering RNA),shRNA(short hairpin RNA)、リボザイム(ribozyme)およびDNAzymで構成された群から選択されてもよく、好ましくは、前記生理活性核酸は、DNA、RNAおよび改変された核酸であるPNA(peptide nucleic acid)、PMO(phosphorodiamidate morpholino oligonucleotide)、LNA(locked nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)およびTNA(threose nucleic acid)で構成された群から選択されてもよい。
【0038】
本発明において、生理活性核酸に用いられた単量体がPNAである場合、前記生理活性核酸は生理活性ペプチド核酸と称し、他の単量体が用いられた場合にも前記生理活性核酸は同様の方式と称する。
【0039】
本発明において、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、ホスホジエステル (phosphodiester)、2’0− メチル (2’0−methyl)、2’ メトキシ−エチル(2’ methoxy−ethyl)、ホスホルアミデート(phosphoramidate)、メチルホスホネート (methylphosphonate)およびホスホロチオエート(phosphorothioate)で構成された群から選択される1つ以上の官能基をさらに含んでもよい。
【0040】
本発明において、前記生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸のそれぞれは、電気的特性が全体的に、陽電荷(陽性)、陰電荷(陰性)、または中性電荷を有することを特徴とする複合体であってもよい。
【0041】
前記電気的特性の表現において、「全体的に」ということは、個別塩基の電気的特性ではなく、全体的な生理活性核酸またはキャリアペプチド核酸のそれぞれの電荷の、外部から見た時の全体的な電気的特性を意味する。
【0042】
例えば、生理活性核酸内の一部の単量体が陽性を有するとしても、陰性を有する単量体の個数がより多く存在する場合には、生理活性核酸は、電気的特性が「全体的に」陰電荷を有する。
【0043】
キャリアペプチド核酸内の一部の塩基および/またはバックボーンが陰性を有するとしても、陽性を有する塩基および/またはバックボーン(backbone)の個数がより多く存在する場合には、キャリアペプチド核酸は、電気的特性が「全体的に」陽電荷を有することになるのである。
【0044】
このような観点から、本発明の構造式(1)の核酸複合体において、前記生理活性核酸は、電気的特性が全体的に、陰電荷または中性の特性を有することが好ましく、キャリアペプチド核酸は、電気的特性が全体的に、陽電荷特性を有することが好ましい。
【0045】
前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の電気的特性を付与するために、改変されたペプチド核酸単量体を用いることができる。改変されたペプチド核酸単量体は、陽電荷を有するキャリアペプチド核酸としてリジン(Lysine, Lys, K), アルギニン (Arginine, Arg, R), ヒスチジン (Histidine, His, H), ジアミノ 酪酸 (Diamino butyric acid, DAB), オルニチン (Ornithine, Orn) およびアミノ酸類似体で構成された群から選択される1つ以上の陽電荷のアミノ酸を含み、陰電荷を有するキャリアペプチド核酸として陰電荷のアミノ酸であるグルタミン酸(Glutamic acid, Glu, E)およびアミノ酸類似体で構成された群から選択される1つ以上の陰電荷のアミノ酸を含んでもよい。
【0046】
好ましくは、前記キャリアペプチド核酸は全体的に陽電荷を有するように、1個以上のガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体を含むことを特徴とする。特に、前記ガンマ−またはアルファ−バックボーン改変ペプチド核酸単量体は、電気的陽性を有するようにリジン(Lysine、Lys、K),アルギニン(Arginine、Arg、R)、ヒスチジン(Histidine、His、H)、ジアミノ酪酸(Diamino butyric acid、DAB)、オルニチン(Ornithine、Orn)およびアミノ酸類似体で構成された群から選択される1つ以上の陽電荷を有するアミノ酸をバックボーンに含んでもよい。
【0047】
電荷を付与するためのペプチド核酸単量体の改変は、前記バックボーン改変の他にも、核酸塩基か改変されたペプチド核酸単量体を用いてもよい。
【0048】
好ましくは、前記キャリアペプチド核酸は、電気的陽性を有するように、アミン(amine)、トリアゾール(triazole)またはイミダゾール残基(imidazole moiety)を核酸塩基(nucleobase)に含むか、電気的陰性を有するように、カルボン酸(carboxylic acid)を塩基に含んでもよい。
【0049】
また、キャリアペプチド核酸の改変ペプチド核酸単量体は、陰電荷をバックボーンもしくは核酸塩基にさらに含んでもよいが、改変ペプチド核酸単量体は、陽電荷を有する単量体が、陰電荷を有する単量体に比べてより多く含まれ、全体的にキャリアペプチド核酸の電荷が陽性となることが好ましい。
【0050】
好ましくは、本発明による前記構造式(1)の核酸複合体は、全体的に陽電荷を有すること特徴とする。
【0051】
本発明による前記構造式(1)の核酸複合体において、疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、消光剤および蛍光/発光マーカーなどからなる群から選択される1つ以上の物質が、生理活性核酸および/またはキャリアペプチド核酸に結合されていることを特徴とする。好ましくは、前記疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、およびイメージングのための蛍光/発光マーカーなどからなる群から選択される1つ以上の物質は、前記キャリアペプチド核酸に結合されてもよい。
【0052】
本発明において、前記疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、消光剤、蛍光マーカーおよび発光マーカーからなる群から選択される1つ以上の物質と、生理活性核酸および/またはキャリアペプチド核酸との結合は、単純共有結合またはリンカー媒介性の共有結合であってもよいが、これに限定されるものではない(表1参照)。好ましくは、前記核酸運搬体に結合された、細胞透過、溶解度、安定性、運搬、およびイメージング関連物質(例えば、疎水性残基など)は、標的遺伝子の発現を調節する生理活性核酸と独立して存在することになる。
【0053】
本発明において、前記核酸の相補的な結合形態は、大別して、逆平行結合(antiparallel binding)と平行結合(parallel binding)の形態を有することを特徴とし、前記核酸の相補的な結合形態は、生理活性核酸の標的配列(生理活性核酸と相補的な配列)の存在下で分離される構造を有する。
【0054】
逆平行結合と平行結合は、DNA−DNAまたはDNA−PNAの結合方式において、5´−方向性と3´−方向性によって決定される。逆平行結合は、一般のDNA−DNAまたはDNA−PNAの結合方式であって、本発明による構造式(1)の核酸複合体を例として説明すると、生理活性核酸は5´から3´の方向に、キャリアペプチド核酸は3´から5´の方向に互いに結合される形態を意味する。平行結合は、逆平行結合よりは結合力がやや低い形態であって、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸が両方とも5´から3´の方向または3´から5´の方向に互いに結合される形態を意味する。
【0055】
好ましくは、本発明による構造式(1)の核酸複合体において、前記生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)は、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子、特に、標的遺伝子のmRNAとの結合力よりも低いことを特徴とすることが好ましい。
【0056】
上記のように、前記生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)が、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子、特に、標的遺伝子のmRNAとの結合力よりも低くなるための具体的な方法の例として、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、平行結合(parallel binding)または部分的特異的結合(Partial specific binding) により互いに結合することによって、生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)を、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子、特に、標的遺伝子のmRNAとの結合力よりも低くしてもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、他の例として、前記キャリアペプチド核酸は、リンカー、ユニバーサル塩基(universal base)、および生理活性核酸の対応する塩基と相補的ではないペプチド核酸塩基から選択される1つ以上のペプチド核酸塩基を有することにより、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との間の結合力(融解温度、melting temperature、Tm)を、生理活性核酸と、生理活性核酸の標的遺伝子、特に、標的遺伝子のmRNAとの間の結合力よりも低くしてもよい(表1参照)。
【0058】
前記ユニバーサル塩基(universal base)は、アデニン(adenine)、グアニン(guanine)、シトシン(cytosine)、チミン(thymine)およびウラシル(Uracil)などの天然塩基、並びに、イノシンPNA(inosine PNA)、インドールPNA(indole PNA)、ニトロインドールPNA(nitroindole PNA)、および無塩基(abasic)といった、選択性なしに結合し、相補的な結合力より低い結合力を有する塩基からなる群から選択される1つ以上を用いてもよく、好ましくは、イノシンPNAを用いてもよい。
【0060】
前記表1中、Nは核酸の塩基(ATGC)であり、*はアンチセンス核酸(antisense nucleic acid)配列と相補的ではない配列、$はユニバーサル塩基(universal base)であって、=はリンカーであり、5´−、3´−は核酸(塩基)の方向性を示す。
【0061】
本発明において、前記核酸複合体の機能を調節するための核酸の結合形態と電気的性質の組み合わせを提供し、前記核酸の結合形態と電気的性質の組み合わせにより粒子サイズおよび作用時点を調節することで、細胞透過性、溶解度、および特異度を向上させることを特徴とする。
【0062】
特に、核酸複合体の粒子サイズは、生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸の電荷を調節することで達成可能であり、キャリアペプチド核酸の陽電荷の適切な数と生理活性ペプチド核酸が有する電荷による好適な電荷平衡により、核酸複合体の粒子サイズを小さくすることができる。
【0063】
一方、キャリアペプチド核酸と生理活性ペプチド核酸の結合力を調節することで、標的遺伝子の存在下で、生理活性ペプチド核酸が標的配列と結合される時点(生理活性核酸の標的配列への置換時点、標的特異的分離および結合時点)などの調節が可能である。
【0064】
すなわち、本発明による構造式(1)の核酸複合体において、生理活性核酸の標的遺伝子への置換(strand displacement)時点、標的特異的分離および結合(target specific release and bind)時点の調節は、複合体の非特異結合のためのキャリアペプチド核酸の非特異塩基、およびユニバーサル塩基(universal base)、およびリンカーの有無、および個数、および位置によって調節が可能であることを特徴とし、複合体の相補的な結合形態である平行(parallel)または逆平行(antiparallel)形態の結合などと、前記条件の組み合わせによって調節が可能であることを特徴とする。
【0065】
本発明による構造式(1)の核酸複合体は、前記生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を適切な条件でハイブリダイズすることによって製造することができる。
【0066】
本発明における「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズ」は、相補的な1本鎖核酸が二本鎖核酸を形成することを意味する。ハイブリダイズは、2本の核酸鎖間の相補性が完全な場合(perfect match)に行われるか、または一部に不整合(mismatch)塩基が存在しても行われることができる。ハイブリダイズに必要な相補性の程度は、ハイブリダイズ条件によって変わり得て、特に、結合温度によって調節可能である。
【0067】
本発明による前記生理活性核酸またはキャリアペプチド核酸は、両末端にリポーター(reporter)とリポーター蛍光を消光(quenching)することができる消光剤(quencher)が結合し得る。前記リポーターは、 FAM(6−carboxyfluorescein)、Texas red、HEX(2’、4’、5’、7’、−tetrachloro−6−carboxy−4,7−dichlorofluorescein) 、及びCy5で構成される群から選択される一つ以上であってもよく、好ましくは Cy5を使用する。前記消光剤は、TAMRA(6−carboxytetramethyl−rhodamine) 、BHQ1、BHQ2及びDabcylで構成される群から選択される一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明において、前記キャリアペプチド核酸は、生理活性核酸と相補的に水素結合して前記核酸を細胞内に運ぶことができ、前記生理活性核酸は標的遺伝子と結合して標的遺伝子の発現を調節することを特徴とする。
【0069】
本発明の「標的遺伝子」は、活性、抑制、または標識しようとする核酸配列(塩基配列)を意味し、用語「標的核酸」と違いがなく、本明細書で混用される。
【0070】
前記標的遺伝子を含む標的核酸(塩基配列)が生体外(in vitro)または生体内(in vivo)で前記複合体と接触(結合)すると、キャリアペプチド核酸から生理活性核酸が分離されて生物学的活性を示すことになる。
【0071】
さらに他の観点において、本発明は、構造式(1)の核酸複合体を含む標的遺伝子の発現調節用組成物、疾病の予防および治療用組成物、および疾病の診断用組成物を提供する。
【0072】
また、本発明は、前記構造式(1)の核酸複合体を予防または治療を要する患者に投与することを含む、疾病の予防または治療方法を提供する。
【0073】
本発明は、前記構造式(1)の核酸複合体を用いることを含む、標的遺伝子の発現調節方法を提供する。
【0074】
本発明による構造式(1)の核酸複合体を用いて予防、治療、または診断可能な疾病は、構造式(1)の核酸複合体中の生理活性核酸が結合する標的遺伝子によって決定され、好ましくは癌または腫瘍であるが、これに限定されるものではない。
【0075】
用語「治療用組成物」は、「医薬(薬剤学的、薬剤学的)組成物」と混用することができ、本発明の生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)および前記核酸と結合するキャリアペプチド核酸を含む核酸複合体を有効性分として含む。
【0076】
本発明の治療用組成物は、標準医薬実施に従って、経口または非経口投与剤型の形態に剤型化してもよい。これらの剤形は、前記有効成分以外に薬学的に許容可能な担体、賦形剤、補助剤または希釈剤などの添加物を含有してもよい。
【0077】
用語「薬学的に許容可能な(physiologically acceptable)」は、化合物の生物学的活性と物性を損傷させない特性を意味する。
【0078】
用語「担体(carrier)」は、細胞または組織内への複合体の付加を容易にする化合物として定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞または組織内への多くの有機化合物の投入を容易にする通常使用される担体である。
【0079】
用語「希釈剤(diluent)」は、対象化合物の生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解させる水で希釈される化合物と定義される。バッファー溶液に溶解されている塩は、当該分野で希釈剤として用いられる。通常用いられるバッファー溶液はリン酸バッファー食塩水であり、これは、ヒト溶液の塩状態を模倣しているためである。バッファー塩は、低い濃度で溶液のpHを制御することができるため、バッファー希釈剤が化合物の生物学的活性を改変することは殆どない。
【0080】
ここで用いられた複合体を含有する化合物は、ヒト患者に、その自体で、または、併用療法(combination therapy)のように他の活性成分とともに、または適切な担体や賦形剤とともに混合された医薬組成物として、投与可能である。
【0081】
本発明において使用するに適した医薬組成物には、活性成分が、その意図された目的を達成するに有効な量で含有されている組成物が含まれる。より具体的に、治療的有効量は、治療されるべき固体の生存を延長するか、疾患の症状を防止、軽減、もしくは緩和させるに有効な化合物の量を意味する。治療学的有効量の決定は、特に、ここで提供された詳細な開示内容の側面で、通常の技術者の能力範囲内にいる。
【0082】
本発明で用いられる用語「予防」は、前記複合体、またはその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物の投与(または塗布)により、坑癌活性を示し、癌の増殖を抑制させるか、癌の発症を遅延させる全ての行為を意味する。また、本発明で用いられる用語「治療」は、前記複合体、またはその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物の投与(または塗布)により、癌疾患の症状が好転または完治される全ての行為を意味する。
【0083】
本発明による核酸複合体を含む組成物で予防または治療可能な疾病は特に制限されないが、好ましくは、腫瘍または癌、炎症性疾患、老人性黄斑変性、難聴、皮膚疾患などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
本発明による核酸複合体を含む治療用組成物で治療可能な疾患は、核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子によって決定され、核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子の例として、癌治療のための標的遺伝子としては、サバイビン(Survivin)、VEGF、アンドロゲンレセプター(Androgen receptor)、KRAS、クラスタリン(Clusterin)、TGFβR2、ERBB3、トランスグルタミナーゼ 2(Transglutaminase 2)、ABCB1、Hsp27、STAT3、PD−L1などが挙げられる。
【0085】
炎症疾患を標的とする遺伝子としてはPDE4B、Pellino−1が挙げられ、希少疾患および重症疾患を標的とする遺伝子としてはSMN2、ApoB−100、ICAM−1、ApoCIII、TTR、HTT、GHr、SOD1、ANGPTL3、PKK、miR−21、TMPRSS6、FMR1、Connexin 26が挙げられ、心血管疾患を標的とする遺伝子としてはFactor XI、Apo(a)、ApoCIII、AGTが挙げられ、代謝性疾患を標的とする遺伝子としてはGCGR、ANGPTL3、miR−103/107、DGAT2が挙げられ、皮膚疾患を標的とする遺伝子としてはIFI16、TLR6、TIEG1が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明の治療用組成物は、それらのみで、もしくは後述のような適切な薬学的に許容される担体または賦形剤とともに、公知の方法により非経口または経口投与用剤型に製剤化してもよい。このような剤型の具体的な例としては、注射剤、軟質カプセル剤、硬質カプセル剤、錠剤、シロップ剤などの経口剤または外用剤が挙げられる。
【0087】
好ましくは、本発明による核酸複合体を含む治療用組成物は、非経口投与用剤型で製造されて用いられることができる。適切な非経口投与用剤型としては、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸腔内注射用などに適切な注射液または凍結乾燥剤形が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0088】
さらに他の観点において、本発明による核酸複合体は、皮膚伝達(skin delivery)経路を介して投与されてもよい。皮膚伝達のための剤型は、水性溶液、クリーム、および軟膏などから選択されてもよいが、これに限定されるものではなく、皮膚伝達のために当該技術分野に公知の全ての形態の剤型が利用可能である。
【0089】
非経口投与用剤型に製剤化するために、本発明による核酸複合体を含む治療用組成物は、本発明による複合体を含み、食塩水、滅菌数、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち一つの成分または二つ以上の成分を混合して使用でき、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形で製剤化することができる。特に、凍結乾燥(lyophilized)された形態の剤形で製剤化して提供することが好ましい。凍結乾剤形燥製造のために本発明が属する技術分野で通常知られている方法が使用でき、凍結乾燥のための安定化剤が追加されてもよい。さらには、当分野の適正な方法でまたはレミントン薬学(Remington’s pharmaceutical Science,Mack Publishing company,Easton PA)に開示されている方法を利用して、各疾病に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0090】
また、本発明による治療用組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、シロップ剤などのような経口投与剤型に剤型化してもよく、この際、薬学的に許容される1つ以上の賦形剤が添加されてもよい。
【0091】
さらに他の観点において、本発明は、本発明による核酸複合体を含む癌の治療用組成物を提供する。本発明による組成物で治療可能な腫瘍または癌は特に限定されず、固形癌と血液癌を全て含む。好ましくは、標的遺伝子(例えば、サバイビン(survivin: a new target for anti−cancer therapy. Cancer Treat Rev. 35(7):553−62, 2009)が発現するすべての癌を含み、さらに好ましくは、前記癌は、肝癌、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、大腸癌、結腸癌、子宮頚癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直腸癌、頭頸部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、および神経膠腫からなる群から選択される。
【0092】
好ましくは、本発明による癌治療のための核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、サバイビン(Survivin)、VEGF、アンドロゲンレセプター(Androgen receptor)、KRAS、クラスタリン(Clusterin)、TGFβR2、ERBB3、トランスグルタミナーゼ 2(Transglutaminase 2)、ABCB1、Hsp27、STAT3およびPD−L1で構成された群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0093】
好ましくは、本発明による癌治療用組成物には、配列番号1〜18の何れか1つの配列を有するサバイビン特異的生理活性ペプチド核酸およびそれに相補的なキャリアペプチド核酸を含む。キャリアペプチド核酸は、好ましくは、配列番号19〜40から選択される何れか1つの配列を有してもよく、前記配列のうち一部がユニバーサル塩基で置換されて用いられてもよい。
【0094】
また、本発明による癌治療用組成物には、好ましくは、配列番号41で表されるVEGF特異的生理活性ペプチド核酸または配列番号49で表されるPD−L1特異的生理活性ペプチド核酸、およびこれに相補的なキャリアペプチド核酸を含む。キャリアペプチド核酸は、好ましくは、配列番号42、43(VEGF)または配列番号50(PD−L1)の配列を有してもよく、前記配列のうち一部がユニバーサル塩基で置換されて用いられてもよい。
【0095】
さらに他の観点において、本発明は、本発明による核酸複合体を含む老人性黄斑変性(Aged Macular Degeneration) 治療用組成物を提供する。本発明による老人性黄斑変性のための核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、VEGFであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0096】
好ましくは、本発明による老人性黄斑変性治療用組成物には、配列番号41で表されるVEGF特異的生理活性ペプチド核酸、およびこれに相補的なキャリアペプチド核酸を含む。キャリアペプチド核酸は、好ましくは、配列番号42、43の配列を有してもよく、前記配列のうち一部がユニバーサル塩基で置換されて用いられてもよい。
他の観点において、本発明は、本発明による核酸複合体を含む皮膚疾患の予防または治療用組成物を提供する。前記皮膚疾患としては、乾癬(psoriasis)、色素沈着関連皮膚疾患、およびアトピー疾患などが挙げられるが、これに限定されない。本発明による皮膚疾患治療のための核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、IFI16、TLR6およびTIEG1で構成された群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0097】
好ましくは、本発明は、乾癬治療用組成物を提供する。本発明による乾癬治療用組成物には、配列番号44〜47の何れか1つの配列を有するIFI16特異的生理活性ペプチド核酸およびそれに相補的なキャリアペプチド核酸を含む。キャリアペプチド核酸は、好ましくは、配列番号48の配列を有してもよく、前記配列のうち一部がユニバーサル塩基で置換されて用いられてもよい。
【0098】
前記皮膚疾患の予防または治療用組成物は、水性溶液、クリーム、ゲル、ペースト、ローションおよび軟膏などの剤型で製造されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0099】
さらに他の観点において、本発明は、本発明による核酸複合体を含む炎症性疾患の治療用組成物を提供する。本発明による炎症性疾患治療のための核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、PDE4BおよびPellino−1で構成された群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0100】
さらに他の観点において、本発明は、本発明による核酸複合体を含む希少疾患および重症疾患の治療用組成物を提供する。本発明による希少疾患および重症疾患治療のための核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、SMN2、ApoB−100、ICAM−1、ApoCIII、TTR、HTT、GHr、SOD1、ANGPTL3、PKK、miR−21、TMPRSS6、FMR1およびConnexin 26で構成された群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0101】
好ましくは、本発明による核酸複合体を含む希少疾患および重症疾患は、難聴であり、核酸複合体中に含まれた生理活性核酸が結合する標的遺伝子は、Connexin 26であってもよい。
【0102】
本発明の複合体は、リポソーム(liposome)などの伝達体を用いて投与(または塗布)してもよい。前記リポソームは、リンパ組織のような特定組織に対して前記複合体を標的化するか、感染細胞に対して選択的に標的化することを助け、また、前記複合体が含まれた組成物の半減期を増加させることを助けることができる。リポソームとしては、エマルション、フォーム(foam)、ミセル(micelle)、不溶性断層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層(lamellar layer)などが挙げられる。このような製剤において、送逹される前記複合体は、単独で、または特定細胞を対象として、CD45抗原に結合されるモノクローナル抗体のようなリンパ細胞のうち優勢な受容体に結合する分子とともに、またはその他の治療組成物とともに、リポソームの一部として混入させる。したがって、本発明の所定複合体で充填または塗布されて(decorated)前記複合体組成物を送逹するリポソームは、リンパ細胞の前記部位に指向されることができる。
【0103】
本発明で用いるためのリポソームは、通常、中性および陰電荷リン脂質、およびコレステロールなどのステロールを始めとする標準ベシクル(vesicle)−形成脂質から形成される。通常、例えば、血流中におけるリポソームの安定性、酸不安定性(acid lability)、およびリポソームのサイズなどを考慮して脂質を選択する。リポソームの製造には、様々な方法を用いることができる。例えば、文献[Szoka, et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9:467, 1980), および米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号および第5,019,369号] に開示されたような方法を利用することができる。
【0104】
本発明は、一態様において、複合体、または複合体を含む組成物を個体に投与(または塗布)して疾病を治療して、抑制(または緩和)する方法を提供する。
【0105】
本発明による複合体を用いて治療可能な疾患は、用いられる生理活性核酸の特性により決定され、特に制限されない。
【0106】
好ましい本発明による複合体を用いて治療可能な疾患の例としては、癌、黄斑変性などの異常血管増殖疾患、皮膚疾患、炎症疾患、自己免疫疾患などが挙げられるが、これに制限されない。
【0107】
本発明による複合体を含む組成物は、癌疾患を治療するために、または癌疾患の症状を抑制(または緩和)するために、医薬的に効果的な量で投与(または塗布)されてもよい。本発明による薬学的組成物の投与量/塗布量は、色素沈着関連皮膚疾患の種類、患者の年齢、体重、症状の特性および程度、現在治療法の種類、治療回数、投与(塗布)形態、および経路などの様々な要因によって変わり得て、該当分野の専門家によって容易に決定されることができる。本発明の組成物は、上述の薬理学的または生理学的成分をともに投与(塗布)するか、順に投与(塗布)してもよく、また、追加の従来の治療剤と併用して投与(塗布)してもよく、従来の治療剤とは順にもしくは同時に投与(塗布)してもよい。このような投与(塗布)は、単一または多重投与(塗布)であってもよい。
【0108】
本発明において、「個体」は、本発明による複合体を投与(塗布)して軽減、抑制、または治療可能な状態または疾患を患っているか、その危険を有している哺乳動物を意味し、好ましくはヒトを意味する。
【0109】
また、本発明の化合物の人体への投与量(塗布量)は、患者の年齢、体重、性別、投与(塗布)形態、健康状態、および疾患の程度によって変わり得て、体重が70kgである成人患者を基準としたときに、一般に、0.001〜1,000mg/日であり、好ましくは0.01〜500mg/日であって、医者または薬剤師の判断によって、一定時間間隔で1日1回〜数回に分割投与(塗布)してもよい。
【0110】
本発明の方法で用いられる任意の複合体、またはそれを含む混合物の治療学的有効量は、細胞培養分析から初期に測定されることができる。例えば、線量(dose)は、細胞培養で決定されたIC50(half maximal inhibitory concentration)またはEC50(half maximal effective concentration)を含む循環濃度範囲を得るために動物モデルで計算されることができる。このような情報は、ヒトでの有用な線量をより正確に決定するのに用いられることができる。
【0111】
ここで記載されている複合体、またはそれを含む混合物の毒性と治療効率性は、例えば、LD50(群集の50%に対する致死量)、ED50(群集の50%に対して治療効果を有する線量)、IC50(群集の50%に対して治療抑制効果を有する線量)を決定するために、細胞培養または実験動物での標準製薬過程によって算定されることができる。毒性と治療効果との線量比が治療指数であり、これは、LD50とED50(または、IC50)との比率で表現されることができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養分析により得られたデータは、ヒトに用いる線量の範囲を算定するのに用いられることができる。このような化合物の投与量(dosage)または塗布量は、好ましくは、毒性がないか殆どない状態でED50(または、IC50)を含む循環濃度の範囲内にある。
【0112】
さらに他の観点において、本発明は、前記複合体を含む癌または腫瘍診断用キットに関する。
【0113】
本発明において、癌または腫瘍診断のための検体試料は、ヒトを含む動物の特定組織または器官から由来することができる。組織の代表的な例としては、結合、皮膚、筋肉または神経組織が含まれる。器官の代表的な例としては、目、脳、肺、肝、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、すい臓、腎臓、胆嚢、胃、小腸、睾丸、卵巣、子宮、直腸、神経系、腺及び内部血管が含まれる。
【0114】
前記検体試料は、生物学的根源から出てきたいかなる細胞、組織、流体液(fluid)、または本発明によって良好に分析できるいかなる他の媒質(medium)も含み、これはヒト、動物、ヒトまたは動物の消費のために製造された食べ物から得た試料が含まれる。また、試料は、体液試料を含み、これは喀痰、血液、血清、血しょう、リンパ、母乳、小便、糞便、眼球流液、唾液、精液、脳抽出物(例えば、脳粉砕物)、脊髄液、虫垂、脾臓及び扁桃腺組織抽出物が含まれるか、これらに限定されない。
【0115】
本発明のキットは、バッファー、DNAポリメラーゼ補因子及びデオキシリボヌクレオチド−5−トリホスフェートのような標的核酸増幅反応(例えば、PCR反応)を実施するのに必要な試薬を選択的に含むことができる。選択的に、前記キットは、様々なポリヌクレオチド分子、逆転写酵素、バッファー及び試薬、及びDNAポリメラーゼの活性を抑制する抗体を含むことができる。また、前記キットで、特定反応で使用される試薬の最適量は、本明細書に開示事項を習得した当業者によって容易に決定され得る。典型的に、前記キットは、先述した構成成分を含む別途の包装またはコンパートメント(compartment)で製作され得る。
【0116】
本発明の実施例では、前記核酸複合体の結合による粒子サイズを分析した。その結果、
図1に示されたように、核酸複合体の粒子サイズが、1本鎖核酸に比べて数十nmに小さくなることが確認された(実施例2参照)。
【0117】
本発明の他の実施例では、前記核酸複合体を用いて細胞透過性を分析した。その結果、
図2aおよび
図2bに示されたように、電荷を有する核酸複合体の細胞内への導入により、細胞内Cy3蛍光(マーカー)が最も高く現れ、電荷を有さない生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸が対(duplex)を成さない複合体の場合、複合体の細胞内への透過率が低いことが確認された(実施例3参照)。
【0118】
本発明のさらに他の実施例では、前記核酸複合体を用いて、腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。その結果、
図3a〜
図3cに示されたように、タンパク質および下位経路遺伝子の発現パターンを分析した時に、前記核酸複合体で処理した実験群で、サバイビンおよび下位経路タンパク質の発現が抑制されることを確認した(実施例4参照)。
【0119】
本発明のさらに他の実施例では、前記核酸複合体の結合力を調節することで標的遺伝子であるサバイビンタンパク質の発現抑制時点が調節され、サバイビンおよびVEGF特異的生理活性核酸を含む核酸複合体および腫瘍細胞株を用いた実験により、坑癌効能を示すことを確認した(実施例5〜実施例8など参照)。
【0120】
本発明のさらに他の実施例では、前記複合体構造を用いて、細菌およびカビの増殖が抑制可能であることを確認した(実施例12参照)。
【0121】
本発明によるキャリアペプチド核酸(すなわち、改変されたキャリアペプチド核酸)は、改変されていない従来のネーキッドペプチド核酸(naked−PNA)の自己凝集(self−aggregation)性質などによる沈澱問題を解消し、細胞透過性、溶解度の増加、および細胞内拡散効果を増進させることができる。
【0122】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、(a)生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)とキャリアペプチド核酸を結合させて複合体を形成するステップと、(b)前記複合体を標的細胞に接触させて細胞内に導入させるステップと、を含む、前記複合体を用いた標的遺伝子発現の調節方法に関する。
【0123】
本発明において、前記標的細胞は、上述の癌または腫瘍来由の細胞であってもよいが、これに限定されない。本発明において、前記(b)ステップにおいて、複合体が細胞内に導入されて移動した後、生理活性核酸は、相補的な塩基配列を有する標的核酸と結合し、キャリアペプチド核酸から分離されることを特徴とし、前記生理活性核酸は標的遺伝子と結合して標的遺伝子の発現を調節することを特徴とする。
【0124】
本発明によると、前記複合体は、標的核酸(標的配列)が存在しない場合には、生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸が相補的な結合を維持するのに対し、生理活性核酸の塩基配列と相補性を成す標的核酸が存在する場合には、「生理活性核酸の標的配列への置換(strand displacement)」、「標的特異的分離および結合(target specific release and bind)」方法により、生理活性核酸がキャリアペプチド核酸から分離されて標的核酸と結合する。前記分離および結合の時点は、生理活性核酸のキャリアペプチド核酸と標的核酸の塩基配列の相補性によるそれぞれの核酸(塩基)間の水素結合力の調節により調節可能であることを特徴とする。
【0125】
したがって、本発明の好ましい具現例によると、標的特異的分離および結合方法は、i)相補的な結合のうち一部が異なる配列(partial specific sequence)を有するキャリアペプチド核酸構造として「一塩基多型(single nucleotide polymorphism、SNP)」もしくは「生理活性核酸よりも短い配列」を有するように製作したり、ii)キャリアペプチド核酸の一部配列をユニバーサル塩基(universal base)で交替したり、iii)キャリアペプチド核酸の一部配列をリンカー(linker)で代替し、vi)生理活性核酸に平行(parallel)に結合するキャリアペプチド核酸構造を有するようにすることで、標的核酸と生理活性核酸の結合力に比べてキャリアペプチド核酸と生理活性核酸の結合力が相対的に低いように製作される方式により実現されてもよく、前記方法を2つ以上組み合わせで使用可能であって、平行結合(parallel binding)方式を用いることが好ましい。
【0126】
前記ユニバーサル塩基(universal base)は、アデニン(adenine)、グアニン(guanine)、シトシン(cytosine)、チミン(thymine)、ウラシル(Uracil)などの天然塩基と、選択性なしに結合し、相補的な結合力より低い結合力を有する塩基としてイノシンPNA(inosine PNA)、インドールPNA(indole PNA)、ニトロインドールPNA(nitroindole PNA)、および無塩基(abasic)からなる群から選択される1つ以上を用いてもよく、好ましくは、イノシンPNAを用いてもよい。
【0127】
前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の結合力を調節することで、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の分離時点および生理活性核酸と生理活性核酸の標的遺伝子との結合時点の調節が可能であるという利点がある。
【0128】
[実施例]
以下、本発明を、実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0129】
実施例1:生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)およびキャリアペプチド核酸、並びにそれらを用いた複合体の製造
本発明による構造式(1)の核酸複合体の効能を検証するために、標的遺伝子としてサバイビンを使用した。サバイビンは、今まで先行された殆どの新生腫瘍や形質変異された細胞株で共通して発現されるタンパク質であって、坑癌治療において重要な標的となるのであろうと予測されている(survivin: a new target for anti−cancer therapy. Cancer Treat Rev. 35(7):553−62, 2009)。
【0130】
サバイビンを抑制するために、サバイビンに対する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)としてアンチセンスペプチド核酸(antisense PNA)およびRNAを使用した。
【0131】
本発明のサバイビンに対する生理活性核酸(antisense PNAおよびRNA)は、配列番号1番〜18番と記載される配列で構成されている。本実施例で用いられたペプチド核酸ベースの生理活性核酸は、イメージングのための蛍光(Cy3)を3´末端に結合し、塩基配列、単量体の改変および構造は表2のとおりである。
【0132】
本発明で使用したペプチド核酸は、何れもパナジーン(PANAGENE、韓国)でHPLC精製方法により合成した。
【0133】
本発明のサバイビンを標的遺伝子とする生理活性核酸を細胞内に伝達するためのキャリアペプチド核酸は、配列番号19番〜40番と記載される配列で構成されている。本実施例で用いられたキャリアペプチド核酸の塩基配列、単量体の改変および構造は、表2のとおりである。
【0134】
複合体の粒子サイズの分析、細胞透過率の分析、および標的遺伝子の発現阻害効率の分析のために、表2の生理活性核酸とキャリアペプチド核酸を組み合わせて複合体の製造に使用した。
【0136】
単量体の改変では、電気的な性質を付与するために、電気的陽性を有するようにリシン(Lysine、Lys、K、
(+)で表記)を、電気的陰性を有するようにグルタミン酸(Glutamic acid、Glu、E、
(−)で表記)をペプチド核酸のバックボーンに含むように、改変されたペプチドバックボーンを有するように製作した。
【0137】
それぞれの生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の組み合わせはDMSO下でハイブリダイズされ、その結果、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸で構成された複合体が製作された。
【0138】
実施例2:生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の結合、および電気的性質による複合体の粒子サイズの分析
実施例1で表2の構造を有するように製造された生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いて、粒子のサイズを分析しようとした。
【0139】
実施例2−1.走査型電子顕微鏡(Field emission scanning electron microscopy、FE−SEM)分析
実施例1で製造された複合体の粒子サイズを分析するために、走査型電子顕微鏡(Field emission scanning electron microscopy)を用いて粒子サイズを分析した。走査型電子顕微鏡分析のために、キャリアペプチド核酸と生理活性核酸250nMをハイブリダイズすることで用意された複合体3ulをシリコンウェハに落とした後、−70℃で1時間冷凍させた後、20分間凍結乾燥させた。乾燥した複合体をオスミウム(osmium)に10分間コーティングした後、5kVから10kVの走査型電子顕微鏡で分析した。
【0140】
実施例2−2.様々な電気的性質による複合体構造の走査型電子顕微鏡(Field emission scanning electron microscopy、FE−SEM)分析
実施例1の方法により、様々な電気的性質を有する複合体を製造し、粒子サイズを分析するために実施例2−1の方法で分析した。
【0141】
その結果、
図1に示されたように、互いに異なる電気的性質を有する生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸が平行結合(parallel binding)により構成された複合体の粒子サイズが、1本鎖からなる生理活性核酸の粒子サイズより小さいことを確認した。また、
図2aおよび
図2bのように、PNA duplex 1は生理活性ペプチド核酸(配列番号6)とキャリアペプチド核酸(配列番号32)、PNA duplex 2は生理活性ペプチド核酸(配列番号5)と3個の陽電荷を有するキャリアペプチド核酸(配列番号32)、PNA duplex 3は生理活性ペプチド核酸(配列番号1)とキャリアペプチド核酸(配列番号37)、PNA duplex 4は電荷を有さない生理活性ペプチド核酸(配列番号1)とキャリアペプチド核酸(配列番号23)を用いて複合体の粒子サイズを確認した。キャリアペプチド核酸の陽電荷が2個から3個に増加すると、粒子サイズが小さくなるが、5個以上となると、粒子のサイズが大きくなる特徴がある。また、粒子サイズを決定する他の要素として、複合体を成す生理活性ペプチド核酸の電荷による全体的な複合体の生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が有する適切な電気的性質によって、複合体の粒子サイズが異なることを確認した。
【0142】
実施例3:キャリアペプチド核酸の特性による細胞透過率の分析
実施例1で表2の構造を有するように製造された生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いて、細胞透過性を分析しようとした。
【0143】
実施例3−1.細胞培養
ATCC(American Type Culture Collection、米国)から入手したヒト子宮癌細胞(HeLa)をDMEM培養培地(Dulbecco Modified Eagle Medium、WELGENE、韓国)に10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加し、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で培養した。
【0144】
実施例3−2.生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
実施例3−1で培養されたHeLa細胞株(5x10
3cells/ウェル)を同一の培養条件で8−ウェルプレートで24時間培養した後、実施例1で製作された生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体を500nMの濃度で処理し、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で、24、48、72および96時間の間隔で培養してから、複合体の細胞内への導入を測定した。
【0145】
実施例3−3.生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への透過率の分析
生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の細胞内への導入程度を確認するために、共焦点燎微鏡(Confocal microscopy)で観察した。核はDAPI染色で確認し、生物学的活性を有するペプチド核酸は、Cy3を標識して細胞内への導入有無を確認した。
【0146】
実施例3−4.生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の、細胞内標的遺伝子存在時における分離有無の分析
生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が細胞内に導入されて標的遺伝子と会合した時に、その結合が分離されるかを確認するために、Cy3で標識した生理活性核酸と、Alexa488で標識したキャリアペプチド核酸との重畳シグナルの有無を共焦点燎微鏡(Confocal microscopy)で観察した。
【0147】
実施例3−5.キャリアペプチド核酸を用いた単一生理活性小干渉リボ核酸(single antisense siRNA)の細胞内への透過率の分析
生物学的活性を有する単一生理活性小干渉リボ核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の細胞内への導入程度を確認するために、共焦点燎微鏡(Confocal microscopy)で観察した。核はDAPI染色により確認し、生物学的活性を有する単一生理活性小干渉リボ核酸はCy3で標識して細胞内への導入有無を確認した。
【0148】
その結果、
図3a〜
図3cに示されたように、電荷を有する生理活性ペプチド核酸(配列番号14)とキャリアペプチド核酸(配列番号32)の複合体の細胞内への導入により、細胞内でCy3蛍光が最も高く現れ、生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸が対(duplex)を成さないか、複合体の電荷が存在しない場合には、生理活性ペプチド核酸(配列番号1)とキャリアペプチド核酸(配列番号19)の複合体の細胞内への透過率が低いことが確認された。また、複合体は、どのような電気的性質および形態で構成されたかによって細胞内への透過率が変わることが確認された。
図4から確認されるように、生物学的安定性を示すペプチド核酸で構成された生理活性ペプチド核酸(配列番号14)とキャリアペプチド核酸(配列番号32)の複合体は、細胞内への透過率が高いだけでなく、長期間にわたって細胞内に存在することが確認された。同一の電荷を有する生理活性ペプチド核酸(配列番号14)とキャリアペプチド核酸(配列番号39)の複合体は、細胞内部に導入されると、複合体が結合された状態で存在していて、48時間後には分離されることが、
図5a〜
図5fのように確認された。
図6a〜
図6gにおける結果では、表2に示された生理活性核酸と同一の配列を有するsingle siRNAは、それ自体のみでは、細胞内に透過されないことが確認されたが、キャリアペプチド核酸(配列番号39)とsingle siRNAが複合体をなすと、高い効率で細胞内に透過されることが確認された。
【0149】
実施例4:生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いた腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制
実施例1で表2の構造を有するように製造された生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いて、腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制効率を分析しようとした。
【0150】
実施例4−1.細胞培養
ATCC(American Type Culture Collection、米国)から入手したヒト由来大膓癌細胞(SW480)およびヒト由来乳癌細胞(SK−BR−3)をRPMI1640培養培地(Roswell Park Memorial Institute 、WELGENE、韓国)に10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加し、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で培養した。
【0151】
実施例4−2.細胞培養、および生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
ヒト由来の癌細胞株の培養条件、および生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法は、実施例3と同様であった。但し、6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cellsを培養し、複合体で処理した後、72、96時間の間隔で培養してから、標的遺伝子の発現抑制有無を確認した。
【0152】
実施例4−3.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
実施例4−2の条件で処理された細胞株から総タンパク質を抽出し、BCA定量法(Bicinchoninic acid assay)によりタンパク質を定量した。タンパク質を電気泳動(SDS−PAGE)上でタンパク質のサイズ毎に分離し、分離されたゲル状のタンパク質をメンブレンに移した後、抗−サバイビン抗体(Cell Signaling, 米国)、抗−CyclinD 1(SantaCruz, 米国) ウサギ由来抗体を1次反応させ、2次反応として抗−ウサギ抗体(SantaCruz, 米国)を用いて反応させてから、ECL(Enhanced chemiluminescence, Amersham, 米国)溶液で処理した。抗体処理および洗浄過程済みの前記メンブレンは、LAS下で、サバイビン(Survivin)および下位経路(downstream)遺伝子であるCyclin D1のタンパク質の発現様相を確認した。
【0153】
その結果、
図7に示されたように、PNA1と2は、表2に示されたような同一の配列を有するが、互いに異なる電気的性質を有する生理活性ペプチド核酸と、同一の電気的性質を有するキャリアペプチド核酸との複合体を成したものである。PNA1は生理活性ペプチド核酸(配列番号3)、PNA2は生理活性ペプチド核酸(配列番号6)とキャリアペプチド核酸(配列番号32)の複合体である。互いに異なる電気的性質を有する複合体は、タンパク質および下位経路遺伝子の発現パターンを分析した時に、前記複合体で処理した実験群で、複合体の電気的性質によって時間差はあるが、サバイビンおよび下位経路タンパク質の発現が抑制されることを確認した。
【0154】
実施例5:生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の調節を用いた腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制
実施例1で表2の構造を有するように製造された様々な電気的性質を有する生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の調節を用いて、腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制効率を分析しようとした。
【0155】
実施例5−1.細胞培養、および生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
SW480とSK-BR-3細胞株の培養条件、および生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法は、実施例2と同様であった。但し、6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cellsを培養し、複合体で処理した後、24、48、72および96時間の間隔で培養してから、標的遺伝子の発現抑制有無を確認した。
【0156】
実施例5−2.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
実施例4−1の条件で実験を行い、生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の調節を用いて腫瘍細胞株での標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0157】
その結果、
図8に示されたように、表2に示された同一の配列を有する生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸を使用したが、それぞれの複合体を成す陽電荷を有するキャリアペプチド核酸は同一であるが、複合体を成す生理活性ペプチド核酸は、互いに異なる多様な電気的性質を有する。Aは生理活性ペプチド核酸(配列番号1)からなる複合体であり、Bは生理活性ペプチド核酸(配列番号2)からなる複合体であり、CとDは生理活性ペプチド核酸(配列番号12)からなる複合体であって、これらに対して、互いに異なる癌細胞でのサバイビンタンパク質および下位経路遺伝子の発現パターンを分析した。様々な電気的性質を有する複合体を用いて、生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸の複合体の電気的性質の違いによる複合体の構造によって、サバイビンおよび下位経路タンパク質の発現抑制時点が変わることを確認した。
【0158】
実施例6:様々な長さ毎の生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸の複合体を用いた腫瘍細胞株での細胞生存率の分析
実施例1で表2の構造を有するように製造された様々な電気的性質を有するが、異なる長さによる生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の調節を用いて、腫瘍細胞株で細胞生存率の抑制効率を分析しようとした。
【0159】
実施例6−1.細胞培養、および生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
SW480細胞株の培養条件、および生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法は、実施例2と同様であった。但し、培養された細胞を96−ウェルプレートにウェル当り6x10
3cells培養し、複合体で処理後、24、48、72および96時間の間隔で培養してから、処理時間経過後に細胞生存率を確認した。
【0160】
実施例6−2.MTT(MTT assay)により腫瘍細胞株での細胞生存率の分析
実施例6−1の条件で処理された細胞株に、MTT(3−(4,5−Dimethylthiazol−2−yl)−2,5−Diphenyltetrazolium Bromide)溶液を1XPBSで5mg/mLの濃度となるように製造し、ウェル当り20μLで処理して4時間培養した後、OD(optical density)をスペクトロフォトメータ(spectrophotometer)で測定して分析した。
【0161】
その結果、
図9aおよび
図9bのように、生理活性ペプチド核酸(配列番号6〜11)およびキャリアペプチド核酸(配列番号23〜36)が結合されている複合体の長さ毎の効率による細胞生存率の差が確認された。
【0162】
実施例7:サバイビンを標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む候補物質複合体を用いた坑癌薬剤の評価
実施例1で表2の構造を有するように製造された、サバイビンを標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む候補物質複合体を用いて、腫瘍細胞株および腫瘍細胞を移植した動物モデルで標的遺伝子の発現抑制による腫瘍の抑制を分析しようとした。
【0163】
実施例7−1.細胞培養、および生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
SW480細胞株の培養条件、および生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法および実験内容は、実施例4および5と同様であった。
【0164】
実施例7−2.MTT(MTT assay)により腫瘍細胞株での細胞生存率の分析
実施例6−1の条件で処理された細胞株に、MTT(3−(4,5−Dimethylthiazol−2−yl)−2,5−Diphenyltetrazolium Bromide)溶液を1XPBSで5mg/mLの濃度となるように製造し、ウェル当り20μLで処理して4時間培養した後、OD(optical density)をスペクトロフォトメータ(spectrophotometer)で測定して分析した。
【0165】
実施例7−3.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
実施例4−1の条件で処理された細胞株に対して、実施例4−3の実験条件でタンパク質の発現様相を確認した。
【0166】
実施例7−4.ヒト由来大膓癌細胞株(SW480)が移植されたマウスでの、生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む候補物質複合体の尾静脈投与による坑癌薬効の評価
坑癌薬効の評価のために、特定病原体不在(SPF)BALB/C系および雌ヌードマウス(Nara Biotech Co、韓国)を用いてヒト由来大膓癌細胞を培養し、5週齢のヌードマウスに移植するために、培養されたSW480細胞株を3×10
7cells/mlに調節した後、調節された細胞培養液をマウス当り0.3ml(9×10
6cells/mouse)ずつ右側の肩胛部と胸壁との間の腋窩部の皮下に注入した。生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸の候補物質複合体を、陰性対照物質(1、2mg/kg)と物質1、2、3(1、2mg/kg)として調製されたものをマウス当り0.1mlずつ2回/週(days0、3、7、10、14、17)で尾静脈投与した。全ての動物に対して、注射開始時および試験期間中に、投与直前の一般症状の観察および体重測定を行った。癌細胞移植後、群毎の平均腫瘍サイズが44.1mm3に達したときから18日目まで総9回、個体毎にVernier caliperを用いて3方向を測定した後、長さ(length)×幅(width)×高さ(height)/2の計算式により計算した。薬物投与開始18日目に、眼窩静脈からヘパリンチューブを用いて採血(5000rpm、5分間遠心分離、上清である血漿のみを分離しvialに分注して−70℃で保管)した後、CO
2ガスでマウスを安楽死させてから、腫瘍を分離して化学天秤(chemical balance)で重量を測定し、腫瘍組織の写真を撮影した。
【0167】
実施例7−5.ヒト由来大膓癌細胞株(SW480)が移植されたマウスでの血液を用いた肝毒性指標物質の分析
坑癌薬効の評価を行ったマウスからの採血により血液中の血漿を分離し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)分析キット(Biovision、米国)分析溶液に適切な希釈比率で希釈して、ウェル当り20μLとなるように入れ、また、血漿中のアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の量の定量を助ける標準物質もともに用意して入れた後、分析キット内の方法に従って反応溶液(分析溶液を含む酵素および染色試薬混合物)を製造してウェル当り総100μLとなるように入れてよく混ぜてから、570nmでODをスペクトロフォトメータで測定した。
【0168】
その結果、
図10aおよび
図10bに示されたように、サバイビンを標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸の候補物質複合体を用いて、先ず、ヒト由来大膓癌細胞での細胞生存率が抑制されることを確認し、標的遺伝子であるサバイビンおよび下位遺伝子のタンパク質の発現も抑制されることを確認した。
図11a〜
図11eの結果のように、ヒト由来大膓癌細胞株が移植されたマウスにおける尾静脈投与による動物実験において、投与翌日から最終日まで、陰性対照物質に比べて全ての物質投与群で、試験期間中に特異な一般症状および統計的に有意な体重減少は観察されなかった。また、腫瘍サイズの場合、最終日(day18)の結果を見ると、陰性対照物質1mg/kg投与群に比べて、物質1、2、3の1mg/kg投与群では、それぞれ18.9%(p<0.01)、8.2%、8.9%、陰性対照物質2mg/kg投与群に比べて、物質1、2、3の2mg/kg投与群では、それぞれ40.1%(p<0.001)、28.0%(p<0.001)、31.7%(p<0.001)の腫瘍成長抑制効果が現れた。さらに、最終日の腫瘍重量の場合、薬物投与開始18日目にSW480腫瘍(tumor)を切除してその重量を測定した結果、陰性対照物質1mg/kg投与群に比べて、物質1、2、3の1mg/kg投与群では、それぞれ18.9%(p<0.01)、8.9%、8.5%、陰性対照物質2mg/kg投与群に比べて、物質1、2、3の2mg/kg投与群では、それぞれ40.7%(p<0.001)、28.9%(p<0.001)、32.7%(p<0.001)の腫瘍重量の減少があったことを確認することができた。最後に、坑癌薬効評価で用いられたマウスから採血して肝毒性指標物質を比較した結果、全ての投与群で特異的に肝毒性が確認されなかった。
【0169】
実施例8:新規複合体を用いた、ヒト由来乳癌細胞および肺癌細胞での血管内皮成長因子の抑制による坑癌薬理効果の確認
多くの癌細胞で高い発現が確認されている血管内皮成長因子であるVEGFは、癌細胞で細胞血管増殖を誘導すると知られている。そのため、これに対する新規複合体を用いてVEGFを抑制し、坑癌薬理効果を確認しようとした。
【0170】
実施例8−1.細胞培養
ATCC(American Type Culture Collection、米国)から入手したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)とヒト肺癌細胞(A549)を、DMEM培養バッジ(Dulbecco Modified Eagle Medium、WELGENE、韓国)に10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加して、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で培養した。
【0171】
実施例8−2.細胞培養、および生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
血管内皮成長因子を抑制するための新規複合体として、血管成長の必須遺伝子であるVEGF mRNAと相補的な配列(配列番号41)の生理活性ペプチド核酸を製作し、生理活性ペプチド核酸と相補的なキャリアペプチド核酸(配列番号42〜43)を製作した後、同量をハイブリダイズして複合体を製作した(表3参照)。生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法は、実施例2と同様であった。
【0173】
実施例8−3.ヒト由来乳癌細胞と肺癌細胞株での細胞生存率の分析
新規複合体の血管内皮成長因子の抑制程度を分析するために、実施例8−1で培養された細胞を96−ウェルプレートにウェル当り6x10
3cells培養し、複合体で処理後、24、48、72および96時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例6−2の実験条件で細胞生存率を確認した。
【0174】
実施例8−4.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
新規複合体の血管内皮成長因子の抑制程度を分析するために、実施例7−1で培養された細胞を6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cells培養し、複合体で処理後、24、48、72および96時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例4−3の実験条件で抗−VEGF抗体(SantaCruz, 米国)および抗−p−Akt1(Cell Signaling, 米国)を用いてタンパク質の発現を分析した。
【0175】
実施例8−5.流細胞分析器(FACS)による細胞死滅の分析
新規複合体の血管内皮成長因子の抑制による細胞死滅を分析するために、実施例7−1で培養された細胞を6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cells培養し、複合体で処理後、72時間培養した後、細胞を収集してからFITC Annexin V Apoptosis Detection Kit(BD、米国)のAnnexin V binding buffer500μLによく溶解した。その後、FITC Annexin VとPropidium Iodide Staining Solutionをそれぞれ5μL処理した後、流細胞分析器専用のチューブに移してから用いて、処理時間経過後にFACS CantoII(BD,米国)で分析した。
【0176】
実施例8−6.ゼブラフィッシュを用いた坑癌薬理の評価
2日間培養器で培養した後に得られたゼブラフィッシュの卵を用いた。具体的に、実施例8−1の方法によって培養されるヒト由来乳癌細胞であるMDA−MB−231をCellTrac
TM CFSE(Thermoscientific,米国)を用いて緑色で30分間染色してから収集し、ゼブラフィッシュ1匹当り150個の染色されたヒト由来乳癌細胞を微注入法によりゼブラフィッシュ幼虫に注入した。ヒト由来乳癌細胞が注入されたゼブラフィッシュを、新規複合体が含まれた水が入っている96ウェルプレートに分注した後、4日間培養器で培養した。4日間培養した後には、0.04%のトリカイン(tricaine)を用いて麻酔した後、蛍光顕微鏡(OLYMPUS、日本)で分析した。
【0177】
その結果、
図12a〜
図12cに示されたように、新規複合体による血管内皮成長因子の抑制によって細胞生存率が抑制されることが、ヒト由来乳癌細胞と肺癌細胞で確認された。また、血管内皮成長因子であるVEGFと下位遺伝子であるp−Akt1のタンパク質の発現が抑制されることが確認された。また、血管内皮成長因子が抑制されて細胞死滅が誘導されることを確認するために、流細胞分析器で確認した結果、生理活性ペプチド核酸と結合するキャリアペプチド核酸の長さおよび電荷の性質が異なる複合体を分析したところ、それぞれ3.2%と2%の細胞死滅が誘導されることが確認された。最後に、坑癌薬理効果を確認するために動物モデルとして用いられるゼブラフィッシュにヒト由来乳癌細胞を移植した後確認した結果、
図13の結果のように、移植された乳癌細胞の成長が抑制される効果を確認することができた。
【0178】
実施例9:新規複合体を用いたヒト由来網膜色素上皮細胞での血管内皮成長因子の抑制の確認
老人性黄斑変性の原因と知られている黄斑における血管内皮成長因子であるVEGFに対する新規複合体を、ヒト由来網膜色素上皮細胞に処理して血管生成を抑制するかを確認した。
【0179】
実施例9−1.細胞培養
ATCC(American Type Culture Collection、米国)から入手したヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)を、DMEM−F12培養バッジ(Dulbecco Modified Eagle Medium/ Nutrient Mixture F12、Gibco、米国)に10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加して、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で培養した。
【0180】
実施例9−2.細胞培養、および生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
血管内皮成長因子を抑制するための新規複合体は実施例7−2と同様に使用して、新規複合体の処理方法は実施例2と同様であった。
【0181】
実施例9−3.ヒト由来網膜色素上皮細胞株での細胞生存率の分析
新規複合体の血管内皮成長因子の抑制程度を分析するために、実施例9−1で培養された細胞を96−ウェルプレートにウェル当り6x10
3cells培養し、複合体で処理後、24、48、72、96および120時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例6−2の実験条件で細胞生存率を確認した。
【0182】
実施例9−4.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
新規複合体の血管内皮成長因子の抑制程度を分析するために、実施例9−1で培養された細胞を6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cells培養し、複合体で処理後、24、48、72、96および120時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例4−3の実験条件で抗−VEGF抗体(SantaCruz,米国)、抗−p−Akt1(Cell Signaling,米国)および 抗−p−ERK−1(Cell Signaling,米国)を用いてタンパク質の発現を分析した。
【0183】
その結果、
図14aおよび14bに示されたように、新規複合体を処理することで、ヒト由来網膜色素上皮細胞での細胞生存率が抑制されることが確認され、同様に、VEGFおよび下位遺伝子であるp−Akt−1とp−ERK−1のタンパク質の発現が抑制されることを確認することができた。
【0184】
実施例10:新規複合体を用いた、乾癬に対する抗炎症薬理効果の確認
新規複合体を用いて皮膚疾患である乾癬に対する効能を検証するために、標的遺伝子であるIFI16(Interferon gamma inducible protein 16)を抑制して抗炎症薬理効果を確認しようとした。
【0185】
実施例10−1.細胞培養
CLS(Cell Line Service、ドイツ) から入手したヒト由来表皮角化細胞(HaCaT)を、DMEM−F12培養バッジ(Dulbecco Modified Eagle Medium、WELGENE、韓国)に10%(v/v)ウシ胎仔血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加して、37℃、5%(v/v)CO
2の条件下で培養した。
【0186】
実施例10−2.細胞培養、および生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
IFI16を抑制するための新規複合体として、IFI16 mRNAと相補的な配列(配列番号44〜47)の生理活性ペプチド核酸を製作し、生理活性ペプチド核酸と相補的なキャリアペプチド核酸(配列番号48)を製作した後、同量をハイブリダイズして複合体を製作した(表4参照)。生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている複合体の処理方法は、実施例2と同様であった。
【0188】
実施例10−3.ヒト由来の表皮角化細胞株での細胞生存率の分析
IFI16の抑制程度を分析するために、実施例10−1で培養された細胞を96−ウェルプレートにウェル当り6x10
3細胞を24時間培養した後、生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体で処理し、ヒト表皮角化細胞の炎症反応を誘導するために、IL−17Aを20ng/mLで処理してから、72、96および120時間培養した後、実施例6−2の実験条件で細胞生存率を確認した。
【0189】
実施例10−4.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
新規複合体のIFI16の抑制程度を分析するために、実施例10−1で培養された細胞を6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cells培養し、複合体で処理後、72、96、120および144時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例4−3の実験条件で抗−IFI16抗体(Cell Signaling,米国)および抗−p−NF−kB抗体(Cell Signaling,米国)を用いてタンパク質の発現を分析した。
【0190】
実施例10−5.イミキモドを用いたBalb/Cマウス乾癬モデルの誘導、および生理活性核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いたイミキモド乾癬モデルでの表現型変化の分析
6週齢のBalb/C雄マウスの右側耳に、毎日20mgのイミキモドを12日間塗布することで乾癬を誘導したマウスモデルに、新規複合体を2日に1回ずつ総12日間(6回)液状またはクリームで塗布し、右側耳の厚さを測定(マイクロメーター)し、乾癬誘導前の初期右側耳の厚さと、乾癬誘導後、対照群に対する新規複合体処理群の耳厚さの差を確認した。
【0191】
実施例10−6.イミキモドを用いたBalb/Cマウス乾癬誘導モデルでの新規複合体を用いた遺伝子発現の抑制
実施例10−5と同様の条件で新規複合体を塗布した後、マウスの右側耳をバイオプシーして総タンパク質を抽出し、BCA定量法(Bicinchoninic acid assay)を用いてタンパク質を定量した。実施例10−4の方法によりタンパク質の発現を確認した。
【0192】
実施例10−7.イミキモドを用いたBalb/Cマウス乾癬誘導モデルでの、生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いた組織内角化細胞の異常増殖の抑制
実施例10−5と同様の条件で新規複合体を塗布した後、マウスの右側耳をバイオプシーして4%のホルムアルデヒド溶液で固定した後、パラフィン包埋して製作したパラフィンブロックをミクロトームで切片とし、脱パラフィンした組織をスライドガラスに載せてマウンティングして、ヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin−Eosin)染色のための準備をした。
【0193】
その結果、
図15aおよび
図15bに示されたように、ヒト由来の表皮角化細胞株は、IFI16を標的遺伝子とする新規複合体で処理した時に、細胞生存率が減少することが確認され、IFI16標的遺伝子および下位経路遺伝子であるp−NF−kBのタンパク質の発現が減少することが確認された。乾癬に対する新規複合体の抗炎症薬理効果を確認するための動物実験を行った結果、
図16に示されたように、乾癬を誘導していない陰性対照群に比べて、イミキモドで乾癬を誘導した陽性対照群で、マウスの右側耳の厚さが増加しており、IFI16を標的とする新規複合体で処理した群で、陰性対照群と類似の程度で耳の厚さが減少することを確認した。また、実験動物でバイオプシーした組織を用いて標的遺伝子の発現が抑制されるかを確認した結果、IFI16の発現が増加された陽性対照群と異なって、新規複合体で処理した群では、IFI16の発現が減少することが確認された。最後に、実験で使用したマウスのバイオプシーによりH&E染色を行った結果、陰性対照群に比べて、陽性対照群で表皮の角化細胞の増殖が増加することを確認し、新規複合体を塗布した群では、表皮の角化細胞増殖が減少することを確認した。
【0194】
実施例11:新規複合体を用いたヒト由来乳癌細胞での免疫坑癌効果の確認
多くの癌細胞遺伝子の表面で発現されるPD−L1により、T細胞のPD−1と結合して免疫細胞による死滅が誘導されず、癌細胞の増殖を誘導し続けると知られている。そのため、高い発現を示すヒト由来乳癌細胞で、PD−L1を標的とする新規複合体を用いてPD−L1を抑制して免疫坑癌効果を確認しようとした。
【0195】
実施例11−1.細胞培養
実施例8−1と同様の方法で培養した。
【0196】
実施例11−2.細胞培養、および生理活性ペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸を含む複合体の細胞内への導入
PD−L1を抑制するための新規複合体として、癌細胞の表面に発現しているPD−L1 mRNAと相補的な配列(配列番号49)の生理活性ペプチド核酸を製作し、生理活性ペプチド核酸と相補的なキャリアペプチド核酸(配列番号50)を製作した後、同量をハイブリダイズして複合体を製作した(表5参照)。生物学的活性を有するペプチド核酸およびキャリアペプチド核酸が結合されている新規複合体の処理方法は、実施例2と同様であった。
【0198】
実施例11−3.ウエスタンブロット分析(Western blot assay)による遺伝子発現の分析
新規複合体のPD−L1の抑制程度を分析するために、実施例11−1で培養された細胞を6−ウェルプレートにウェル当り1x10
5cells培養し、複合体で処理後、96、120および144時間の間隔で培養した後、処理時間経過後に実施例4−3の実験条件で抗−PD−L1抗体(Abcam、英国)を用いてタンパク質の発現を分析した。
【0199】
その結果、
図17に示されたように、新規複合体で処理することで、ヒト由来乳癌細胞での標的遺伝子であるPD−L1のタンパク質の発現が、陰性対照群に比べて抑制されることを確認することができた。
【0200】
実施例12:新規複合体を用いた細菌増殖の抑制
新規複合体を用いて、細菌の増殖に必須遺伝子と知られたacpPを標的遺伝子とし、複合体によって細菌増殖も抑制されるかを確認しようとした。
【0201】
実施例12−1.細菌培養
細菌DH5α(Enzynomics、韓国)をLuria−Bertani(LB)brothに接種した後、30℃で10
5CFUとなるように培養した。
【0202】
実施例12−2.細菌増殖抑制用新規複合体の製作
細菌増殖を抑制するための新規複合体として、細菌の必須遺伝子であるacpP mRNAと相補的な配列(配列番号51)の生理活性核酸を製作し、生理活性核酸と相補的なキャリアペプチド核酸(配列番号52)を製作した後、同量をハイブリダイズして複合体を製作した(表6参照)。
【0204】
実施例12−3.複合体の細菌増殖抑制の分析
新規複合体の細菌増殖抑制程度を分析するために、実施例12−1で培養された細菌に、実施例6−2で製作された複合体を1μMの濃度で24時間処理した後、段階希釈した培養液を固体培地に同量ずつ落としてから、12、24、48時間観察した。その結果、
図18に示されたように、1本鎖からなる生理活性核酸のみで処理した実験区に比べて、複合体形態で処理した実験区の成長が阻害されることを確認した。