特許第6818924号(P6818924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818924消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6818924
(24)【登録日】2021年1月5日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/08 20060101AFI20210114BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210114BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210114BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20210114BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A61K33/08
   A61K9/14
   A61P31/04
   A61P11/00
   A61K9/72
   A61M13/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-99267(P2020-99267)
(22)【出願日】2020年6月8日
【審査請求日】2020年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508352687
【氏名又は名称】植竹 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】植竹 豊
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−330271(JP,A)
【文献】 特開2011−012000(JP,A)
【文献】 日サ会誌,2015年,Vol.35, No.1,p.39-45
【文献】 北勤医誌,2012年,Vol.34,p.33-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結核性抗酸菌症を改善する改善剤であって、
消石灰を有効成分とし、
該消石灰(20)は、粉状にして粉体供給器(70)により粉状のまま気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送るものであることを特徴とする消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤。
【請求項2】
請求項1に記載の消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を口腔内へ噴射して、前記気管支又は肺の何れか若しくは双方へ到達させるための吸引器であって、
前記消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を収容する消石灰収容容器(72)と、圧縮された気体(50)を収容する容器が一体に構成される圧力容器(71)内に、
前記消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤と圧縮された気体(50)とを収容し、
ホッパー(73)を介して落下する請求項1に記載の消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を前記圧縮された気体(50)の圧力によりノズル(75)から噴射させるものであることを特徴とする消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤用加圧式吸引器(2)。
【請求項3】
請求項1に記載の消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を口腔内へ噴射して、前記気管支又は肺の何れか若しくは双方へ到達させるための吸引器であって、
前記消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を収容する消石灰収容容器(72)と、
圧縮された気体(50)を収容する圧力容器(71)とから構成され、
該圧力容器(71)からノズル(75)に向かって流通される気体(51)から生じる負圧により、前記消石灰収容容器(72)から請求項1に記載の消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤を吸い上げ、ノズル(75)から噴射させるものであることを特徴とする消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善剤用吸い上げ式吸引器(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非結核性抗酸菌症の改善方法技術に関し、詳しくは消石灰を肺に取り込むことで非結核性抗酸菌症の改善を図る治療技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非結核性抗酸菌症は、以前は結核など肺に病気を持つ人に多くみられていたが、近年、肺に病気の無い人、特に中高年の女性を中心に目立って増加している。ここ最近20年間でおよそ6倍に増加しており、2014年には1万5千人が発症したといわれている。従って、この非結核性抗酸菌症とは、もはや珍しい病気ではなく、将来的には結核の死亡者数を抜くと予想されていることである。係る、非結核性抗酸菌症の症状は、10年以上かけてゆっくりと進行し、完全に治すことが難しい経過の長い病気といわれている。結核については現在では薬による治療がなされているが、非結核性抗酸菌症は、薬の効果が得られにくく、薬の効果が得られていない。即ち、現代医学では未解明なことが多いため、症状と向き合い、悪化させない治療をするしかないという極めて酷な病であり、患者にとっては悪くなることはあっても良くなることはないと医師から告げられることがほとんどである。そこで係る非結核性抗酸菌症の治癒できる治療技術が求められている。
【0003】
係る非結核性抗酸菌症の治療については抗菌薬(抗生物質)の投与を基本として、注射薬を用いている。非結核性抗酸菌症の場合、一種類の薬だけを長く服用すると耐性菌が現れ、薬効が失われ、複数の薬剤の投与が必要となる。中程度や重度の場合には更にストレプトマイシンか、カナマイシンという注射薬の内、一剤の筋肉内注射を2カ月も行わなければならず、症状が治まっても再発や再感染がおこるため、2年から4年間は薬を飲み続けなければならない。非結核性抗酸菌症を完全に治療できる薬はなく、結核と比べて薬の効き目は今一つであり、一度発症すると直すというよりも上手に付き合っていくことになってしまうという現状である。
【0004】
そこで、非結核性抗酸菌症を改善する方法としては、投薬以外では自然治癒力を高めるため、免疫力を高める手段、方法がある。例えば腸内環境を改善し免疫力を高める方法として
有胞子性乳酸菌を腸に届かせるという方法で、腸内の善玉菌を優勢にするために役立たせたり、食事に気を使い発酵食品や食物繊維を多く接種するなどして免疫力を落とさないための毎日の食生活で心掛けなければならないことも多くなる。従って、日々の生活に大きな影響を及ぼすため有効な治療方法の確立は急務といえる。
【0005】
そこで、係る問題に鑑み、従来より種々の技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「ペプチド及びその使用」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるペプチドの提供」を課題とし、解決手段として「マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質のアミノ酸配列において第61〜70番目のアミノ酸を含む9〜50アミノ酸からなるペプチド、又は、前記ペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、多能性のCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチド。更に抗酸菌に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを含有する抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。」という技術が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ワクチン組成物であり、費用や時間のかかる承認申請等が必要であり、身近なものを利用して非結核性抗酸菌症を改善するものでは無く、課題を解決する技術的手段が、本発明とは相違するものである。
【0006】
また、発明の名称を「呼吸器疾患を治療するための肺組織の標的と結合する薬剤」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「肺組織に局所送達するための持続作用製剤または持続治療域製剤の製造にお ける、肺組織中の標的と結合する薬剤(例えば、抗体フラグメント、アンタゴニスト、リガンド、dAb単量体)の使用、ならびに肺組織において持続した治療域が達成されるように肺組織中の標的と結合する薬剤を被験者に投与するための方法に関する。前記製剤は肺組織に局所投与するためのものであり、また、前記方法は肺組織に局所投与することを含む。さらに、肺炎症または呼吸器疾患を治療、予防または抑制するための製剤または医薬の製造における、TNFR1のアンタゴニストの使用、ならびに前記疾患の治療方法をも開示する。また、肺炎症または呼吸器疾患を治療または予防するための送達装置(例えば、吸入器、鼻腔内送達装置)の製造における前記薬剤の使用、ならびに肺炎症または呼吸器疾患を治療または予防するための、前記薬剤を含む送達装置を開示する。」が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、前記特許文献1の技術と同様に薬剤に関するものであり、費用や時間のかかる承認申請等が必要であり、身近なものを利用して非結核性抗酸菌症を改善するものでは無く、課題を解決する技術的手段が、本発明とは相違するものである。
【0007】
また、発明の名称を「VNTR型別による非結核症抗菌症の病勢の予測方法」とする技術が開示されている(特許文献3参照)。具体的には、「非結核性抗酸菌症の診断時に検出されたMycoba cterium avium菌の型を調べることによって、その患者の病状が進行性か否かを予測する方法を提供すること。」を課題とし、解決手段として「対照となるマイコバクテリウム・アビウム菌株と非結核性抗酸菌症患者由来のマイコバクテリウム・アビウム菌株との間のゲノムにおける繰り返し配列数多型に基づきマンハッタン距離を算出し、ロジステック回帰分析により該患者の病勢を予測する方法、該方法に使用するオリゴマーヌクレオチドプライマーセット、及び、該オリゴマーヌクレオチドプライマーセットを含むPCR用キット。」という技術が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、病勢の予測方向に関するものであり、非結核性抗酸菌症の根治を目指すものでは無い点で、その構成は本発明とは異なるものである。
【0008】
このように、根治の難しい非結核性抗酸菌症であるが、次のような事例が存在している。
係る事例を先ず紹介する。10年ほど前、咳、痰、疲れやすく、息切れたりすることがあり、病院でレントゲン写真を撮影した結果、非結核性抗酸菌症といわれ、肺が悪くなっていることが判明した。処方された薬を飲み始めたところ体全身に湿疹ができ、顔にもでき、耐えられず薬をやめたところ、湿疹が無くなり楽になった為、その後何年も薬を飲まずにいた。医師からは薬をやめると病気が悪くなるばかりで良くはならないといわれた。2年前ごろから体がだるく、疲れて歩くことも大変となり、病院へ行き、レントゲンを撮ったところ肺が大きく白くなっていたので、改めて薬を飲むこととした。しかし、咳、痰、全身の怠さ、微熱、体重の減少が発生した。そんな中、2019年10月12日の台風19号による災害にあった。自宅が床下浸水となり、消毒の為消石灰を噴霧器で床下、家の周りをふんだんに消毒していただいた際、マスクなしでいたのでその消石灰を大きく吸い込んでしまい、大変心配していた。ところが、2020年に入って、咳も疲れもなく、1月にレントゲン撮影を行ったところ、医師から肺の状態が良くなったといわれた。その後は体重も4.5Kg増加し、3月、5月とレントゲンの結果もよくなっていることを医師から告げられる。その要因として考えられるのは消石灰の吸引しかない。なお、係る患者の例は、性別が女性、年齢は83歳のものである(図2図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017−210427号
【特許文献2】特表2009−512672号
【特許文献3】特開2010−142150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、現在、回復することが難しいとされている非結核性抗酸菌症について、相当な期間と費用を要する治験や承認申請を不要とし、身近に存在する消石灰を気管に取り込むことで改善できる新たな治療方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、非結核性抗酸菌症を改善する改善方法であって、粉状の消石灰を粉体供給器により粉状体のまま気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送る構成を採用した。
【0012】
また、本発明は、前記の非結核性抗酸菌症を改善する改善方法に用いられる紛体供給器が、圧縮された気体の圧力により、前記粉状体の消石灰を口腔へ噴射して前記気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送る構成の加圧式吸引器とすることもできる。
【0013】
また、本発明は、前記の非結核性抗酸菌症を改善する改善方法に用いられる紛体供給器が、流通される気体の負圧により前記粉状体の消石灰を消石灰収容容器から吸い上げて前記口腔へ噴射して前記気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送る構成の吸い上げ式吸引器とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法によれば、安価な消石灰を用いることで、従来進行を止めるか悪化するしかないかといわれた非結核性抗酸菌症の症状を改善し、根治へ向かわせることを可能とするという優れた効果を発揮する。
【0015】
また、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法では、粉体供給器の利用により粉状のまま気管へ消石灰を到達させることができるという優れた効果を発揮する。
【0016】
また、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法によれば、消石灰の有する消毒効果により、非結核性抗酸菌症のみならず、鳥インフルエンザの感染対策にも有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法の基本構成を模式的に示した基本構成模式説明図である。
図2】本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法により改善が見られた時点での胸部レントゲン写真である。
図3】本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法により改善していく経過を示した胸部レントゲン写真である。
図4】本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法に用いる加圧式吸引器並びに吸い上げ式吸引器の基本原理を説明する基本原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、非結核性抗酸菌症を改善する改善方法であって、粉状の消石灰を粉状体のまま気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送ることを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0019】
図1は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法の基本構成を模式的に示した基本構成模式説明図である。
【0020】
消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1は、非結核性抗酸菌症10を改善する改善方法であって、粉状の消石灰20を粉状体のまま気管支30又は肺40の何れか若しくは双方へ送ることを基本構成とするものである。以下詳細に説明する。
【0021】
非結核性抗酸菌症10は、検診で胸部レントゲン検査により異常陰影を指摘され、「感染症であり、結核菌の仲間だが人にはうつさない」といわれる場合がある。結核菌の仲間で結核とは違うといわれるのは、非結核性抗酸菌と呼ばれる菌で土壌や水中、食物、動物(家畜を含む)などの自然環境に広く存在している。結核菌は人に寄生する細菌(結核菌自身は環境中では生存できない)で、人から人に感染するが、非結核性抗酸菌はもともと土や水など人間の身近な環境に生息していて、人から人に感染することはない。この菌に感染して起きる非結核性抗酸菌症10は昔から存在した病気だと考えられているが、結核に似た症状・病態だったため、結核が多かった時代には混同して考えられていた。しかし、結核菌とよく似ているが別の病原菌を原因とする病気であることが分かり、40年ほど前から「非定型抗酸菌症」と呼ばれるようになった。近年は「非結核性抗酸菌症」という呼び方が一般的になり、次々と新しい非結核性抗酸菌が発見され、罹患率も増加している。その中で、わが国で多いのが、Mycobacterium avium complex菌による肺MAC症と呼ばれるもので、気管支を中心に病変を作るこの肺MAC症が最近わが国の女性に急増しているといわれている。前記の通りこの肺MAC症は結核症と異なり伝染病ではないものの、薬が効きにくく、進行を抑止することはできても改善しないといわれている非結核性抗酸菌症10の一類型の病気である。
【0022】
粉状の消石灰20は、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)をパウダー状にしたものであり、一般に、よく土壌の酸度調整に用いられるもので全国各地で採掘される石灰石に水を加え熟成させ、粉末状としたもので強塩基であるが劇物指定を受けていないため、pH調整剤として試薬・農業・食品・化粧品にも用いられる。また、カルシウム補充材化学合成原料、殺菌剤等多様な場面でも用いられる資材である。
【0023】
気管支30は、気管支は左右に分かれた枝先が肺胞、気管は咽頭から肺40まで続く細長い空気の通り道である。係る気管支に炎症が起きると咳や痰などの呼吸器の症状を引き起こす気管支炎となったり、アレルギーによる気管支が細くなる喘息などになる。
【0024】
肺40は、空気中の酸素をからだに取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出すはたらきをする。鼻や口から吸い込んだ空気は喉頭を通り、気管に入り、気管は左右の肺のなかに入ると、2つに分かれて気管支30となる。気管支はさらに細かく分かれて、その先には肺胞という空気が入った小さな袋が、ブドウの房のように付いている。また、肺40は、大量の空気を含むため、胸部レントゲン撮影をしても肺自体は黒っぽく見えるものである。しかし、肺40に何かの病気ができると黒っぽく見える肺のその部分だけは白っぽく見え、これらの白い部分の存在は肺結核、肺真菌症、非結核性抗酸菌症、肺炎、慢性腫瘍などの可能性が疑われる。
【0025】
口腔60は、口の中の空所で、鼻腔や咽頭に連なる部分であり、消化管の入り口として食物の摂取・咀嚼・消化を行うほか、発声器・補助気道として機能するものである。本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1において粉状の消石灰20を吸引する最前部である。
【0026】
圧縮された気体50は、大気圧以上であって、定量の消石灰を加圧するとともに粉体と気体の結合部74において、粉状の消石灰20を搬送するために必要な圧縮空気である。なお、加圧式吸引器2では、圧力容器内の圧縮された気体50によりホッパー73内の粉状の消石灰20への加圧と粉状の消石灰20を噴射するための圧力を備える必要があるが、吸い上げ式吸引器では、流速による負圧の発生から粉状の消石灰20を吸い上げるため、大きな圧力が必要となる。
【0027】
流通される気体51は、吸い上げ式吸引器3において、流速による負圧の発生から粉状の消石灰20を吸い上げるための気体である。
【0028】
圧力容器71は、圧縮された気体50を収容するための容器であり、定量の消石灰を噴射させるのに必要な気体を収容する。
【0029】
ホッパー73は、粉状の消石灰20を収容した圧力容器71の底部に備えられる漏斗状に成型され、粉状の消石灰20の落下を案内するものである。
【0030】
粉体と気体の結合部74は、粉状の消石灰20と圧縮された気体50が混合される部分であり、流体としての気体中に個体微粒子の消石灰20が所定の濃度となるように分散された状態を作り出す部分である。
【0031】
ノズル75は、粉体と気体の混合部54で作られた圧縮された気体50に粉状の消石灰20は、混合された流体を噴射させるための排出口である。
【0032】
粉体供給器70は、粉粒体を供給・排出するための装置の総称であり、一般的な粉状体の吸引器などでもよく、専用品である必要はない。但し、有効量の粉状の消石灰を気管まで投与させるための機能を備え、例えば、貯槽やホッパー73から、プロセスの要求に従って粉状体の消石灰を切り出して搬送するものである。また、粉体の特異な性質を考慮して連続的な定量性を維持することや制御の応答性を確保することに加えて、密閉化による粉じん飛散防止や安全性を考慮する。
【0033】
消石灰収用容器72は、粉体供給器70が、水平式吸引器3である場合に所定量の粉状の消石灰20を流通される気体51によって、吸い上げるための容器である。
【0034】
図2は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法により改善が見られた時点での胸部レントゲン写真である。このレントゲン写真の患者は、2019年10月12日に消石灰を吸引した後、徐々に症状が緩和され、咳の減少や疲れなくなったことを感じた時期(2020年1月24日)のものである。但し、この時点では図2に示されるように大きな白い影W(肺炎像)が見られる。
【0035】
図3は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法により改善していく経過を示した胸部レントゲン写真であり、図3(a)は、消石灰を吸引後5カ月経過後の非結核性抗酸菌症患者の胸部を撮影したレントゲン写真であり、図3(b)は、更に2か月後の同一人患者の胸部を撮影したレントゲン写真である。
【0036】
また、図3(a)は、2020年の3月5日に撮影されたものであり、図3(b)は、2020年5月15日に撮影されたものである。図3(a)と図3(b)を図2と対比すると明らかに図3(a)、図3(b)へとレントゲン写真の方の白い影Wが薄くなっていることが確認できる。通常の結核や肺炎などの場合と異なり、非結核性抗酸菌症10の場合には一度できた白い影Wは、投薬等によっても消えることはない。しかしながら、係る白い影Wが減少していることは明確であり、従来から効果的な治療法もないとされていた非結核性抗酸菌症10が改善されているという結果が示されたものである。
【0037】
白い影Wは、非結核性抗酸菌症患者の肺炎像を示している。なお、入手できなかったが、2019年10月12日の台風19号による浸水に対して行われた消石灰散布消毒の際の吸引以前の胸部レントゲン写真では、図2よりも白い影Wが多くみられていた。即ち、消石灰吸引を境に症状は緩和し、その後、改善する方向に向かっている。
【0038】
図4は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1に用いる加圧式吸引器2並びに吸い上げ式吸引器3の基本原理を説明する基本原理説明図であり、図4(a)は、加圧吸引器2、図4(b)は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1に用いる吸い上げ式吸引器3をそれぞれ示している。なお、図4に示した実施例は、あくまでも例であって、係る構成に限定されるものでは無く、原理として共通する粉体供給器70であればよい。なお、図面で示したものは、粉体供給器70の一例であり、模式式に示したものであって、全体をコンパクトにしたり、弁機構や圧力調整機構については省略している。以下に本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1において、適していると考えられる粉体供給器70について説明する。
【0039】
粉末状の吸入剤としては、従来、エアゾール剤が多かった。しかし、噴霧に用いられるフロンガスの使用が禁止となってからは、ガスを使用しない粉末吸入剤が多く使われるようになった。医薬品粉末のみでは器具などに付着、残留するため、乳糖などの不活性な担体と二次粒子を形成させ、付着性を低下させて吸入しやすくしているものが多く、現在,喘息治療用の副腎皮質ステロイド薬などに用いられている。また、医薬品粉末を含む錠剤やカプセル剤をセットし吸入するカセット式専用吸入器を用いる場合も多い。そこで、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1に用いる粉状の消石灰20でもこれらの医薬品粉末と同様に、器具などへの付着・残留を防止する必要があり、不活性な担体と二次粒子を形成させ、付着性を低下させて吸入しやすくすること等が好適である。
【0040】
加圧式吸引器2は、消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1に用いる吸引器であって、定量の消石灰が収容され、圧縮気体によって、圧縮された容体と該圧縮された気体50により落下する消石灰をノズル75から噴射させ、気管支30又は肺40の何れか若しくは双方へ到達させるための粉体供給器70である。係る構成を採用した場合は、それほど高い圧縮圧を必要とせず、噴射が可能である。
【0041】
吸い上げ式吸引器3は、本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1に用いる吸引器であって、流通する気体の流れによって生ずる負圧により消石灰を吸い上げ、気管支30、又は肺40の双方へ送達させるための粉体供給器70である。係る構成を採用した場合は、高い圧力が必要となるが、シンプルな構成とすることができる。
【0042】
また、図面には示していないが、粉体供給器70を用いないドライパウダー定量吸入器も有効である。係る吸入器は粉末の薬剤を、自分で吸い込むタイプの吸入器であり、本発明においては定量の粉状の消石灰20を使用者が自分で吸い込む構成とするものである。
【0043】
消石灰の殺菌効果について以下説明する。消石灰(水酸化カルシウム)は昔から利用されていてコストパフォーマンスに優れた消毒剤であるが、その除菌力を証明することは困難であった。消石灰の実験の困難性(つまり、病原微生物に適用した後の、アルカリ分の停止が困難であったことから正しい結果が得られ難くかった)を克服し、農場でよく見かける消石灰粉の舎内通路への散布や踏込消毒槽利用の効果など、多くの実験結果から次のような知見が得られている。
【0044】
係る実験で分かったことは、消石灰粉末を撒いただけでは、表面の病原微生物を殺せず、また、石灰の上に後から飛んできた病原菌にも効果が無いことが確かめられた。しかし、湿気や湿り気で水分を吸った時点で効果が出る。即ち、濡れている間はpH12.5前後の強アルカリになるので、除菌効果が持続するということである。
【0045】
消毒槽に消石灰粉だけ入れても効果がなく、pH12.5以上の飽和溶液とすれば効果はあり、短時間でもサルモネラ菌(S. Typhimurium)には効果があることが確認されている。本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法1では、粉状の消石灰20が気管等の粘膜に付着し、粘液の水分によって殺菌効果が発揮されるものと考えられる。
【0046】
このように、消毒薬としての消石灰の利用に際しては、効果の確かなものを適切な濃度で利用し、人体への影響や症状の程度等を考慮し、pHの調整や吸引量を適切に管理する必要がある。特に、pHが12.5以上の場合、アルカリ度が高いため十分な注意が必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る消石灰を用いた非結核性抗酸菌症の改善方法によれば、従来改善ができないとされていた非結核性抗酸菌症の症状を改善し、根治へ向かわせることを可能とし、年間1万5千人以上といわれる患者への医療の分野において産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 消石灰を有効成分とする非結核性抗酸菌症の改善
圧式吸引器
い上げ式吸引器
10 非結核性抗酸菌症
20 粉状の消石灰
30 気管支
40 肺
50 圧縮された気体
51 流通される気体
60 口腔
70 粉体供給器
71 圧力容器
72 消石灰収容器
73 ホッパー
74 粉体と気体の結合部
75 ノズル
【要約】
【課題】
本発明は、現在完治することが難しいとされている、非結核性抗酸菌症について、相当な期間と費用を要する治験や承認申請を不要とし、身近な消石灰を気管に取り込むことで消石灰の有する殺菌効果により、非結核性抗酸菌症を改善できる新たな治療方法の提供を課題とするものである。
【解決手段】
本発明は、非結核性抗酸菌症を改善する改善方法であって、粉状の消石灰を粉体供給器により粉状体のまま気管支又は肺の何れか若しくは双方へ送る構成を採用した改善方法と、該改善方法に用いられる加圧式吸引器、又は吸い上げ式吸引器を利用する構成を採用した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4