【文献】
PARK, Injun, et al.,A New Slit-Type Vacuum-Channel Transistor,IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,IEEE,2014年,Vol. 61, No. 12,p. 4186-4191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記n型不純物拡散層に所定の負電圧又はGND電圧を印加し、前記ゲート電極及び前記ドレイン電極に所定の正電圧を印加することにより、前記n型不純物拡散層の前記電子が前記側壁に面する前記真空中又は空気中を前記ドレイン電極に移動することを特徴とする請求項2に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記p型不純物拡散層に所定の正電圧又はGND電圧を印加し、前記ゲート電極及び前記ドレイン電極に所定の負電圧を印加することにより、前記p型不純物拡散層の前記正孔が、前記側壁が面する前記真空中又は空気中を前記ドレイン電極に移動することを特徴とする請求項4に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記電荷キャリアが、前記第1絶縁膜に接している前記半導体基板の表面に形成された反転層の電荷キャリアを含み、前記反転層が前記不純物拡散層と接続していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記ゲート電極の少なくとも前記側壁に含まれる前記側面が絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記ドレイン電極が前記側壁に面する真空又は空気の空間の上部全体を覆っていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記第2絶縁膜が、前記半導体基板の表面と前記ドレイン電極の底面との間に設けられ、且つ、前記不純物拡散層に接していない側の前記第1絶縁膜及び前記ゲート電極の側面を含む側壁に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜がシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記真空チャネル電界効果トランジスタの側面方向及び上面方向の空間を外気と遮断する絶縁膜をさらに備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記半導体装置は相補型インバータ回路であり、前記n型電界効果トランジスタの前記ゲート電極と前記p型電界効果トランジスタの前記ゲート電極とが接続され、前記n型電界効果トランジスタの前記ドレイン電極と前記p型電界効果トランジスタの前記ドレイン電極とが接続され、前記n型不純物拡散層が前記n型電界効果トランジスタのソース電極であり、前記p型不純物拡散層が前記p型電界効果トランジスタのソース電極である
ことを特徴とする請求項16に記載の半導体装置。
前記ソース電極の表面にn型不純物拡散層を有し、前記n型不純物拡散層に所定の負電圧又はGND電圧を印加し、前記ゲート電極及び前記ドレイン電極に所定の正電圧を印加することにより、前記n型不純物拡散層の電子が前記真空中又は空気中を前記ドレイン電極に移動することを特徴とする請求項19に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記ソース電極の表面にp型不純物拡散層を有し、前記p型不純物拡散層に所定の正電圧又はGND電圧を印加し、前記ゲート電極及び前記ドレイン電極に所定の負電圧を印加することにより、前記p型不純物拡散層の正孔が前記真空中又は空気中を前記ドレイン電極に移動することを特徴とする請求項19に記載の真空チャネル電界効果トランジスタ。
前記側壁を形成する工程に続いて、少なくとも前記ゲート電極の前記側壁に含まれる前記側面に絶縁膜を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載の真空チャネル電界効果トランジスタの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ100(以下、FET100と称する)について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は
図2の平面図におけるA−A’位置の断面図である。
図3は
図2の平面図におけるA−A’位置の断面を上から見た斜視図である。
【0015】
図1〜
図3において、第1実施形態のFET100はn型FETであり、p型半導体基板1上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成されている。また、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、p型半導体基板1に達する開口部5が形成されている。開口部5内のp型半導体基板1には、ソース電極として機能するn+不純物拡散層6が形成されている。開口部5の4つの側壁には、それぞれ第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の側面が露出しており、これら4つの側壁はそれぞれn+不純物拡散層6に接している。p型半導体基板1の裏面には、裏面電極8が形成されている。ゲート電極3及びドレイン電極7には正電圧を供給可能な電圧源が接続され、n+不純物拡散層6及び裏面電極8には負電圧を供給可能な電圧源が接続されている。
【0016】
FET100において、真空チャネルの方向は、n+不純物拡散層6の表面に対して垂直方向(
図1中の縦方向)である。
【0017】
p型半導体基板1がp型シリコン基板である場合、n+不純物拡散層6は、p型半導体基板1中にn型不純物であるAs(砒素)又はP(燐)を導入し、熱処理を行うことによって、開口部5の底面に形成される。n+不純物拡散層6は、開口部5の底面全体を覆い、第1絶縁膜2と接していることが好ましいが、開口部5の側面よりも外側に延在し、第1絶縁膜2の底部と接するようにしてもよい。また、FET動作に影響しない範囲であれば、n+不純物拡散層6は必ずしも開口部5の底面全体を覆う必要はない。
【0018】
第1絶縁膜2の厚さは例えば2nm以上20nm以下であり、材料としては、p型半導体基板1がp型シリコン基板である場合は、例えばp型半導体基板1の表面を酸化したシリコン酸化膜でもよく、CVD法等によって堆積したシリコン酸化膜でもよい。第2絶縁膜4の厚さは例えば10nm以上20nm以下であり、例えばCVD法等によって堆積したシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を含む絶縁膜とすればよい。
【0019】
第1絶縁膜2と第2絶縁膜4の厚さは同じ厚さである必要はなく、後述するように、第1絶縁膜2の厚さを第2絶縁膜4の厚さより薄く形成することが好ましい。その場合は、第1絶縁膜2の厚さを例えば2nm以上10nm以下とし、第2絶縁膜4の厚さを15nm以上30nm以下とすればよい。
【0020】
ゲート電極3は金属又はn型不純物を導入したポリシリコン等の導電膜で形成され、厚さは例えば10nm以上20nm以下である。
【0021】
ドレイン電極7は金属又はポリシリコン等の導電膜で形成され、厚さは例えば50nm以上200nm以下である。
【0022】
裏面電極8はAl等の金属又は不純物拡散層等の導電層で形成され、厚さは例えば50nm以上200nm以下である。裏面電極8には、FET100のp型半導体基板1の基板電圧が印加される。p型半導体基板1の表面上にp型半導体基板1の基板に電圧を印加するためのn型拡散層を別途設ける場合は、裏面電極8は省略してもよい。
【0023】
開口部5は、
図2の平面図において、例えば、一辺が0.05μm以上0.5μm以下の長さの正方形とすればよい。
図1〜
図3に示すように、開口部5の底面にはn+不純物拡散層6が形成され、開口部5の4つの側壁には、それぞれ第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の側面が露出している。
【0024】
(動作原理)
次に、FET100の動作について説明する。FET100はn型FETであり、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を含む側壁に面した開口部5内部の真空空間が、電荷キャリアである電子のチャネルとなっている(以下、チャネルとなる真空空間を真空チャネル空間と称することがある)。
【0025】
電子の真空チャネル空間への放出はゲート・ソース間電圧V
GS(以下、V
GSと称することがある)を所定の電圧とすることによって行われ、放出後の移動はソース・ドレイン間電圧V
DS(以下、V
DSと称することがある)を所定の電圧とすることによって行われる。具体的には、ゲート電極3から上記真空チャネル空間に正電圧を印加すると共にソース電極であるn+不純物拡散層6に負電圧又はGND電圧を印加することにより、n+不純物拡散層6中の電子が真空の電位障壁をFN(Fowler-Nordheim)トンネリングすることによって、電子は真空チャネル空間に放出される。
図1中に矢印で示すように、電子の放出は、ソース電極であるn+不純物拡散層6から、n+不純物拡散層6の表面に対して垂直方向(
図1中の縦方向)、すなわち、真空チャネルの方向と同一方向に行われる。真空チャネル空間に放出された電子eは、V
DSによって生じる電界に誘引されてドレイン電極7に到達する。
【0026】
また、ゲート電極3に正電圧を印加することによって、第1絶縁膜に接しているp型半導体基板1の表面は空乏化し、反転層の電子が蓄積される。n+不純物拡散層6は開口部5の側壁に接しているため、この反転層の電子とn+不純物拡散層6は接続された状態となる。そのため、n+不純物拡散層6に正電圧又はGND電圧を印加することによって、反転層の電子はn+不純物拡散層6に流入する。このように、上記で説明したn+不純物拡散層6中の電子に加えて、反転層の電子をFET100の電荷キャリアとして用いることができる。反転層の電子をFET100の電荷キャリアとして用いるためには、反転層の電子をn+不純物拡散層6に流入しやすくするために、n+不純物拡散層6を第1絶縁膜2に接するp型半導体基板1側に延在させ、n+不純物拡散層6が第1絶縁膜2の底面に接するように形成することが好ましい。
【0027】
FET100をオンさせる場合は、ソース電極であるn+不純物拡散層6に例えば0V、ドレイン電極7に例えば+2V、ゲート電極3に例えば+1V、裏面電極8に例えば0Vを印加すればよい。
【0028】
上記のように、電子の放出は、n+不純物拡散層6と真空との間のFNトンネリングによるため、ゲート電極3から真空チャネル空間に印加される正電圧は、n+不純物拡散層6と真空との界面近傍に印加されることが好ましい。そのため、第1絶縁膜2の厚さは、第2絶縁膜4の厚さよりも薄く形成することが好ましい。
【0029】
上記の説明ではFET100がn型FETである場合について説明したが、p型半導体基板1をn型半導体基板又はNウエルとし、n+不純物拡散層6をp型不純物拡散層とすることで、FET100をp型FETとすることもできる。FET100がp型FETである場合は、電荷キャリアとなる正孔は、p+不純物拡散層から上記真空チャネル空間に放出され、真空チャネル空間中を移動した後、ドレイン電極7に到達する。正孔の真空チャネル空間への放出は、FET100がn型FETである場合と同様に、V
GSを所定の電圧とすることによって行われ、放出後の移動はV
DSを所定の電圧とすることによって行われる。具体的には、ゲート電極3から上記真空チャネル空間に負電圧を印加すると共にソース電極であるp+不純物拡散層に正電圧又はGND電圧を印加することにより、p+不純物拡散層中の正孔が真空の電位障壁をFNトンネリングすることによって、正孔は真空チャネル空間に放出される。正孔の放出は、ソース電極であるp+不純物拡散層から、p+不純物拡散層に対して縦方向(垂直方向)、すなわち、真空チャネルの方向と同一方向に行われる。真空チャネル空間に放出された正孔は、V
DSによって生じる電界によって真空中を移動し、ドレイン電極7に到達する。FET100をp型FETとする場合は、ソース電極であるp+不純物拡散層に例えば0V、ドレイン電極7に例えば−2V、ゲート電極3に例えば−1Vを印加することで、FET100をオンさせることができる。
【0030】
FET100のチャネル長Lは、n+不純物拡散層6からドレイン電極7までの高さ、すなわち、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の厚さの合計値となる。真空中の電子の平均自由行程は約60nmであるため、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の厚さの合計値は、60nm以下とすることが望ましい。
【0031】
FET100のチャネル幅Wは、開口部5の周囲長及び面積に対応している。そのため、開口部5の周囲長及び面積の少なくともいずれか一方を増加させることにより、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができる。上記の説明及び
図1〜
図3では開口部5の上面及び下面を正方形としているが、本実施形態はこれに限られず、周囲長及び面積の少なくともいずれか一方を増加させるために、開口部5の上面及び下面を、例えば円形、楕円形、三角形以上の多角形又は星形等の形状としてもよい。
【0032】
上記の説明では、FET100においては、開口部5の4つの側壁に面した内部空間全体をチャネルとして使用しているが、本実施形態はこれに限られず、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を含む側壁は、1つのn+不純物拡散層6に対して少なくとも1つあればよい。ソース・ドレイン間電流を増大させるために、1つのn+不純物拡散層6に対して側壁は2つ以上あることが好ましい。
【0033】
上記の説明では、開口部5の内部を真空として説明したが、本実施形態はこれに限られず、開口部5の内部は空気であってもよい。開口部5の内部は空気とする場合は、空気中の電子の平均自由行程は真空中よりも短くなるため、上述したチャネル長Lを真空の場合に比べて短くすることが好ましい。
【0034】
上記ではn型FETであるFET100をp型半導体基板1に形成する構成について説明したが、p型半導体基板1とn+不純物拡散層6からなるPN接合はFET100の動作には直接的に寄与していない。また、PN接合に起因する寄生容量及び接合リークは、FET100の高速性及び信頼性を劣化させる要因ともなる。そのため、電子の放出源であるn+不純物拡散層6と他の半導体層とがPN接合を形成しない構成としてもよく、その場合はFET100の高速性及び信頼性を向上させることができる。PN接合を形成しない場合は、例えば、p型半導体基板1又はPウエルではなく、n型半導体基板又はNウエル上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成し、続いて開口部5、n+不純物拡散層6、ドレイン電極7、裏面電極8を形成すればよい。
【0035】
FET100がp型FETである場合においても、FET100がn型FETである場合と同様の理由で、正孔の放出源となるp型不純物拡散層と他の半導体層とがPN接合を形成しない構成としてもよい。その場合は、例えば、Nウエル又はn型半導体基板又はNウエルではなく、p型半導体基板又はPウエル上に第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成し、続いて開口部5、p+不純物拡散層、ドレイン電極7、裏面電極8を形成すればよい。
【0036】
(製造方法)
次に、p型半導体基板1としてシリコン基板を用いた場合におけるFET100の製造方法の例について説明する。まず、
図4に示すように、p型半導体基板1の表面上に、熱酸化法により、第1絶縁膜2として、シリコン酸化膜を例えば20nmの厚さで形成する。次に、第1絶縁膜2上に、CVD法により、ゲート電極3として、P(燐)ドープのポリシリコン層を例えば20nmの厚さで形成する。次に、ゲート電極3上に、プラズマCVD法により、第2絶縁膜4として、シリコン酸化膜を例えば20nmの厚さで形成する。この段階における断面図が
図4である。
【0037】
次に、第2絶縁膜4上に、フォトリソグラフィ法で、FET100を形成する領域以外の領域及び開口部5を形成する領域(
図2参照)が開口したフォトレジスト(図示せず)を形成する。続いて、ドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとして、露出している第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を除去することで、開口部5を形成する。
【0038】
続いて、イオン注入法で、開口部5内のp型半導体基板1にAs(砒素)イオンを注入し、n+不純物拡散層6を形成した後、フォトレジストを除去する。この段階における断面図が
図5である。
【0039】
次に、スパッタリング法でAl(アルミニウム)を例えば100nmの厚さで形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、形成したAlをドレイン電極7の形状に加工する。
図1〜
図3に示すように、ドレイン電極7は、第2絶縁膜4上に形成される。次に、p型半導体基板1の裏面に、スパッタリング法でAlを例えば200nmの厚さで形成する。上記の工程により、
図1に示すFET100を作製することができる。
【0040】
なお、上記の説明では、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で開口部5を形成するとしたが、本実施形態はこれに限定されない。開口部5は、例えばフォトリソグラフィ法を用いずに、FIB(Focused Ion Beam)装置を用いて、Ga(ガリウム)イオンによるドライエッチングによって形成してもよい。また、ドレイン電極7及び裏面電極8となるAlはスパッタリング法で形成するとしたが、Alの代わりに、例えばFIB装置によってGaを堆積させて形成してもよい。また、p型半導体基板1には、必要に応じてp型不純物を導入したPウエルを形成してもよい。
【0041】
(作用効果)
従来の真空チャネルFETにおいては、電荷キャリアの放出はソース電極又はカソード電極の側壁からのみ、真空チャネルの方向に対して垂直な方向に行われていた。このため、ソース・ドレイン間電流を増加させることが困難となっていた。また、従来の真空チャネルFETにおいて電荷キャリアの放出源である側壁の面積を増加させるためにソース電極又はカソード電極の厚さを増加させると、FETの縦方向のサイズが増加してしまうという問題があった。これに対して、本実施形態のFET100では、p型半導体基板1の表面上に設けられたn+不純物拡散層6から、n+不純物拡散層6の表面に対して垂直方向に電荷キャリアである電子を真空中に放出している。電荷キャリアの放出源として不純物拡散層を用いることにより、従来のソース電極又はカソード電極の側壁に比べて電荷キャリアの放出源の面積を大きくすることができるため、従来よりも電荷キャリアの放出量を増加させることができる。さらに、第1絶縁膜2に接している半導体基板1表面の反転層の電荷キャリアを、不純物拡散層を介して真空中に放出できるため、従来よりも電荷キャリアの放出量を増加させることができる。また、FET100の電荷キャリアは不純物拡散層から真空チャネルの方向と同一方向(真空チャネルの方向に対して平行な方向)に放出されるため、従来よりも効率よく電荷キャリアを放出することができる。そのため、従来に比べて、ソース・ドレイン間電流を増大させることができる高性能な真空チャネルFETを得ることができる。
【0042】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、真空チャネル電界効果トランジスタをn型FETとする場合とp型FETとする場合について説明したが、n型FETとp型FETとを同一の半導体基板上に形成した相補型FET回路を有する半導体装置を構成することもできる。
【0043】
図6に示すように、第2実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ回路110(以下、FET回路110と称する)は、n型FETとp型FETとで構成される相補型FET回路である。第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、共通する説明は省略する場合がある。
【0044】
図6の左側に示すn型FETは第1実施形態で説明したFET100と同様の構成であり、p型半導体基板1上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成されている。また、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、p型半導体基板1に達する開口部5を有している。開口部5内のp型半導体基板1には、ソース電極として機能するn+不純物拡散層6が形成されている。
【0045】
図6の右側に示すp型FETは第1実施形態で説明したFET100と同様の構成であり、p型半導体基板1にn型不純物を導入したNウエル9上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成され、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、Nウエル9に達する開口部5を有している。開口部5内のNウエル9には、ソース電極として機能するp+不純物拡散層10が形成されている。
【0046】
相補型FET回路の一例として、FET回路110を相補型インバータ回路とする場合について説明する。
図6に示すように、FET回路110においては、n型FETとp型FETのゲート電極3同士とドレイン電極7同士がそれぞれ接続されている。n型FETとp型FETのゲート電極3は、相補型インバータ回路の入力電圧を供給する電圧源に接続されている。相補型インバータ回路の出力電圧はn型FETとp型FETのドレイン電極7から外部に出力される。n+不純物拡散層6及び裏面電極8には負電圧を供給可能な電圧源が接続され、p+不純物拡散層10及びNウエル9には正電圧を供給可能な電圧源が接続されている。
【0047】
相補型インバータ回路の動作時には、n型FETのn+不純物拡散層6に例えば0VのGND電圧を印加し、p型FETのp+不純物拡散層10に例えば+2Vの正電圧を印加する。p型半導体基板1に裏面電極8を介して例えばGND電圧を印加する。Nウエル9に例えば+2Vの正電圧を印加する。この状態において、n型FET及びp型FETのゲート電極3に相補型インバータ回路の入力信号として例えば+2Vの正電圧又は0VのGND電圧を印加することで、n型FET及びp型FETのドレイン電極7から相補型インバータ回路の出力信号である出力電圧が外部に出力される。入力信号電圧がGND電圧又は+2Vに達するまでは、p型FET及びn型FETの両方がオン状態となり電流が流れ、入力信号電圧がGND又は+2Vに達した後は一方がオフ状態となり電流は流れない。このように、FET回路110は従来のCOMSインバータ回路と同様な動作をする低電力回路となっている。
【0048】
なお、
図6に示す例は、FET回路110を相補型インバータ回路とする場合の一例であり、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、
図6の結線図は必要に応じて変更が可能であり、ゲート電極3、n+不純物拡散層6、p+不純物拡散層10、p型半導体基板1及びNウエル9にそれぞれ印加される電圧はそれぞれ別の電圧源、別の配線、別回路を経由して供給されるようにしてもよい。また、FET回路110は、他の相補型FET回路、例えば複数のn型FET及びp型FETを有する差動増幅回路、SRAM回路等に変形して実施することができる。また、入力信号は+2Vの正電圧又は0Vに限定されず、例えば、p型FETのp+不純物拡散層10からの正孔放出効率を増加させるために、0Vの代わりに負電圧を印加してもよい。
【0049】
(製造方法)
次に、FET回路110の製造方法を説明する。まず、フォトリソグラフィ法で、p型半導体基板1上に、p型FETを形成する領域のみが開口したフォトレジスト(図示せず)を形成する。続いて、イオン注入法で、n型不純物であるP(燐)をp型半導体基板1に注入し、Nウエル9を形成する。続いて、p型半導体基板1の表面上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0050】
次に、第2絶縁膜上に、フォトリソグラフィ法で、
図6においてn型FET及びp型FETを形成する領域以外の領域及びn型FET及びp型FETのそれぞれの開口部5を形成する領域が開口したフォトレジストを形成する。続いて、ドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとして、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を除去した後、フォトレジストを除去する。
【0051】
次に、フォトリソグラフィ法で、n型FETを形成する領域のみを開口させたフォトレジストを形成した後、イオン注入法で、n型FETの開口部5内のp型半導体基板1にAs(砒素)イオンを注入し、n+不純物拡散層6を形成した後、フォトレジストを除去する。続いて、フォトリソグラフィ法で、p型FETを形成する領域のみを開口させたフォトレジストを形成した後、イオン注入法で、p型FETの開口部5内のNウエル9にB(ホウ素)イオンを注入し、p+不純物拡散層10を形成した後、フォトレジストを除去する。ドレイン電極7、裏面電極8を順次形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0052】
(作用効果)
上記のように、本実施形態によれば、真空チャネルを有するn型FETとp型FETとを同一の半導体基板上に形成した、低電力で動作する相補型FET回路を有する半導体装置を得ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ120(以下、FET120と称する)は、ゲート電極3の側壁部に側壁絶縁膜11を備える点において第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、共通する説明は省略する場合がある。
【0054】
図7及び
図8に示すように、第3実施形態のFET120は、ゲート電極3の側壁に、側壁絶縁膜11を有している。側壁絶縁膜11は、少なくとも開口部5に面するゲート電極3の側壁部に形成されていればよい。側壁絶縁膜11は、ゲート電極3として形成したポリシリコン膜を熱酸化することによって形成してもよく、CVD法又はスパッタリング法によって形成してもよい。
【0055】
(製造方法)
次に、FET120の製造方法を説明する。p型半導体基板1の表面上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成し、続いて開口部5及びn+不純物拡散層6を形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0056】
側壁絶縁膜11を熱酸化によって形成する場合は、ゲート電極3を例えば10nm以上20nm以下のn型不純物を導入したポリシリコン膜で形成する。開口部5を形成した後、熱酸化法によって、露出しているゲート電極3を構成するポリシリコン膜の表面を熱酸化する。続いて、この熱酸化によって同時にn+不純物拡散層6上に形成された熱酸化膜を、異方性エッチング法によって除去することによって、ゲート電極3の側壁に側壁絶縁膜11を形成する。側壁絶縁膜11の厚さは、例えば1nm以上10nm以下とする。側壁絶縁膜11をCVD法又はスパッタリング法によって形成する場合は、ゲート電極3はポリシリコンではなく銅、タングステン等の金属でもよい。熱酸化の場合と同様に、n+不純物拡散層6を形成した後、CVD法によって例えばシリコン酸化膜を堆積する。続いて、このCVDによって同時にn+不純物拡散層6上に堆積したシリコン酸化膜を、異方性エッチング法によって除去することによって、ゲート電極3の側壁に側壁絶縁膜11を形成する。続いてドレイン電極7、裏面電極8を順次形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0057】
(作用効果)
本実施形態では、ゲート電極3の側壁部に側壁絶縁膜11を備えることにより、開口部5の内部の真空空間をn+不純物拡散層6からドレイン電極7に向かって電子が移動する途中において、正電位が印加されているゲート電極3に電子の一部が捕獲されることを抑制することができる。そのため、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができ、高性能な真空チャネルFETを得ることができる。
【0058】
(第4実施形態)
第4実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ130(以下、FET130と称する)は、開口部5の上部に延在するドレイン電極7を備える点において第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、共通する説明は省略する場合がある。
【0059】
図9に示すように、第4実施形態のFET130においては、ドレイン電極7が開口部5の上部全体を覆うように形成されている。なお、ドレイン電極7は、開口部5の上部全体を覆わない範囲で、第2絶縁膜4の側面よりもn+不純物拡散層6側に延在させ、開口部5の上部を部分的に覆うようにしてもよい。
【0060】
(製造方法)
次に、FET130の製造方法を説明する。p型半導体基板1の表面上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成し、続いて開口部5及びn+不純物拡散層6を形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0061】
n+不純物拡散層6を形成した後、FIB(Focused Ion Beam)装置を用いて、開口部5の上部全体又はその一部を覆うように導電膜であるGa(ガリウム)を堆積させる。ドレイン電極7となるGa堆積層の厚さは、例えば50nm以上200nm以下とすればよい。又は、n+不純物拡散層6を形成した後、スパッタリング法でAlを例えば50nm以上200nm以下の厚さで前面に形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、開口部5の上部全体又はその一部を覆うようにAlをパターニングしてもよい。
【0062】
(作用効果)
ソース電極であるn+不純物拡散層6から放出された電子は、ドレイン電極7に向かって開口部5内の真空空間を移動する。ドレイン電極7を、第2絶縁膜4の側面よりもn+不純物拡散層6側に延在させ、開口部5の上部全て又は一部を覆う構成とすることにより、ドレイン電極7に到達する電子の数は増加するため、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができる高性能な真空チャネルFETを得ることができる。
【0063】
(第5実施形態)
第5実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ回路140(以下、FET回路140と称する)は、SOI(Silicon On Insulator)基板上に形成された相補型FET回路である。第1実施形態又は第2実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、共通する説明は省略する場合がある。
【0064】
図10に示すように、第5実施形態のFET140回路は、支持基板12、埋め込みシリコン酸化層13及びn型シリコン活性層14を有するSOI基板上に形成されたn型FETとp型FETとで構成される相補型FET回路である。
【0065】
図10の左側に示すn型FETは、n型シリコン活性層14上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成されている。また、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、n型シリコン活性層14に達する開口部5を有している。開口部5内のn型シリコン活性層14には、ソース電極として機能するn+不純物拡散層6が形成されている。
【0066】
図10の右側に示すp型FETは、n型シリコン活性層14にp型不純物を導入したPウエル15上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成されている。Pウエル15の底部は埋め込みシリコン酸化層13に達している。また、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、Pウエル15に達する開口部5を有している。開口部5内のPウエル15には、ソース電極として機能するp+不純物拡散層10が形成されている。n型シリコン活性層14とPウエル15とは、素子分離領域16によって、電気的に分離されている。
【0067】
SOI基板上に形成した相補型FET回路の一例として、FET回路140を相補型インバータ回路とする場合について説明する。
図10に示すように、FET回路140においては、n型FETとp型FETのゲート電極3同士とドレイン電極7同士がそれぞれ接続されている。n型FETとp型FETのゲート電極3は、相補型インバータ回路の入力電圧を供給する電圧源に接続されている。相補型インバータ回路の出力電圧はn型FETとp型FETのドレイン電極7から外部に出力される。n+不純物拡散層6にはGND電圧を供給可能な電圧源が接続され、p+不純物拡散層10及びには正電圧を供給可能な電圧源が接続されている。さらに、n型シリコン活性層14にGND電圧を供給可能な電源を接続し、Pウエル15に正電圧を供給可能な電圧源を接続するようにしてもよい。
【0068】
相補型インバータ回路の動作時には、n型FETのn+不純物拡散層6に例えば0VのGND電圧を印加し、p型FETのp+不純物拡散層10に例えば+2Vの正電圧が印加する。さらに、Pウエル15に例えば+2Vの正電圧を印加し、n型シリコン活性層14に例えば0VのGND電圧を印加するようにしてもよい。この状態において、n型FET及びp型FETのゲート電極3に相補型インバータ回路の入力信号として例えば+2Vの正電圧又は0VのGND電圧を印加することで、n型FET及びp型FETのドレイン電極7から相補型インバータ回路の出力信号である出力電圧が外部に出力される。この場合も従来のNMOS及びPMOSトランジスタで構成されたCMOSインバータ回路と同様に、入力信号が+2V又はGND電位に達するまでは電流が流れるが、入力信号が+2V又はGND電位に達した後は回路を流れる電流は0となる。
【0069】
なお、
図10に示す例は、FET回路140を相補型インバータ回路とする場合の一例であり、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、
図10の結線図は必要に応じて変更が可能であり、ゲート電極3、n+不純物拡散層6及びp+不純物拡散層10にそれぞれ印加される電圧はそれぞれ別の電圧源、別の配線、別回路を経由して供給されるようにしてもよい。また、FET回路140は、他の相補型FET回路、例えば複数のn型FET及びp型FETを有する差動増幅回路、SRAM回路等に変形して実施することができる。また、入力信号は+2Vの正電圧又は0Vに限定されず、例えば、p型FETのp+不純物拡散層10からの正孔放出効率を増加させるために、0Vの代わりに負電圧を印加してもよい。
【0070】
(作用効果)
本実施形態のFET回路140のn型FETにおいては、ソース電極として機能するn+不純物拡散層6はn型シリコン活性層14に形成されている。このようにn+不純物拡散層6と他の半導体層がPN接合を形成しない構成とすることで、第1実施形態で説明したように、FET回路140のn型FETの高速性及び信頼性を向上させることができる。同様に、FET回路140のp型FETにおいては、ソース電極として機能するp+不純物拡散層10はPウエル15に形成されている。このようにp+不純物拡散層10と他の半導体層とがPN接合を形成しない構成とすることで、FET回路140のp型FETの高速性及び信頼性を向上させることができる。また、本実施形態のFET回路140のn型FETにおいては、SOI基板の埋め込みシリコン酸化層13上に、n型FETのn型シリコン活性層14及びp型FETのPウエル15を備えることによって、PN接合に起因する寄生容量及び接合リークが発生しない。そのため、本実施形態のFET回路140は、従来のMOSトランジスタでは利用することが困難な耐放射線性能、耐高温性能が要求される用途に適している。
【0071】
(第6実施形態)
第6実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ150(以下、FET150と称する)は、側面方向及び上面方向の真空又は空気の空間を、絶縁膜によって外気から遮断する構成を有している。その他の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の部位には同一の符号を付し、共通する説明は省略する場合がある。中空構造を作成する技術については、例えば、US 6,268,261 B1に記載されている。
【0072】
図11に示すように、第3実施形態のFET150は、p型半導体基板1上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4、ドレイン電極7が順次形成されている。また、第2絶縁膜4、ゲート電極3及び第1絶縁膜2を貫通し、p型半導体基板1に達する開口部5が形成されている。開口部5内のp型半導体基板1には、ソース電極として機能するn+不純物拡散層6が形成されている。p型半導体基板1の裏面には裏面電極8が形成されている。上記の構成は、第1実施形態のFET100と同一である。
【0073】
FET150は、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4及びドレイン電極7を有する積層構造(以下、単に積層構造と称することがある)の周囲に、外気から遮断された中空部22を備えている。中空部22は、第1キャップ層17、第2キャップ層19及びカバー層21で囲まれた空間で構成されている。中空部22の側面全体には、第1キャップ層17が形成されている。中空部22の上面には、キャップ開口部20を有する第2キャップ層19と、第2キャップ層19上にキャップ開口部20を覆うように形成されたカバー層21が形成されている。
【0074】
第1キャップ層17は例えばシリコン窒化膜で構成されており、厚さは例えば80nm以上200nm以下である。第2キャップ層19は例えばシリコン窒化膜で構成されており、厚さは例えば20nm以上100nm以下である。カバー層21は例えばシリコン酸化膜で構成されており、厚さは例えば100nm以上500nm以下である。
【0075】
(製造方法)
次に、FET150の製造方法の例について説明する。p型半導体基板1の表面上に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4を順次形成し、続いて開口部5、n+不純物拡散層6、ドレイン電極7及び裏面電極8を形成する方法は、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0076】
続いて、CVD法により、第1キャップ層17として、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜等を例えば80nm以上200nm以下の厚さで形成する。次に、第1キャップ層17をフォトリソグラフィ法及びドライエッチング法でパターニングする。これにより、第1キャップ層17は、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4及びドレイン電極7を有する積層構造の側面方向の全周囲を囲むように形成される。
【0077】
次に、充填剤18を例えば100nm以上400nm以下の厚さで形成する。充填剤としては、例えばアモルファスカーボンをスパッタリング法で製膜すればよい。続いて、CMP法によって、第1キャップ層17上の充填剤18を除去する。これにより、第1キャップ層17と上記積層構造との間の空間が充填剤18で充填される。この段階における断面図が
図12である。
【0078】
次に、CVD法により、第2キャップ層19として、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜を例えば20nm以上100nm以下の厚さで形成する。次に、第2キャップ層19をフォトリソグラフィ法及びドライエッチング法でパターニングして、第2キャップ層19の一部にキャップ開口部20を形成し、充填剤18の表面の一部を露出させる。続いて、酸素を含む雰囲気中で、例えば400℃、2時間の熱処理を行う。この熱処理により、充填剤18であるアモルファスカーボンを気化させ、キャップ開口部20から外部に放出させることで、充填剤18を除去する。
図13は、熱処理が開始された段階における断面図であり、気化したアモルファスカーボンは、
図13に矢印で示すように、キャップ開口部20を介して外部に放出される。
【0079】
続いて、CVD法により、カバー層21として、シリコン酸化膜を例えば100nm以上500nm以下の厚さで形成し、キャップ開口部20を埋め込むことで、中空部22が形成される。中空部22内は、空気であってもよく、真空でもよい。又は、中空部22内に窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス注入するようにしてもよい。
【0080】
(作用効果)
真空チャネルトランジスタは、開口部5の内部空間を真空チャネルとして使用するため、外気に曝されることによってトランジスタ性能が経時劣化するという問題がある。FET150は、第1絶縁膜2、ゲート電極3、第2絶縁膜4及びドレイン電極7を有する積層構造を外気から遮断された中空部22内に配置することにより、真空チャネルトランジスタの性能及び信頼性の経時劣化を抑制することができる。そのため、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができ、高性能で信頼性の高い真空チャネルFETを得ることができる。
【0081】
(第7実施形態)
第7実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ200(以下、FET200と称する)の構成及び製造方法について
図14〜
図19を参照して説明する。
図15はFET200の全体構成を示す斜視図であり、
図14は
図15中に矢印で示す方向の断面図である。
図15では裏面電極38及び外部端子に接続される配線等の図示は省略している。以下の説明では、第1実施形態と共通する説明は省略する場合がある。
【0082】
図14及び
図15に示すように、第7実施形態のFET200は、p型半導体基板31上に、第1絶縁膜32と、第1絶縁膜32よりも膜厚が厚い第2絶縁膜34が隣接して形成されている。第1絶縁膜32上にはゲート電極33が積層され、第2絶縁膜34上にはドレイン電極37が積層されている。また、ゲート電極33及び第1絶縁膜32を貫通し、p型半導体基板31に達する開口部35が形成されている。開口部35内のp型半導体基板31には、ソース電極として機能するn+不純物拡散層36が形成されている。p型半導体基板31の裏面には裏面電極38が形成されている。ゲート電極33及びドレイン電極37には正電圧を供給可能な電圧源が接続され、n+不純物拡散層36及び裏面電極38には負電圧を供給可能な電圧源が接続されている。
【0083】
p型半導体基板31がp型シリコン基板である場合、n+不純物拡散層36は、p型半導体基板31中にn型不純物であるAs(砒素)又はP(燐)を導入し、熱処理を行うことによって形成される。n+不純物拡散層36は、開口部35の底面全体を覆い、第1絶縁膜32と接していることが好ましいが、開口部35の側面よりも外側に延在し、第1絶縁膜32の底部と接するようにしてもよい。また、FET動作に影響しない範囲であれば、n+不純物拡散層36は必ずしも開口部35の底面全体を覆う必要はない。
【0084】
第1絶縁膜32の厚さは例えば5nm以上20nm以下であり、材料としては、p型半導体基板31がp型シリコン基板である場合は、例えばp型半導体基板31の表面を酸化したシリコン酸化膜でもよく、CVD法等によって堆積したシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を含む絶縁膜でもよい。第2絶縁膜34の厚さは例えば50nm以上100nm以下であり、例えばCVD法等によって堆積したシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜含む絶縁膜とすればよい。
【0085】
ゲート電極33は金属又はn型不純物を導入したポリシリコン等の導電膜で形成され、厚さは例えば10nm以上20nm以下である。
【0086】
ドレイン電極37は金属又はポリシリコン等の導電膜で形成され、厚さは例えば50nm以上200nm以下である。
【0087】
裏面電極38はAl等の金属又はポリシリコン等の導電膜で形成され、厚さは例えば50nm以上200nm以下である。
【0088】
開口部35は、例えば、短辺が0.02μm以上0.5μm以下、長辺が0.01μm以上5μm以下の長さの長方形とすればよい。
【0089】
(動作原理)
次に、FET200の動作については、第1実施形態と同様である。FET200をオンさせる場合、ソース電極であるn+不純物拡散層36に例えば0V、ドレイン電極37に例えば+2V、ゲート電極33に例えば+1V、裏面電極38に例えば0Vを印加する。このように電圧を印加することで、n+不純物拡散層36と開口部35内との真空の界面にFNトンネリングが生じて、n+不純物拡散層36の表面から開口部35内の真空へ電子が放出される。放出された電子はドレイン電極37に向かって真空中を移動し、ドレイン電極37に到達する。
【0090】
(製造方法)
次に、p型半導体基板31としてp型シリコン基板を用いた場合おけるFET200の製造方法の例について説明する。p型半導体基板31の表面上に、第2絶縁膜34として、シリコン酸化膜を例えば80nmの厚さで形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとして、第2絶縁膜34をパターニングする。
図15及び
図16に示すように、第2絶縁膜34は互いに離間した2つの孤立パターンである。第2絶縁膜34は、熱酸化法によって形成してもよく、CVD法によって形成してもよい。
【0091】
続いて、p型半導体基板31の表面上に、熱酸化法又はCVD法により、第1絶縁膜32として、シリコン酸化膜を例えば20nmの厚さで形成する。次に、第1絶縁膜32上に、CVD法により、ゲート電極33として、P(燐)ドープのポリシリコン層を例えば20nmの厚さで形成する。続いて、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとして、第1絶縁膜32及びゲート電極33をパターニングすることにより、第2絶縁膜34に挟まれたp型半導体基板31の表面上に、第1絶縁膜32及びゲート電極33の積層構造を形成する。この段階における断面図が
図17である。上記のように、第1絶縁膜32よりも第2絶縁膜34を先に形成した理由は、第2絶縁膜34を熱酸化で形成する場合、同時に第1絶縁膜32も熱酸化されて膜厚が変動してしまうことを防止するためである。
【0092】
次に、フォトリソグラフィ法で、開口部35を形成する領域が開口したフォトレジスト(図示せず)を形成する。続いて、ドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとして、露出しているゲート電極33及び第1絶縁膜32を除去することで、開口部35を形成する。
【0093】
続いて、イオン注入法で、開口部35内のp型半導体基板31にAs(砒素)イオンを注入し、n+不純物拡散層36を形成した後、フォトレジストを除去する。この段階における断面図が
図18である。
【0094】
次に、スパッタリング法でAlを例えば100nmの厚さで形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、形成したAlをドレイン電極37の形状に加工する。
図14及び
図15に示すように、ドレイン電極37は、第2絶縁膜34上に形成される。次に、p型半導体基板31の裏面側の前面に、スパッタリング法でAlを例えば200nmの厚さで形成する。上記の工程により、
図14に示すFET200を作製することができる。
【0095】
上記の製造方法において、ゲート電極33の表面に絶縁膜を形成する工程を追加してもよい。その場合は、例えば、
図18に示す開口部35及びn+不純物拡散層36を形成する工程の後に、CVD法によって、第3絶縁膜39として、シリコン酸化膜を例えば5nm以上10nm以下の膜厚で形成する。続いて、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、p型半導体基板31上の第3絶縁膜39の一部を除去して、開口部35aを形成すればよい。続いて上記と同様にドレイン電極37を第3絶縁膜39上に形成することにより、
図19に示す構成のFET200を作製することができる。
【0096】
(作用効果)
第1実施形態では、チャネル長Lは第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の厚さの合計値となっている。これに対して、本実施形態では、チャネル長Lは第2絶縁膜34の厚さのみによって決定することができる。そのため、第1実施形態に比べてチャネル長Lの調整が容易であり、FETの設計自由度を向上させることができる。また、第1実施形態では、開口部5の形成のために、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の三層構造を加工する必要がある。これに対して、本実施形態のFET200では、開口部35の形成のために第1絶縁膜32及びゲート電極33の二層構造を加工するだけでよい。そのため、第1実施形態の開口部5に比べて、開口部35の加工精度を向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態では、ゲート電極33の表面に第3絶縁膜39を形成することにより、開口部35の内部の真空空間をn+不純物拡散層36からドレイン電極37に向かって電子が移動する途中において、ゲート電極33に電子が捕獲されることを抑制することができる。そのため、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができ、高性能な真空チャネルFETを得ることができる。
【0098】
(第8実施形態)
第8実施形態の真空チャネル電界効果トランジスタ回路300(以下、FET回路300と称する)は、フィン構造を有する横型チャネルFETで構成された相補型FET回路である。
【0099】
上記実施形態1〜7では、電荷キャリアを半導体基板の表面に対して縦方向(垂直方向)に移動させる縦型真空チャネルFETの構成について説明したが、電荷キャリアを半導体基板の表面に対して横方向(平行方向)に移動させる横型真空チャネルFETの構成としてもよい。
図20に示すように、第8実施形態のFET回路300は、p型半導体基板41上に、横型真空チャネルを有するn型FET及びp型FETを有している。n型FETは、p型半導体基板41上に、ゲート電極45、ソース電極43及びドレイン電極47を有し、p型FETは、Nウエル42上に、ゲート電極46、ソース電極44及びドレイン電極48を有している。
【0100】
FET回路300のn型FETのゲート電極45、ソース電極43及びドレイン電極47は、それぞれp型半導体基板41の表面に対して垂直方向に延伸するフィン形状となっている。ゲート電極45、ソース電極43及びドレイン電極47のフィン形状は、例えばp型半導体基板41の一部を用いて形成すればよい。ソース電極43とドレイン電極47は、真空を介して対向して設けられ、ソース電極43とドレイン電極47との間隔は例えば40nm以上60nm以下である。ソース電極43とドレイン電極47との間の空間がn型FETの真空チャネル空間である。ゲート電極45は、n型FETの真空チャネル空間の両側に面し、ソース電極43及びドレイン電極47から所定の間隔を空けて形成されている。
【0101】
FET回路300のn型FETのソース電極43のフィン形状をp型半導体基板41の一部を用いて形成した場合は、ソース電極43にn型不純物を導入して、n+不純物拡散層を形成し、ゲート電極45及びドレイン電極47の表面上には必要に応じてAl等の金属を形成することが好ましい。
【0102】
FET回路300のp型FETのゲート電極46、ソース電極44及びドレイン電極48は、n型FETと同様に、それぞれp型半導体基板41の表面に対して垂直方向に延伸するフィン形状となっている。フィン形状は、例えばp型半導体基板41の一部を用いて形成すればよい。ソース電極44とドレイン電極48は、真空を介して対向して設けられ、ソース電極44とドレイン電極48との間隔は例えば40nm以上60nm以下である。ソース電極44とドレイン電極48との間の空間がp型FETの真空チャネル空間である。ゲート電極46は、p型FETの真空チャネル空間の両側に面し、ソース電極44及びドレイン電極48から所定の間隔を空けて形成されている。
【0103】
FET回路300のp型FETのソース電極44のフィン形状をp型半導体基板41の一部を用いて形成した場合は、ソース電極44にp型不純物を導入して、p+不純物拡散層を形成し、ゲート電極46及びドレイン電極48の表面上には必要に応じてAl等の金属を形成することが好ましい。
【0104】
上記の説明では、ゲート電極45はn型FETの真空チャネル空間の両側に面し、ゲート電極46はp型FETの真空チャネル空間の両側に面するように配置するとして説明したが、これらをそれぞれの真空チャネル空間内に設けてもよい。その場合は、例えば、ゲート電極45及びゲート電極46の表面に絶縁膜を形成して、ゲート電極45及びゲート電極46に電荷キャリアが誘引されることを抑制するようにすることが好ましい。
【0105】
(動作原理)
次に、FET回路300のn型FETの動作について説明する。FET回路300のn型FETは、上記のようにソース電極43とドレイン電極47との間の真空空間を真空チャネル空間としている。電荷キャリアとなる電子は、ソース電極43から上記真空チャネル空間に放出され、真空チャネル空間中をp型半導体基板41の表面に対して横方向(平行方向)に移動し、ドレイン電極47に到達する。電子の真空チャネル空間への放出はゲート・ソース間電圧V
GSを所定の電圧とすることによって行われ、放出後の移動はソース・ドレイン間電圧V
DSを所定の電圧とすることによって行われる。FET回路300のn型FETをオンさせる場合は、ソース電極43に例えば0V、ドレイン電極47に例えば+2V、ゲート電極45に例えば+1Vを印加すればよい。
【0106】
FET回路300のp型FETの動作について説明する。p型FETにおいて電荷キャリアとなる正孔は、ソース電極44から上記真空チャネル空間に放出され、真空チャネル空間中をp型半導体基板41の表面に対して横方向(平行方向)に移動し、ドレイン電極48に到達する。正孔の真空チャネル空間への放出は、FET300のn型FETと同様に、V
GSを所定の電圧とすることによって行われ、放出後の移動はV
DSを所定の電圧とすることによって行われる。FET回路300のp型FETをオンさせる場合は、ソース電極44に例えば+2V、ドレイン電極48に例えば0V、ゲート電極46に例えば+1Vを印加すればよい。
【0107】
横型チャネルFETで構成された相補型FET回路の一例として、FET回路140を相補型インバータ回路とする場合について説明する。
図20に示すように、FET回路300においては、n型FETのゲート電極45とp型FETのゲート電極46が接続されている。また、n型FETのドレイン電極47とp型FETのドレイン電極48が接続されている。n型FETのゲート電極45とp型FETのゲート電極46は、相補型インバータ回路の入力電圧を供給する電圧源に接続されている。相補型インバータ回路の出力電圧はn型FETのドレイン電極47とp型FETのドレイン電極48から外部に出力される。n型FETのソース電極43にはGND電圧を供給可能な電圧源が接続され、p型FETのソース電極44及びNウエル42には正電圧を供給可能な電圧源が接続されている。
【0108】
相補型インバータ回路の動作時には、n型FETのソース電極43に例えば0VのGND電圧を印加し、p型FETのソース電極44及びNウエル42に例えば+1Vの正電圧を印加する。さらに、p型半導体基板41に例えばGND電圧を印加する。この状態において、n型FETのゲート電極45及びp型FETのゲート電極46に相補型インバータ回路の入力信号として例えば+1Vの正電圧又は0VのGND電圧を印加することで、n型FETのドレイン電極47及びp型FETのドレイン電極48から相補型インバータ回路の出力信号である出力電圧が外部に出力される。
【0109】
図20に示す例は、FET回路300を相補型インバータ回路とする場合の一例であり、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
図20の結線図は必要に応じて変更が可能であり、各電圧はそれぞれ別の電圧源、別の配線、別回路を経由して供給されるようにしてもよい。また、FET回路300は、他の相補型FET回路、例えば複数のn型FET及びp型FETを有する差動増幅回路、SRAM回路等に変形して実施することができる。また、入力信号は+2Vの正電圧又は0Vに限定されず、例えば、p型FETのソース電極44からの正孔放出効率を増加させるために、0Vの代わりに負電圧を印加してもよい。
【0110】
(作用効果)
本実施形態の横型真空チャネルFETにおいては、縦型真空チャネルFETよりもソース電極及びドレイン電極の面積を増大させることができるため、ソース・ドレイン間電流I
DSを増加させることができる。また、ソース電極とドレイン電極とを絶縁膜によって絶縁する必要がなく、ゲート電極の大きさ及び配置も容易に調整できるため、FETの設計自由度が高くなる。そのため、高性能な相補型真空チャネルFETを有する半導体装置を得ることができる。
【0111】
上記の実施形態1〜8では、半導体基板としてシリコン基板を用いた例について説明したが、GaAs、GaN等の他の半導体基板でも実施可能である。
真空チャネル電界効果トランジスタ100は、p型半導体基板1上に設けられた第1絶縁膜2と、第1絶縁膜2上に設けられたゲート電極3と、ゲート電極3上に設けられた第2絶縁膜4と、第2絶縁膜4上に設けられたドレイン電極7と、p型半導体基板1の表面に、第1絶縁膜2、ゲート電極3及び第2絶縁膜4の側面を含む側壁に接して設けられたn+不純物拡散層6とを有している。n+不純物拡散層6、ゲート電極3及びドレイン電極7に所定の電圧を印加することによって、n+不純物拡散層6の電荷キャリアが、側壁に面する真空中又は空気中をドレイン電極7に移動することにより、ソース・ドレイン間電流を増大させることができる。