(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撹拌機は、放熱時に前記固相部と前記水溶液部とが分離された状態における前記水溶液部が位置する部分に、撹拌翼が配置されている、請求項2に記載の蓄熱式給湯器。
前記容器には、放熱時に前記固相部と前記水溶液部とが分離された状態における前記水溶液部が位置する部分に、前記吸引用配管口及び前記吐出用配管口が形成されている、請求項4に記載の蓄熱式給湯器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態1.
(蓄熱式給湯器100の構成)
図1は、実施の形態1に係る蓄熱式給湯器であって、蓄熱材の放熱時における状態の内部構成を示した模式図である。本実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100は、
図1に示すように、容器1と、蓄熱材2と、第1の熱媒と熱交換して蓄熱材2に蓄熱すると共に、第2の熱媒と熱交換して蓄熱材2から放熱させる熱交換器3と、蓄熱材2を撹拌する撹拌機6と、を備えている。
【0011】
容器1は、例えば略直方体形状である。容器1の材質は、SUS、Al、Cu又はポリカーボネイド等の耐熱性及び強度の高い材料である。容器1の内部には、蓄熱材2、熱交換器3及び撹拌機6の撹拌翼60が収容されている。容器1の側面には、熱交換器3の給湯水流入配管4b、給湯水流出配管4c、熱媒流入配管5b及び熱媒流出配管5cが挿入される複数の開口が形成されている。容器1の下部は、蓄熱材2の放熱時に、容器1の内底面に沈殿するエリスリトール20の固体を堆積させるための堆積空間となる。
【0012】
蓄熱材2は、主にエリスリトール20と水21とを有している。エリスリトール20とは、エリスリトール、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等が含まれる。水21は、純水が好ましいが、エリスリトール20を劣化させる物質が含まれていない水であれば純水でなくて良い。エリスリトール20と水21は、溶解する性質があり、且つ高い蓄熱量を有する。蓄熱式給湯器100は、蓄熱材2が高い蓄熱量を有することにより、容器1に充填する蓄熱材2の充填量を削減でき、全体として小型化することができる。また、蓄熱材2は、蓄熱時において、全体においてエリスリトール20の固相が析出していない水溶液となり、放熱時において、
図1に示すように、エリスリトール20が析出された固相部Bと、エリスリトール20の固相が析出していない水溶液部Aとに分離される性質を有している。
【0013】
熱交換器3は、放熱用熱交換器4と、蓄熱用熱交換器5と、を有している。放熱用熱交換器4は、例えばチューブ型熱交換器であり、放熱用伝熱管4aと、給湯水流入配管4bと、給湯水流出配管4cと、フィン4dと、を有している。また、蓄熱用熱交換器5は、例えばチューブ型熱交換器であり、蓄熱用伝熱管5aと、熱媒流入配管5bと、熱媒流出配管5cと、図示省略のフィンと、を有している。
【0014】
放熱用伝熱管4aは、円筒、平板又は扁平状である。放熱用伝熱管4aは、アルミニウム、Cu又はSUS等の金属を加工して形成される。放熱用伝熱管4aの内部には、蓄熱材2の熱を放出するための第2の熱媒として給湯水が流れる。
【0015】
給湯水流入配管4b及び給湯水流出配管4cは、アルミニウム、Cu又はSUS等の金属を加工して形成される。給湯水流入配管4bは、容器1の一側面に形成された開口に挿入され、容器1の内部と外部とに跨って設けられており、容器内側の端部が放熱用伝熱管4aの一端に接続されている。給湯水流出配管4cは、容器1の一側面に形成された開口に挿入され、容器1の内部と外部とに跨って設けられており、容器内側の端部が放熱用伝熱管4aの他端に接続されている。実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100では、給湯水流入配管4bが容器1の上方に配置され、給湯水流出配管4cが容器1の下方に配置された構成を示している。但し、給湯水流入配管4bが容器1の下方を配置され、給湯水流出配管4cが容器1の上方に配置された構成でもよい。
【0016】
フィン4dは、アルミニウム、Cu、SUS又はカーボン等の熱伝導性の高い金属を平板状に加工したものである。フィン4dは、放熱用伝熱管4aの外周面に設けられている。
【0017】
蓄熱用伝熱管5aは、円筒、平板又は扁平状である。蓄熱用伝熱管5aは、アルミニウム、Cu又はSUS等の金属を加工して形成される。蓄熱用伝熱管5aの内部には、蓄熱材2を加熱するための第1の熱媒として、例えば水、油、二酸化炭素、又はR410aなどのHFC系冷媒が流れる。
【0018】
熱媒流入配管5b及び熱媒流出配管5cは、アルミニウム、Cu又はSUS等の金属を加工して形成される。熱媒流入配管5bは、容器1の一側面に形成された開口に挿入され、容器1の内部と外部とに跨って設けられており、容器内側の端部が蓄熱用伝熱管5aの一端に接続されている。熱媒流出配管5cは、容器1の一側面に形成された開口に挿入され、容器1の内部と外部とに跨って設けられており、容器内側の端部が蓄熱用伝熱管5aの他端に接続されている。実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100では、熱媒流入配管5bが容器1の上方に配置され、熱媒流出配管5cが容器1の下方に配置された構成を示している。但し、熱媒流入配管5bが容器1の下方を配置され、熱媒流出配管5cが容器1の上方に配置された構成でもよい。
【0019】
蓄熱用熱交換器5のフィンは、アルミニウム、Cu、SUS又はカーボン等の熱伝導性の高い金属を平板状に加工したものである。蓄熱用熱交換器5のフィンは、蓄熱用伝熱管5aの外周面に設けられている。
【0020】
なお、放熱用熱交換器4は、蓄熱材2から熱を放熱させることができる構成であれば良く、実施の状況に応じて形状を適宜変更して設けるものとする。例えば、放熱用熱交換器4は、フィン4dを有さず、放熱用伝熱管4a、給湯水流入配管4b及び給湯水流出配管4cのみで構成してもよい。
【0021】
同様に、蓄熱用熱交換器5は、蓄熱材2に熱を蓄熱させることができる構成であれば良く、実施の状況に応じて形状を適宜変更して設けるものとする。例えば、蓄熱用熱交換器5は、フィンを有さず、蓄熱用伝熱管5a、熱媒流入配管5b及び熱媒流出配管5cのみで構成してもよい。
【0022】
また、放熱用熱交換器4及び蓄熱用熱交換器5は、一例としてチューブ式熱交換器について説明したが、蓄熱材2と熱交換できる構成であれば平板状の板を複数枚積層させたプレート式の熱交換器でも良い。
【0023】
撹拌機6は、蓄熱材2を撹拌するための撹拌翼60と、撹拌翼60を回転させる回転機61と、を有している。撹拌翼60は、SUS、アルミニウム若しくはCu等の金属材料、プラスチック若しくは樹脂等の軽量材料、又は磁石等の磁性材料で形成されている。撹拌翼60は、回転機61の駆動によって回転し、蓄熱材2を撹拌する。回転機61は、例えば電気で駆動するモータ又は磁場等によって、撹拌翼60を回転させる駆動源である。
【0024】
(エリスリトール20と水21の混合割合)
次に、
図2及び
図3に基づいてエリスリトール20と水21の混合比率について説明する。
図2は、水に対するエリスリトールの混合比率と蓄熱材の融点との関係を示したグラフである。
図2では、横軸が水21に対するエリスリトール20の混合比率[wt%]を示し、縦軸が蓄熱材2の融点[℃]を示している。エリスリトール20は、水21と溶解する性質を有する。蓄熱材2は、エリスリトール20が水21に溶解することにより、エリスリトール20が相変化する温度(融点)を低下させることができる。
図2に示すように、蓄熱材2は、水21に対するエリスリトール20の混合比率が低下するにしたがって融点が下がる性質を有する。蓄熱材2は、給湯用途の40℃〜90℃の範囲で使用する場合、融点を60℃〜90℃の範囲にすることが好ましい。そうすると、
図2から、水21に対するエリスリトール20の混合比率は、重量比60[wt%]以上80[wt%]以下が適することになる。
【0025】
次に、
図3は、水に対するエリスリトールの混合比率と蓄熱材の単位面積あたりの熱量との関係を示したグラフである。
図3では、横軸が水21に対するエリスリトール20の混合比率[wt%]を示し、縦軸が蓄熱材2の単位体積あたりの熱量[MJ・L
−1]を示している。
図3に示すように、蓄熱材2の単位体積あたりの熱量は、エリスリトール20の混合比率に応じて増加し、エリスリトール20の混合比率が重量比80[wt%]付近で最大となる。つまり、エリスリトール20の混合比率は、重量比80[wt%]付近が最適となる。よって、
図2及び
図3の結果から、給湯用途40℃〜90℃の範囲で使用する場合、水21に対するエリスリトール20の混合比率は、重量比60[wt%]以上80[wt%]以下が適することになり、更に言えば重量比80[wt%]が最適となる。
【0026】
(蓄熱式給湯器100の蓄熱動作)
次に、蓄熱式給湯器100の蓄熱動作について説明する。蓄熱式給湯器100は、蓄熱用熱交換器5の熱媒流入配管5bから高温の熱媒が流れると、蓄熱用伝熱管5aからフィンを介して、蓄熱材2に熱が伝えられる。蓄熱式給湯器100は、低温の蓄熱材2が温められ温度が上昇し融点に達すると、エリスリトール20の固相が融解し液相になる。一方、蓄熱材2に熱を与えた熱媒は、温度が低下し、熱媒流出配管5cから排出される。また、蓄熱時に、撹拌機6の撹拌翼60を回転させることで蓄熱材2を撹拌させることができる。蓄熱材2を撹拌させることで、蓄熱材2と熱媒の熱交換性能が向上する。ここで、蓄熱用熱交換器5を流れる熱媒を加熱する熱源機は、ヒートポンプ、ヒータ又は燃焼器であり、熱媒を加熱できるものであれば良い。また、熱媒を加熱するシステムは、熱媒流出配管5cから排出され熱源機を流れ、再び熱媒流入配管5bから蓄熱用熱交換器5内に流入する循環式のものでも、熱媒流出配管5cから外部へ排出され循環しない一過式のものでも良い。
【0027】
(蓄熱式給湯器100の放熱動作)
次に、蓄熱式給湯器100の放熱動作について説明する。蓄熱式給湯器100は、放熱用熱交換器4の給湯水流入配管4bから給湯水が流れると、蓄熱材2の熱がフィン4dを介して放熱用伝熱管4aに伝えられ、内部を流れる給湯水の温度が上昇する。同時に、蓄熱材2は、熱を奪われて温度が下がる。すると、放熱用伝熱管4aの周りの蓄熱材2の温度が融点に達し、放熱用伝熱管4aの周囲にエリスリトール20の固相が析出する。蓄熱材2から熱を与えられ温度が上昇した給湯水は、給湯水流出配管4cから排出される。また、放熱時に、撹拌機6の撹拌翼60を回転させることで蓄熱材2を撹拌させることができる。エリスリトール20の固相は、熱伝導率が金属等の物質に比べ低い。そのため、蓄熱式給湯器100では、撹拌機6を回転させて蓄熱材2を撹拌することで、蓄熱材2と熱媒の熱交換性能が向上させることができる。
【0028】
(撹拌翼60の配置位置)
次に、撹拌翼60の配置位置について説明する。蓄熱材2は、エリスリトール20と水21との混合液である。この蓄熱材2におけるエリスリトール20の濃度は、蓄熱材2の温度を用いて式(1)で求められる。
x=−0.00387T
2+1.34T−5.94 (1)
xは、蓄熱材2におけるエリスリトール濃度[wt%]である。Tは、蓄熱材2の温度[℃]である。つまり、放熱時の蓄熱材2の温度に応じて蓄熱材2から析出するエリスリトール20の固相量と、蓄熱材2との液相量は、一意に定まる。なお、放熱時の蓄熱材2の温度に応じて蓄熱材2から析出するエリスリトール20の固相量は、式(1)から求めることができる。具体的には、容器の大きさ(幅W[mm]×奥行きB[mm]×高さH[mm])とし、固相量をV[mm3]とすると、容器1の底面積(幅W[mm]×奥行きB[mm])から固相が析出する高さH’は、H’=V/(B×W)となる。
【0029】
一方、撹拌機6の撹拌翼60は、蓄熱材2の水溶液部Aに配置した方が良い。撹拌翼60がエリスリトール20の固相によって動力低下を起こすことなく蓄熱材2を撹拌することができるので、安定した熱交換が可能となり、給湯性能が向上するからである。
【0030】
したがって、蓄熱式給湯器100は、式(1)と、放熱時の蓄熱材2の温度を基に計算されるエリスリトール20の固相量と、に基づき、放熱時に固相部Bと水溶液部Aとが分離された状態における水溶液部Aが位置する部分である高さH’以上H以下の高さの間に、撹拌機6の撹拌翼60を配置することで、安定した熱交換が可能となる。
【0031】
(撹拌機6を備える効果)
次に、蓄熱材2を撹拌する撹拌機6の効果について説明する。蓄熱材2は、エリスリトール20と水21の混合液であり、エリスリトール20が水21に溶解する点に特徴を有する。例えばパラフィン、エリスリトール単体、又は酢酸ナトリウム三水和物等の一般的な蓄熱材2を、熱交換器等を用いて冷却した場合、伝熱面から蓄熱材2の温度が低下し、伝熱面に蓄熱材2の固相が析出する。一方、本実施の形態1の蓄熱材2を冷却した場合、水21からエリスリトール20が析出して凝固する。そして、撹拌機6で蓄熱材2を流動させつつ冷却した場合、蓄熱材2の温度は均一になるため伝熱面から離れたところにある水21からもエリスリトール20の凝固が生じる。伝熱面以外で凝固したエリスリトール20の固相は、蓄熱材2の密度よりも大きいため、容器1の下部に堆積する。即ち、本実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100では、撹拌機6で蓄熱材2を撹拌させることで、熱交換器3の表面に析出するエリスリトール20の固相量を低下させることができるので、熱交換器3の熱交換性能の低下を抑制できる。つまり、蓄熱式給湯器100は、撹拌機6を備えることで、放熱用熱交換器4、蓄熱用熱交換器5を小型化しても熱交換性能を十分に発揮させることができるので、熱交換器3を小型化して装置全体を小型化することができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100は、容器1と、容器1の内部に充填された蓄熱材2と、容器1の内部に収容され、第1の熱媒と熱交換して蓄熱材2に蓄熱すると共に、第2の熱媒と熱交換して蓄熱材2から放熱させる熱交換器3と、を備えている。蓄熱材2は、エリスリトール20と水21とを有している。水21に対するエリスリトール20の混合比率は、重量比60[wt%]以上80[wt%]以下である。つまり、本実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100は、エリスリトール20が水21に溶解することにより、エリスリトール20が相変化する温度(融点)を、給湯用途の40℃〜90℃の範囲で使用する場合に適する60℃〜90℃に低下させることができる。これにより、エリスリトール20の潜熱を十分に放出させることができ、蓄熱材2の蓄熱量を向上させることができる。よって、蓄熱式給湯器100は、エリスリトール20を主成分とした蓄熱材2を使用した場合であっても、蓄熱材2の蓄熱量を向上させることができるため、容器1に充填する蓄熱材2の量を削減することで、全体として小型化を実現することができる。
【0033】
また、本実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100は、蓄熱材2を撹拌する撹拌機6を更に備えている。蓄熱式給湯器100は、撹拌機6で蓄熱材2を撹拌させることで、熱交換器3の表面に析出するエリスリトール20の固相量を低下させることができるので、熱交換器3の熱交換性能の低下を抑制できる。よって、蓄熱式給湯器100は、撹拌機6を備えることで、熱交換器3を小型化しても熱交換性能を十分に発揮させることができるので、熱交換器3を小型化して装置全体を小型化することができる。
【0034】
また、蓄熱材2は、放熱時において、エリスリトール20が析出された固相部Bと、エリスリトール20の固相が析出していない水溶液部Aとに分離される性質を有している。撹拌機6は、放熱時に固相部Bと水溶液部Aとが分離された状態における水溶液部Aが位置する部分に、撹拌翼60が配置されている。よって、蓄熱式給湯器100は、撹拌翼60がエリスリトール20の固相によって動力低下を起こすことなく蓄熱材2を撹拌できるので、安定した熱交換が可能となり、給湯性能を向上させることができる。
【0035】
図4は、実施の形態1に係る蓄熱式給湯器の変形例を示した模式図である。蓄熱式給湯器100は、
図4に示すように、熱交換器3を蓄熱材2の蓄熱と放熱とを兼ねた1つの熱交換器で構成してもよい。つまり、
図1において蓄熱用熱交換器5が蓄熱材2に蓄熱する構成であれば良いので、蓄熱用熱交換器5に流れる熱媒として給湯水を使用することもできる。よって、蓄熱用熱交換器5を用いず、放熱用熱交換器4を蓄熱用熱交換器5としても使用することも可能である。すなわち、
図4においては、放熱用熱交換器4を蓄熱用熱交換器5と兼用するものであり、蓄熱材2の蓄熱が放熱用熱交換器4に高温水を流して行われる。
【0036】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101を
図5に基づいて説明する。
図5は、実施の形態2に係る蓄熱式給湯器であって、蓄熱材の放熱時における状態の内部構成を示した模式図である。なお、本実施の形態2では、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0037】
本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101は、実施の形態1に係る蓄熱式給湯器100の撹拌機6に代えて、蓄熱材2を流動させるポンプ7を備えている点に特徴を有する。
【0038】
(蓄熱式給湯器101の構成)
まず、蓄熱式給湯器101の構成について説明する。本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101は、
図5に示すように、容器1と、容器1の内部に充填された蓄熱材2と、容器1の内部に収容された放熱用熱交換器4及び蓄熱用熱交換器5と、容器1の内部の蓄熱材2を流動させるポンプ7と、を備えている。
【0039】
容器1には、実施の形態1で説明した構成に加えて、ポンプ7が接続され、蓄熱材2を容器1の外部へ排出させる吸引用配管口10と、ポンプ7が接続され、排出した蓄熱材2を容器1の内部へ再び流入させる吐出用配管口11と、が形成されている。
【0040】
ポンプ7は、例えば遠心型ポンプ、定容積ポンプ又はプランジャ式ポンプなどの流体を吸引し吐出する装置である。ポンプ7の材質は、例えばアルミニウム若しくはSUS等の強度材料、又はプラスチックなどの軽量材料である。ポンプ7は、吸引口が容器1の吸引用配管口10と接続され、吐出口が容器1の吐出用配管口11と接続されている。
【0041】
なお、本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101では、容器1の吸引用配管口10からポンプ7までの回路上に蓄熱材2に熱を与える熱源機、及び蓄熱材2から放熱する放熱器を有さない場合を示している。但し、蓄熱式給湯器101は、ポンプ7を用いて容器1内の蓄熱材2を循環する構成であれば回路上にその他の機器が配置されても良い。
【0042】
(蓄熱式給湯器101の蓄熱動作)
次に、蓄熱式給湯器101の蓄熱動作について説明する。本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101は、実施の形態1と同様に、蓄熱用熱交換器5の熱媒流入配管5bから高温の熱媒が流れると、蓄熱用伝熱管5aからフィンを介して蓄熱材2に熱が伝えられる。蓄熱式給湯器101は、低温の蓄熱材2が温められ温度が上昇し融点に達すると、エリスリトール20の固相が融解し液相になる。一方、蓄熱材2に熱を与えた熱媒は、温度が低下し、熱媒流出配管5cから排出される。また、蓄熱時に、ポンプ7を駆動させて、蓄熱材2を容器1の外部へ排出し、排出した蓄熱材2を再び容器1の内部へ流入させることにより、蓄熱材2を流動させることができる。蓄熱材2を流動させることで、蓄熱材2と熱媒の熱交換性能が向上する。ここで、蓄熱用熱交換器5を流れる熱媒を加熱する熱源機は、ヒートポンプ、ヒータ又は燃焼器であり、熱媒を加熱できるものであれば良い。また、熱媒を加熱するシステムは、熱媒流出配管5cから排出され熱源機を流れ、再び熱媒流入配管5bから蓄熱用熱交換器5内に流入する循環式のものでも、熱媒流出配管5cから外部へ排出され循環しない一過式のものでも良い。
【0043】
(蓄熱式給湯器101の放熱動作)
次に、蓄熱式給湯器101の放熱動作について説明する。本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101は、実施の形態1と同様に、放熱用熱交換器4の給湯水流入配管4bから給湯水が流れると、蓄熱材2の熱がフィン4dを介して、放熱用伝熱管4aに伝えられ内部を流れる給湯水の温度が上昇する。同時に、蓄熱材2は、熱を奪われ温度が下がる。すると、放熱用伝熱管4aの周りの蓄熱材2の温度が融点に達し、放熱用伝熱管4aの周囲にエリスリトール20の固相が析出する。蓄熱材2から熱を与えられ温度が上昇した給湯水は、給湯水流出配管4cから排出される。また、放熱時に、ポンプ7を駆動させて、蓄熱材2を容器1の外部へ排出し、排出した蓄熱材2を再び容器1の内部へ流入させることにより、蓄熱材2を流動させることができる。エリスリトール20の固相は、熱伝導率が金属等の物質に比べ低い。そのため、蓄熱式給湯器101では、ポンプ7で蓄熱材2を流動させることで、蓄熱材2と熱媒の熱交換性能が向上させることができる。
【0044】
(吸引用配管口10及び吐出用配管口11の配置位置)
次に、容器1の吸引用配管口10及び吐出用配管口11の配置位置について説明する。本実施の形態2の蓄熱式給湯器101における蓄熱材2も、実施の形態1と同様に、エリスリトール20と水21の混合液である。この蓄熱材2におけるエリスリトール20の濃度は、蓄熱材2の温度を用いて式(1)で求められる。
x=−0.00387T
2+1.34T−5.94 (1)
xは、蓄熱材2におけるエリスリトール濃度[wt%]である。Tは、蓄熱材2の温度[℃]である。つまり、放熱時の蓄熱材2の温度に応じて蓄熱材2から析出するエリスリトール20の固相量と、蓄熱材2との液相量は、一意に定まる。一方、容器1の吸引用配管口10及び吐出用配管口11は、蓄熱材2の水溶液部Aに配置した方が良い。吸引用配管口10及び吐出用配管口11を固相部Bに配置してしまうと、エリスリトール20の固相が配管内に析出し、該固相によって配管内が塞がれてしまうためである。したがって、蓄熱式給湯器101は、上記式(1)と、放熱時の蓄熱材2の温度を元に計算されるエリスリトール20の固相量に基づき、放熱時に固相部Bと水溶液部Aとが分離された状態における水溶液部Aが位置する部分に、吸引用配管口10及び吐出用配管口11を配置することで、安定した熱交換が可能となり、給湯性能が向上する。
【0045】
以上のように、本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101も、エリスリトール20が水21に溶解することにより、エリスリトール20が相変化する温度(融点)を、給湯用途の40℃〜90℃の範囲で使用する場合に適する60℃〜90℃に低下させることができる。これにより、エリスリトール20の潜熱を十分に放出させることができ、蓄熱材2の蓄熱量を向上させることができる。よって、蓄熱式給湯器101は、エリスリトール20を主成分とした蓄熱材2を使用した場合であっても、蓄熱材2の蓄熱量を向上させることができるため、容器1に充填する蓄熱材2の量を削減することで、全体として小型化を実現することができる。
【0046】
また、本実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101は、蓄熱材2を容器1の外部へ排出し、排出した蓄熱材2を再び容器1の内部へ流入させることにより、蓄熱材2を流動させるポンプ7を更に備えている。容器1には、ポンプ7が接続され、蓄熱材2を容器1の外部へ排出させる吸引用配管口10と、ポンプ7が接続され、排出した蓄熱材2を容器1の内部へ再び流入させる吐出用配管口11と、が形成されている。よって、蓄熱式給湯器101は、ポンプ7を駆動させて蓄熱材2を流動させることで、熱交換器3の表面に析出するエリスリトール20の固相量を低下させることができるので、熱交換器3の熱交換性能の低下を抑制できる。よって、蓄熱式給湯器101は、ポンプ7を備えることで、熱交換器3を小型化しても熱交換性能を十分に発揮させることができるので、熱交換器3を小型化して装置全体として小型化することができる。
【0047】
蓄熱材2は、放熱時において、エリスリトール20が析出された固相部Bと、エリスリトール20の固相が析出していない水溶液部Aとに分離される性質を有している。容器1には、放熱時に固相部Bと水溶液部Aとが分離された状態における水溶液部Aが位置する部分に、吸引用配管口10及び吐出用配管口11が形成されている。よって、蓄熱式給湯器101は、吸引用配管口10及び吐出用配管口11の配管内に析出するエリスリトール20の固相で、該配管内が塞がれる事態を防止することができるので、蓄熱材2を流動させて安定した熱交換が可能となり、給湯性能を向上させることができる。
【0048】
なお、実施の形態2に係る蓄熱式給湯器101においても、熱交換器3を蓄熱材2の蓄熱と放熱とを兼ねた1つの熱交換器で構成してもよい。つまり、蓄熱用熱交換器5に流れる熱媒として給湯水を使用することもできるので、蓄熱用熱交換器5を用いず、放熱用熱交換器4を蓄熱用熱交換器5として使用することも可能である。
【0049】
以上に、蓄熱式給湯器100及び101を実施の形態に基づいて説明したが、蓄熱式給湯器100及び101は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、蓄熱式給湯器100及び101は、上述した構成要素に限定されるものではなく、他の構成要素を含んでもよい。要するに、蓄熱式給湯器100及び101は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
蓄熱式給湯器は、容器と、容器の内部に充填された蓄熱材と、容器の内部に収容され、第1の熱媒と熱交換して蓄熱材に蓄熱すると共に、第2の熱媒と熱交換して蓄熱材から放熱させる熱交換器と、を備えている。蓄熱材は、エリスリトールと水とを有している。水に対するエリスリトールの混合比率は、重量比60[wt%]以上80[wt%]以下である。