(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検査物の内部に渦電流を発生させるコイルと、当該コイルを挟んで前記被検査物の反対側に配備されると共に前記被検査物を貫通する向きに静磁場を形成する主磁石とを備え、前記被検査物の内部に渦電流と静磁場との相互作用で超音波を発生させる電磁超音波センサであって、
前記主磁石の側方には、当該主磁石の磁束密度を高める補助磁石が設けられており、
前記補助磁石は、前記主磁石のN極とS極とを結ぶ磁気ポールの向きと直交する向きに当該補助磁石の磁気ポールを向けて配備されており、
前記コイルは、前記被検査物の表面に沿って一方向に電流が流れる第1の導線群と、前記第1の導線群とは電流の向きが反対の第2の導線群とを有しており、前記主磁石は、前記第1の導線群に対応した第1の主磁石と、前記第2の導線群に対応した第2の主磁石とを有しており、
前記補助磁石は、前記第1の主磁石と第2の主磁石との間に中央補助磁石を有しており、前記中央補助磁石は、前記第1の主磁石または第2の主磁石よりも狭幅に形成されており、
前記中央補助磁石に、前記第1の主磁石及び第2の主磁石よりも保磁力が高い磁石が用いられており、
前記補助磁石は、前記第1の主磁石及び第2の主磁石の両方の主磁石の外側方に側部補助磁石を有している
ことを特徴とする電磁超音波センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の電磁超音波センサでは、受信感度を高くできるものの、磁石形状を複雑にすることは加工の面からはあまり実用的ではない。このような複雑な形状の磁石を用いると、磁石の加工に手間がかかり、電磁超音波センサの価格も高くなってしまうため、好ましいものではない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、より簡便な機構で被検査物の内部での磁束密度を高めることができ、検出感度を向上させることができる電磁超音波センサを提供することを目的とする。
【0007】
言い換えれば、本発明は、磁石の配列を工夫することで、磁束密度を向上させることができ、送受信の信号強度を向上させることができる電磁超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電磁超音波センサは以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の電磁超音波センサは、被検査物の内部に渦電流を発生させるコイルと、当該コイルを挟んで前記被検査物の反対側に配備されると共に前記被検査物を貫通する向きに静磁場を形成する主磁石とを備え、前記被検査物の内部に渦電流と静磁場との相互作用で超音波を発生させる電磁超音波センサであって、前記主磁石の側方には、当該主磁石の磁束密度を高める補助磁石が設けられており、前記補助磁石は、前記主磁石のN極とS極とを結ぶ磁気ポールの向きと直交する向きに当該補助磁石の磁気ポールを向けて配備されていることを特徴とする。
【0009】
なお、好ましくは、前記コイルには、前記被検査物の表面に沿って一方向に電流が流れ
る第1の導線群と、前記第1の導線群とは電流の向きが反対の第2の導線群とを有しており、前記主磁石は、前記第1の導線群に対応した第1の主磁石と、前記第2の導線群に対応した第2の主磁石とを有しているとよい。
【0010】
なお、好ましくは、前記補助磁石は、前記第1の主磁石と第2の主磁石との間に中央補助磁石を有しており、前記中央補助磁石は、前記第1の主磁石または第2の主磁石よりも狭幅に形成されているとよい。
なお、好ましくは、前記中央補助磁石に、前記第1の主磁石及び第2の主磁石よりも保磁力が高い磁石が用いられているとよい。
【0011】
なお、好ましくは、前記補助磁石は、前記第1の主磁石または第2の主磁石の外側方に
側部補助磁石を有しているとよい。
なお、好ましくは、前記主磁石と補助磁石と結ぶヨークが設けられているとよい。
また、本発明に係る電磁超音波センサの最も好ましい形態は、被検査物の内部に渦電流を発生させるコイルと、当該コイルを挟んで前記被検査物の反対側に配備されると共に前記被検査物を貫通する向きに静磁場を形成する主磁石とを備え、前記被検査物の内部に渦電流と静磁場との相互作用で超音波を発生させる電磁超音波センサであって、前記主磁石の側方には、当該主磁石の磁束密度を高める補助磁石が設けられており、前記補助磁石は、前記主磁石のN極とS極とを結ぶ磁気ポールの向きと直交する向きに当該補助磁石の磁気ポールを向けて配備されており、前記コイルは、前記被検査物の表面に沿って一方向に電流が流れる第1の導線群と、前記第1の導線群とは電流の向きが反対の第2の導線群とを有しており、前記主磁石は、前記第1の導線群に対応した第1の主磁石と、前記第2の導線群に対応した第2の主磁石とを有しており、前記補助磁石は、前記第1の主磁石と第2の主磁石との間に中央補助磁石を有しており、前記中央補助磁石は、前記第1の主磁石または第2の主磁石よりも狭幅に形成されており、前記中央補助磁石に、前記第1の主磁石及び第2の主磁石よりも保磁力が高い磁石が用いられており、前記補助磁石は、前記第1の主磁石
及び第2の主磁石の
両方の主磁石の外側方に側部補助磁石を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁超音波センサによれば、磁石の配列を工夫することで、磁束密度を向上させることができ、送受信の信号強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の電磁超音波センサの構造を示した図である。
【
図2】従来例の電磁超音波センサの構造を示した図である。
【
図3】
図1の電磁超音波センサをX−X線で切断した場合の断面図である。
【
図4】第1実施形態の電磁超音波センサの磁石に利用可能な磁石のBH曲線を示した図である。
【
図5A】補助磁石を備えた磁石配置から発生する磁力線を示した図である。
【
図5B】補助磁石を備えていない磁石配置から発生する磁力線を示した図である。
【
図6】電磁超音波センサにより被検査物の内部に形成される磁束密度を、従来例と第1実施形態とで比較した図である。
【
図7A】第1実施形態の電磁超音波センサを用いて、アルミの被検査物に対して超音波探傷した場合の受信時の信号強度を示した図である。
【
図7B】従来例の電磁超音波センサを用いて、アルミの被検査物に対して超音波探傷した場合の受信時の信号強度を示した図である。
【
図8】第2実施形態の電磁超音波センサの構造を示した図である。
【
図9】電磁超音波センサにより被検査物の内部に形成される磁束密度を、従来例、第1実施形態、及び第2実施形態で比較した図である。
【
図10A】第3実施形態の電磁超音波センサについて構造を示した図である。
【
図10B】第3実施形態の変形例の電磁超音波センサについて構造を示した図である。
【
図11】円形型コイルを用いた従来例の電磁超音波センサの構造を示した図である。
【
図12】従来例の縦波用の電磁超音波センサについて構造を示した図である。
【
図13A】磁石を3個用いた第4実施形態の電磁超音波センサの磁石配列を示した図である。
【
図13B】磁石を5個用いた第4実施形態の電磁超音波センサの磁石配列を示した図である。
【
図14】電磁超音波センサにより被検査物の内部に形成される磁束密度を、従来例と第4実施形態とで比較した図である。
【
図15】第5実施形態の電磁超音波センサについて構造を示した図である。
【
図16】電磁超音波センサにより被検査物の内部に形成される磁束密度を、磁石の個数で比較した図である。
【
図17】従来例の電磁超音波センサについて構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の電磁超音波センサ1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、第1実施形態の電磁超音波センサ1を模式的に示したものである。
図1に示すように、第1実施形態の電磁超音波センサ1は、金属などの被検査物Wの内部に存在する疵の検査及び被検査物Wの厚み測定を行う超音波探傷に使用される探触子に取り付けられるセンサである。つまり、この探触子は、電磁気的な作用で直接被検査物Wに超音波を伝達させる電磁超音波探傷の探触子(EMAT : Electro Magnetic Acoustic Transducer)となっている。
【0015】
具体的には、第1実施形態の電磁超音波センサ1は、被検査物Wの内部に渦電流を発生させるコイル2と、コイル2を挟んで被検査物Wの反対側に配備されると共に被検査物Wを貫通する向きに静磁場を形成する主磁石3と、を備えている。例えば、上述したコイル2にパルス電流を流すと、被検査物Wの内部に渦電流が発生する。一方、主磁石3により被検査物Wの内部には静磁場も発生している。それゆえ、発生した渦電流と静磁場とが相互的に作用し合うと、被検査物Wの内部にローレンツ力が生起する。このようにして生起されたローレンツ力により、被検査物Wの内部に超音波が発生する。
【0016】
上述したような主磁石やコイルは、
図2に示す従来例の電磁超音波センサ101にも設けられており、従来例の電磁超音波センサ101でも主磁石103による静磁場とコイル102による渦電流との相互作用で超音波を同様に発生させている。
ところで、上述した従来例の電磁超音波センサ101では、被検査物Wに対して接触せずに(非接触で)超音波を伝達させることができる反面、圧電素子を用いた超音波センサなどに比べて受信感度が二桁も低くなるという課題がある。つまり、従来例の電磁超音波センサ101において探傷などの感度を高めるためには、探触子から出力される信号強度あるいは探触子で受信される信号強度を高める必要があり、これらの信号強度の向上には被検査物Wの内部での磁束密度を高めることが必要となる。例えば、主磁石103に磁力の強い磁石を用いれば磁束密度を高めることは理論的には可能であるが、現実的には主磁石103の磁力をさらに強くすることは困難なことが多い。
【0017】
そこで、本実施形態の電磁超音波センサ1では、磁石配列を工夫して、より具体的には、主磁石3の側方に主磁石3の磁束密度を高める補助磁石4を設け、補助磁石4によって主磁石3の磁束密度を高めることで、被検査物Wの内部での磁束密度を高めている。
具体的には、本実施形態の電磁超音波センサ1の補助磁石4は、主磁石3のN極とS極とを結ぶ磁気ポールの向きと直交する向きに、自らの磁気ポール(補助磁石4の磁気ポール)を向けるようにして配備されている。このように補助磁石4を主磁石3の側方に配備すれば主磁石3から被検査物Wの内部に放射される磁力線が歪められ、被検査物Wの内部における磁束密度を高めることが可能となる。
【0018】
なお、本発明の電磁超音波センサ1においては、用いる磁石の個数や配列の仕方によって、さまざまな実施形態が考えられる。
以降の第1実施形態では、主磁石3及び補助磁石4に合わせて5個の磁石を用いた横波用の電磁超音波センサ1を例に挙げて、第1実施形態の電磁超音波センサ1を構成する主磁石3、コイル2、補助磁石4について、詳しく説明する。
【0019】
図3に示すように、第1実施形態の電磁超音波センサ1に設けられるコイル2は、平坦面の上を複数回に亘って周回するように導線5を巻き回して形成された平板状コイル(レーストラック型のコイル)となっている。このコイル2は、上方から見た場合に導線5が長円形や長方形の軌道を描くように内から外に向かって、あるいは外から内に向かって巻き回されて形成されている。つまり、導線5の巻回中心、つまりコイル2の中心を通って上下方向に伸びる切断面でコイル2を切断すると、巻回中心よりも左側のコイル2には第1導線群6を構成する複数の導線5が配備され、コイル2の右側には第2導線群7を構成する複数の導線5が配備される。
【0020】
これらの第1導線群6及び第2導線群7は、いずれの導線群も、ほぼ等間隔をあけて互いに平行に配備された複数の導線5で構成されている。第1導線群6に属する複数の導線5では電流の向きはすべて同じとなっており、また第2導線群7に属する複数の導線5でも電流の向きはすべて同じとなっているが、第1導線群6での電流の向きと第2導線群7での電流の向きとは互いに反対向きとなる。コイル2の第1導線群6の上には、この第1導線群6に対応して上述した第1の主磁石8が配備されており、また第2導線群7の上には、この第2導線群7に対応して第2の主磁石9が配備されている。
【0021】
第1実施形態の電磁超音波センサ1では、上述した横波用の電磁超音波センサ1の場合、コイル2の直下に縦方向の磁束が必要となるので第1導線群6及び第2導線群7に対応して、各導線5群の上方に主磁石3がそれぞれ配備されることになる。つまり、第1実施形態の電磁超音波センサ1の場合では、「渦電流を発生させるコイル2に対応した位置に主磁石3を配備する」とは、渦電流を発生させるコイル2の導線群の上方に、主磁石3を配備することに他ならない。
【0022】
上述したように、第1実施形態の電磁超音波センサ1のコイル2は、被検査物Wの表面に沿って一方向に電流が流れる第1導線群6と、第1導線群6とは電流の向きが反対の第2導線群7とを有している。この第1導線群6に対応して第1の主磁石8が配備されており、第2導線群7に対応して第2の主磁石9が配備されていて、第1実施形態の主磁石3はこれら第1の主磁石8と第2の主磁石9との2つの磁石で構成されている。
【0023】
上述した第1の主磁石8及び第2の主磁石9は、磁石内においてN極とS極とを結ぶベクトル(以下、本実施形態では、「磁気ポール」と呼ぶ)を、被検査物Wを貫通する方向に向けて配備されている。本実施形態の場合であれば、第1の主磁石8は下方にN極を向けて配備されており、第2の主磁石9は下方にS極を向けて配備されている。すなわち、第1の主磁石8及び第2の主磁石9の磁気ポールは上下方向を向くこととなる。
【0024】
また、これら第1の主磁石8及び第2の主磁石9における左右方向に沿った幅は、上述した第1導線群6の左右方向に沿った幅、及び第2導線群7の左右方向に沿った幅とほぼ等しくされている。
さらに、第1の主磁石8及び第2の主磁石9には、電磁超音波センサ1(EMATセンサ)として磁束密度を大きくすることが求められるので、
図4の実線で示すような保磁力の大きな磁石ではなく、
図4の点線で示すような磁束密度の大きい材質の磁石が好適に用いられる。
【0025】
第1実施形態の補助磁石4は、第1の主磁石8と第2の主磁石9との間に設けられる1個の中央補助磁石10と、第1の主磁石8または第2の主磁石9の外側方にそれぞれ1個ずつ設けられる合計で2個の側部補助磁石11とで構成されている。
これらの補助磁石4は、主磁石3の側方に設けられて、主磁石3の磁束密度を高める作用を備えており、いずれも主磁石3の磁気ポールの向きと直交する向きに自らの磁気ポール(補助磁石4自身の磁気ポール)を向けるようにして配備されている。
【0026】
具体的には、上述した補助磁石4のうち、中央補助磁石10は、第1の主磁石8と第2の主磁石9との間に配備された磁石である。この中央補助磁石10の磁気ポールの向きは、水平方向を向いており、主磁石3の磁気ポールの向き(上下方向)とは直交している。具体的には、第1実施形態の中央補助磁石10は、N極を第1の左側(主磁石3側)に向けて取り付けられており、またS極を右側(第2の主磁石9側)に向けて取り付けられている。
【0027】
また、上述した中央補助磁石10における左右方向の幅寸法は、第1の主磁石8または第2の主磁石9よりも狭幅なものとなっている。加えて、中央補助磁石10には、第1の主磁石8及び第2の主磁石9よりも保磁力が高い磁石が用いられている。
中央補助磁石10に主磁石3よりも左右方向に狭幅で保磁力が高い磁石を用いるのは、主磁石3の減磁ではなく、中央補助磁石10自体の減磁の影響を小さくするためである。つまり、着磁方向の厚みが大きい磁石(主磁石3のような磁石)ではあまり外部磁場による減磁を考慮しなくてもよい。しかし、着磁方向の厚みが薄い磁石(本実施形態の中央補助磁石10のような磁石)では外部磁場による減磁の影響が顕著に出やすくなる。
【0028】
より詳しくは、電磁超音波センサ1としては、被検査物Wの内部で磁束密度が大きいことが求められるので、上述したように主磁石3には残留磁束密度の大きい材質の磁石が採用される。一方、中央補助磁石10にも残留磁束密度の大きい材質を使いたいが磁束密度と保磁力はトレードオフの関係にあり、残留磁束密度の大きい磁石は、保磁力が小さくなる。特に中央補助磁石10のように磁気ポールの方向の形状が小さい(着磁方向の厚みが薄い)場合には、外部磁界による不可逆減磁が発生しやすくなる。このような外部磁界による減磁が起こると、電磁超音波センサ1としての感度(受信感度)も低下することになる。
【0029】
そこで、中央補助磁石10に残留磁束密度が大きい磁石でなく、保磁力が大きな磁石を採用すると、減磁の影響を小さくすることができ、電磁超音波センサ1としての感度(受信感度)を向上させることが可能となる。つまり、第1実施形態の電磁超音波センサ1は、中央補助磁石10に、残留磁束密度を多少犠牲にしてでも保磁力が大きな磁石や狭幅の磁石を用いることで、センサ全体として見た場合に減磁の影響を小さくして、被検査物Wの内部での磁束密度を向上させ、受信感度を向上させたものとなっている。
【0030】
具体的には、中央補助磁石10の磁石の材質を選定する際には、ある磁石の材質に注目すると、B-HカーブとJ-Hカーブが固有に決まり、磁石の形状が決まると寸法比から磁石の動作点が決まる。さらに、外部磁界の大きさから減磁が可逆か不可逆かどうかと減磁量が決まるため、中央補助磁石10の磁石の材質を選定することは十分に可能である。つまり、磁束密度の大きいものは保持力が小さいというトレードオフの関係にあるため、磁石の形状と外部磁界の大きさから、できるだけ残留磁束密度が高く可逆で減磁量の小さくなる保持力の材質を選定することが重要となる。
【0031】
また、上述した補助磁石4のうち、側部補助磁石11は、第1の主磁石8のさらに外側方、つまり第1の主磁石8の左側に配備された左側側部補助磁石11Lと、第2の主磁石9のさらに外側方、つまり第2の主磁石9の右側に配備された右側側部補助磁石11Rとで構成されている。
また、左側側部補助磁石11Lは、この左側側部補助磁石11LのN極が中央補助磁石10のN極と対面し合うように(N極を右側に向けて)、配備されている。さらに、右側側部補助磁石11Rは、この右側側部補助磁石11RのS極が中央補助磁石10のS極と対面し合うように(S極を左側に向けて)、配備されている。
【0032】
なお、第1実施形態では、側部補助磁石11として1個の左側側部補助磁石11Lと1個の右側側部補助磁石11Rとが用いられた例を挙げたが、左側側部補助磁石11Lや右側側部補助磁石11Rの設置個数は2個以上であっても良い。例えば、左側側部補助磁石11Lに2個の磁石を用いる場合は、第1実施形態の左側側部補助磁石11Lの左側に、第1の主磁石8とは磁気ポールの向きが反対の(180°異なる)磁石を用いればよいし、右側側部補助磁石11Rに2個の磁石を用いる場合は、第1実施形態の右側側部補助磁石11Rの右側に、第2の主磁石9とは磁気ポールの向きが反対の(180°異なる)磁石を用いればよい。
【0033】
また、第1実施形態の電磁超音波センサ1は、上述した主磁石3と補助磁石4とを結ぶヨーク12を備えている。このヨーク12は、本実施形態の場合、左側側部補助磁石11の上部から、第1の主磁石8、中央補助磁石10、第2の主磁石9の上部を通って、右側側部補助磁石11の上部に達する範囲に設けられており、5つの磁石の全てに跨るように配備されている。
【0034】
例えば、
図5Aに示すように補助磁石を備えた電磁超音波センサでも
図5Bに示すように補助磁石を備えていない電磁超音波センサでも、主磁石から被検査物W側に伸びる磁力線が、コイルにより発生する渦電流と相互的に作用して超音波を発生させるため、主磁石から被検査物W側に伸びる磁力線の密度が高いほど、言い換えれば磁束密度が大きいほど、センサとしての感度は高くなる。
【0035】
この点、
図5Aに示すように補助磁石を備えた磁石配置において被検査物W側で確認される磁力線の密度は、
図5Bに示す補助磁石を備えていない磁石配置において被検査物W側で確認される磁力線よりも明らかに高密度である。
実際に、
図6に示すように第1実施形態と従来例の電磁超音波センサ101の磁束密度をシミュレーションで計算すると、第1実施形態の電磁超音波センサ(点線)では、従来例の電磁超音波センサ(実線)に比べて、超音波の駆動に必要となる縦方向(上下方向)の磁束密度が大きくなっていることがわかる。
【0036】
ただ、補助磁石4を採用して磁束密度を高くすることができても、補助磁石4による外部磁場が主磁石3に作用すると、主磁石3が減磁されてしまい、磁束密度を十分に向上できなくなる可能性がある。
そこで、上述した第1実施形態では、補助磁石4の寸法形状や保磁力(残留磁束密度)を好ましくは規定して、センサ全体として見た場合に減磁の影響を小さくして、被検査物Wの内部での磁束密度を大きく向上させるようにしている。
【0037】
このように寸法形状や保磁力を最適化した補助磁石4を採用すれば、
図7に示すように第1実施形態の電磁超音波センサ1の感度を実際に高めることができる。
つまり、
図7A及び
図7Bの結果は、厚みが100mmのアルミ板を対象に、受信側に従来例の磁石配列の電磁超音波センサ101を用い、送信側に第1実施形態及び従来例の磁石配列の電磁超音波センサ1、101を用いて、受信信号を計測したものとなっている。
図7Aに示す第1実施形態の磁束密度の結果は、
図7Bに示す従来例の受信信号よりも1.5倍程度まで信号強度が高くなっており、第1実施形態の電磁超音波センサ1が従来例のものより感度が高いことがわかる。また、
図7Aは受信のみの結果であるが、送受信両方を合わせると1.5倍の2乗である2.25倍程度までは送受信の効率を向上させることが可能である。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の電磁超音波センサ1について説明する。
【0038】
図8に示すように、第2実施形態の電磁超音波センサ1は、第1実施形態の電磁超音波センサ1に設けられる補助磁石4のうち、側部補助磁石11を取り除き、1個の中央補助磁石10のみを用いたものとなっている。つまり、第2実施形態の電磁超音波センサ1は、主磁石3及び補助磁石4を合わせて、3個の磁石を配列させて構成されたものとなっている。
【0039】
図9に示すように、第2実施形態の電磁超音波センサ1の場合でも、第1実施形態の電磁超音波センサ1(5個の磁石配列の場合)より生成される磁束密度は低くなるものの、被検査物W側で確認される磁束密度(縦方向の磁束密度)は高くなっており、磁束密度の向上の効果があることが分かる。
なお、上述した第2実施形態は、中央補助磁石10を残したまま、第1実施形態から側部補助磁石11の個数を減らした例であったが、中央補助磁石10を残したまま、第1実施形態から側部補助磁石11の個数を増やすことも考えられる。ただ、側部補助磁石11の個数を2個以上に増やしても、磁束密度向上の効果は第1実施形態の場合と比べてあまり変化はなく、磁束密度向上の効果は磁石数が5個の状態で飽和状態となり、それ以上磁石数を増加させても磁束密度は高くならない。そのため、本明細書では側部補助磁石11を2個以上設けた例についての説明を省略するが、本発明には2個以上の側部補助磁石11を設けた磁石配列も当然ながら含まれる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態の電磁超音波センサ1について説明する。
【0040】
図10A及び
図10Bに示すように、第3実施形態の電磁超音波センサ1は、第1実施形態及び第2実施形態と同様な電磁超音波センサ1であるが、これらの実施形態とは主磁石3や補助磁石4の形状が異なっている。
つまり、
図10A及び
図10Bに示すように、第3実施形態の電磁超音波センサ1に設けられるコイル2は円形の板状とされており、導線5を渦巻き状態で巻き回したものとなっている。また、第3実施形態の電磁超音波センサ1に設けられる主磁石3(中心主磁石3)は、上下方向に軸心を向けた円柱形状に形成されており、補助磁石4はこの中心主磁石3の周囲に配備された同軸の円筒形状となっている。さらに、
図10Aは、1個の円柱状の中心主磁石3の周囲に1個の円筒状の補助磁石4を同軸状に配備した場合(磁石2個の場合)であるが、
図10Bに示すように1個の円筒状の補助磁石4の周囲にさらに径の大きな円筒状の側部補助磁石11を同軸状に配備したような電磁超音波センサ1(磁石3個の電磁超音波センサ1)を用いても、
図11に示す従来例(1個の円形型コイル102と1個の円柱形状の磁石103を利用した電磁超音波センサ101)に比べれば被検査物Wに対する磁束密度を向上させることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態の電磁超音波センサ1について説明する。
【0041】
第4実施形態の電磁超音波センサ1は、被検査物Wに対して横波の超音波を発生させる第1実施形態〜第3実施形態に比して、被検査物Wに対して縦波の超音波を発生させる構成となっている。このような縦波の超音波を発生させる電磁超音波センサ1では、横波を発生させるものとは異なり、コイル2の直下に位置する被検査物Wの内部に横方向(水平方向)に沿って磁場を形成することが必要となる。
【0042】
例えば、
図12は従来例の縦波用の電磁超音波センサ101を例示したものである。この
図12に示すように、縦波用の電磁超音波センサ101では、被検査物Wの表面に沿うように水平方向に沿って配備された平板状のコイル102と、このコイル102を取り囲むと共にこのコイル102よりも上方に離れて設けられた主磁石103とを備えている。つまり、縦波用の電磁超音波センサ101に設けられる主磁石103は、水平方向に距離をあけて配備された第1の主磁石108及び第2の主磁石109を有しており、これら2つの主磁石108、109の間に形成された空間(空隙)の下方に上述したコイル102が配備されている。
【0043】
このようなコイル102と主磁石108、109とを備えた従来の縦波用の電磁超音波センサ101に比して、第4実施形態の縦波用の電磁超音波センサ101は、
図13A及び
図13Bに示すような構成となっている。
つまり、
図13Aに示す第4実施形態の電磁超音波センサ1は、第1の主磁石8と第2の主磁石9との間に、補助磁石4として中央補助磁石10が配備されたもの、言い換えれば3個の磁石を備えた構成となっている。また、
図13Bに示す第4実施形態の変形例の電磁超音波センサ1は、第1の主磁石8と第2の主磁石9との間に、補助磁石4として中央補助磁石10を備えるのみでなく、第1の主磁石8及び第2の主磁石9の外側方に側部補助磁石11が配備されたもの、言い換えれば5個の磁石を備えた構成となっている。
【0044】
このような第4実施形態の電磁超音波センサ1でも、
図14に示すように、被検査物W側で形成される磁束密度は、従来例(
図12の電磁超音波センサ101)を用いた場合より飛躍的に向上しており、電磁超音波センサ1の送受信効率を高めることができると判断される。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態の電磁超音波センサ1について説明する。
【0045】
図15に示すように、第5実施形態の電磁超音波センサ1は、第1実施形態の電磁超音波センサ1に比して、補助磁石4のうち、側部補助磁石11を残して、中央補助磁石10のみを取り除いたものとなっている。すなわち、第5実施形態の電磁超音波センサ1は、中央補助磁石10を用いず、側部補助磁石11のみを補助磁石4として用いたもの(主磁石3及び側部補助磁石11を合わせて4個の磁石を用いたもの)となっている。
【0046】
このような第5実施形態の電磁超音波センサ1を用いた場合にも、
図16に示すように、被検査物W側で形成される磁束密度(図中のグレーの実線の場合)は、従来例を用いた場合(図中の実線の場合)より大きく向上しており、電磁超音波センサ1の送受信効率を高められることがわかる。
また、
図16の結果から、主磁石3、補助磁石4を合わした磁石の個数(電磁超音波センサ1に使用される磁石の個数)が多い方が、言い換えれば磁石3個の場合よりも5個の場合の方が電磁超音波センサ1の送受信効率を高めることができることがわかる。
【0047】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。