特許第6818979号(P6818979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6818979製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6818979
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/28 20060101AFI20210114BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20210114BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C21C5/28 Z
   C21C7/00 Z
   G05B19/418 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-88404(P2017-88404)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-184653(P2018-184653A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 敏治
(72)【発明者】
【氏名】妻鳥 陽子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540832(JP,A)
【文献】 特開2016−172907(JP,A)
【文献】 特開2014−176881(JP,A)
【文献】 特開昭62−096611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/00−7/10,
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉と、二次精錬設備と、連続鋳造機と溶鋼鍋を搬送する搬送設備と、溶鋼鍋内の滓を排滓する排滓場とを有する製鋼工程を操業するに際し、前記排滓場での排滓ポットの交換を実施可能なタイミングを算出する製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法であって、
基本となる型組を用意すると共に、鋼種毎における各処理に要する所要時間を定めておき、
前記型組及び処理時間を基に、ガントチャートを作成し、
作成したガントチャートにおいて、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在するか否かを判断し、
前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在する場合には、当該期間を排滓ポットの交換タイミングとする
ことを特徴とする製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法。
【請求項2】
前記搬送設備の非稼働時間を求めるに際しては、以下に示す工程(1)〜工程(6)を行うことを特徴とする請求項1に記載の製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法。
(1) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、各設備での処理時間を求める。
(2) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、溶鋼鍋の動きを求める。
(3) 得られた各設備での処理時間及び溶鋼鍋の動きを基に、ガントチャートを作成する。
(4) 作成したガントチャートから、搬送設備の非稼動時間を算出する。
(5) 前記ガントチャート上において、搬送設備の非稼動時間が排滓ポットの交換に必要とされる時間より大きくなる期間を抽出し、抽出した期間を基に、搬送設備の稼動開始時刻と搬送設備の稼動終了時刻とを算出する。
(6) 算出した搬送設備の稼動開始時刻と稼動終了時刻とを基に、排滓ポット交換の開始時刻と終了時刻とを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機での鋳造切れが発生しない、排滓ポットの交換タイミングを導出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高炉から出銑された溶銑はトピードカーなどにより転炉設備に移送され、転炉において精錬処理(脱りん処理や脱炭処理)が行われる。
精錬処理後の溶鋼は、溶鋼鍋に移し替えられて二次精錬設備へと移送され、溶鋼に対する更なる精錬が行われる。二次精錬後の溶鋼は連続鋳造機に移送され、スラブやブルームなどの鋳片へと鋳造される。鋳片を連続的に鋳造する連続鋳造機では、連続鋳造装置の生産性を向上させるために、鋼種が異なる場合を含めた複数のチャージを連続的に鋳造する連続鋳造が行われる。
【0003】
連続鋳造をトラブル無く行うためには、前チャージとそれに続く後チャージとを途切れることなく連続鋳造機に供給する必要があり、そのためには、転炉設備〜二次精錬設備〜連続鋳造機における様々な作業のスケジュール管理(物流管理)が重要なものとなってくる。もし、連続鋳造の遅れや途切れ(「連々鋳切れ」と呼ぶこともある)を生じることがあると、連々鋳切れの直後の溶鋼は廃棄せざるを得ないばかりか、連々鋳切れによる連続鋳造機の停止による生産性の低下も懸念される。
【0004】
連続鋳造機における物流を考慮した技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1は、複数の転炉、二次精錬設備、連続鋳造機、搬送設備を有する製鋼プロセスの操業スケジュール作成システムにおいて、連続鋳造機の鋳造スケジュールをもとにして、鋳造工程から上工程に対して時間軸と工程をさかのぼりながら、物流シミュレーション実行システムを用いて搬送台車やクレーンの干渉を考慮し、操業スケジュールを仮決定する第一ステップと、第一ステップから得られた製鋼プロセスの吹錬スケジュールをもとにして、転炉設備から下工程に対して工程と時間軸を下りながら溶銑鍋の後処理工程による操業スケジュールへの影響を検証し、操業スケジュールを再計算する第二ステップを組み合わせる製鋼プロセスの操業スケジュール作成システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−235610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、連続鋳造機においては、連々鋳切れ生じさせないように当該連続鋳造機に溶鋼を常に供給することが重要である。そのために、転炉、二次精錬設備、連続鋳造機、搬送設備を連携して操業する必要があり、そのための操業スケジュール、物流計画が組まれることになる。
とはいえ、様々な原因により、各設備での作業遅延が発生することがあり、スケジュールに狂いが生じ、ひいては、連続鋳造に途切れが発生することがあった。
【0007】
連々鋳切れを引き起こす原因の一つとして、連続鋳造後の排滓場における待ち時間の発生が挙げられる。
具体的には、図1に示す如く、転炉から出鋼された溶鋼は、溶鋼鍋に装入され、二次精錬設備へと移送される。二次精錬処理が行われた後は、溶鋼鍋は連続鋳造機に運ばれ、鍋内の溶鋼を連続鋳造機にて鋳片へ鋳造される。
【0008】
連続鋳造機に溶鋼を注入した後の溶鋼鍋は、排滓場へと運ばれ、鍋内の滓は、排滓ポットへと排出されることになる。その後、空鍋となった溶鋼鍋は、鍋整備場へと運ばれ、整備が行われる。整備が行われた後の溶鋼鍋は、再び、転炉へと向かい、吹錬後の溶鋼が装入される。
ここで、排滓場においては、排滓ポットに対して滓が装入されることになるが、排滓ポットは6〜7チャージの滓で満杯になるため、満杯になる前に、空の排滓ポットとの交換が不可欠な事項となる。
【0009】
しかしながら、排滓場における排滓ポットの交換には、他設備の物流の状況が大きく関与する。例えば、排滓ポットを交換するに際しては、排滓ポットはダンプカーで搬送されるが、安全のため、搬送の際に頭上でクレーンが稼働してはならない。すなわち、いかなるタイミングでも排滓ポットを交換できるものではない。
排滓ポットが滓で満杯になったものの、空の排滓ポットと交換することができない場合、溶鋼鍋の滓を払い出すことができなくなり、溶鋼鍋の物流が滞ることになる。かかる状況が続くと、最悪の場合、連続鋳造機において連々鋳切れが発生することになる。
【0010】
そこで、連々鋳切れを起こさないために、排滓ポットを交換できる時間を明確に知ることができればよい。排滓ポットを交換できる時間がガントチャート上のどの位置に存在するかをオペレータに提示することができれば、経験の浅いオペレータであっても、適切な対応を取ることができ、連々鋳切れが起こらない型組を再作成することが可能となる。
このような観点から、特許文献1を考えるに、特許文献1の技術は「鋳造工程から上工程に対して時間軸と工程をさかのぼりながら、物流シミュレーションを実行すると共に、転炉設備から下工程に対して工程と時間軸を下りながら鍋の後処理工程による操業スケジュールへの影響を検証するもの」であり、非常に複雑なシステムである。そのため、そのシステムの精度の維持は容易ではなく、また、物流シミュレーションを行うために大きな計算機能力や、多くのパラメータ(例えば、各チャージの各設備での処理時間)の入力を必要とするものであり、実際の現場で継続的に活用するには困難を伴うものとなっている。
【0011】
加えて、連々鋳切れを起こさないために必要とされる「排滓ポット交換が可能な時間」が確保される否かを算出し提示するものとはなっていない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、異鋼種を連続的に鋳造するような連続鋳造において、連続鋳造に途切れが起こることを防ぐべく、適切な排滓ポットの交換タイミングを導出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかる製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法は、転炉と、二次精錬設備と、連続鋳造機と溶鋼鍋を搬送する搬送設備と、溶鋼鍋内の滓を排滓する排滓場とを有する製鋼工程を操業するに際し、前記排滓場での排滓ポットの交換を実施可能なタイミングを算出する製鋼工程における排滓ポットの交換タイミングの導出方法であって、基本となる型組を用意すると共に、鋼種毎における各処理に要する所要時間を定めておき、前記型組及び処理時間を基に、ガントチャートを作成し、作成したガントチャートにおいて、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在するか否かを判断し、前記搬送設備の非稼働時間が所定時間以上となっている期間が存在する場合には、当該期間を排滓ポットの交換タイミングとすることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記搬送設備の非稼働時間を求めるに際しては、以下に示す工程(1)〜工程(6)を行うとよい。
(1) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、各設備での処理時間を求める。
(2) 所定の型組、溶鋼鍋の本数を基に、型組における全チャージについて、溶鋼鍋の動きを求める。
【0014】
(3) 得られた各設備での処理時間及び溶鋼鍋の動きを基に、ガントチャートを作成する。
(4) 作成したガントチャートから、搬送設備の非稼動時間を算出する。
(5) 前記ガントチャート上において、搬送設備の非稼動時間が排滓ポットの交換に必要とされる時間より大きくなる期間を抽出し、抽出した期間を基に、搬送設備の稼動開始時刻と搬送設備の稼動終了時刻とを算出する。
【0015】
(6) 算出した搬送設備の稼動開始時刻と稼動終了時刻とを基に、排滓ポット交換の開始時刻と終了時刻とを求める。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術により、排滓ポットを交換できるタイミングを明確に知ることができ、連続鋳造機における連々鋳切れ等を回避し、安定して鋳片を連続鋳造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】製鋼工程における各工程と、その間を結ぶ溶鋼鍋の状況を模式的に示した図である。
図2】製鋼工程での物流を示したガントチャートである(排滓ポットを交換不可能なガントチャート)。
図3】製鋼工程での物流を示したガントチャートである(排滓ポットを交換可能なガントチャート)。
図4】ガントチャート上での「クレーンの非稼働時間」を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
本発明のかかる排滓ポットの交換タイミングの導出方法を説明する前に、本発明が適用される製鋼工程1について説明を行う。
本発明が適用される製鋼工程1では、まず、高炉から出銑された溶銑は、例えばトピードカーなどにより転炉2に移送され、転炉2において精錬処理(脱りん処理、脱炭処理)が行われる。
【0019】
精錬処理を行う転炉2は、例えば、気体酸素を溶銑に吹き込む上吹きランスと炉底から酸素又は不活性ガスを溶銑に吹き込む羽口を備えた上底吹き型であって、上吹きランスからの気体酸素により酸素を供給し、羽口からの酸素又は不活性ガスにより溶銑を攪拌するものである。
図1に示す如く、精錬処理後の溶鋼は、溶鋼鍋Zに移し替えられ、搬送設備を用いて二次精錬設備へと実鍋が移送され、溶鋼に対する二次精錬が行われる。
【0020】
搬送設備は、台車や天井クレーンで構成されている。搬送設備は、実鍋(溶鋼が入った溶鋼鍋Z)を転炉2から二次精錬設備へと運んだり、空鍋(溶鋼を払い出した後の空の溶鋼鍋Z)を転炉2へ運ぶものである。
二次精錬設備は、溶鋼から不純物を除く操作および成分元素を添加する工程および操作である。ここでは二次精錬設備3と、二次精錬設備4とを備えている。
【0021】
連続鋳造機5の1つである垂直曲げ型連続鋳造機5は、鋳造する溶鋼が装入された溶鋼鍋Zと、この溶鋼鍋Zからの溶鋼を一時的に貯留するタンディッシュと、このタンディッシュから供給される溶鋼を成形する鋳型とを備えている。また、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機5は、鋳型直下に設置されて鋳造する鋳片を支持するロール(フットロール、サポートロール)を備えている。
【0022】
このような連続鋳造機5では、タンディッシュに貯留した溶鋼を鋳型に供給して、鋳型にて一次冷却を行うと共に、各ロールにて鋳片を引き抜きながら、冷却ノズルで広面及び狭面を二次冷却することによって鋳片を鋳造する。
なお、連続鋳造機5に溶鋼を装入して空となった溶鋼鍋Z(空鍋と呼ぶ)に対しては、滓などを排出する作業や溶鋼鍋Zの手入れ作業が行われる。
【0023】
滓などを排出する作業は、排滓場7にて行われる。排滓場7には、排滓ポット8が設置されており、運ばれてきた溶鋼鍋Z内の滓は、この排滓ポット8内に排出される。
溶鋼鍋Zの手入れ作業は、鍋整備場6で行われる。鍋整備場6で整備が行われた溶鋼鍋Zは、空鍋の状態で、転炉2の出鋼側へ移送され、再び、溶鋼が装入されることとなる。
なお、上記した連続鋳造機5では、同一鋼種が連続鋳造される場合もあれば、異鋼種の連続鋳造が行われる場合もある。連続鋳造(連々鋳と呼ぶこともある)とは、複数チャージの溶鋼を途切れることなく連続的に鋳造するものであり、連続鋳造設備の生産性を向上させることができるものとなっている。
【0024】
このような連々鋳においては、前チャージに続く後チャージのための実鍋が遅れて到着し、連続的に鋳造ができないような「連々鋳切れ」といわれる状況が発生することがある。連々鋳切れが発生すると、鋳造の再開までには、タンディッシュの交換等の段取り時間が必要となり、連鋳機の非稼動時間が大幅に増加する。また、連々鋳切れの前後のチャージには品質上の問題が発生する場合もある。このように、連々鋳切れは、連々鋳の安定操業を行うためには避けるべき事態であり、そのために、転炉2、二次精錬設備、連続鋳造機5、更には、排滓場7、鍋整備場6を連携して操業するためのスケジュールが組まれることとなる。
【0025】
具体的には、クレーンが稼動していない時間が15分以上あれば、排滓場7にて排滓ポット8を交換することが可能である。しかしながら、図2に示すガントチャートから見て取れるように、クレーンの非稼働時間には、15分以上の空き時間はない。例えば、図2の「X1」、「X2」、「X3」、「X4」には、それぞれ7分、10分、8分、11分の空き時間があるが、いずれの場合においても、15分以下であり、排滓場7にて排滓ポット8を交換することができない状況となっている。言い換えれば、各チャージの排滓時間延長に伴いクレーンの稼動状況が過多になっていることを示している。
【0026】
一方、図3に示すガントチャートから見て取れるように、クレーンの非稼働時間を見ていると、15分以上の場合が3カ所ある。例えば、図2の「★1」、「★2」、「★3」には、それぞれ29分、15分、46分の空き時間があり、この空き時間帯において、排滓場7にて排滓ポット8を交換することが可能な状況となっている。
図2に示したように、排滓場7にて排滓ポット8を交換することができない状況が発生することを避け、連々鋳切れを起こさないために、本発明では、クレーンが非稼働状態となっている時間が、排滓ポット8交換時間より長いものとなっている状態が発生する時間帯を算出し、オペレータに提示する技術を開示するものとなっている。
【0027】
以下、連々鋳切れを起こさないための排滓ポット8交換時間、言い換えれば、クレーン非稼働時間を算出する手法について述べる。
まず、推定方法の基本的な考え方(アプローチ)について、述べる。
基本の考え方では、最初に、表1に示すような基本となる型組を用意する。
【0028】
【表1】
【0029】
その上で、表2に示すような「鋼種毎の各処理の所要時間」を準備しておく。
【0030】
【表2】
【0031】
表1、表2の情報を基に、ガントチャート作成プログラムなどを用い当業者常法により、図2図3に示されるような製鋼工程1での工程表であるガントチャートが算出される。
つまり、表1、表2の情報及び図2図3の如きガントチャートに基づけば、連続鋳造機5で連続鋳造されるチャージの内容、つまり連続鋳造設備で連鋳される鋼種の順番が決定する。また、表2に基づけば、各チャージで連続鋳造機5、排滓場7、鍋整備場6、転炉2、二次精錬設備3、二次精錬設備4などの各精錬処理を行うための工程条件、つまり各チャージの精錬処理工程に必要な工程処理時間も決定する。さらに、過去の操業実績などに基づけば、各クレーンや各台車の吊上、移動、据付などに必要な工程時間を割り出すことができ、各チャージの精錬処理工程についてこれらの工程時間を割り付けて、ガントチャートを作成することができる。
【0032】
このようにしてガントチャートが算出されたら、排滓ポット8の交換が行える程度の空き時間が存在するかを計測する。算出されたガントチャート上に、排滓ポット8の交換が行える程度の空き時間が存在する場合は、空き時間を排滓ポット8の交換タイミングと判断する。
例えば、異なる鋼種の連続鋳造が続き、実鍋時間などが増えることで、クレーンの稼働率が高い状態が続いた場合、排滓ポット8の交換タイミングを得ることはできない。このようなクレーンの稼働率が高いという事実が、算出されたガントチャートから判った場合には、オペレータは型組を変更して再びガントチャートを作成し、再作成したガントチャートで排滓ポット8が交換可能かどうかを判断することもできる。
【0033】
型組の変更のやり方としては、様々なものが考えられるが、表3に示すように、6チャージ目から9チャージ目の鋼種をA’からAに変更することが考えられる。
【0034】
【表3】
【0035】
以上述べた基本考えに則って、以下のアルゴリズムにより、排滓ポット8の交換タイミング(クレーンの非稼働時間)を算出する。
まず、表1のような型組(連鋳スケジュール)、表2のような各種処理時間、搬送時間、製鋼工程1を行う設備の情報(クレーンや台車等の設備)、鍋本数Nが与えられたとする。
【0036】
この際に、kの初期値を指定し、k=1とする。
次に、鍋の動きを決定するようにする。すなわち、kチャージ目の鋼種をSg(k)、鋼種(Steel grade)における設備Dの基本(Base)所要時間をB(Sg,D)、kチャージ目における当日の設備依存調整(Adjust)時間を A(k,D) とする。
その時、1周目(k<=N、例えば、溶鋼鍋Zが6基の場合、1チャージ目から6チャージ目)の場合、鋼種Sgに依存した設備Dにおける各種処理時間P(Sg(k),D)は、式(1)のようになる。
【0037】
【数1】
【0038】
また、2周目(k>N、例えば、溶鋼鍋Zが6基の場合、7チャージ目以降)の場合、鋼種Sgに依存した設備Dにおける各種処理時間P(Sg(k),D)は、設備Dの処理時間における前鋼種、当該鋼種に依存した調整時間 f(Sg(k), Sg(k-N),D)を加味して、式(2)のようになる。
【0039】
【数2】
【0040】
鋼種Sgのkチャージ目について設備Dにおける各種処理時間をP(Sg(k),D)として、上記のように算出し、当該鋼種に必要な全工程について、ガントチャートの各設備行に記載する。ただし、設備が処理中の(既にガントチャートが埋まっている)場合は、処理終了まで待ち、設備が空き次第、直後に処理時間を記載。処理中でない場合は該当設備への記載を進める。
【0041】
以上の計算を進め、kチャージの必要な各処理を終えて鋳造位置に戻ってきたら、完了となる。
次に、型組の全チャージについて鍋の動きを決定する。すなわち、kチャージ目が型組の最後のチャージでない場合、k=k+1として1を繰り返す。最後のチャージならば、次に述べる処理を行う。
【0042】
その後の処理としては、図4に示す如く、排滓ポット8近傍のクレーンの空き時間を抽出することになる。すなわち、排滓ポット8近傍のクレーン(排滓ポット8交換時に稼動してはいけないクレーン)の非稼動時間Temptyをガントチャートより算出する。
最後に、非稼動時間Temptyと排滓ポット8の交換所要時間nとを比較し、式(3)を満たす時間を抽出し、排滓ポット8の交換開始可能時刻(クレーン稼動終了時刻)と、排滓ポット8の交換終了時刻(クレーン稼動開始時刻)を、オペレータに提示する。
【0043】
【数3】
【0044】
オペレータは、提示されたクレーンの非稼動時間Temptyやガントチャート上の位置を確認し、実施可能なものであれば、現在の型組や現在のガントチャートを採用し、クレーンの非稼動時間Temptyなどが不適切なものであれば、型組を変更(例えば、処理する鋼種の順番を変える)するなどして、上記した処理を再度行い、式(3)を満たす時間を抽出し、排滓ポット8の交換開始可能時刻(クレーン稼動終了時刻)と、排滓ポット8の交換終了時刻(クレーン稼動開始時刻)を、オペレータに提示するようにする。
【0045】
以上述べた技術によれば、連々鋳切れを起こさないための排滓ポット8の交換期間を、適切に知ることができ、連続鋳造が途切れることなく、安定して鋳片を連続鋳造することが可能となる。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0046】
1 製鋼工程
2 転炉
3 二次精錬設備
4 二次精錬設備
5 連続鋳造機
6 鍋整備場
7 排滓場
8 排滓ポット
Z 溶鋼鍋
図1
図2
図3
図4