(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
回転翼機の上下方向をz軸方向、上下方向に直交する2方向をそれぞれx軸方向及びy軸方向として説明する。上下方向に直交する方向、すなわちx−y平面に水平な方向を水平方向と、x−y平面を水平面と表記することがある。
【0016】
また、円筒形状を備えるものについては、その中心軸に沿う方向を軸方向と表記する。また、中心軸と垂直に交わる平面において、中心軸から離間する方向を径方向と、円筒外周に沿う方向を周方向と表記する。
【0017】
回転するものについても、回転軸に沿う方向を軸方向と表記する。また、回転軸に垂直に交わる平面において、回転軸から離間する方向を径方向と表記し、回転に沿う方向を周方向と表記する。
【0018】
(実施形態の概要)
本実施形態の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る回転翼機1の側面の断面図である。
回転翼24の回転により生じた気流は、導風管30内を通り、第二開口部312に向かう。導風管30には傾斜面を備えるフィン34が内設されているため、回転翼機1は導風管30下部から螺旋状の気流を噴出する。
ここで、隣接する導風管30のそれぞれから噴出する螺旋状の気流は、互いに逆方向の螺旋を描く。互いに逆方向に螺旋を描く気流は、回転翼機1の下側で衝突し、下方向の風圧を与える。この風圧により、回転翼機1はさらなる浮力を得る。
【0019】
回転翼24の外周部を覆うように導風管30が配設され、また、回転翼24は、導風管30とともに筐体10内部に格納されるため、回転翼24は障害物との接触による破損から保護される。
【0020】
(実施形態の詳細)
以下、本実施形態に係る回転翼機1について、詳細を説明する。
【0021】
(第一の実施形態)
図1に示すように、本実施形態における回転翼機1は、筐体10、屋根部14、支柱16、蓄電池20、モータ22、回転翼24、導風管30、気流制御部32、およびフィン34を備える。
【0022】
<回転翼機1>
以下の説明において、回転翼機とは、回転翼の回転により浮力を得て飛行する機械を指す。本実施形態における回転翼機には、いわゆるドローンの様に回転翼の回転により揚力を得て飛行するものに限らず、回転翼の回転により風圧を発生させて浮遊し、飛行するものを含む。
【0023】
<筐体10>
図1に示すように、回転翼機1は筐体10を備える。側面から観察すると、筐体10は上に凸の略椀形状を有する。また
図2に示すように、上側から観察すると、筐体10は円形である。
【0024】
筐体10は蓄電池20、モータ22、回転翼24、導風管30を内包する。筐体10上部は空気取入口12において開口している。空気取入口12は筐体10上部の円形の孔である。また、筐体10下部は導風管垂直部306において開口している。雨滴などが機体へ侵入することを防ぐため、筐体10は空気取入口12と導風管垂直部306以外については密閉されている。
【0025】
<屋根部14>
回転翼機1は屋根部14を備える。屋根部14は空気取入口12の上側を覆うように配設される。本実施形態において、空気取入口12の周辺部に配設される4本の支柱16により、屋根部14は筐体10上部に固設される。屋根部14は上に凸の椀形状である。屋根部14を回転翼機1の上側から観察すると円形である。
屋根部14は回転翼機1内部に雨滴が侵入することを防ぐ。
【0026】
ここで、空気は屋根部14と筐体10上部の隙間から流入し、空気取入口12を通じて回転翼機1内に取り込まれる。
【0027】
<蓄電池20>
図1に示すように、蓄電池20は筐体10内部の下側中央部に配設される。蓄電池20はモータ22に給電する。本実施形態において、蓄電池20はリチウムイオン電池である。
【0028】
<モータ22>
モータ22は蓄電池20の上側に配設される。本実施形態において、モータ22はボールベアリングモータである。
図1に示すように、本実施形態のモータ22は、ベアリング支持体222、第一のボールベアリング224、第二のボールベアリング226、および金属シャフト228を備える。
【0029】
ベアリング支持体222は蓄電池20の上側に配設される。第一のボールベアリング224および第二のボールベアリング226はベアリング支持体222によって支持される。
【0030】
第一のボールベアリング224、第二のボールベアリング226はそれぞれ軸方向の貫通孔を備える。第一のボールベアリング224、第二のボールベアリング226は中心軸が一致し、その貫通孔に金属シャフト228が挿通される。即ち、本実施形態のベアリングモータ22は、ベアリング支持体222上に配設された2つのボールベアリングに、1本の金属シャフト228を挿通した構造を備える。
【0031】
金属シャフト228は水平方向に延び、その一端は後述する回転翼24と結合する。金属シャフト228の他端は、ボールベアリングから金属シャフト228が落脱することを防ぐための係止部を備える(不図示)。
【0032】
第一のボールベアリング224および第二のボールベアリング226には、蓄電池20からの配線(不図示)を通じて、通電することができる。
例えば、第一のボールベアリング224に負の電流、第二のボールベアリング226に正の電流を流すことで、金属シャフト228は回転する。
ボールベアリングモータの回転原理は定かではないが、熱膨張力説とローレンツ力説が提唱されている。
【0033】
なお、ボールベアリングモータの駆動には初動回転が必要である。本実施形態において、手動により初動回転を与える。しかしこれに限られるものではなく、機械制御により初動回転を与えても良い。
モータ22は金属シャフト228の回転を通じて、回転翼24を回転させる。
【0034】
<回転翼24>
図1に示すように、回転翼24は、シャフト結合部242と羽根244を備える。シャフト結合部242はモータ22の金属シャフト228と嵌合する凹部を有する。羽根244はシャフト結合部242の外周に複数枚配設される。例えば、1つの回転翼につき羽根244が4枚配設される。羽根244は金属シャフト228の回転に従って回転する。
回転翼24は羽根244を回転させることで気流を発生させる。
【0035】
図2は回転翼機1を上面から見た断面図である。なお、
図2のA−A断面を示したものが
図1である。
【0036】
本実施形態の回転翼機1は4つの回転翼24を備える。4つの回転翼をそれぞれ回転翼24A、回転翼24B、回転翼24C、回転翼24Dと表記する。回転翼24の回転により、水平方向に気流が発生する。気流は後述する導風管30により下方向に誘導されるため、回転翼機1の下方向に風圧が生じる。
【0037】
本実施形態の回転翼機1は、4つの回転翼24から生じる風圧を制御することにより推進力を得る。1つの例において、回転翼24Aから回転翼24Dの回転数をそれぞれ調整することにより、回転翼機1は推進力を得る。
図2を用いて説明すると、回転翼24Bおよび回転翼24Cの回転数を、回転翼24Aおよび回転翼24Dの回転数より高くすると、回転翼機1が水平方向からやや傾斜する。この傾斜と下方向への風圧により、回転翼機1は
図2のE方向への推進力を得ることができる。
【0038】
また別の例では、後述する気流制御部32を制御し、4つの導風管30からの風圧をそれぞれ調整することによって、回転翼機1は推進力を得ることが出来る。気流制御部32はその径方向の大きさを変えることにより、気流の流量を制御できるためである。
【0039】
<導風管30>
図1に示すように、導風管30は全体としてL字管の形状を備える。導風管30は導風管水平部302、導風管屈曲部304、導風管垂直部306を備える。導風管水平部302、導風管屈曲部304、導風管垂直部306は一体形成される。
導風管30は両端に開口部を備える。両端の開口部をそれぞれ第一開口部310、第二開口部312とする。第一開口部310は筐体10内に取り込んだ空気が流入する側の開口部であり、第二開口部312は当該空気が流出する側の開口部である。
【0040】
導風管30は一方の開口部側に回転翼の1つを緩挿する。ここで「一方の開口部側に回転翼の1つを緩挿する」とは、
図1に示すように、導風管30が、第一開口部310側において、回転翼24の外周部を覆うよう配設されることを意味する。また、第一開口部310近傍における導風管30の内径は回転翼24の直径よりも大きいため、回転翼24と導風管30は接触しない。
回転翼機1は複数の導風管30を備える。そして、1つの導風管30は1つの回転翼24を緩挿する。
【0041】
導風管水平部302は水平方向に延びる円筒形状を備える。導風管水平部302は第一開口部310を備える。第一開口部310側に回転翼24を緩挿することにより、回転翼24の回転により生じた気流は効率良く導風管30に流入する。
【0042】
導風管屈曲部304は導風管水平部302と導風管垂直部306を接続する。導風管屈曲部304により、水平方向の気流が回転翼機1の下方向へ誘導される。
【0043】
導風管垂直部306は上下方向に延びる円筒形状を備える。導風管垂直部306は下端に第二開口部312を備える。
本実施形態において、導風管垂直部306は第二開口部312近傍に、後述する気流制御部32を備える。また、導風管垂直部306は第二開口部312近傍に、後述するフィン34を内設する。
【0044】
回転翼24の回転によって空気取入口12から取り込まれた空気は、導風管水平部302、導風管屈曲部304、導風管垂直部306を通り、導風管垂直部306と後述する気流制御部32との隙間から回転翼機1外部に噴出する。
即ち、導風管30は、回転翼24の回転により生じた水平方向の気流を下方向に誘導する。回転翼機1下方向への風圧により、回転翼機1が浮上する。
【0045】
回転翼24の外周部を覆うように導風管30が配設され、また、回転翼24は、導風管30とともに筐体10内部に格納されるため、回転翼24は障害物との接触による破損から保護される。
【0046】
<気流制御部32>
図1に示すように、気流制御部32は導風管垂直部306に内設される。
気流制御部32は、導風管30内の気流を後述するフィン34側に誘導する。また、気流制御部32は、導風管30から噴出する空気の流量を調整する。
【0047】
図3は、本実施形態における気流制御部32の上面図である。本実施形態において、気流制御部32は、中央ねじ322、扇状板324、長孔326、リベット328を備える。中央ねじ322は雄ねじである。
本実施形態における気流制御部32は複数の扇状板324が層を成し、全体として円盤形状を有する。
【0048】
図3中の点線は、気流制御部32を吊持する梁部308を表す。梁部308は気流制御部32の上側に配設される。梁部308は棒形状を有し、導風管垂直部306の中心軸を横切るようにして導風管30内部に架設される。梁部308は中心に上下方向を貫通する雌ねじ部を備える。当該雌ねじ部と、雄ねじである中央ねじ322が螺合するため、気流制御部32が吊持される。
【0049】
扇状板324には、中心軸近傍から周縁に向かう半径方向に長孔326が穿設される。また複数の扇状板324の長孔326には、中央ねじ322が取り外し可能に摺嵌される。中央ねじ322は梁部308との間に、複数の扇状板324を鋲締することができる。
【0050】
リベット328は、各扇状板324の周方向の角部と、該扇状板324に隣り合う他の扇状板324の角部を連結する。この構造により、扇状板324が中央ねじ322を回動中心として相互に回動自在となる一方で、各扇状板324の角部の動きは制限される。
【0051】
即ち、気流制御部32は略円形状を維持しつつ、径方向の大きさを変えることができる。また、中央ねじ322を長孔326内で摺動し、任意の場所で固定することにより、導風管垂直部306と気流制御部32の隙間の大きさを調整することが可能となる。これにより気流制御部32は、後述するフィン34側を流れる気流の流量や、回転翼機1下部に生じる風圧を調節することができる。
【0052】
なお、長孔326からの気流の流出を防ぐため、中央ねじ322が摺動可能な範囲で、長孔326の短手方向の幅は小さくする。長孔326にスリット付きゴム板を配設することにより、気流の流出を防いでも良い。
【0053】
<フィン34>
図4は、導風管垂直部306の断面を示した斜視図である。
図4は特に、後述する第一フィン34aが配設された導風管24Aを示す。紙面上方向がz軸正方向である。
フィン34は気流制御部32と導風管垂直部306の間に配設される。また、フィン34は導風管垂直部306内側の周方向に沿って複数配設される。なお、
図4において梁部308は省略している。
【0054】
回転翼24による気流は、紙面上から下に流れる。導風管垂直部306の径方向内側には気流制御部32が配設されるため、気流は気流制御部32と導風管306との隙間を流れる。この際、上下方向に傾斜する傾斜面を備えるフィン34により、気流の向きが変化する。即ち、気流は導風管30下部から螺旋状に噴出する。
【0055】
なお、気流制御部32が径方向に拡張した際に、気流制御部32はフィン34を押圧してもよい。例えばフィン34が弾性のあるシリコンゴム材料で形成されると、気流制御部32がフィン34を押圧した際に、フィン34は容易に変形することができる。その結果、気流制御部32と導風管垂直部306との隙間がさらに狭くなり、回転翼機1の下方向への風圧を変化させることができる。
【0056】
図5は第一フィン34aの斜視図である。紙面上方向がz軸正方向である。
フィン34は三角柱形状を有する。フィン34はフィン外周面342、フィン底面344、フィン第一側面346、フィン第二側面348、およびフィン内周面352の5つの面を備える。フィン第一側面346とフィン第二側面348が共有する辺がフィン頂辺部350である。フィン34は、フィン外周面342において導風管垂直部306と接着する。
【0057】
ここで、フィン第一側面346とフィン第二側面348のうち、z軸正方向、即ち上側に面しているのがフィン第二側面348であり、z軸負方向、すなわち下側に面しているのがフィン第一側面346である。
【0058】
図5に示すように、フィン底面344とフィン第一側面346の成す角の角度をαとする。ここで、αは90°以上である。気流を効率的に誘導する観点から、αは鈍角であることが好ましい。また、フィン底面344とフィン第二側面348の成す角の角度をβとする。βは鋭角である。
【0059】
気流は紙面上から下に流れるため、気流は主にフィン第二側面348の傾斜による影響を受ける。即ち、角度βが鋭角であることにより、気流の流れる方向が変化する。所定の角度βの傾斜を有するフィンを、導風管垂直部306内に複数配設することにより、気流は回転翼機1上面から見て螺旋状に噴出する。
【0060】
なお、気流の流れを変え、螺旋状に噴出するよう誘導する観点から、βは10°から60°が好ましく、15°から50°がより好ましい。
【0061】
図6は、第一フィン34aの配置を示した模式図である。一例として、回転翼24Aを緩挿する導風管30の第二開口部312近傍を、x軸正方向から負方向に向かって観察した側面図を表している。
図6では、x軸正方向から負方向に見て、手前側に見えるフィン34のみを図示している。第一フィン34aを内設する導風管を第一の導風管と表記する。
【0062】
図6において、気流は紙面上部から下部に向かって進む。フィン第二側面348の上下方向の傾斜(角度βの傾斜)により、気流は斜め下方向に流出する。即ち、気流はz軸負方向に進むに従い、y軸負方向に誘導される。この結果、回転翼24Aを緩挿する導風管30は、第一フィン34aを内設することにより、回転翼機1の上側から見て時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
【0063】
なお、回転翼24Cを緩挿する導風管30も、フィンの配置を示した模式図は
図6と同等となる。即ち、回転翼24Cを緩挿する導風管30は、回転翼機1上側から見て時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
つまり、第一の導風管は第一フィン34aを内設することにより、回転翼機1上側から見て時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
【0064】
図7は、第二フィン34bの配置を示した模式図である。回転翼24Bを緩挿する導風管30の第二開口部312近傍を、x軸正方向から負方向に向かって観察した側面図を表している。
図7では、x軸正方向から負方向に見て手前側に見えるフィン34のみを図示している。第二フィン34bを内設する導風管を第二の導風管と表記する。
【0065】
なお、第一フィン34aも第二フィン34bも、形状は同一である。第一フィン34aの導風管垂直部306への接着向きを変えたものが第二フィン34bである。例えば、
図5は第一フィン34aを示し、フィン外周面342において導風管垂直部306と接着したが、フィン外周面342ではなくフィン内周面352において導風管垂直部306と接着したものは、第二フィン34bと同一である。
【0066】
第二フィン34bにおいて、フィン第二側面348の上下方向の傾斜は、フィン34aの逆となる。即ち、
図7に示したように、気流はz軸負方向に進むに従い、y軸正方向に誘導される。この結果、回転翼24Bを緩挿する導風管30は、第二フィン34bを内設することにより、回転翼機1上側から見て反時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
【0067】
なお、回転翼24Dを緩挿する導風管30も、フィンの配置を示した模式図は
図7で示した図と同等となる。即ち、回転翼24Dを緩挿する導風管30は、回転翼機1上側から見て反時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
つまり、第二の導風管は第二フィン34bを内設することにより、回転翼機1上側から見て反時計回りに螺旋を描く気流を噴出する。
【0068】
<駆動制御部>
本実施形態の回転翼機1は駆動制御部を備える。駆動制御部は筐体10内に配設される(不図示)。駆動制御部は、ESC(Electric Speed Controller)やフライトコントローラを備え、モータ22の回転等を制御する。
【0069】
本実施形態において、筐体10、屋根部14、回転翼24、導風管30、およびフィン34は樹脂で形成されている。
【0070】
以上により、回転翼24の回転によって生じた気流は、導風管30内部を通じて回転翼機1下部から噴出する。この風圧により、回転翼機1は浮上する。
また、上下方向から傾斜して複数配設されたフィン34の間を気流が通ることにより、気流は回転翼機1下方向に螺旋状に噴出される。
【0071】
気流制御部32により気流はフィン34に誘導される。さらに、気流制御部32により流路が制限され、風圧が高くなったところで気流はフィン34の近傍を通過する。よって、回転翼機1は各導風管30下部において、効率的に螺旋状の気流を得ることができる。
【0072】
4つの導風管30のうち、隣接する導風管30においては、上下方向の傾斜が互いに異なる向きになるようにフィン34が配設されている。換言すると、第一フィン34aを内設する第一の導風管と、第二フィン34bを内設する第二の導風管は隣接する。つまり、隣接する導風管30のそれぞれから噴出する螺旋状の気流は、互いに逆方向の螺旋を描く。
【0073】
ここで「隣接する」とは、導風管同士が最近接する位置関係を意味する。例えば本実施形態において、回転翼24Aを緩挿する導風管と回転翼24Bを緩挿する導風管は隣接するが、回転翼24Aを緩挿する導風管と回転翼24Cを緩挿する導風管は隣接しないことを意味する。
【0074】
上述したように、本実施形態において、回転翼24Aおよび回転翼24Cを緩挿する導風管、即ち第一の導風管から噴出する気流は時計回り方向に螺旋を描く。一方、回転翼24B及び回転翼24Dを緩挿する導風管、即ち第二の導風管から噴出する気流は反時計回りに螺旋を描く。
この結果、隣接する導風管から噴出し、互いに反対方向に螺旋を描く気流は、回転翼機1の下側で衝突し、下方向の風圧を与える。この風圧により、回転翼機1はさらなる浮力を得る。
【0075】
ここで、本実施形態において、回転翼24の外周部を覆うように導風管30が配設される。また、回転翼24は、導風管30とともに筐体10内部に格納される。これらの構造により、回転翼24は障害物との接触による破損から保護される。
さらに、駆動部である回転翼24が筐体10内に格納されるため、駆動時の騒音が低減される。
【0076】
なお、屋根部14と筐体10上部の間の隙間を狭くすることにより、空気取入口12周辺の気流の流れが速くなる。空気取入口12周辺の気流の流れが速くなると、回転翼機1がより浮上しやすくなる。このメカニズムは定かではないが、気流の流れが速くなることで回転翼機1上部の気圧が下がるため、回転翼機1は浮力を得ると推測される。この隙間は、浮力を得るために必要な空気を十分に取り込める大きさであれば良い。
【0077】
(第二の実施形態)
第二の実施形態は、気流制御部32として気流制御筒330を採用したものである。
図8は第二の実施形態における導風管30の側面の断面図を示す。第二の実施形態においては、気流制御部32として、保持部332から支持体334により吊持された気流制御筒330を用いる。
【0078】
<保持部332>
保持部332は、導風管垂直部306の中心軸と導風管水平部302の交わる部分に配設される。保持部332は貫通孔を備える。保持部332の貫通孔は、導風管水平部302を上下方向に貫通する。保持部332の内側(貫通孔側)は雌ねじである。
保持部332は支持体334を保持する。
【0079】
<支持体334>
支持体334は、保持部332に挿通され、保持部332の下方向に延びる棒状体である。支持体334の上端は雄ねじ構造を有し、雌ねじである保持部332と螺合する。支持体334の下端は後述する気流制御筒330に接続する。
支持体334は気流制御筒330を導風管30内に吊持する。
【0080】
<気流制御筒330>
気流制御筒330は導風管垂直部306の径方向内側に緩挿され、支持体334を通じて保持部332に吊持される。気流制御筒330は上に凸の椀形状を有し、気流制御筒330下側は開口している。
気流制御筒330と導風管垂直部306の間には、気流制御筒330外周に沿って隙間がある。この隙間から気流が噴出する。
【0081】
本実施形態において、保持部332から気流制御筒330までの長さを調整することにより、隙間の大きさを調整することができる。即ち、雄ねじである支持体334の回転により、気流制御筒330は上下方向に応動する。上に凸の椀形状を有する気流制御筒330の位置を調整することで、気流制御筒330と導風管垂直部306の隙間の大きさを調整することができる。
【0082】
例えば、当該隙間が小さくなると、気流の流路が制限されるため風圧は高くなり、当該隙間が大きくなると逆に風圧は低くなる。気流制御筒330の上下方向の位置を調整することで、風量と風圧が最適となるよう調整することができる。
【0083】
なお本実施形態において、保持部332、支持体334、気流制御筒330は樹脂で形成されている。
【0084】
気流制御部32として上凸形状の気流制御筒330を採用することにより、導風管30内の気流をフィン34側に誘導し易くなる。また、風量と風圧が最適となるような微細な調整が可能になる。
【0085】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0086】
上述の実施形態では、筐体10が、導風管垂直部306と空気取入口12以外については密閉されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、回転翼機1は、その運転で生じた熱を外部に排出するための開口部を有していても良い。この場合、放熱のための開口部は、雨滴侵入防止の観点から、筐体10側面や筐体10下面にあることが好ましい。
【0087】
上述の実施形態では、蓄電池20がリチウムイオン電池である場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、蓄電池20はリチウムポリマー電池、鉛蓄電池、ニカド電池、ニッケル水素電池、NAS電池といった蓄電池を適宜用いることができる。ただし、出力の高さからリチウムイオン電池が好ましい。
【0088】
上述の実施形態では、モータ22はボールベアリングモータを用いている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ22は直流モータや交流モータを適宜用いることができる。直流モータであればブラシモータやステッピングモータが、交流モータであればブラシレスモータなどが適宜用いられる。ただし、軽量化やコストの観点から、ボールベアリングモータが好ましい。
【0089】
蓄電池20、モータ22は回転翼24を駆動するものであり、本回転翼機1が目的とする効果を阻害するものでなければ配置の変更は可能である。例えば、蓄電池20は筐体10外部下側に配設されていても良い。
【0090】
上述の実施形態では、1つの回転翼24につき羽根244が4枚配設されている場合について説明したが、羽根244の枚数はこれに限られず、2枚や6枚、8枚であっても良い。また、同じ軸の異なる場所に羽根を備えても良い。例えば、同じ金属シャフト228の延長上に羽根244を4枚ずつ2組配設し、計8枚としても良い。なお、風圧を発生させるものであれば羽根244は任意の形状のものを用いることができる。
【0091】
上述の実施形態では、回転翼機1は、4つの回転翼24(回転翼24Aから回転翼24D)を備える場合について説明した。しかしながら、回転翼24の数はこれに限られるものではなく、例えば6つや8つであっても良い。ただし、隣接する回転翼24から噴出する気流を相互に衝突させる観点から、回転翼24の数は偶数であることが好ましい。また、制御の容易さや、安定飛行の観点から回転翼24は4つまたは6つが好ましい。
【0092】
導風管水平部302、導風管屈曲部304、導風管垂直部306は一体形成により製造される場合について説明したが、これに限られるものではなく、継ぎ手を用いても良い。この場合、導風管屈曲部304は曲管を用いて屈曲させても良いし、継ぎ手を屈曲させても良い。
【0093】
上述の実施形態では、回転翼24は機体の水平方向に風圧を発生させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、回転翼24が直接下方向に風圧を発生させるものであっても良い(不図示)。この場合、導風管30を短くでき、軽量化できるメリットがある。しかしながら、回転翼24を制御しやすくする観点から、回転翼24は、機体の水平方向に気流を発生させるものが好ましい。
【0094】
いわゆるドローンにおいて、隣接する回転翼は互いに逆方向に回転する。これは、機体が回転翼の回転につられて回動することを防ぎ、安定飛行させるためである。
しかしながら、本実施形態において、回転翼24の回転方向はこのように制限されない。即ち、すべての回転翼24が同じ方向に回転しても差し支えない。この場合、回転翼24の制御が容易になるという利点がある。
【0095】
上述した第一の実施形態では、気流制御部32は、扇状板324が中央ねじ322を回動中心として回動するものであった。しかしこれに限られるものではなく、気流の流量を制御できるものであれば良い。
【0096】
例えば、中央ねじ322を一方向に回転させると扇状板324が開き、他方向に回転させると閉じる機構にしても良い。また、気流制御部32の開閉機構はコンピュータにより自動制御させても良い。この場合、各導風管の風圧を精密に制御させることが出来る。
【0097】
また、上述した第一の実施形態では、気流制御部32の形状は円盤形状であったが、気流制御部32の形状は、円盤形状に限られない。例えば、水平方向から見て上凸形状であっても良い。このような形状にすることで、空気抵抗を軽減し、気流をフィン34側へ誘導し易くすることができる。
【0098】
上述の実施形態では、フィン34はシリコンゴムを用いている場合について説明したが、これに限られるものではない。フィン34は気流制御部32に押圧された際に変形可能であれば良く、各種弾性素材を用いることができる。
【0099】
例えばシリコンゴムの他、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、ウレタンゴムといったゴム素材であっても良いし、塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂といった樹脂素材であっても良い。ただし耐熱性や変形しやすさの観点から、シリコンゴムが好ましい。
【0100】
上述の実施形態では、フィン34が導風管垂直部306の周方向に均等に配置される場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フィン34が導風管垂直部306の周方向全体に配設されているものの、一部の箇所にフィン34を配置していないものであっても良い。この結果、回転翼機1を軽量化することが可能となる。
【0101】
上述の実施形態では、フィン34は三角柱形状である場合について説明した。しかしながら、フィン34は気流の方向に変えるものであれば良く、三角柱形状に限られない。例えば、フィン外周面342に現れるフィン34の断面形状は、三角形に限らず、四角形や雫型であっても良い。
【0102】
上述した第二の実施形態では、保持部332と支持体334はそれぞれ雌ねじと雄ねじである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、保持部332と支持体334の組み合わせは気流制御部32を吊持するものであれば良い。例えば、支持体334が金属棒、保持部332が貫通孔を備えるゴムであって、ゴムと金属棒の間に生じる摩擦力により気流制御部32を吊持するものであっても良い。
【0103】
上述した第二の実施形態では、支持体334を手動で保持部332に螺合し、固定していた。しかしながら、これに限られるものではなく、手動で固定する代わりに電子制御にしても良い。この場合電子制御により、支持体334の上下方向の位置を精密に制御することができる。
【0104】
上述の実施形態では、筐体10、屋根部14、回転翼24、導風管30、フィン34、保持部332、支持体334、および気流制御筒330は樹脂で形成されていたが、これらの素材は樹脂に限定されない。例えば、樹脂の他、金属、セラミックス、炭素繊維など、各機能を損なわない素材に代替可能である。ただし、重量や入手容易性、加工の容易さの観点から、樹脂素材が好ましい。一方で、特に熱が掛かる部位や、衝撃を受ける部位は、耐熱性や強度の観点から金属や炭素繊維で形成されることが好ましい。
【0105】
本実施形態の回転翼機1は電気通信装置を備えていても良い。電気通信装置は筐体10内に配設される。例えば本実施形態では、GPS(Global Positioning System)装置を備える。GPS装置を備えることにより、回転翼機1の飛行位置を制御することができる。
【0106】
本実施形態の回転翼機1は、上述した効果を阻害しない限りにおいて、近接センサなどの各種センサの他、撮像装置や、薬液等を収納するタンクを搭載しても良い。
また、ドローンは一般に無人機であることを指すが、本実施形態の回転翼機1は有人機であることを除外しない。ただし、機体全体が軽量となる無人機は、風圧による利点をより活かすことができる。
【課題】従来の回転翼機の場合、複数の回転翼により生じる気流が、回転翼機下側で相互にどのように影響するかについては十分検討されておらず、回転翼により生じる風圧が効率的に利用されていなかった。
【解決手段】回転翼24の回転により生じた気流は、導風管30内を通り、第二開口部312に向かう。導風管30には傾斜面を備えるフィン34が内設されているため、回転翼機1は導風管30下部から螺旋状の気流を噴出する。ここで、隣接する導風管30のそれぞれから噴出する螺旋状の気流は、互いに逆方向の螺旋を描く。互いに逆方向に螺旋を描く気流は、回転翼機1の下側で衝突し、下方向の風圧を与える。この風圧により、回転翼機1はさらなる浮力を得る。