(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819000
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4172 20060101AFI20210114BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20210114BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20210114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210114BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20210114BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20210114BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20210114BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
A61K31/4172
A61K31/198
A61K31/405
A61P29/00
A61P19/02
A61K47/42
A61K47/46
A61K47/26
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-510851(P2018-510851)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公表番号】特表2018-535187(P2018-535187A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】IB2016055354
(87)【国際公開番号】WO2017051272
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】102015000055027
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518061270
【氏名又は名称】プロフェッショナル ダイエテティクス インターナショナル エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジェッティ、パオロ ルカ マリア
【審査官】
新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−047183(JP,A)
【文献】
特開平05−339148(JP,A)
【文献】
特開2013−082745(JP,A)
【文献】
特開2014−055141(JP,A)
【文献】
特表2008−533140(JP,A)
【文献】
The Journal of Clinical Investigation,2013年,Vol.123, No.11,pp.4654-4666
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 19/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のための組成物であって、少なくとも第1の活性剤を備え、前記第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リシン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、およびシスチンを含む、使用のための組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸の、イソロイシン、ロイシンおよびバリンの総量は、前記第1の活性剤の総モルに対して50−70mol%の範囲内、好ましくは52−67mol%の間に含まれる前記第1の活性剤の総モル量に対してモル百分率で表される量である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸の、トレオニンおよびリシンの総量は、前記第1の活性剤の総モルに対して20−30mol%の範囲内、好ましくは22−27mol%の間に含まれる前記第1の活性剤の総モル量に対してモル百分率で表される量である、請求項1または請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記アミノ酸の、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンの総量は、前記第1の活性剤の総モルに対して5−15mol%の範囲内に含まれる前記第1の活性剤の総モル量に対してモル百分率で表される量である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸の、チロシンおよびシスチンの総量は、前記第1の活性剤の総モルに対して2−8mol%の範囲内に含まれる前記第1の活性剤の総モル量に対してモル百分率で表される量である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の活性剤をさらに備え、前記第2の活性剤は、グルタミン、セリンおよびグリシンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記第1の活性剤の総モルに対してモル百分率として表される前記第2の活性剤の総量は、35−45mol%の間に含まれる、好ましくは37−42mol%の間に含まれる、より好ましくは約40mol%である、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
チロシンが、メチオニン、フェニルアラニンおよびシスチンのうちの少なくとも1つのモル量より多い前記モル量で存在する、請求項6または請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
ヒスチジンが、トレオニンのモル量より多い前記モル量で存在する、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
グルタミンが、イソロイシンおよびバリンのうちの少なくとも1つのモル量より多い前記モル量で存在する、請求項6から9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
グリシンが、イソロイシンおよびバリンのうちの少なくとも1つのモル量より多い前記モル量で存在する、請求項6から10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物の総モルに対してモル百分率として表されるチロシン、シスチン、グルタミン、セリンおよびグリシンの総量が、25−45mol%の範囲内に含まれる、好ましくは30−40mol%の間に含まれる、より好ましくは約34mol%である、請求項6から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記活性剤がアルギニンを含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記組成物が少なくとも1つの賦形剤を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの賦形剤は、タンパク質、ビタミン、炭水化物、天然の甘味料および人工甘味料の少なくとも1つ、香味物質から選択される、請求項14に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは選択的関節形成術を受けた患者の、リハビリテーションの間に、疼痛の治療に有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的股関節形成術(EHA)は、変性変形性関節症または怪我の後で損傷した股関節を有する患者に使用される外科技術である。毎年、世界中で150万件のEHAが行われている。イタリアでは、およそ13億ユーロの費用をかけて、毎年約100,000件のEHA手術があり、そのうち5億ユーロがその後のリハビリテーション治療のために加えられるはずである。EHAプラスリハビリテーションの経済的負担はトータルで、ヘルスケアシステムのための年次国家予算の1.6%である。
【0003】
EHAおよびEHA後のリハビリテーションで、患者は身体能力を回復でき、彼らの生活の質を改善できる。しかしながら、術前の機能状態、術後の疼痛および感染症を含む、多くの要因がリハビリテーションの長さおよび成果の両方を妨げ得る。具体的には、疼痛が持続することにより、機能回復期間が延び、臨床成果が低くなり、かつ、さらなるリハビリテーションの必要性が増し得る。
【0004】
これらの術後の変化を制限することは、手術した股関節の機能障害の回復を早め得、高め得る。
【0005】
したがって選択的関節形成術を受けている患者の回復を高め得る新規組成物の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、好ましくはリハビリテーションの間に、疼痛を軽減するおよび/または取り除くことにより、選択的関節形成術を受けている患者の回復を高め得る新規組成物を提供することである。
【0007】
本発明によると、上記の目的は、本説明の不可欠な部分を形成するものと理解される、以降の特許請求項にて規定される方法のおかげで実現される。
【0008】
一実施形態において、本開示は、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のためのアミノ酸組成物であって、少なくとも第1の活性剤を備え、第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リ
シン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、およびシスチンを含む、使用のための組成物を開示する。
【0009】
さらなる実施形態において、本開示は、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のためのアミノ酸組成物であって、少なくとも第1の活性剤および第2の活性剤を備え、第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リ
シン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、およびシスチンを含み、第2の活性剤は、アミノ酸の、グルタミン、グリシンおよびセリンを含む、使用のための組成物を開示する。
【0010】
本説明に開示されたデータは、本明細書に開示されたアミノ酸組成物の投与が、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛を治療でき、したがって彼らの回復を高めることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
これより発明は添付の図面を参照して、単なる例として説明される。
【0012】
【
図1】プラセボ群およびEAA治療群のハリスヒップスコアの値を示す。
【0013】
【
図2】ハリスヒップスコアの決定に寄与している領域の相対スコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これより本発明は選択的股関節形成術を受けた患者について言及しながら、非限定的な例として詳細に説明される。
【0015】
本説明の範囲は、決して選択的股関節形成術のみに限定されず、例えば、膝または肩関節のような、他の選択的関節形成術を受けている患者が、本説明に開示されたアミノ酸組成物の投与から疼痛の治療の観点で有益な効果を得られることは明らかである。
【0016】
以下の説明には、実施形態の完全な理解を提供するべく、多くの具体的な詳細が与えられる。実施形態は、具体的な詳細の1または複数が無くても、または、その他の方法、成分、材料などを用いても実施され得る。他の例においては、実施形態の態様を曖昧にすることを回避すべく、周知の構造、材料または動作は、詳細に図示または説明されていない。
【0017】
本明細書を通して「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所の「1つの実施形態において」または「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を指すものではない。さらに、それら特定の特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態において、任意の適切な態様で組み合わされてよい。
【0018】
本明細書に提供される見出しは、単なる便宜上のものであって、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0019】
本説明の一実施形態によると、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のためのアミノ酸組成物は、少なくとも第1の活性剤を備え、第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リ
シン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、およびシスチンを含む。
【0020】
本説明のさらなる実施形態によると、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のためのアミノ酸組成物は、少なくとも第1の活性剤および第2の活性剤を備え、第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リ
シン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、およびシスチンを含み、第2の活性剤は、アミノ酸の、グルタミン、グリシンおよびセリンを含む。
【0021】
本説明の好適な実施形態によると、本明細書に開示されたアミノ酸組成物は、選択的股関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のためのものである。
【0022】
さらなる仕様が、選択的関節形成術を受けた患者の疼痛の治療における使用のための組成物により提供される様々なアミノ酸の間の、量および比の観点で、本発明に関して本明細書で提供されている技術的教示の不可欠な部分を形成する、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0023】
さらなる実施形態によると、アミノ酸組成物は、例えば、タンパク質、ビタミン、炭水化物、天然の甘味料および人工甘味料、および/または香味物質等の薬理的に許容可能な賦形剤を備え得る。好適な実施形態において、薬理的に許容可能な賦形剤が、乳清タンパク質、マルトデキストリン、果糖、カゼインカルシウム、魚油、クエン酸またはこれらの塩、スクラロース、ショ糖エステル、ビタミンD3、ビタミンB群から選択され得る。
【0024】
本研究は、選択的股関節形成術のリハビリテーション段階において患者が疼痛を伴い得、それがリハビリテーションの最後まで持続し得ることを示す。本出願に開示されたアミノ酸組成物の投与は、結果のセクションで見られるように、予想外に疼痛を減らし、股関節機能の機能回復を高める。
【0025】
EHA後の患者は、実際、特に理学療法の各セッションの後で、筋肉痛、疼痛および筋力低下を示す。筋肉痛の軽減は、研究で観察され、プラセボ群より治療群においてより顕著であるとわかった、疼痛に関連する領域の軽減を説明する。
【0026】
任意の特定の理論に縛られるものではないが、本明細書に開示されたアミノ酸組成物の補給は、中枢神経系に影響し得、HHS検査内で疼痛の領域を減らすことに寄与し、アミノ酸は神経系細胞によって多く消費され、それらのいくつかは神経伝達物質の前駆体であり、その結果、股関節の機能障害のより良い回復が実現されると考えることが合理的である。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態によると、アミノ酸の、イソロイシン、ロイシンおよびバリンは、第1の活性剤の総モルに対して50−70mol%の範囲内、好ましくは52−67mol%の間に含まれるモル百分率で表される量で存在する。
【0028】
さらなる実施形態において、アミノ酸の、トレオニンおよびリシンは、第1の活性剤の総モルに対して20−30mol%の範囲内、好ましくは22−27mol%の間に含まれるモル百分率で表される量で存在する。
【0029】
別の実施形態において、アミノ酸の、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンは、第1の活性剤の総モルに対して5−15mol%の範囲内に含まれるモル百分率で表される量で存在する。
【0030】
さらなる実施形態において、アミノ酸の、チロシンおよびシスチンは、第1の活性剤の総モルに対して2−8mol%の範囲内に含まれるモル百分率で表される量で存在する。
【0031】
またさらなる実施形態において、第1の活性剤は、70mol%までのイソロイシン、ロイシンおよびバリン、50mol%までのトレオニンおよびリ
シン、23mol%までのシスチン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンおよびチロシンを含み、トレオニンおよびリ
シンは、イソロイシン、ロイシンおよびバリンを除いた他の必須アミノ酸より多いモル量で共に存在する。
【0032】
さらなる実施形態において、第1の活性剤は、アミノ酸の、ロイシン、イソロイシン、バリン、リ
シン、トレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、チロシンおよびシスチンから成る。
【0033】
一実施形態において、本明細書に開示された組成物は、グルタミン、セリンおよびグリシンを含む、第2の活性剤をさらに備え得る。
【0034】
さらなる実施形態において、第1の活性剤の総モルに対してモル百分率として表される第2の活性剤の量は、35−45mol%の間、好ましくは37−42mol%の間、より好ましくは約40mol%に含まれる。
【0035】
一実施形態によると、アミノ酸組成物が第1の活性剤および第2の活性剤を備える場合、チロシンが、メチオニン、フェニルアラニンおよびシスチンのうちの少なくとも1つのモル量より多いモル量で存在する。好適な実施形態において、チロシンは、0.43に等しいかそれより多いメチオニンに対してモル比で存在し、および/または、チロシンは、0.85に等しいかそれより多いフェニルアラニンに対してモル比で存在し、および/または、チロシンは、0.49に等しいかそれより多いシスチンに対してモル比で存在する。
【0036】
一実施形態によると、アミノ酸組成物が第1の活性剤および第2の活性剤を備える場合、ヒスチジンは、トレオニンのモル量より多いモル量で存在する。好適な実施形態において、ヒスチジンは、0.95に等しいかそれより多いトレオニンに対してモル比で存在する。
【0037】
一実施形態によると、アミノ酸組成物が第1の活性剤および第2の活性剤を備える場合、グルタミンは、イソロイシンおよびバリンのうちの少なくとも1つのモル量より多いモル量で存在する。好適な実施形態において、グルタミンは、0.67に等しいかそれより多いイソロイシンに対してモル比で存在し、および/または、グルタミンは、0.92に等しいかそれより多いバリンに対してモル比で存在する。
【0038】
一実施形態によると、アミノ酸組成物が第1の活性剤および第2の活性剤を備える場合、グリシンは、イソロイシンおよびバリンのうちの少なくとも1つのモル量より多いモル量で存在する。好適な実施形態において、グリシンは、0.57に等しいかそれより多いイソロイシンに対してモル比で存在し、および/または、グルタミンは、0.78に等しいかそれより多いバリンに対してモル比で存在する。
【0039】
一実施形態によると、アミノ酸組成物が第1の活性剤および第2の活性剤を備える場合、非必須アミノ酸の、チロシン、シスチン、グルタミン、セリンおよびグリシンは、組成物に含まれる必須アミノ酸のモル量よりも少ないモル量で存在し、好ましくは、チロシン、シスチン、グルタミン、セリンおよびグリシンは、組成物の総モルに対して25−45mol%の範囲内、好ましくは30−40mol%の間、より好ましくは約34mol%に含まれるモル百分率で表される量で存在する。
【0040】
さらなる実施形態において、第2の活性剤は、アミノ酸の、グルタミン、グリシンおよびセリンから成る。
【0041】
第2の活性剤内のグルタミンの存在は、第1の活性剤に含まれる必須アミノ酸により促進されたタンパク質同化作用、すなわち筋肉のタンパク質分解に抗する作用を高める。
【0042】
さらに、特に、本開示による組成物、具体的には活性剤を調製する場合、アミノ酸の、プロリン、アラニン、とりわけ、アルギニンは、それらが逆効果となり得るか、有害にさえなり得るということを踏まえれば、避けられることが好ましい。プロリンおよびアラニンは、実際、高血圧を促進し得、アルギニンは、疼痛の治療に使用される薬剤とマイナスに相互作用し得る。
【0043】
開示され、特許請求された組成物に含まれるアミノ酸は、それぞれの薬理的に許容可能な誘導体、すなわち塩により置き換わられ得る。
【0044】
好適な実施形態において、本説明の組成物は、以下の表1に開示される(アミノ酸の5mgの単回投与の小袋として表される)組成物を有する。
【0046】
表1のデータから、組成物全体に対してまたは、個々のアミノ酸それぞれに対してのどちらかで、個々のアミノ酸のモル比を計算することが可能である。
【0047】
さらなる好適な実施形態において、本説明の組成物は、以下の表2に開示される(アミノ酸の6651.00mgの単回投与の小袋として表される)組成物を有する。
【0049】
表2のデータから、組成物全体に対してまたは、個々のアミノ酸それぞれに対してのどちらかで、個々のアミノ酸のモル比を計算することが可能である。
【0050】
運動後の回復の間および昼の間の両方で、本明細書に開示され、特許請求されたアミノ酸組成物を選択的関節形成術を受けた患者に補給することは、そうでなければ中止され得たリハビリテーションを疼痛および筋肉痛の予想外の軽減のおかげで患者が続けることを可能にする。
【0051】
材料および方法
患者
選択的股関節形成術(EHA)後17±1.12日の68人の被験者が、リハビリテーションセンターへの入院の際にリクルートされた。回復時間の観点でより均一性を得るべく、患者は、彼らのもっていた外科的アクセスの種類(ラテラルアプローチ)に基づいて選択された。EHAの原因は、大腿骨骨頭の無菌性壊死(5%)、リウマチ性関節炎(1.6%)、先天的股関節異形成症(1.6%)、術前のX線により診断されたグレード3および4の変形性関節症(91.8%)であった。8人の被験者が、インシュリンおよび/または経口血糖降下剤を使用中の糖尿病(n=5)、甲状腺機能亢進症(n=1)、慢性腎疾患(n=2)のため、除外された。したがって、合計60人の患者が研究された。
【0052】
入院後2日目、患者は以下の手順を受けた。
a)身体測定:体重(BW;kg)および身長(m)。肥満度指数(BMI)はkg/m
2で計算された。
b)生物体液性の変数:
‐血清総タンパク質(g/dL)およびタンパク質電気泳動を含む定常変数
c)臨床機能状態:これはハリスヒップスコア(HHS)[1]を使用して測定された。これは、疼痛、跛行、支持、歩行距離、座位、公共交通機関の利用、階段、靴および靴下履き、変形が無いこと、可動域、に関連するいくつかの領域から成る検査であり、各領域のスコアの範囲は
図2に示される。この検査は、悪い(<70スコア)、十分(70‐79スコア)、良好(80‐89スコア)または、優れている(90‐100スコア)のように結果分類した。[2]
【0053】
これらの手順を行った後、患者は、本明細書に開示されたアミノ酸組成物(EAA)またはプラセボ(マルトデキストリン)を用いた14日間の補給にランダムに割り当てられた。
【0054】
14日間の治療は、患者に最大20日間の滞在を許可するリハビリテーションセンターの方針により規定された。
【0055】
リハビリテーションプロトコル このプロトコルは、変化した体のスタティクスの完全な機能回復および正常な歩行パターンの再獲得を取り戻すことを目的とした。リハビリテーションプログラムは、同一の理学療法士により補助された患者に対して、それぞれ45分続く、毎日2回の療法セッション(午前および午後)を含んだ。リハビリテーションサイクル全体は24セッションを含む。リハビリテーションプログラムは
1)3部分の屈曲運動(股関節、膝および足首)を伴う股関節の受動的可動化
2)手術した肢の内転筋および屈筋の伸張
3)殿筋の等張性収縮を使用する股関節伸展
4)1kgの抵抗に対する四頭筋の等張性収縮
5)歩行杖を使用した補助歩行トレーニングおよび階段のトレーニング
6)心肺能力の維持
から成った。
【0056】
患者および被験者の機能状態を評価した医師はプロトコルに対して盲検とした。患者の退院の2日前まで全手順が繰り返された。
【0057】
被験者がインフォームドコンセントをした後、地元の倫理科学委員会がプロトコルを承認した(マウゲリ財団科学年報2011年、118号、432ページ)。
【0058】
アミノ酸組成物(EAA#1)
実験群(EAA群)は、1日に10gの必須アミノ酸(患者の退院まで、コップに約半分の水で希釈され、午前に5g、さらに午後に5g)が提供される、本明細書の表3に開示された組成物(簡単に名付けてEAA#1)を受け取った。
【0060】
統計的分析
記述統計が、量的変数に対する平均および標準偏差ならびに質的変数に対する頻度の分布を報告して全ての記録された変数について行われた。カイ二乗検定が、カテゴリ変数に使用された。繰り返しの分散分析の測定が、EAAの患者またはプラセボの患者間の経時的な任意の傾向差の評価に使用された。患者と健常対象者との間およびEAA群とプラセボ群との間の血漿アミノ酸の差が、独立スチューデントt検定により分析された。リハビリテーションに入院および退院時に観察された患者集団全体の変数の差が、対応t検定により検査された。統計的有意性はp<0.05に設定された。
【0061】
結果
リハビリテーションに入院時の患者集団のベースライン特性
入院時、患者の35パーセント(n=21)が、感染症(主に尿路)に対して抗生物質療法を行っていた。70パーセント(n=42)は、急性期の間に輸血を受けていた。
【0062】
機能上、HHS検査により示されるように、患者は股関節機能の深刻な低下があった(40.78±2.70スコア)。検査において、疼痛に関連する領域は、患者に中等度の疼痛があったこと(19.5±1.7スコア)を示した。
【0063】
ランダム化後
a)入院時
ランダム化後、EAA群およびプラセボ群は、栄養状態、食事摂取量、感染症の合併症の分布(プラセボの40%、EAAの30%、非有意)について類似していた。プラセボ群と比較して、EAA被験者は、より低い血清トランスフェリン(p=0.04)および循環する全てのタンパク質(circulating total proteins)(p=0.04)を有した。股関節機能障害は、2つの患者群の間で類似していた(プラセボの39.78±4.89スコア対EAA群の41.80±1.15スコア、非有意)。検査において、疼痛に関連する領域を含む全ての領域が、プラセボ被験者とEAA被験者との間で類似していた。
【0064】
b)14日間の治療後
リハビリテーションの間、血中ヘモグロビンおよび血清トランスフェリンが増加した。ヘモグロビンについては、プラセボの+0.84±0.3mg/dL対EAA群の+0.87±0.19mg/dL、相互作用p=0.8であり、トランスフェリンについては、プラセボの+1.34±2.5mg/dL対EAA群の+11.45±3.1mg/dL、相互作用p=0.005であった。全ての他の測定された生物体液性の変数が、群内および群間の両方で著しい変化を示さなかった。
【0065】
全患者の股関節機能障害が改善した(ベースライン48.78±2.70から73.18±7.1スコア、p<0.001)。しかしEAA被験者はプラセボ群に対して、より改善した(ベースライン41.8±1.15から76.37±6.6スコア対39.78±4.89から70.0±7.10スコア)(相互作用p=0.02)、(
図1)。
【0066】
HHS検査において、EAA群は、プラセボ患者の疼痛の軽減(18.7±3.4から32.4±6.2スコア)よりも、より著しい疼痛の軽減(20±0から39.2±5.59スコアまで)を示した(相互作用p=0.01)。
【0067】
表4はEAA群およびプラセボ群についてのHHSならびに疼痛スコアを示す。
【0069】
1.Harris WH.Traumatic arthritis of the hip after dislocation and acetabular fractures:treatment by mold arthroplasty.An end−result study using a new method of result evaluation.J Bone Joint Surg Ann 1969;51:737−55.
【0070】
2.Marchetti P,Binazzi R,Vaccari V,Girolami M,Morici F,Impallomeni C,et al.Long−term results with cementless Fitek (or Fitmore) cups.J Arthroplasty 2005;20:730−7.