【実施例1】
【0012】
以下、本発明を圧縮空気方式の駆動源を利用した釘打込機に適用した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例では便宜上、止具が打込まれる方向を鉛直方向下向きとなるように打込機を設置した状態を基準にし、上下左右方向を図のように定義して説明するが、実際に釘を打ち込む方向は、水平方向又はその他の方向であっても可能である。
【0013】
図1は本実施例の打込機1の外観を示す斜視図である。打込機1は、射出方向側に打ち込まれる釘を案内するノーズ部材4がハウジング2の胴体部2aの下方に取り付けられる。打込機1の外殻(広義のハウジング)は、後述するピストンが往復動する空間を覆う略円筒状の胴体部2aと、胴体部2aから射出方向に略直交する方向に延在するハンドル部2bと、胴体部2aの軸方向の一端側(上側)の開口部を覆うトップカバー3と、胴体部2aの軸方向の他端側(下側)の開口部を覆うノーズ部材4により構成される。ハンドル部2bは作業者が把持する部分となるとともに、内部に圧縮空気の蓄圧室(図示せず)を収容する略円筒状の部分である。ハンドル部2bの後端にはコネクタ85が設けられ、エアホース86を介して外部の圧縮機(図示せず)から圧縮空気が供給される。ノーズ部材4は合金鋼素材に熱処理を施した材質が用いられ、内部にドライバブレード(後述)によって打ち込まれる釘が通過する射出通路(図示せず)が設けられる。また、ノーズ部材4の側面の一部には釘を順次給送するための開口部(図示せず)が設けられ、開口部を囲むように釘を供給するマガジン80の一端側が取り付けられる。
【0014】
マガジン80はその長手方向(給送方向)が、射出方向に対してわずかに斜めになるように配置され、釘の排出側となる端部がノーズ部材4に取り付けられ、釘の供給側となる端部がノーズ部材4と離れた側であって、ハンドル部2bの後方斜め上方に位置するように配置される。マガジン80は渦巻きバネ(図示せず)の引っ張り力により連結された図示しない釘をノーズ部材4側に給送する。図では、マガジン80の給送方向の後端部付近にまで、フィーダつまみ83が引かれた状態を示している。
【0015】
ノーズ部材4の先端にはプッシュレバー40が設けられる。プッシュレバー40はノーズ部材4に対して射出方向と同方向及び反対方向に所定の範囲で移動可能な可動機構でああって、ノーズ部材4の先端を被打込み材に向かって押し当てる動作に対応して上方に移動する。作業者は、プッシュレバー40を構成する先端部材41を、釘を打ち込む対象物(被打込み材)に押し当てた状況、かつ、トリガレバー11を引くという両方の操作により、往復運動を与える打撃駆動要素を起動させて釘を打ち込むことができる。
【0016】
ハンドル部2bの胴体部2aへの付け根付近下側には、トリガ10が設けられる。トリガ10の下方付近であって胴体部2a側には、プッシュレバー40の可動部分を覆うための合成樹脂製のガード部材45が設けられる。
図1では作業者が右手90でハンドル部2bを把持しての人差し指にてトリガ10を引く前の状態を図示している。ここで、本明細書ではトリガ10又はトリガレバー(後述)を引くという意味はトリガレバーを打込方向と反対側(上方)に移動させることを意味する。また、トリガ10のトリガレバーを開放又は離すという意味は、トリガレバーを図示しない付勢バネによって下方に移動させるということを意味する。
【0017】
図2は、本発明の実施例に係る打込機1の主要部の構造を示す縦断面図である。打込機1の外殻は、側面視が略T字形状をしたハウジング2と、ハウジングの円筒状の胴体部2aの片側(上側)の開口を覆うトップカバー3と、もう一方(下側)の開口に取り付けられるノーズ部材4と、ハウジング2の胴体部2aから略直交する方向に伸びるハンドル部2bとにより形成される。ハンドル部2bの内部及びトップカバー3の内部には、図示しない圧縮機からの圧縮空気を蓄積するための蓄圧室61が形成される。
【0018】
打込機1は、内部に、円筒状のシリンダ50と、シリンダ50内で上下に摺動(往復動)可能なピストン8と、ピストン8に接続されたドライバブレード9が設けられる。ドライバブレード9は、釘等の止具を打撃するためのものであって、円筒形のシリンダ50の下端側から下方に延在するように配置される。ドライバブレード9はピストン8と一体又は別体式に製造することができる。
【0019】
シリンダ50は、圧縮空気の力により下方向に僅かに移動可能であり、内面でピストン8を摺動可能に支持する。シリンダ50の下側外周には、ドライバブレード9を上死点に復帰させるための圧縮空気を貯める戻り空気室55が形成される。シリンダ50の軸方向中央部にはシリンダ50の内側からの外側の戻り空気室55への一方向にのみ圧縮空気の流入を許容する複数の空気穴51が形成され、そこには逆止弁52が備えられる。また、シリンダ50の下方には、戻り空気室55に常時開放されている空気通路53が形成される。シリンダ50の下端には、ピストン8の下方への急激な移動による釘打込み後の余剰エネルギーを吸収するため、ゴム等の弾性体からなり、中心にドライバブレード9が挿通する貫通孔を有するピストンバンパ57が設けられる。
【0020】
ピストン8は、シリンダ50内に上下方向に摺動可能に配設される。ドライバブレード9は、ピストン8の下面の略中心から下方に延びるように、ピストン8と一体的に形成される。よってシリンダ50内は、ピストン8によりピストン上室7aとピストン下室7bとに区画されることになる。ピストン8の上室7aは、シリンダ50の上端部が当接されるヘッドキャップ69の下に形成される。ヘッドキャップ69は、バルブ保持部材70の下側に設けられる。シリンダ50の外周には、シリンダ50を下方に付勢するスプリング54が設けられる。
【0021】
打込時において、トリガ10の操作によって第一スイッチ20及び第二スイッチ30がオンになると、蓄圧室61から高圧の空気が空間67に流入してエキゾーストバルブ68を下側に移動させてバルブ保持部材70の開口70aを閉鎖してピストン上室7aと大気とを連通させる空気通路66を閉鎖する。同時に第一スイッチ20及び第二スイッチ30がオンになると、蓄圧室61から高圧の空気がメインバルブ室56にも供給されるため、シリンダ50のフランジ部分50aの上面の圧力が急上昇し、シリンダ50を上向きに付勢しながら保持するスプリング54の力に抗して、シリンダ50が射出方向下側に僅かに移動する。するとシリンダ50の上側開口とヘッドキャップ69との間に離れて隙間ができるため、蓄圧室61からピストン上室7aに圧縮空気が一気に流入する。この圧縮空気の流入によってピストン8とともにドライバブレード9が急激に下降し、ドライバブレード9が射出通路4b内を摺動して、射出通路4b内に給送されている図示しない釘を被打込み材に対して打ち込む。
【0022】
ノーズ部材4は、ドライバブレード9が図示しない釘に好適に接触し、被打込み材の所望の位置に打ち込むことができるように、釘及びドライバブレード9をガイドする。ノーズ部材4は、釘及びドライバブレード9がガイドされる射出通路4bを内部に有する筒状部分4aと、胴体部2aの下側の開口部を閉鎖するフランジ部分4cによって構成される。また、射出通路4bの外面にそって上下方向に移動可能なプッシュレバー40が設けられる。射出通路4bは上端のフランジ部分4cに設けられた貫通穴から下端の図示しない射出口まで延びるように形成され、その経路の途中にはマガジン80から釘を給送するための図示しない給送口が設けられる。
【0023】
マガジン80はハンドル部2bに並んで配置される。マガジン80内には帯状に連結された連結釘(図示せず)が装填され、その連結釘はマガジン80内に装着された巻き取りバネ等によって射出通路4b側へ押圧されて、ドライバブレード9によって一本ずつ被打込み材へ打ち込まれる。
【0024】
ハンドル部2bは、作業者により把持される部分である。ハンドル部2bの打込機1との接続部分には、
図2に拡大して示すように、作業者によって操作されるトリガ10と、蓄圧室61(
図1参照)に連通して圧縮空気の通路の開放又は遮断を行う第一スイッチ20と、一方が第一スイッチ20の出口側と連通され他方がメインバルブ室56に通じる通路に連通する第二スイッチ30が設けられる。第一スイッチ20と第二スイッチはそれぞれ空気の流れを許容又は遮断する開閉弁を含んで構成される。
【0025】
トリガ10は、作業者により直接操作される機構であって、第一スイッチ20のトリガプランジャ21を介してトリガバルブ(後述)の開閉の切替えを行う。ここでは、トリガ10は揺動軸12を中心に所定の角度だけ揺動可能なようにハウジング2に軸支されるが、トリガ10は上下方向に平行移動するようなスライド式のものであっても、その他の移動可能な部材を用いてトリガプランジャ21を操作するように構成しても良い。
【0026】
第二スイッチ30は、プッシュレバー40により第一スイッチ20からメインバルブ室56への圧縮空気の流入を許容又は遮断するプッシュレバーバルブ(後述)を含んで構成される。プッシュレバー40は矢印48の方向に移動可能であって、プッシュレバー40の先端部材41の矢印48の移動が連結アーム42を介して第二スイッチ30側のプッシュレバープランジャ31の上下方向の移動として伝達される。プッシュレバー40は、先端部材41と連結アーム42と接続部材43とスリーブ44にて構成される。これらは別体部品であっても、一部が又は全部が一体に構成されていても良い。またプッシュレバー40の構成は、ノーズ部材4を被打込材に押し当てた際に第二スイッチ30を操作できれば、いくつかの部品を減らしても、他の部品を追加して構成しても良い。第二スイッチ30は、打込機1の本体が被打込み材に押しつけられてプッシュレバー40が後退した位置、即ち先端41aが上死点位置になるように移動した際に第一スイッチ20側からメインバルブ室56側への圧縮空気の流入を許容する。プッシュレバー40が通常の位置(下死点位置)にあるときには、第二スイッチ30は遮断状態となる。
【0027】
次に
図3を用いて第一スイッチ20と第二スイッチ30の動作について説明する。ハウジング2のハンドル部2bの付け根付近の下部には、下から上方向に延びる2つの円筒穴2c、2dが形成される。円筒穴2cの内部第一スイッチを構成する弁機構が収容され、円筒穴2dの内部は細い径部分と太い径部分が形成され、第二スイッチを構成する弁機構が収容される。ここではそれぞれの通路を開閉する弁の移動方向が平行であって、かつ、釘の射出方向とも平行となるように配置される。
【0028】
図3(1)は、第一スイッチ20と第二スイッチ30がOFF状態(空気通路を遮断している状態)を示し、(2)が第一スイッチ20と第二スイッチ30がON状態(空気通路を連通している状態)を示している。第一スイッチ20と第二スイッチ30は直列に接続され、蓄圧室61に溜められた圧縮空気を矢印62の方向に流入させる。第一スイッチ20がON(連通状態)になると、第一スイッチ20を通過した空気は、矢印63のように空気通路58を通って第二スイッチ30側の第二バルブ室36に流れる。第二スイッチ30がON(連通状態)になると第二スイッチ30の弁機構たるプッシュレバーバルブ34を通過した圧縮空気は開口部33aから空気通路38側に矢印64のように排出され、その後所定の経路を通って
図2に示したエキゾーストバルブ68及びメインバルブ室56側に流入する。このように蓄圧室61側の圧縮空気は、直列に接続された2つのスイッチ手段(空気流を遮断する弁機構)を通過することによって打撃駆動手段たるピストン8による駆動動作の起動を制御する。
【0029】
第一スイッチ20は、略円筒状のトリガブッシュ23と、トリガブッシュ23内に配置されたトリガプランジャ21と、略球状の弁部材25によって主に構成される。トリガブッシュ23は下側付近の外周側に形成された雄ねじ23bによって円筒穴2cに形成された雌ねじにネジ止めされる。トリガブッシュ23の上端部分にはパッキン29が介在される。弁部材25は、蓄圧室61及び空気通路58と連通する第一バルブ室26内に収容されもので、略円筒状のトリガブッシュ23の内径部分に形成された段差状の開口部24を開放又は閉鎖することにより、空気の通路を遮断又は開放する。開口部24は、第一バルブ室26から下方に開口する段差部分の縁部である。開口部24の径は、弁部材25の径より小さい。弁部材25は蓄圧室61側の圧縮空気の作用により矢印62のように常時付勢され。従って、弁部材25が貫通穴27を介して蓄圧室61内の圧縮空気の圧力により下方の圧力を受けると、弁部材25が開口部24に係止され、第一バルブ室26が閉鎖される。すなわち、第一スイッチ20が閉鎖状態(OFF)となる。
【0030】
トリガプランジャ21は、弁部材25の下方において、上下に移動可能なように保持される。トリガプランジャ21の先端部21cは弁部材25を移動させる作用片であり、中央付近には軸方向に垂直な断面形状が略十字形の形状とされた十字部21bが形成され、トリガプランジャ21の円筒形の内壁部分と所定の空間を有するため軸方向に空気の流れを許容する。そのため開口部24が開放されるとトリガプランジャ21の軸方向に空気が流れて開口部28から空気通路58側に排出される。トリガプランジャ21は、トリガ10(
図1参照)により下端部が上方向に押圧されると、第一スイッチ20の弁部材25を上方向に圧縮空気の圧力に抗して押圧し、第一スイッチ20を開放状態にする。
図3(2)のようにトリガ10の操作による押圧力によってトリガプランジャ21が上方に移動すると、弁部材25が蓄圧室61内の圧縮空気に抗して上方へ移動するため、開口部24から離れ、これにより遮断されていた開口部24が開口される。すなわち、第一スイッチ20は開放状態(空気流路のON状態)となって、矢印62から矢印63の方向に空気が流れる。
【0031】
第二スイッチ30は、円筒穴2dに圧入された略円筒状のプッシュレバープランジャ31と、プッシュレバープランジャ31内に配置されたプッシュレバーバルブ34と、プッシュレバーバルブ34を所定の方向に付勢するコイル状のプランジャスプリング35によって主に構成される。プッシュレバーバルブ34は、プッシュレバー40の動作に応じて空気通路58から空気通路38への圧縮空気の流入の遮断又は流通を切り替える弁である。プッシュレバーブッシュ33は、略上下に延びて内部に通路を有する管状に形成される。第二バルブ室36は、プッシュレバーブッシュ33の移動空間のなる筒状の空間で、その上端に形成された開口37には、プッシュレバーバルブ34のフランジ状の部分が当接することにより空気の流れを遮断し(
図3(1)の状態)、離れることにより空気の流れを許容する(
図3(2)の状態)。開口37の下方には円筒状の空間内の外周側には開口部33aが形成される。開口部33aは空気通路38と第二バルブ室36とを連通させるものである。そして、プッシュレバーバルブ34の下側のプッシュレバー40側には、プッシュレバープランジャ31が下降した際に上端31aとの間に空間が生じ、プッシュレバープランジャ31の壁面には圧縮された空気を大気中に放出するための排気口39が形成される。
【0032】
プッシュレバーバルブ34は、上下方向に移動し、プッシュレバーブッシュ33の上端の開口37を開放または閉鎖する。プッシュレバーバルブ34は、円筒状のプッシュレバーブッシュ33の上側の空間内にその半分程度が収容され、開口37を閉鎖又は開口するように移動する。ここで
図4の斜視図を用いてプッシュレバーバルブ34の形状を説明する。プッシュレバーバルブ34は上側に円柱部34aが形成され、軸方向の中央付近にフランジ部34bが形成され、下側部分は外周面を内側に大きく窪ませた窪み部34dが形成される。この窪み部34dとプッシュレバーバルブ34の内壁面との隙間を介して空気が第二バルブ室36から開口部33a(
図3参照)に流れることになる。また、フランジ部34bの下側にはOリング等のシール部材を配置するための周方向に連続した溝部34cが形成される。円柱部34aはコイル式のプランジャスプリング35の内側に配置される。このようにして、フランジ部34bの下側面が段差状の開口37の上面に接する状態(
図3(1)の状態)で、第二スイッチ30の流路を閉鎖状態とすることができる。プッシュレバーバルブ34は、プランジャスプリング35により下方向へ付勢される。再び
図3に戻る。
【0033】
プランジャスプリング35は、一端部がハウジング2側にて保持され、他端部はプッシュレバーバルブ34のフランジ部分の上面に当接することによりプッシュレバーバルブ34を下方向に付勢する。プッシュレバープランジャ31は、プッシュレバー40とともに上下に移動し、プッシュレバーバルブ34を移動させるものである。プッシュレバープランジャ31の下端はフランジ状に径が広がるフランジ部31bが形成され、フランジ部31bの上面とプッシュレバーブッシュ33の下端面33bにはコイル式のスプリング32が介在され、プッシュレバープランジャ31を下方向に付勢する。
【0034】
プッシュレバー40と協働した状態でトリガ10を引き操作すると、蓄圧室61内に溜められた圧縮空気は、第一スイッチ20と第二スイッチ30を介してメインバルブ室56とエキゾーストバルブ68(共に
図2参照)に供給されるため、シリンダ50内に大量の圧縮空気が流入し、ピストン8を上死点から下死点に駆動する。これによって、ピストン8に固定されたドライバブレード9は、マガジン80から射出通路4bに給送された先頭の釘(図示せず)を打撃し、ノーズ部材4の先端から被打込み部材の中へ打込む。釘打込み後にトリガ10またはプッシュレバー40のいずれか一方を開放することにより第一スイッチ20又は第二スイッチ30のいずれかがOFF状態となるので、蓄圧室61側からシリンダ50への圧縮空気の供給は直ちに遮断される。
【0035】
本実施例では、前提として第一スイッチ20と第二スイッチ30の2つのスイッチ(バルブ機構)を用いてトリガ操作を実現しているが、トリガ10の構成を工夫することにより、トリガ10の引き操作毎に止具を打込む“単発打込みモード”と、トリガ10の引き操作を維持した状態で打込機1本体を上下動させて止具を連続して打込む“連発打込みモード”とを実現した。双方のモードにおいては、プッシュレバー40が被打込み材に押し当てられている状態、つまりプッシュレバー40が上死点に位置しない限り打撃動作は行われない。
【0036】
“単発打込みモード”では、1回の打込みが終了したら、一旦トリガ10を離してトリガオフ状態としたのちに、再びトリガレバー11を引かない限り次の打込みは行われない(もちろん次の打込み動作時にプッシュレバー40が被打込み材に押し当てられている状態であることは必須条件である)。つまり、作業者が1回目の打込みを完了したあとにトリガ10を戻さずに引いた状態のままで、打込機1本体を移動させて被打込み材の次の打込み位置にプッシュレバー40を押し当てたとしても、第一スイッチ20はオン状態にはならないように構成した。このように“単発打込みモード”は、釘1本の打込みを終了したら必ずトリガ操作の解除が必要となる。
【0037】
“連発打込みモード”では、作業者が1回目の打込みを完了したあとにトリガ10を戻さずに引いた状態のままで、打込機1本体を移動させて被打込み材の次の打込み位置にプッシュレバー40を押し当てるとその時点で釘の打込みをおこなうことが可能となる。このため本実施例では、作業者が打込みを完了したあとにトリガレバー11を戻さずに引いた状態のままの場合は、第一スイッチ20のON状態を維持したままとし、第二スイッチ30側で圧縮空気の流れを開放及び遮断できるようにした。
【0038】
次に
図5〜
図7を用いてトリガ10の構造を説明する。
図5はトリガ10の構造を示す縦断面図である。
図5(1)のトリガアーム13の位置が、トリガレバー11の操作によりトリガプランジャ21が動作しない(操作できない)第一の位置であり、(2)のトリガアーム13の位置がトリガレバー11の操作によりトリガプランジャ21が動作する(操作できない)第二の位置である。トリガ10は主にハウジング2側に軸支されるトリガレバー11と、トリガレバー11に対して所定角度だけ相対的に移動(回動)可能なトリガアーム13と、可動部材たるトリガアーム13の移動角を制限するための細長いピン状のチェンジロッド16を含んで構成される。トリガレバー11には側面視で略L字形状の案内溝15が形成され、チェンジロッド16は案内溝15内で、回動軸14と平行状態を維持したまま平行移動が可能とされる金属製の切替部材である。ここでは回動軸14の軸方向に見て
トリガアーム13の揺動範囲と案内溝15の一部が重複する位置関係にある。チェンジロッド16によってトリガアーム13を第一の位置と第二の位置間で可動とする単発位置と、前記可動部材を第二の位置に固定する連発位置のいずれかを設定できる。トリガレバー11の基本構成は、回転中心を有する揺動軸12(
図1参照)を保持する穴部11cと、作業者によるトリガ10の引き操作を行うための操作部11aにより主に構成される。打込時において、操作部11aは、作業者の引き操作により揺動軸12を中心に動作するように設けられた捻りコイルバネ18(後述の
図8参照)の付勢力に抗して揺動軸12を中心として反時計回り方向、すなわち上方向に移動する。
【0039】
本実施例のトリガ10では、トリガレバー11の揺動半径内において回動軸14が設けられ、回動軸14から小さい揺動半径分で揺動可能なトリガアーム13を設けた。揺動軸12(
図1参照)からトリガレバー11が延びる方向と、回動軸14からトリガアーム13の主面部分(上面13a)が伸びる方向は反対方向となる。トリガアーム13は“単発打込みモード”の際には回動軸14を中心に、
図5(1)の状態から(2)の状態の範囲内で揺動可能である。この揺動はプッシュレバー40と連動して移動する部分(
図8にて後述するスリーブ44)に当接することにより行われ、矢印74の方向に移動する。トリガアーム13は、上面13aにおいてトリガプランジャ21と当接するが、
図5(2)の状態ではトリガプランジャ21を移動させることができるが、
図5(1)の状態ではトリガレバー11の上端位置と上面13aの上面位置が離れていて、距離Hだけ隔てる窪みとなるので、この窪みの存在によってトリガプランジャ21を押すことができない。このように“単発打込みモード”の際に、トリガアーム13が(1)の第一位置と(2)の第二の位置をとれるように構成し、最初の打撃の際に(2)の状態でトリガプランジャ21を押し込んで打込み動作を行ったら(1)の状態に戻るようにして、一旦トリガレバー11を離して再度トリガレバー11を引かない限りトリガアーム13が(2)の状態にならないようにした。このように構成すれば、“単発打込みモード”では、かならず打込み後にトリガレバー11を元の位置に戻してから、再度トリガレバー11を引く必要があることになる。一方、“連発打込みモード”を実現するには、トリガアーム13の位置を
図5(2)の位置にて固定したままの状態を維持すれば良い。このため、チェンジロッド16を案内溝15の内部で後方側から前方側に移動させるが、この動作は
図7にて後述する。
【0040】
図6はトリガ10の単体を斜め上側から見た状態を示す斜視図である。トリガレバー11の揺動軸12(
図1参照)側の先端部は、左右両方向に略平行に延びる板状のアーム部11bになっており、2つのアーム部11bには揺動軸12を固定するための穴部11cが形成される。トリガレバー11の側面には略L字形状の案内溝15が形成され、案内溝15の内部に円柱状であって両端部がフランジ状になっているチェンジロッド16が配置される。チェンジロッド16はストッパ17により、案内溝15の一方の端部(
図5の状態)と他方の端部(後述する
図6(3)の位置)の間を矢印77のように移動可能であり、いずれかの端部側で保持される。
【0041】
トリガアーム13はトリガプランジャ21と当接又は離反する上面13aと、後側から指で押すことによりトリガアーム13を回動させることができるように後片13bが形成される。ここでは図示していないがトリガアーム13を所定の方向、例えば
図5(1)の第一の位置に移動するように付勢するバネ手段を設けると良い。ストッパ17はトリガアーム13と同軸上に軸支され、図示しない捻りコイルバネの作用により回動軸14を回転中心に一方側(後述する
図7の矢印19cの方向)に付勢される。ストッパ17は作業者が後方片17bを押すことにより、又は回動軸14の周囲に露出する部分を指で動かすことにより回動させることができる。トリガレバー11の後方側の両側側面にはトリガアーム13とチェンジロッド16とを軸支する回動軸14を固定するための回動軸穴11dが形成される。
【0042】
次に
図7を用いて“単発打込みモード”と“連発打込みモード”の切替方法について説明する。
図7(1)は
図5(1)で示した“単発打込みモード”の状態で、チェンジロッド16は単発位置にあり、トリガアーム13は図示しないバネの付勢力により矢印19a部分で操作部11aの上面19aと当接した状態にある。また、チェンジロッド16は、揺動軸12から一番離れた後方端に位置する。ここで、作業者がストッパ17を矢印19bのように移動させてトリガアーム13の後片13b(
図5参照)を矢印19dの方向に押すことによって、トリガアーム13が図中で時計方向に回転して(2)の位置になる。その状態で作業者はチェンジロッド16を矢印19cの方向に移動させて、ストッパ17の矢印19bへの方向の付勢を解除する。するとストッパ17は図示しない捻りコイルバネの作用により、矢印19cのように反時計回りに回動して
図7(1)に示す元の位置に戻る。この回動の結果、ストッパ17の前方片17aがチェンジロッド16の後に位置することになるのでチェンジロッド16の位置が案内溝15の前方側にて維持され、
図7(3)の状態になる。この状態は“連発打込みモード”の位置で、チェンジロッド16は連発位置にあり、トリガレバー11を操作することでトリガアーム13の上面13aによって確実にトリガプランジャ21を移動させることができる。
【0043】
図7(3)の状態から再びストッパ17を矢印19bの方向に回転させると、側面視で案内溝15の内部からストッパ17の前方片17aが上側に待避するために、作業者は矢印のようにチェンジロッド16を前方から後方側に移動させることができ、その結果、
図7(1)の状態に戻る。このようにしてストッパ17を矢印19bのように操作して回動させた状態でチェンジロッド16を前方端又は後方端に移動させることによって打込みモードの切替えを行うことができる。また、打込み切替機構は、トリガアーム13と、回動軸14と、ストッパ17と図示しないスプリングによって実現できるので、トリガ10部分の改良をするだけで容易に本実施例の打込み切替機構を実現できる。
【0044】
次に、
図8〜
図13を用いて、打込動作時のトリガ10、第一スイッチ20、第二スイッチ30の動作を説明する。
図8は、チェンジロッド16を案内溝15内の
図7(3)の位置にセットして“連発打込みモード”とした場合の動作を示す図である。
図8(1)はトリガ10が引かれてなく(OFF)、プッシュレバー40も被打込み材に押し当てられていない状態である(OFF)。この状態から、最初にトリガレバー11を矢印75の方向に引いたのが
図8(2)の状態である。ここではチェンジロッド16が案内溝15の前方側に位置するために、トリガアーム13が上側に移動したままのため、トリガアーム13の上面13aによってトリガプランジャ21が上側に移動した状態となる。そして、トリガプランジャ21によって弁部材25が上側に移動して開口部24から離れるため、第一スイッチ20が連通状態(ON状態)となる。
【0045】
次に、打込機1の本体を移動させてプッシュレバー40の先端部材41を被打込み部材に押し付けると、プッシュレバー40の連結アーム42が矢印76aのように上側に移動するためプッシュレバープランジャ31がプッシュレバーバルブ34を上方に移動させることにより開口37が連通するので、矢印64の方向に圧縮空気が流れるので、釘を打つことができる。このように、
図8(1)から(2)のようにトリガレバー11を先に引いた場合であっても、(2)から(3)のようにプッシュレバー40を被打込み部材に押し付けることにより第一スイッチ20及び第二スイッチ30ともにオン状態(バルブが開放された状態)となるため、釘の打撃を行うことができる。
【0046】
釘の打撃が行われるとその反動によって打込機1が打込方向と反対側に移動する反力が伝わるので、その反力によりプッシュレバー40が被打込み材から離れるため、
図8(2)の状態に戻る。しかしながら、トリガレバー11を引いたままの状態を保って打込機1の本体を移動させて次の打撃位置にてプッシュレバー40を被打込み材に押しつけることにより、矢印64のように圧縮空気がトリガ機構から排出されるため、釘の打撃が行われる。以降、トリガレバー11の引き操作を維持した状態でプッシュレバー40を被打込み部材に押し当てる動作と開放する動作を繰り返すという
図8(2)と(3)の状態を繰り返すことにより、トリガレバー11を離すまで連続的に釘を打つことができる。
【0047】
次に
図9及び
図10を用いて“連発打込みモード”において、プッシュレバー40を被打込み材に先に押しつけた場合の打撃方法について説明する。ここで
図9(1)はトリガ10が引かれてなくて(OFF)、プッシュレバー40も被打込み材に押し当てられていない状態である(OFF)。この状態から、先にプッシュレバー40を被打込み材に押し当てた状態を示すのが
図9(2)である。この状態では第二スイッチ30側はオンとなるが、トリガレバー11が引かれていないので第一スイッチ20側はオンになっていない。次に作業者はトリガレバー11を矢印75の方向に引くと、トリガプランジャ21はトリガアーム13の上面によって押されることにより弁部材25が上方に移動して開口部24が連通状態となり第一スイッチ20側もが連通状態(ON状態)となる。このように、
図9(1)から(3)のようにプッシュレバー40を先に被打込み材に押し当てた場合であっても、トリガレバー11を矢印75の方向に引くことによって
図9(3)のように第一スイッチ20及び第二スイッチ30ともにオン状態(バルブが開放された状態)となるため、釘の打撃を行うことができる。
【0048】
釘の打撃が行われるとその反動によって打込機1が打込方向と反対側に移動する反力が伝わるので、その反力によりプッシュレバー40が被打込み材から離れるため、
図10(4)のようにプッシュレバー40はスプリング46(
図2参照)の付勢力により矢印76bの方向に移動する。しかしトリガレバー11を引いたままの状態であれば、トリガアーム13の位置が第二の位置にとどまることにより第一スイッチ20を操作可能状態に維持する。この結果、打込機1の本体を移動させて次の打撃位置にてプッシュレバー40を被打込み材に押しつけることにより、
図10(5)のように次の打撃を行うことができる。以降、
図10(4)と(5)の状態を繰り返すことにより、トリガレバー11を離すまで連続的に釘を打つことができる。
【0049】
次に
図11を用いて“単発打込みモード”における動作を説明する。
図11の状態ではチェンジロッド16の位置が
図8〜
図10の位置と異なって案内溝15の後方側に位置する。この“単発打込みモード”においては、プッシュレバー40を被打込み材に押して付けてからトリガレバー11を引くと打撃を行うもので、プッシュレバー40を引く順序を逆にすると打撃を行わない。
図11ではこの逆にした状況を示すもので、
図11(1)ではプッシュレバー40とトリガレバー11の双方がOFF状態にある。この状態で先にトリガレバー11を引いても、
図11(2)に示すようにトリガアーム13が図中で反時計回りに回動したままなので、トリガプランジャ21を押すことができずに、第一スイッチ20を連通状態(ON状態)にすることができない。さらに、この状態でプッシュレバー40を被打込み材に押しつけて連結アーム42が矢印76aのように移動しても、
図11(3)に示すように略円筒状のスリーブ44の上端部44aがトリガアーム13の揺動端部となる先端部13cと非接触状態であって干渉しないため、トリガアーム13は揺動せずに位置はそのままである。従って、第二スイッチ30側は接続状態になるものの、第一スイッチ20側が遮断されたままであるので、打込動作は実行されない。このように“単発打込みモード”では、プッシュレバー40を被打込み材に押し当ててから、トリガレバー11を引くという操作をしないと打撃動作ができないので、作業者の意図に反して連発が行われてしまう恐れがない。
【0050】
次に
図12及び
図13を用いて“単発打込みモード”における打撃動作を説明する。
図12、
図13の状態ではチェンジロッド16の位置が案内溝15の後方側に位置する。
図12及び
図13では“単発打込みモード”において、プッシュレバー40を被打込み材に押して付けてからトリガレバー11を引くという正しい操作を示すもので、
図12(1)ではプッシュレバー40とトリガレバー11の双方がOFF状態にある。この状態で先にプッシュレバー40を被打込み材に押しつけると、
図12(2)に示すように連結アーム42が矢印76aのように上方向に移動し、第二スイッチ30がオンになる。この際、プッシュレバー40に接続されるスリーブ44の上端部44aがトリガアーム13の先端部13cを下側から上側に押し上げることによりトリガアーム13が回動軸14を中心に時計回りに回動する。この状態でトリガレバー11を引くと、
図12(3)に示すようにトリガアーム13はスリーブ44の上端部44aとの干渉によって上側に位置したままとなり、トリガプランジャ21を押すことができ第一スイッチ20側もONとなり打撃が行われる。
【0051】
釘の打撃が行われるとその反動によって打込機1が打込方向と反対側に移動する反力が伝わるので、その反力によりプッシュレバー40が被打込み材から離れるため、
図13(4)に示すようにプッシュレバー40はスプリング46(
図2参照)の付勢力により矢印76bの方向に移動し、
図13(4)の状態を経由して
図13(5)の状態に戻る。この際、
図13(4)のようにスリーブ44が下降することによってスリーブ44の上端部44aとトリガアーム13の先端部13cの係合状態が外れて、
図13(5)の状態では作業者がトリガレバー11を引いたままの状態であるにもかかわらず、トリガアーム13が図中で反時計回りに回動するためトリガプランジャ21が下降して第一スイッチ20がOFFになる。ここでトリガレバー11を戻せば
図12(1)の状態に戻るが、戻さないまま打込機1の本体を移動させて次の打撃位置にてプッシュレバー40を被打込み材に押しつけとしても、
図13(6)のようにスリーブ44の上端部44aがトリガアーム13の先端部13cと非接触状態であって干渉しないため、トリガアーム13は回動することができずに位置はそのままである。従って、第二スイッチ30側は接続状態になるものの、第一スイッチ20側が遮断されたままであるので、打撃動作は実行されない。このように“単発打込みモード”では、プッシュレバー40を被打込み材に押し当ててから、トリガレバー11を引くという操作をしないと打撃動作ができない上に、打撃終了後は一旦トリガレバー11を戻さないと次の打撃動作が実行できないようにしたので、確実に単発打ちをおこなうことができる。
【0052】
本実施例によればトリガレバー11側に打込み切替機構を設けたので、トリガ10だけを変更するだけで容易に本発明の構成を実現できる。また、打込み切替機構はトリガアーム13とチェンジロッド16と、案内溝15により構成できるので、簡単な機構によって小型の切替え機構を実現できる。
【0053】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では回動軸14に設けられる揺動式のトリガアームを用いて打込み切替機構を実現したが、その他の可動式の部材、例えばスライド式の可動部材をトリガアームとして、そこに切替え機構を設けるようにしても良い。また、上述の実施例では打撃駆動要素として圧縮空気を用いるもので説明したが、燃焼式のガスや電気モータを用いるようにして、第一スイッチ及び第二スイッチを電気スイッチ機構により実現するようにしても良い。