(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ塩化ビニル樹脂製フロアシート上に、乾燥した後の樹脂の膜厚が10μmになるように塗布し、150℃で一定時間放置した後に室温まで冷却させながら24時間乾燥させて得られた塗膜が下記の性質を示す、請求項1に記載の複合樹脂水性分散体。
(耐エタノール性)
得られた塗膜に、エタノールを染み込ませた脱脂綿を置き5分間静置の後、脱脂綿を取り除き、脱脂綿を置いた場所の塗膜外観を目視により評価したときに塗膜の膨潤や白化が観測されない。
(耐黒色ゴム汚染性)
得られた塗膜をJIS K3920記載のカーボンブラック配合の黒色ゴムブロック体を用いて5往復擦り、塗膜上の黒色ゴム痕を目視により評価したときに、黒色ゴムの擦り痕が3往復目以内に観察されない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[複合樹脂水性分散体]
本発明の「複合樹脂水性分散体」は、「ポリウレタン樹脂(A)」と「アクリル系重合体(B)」とが水性媒体中に分散されている複合樹脂水性分散体であって、少なくとも、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されたアクリル系重合体(B)とからなるものである。
ここで、「ポリウレタン樹脂(A)に内包されたアクリル系重合体(B)」の「内包」とは、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが完全に分離・独立して水性媒体に分散している状態以外を広く意味する。具体的には、アクリル重合体の一部またはほとんどがポリウレタン樹脂に包含されている状態を意味し、より具体的には、複合樹脂粒子(複合樹脂水性分散体に分散している粒子)の中にアクリル重合体が存在していることを意味する。
また、複合樹脂水性分散体の機能や特性を損なわない範囲において、アクリル重合体の一部が部分的に複合樹脂粒子(複合樹脂水性分散体に分散している粒子)の外にいても良い。また、複合樹脂粒子中にアクリル重合体の存在位置は、特に限定されず、中心付近または中心付近からずれた任意の位置に、単一または複数に分離して存在していても構わない。
【0012】
[ポリウレタン樹脂(A)]
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを反応させて得られるものであり、少なくとも下記式(1)、式(2)、及び式(3)で示される繰り返し単位を含むものである。
なお、ポリウレタン樹脂(A)中の酸性基は、水系媒体への分散性の観点から、中和剤により中和されているのが望ましい。
【0014】
(式中、Zは炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基を示し、nは式(1)の繰り返し単位を示し、nは式(1)の繰り返し単位を示す。
Rは炭素原子数2〜12の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜12の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素原子数6〜18の二価の芳香族炭化水素基を示す。
AGは酸性基を示し、Xは炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。)
【0015】
(式(1)で示される繰り返し単位)
前記式(1)で示される繰り返し単位は、ポリウレタン樹脂を合成する際に使用する
ポリカーボネートポリオールに由来する構成成分である。
式(1)中、Zは炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基を示し、nは式(1)の繰り返し単位を示し、nは繰り返し単位を示す。
【0016】
前記「炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数6〜18の環状脂肪族炭化水素」から2つの水素を除いた基を示し、例えば、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ジメチレンシクロヘキシレン基(メチレン−シクロヘキシレン−メチレン基)などが挙げられる。
なお、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0017】
なお、nは式(1)の繰り返し単位数であり、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量に寄るが、好ましくは1〜40、更に好ましくは2〜30、より好ましくは3〜25である。
【0018】
なお、ポリカーボネートポリオールは、機能や特性を損なわない程度において、エステル結合やエーテル結合を有していても良い。エステル結合を有することにより、ポリウレタンとした際の相溶性が増すことが予想される。また、エーテル結合を有することによって、ポリウレタンとした際の柔軟性がより増すと予想される。
【0019】
(ポリカーボネートポリオールの数平均分子量)
本発明のポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、目的に応じて適宜調整するが、好ましくは500〜10000、更に好ましくは500〜8000、より好ましくは500〜6000である。
なお、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0020】
(式(2)で示される繰り返し単位)
前記式(2)で示される繰り返し単位は、ポリウレタン樹脂を合成する際に使用する
ポリイソシアネートに由来する構成成分である。
式(2)中、Rは炭素原子数2〜12の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜12の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素原子数6〜18の二価の芳香族炭化水素基を示す。
【0021】
前記「炭素原子数2〜12の直鎖状の二価の脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数2〜12の直鎖状の脂肪族炭化水素」から2つの水素を除いた基を示し、例えば、エチレン基、トリメチレン基(プロピレン基)、テトラメチレン基(ブチレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基などが挙げられるが、好ましくはテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基である。
なお、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0022】
前記「炭素原子数3〜12の二価の分岐状脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数3〜12の分岐状脂肪族炭化水素」から2つの水素原子を除いた基を示し、例えば、2−メチル−1,3−トリメチル基、2−又は3−メチル−1,5−ペンチル基、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレン基、1,5−ヘキシレン基などが挙げられる。
なお、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0023】
前記「炭素原子数6〜18の二価の環状脂肪族炭化水素基」とは、「炭素原子数6〜18の環状脂肪族炭化水素」から2つの水素を除いた基を示し、例えば、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ジメチレンシクロヘキシレン基(メチレン−シクロヘキシレン−メチレン基)、4,4’−メチレンビスシクロヘキシル基、イソホロン基などが挙げられる。
なお、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0024】
前記「炭素原子数6〜18の二価の芳香族炭化水素基」とは、「炭素原子数6〜18の芳香族炭化水素」から2つの水素原子を除いた基を示し、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、テトラメチルキシリレン基、4,4’−ジフェニレンメチレン基などが挙げられる。
なお、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0025】
(式(3)で示される繰り返し単位)
前記式(3)で示される繰り返し単位は、ポリウレタン樹脂を合成する際に使用する
酸性基含有ポリオールに由来する構成成分である。
式(3)中、AGは酸性基を示し、Xは炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
【0026】
前記「酸性基」とは、水系媒体中でプロトン(H
+)を放出することで親水性を付与することができる基であれば特に限定されないが、例えば例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、好ましくはカルボキシル基である。
【0027】
前記「炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を示すが、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。
なお、これらの基は、各種異性体を含み、異なる繰り返し単位が複数種含まれていても良い。
【0028】
(中和剤)
前記「中和剤」としては、ポリウレタン樹脂中の酸性基を中和できるものならば特に限定されないが、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノイソプロピルアミン、モノブチルアミンなどの一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、モルホリンなどの二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの三級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩が挙げれるが、ポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基との反応を抑止しつつ、ポリウレタン樹脂によるコーティングの容易さの観点から、好ましくは三級アミン、更に好ましくはトリアルキルアミンが使用される。
なお、これらの中和剤は、二種以上を併用しても良い。
【0029】
(ポリウレタン樹脂(A)の合成)
「ポリウレタン樹脂(A)」は、式(1)で示される繰り返し単位を有するポリカーボネートポリオール、式(2)で示される繰り返し単位を有するポリイソシアネート、及び式(3)で示される繰り返し単位を有する酸性基含有ポリオールを反応させた後、酸性基を中和剤により中和することによって製造できる(以下、「ウレタン化反応」と称することもある。)。
その反応形態は特に限定されず、公知のワンショット法やプレポリマー法を適宜選択できる。
【0030】
具体的には、例えば、
ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを、溶媒の存在下、または非存在下で反応させてウレタンプレポリマーとする工程;
前記プレポリマー中の酸性基を中和剤により中和する工程;
中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程;
水系媒体に分散されたプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程;
を順次行うことによって製造することができる。
なお、各工程では、必要に応じて触媒を使用することで、反応を促進させたり、副生成物を制御することができる。
この製造方法を採用することにより、ポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基を損なうことなく、塩基により酸性基を含有するポリウレタン樹脂の酸性基を十分に中和することができ、かつ分散性が良好な水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
【0031】
(ポリカーボネートポリオール)
本発明のウレタン化反応において使用するポリカーボネートポリオールは、式(1)で示される骨格を有するものであるが、このようなポリカーボネートポリオールは、例えば、1又は2種以上の脂肪族ポリオールと、炭酸エステルとを、触媒の存在下で反応させることによって得られる(以下、「カーボネート化反応」と称することもある。)。
【0032】
(脂肪族ポリオール)
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオールなどの炭素原子数2〜12の直鎖状の脂肪族ポリオール;
2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−又は3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオールなどの炭素原子数3〜18の分岐状の脂肪族ポリオール;
1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素原子数6〜18の環状脂肪族ポリオール
が挙げられるが、好ましくはペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが使用される。
なお、前記脂肪族ポリオールは、二種以上を併用しても良い。
【0033】
(炭酸エステル)
前記炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルなどの炭酸ジアルキル;炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、トリメチレンカーボネート)、ブチレンカーボネート(4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、テトラメチレンカーボネート)、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オンなどの環状カーボネートが挙げられるが、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートが使用される。
なお、これらの炭酸エステルは、二種以上を併用しても良い。
【0034】
前記炭酸エステルの使用量は、脂肪族ポリオール1モルに対して、好ましくは0.8〜2.0モル、更に好ましくは0.9〜1.5モルである。
この範囲することで、十分な反応速度で、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0035】
(反応温度、及び反応圧力)
本発明のカーボネート化反応における反応温度は、炭酸エステルの種類に応じて適宜調整するが、好ましくは50〜250℃、更に好ましくは70〜230℃である。
また、反応圧力は、低沸点成分を除去しながら反応させる態様となるような圧力ならば特に制限されず、好ましくは常圧又は減圧下で行われる。
この範囲とすることで、逐次反応や副反応が起こることなく、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0036】
(触媒)
本発明のカーボネート化反応においては、公知のエステル交換触媒を使用することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、セリウムなどの金属、及びそれらの水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機金属などが挙げられるが、好ましくは水素化ナトリウム、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズオキサイドが使用される。
なお、これらの触媒は、二種以上を併用しても良い。
【0037】
前記触媒の使用量は、脂肪族ポリオール1モルに対して、好ましくは0.001〜0.1ミリモル、更に好ましくは0.005〜0.05ミリモル、より好ましくは0.01〜0.03ミリモルである。
この範囲とすることで、後処理を煩雑とすることなく、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
なお、当該触媒は、反応開始時に一括で使用しても、反応開始時、及び反応開始後に分割して使用(添加)しても良い。
【0038】
(ポリイソシアネート)
本発明のウレタン化反応において使用するポリイソシアネートは、式(2)で示される骨格を有するものである。
使用するポリイソシアネートは、目的や用途に応じて適宜選択するが、例えば、
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネートなどの炭素原子数2〜12の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート;
1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどの炭素原子数3〜12の分岐状脂肪族ポリイソシアネート;
4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの炭素原子数6〜18の環状脂肪族ポリイソシアネート;
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの炭素原子数6〜18の芳香族ポリイソシアネート
が使用される。
なお、これらのポリイソシアネートは、二種以上を併用しても良く、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていても良い。
【0039】
前記ポリイソシアネートの使用量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリカーボネートポリオールの水酸基(脂肪族ポリオールが含まれている場合には、その水酸基も含む)との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、好ましくは1.5〜8.0、更に好ましくは2.0〜5.0である。
【0040】
(酸性基含有ポリオール)
本発明のウレタン化反応において使用する酸性基含有ポリオールは、式(3)で示される骨格を有するものである。
使用する酸性基含有ポリオールは、目的や用途に応じて適宜選択するが、例えば、
2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸などが使用される。
なお、これらの酸性基含有ポリオールは、単独又は二種以上を混合して使用しても良く、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸も同様に使用できる。
なお、その使用量はポリウレタン樹脂が水系媒体にポリウレタン樹脂が分散できる量であれば特に制限されず、また、二種以上を併用しても良い。
【0041】
(鎖延長剤)
本発明のウレタン化反応においては、分子量を増大させることを目的として、鎖延長剤を用いることができる。使用する鎖延長剤としては、目的や用途に応じて適宜選択できるが、例えば、
水;
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサンなどの低分子ポリオール;
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの高分子ポリオール;
エチレンジアミン、イソホロンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン
が使用される。
なお、鎖延長剤については、例えば、「最新ポリウレタン応用技術」(株式会社CMC社、1985年に発行)を参照することができ、前記高分子ポリオールについては、例えば、「ポリウレタンフオーム」(高分子刊行会、1987年)を参照することができる。
また、これらの鎖延長剤は、二種以上を併用しても良い。
【0042】
(ウレタン化触媒)
本発明のウレタン化反応においては、反応速度を向上させるために公知の重合触媒を用いることができ、例えば、第三級アミン、スズ又はチタンなどの有機金属塩が使用される。
なお、重合触媒については、吉田敬治著「ポリウレタン樹脂」(日本工業新聞社刊、1969年)の第23〜32頁を参照することができ、二種以上を併用しても良い。
【0043】
(溶媒)
本発明のウレタン化反応は溶媒の存在下で行うことができ、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−カプロラクトンなどのエステル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−エトキシエタノールなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ−アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類が使用される。
なお、これらの溶媒は、二種以上を併用しても良い。
【0044】
本発明のウレタン化反応は、分子量を調整するために末端停止剤を添加して行うことができる。
【0045】
[アクリル系重合体(B)]
前記アクリル系重合体(B)とは、1種または複数種の「(メタ)アクリル基」を有する「(メタ)アクリルモノマー」が、重合したものを示す。
ここで、(メタ)アクリル基とは、(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリル酸から水酸基を除いた原子団を示し、「(メタ)アクリル基」とは、「アクリル基」と「メタクリル基(メタアクリル基)」の総称である。
なお、アクリル系重合体(B)は、「(メタ)アクリロイル基を有さない重合性モノマー」(以下、重合性モノマーと称する。)からなる重合体を含んでいてもよく、(メタ)アクリルモノマーと重合性モノマーとが共重合していても良い。
【0046】
((メタ)アクリルモノマー)
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールーテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−212」)、2分子のエポキシ(メタ)アクリル酸と1分子のネオペンチルグリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のビスフェノールAジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−250」)、2分子の(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジル体との反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のフタル酸ジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−721」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリエチレングリコールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DM−811」、「DM−832」、「DM−851」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリプロピレングリコールジグリシジルとの反応生成物等の(メタ)アクリル酸とポリオールジグリシジルとの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の付加物などのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) LR8863)等のアルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) PO33F)などのトリ(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社、Ebecryl 40)等のアルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのペンタ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのヘキサ(メタ)アクリル酸エステル
が使用される。
なお、これらの(メタ)アクリルモノマーは、二種以上を併用しても良い。
【0047】
前記「重合性モノマー」としては、例えば、プロピレン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンなどの不飽和炭化水素化合物;スチレン、α−メチルスチレンなどの不飽和基を有する芳香族化合物;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化不飽和炭化水素化合物;酢酸ビニル、酢酸アリル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸不飽和エステル類;N−ビニルピロリドンなどの不飽和基を有するアミド類が挙げられる。
なお、これらの重合性モノマーは、二種以上を併用しても良い。
【0048】
本発明のアクリル系重合体(B)は、少なくとも1種のメタクリル酸エステルモノマーから形成される重合体であることが望ましく、具体的には、「メタアクリル酸エステル重合体」、または「メタアクリル酸エステルとアクリル酸エステルとの共重合体」がより好適に使用される。
【0049】
(アクリル系重合体(B)のガラス転移温度)
アクリル系重合体(B)の「ガラス転移温度(Tg)」は、下記のFoxの式に従い、アクリル系重合体の(メタ)アクリルモノマーの重量比率により算出することができる。
[Foxの式]
1/Tg=Σ(W
m/Tg
m)
(式中、W
mは各(メタ)アクリルモノマーの重量比率を、Tg
mは各(メタ)アクリルモノマーのガラス転移温度を、mは(メタ)アクリルモノマーの種類数を示す。)
【0050】
(アクリル系重合体(B)の合成)
前記アクリル系重合体(B)は、1または複数種の(メタ)アクリルモノマーを(必要ならば他の重合性ビニルモノマーを存在させる)、重合開始剤や光、熱などにより(メタ)アクリルモノマーを重合させることによって製造することができる。
本発明の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)がアクリル系重合体(B)を内包しているため、ポリウレタン樹脂(A)の存在下で(メタ)アクリルモノマーを重合させるのが望ましい。
【0051】
[水性媒体]
前記水系媒体としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水などの水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
【0052】
前記親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ−アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類が挙げられる。
前記水系媒体中の前記親水性有機溶媒の量としては、好ましくは0〜20質量%である。
【0053】
[複合樹脂水性分散体の合成]
本発明の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)、(メタ)アクリルモノマー、及び水系媒体を混合した後、重合開始剤や光、それらの併用により(メタ)アクリルモノマーを重合反応させることによりアクリル系重合体(B)を生成させることによって製造することができる。
その際の反応温度は、好ましくは30〜100℃である。
【0054】
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウオイルパーオキサイドなどの過酸化物が使用される。
なお、これらの重合開始剤は、二種以上を併用でき、水溶液や有機溶媒溶液として使用することもできる。
【0055】
また、前記重合開始剤と、還元剤とを併用することでレドックス系開始剤として使用することもでき、還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、LまたはD−アスコルビン酸などが使用できる。
なお、これらの還元剤は、二種以上を併用することができ、水溶液や有機溶媒溶液として使用することもできる。
【0056】
前記、重合開始剤や還元剤の使用量は、必要な反応速度(重合速度)や重合時の発熱の状況に応じて適宜調整すれば良く、複合樹脂水性分散体の機能や特性を損なわない程度において、重合開始剤や還元剤、それらの分解物が存在していても良い。
【0057】
また、急激な重合反応を抑制するために、適宜、乳化剤を存在させても良い。
【0058】
本発明の複合樹脂水性分散体においては、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)との総質量に対し、ポリウレタン樹脂(A)の質量が5〜95質量%であり、より好ましくは10〜90質量%である。
この範囲とすることで、被塗装基材への密着性が向上する。
特に好ましくは10〜55質量%であり、この範囲とすることで、被塗装基材への密着性に加えて、耐黒色ゴム汚染性が向上する。
【0059】
以上により、本発明の複合樹脂水性分散体が得られるが、目的に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、熱安定剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤などを存在させることができる。
【0060】
また、本発明の複合樹脂水性分散体は、人工皮革や合成皮革、断熱材、クッション材、接着剤、塗料、コーティング剤、フィルムなどの成形体などに加工することができる。
【0061】
[複合樹脂水性分散体含有組成物]
本発明の複合樹脂水性分散体を用いて、例えば、塗料組成物やコーティング組成物などを製造することができる。
具体的には、本発明の複合樹脂水性分散体と各種添加剤、必要に応じて前記水系媒体や他の樹脂とを混合することによって製造できる。
【0062】
(添加剤)
前記添加剤としては、
例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;
クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;
アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などの光輝性顔料
を使用することができる。
また、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤も使用できる。
なお、これらの添加剤は、二種以上を併用できる。
【0063】
更に、添加剤として硬化剤を存在させることにより、前記組成物から得られる塗膜や複層塗膜、コーティング膜の耐水性を向上させることができる。
そのような硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、メラミン樹脂、カルボジイミドなどを使用することができる。
なお、これらの硬化剤は、二種以上を併用できる。
【0064】
(他の樹脂)
前記他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂が挙げられるが、水系媒体への分散性の観点から、樹脂中に親水性基(例えば、酸性基)を有しているのが望ましい。
【0065】
(被塗装基材)
本発明の複合樹脂水性分散体や、それを含有する塗料組成物やコーティング組成物などは、適当な「被塗装基材」(以下、単に基材と称することもある)に塗布し、乾燥させることにより、基材をコーティング(塗膜を生成させる)などすることができる。その際、複合樹脂水性分散体やその組成物の粘度を適宜調整することができる。
【0066】
前記被塗装基材としては、例えば、
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、エラストマーなどの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、合成樹脂及びその成形品;
鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛などの金属基材やこれらの金属を含む合金、更にメッキや化成処理が施された各種の表面処理された金属基材及びその成形品;
コンクリート、スレート、タイル、瓦、ガラス、木製建築資材などの建築部材及びその成形品;
合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、動物繊維、食物繊維などの繊維及びその成形品
が挙げられるが、密着性の観点から、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS)が好適に使用される。
なお、これらの樹脂は、二種以上を併用できる。
【0067】
前記コーティング合法としては、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装などが採用される。
また、塗膜の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは3〜50μmである。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0069】
合成例1(ポリウレタン樹脂の合成)
攪拌機、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ポリカーボネートジオール(ETERNACOLL(登録商標)UM90(3/1)、宇部興産(株)製;数平均分子量916、水酸基価123mgKOH/g、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(3/1(モル比))と炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸220g、及びN−メチルピロリドン1350gを窒素雰囲気にて混合した。次いで、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネートを1450g、及びジブチルスズジラウリレートを2.6g加えて80〜90℃まで加熱し、攪拌しながら6時間反応を行った。
反応終了後、トリエチルアミン149gを加えて中和した後、得られた反応混合物4360gを抜き出し、強撹拌のもと水6900gの中に加えた。更に、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えることで、水性ポリウレタン樹脂分散体(固形分30重量%)を得た。
【0070】
実施例1(複合樹脂水性分散体の合成)
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に、合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体625g、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとの混合物(83.7/16.3(質量比))37.5g、及び水82.7gを混合し、50℃に加温した。次いで、1質量%L−アスコルビン酸水溶液3.75g、及び7質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液1.07gを加え、攪拌しながら50℃で1時間反応させ、複合樹脂水性分散体1を得た。
なお、アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は65℃であった。
【0071】
実施例2(複合樹脂水性分散体の合成)
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に、合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体375g、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとの混合物(83.7/16.3(質量比))75.0g、及び水165.4gを混合し、50℃に加温した。次いで、1質量%L−アスコルビン酸水溶液7.5g、及び7質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.14gを加え、攪拌しながら50℃で1時間反応させ、複合樹脂水性分散体2を得た。
なお、アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は65℃であった。
【0072】
実施例3(複合樹脂水性分散体の合成)
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に、合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体437.5g、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとの混合物(63/37(質量比))56.3g、及び水124gを混合し、50℃に加温した。次いで、1質量%L−アスコルビン酸水溶液5.63g、及び7質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液1.61gを加え、攪拌しながら50℃で1時間反応させ、複合樹脂水性分散体3を得た。
なお、アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は25℃であった。
【0073】
実施例4(複合樹脂水性分散体の合成)
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に、合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体312.5g、n−ブチルメタクリレート93.8g、及び水206.7gを混合し、50℃に加温した。次いで、1質量%L−アスコルビン酸水溶液9.38g、及び7質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液2.68gを加え、攪拌しながら50℃で1時間反応させ、複合樹脂水性分散体4を得た。
なお、アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は−54℃であった。
【0074】
(積層体の合成と評価)
合成例1及び実施例1〜4で得られた複合樹脂水性分散体を、ポリ塩化ビニル樹脂製フロアシート上に、乾燥した後の樹脂の膜厚が10μm(バーコーター#20)になるように塗布し、150℃で一定時間放置した後に室温まで冷却させながら24時間乾燥させた。
(耐エタノール性)
得られた塗膜に、エタノール(和光純薬工業製、和光一級)を染み込ませた脱脂綿を置き5分間静置した。その後、脱脂綿を取り除き、脱脂綿を置いた場所の塗膜外観を目視により評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
○:塗膜の膨潤や白化は、観測されなかった。
×:塗膜の膨潤や白化が、観測された。
(耐黒色ゴム汚染性)
得られた塗膜をJIS K3920記載のカーボンブラック配合の黒色ゴムブロック体を用いて5往復擦り、塗膜上の黒色ゴム痕を目視により評価した。
評価基準は、以下の通りである。
◎:黒色ゴムの擦り痕は観察されなかった。
○:黒色ゴムの擦り痕が4往復目に観察された。
△:黒色ゴムの擦り痕が3往復目に観察された。
×:黒色ゴムの擦り痕が2往復目までに観察された。
その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
以上の結果より、本発明の複合樹脂水性分散体は、優れた耐アルコール性及び耐汚染性を示すことが分かった。