(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(包装容器)
図1に、本発明の実施形態に係るゲーベルトップ型包装容器100(以下、単に包装容器100という)の斜視図を示し、
図2には、折返し板108及び側面板111bの正面図及び断面図を示す。なお、以下の説明では、便宜上、包装容器100を正立させた際の上下方向を上下と定める。
【0011】
包装容器100は、シート材を加工したブランク110を箱型に折曲げ、端部を重ね合わせてシールして形成される。包装容器100は、正立時に上部となる頂部101と、側面となる胴部102と、下部となる底部103とを含む。頂部101は、2つの屋根板106(106a、106b)と、屋根板106の間に折込まれる折込み板107および折返し板108とを含む。それぞれの屋根板106の下端には、側面板111aが連接される。また、それぞれの折返し板108の下端には、側面板111bが連接されている。側面板111a、111bには、一例として、包装容器100を正立させた際の左右方向である幅方向に、破断強度を弱化させた脆弱部105が胴部102を一周するように形成される。なお、脆弱部105は形成しなくてもよい。
【0012】
図2に示すように、折返し板108と側面板111bとの境界線122上には第1の罫線121が形成され、折返し板108及び側面板111bには、第1の罫線121及び境界線122から所定の距離内に、第1の罫線121及び境界線122と同一方向に伸びる第2の罫線115が複数形成された易変形領域116が形成されている。易変形領域116は、2つの折返し板108及び側面板111bのそれぞれに設けることが好ましいが、一方側だけに設けてもよい。
【0013】
図2の断面図に示すように、易変形領域116に形成された第2の罫線115は、ブランク110の表面に形成された線状の凹部117と、凹部117に対応してブランク110の裏面に形成された線状の凸部118とからなる。凹部117をブランク110の裏面に形成し、凸部118をブランク110の表面に形成してもよい。また、第2の罫線115は、凹部117及び凸部118のいずれかのみから構成してもよい。第1の罫線121及び第2の罫線115は周知の技術により形成でき、例えば、ローラー等によりブランク110を両面から押圧することにより形成することができる。第1の罫線121は、易変形領域116内を通るように形成してもよいし、易変形領域116により、長さ方向中央付近において所定長さ設けられないように形成してもよい。
【0014】
図2の断面図に示すように、易変形領域116によって、折返し板108及び側面板111bの間に曲率半径の小さい角部120が形成されず、当該位置は複数の第2の罫線によって緩やかに湾曲した円弧形状となる。
【0015】
(ブランク)
図3に、包装容器100の素材となるブランクの一例であるブランク110の平面図を示す。ブランク110は、頂部101を構成する屋根板106a、106b、折込み板107および折返し板108と、胴部102を構成する側面板111a、111bと、底部103を構成する底面板112と、端部に形成されたシール部113とを有する。折返し板108と折返し板108の下端に連接された側面板111bとの境界線122上には、第1の罫線121が形成される。側面板111a、111bには、脆弱部105が胴部102を一周するように形成される。
【0016】
図3に示すように、易変形領域116は、ブランク110の状態で円形となるように形成され、中心が第1の罫線121及び境界線122の長さ方向中央と一致するように形成される。易変形領域116の形状は、円形に限定されず、矩形状等の任意の形状を採用できる。易変形領域116の左右方向の幅は、7mm以上が好ましく、側壁部111bの幅方向全てにわたって形成してもよい。易変形領域116の幅が7mmに満たないと、包装容器100を折り畳む際に、易変形領域116に指が収まりきれずに効果が十分に得られないためである。また、罫線115の間隔は、20mm未満であることが好ましい。
【0017】
(シート材)
図4に、ブランク110に用いられる積層体であるシート材200の積層構造及び脆弱部105の構造の例を模式的に表す断面図を示す。シート材200は、包装容器1の外方から内方に向かって順に、印刷層208/熱可塑性樹脂層201/紙基材層202/接着樹脂層203/バリア層204/接着層205/シーラント層206を有する。
【0018】
熱可塑性樹脂層201は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等を用いて、押出しラミネーション等により紙基材層202上に層形成することができる。
【0019】
熱可塑性樹脂層201の外方には、印刷層208を設けて絵柄や商品情報を表示してもよい。印刷層208は、周知のインキを用いてグラビア印刷やオフセット印刷等の方法により形成することができる。熱可塑性樹脂層201にコロナ処理等の易接着処理を行って、印刷層208との密着性を高めることができる。印刷層208の外方に耐摩耗性向上または表面加飾性向上のためにオーバーコート層を設けても良い。
【0020】
紙基材層202には、ミルクカートン原紙等の板紙を用いることができる。坪量及び密度は、容器の容量やデザインにより適宜選択可能である。例えば、坪量200g/m
2以上500g/m
2以下、密度0.6g/cm
3以上1.1g/cm
3以下のものを用いることができる。
【0021】
接着樹脂層203は、紙基材層202と基材フィルム層204とを接着する機能を有するポリオレフィン系樹脂からなる層である。具体的には、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、LDPE、LLDPE、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。接着強度を高めるために、紙基材層202やバリア層204の表面に、コロナ処理、オゾン処理、アンカーコート等を行ってもよい。または、接着樹脂層203に替えて、ドライラミネート接着剤等を用いた接着層としても良い。厚さは、10μm以上60μm以下が好ましい。10μm以上とすることで、十分な接着強度を得ることができる。
【0022】
バリア層204は、アルミニウム等の金属、シリカ、アルミナ等を蒸着した蒸着層204bと基材フィルム204aとを含む蒸着フィルム、又はアルミニウム等の金属箔204cを基材フィルム204aにドライラミネートした積層フィルムを用いることができる。蒸着層204bの厚さは、5nm以上100nm以下とすることができ、基材フィルム204aとして、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、厚さは6μm以上25μm以下とすることができる。
【0023】
バリア層204として、ポリエチレンテレフタレートフィルムにバリアコーティングを施したバリアコーティングポリエチレンテレフタレートフィルムや、EVOHなどのバリア材料からなるバリア性フィルムを用いることができる。金属箔204cとしてアルミニウム箔を、基材フィルム204aとしてのポリエチレンテレフタレートフィルムにドライラミネートしたフィルムを用いる場合は、アルミニウム箔の厚さは5μm以上15μm以下とすることができ、ポリエチレンテレフタレート層の厚さは6μm以上25μm以下とすることができる。後述するレーザー光による加工のしやすさの点で、ポリエチレンテレフタレート層の厚さは12μm程度とすることが好ましい。
【0024】
いずれの場合も基材フィルム204aには、ポリエチレンテレフタレート(PET)の他に、ナイロン、ポリプロピレン(PP)等の樹脂フィルムを用いることができる。特に、PETの2軸延伸フィルムは、蒸着加工時や貼り合せ加工時に、伸縮が少ないので好適である。
【0025】
接着層205には、ドライラミネート用接着剤やノンソルベントラミネート用接着剤を用いてもよいし、押出し加工によりポリオレフィン系樹脂により接着してもよい。塗布量は0.5g/m
2以上7.0g/m
2以下が好ましい。
【0026】
シーラント層206には、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE等が使用できる。また、一部ポリブテンを含む層があってもよい。上述の材質の中でも、特に、LLDPEが好適である。とりわけ密度0.925g/cm
3以下、MI(メルトインデックス)4以上のものが好ましい。シーラント層26は、Tダイ法やインフレーション法で製膜された無延伸フィルムが好ましく用いられる。
【0027】
脆弱部105は、少なくとも紙基材層202及び基材フィルム層204に所定深さで形成された溝状の傷加工部207a、207bにより構成される。傷加工部207aは、少なくとも紙基材層202に形成されていればよく、
図4に示すように、紙基材層202とともに、紙基材層202の外方に積層された熱可塑性樹脂層201及び印刷層208に形成されてもよい。傷加工部207bは基材フィルム層204を貫通しない深さで形成されることが望ましいが、狭い範囲で貫通したとしてもバリア性に影響は少ないため、部分的であれば、基材フィルム層204を貫通していてもよい。傷加工部207a、207bは、レーザー光や刃型等の周知の技術を用いて形成することができる。
【0028】
シート材200の積層構造は、この構造に限定されず必要な機能に応じて各層の厚み、積層順序、材質を任意に変更できる。
【0029】
(解体方法)
図5A〜5Dに、包装容器100の解体方法の一例を示す。
図5A〜5Dを参照して、包装容器100の解体方法の各工程について説明する。
【0030】
<押し潰し工程>
図5A及び
図5Bに、包装容器100を押し潰す工程を示す。
図5Aに示すように、本工程において、包装容器1の使用者は、対向する2つの側面板111aを互いに接する方向に押し込むことで胴部102を押し潰す。このとき、側面板111bは、包装容器100の内部方向に折り畳まれる。
【0031】
本工程で、使用者は、易変形領域116を使用することができる。具体的には、
図5Bに示すように、親指119等により易変形領域116を包装容器100の内方に向かって押し込むことにより、第2の罫線115により易変形領域116全体が徐々に変形し、折返し板108及び側面板111bを包装容器100の内方に、小さな力で容易に折り畳むことができる。
【0032】
<折曲げ工程>
図5Cに、包装容器100を脆弱部105に沿って折曲げる工程を示す。本工程において、使用者は、初めに、側面板111を脆弱部105に沿って一方向へ折曲げる(
図5Cの左図)。その後、側面板111を脆弱部105に沿って、先ほどと反対の方向に折曲げる(
図5Cの右図)。折曲げは、各方向に複数回行ってもよい。本工程により、脆弱部105の破断が進行する。
【0033】
<屋根板分離工程>
図5Dに、脆弱部105に沿って、頂部101及び側面板111の一部を包装容器100から分離する工程を示す。本工程において、使用者は、側面板111の一部を、脆弱部105に沿って、包装容器100から引裂いて分離する(
図5Dの左図)。前工程において、脆弱部105には、少なくとも部分的に破断が生じているため、使用者は脆弱部105を起点としてわずかな力で側面板111の上部を分離することができる。分離された包装容器100は、
図5Dの右図に示すように、胴部102上部及び頂部101と、胴部102下部とが別々に分離された状態に分離される。
【0034】
(変形例)
折返し板108及び側面板111bに補助罫線を追加することにより、折り畳みをより容易にすることができる。
図6〜
図8に、補助罫線を設けたブランク111〜113の部分平面図を示す。
【0035】
図6には、分断部116を囲む1本の円弧状曲線と2本の直線とからなる補助罫線123を含むブランク111を示す。
図7には、分断部116を囲む4本の直線からなる菱形状の補助罫線124を含むブランク112を示す。
図8には、易変形領域116から折返し板108または側面板111bの外縁に向かって延伸する仮想線上の所定範囲に形成された4本の補助罫線125を含むブランク113を示す。
【0036】
補助罫線は、易変形領域116を囲むもの、または易変形領域116から折返し板108または側面板111bの外縁に向かって延伸する仮想線上の所定範囲に形成されたものであれば、形状や本数は上記の形態に限定されない。
【0037】
各補助罫線を追加することにより、補助罫線から折返し板108及び側面板111bが折れ曲がることが可能になるため、折返し板108及び側面板111bの押し込みから折り畳みまでがスムーズに進行する。このため、折り畳み作業がより容易になる。
【実施例】
【0038】
実施例及び比較例1〜3に係る包装容器を作成し、折り畳みの容易さについて官能評価を行った。2リットルの容量の包装容器を作製するためのブランクを用意して、次のような包装容器を製造した。
【0039】
(実施例)
線幅2mmの第2の罫線を、間隔5mmで、第1の罫線の左右中央を中心とした直径30mmの円形状の領域に形成して易変形領域とした。
【0040】
(比較例1)
易変形領域を設けなかった。
【0041】
(比較例2)
線幅2mmの第2の罫線を、間隔20mmで、第1の罫線の左右中央を中心とした直径30mmの円形状の領域に形成して易変形領域とした。実施例との相違点は、罫線の間隔である。
【0042】
(比較例3)
線幅2mmの第2の罫線を、間隔5mmで、第1の罫線の左右中央を中心とした直径6mmの円形状の領域に形成して易変形領域とした。実施例との相違点は、易変形領域の大きさである。
【0043】
成人男性及び成人女性各30人ずつによって、製造した各包装容器の折り畳みの容易さについての官能評価を行った。被験者の80%以上が、容易に折り畳むことができた包装容器を折り畳める包装容器と判定した。
【0044】
評価の結果、実施例に係る包装容器は、被験者の80%以上が包装容器を容易に折り畳むことができた。
【0045】
一方で、比較例1に係る包装容器は、易変形領域116が形成されていないため、包装容器を容易に折り込むことができた被験者は80%に満たなかった。また、比較例2に係る包装容器は、罫線の間隔が広く易変形領域に円弧形状が形成されなかった。このため、易変形領域を押さえることが困難となり、側面板を容易に折り込むことができた被験者は80%に満たなかった。また、比較例3に係る包装容器は易変形領域の面積が狭く、指の一部が易変形領域に入りきらない場合があった。このため、易変形領域を押さえることが困難となり、側面板を容易に折り込むことができた被験者は80%に満たなかった。
【0046】
この評価結果から、加圧部領域を形成することにより、容易に折り畳むことができる包装容器を提供することができることが確認できた。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、使用者は折り畳み作業時に、断面が緩やかに湾曲した円弧形状となる易変形領域116に指等を当てて包装容器100を折り畳むことができるため、折り畳み作業において、指への負担が少なく容易に折り畳むことができるゲーベルトップ型の包装容器を提供することができる。