(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819080
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】加工履歴検索システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20210114BHJP
G06F 16/16 20190101ALI20210114BHJP
【FI】
G05B19/4063 Z
G06F16/16 100
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-114634(P2016-114634)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-220061(P2017-220061A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小池 昌宏
【審査官】
岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/003156(WO,A1)
【文献】
特開2001−147707(JP,A)
【文献】
特開2001−150302(JP,A)
【文献】
特開2009−110285(JP,A)
【文献】
国際公開第98/019820(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/00−19/46
G06F 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具により複数のワークを加工した際、各前記ワークを識別するワーク情報に、各前記工具を識別する工具情報と各前記ワークを加工した日時情報とを関連づけたワーク加工データを作成するデータ作成部と、前記データ作成部で作成された前記ワーク加工データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した前記ワーク加工データを外部へ送信する通信部と、を備えた工作機械と、
前記通信部と通信して前記ワーク加工データを取得する履歴通信部と、取得した前記ワーク加工データを記憶する履歴記憶部と、前記ワーク情報及び/又は前記工具情報が入力される履歴入力部と、前記履歴入力部で前記ワーク情報が入力された場合、前記履歴記憶部に記憶された前記ワーク加工データから、前記履歴入力部で入力された前記ワーク情報に係る前記ワークを加工した前記工具の前記工具情報を少なくとも含むワーク関連データを抽出すると共に、前記履歴入力部で前記工具情報が入力された場合、前記履歴記憶部に記憶された前記ワーク加工データから、前記履歴入力部で入力された前記工具情報に係る前記工具により加工された他の前記ワークの前記ワーク情報を少なくとも含む工具関連データを抽出する、データ抽出部と、前記データ抽出部で抽出された前記ワーク関連データ及び/又は前記工具関連データをリスト表示する履歴表示部と、を備えた履歴検索装置と、
を含んでなり、
前記ワーク加工データは、各前記工具の最大使用回数を示す設定値と、各前記工具の実際の使用回数を示すカウント値とをさらに含み、
前記データ抽出部は、前記設定値及び前記カウント値から、前記工具の交換直前及び交換直後に加工した前記ワークの前記ワーク情報を含む前記工具関連データを抽出することを特徴とする加工履歴検索システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の自動運転で複数のワークの加工を行った際、加工不良が生じたワーク及び当該ワークを加工した工具を特定するための加工履歴検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を自動運転して複数のワークの加工を行う場合、破損等の工具異常によってワークに加工不良が生じた場合、当該工具で加工したワークを全数検査すると時間と労力とが必要となる。そこで、特許文献1には、工作機械の制御手段から送信されるワーク番号や加工プログラム番号、工具マガジン番号、工具の使用開始及び終了時刻、工具異常の有無等を記録する記録手段を設けて、工具異常ありの情報で特定される当該工具に関するマガジン番号等を異常工具リストとして、当該工具により加工されたワークをワークリストとしてそれぞれ表示するようにした加工実績記録装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3699874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加工実績記録装置は、工具に異常が発生した際に当該工具で加工されたワークのリストを得ることができるものの、工具に異常がない状態で加工不良が発生した場合の検索ができない。従って、結局ワークの全数検査の必要が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、工具異常による加工不良は勿論、工具異常でない原因で加工不良が生じた場合でも工具及びワークの特定が可能となる加工履歴検索システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の工具により複数のワークを加工した際、各ワークを識別するワーク情報に、各工具を識別する工具情報と各ワークを加工した日時情報とを関連づけたワーク加工データを作成するデータ作成部と、データ作成部で作成されたワーク加工データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶したワーク加工データを外部へ送信する通信部と、を備えた工作機械と、
通信部と通信してワーク加工データを取得する履歴通信部と、取得したワーク加工データを記憶する履歴記憶部と、ワーク情報
及び/又は工具情報が入力される履歴入力部と、
履歴入力部でワーク情報が入力された場合、履歴記憶部に記憶されたワーク加工データから、履歴入力部で
入力されたワーク情報に係るワークを加工した工具の工具情報を少なくとも含むワーク関連データ
を抽出すると共に、履歴入力部で工具情報が入力された場合、履歴記憶部に記憶されたワーク加工データから、履歴入力部で
入力された工具情報に係る工具により加工された他のワークのワーク情報を少なくとも含む工具関連データを抽出する
、データ抽出部と、データ抽出部で抽出されたワーク関連データ及び
/又は工具関連データをリスト表示する履歴表示部と、を備えた履歴検索装置と、
を含んでな
り、
ワーク加工データは、各工具の最大使用回数を示す設定値と、各工具の実際の使用回数を示すカウント値とをさらに含み、
データ抽出部は、設定値及びカウント値から、工具の交換直前及び交換直後に加工したワークのワーク情報を含む工具関連データを抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、工作機械から取得されるワーク加工データに基づいて、
履歴入力部での入力で特定したワークを加工した工具の工具情報を含むワーク関連データと、
履歴入力部での入力で特定した工具で加工した他のワークのワーク情報を含む工具関連データとがリスト表示される。よって、工具異常による加工不良は勿論、工具異常でない原因で加工不良が生じた場合でも工具及びワークの特定が可能となり、全数検査の必要がなくなる。
また、データ抽出部は、設定値及びカウント値から、工具の交換直前及び交換直後に加工したワークのワーク情報を含む工具関連データを抽出することで、カウンタ値を利用して工具交換の直前直後のワークも検索でき、より絞り込んだ検索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】データ通信及びワーク関連データの抽出処理を示すフローチャートである。
【
図5】工具を特定したワーク関連データのリストの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械としての複数のマシニングセンタ1A,1B・・によってワークを順番に加工する加工ラインに構築した加工履歴検索システムの一例を示す概略図である。
各マシニングセンタ1A,1B・・は、周知のNC装置2をそれぞれ備えている。このNC装置2は、主軸や送り軸の制御部3を有する。この制御部3は、所定の工具でワークを加工した際、ワークを識別するワーク情報としてのワーク番号に、工具情報としての工具番号と、最大加工回数の設定値及び実際のカウント値と、加工の日時情報とを関連づけてワーク加工データを作成するデータ作成部としても機能する。また、NC装置2は、制御部3で作成されたワーク加工データを保存する記憶部4と、記憶部4に保存されたワーク加工データを作成する外部へ送信可能な通信部5とを有している。ワーク番号や工具番号、設定値等は、オペレータにより予め入力される。
【0010】
図2は、各マシニングセンタ1A,1B・・の制御部3で作成されるワーク加工データの一例を示すもので、ここで、まずマシンNo.1のマシニングセンタ1Aでは、ワーク番号W600、W601、W602・・のワークに対して順番に、使用可能な工具番号T1〜T5の工具のうち、設定値が200回である工具T1を使用して10回目以降の加工を行った後、設定値が1000回の工具T3を使用して150回目以降の加工を行ったことが記録されている。
【0011】
また、マシンNo.2のマシニングセンタ1Bでは、マシンNo.1のマシニングセンタ1Aから搬送されたW600、W601、W602・・のワークに対して順番に、使用可能な工具番号T6〜T10の工具のうち、設定値が500回である工具T7を使用して106回目以降の加工を行った後、設定値が1000回の工具T9を使用して678回目以降の加工を行ったことが記録されている。
さらに、マシンNo.3のマシニングセンタ1Cでは、マシンNo.2のマシニングセンタ1Bから搬送されたW600、W601、W602・・のワークに対して順番に、使用可能な工具番号T11〜T15の工具のうち、設定値が200回である工具T11を使用して50回目以降の加工を行った後、設定値が1000回の工具T13を使用して110回目以降の加工を行い、さらに、設定が500回の工具T15を使用して200回目以降の加工を行ったことが記録されている。
【0012】
10は、履歴検索装置で、例えばパーソナルコンピュータが用いられる。この履歴検索装置10は、各マシニングセンタ1A,1B・・のNC装置2の通信部5と有線或いは無線によって通信する履歴通信部11と、履歴通信部11で受信したワーク加工データ等を保存する履歴記憶部12と、キーボードやバーコードリーダ等の履歴入力部13と、オペレータによる履歴入力部13の操作により、履歴記憶部12に保存したワーク加工データに基づいて、特定されたワークに関連するワーク関連データを抽出するデータ抽出部としての履歴演算部14と、履歴演算部14で抽出されたワーク関連データをリスト表示する履歴表示部15とを備えている。
【0013】
図3は、マシニングセンタ1A,1B・・の各NC装置2と履歴検索装置10との間でのデータ通信及びワーク関連データの抽出処理を示すフローチャートで、NC装置2は1つのみ例示している。
まず、各NC装置2は、S1で、加工終了時には前述のように
図2に示すワーク加工データを作成して記憶部4に保存する。そして、ワーク加工データを作成したら、S2で、通信部5を介して履歴検索装置10にワーク加工データの取込要求を送信する。
履歴検索装置10は、履歴通信部11でNC装置2からのワーク加工データの取込要求を受信したら、S3で、NC装置2から送信されるワーク加工データを受信して履歴記憶部12に保存する。
【0014】
そして、ワークに不良品が生じた場合、S4で、履歴入力部13を介してオペレータからワーク番号(ここではW600,W601,W602)が入力されると、履歴検索装置10の履歴演算部14は、S5で、入力されたワーク番号に係るワークを加工した工具の工具番号を含むワーク関連データを抽出し、S6で、当該ワーク関連データから、
図4に示すように、ワークごとにマシンNo、工具番号、記録日、カウント値ごとに項目分けしたワーク関連リストを作成して履歴表示部15に表示する。
【0015】
このワーク関連リストから、不良品を加工したマシンNo及び工具番号、記録日、カウント値が特定できる。
ここで、不良品の発生原因が工具番号T1の異常であった場合、S7で、履歴入力部13を介して該当する工具番号T1を入力すると、S8で、カウント値が1になるまで遡って、工具番号T1に係る工具により加工された他のワークのワーク番号を含む工具関連データを抽出し、S9で、当該工具関連データから、
図5に示すように、ワーク番号、カウント値、記録値ごとに項目分けした工具関連リストを作成して履歴表示部15に表示する。よって、ワークを全数検査することなく、不良品を加工した工具に交換した後で加工した一部のワークのみをチェックすれば足りることになる。
【0016】
このように、上記形態の加工履歴検索システムは、複数の工具により複数のワークを加工した際、各ワークを識別するワーク番号に、各工具を識別する工具番号と各ワークを加工した日時情報とを関連づけたワーク加工データを作成するデータ作成部(制御部3)と、データ作成部で作成されたワーク加工データを記憶する記憶部4と、記憶部4に記憶したワーク加工データを外部へ送信する通信部5と、を備えたマシニングセンタ1A,1B・・と、通信部5と通信してワーク加工データを取得する履歴通信部11と、取得したワーク加工データを記憶する履歴記憶部12と、ワーク番号を特定する履歴入力部13と、履歴記憶部12に記憶されたワーク加工データから、履歴入力部13で特定されたワーク番号に係るワークを加工した工具の工具番号を含むワーク関連データ及び、履歴入力部13で特定された工具番号に係る工具により加工された他のワークのワーク番号を含む工具関連データを抽出するデータ抽出部(履歴演算部14)と、データ抽出部で抽出されたワーク関連データ及び工具関連データをリスト表示する履歴表示部15と、を備えた履歴検索装置10と、を含んでなることを特徴としている。
この構成により、工具異常による加工不良は勿論、工具異常でない原因で加工不良が生じた場合でも工具及びワークの特定が可能となり、全数検査の必要がなくなる。
【0017】
特に、ここでは、ワーク加工データは、各工具の最大使用回数を示す設定値と、各工具の実際の使用回数を示すカウント値とをさらに含み、データ抽出部(履歴演算部14)は、設定値及びカウント値から、工具の交換直前及び交換直後に加工したワークのワーク番号を含む工具関連データを抽出するので、カウンタ値を利用して工具交換の直前直後のワークも検索でき、より絞り込んだ検索が可能となる。
【0018】
なお、工具情報やワーク情報はそれぞれ番号に限らず、記号や文字等の他の識別情報も採用できる。
また、上記形態では、履歴検索装置は、ワーク番号の入力でワーク関連リストを、工具番号の入力で工具関連リストをそれぞれ順番に表示するようにしているが、ワーク番号と工具番号とを同時に入力することで、ワーク関連リストと工具関連リストとを同時に表示するようにしてもよい。
【0019】
一方、マシニングセンタの数は上記形態に限らず、適宜増減可能である。履歴検索装置も、一台でなく、複数台の工作機械のグループごとにそれぞれ設置して複数台とすることもできる。
また、工作機械としてはマシニングセンタに限らず、複合加工機等の他の工作機械や、種類が異なる工作機械の組み合わせによる加工ラインであっても、本発明の加工実績検索システムの採用は可能である。
【符号の説明】
【0020】
1A,1B,1C・・マシニングセンタ、2・・NC装置、3・・制御部、4・・記憶部、5・・通信部、10・・履歴検索装置、11・・履歴通信部、12・・履歴記憶部、13・・履歴入力部、14・・履歴演算部、15・・履歴表示部。