特許第6819158号(P6819158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819158
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】コヒーレント光受信器の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/07 20130101AFI20210114BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20210114BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H04B10/07
   H04B10/61
   G02F2/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-174707(P2016-174707)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-42099(P2018-42099A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】武智 勝
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−230101(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0129213(US,A1)
【文献】 特開2014−066737(JP,A)
【文献】 特開2010−243767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0254715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/07
G02F 2/00
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が出力する信号光と局発光を干渉させて差動出力信号を生成するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法において、
前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記信号光の光路中に前記信号光の位相を調整する光学長調整器を、前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記局発光の光路中に、バイアス信号により前記局発光の位相を変化させる位相調整素子を挿入し、
前記光学長調整器により、前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記信号光の電気長を、前記バイアス信号をゼロに設定した時の前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記局発光の電気長に等しく設定し、
前記コヒーレント光受信器の前記差動出力を最大にする帰還制御を前記位相調整素子に施して前記信号光および前記局発光に重畳する交流信号に対する前記コヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法であって、
前記帰還制御により前記バイアス信号が前記局発光の波長の一周期に相当する値(2Vπ)よりも所定値(Δ)小さい値(2Vπ−Δ)に達した時に、前記バイアス信号を2Vπ増減する、
コヒーレント光受信器の測定方法。
【請求項2】
光源が出力する信号光と局発光を干渉させて差動出力信号を生成するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法において、
前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記局発光の光路中に、バイアス信号により前記局発光の位相を変化させる位相調整素子を挿入し、
前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記局発光の光路の電気長を、前記光源から前記コヒーレント光受信器までの前記信号光の光路の電気長に一致させる前記位相調整素子に与える前記バイアス信号の初期値を求め、
前記コヒーレント光受信器の前記差動出力を最大にする帰還制御を前記位相調整素子に施して前記信号光および前記局発光に重畳する交流信号に対する前記コヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法であって、
前記帰還制御により前記バイアス信号の前記バイアス信号の初期値からの変化量が前記局発光の波長の一周期に相当する値(2Vπ)よりも所定値(Δ)小さい値(2Vπ−Δ)に達した時に、前記バイアス信号を前記バイアス信号の初期値から2Vπ増減する、
コヒーレント光受信器の測定方法。
【請求項3】
前記信号光の光路の電気長を前記局発光の光路の電気長に一致させる工程は、前記バイアス信号に周波数を固定とする低周波信号を重畳して、前記コヒーレント光受信器の周波数特性を測定し、該周波数特性において、当該低周波信号成分が消失する周波数を求めることにより行う、
請求項1又は2に記載のコヒーレント光受信器の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光受信器の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速かつ大容量の光通信システムとして、例えばコヒーレント光通信システムが知られている。コヒーレント光通信システムで用いられるコヒーレント光受信器では、信号光と局発光を偏光分離素子及び90度ハイブリッドで処理した後に、受光素子により光信号から電気信号への変換を行う(例えば、非特許文献1参照)。このコヒーレント光受信器の特性評価方法として、光受信器に含まれる受光素子の周波数特性の測定がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Implementation Agreement for Integrated Dual Polarization IntradyneCoherent Receivers”,IA # OIF-DPC-RX-01.2,2013年11月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コヒーレント光受信器の周波数特性の測定では、信号光の位相と局発光の位相が一致していない場合、位相差に依存して出力が変化するので、周波数特性を測定できない。よって、コヒーレント光受信器の周波数特性の測定では、位相変調器が信号光と局発光の位相差を帰還制御する。しかしながら、位相変調器のドライブ電圧が制御範囲の上限又は下限に達することがあり、これにより位相差が制御不能になることがある。位相差が制御不能となった場合、再び制御可能になるまで待つことが考えられるが、制御不能になった時点から再び制御可能になるまでの間は、安定して周波数特性の測定をすることができない。
【0005】
また、位相差が制御不能となった場合には、位相変調器のドライブ電圧を強制的に0Vに設定してフィードバック帰還制御をやり直すことが考えられる。しかしながら、強制的に0Vに設定した後の位相差は目標とする位相差と異なるのが普通である。よって、位相差を目標とする位相差に制御するまでの間は安定して周波数特性の測定を行うことができない。
【0006】
本発明は、安定して周波数特性の測定を行うことができるコヒーレント光受信器の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るコヒーレント光受信器の測定方法は、光源が出力する信号光と局発光を干渉させて差動出力信号を生成するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法において、光源からコヒーレント光受信器までの局発光の光路中に局発光の位相を調整する光学長調整器を、光源からコヒーレント光受信器までの信号光の光路中に、バイアス信号により信号光の位相を変化させる位相調整素子を挿入し、光学長調整器により、光源からコヒーレント光受信器までの局発光の電気長を、バイアス信号をゼロに設定した時の光源からコヒーレント光受信器までの信号光の電気長に等しく設定し、コヒーレント光受信器の差動出力を最大にする帰還制御を位相調整素子に施して信号光および局発光に重畳する交流信号に対するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法であって、帰還制御によりバイアス信号が局発光の波長の一周期に相当する値(2Vπ)よりも所定値(Δ)小さい値(2Vπ−Δ)に達した時に、バイアス信号を2Vπ増減する。
【0008】
本発明の別の形態に係るコヒーレント光受信器の測定方法は、光源が出力する信号光と局発光を干渉させて差動出力信号を生成するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法において、光源からコヒーレント光受信器までの信号光の光路中に、バイアス信号により信号光の位相を変化させる位相調整素子を挿入し、光源からコヒーレント光受信器までの信号光の光路の電気長を、光源からコヒーレント光受信器までの局発光の光路の電気長に一致させる位相調整素子に与えるバイアス信号の初期値を求め、コヒーレント光受信器の差動出力を最大にする帰還制御を位相調整素子に施して信号光および局発光に重畳する交流信号に対するコヒーレント光受信器の周波数特性を測定する方法であって、帰還制御によりバイアス信号のバイアス信号の初期値からの変化量が局発光の波長の一周期に相当する値(2Vπ)よりも所定値(Δ)小さい値(2Vπ−Δ)に達した時に、バイアス信号をバイアス信号の初期値から2Vπ増減する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の各形態によれば、安定して周波数特性の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、コヒーレント光受信器の測定系を示すブロック図である。
図2図2は、周波数特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態のコヒーレント光受信器の測定方法について説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るコヒーレント光受信器の測定系Sを示すブロック図である。図1に示す測定系Sは、コヒーレント光受信器である光受信器1の試験を行う。光受信器1には、信号光及び局発光が入力する。測定系Sは、信号光が通る光路L1、及び局発光が通る光路L2を有する。測定系Sは、光コンポーネントアナライザ(LCA:Lightwave Component Analyzer)2、スプリッタ3、アッテネータ4、偏波コントローラ5、光学長調整器6、位相調整器7(位相調整素子)、発振器8及びバイアス電源9を備える。
【0013】
LCA2は光源を内蔵し、この光源に高周波信号(RF信号)を重畳する。光コンポーネントアナライザ2は、このRF信号により変調された光を出力する。光コンポーネントアナライザ2はスプリッタ3と光結合しており、スプリッタ3は2つのアッテネータ4のそれぞれと光結合している。光コンポーネントアナライザ2は強度変調信号光を出力し、スプリッタ3は、LCA2が出力した強度変調信号光を2つに分岐する。また、LCA2には、光受信器1の出力が入力する。
【0014】
スプリッタ3が分岐した一方の分岐光は、アッテネータ4、光学長調整器6、及び偏波コントローラ5を経由して光受信器1に入力する。他方の分岐光は、アッテネータ4、位相調整器7、及び偏波コントローラ5を経由して光受信器1に入力する。当該他方の分岐光は、発振器8による位相調整器7の制御によって、強度変調とは同期しない低周波の位相変調がかけられている。また、バイアス電源9は、PD電流によって制御される可変バイアス電源である。
【0015】
各偏波コントローラ5は、光の偏光状態を変化させる。2つの偏波コントローラ5のうち一方は光学長調整器6から出力した光の偏光状態を変化させ、他方は位相調整器7から出力した光の偏光状態を変化させる。光学長調整器6は、例えば手動操作型のディレイライン又は電動型のディレイライン等、光学長を補正することが可能な機器である。
【0016】
光学長調整器6を介して偏波コントローラ5から出力する光が信号光であり、位相調整器7を介して偏波コントローラ5から出力する光が局発光である。局発光は位相調整器7によって位相変調されており、信号光は位相変調されていない。光受信器1は、受光した信号光及び局発光を干渉させることにより差動出力を得る。光受信器1からはLCA2が提供するRF信号に依存した信号が出力する。
【0017】
前述したように、LCA2からはAC変調された信号光が出力するが、光受信器1の周波数特性は、このAC変調周波数に対する各出力(Ix,Iy,Qx,Qy)の周波数特性に相当する。光受信器1の周波数特性の測定は、局発光のみを光受信器1に入力して行い、それとは別に、信号光のみを光受信器1に入力して行う。周波数特性の測定中に、光学長調整器6及び位相調整器7による各調整は行わない。
【0018】
局発光のみを光受信器1に入力した測定、及び信号光のみを光受信器1に入力した測定を行うことにより、ノイズ除去能力を示すCMRR(Common-Mode Rejection Ratio)をチャネル(Ix,Iy,Qx,Qy)ごとに測定する。各チャネルは2つのPDを有する。
【0019】
これらのPDは、局発光と信号光の両方が入力した場合には、光受信器1の内部の90°ハイブリッドによる相補的な光信号を受光する。しかし、局発光及び信号光のいずれか一方のみが入力した場合には、理論的には相補的な二つの光信号は生成されず、同じ強度および同じ位相の光信号を受光し、その差動信号はゼロになる。しかしながら、実際はゼロではなく、有意な値の差動信号が出力する。当該差の大きさと、各PDが出力する信号の強度の比からCMRRを求めることができる。
【0020】
ここで、光路L1及び光路L2の電気長が異なっている場合には、変調周波数を掃引する際に、この電気長の差に依存して出力信号強度にビートが現れ、光受信器1の正確な周波数特性を得ることができない。信号光、局発光二つの経路の電気長をそろえるため、本発明に係る測定では、二つの経路の光学長を調整することにより行う。
【0021】
そこで、光路L1及び光路L2の光学長(電気長)を揃えるために、信号光が通る光路L1に光学長調整器6を配置する。この光学長調整器6が光路L1の実効光学長を調整して、光路L1の光学長を光路L2の光学長に揃える。これにより、掃引周波数の範囲内の全ての周波数において、光学長(電気長)の差による周波数特性への影響を回避することが可能となる。
【0022】
次に、光学長調整器6が光路L1の実効光学長を調整する方法について説明する。まず、位相調整器7へのバイアスを低周波の発振器8に切り替える。発振波形は三角波、鋸波、正弦波等を採用することができるが、矩形波は好ましくない。すなわち、最大値〜最少値の範囲を連続的に掃引できる波形であればよい。位相調整器7は、バイアスを与えることによって素子の母材の屈折率を可変として光の位相を変える。位相調整器7の母材としては、電気光学効果が大きいLiNbO等を用いる。そして、発振器8が例えば周波数が数Hzでその振幅が数Vの信号を位相調整器7に与えつつ、LCA2の変調周波数を所定の周波数(例えば40GHz)まで掃引する。
【0023】
このとき、光受信器1の一のチャネルについて差動出力の周波数特性を測定すると、図2に示すスペクトルが得られる。図2中の細線が測定データを示しており、太線は測定データの包絡線を示している。また、二つの光路の光路長を一致させた場合、すなわち、二つの入力信号についての電気長が一致した時の周波数特性を波線で示している。
【0024】
図2に示すように、低周波位相変調に追随して差動出力にはビートが現れる。また、ビートが消える周波数(図2では6GHz付近)は、光学長の差が周波数特性に影響しない周波数を示す。すなわち、この周波数に対応する光路長の差が二つの光路に存在することが示される。この光路長だけ他方の経路L1に付加あるいは減ずることにより、二つの経路の光路長、すなわち電気長が一致する。光学長調整器6は、この周波数に対応する光学長を光路L1に追加する。その後、周波数特性の測定を再度行う。そして、得られたスペクトルにビートが残っている場合、光学長調整器6は前述の光学長を光路L1から削減する。この状態で、位相調整器7に信号を付加しない状態で信号光と局発光の光路の光路長(すなわち電気長)が等しく設定されている。
【0025】
以上のように、光学長調整器6が光路L1に対し光学長の追加及び削減を行うことにより、光路L1の光学長と光路L2の光学長を揃えることができる。しかしながら、光路L1及び光路L2の光学長は、温度又は機械的振動といった周辺環境の影響を受けやすく、サブミクロンオーダーの物理長の維持精度が要求される。このため、少なくとも周波数特性の測定の間に、局発光の光路L2の光学長について、光受信器1の差動出力を最大として以下の帰還制御を行う。
【0026】
この帰還制御では、位相調整器7へ与える駆動信号をバイアス電源9に切り替える。そして、光受信器1の差動出力が最大となるようにバイアス電源9を制御して、変調周波数を所定の周波数(例えば40GHz)まで掃引する。その間、バイアス電源9への帰還制御によってコヒーレント光受信器1の出力を最大値に維持する。
【0027】
ここで、一掃引期間中にバイアス電源9を連続的に帰還制御すると、バイアス電源9の出力が飽和することがある。位相調整器7に与える光信号の一周期(2π)に相当するバイアス(2Vπ)は数V程度であるが、環境条件によっては光学長が一周期以上変動する場合があり、バイアスが±2Vπの範囲を超えて、例えば2Vπ〜4Vπ、4Vπ〜6Vπ・・・と増加(又は減少)する場合がある。
【0028】
このように、バイアス電源9の上限(下限)の値(±2Vπ)を超えると、位相調整器7を適正に制御できなくなり測定される周波数特性が乱れることが懸念される。これに対し、バイアス電源9をリセットする(バイアスを0とする)制御を採った場合、適正な位相遅れ(位相進み)が光路L2に設定されない状態となる。よって、再び帰還制御により適正なバイアス値を得るまでの間、周波数特性の測定ができなくなる。
【0029】
そこで、本実施形態の測定方法では、位相調整器7の駆動バイアスの電圧範囲における上限付近及び下限付近の設定値(±(2Vπ−Δ))にまでバイアスが上昇(又は下降)したときに、そのバイアス電圧を±2Vπ変化させる。すなわち、バイアス信号の電圧値の絶対値が2Vπよりも設定値Δだけ少ない値に達したときにバイアス信号の電圧を2Vπ増減する。バイアス電圧を2Vπ増減しても位相調整器7による位相調整状態は変わらない。
【0030】
バイアス電圧を2Vπ増減しても、帰還制御を始めるときの初期値が目標値に略一致しているため短時間で安定バイアスに移行することができる。従って、周波数掃引が与える影響(ある掃引期間において適正な結果が得られない状態)を回避することができる。
【0031】
また、光受信器1の周波数特性の測定において、信号光と局発光の差を帰還しているときに、位相調整器7が制御不能になることがなくなるため、安定して周波数特性の測定ができるようになる。なお、この測定方法では、位相調整器7について、所定の波長の光における一周期の進み(遅れ)を与える駆動電圧(2Vπ)の値を求めておく必要がある。
【0032】
(第2の実施形態)
図1に示す測定系では信号光の光路長に光学長調整器6を挿入し、この光学長調整器6の等価光学長を、局発光の光路に挿入された位相調整器7にゼロバイアスが付加された時の二つの光路の光路長を一致させる光学長に調整することで、二つの光路の光学長(電気長)を一致させた。第2の実施形態では、光学長調整器6を固定の光学長を与える光部品に置き換える。そして第1の実施形態と同様に、位相調整器7に低周波発振器8を接続し、当該低周波によるバイアスを印加しつつ信号光と局発光を干渉させて得る差動出力を測定し、図2に示すビート波形を含むスペクトルから二つの光についての光路長(電気長)を一致させるバイアス信号を得る。
【0033】
第2の実施形態では、コヒーレント光受信器1の差動出力を極大とする様にバイアス電源9に帰還制御を行う際に、バイアス電源9は、上記光路長を等しく設定する測定で得られたバイアス信号を中心に位相調整器に与えるバイアスを可変とする。そして、周波数掃引中のバイアス信号の変化量が2Vπ−Δに達した時に、バイアス信号を2Vπ増減させることで、二つの光路の光路長(電気長)の差を随時補償する制御を行うことができる。ここで、バイアス電源9とは別の電源に定常状態において二つの光路長(電気長)を等しく設定するバイアスを設定しておき、当該別の電源を発振器9に置き換えてコヒーレント光受信器の差動出力の周波数特性を測定することも可能である。
【0034】
この第2の実施形態においては、二つの光路長を等しく設定するための所定のバイアス信号の値が小さい時、たとえば、バイアス電源9にオフセット電圧として設定したとしても、周波数掃引時の帰還制御に起因して生ずるバイアス信号の大きさを制限しない時、すなわち、当該オフセット電圧に2Vπの値を付加したとしても、バイアス電源9の上下限の値を超えない場合、2Vπを付加したとしてもバイアス電源9の上下限の出力に対して十分な余裕が残る場合に有効である。
【0035】
一方、上記予め設定する所定のバイアス値が大きく、周波数掃引中のバイアス変化量を加味した際のバイアスが、バイアス電源の上下限を超える、あるいは十分に近付くことが予想される場合には、信号光の光路中の光学長調整器6を挿入し、所定のバイアス値をゼロに設定する系を採用することが好ましい。
【0036】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【符号の説明】
【0037】
1…光受信器(コヒーレント光受信器)、2…光コンポーネントアナライザ(LCA)、3…スプリッタ、4…アッテネータ、5…偏波コントローラ、6…光学長調整器、7…位相調整器(位相調整素子)、8…発振器、9…バイアス電源、L1,L2…光路、S…測定系。
図1
図2