(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータとサーマルヘッドは、印刷装置のプロセッサがタイマー割り込み処理を行うことによって制御されている。
【0005】
印刷装置が1ライン分の印刷と搬送を行う間(以降、この期間の時間幅を1ライン周期と記す)に、モータの励磁状態の切り替え(以降、励磁切り替えと記す)を1回行う場合には、励磁切り替えのための割り込み処理がサーマルヘッドを制御するための割り込み処理と重なることはない。このため、モータとサーマルヘッドはプログラミングされたどおりに動作する。
【0006】
しかしながら、被印刷媒体の搬送をより細かく制御するため、あるいは、被印刷媒体の搬送量を多くするために、1ライン周期中に励磁切り替えを複数回行う場合には、励磁切り替えのための割り込み処理を実行予定の期間がサーマルヘッドを制御するための割り込み処理を実行予定の期間と重なるように設定されしまうことがある。この場合、何れか一方の割り込み処理に遅延が生じて、モータとサーマルヘッドがプログラミングされたどおりに動作しないことがある。
【0007】
特に、励磁切り替えのための割り込み処理を実行予定の期間中にサーマルヘッドを制御するための割り込み処理を開始させるように設定されている場合、励磁切り替えのための割り込み処理が終了した後にサーマルヘッドを制御するための割り込み処理が実行されることになり、その結果、サーマルヘッドを制御するための割り込み処理が遅延することになる。これによりサーマルヘッドの通電時間が意図せず変動してしまう。通電時間の意図しない変動は、印刷品位を劣化させる一要因である印刷濃度の変動を引き起こすため、望ましくない。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、印刷装置における割り込み処理の遅延に起因する印刷品位の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、前記被印刷媒体を搬送する搬送部と、前記サーマルヘッドと前記搬送部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されている
か否かを判定し、前記第1処理が前記第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定したときに、前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外
であり、且つ、前記第1処理を開始させるタイミングより後のタイミング、又は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理を開始させるタイミングより前となるタイミングとなるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更する。
【0010】
本発明の一態様に係る印刷装置の制御方法であって、前記印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、前記被印刷媒体を搬送する搬送部を有する印刷装置の制御方法は、前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されている
か否かを判定し、前記第1処理が前記第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定したときに、前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外
であり、且つ、前記第1処理を開始させるタイミングより後のタイミング、又は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理を開始させるタイミングより前となるタイミングとなるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更する。
【0011】
本発明の一態様に係る印刷装置を制御するコンピュータにより実行されるプログラムであって、前記印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、前記被印刷媒体を搬送する搬送部と、を有する、プログラムは、前記コンピュータに対して、前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されている
か否かを判定し、前記第1処理が前記第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定したときに、前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外
であり、且つ、前記第1処理を開始させるタイミングより後のタイミング、又は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理を開始させるタイミングより前となるタイミングとなるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更させる。
【発明の効果】
【0012】
上述の態様によれば、印刷装置における割り込み処理の遅延に起因する印刷品位の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。印刷装置1は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドを備える印刷装置であり、例えば、長尺状の被印刷媒体Mに、シングルパス方式で印刷を行うラベルプリンタである。以降では、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタを例にして説明するが、印刷方式は特に限定されない。例えば、感熱紙を使用する感熱方式であってもよい。被印刷媒体Mは、例えば、接着層を有する基材と、接着層を覆うように剥離可能に基材に貼付された剥離紙と、を有するテープ部材である。被印刷媒体Mは、離型紙なしのテープ部材であってもよい。
【0015】
印刷装置1は、
図1に示すように、装置筐体2と、入力部3と、表示部4と、開閉蓋18と、カセット収納部19を備える。装置筐体2の上面には、入力部3、表示部4、及び開閉蓋18が配置されている。また、図示しないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0016】
入力部3は、入力キー、十字キー、変換キー、決定キーなどの種々のキーを備える。表示部4は、例えば液晶表示パネルであり、入力部3からの入力に対応する文字等、各種設定のための選択メニュー、各種処理に関するメッセージ等を表示する。また、印刷中には、被印刷媒体Mへの印刷が指示された文字や図形等の内容(以降、印刷内容と記す)が表示され、印刷処理の進捗状況が表示されてもよい。なお、表示部4にはタッチパネルユニットが設けられていてよく、その場合、表示部4を入力部3の一部として看做してもよい。
【0017】
開閉蓋18は、カセット収納部19の上部に開閉可能に配置されている。開閉蓋18は、ボタン18aを押下されることにより開放される。開閉蓋18には、この開閉蓋18が閉じた状態でもカセット収納部19にテープカセット30(
図2参照)が収納されているか否かを目視で確認可能とするために、窓18bが形成されている。また、装置筐体2の側面には、排出口2aが形成されている。印刷装置1内で印刷が行われた被印刷媒体Mは、排出口2aから装置外へ排出される。
【0018】
図2は、印刷装置1に収納されるテープカセット30の斜視図である。
図3は、印刷装置1のカセット収納部19の斜視図である。
図4は、印刷装置1の断面図である。
図2に示すテープカセット30は、
図3に示すカセット収納部19に着脱自在に収納される。
図4には、テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態が示されている。
【0019】
テープカセット30は、
図2に示すように、サーマルヘッド被挿入部36及び係合部37が形成された、被印刷媒体MとインクリボンRを収容するカセットケース31を有する。カセットケース31には、テープコア32とインクリボン供給コア34とインクリボン巻取りコア35が設けられている。被印刷媒体Mは、カセットケース31内部のテープコア32にロール状に巻かれている。また、熱転写用のインクリボンRは、その先端がインクリボン巻取りコア35に巻きつけられた状態で、カセットケース31内部のインクリボン供給コア34にロール状に巻かれている。
【0020】
装置筐体2のカセット収納部19には、
図3に示すように、テープカセット30を所定の位置に支持するための複数のカセット受け部20が設けられている。また、カセット受け部20には、テープカセット30が収容するテープ(被印刷媒体M)の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ24が設けられている。テープ幅検出スイッチ24は、被印刷媒体Mの幅を検出する検出手段として機能する。
【0021】
カセット収納部19には、さらに、被印刷媒体Mに印刷を行う複数の発熱素子を有するサーマルヘッド10と、被印刷媒体Mを搬送する搬送手段であるプラテンローラ21と、テープコア係合軸22と、インクリボン巻取り駆動軸23が設けられている。さらに、サーマルヘッド10には、サーミスタ13が埋め込まれている。サーミスタ13は、サーマルヘッド10の温度を測定する測定手段として機能する。
【0022】
テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態では、
図4に示すように、カセットケース31に設けられた係合部37がカセット収納部19に設けられたカセット受け部20に支持されて、サーマルヘッド10がカセットケース31に形成されたサーマルヘッド被挿入部36に挿入される。また、テープコア係合軸22には、テープカセット30のテープコア32が係合し、さらに、インクリボン巻取り駆動軸23には、インクリボン巻取りコア35が係合する。
【0023】
印刷装置1に印刷指示が入力されると、被印刷媒体Mは、プラテンローラ21の回転によりテープコア32から繰り出される。この際、インクリボン巻取り駆動軸23がプラテンローラ21に同調して回転することで、被印刷媒体MとともにインクリボンRがインクリボン供給コア34から繰り出される。これにより、被印刷媒体MとインクリボンRは重なった状態で搬送される。そして、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過する際にインクリボンRがサーマルヘッド10によって加熱されることで、インクが被印刷媒体Mに転写され、印刷が行われる。
【0024】
サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した使用済みのインクリボンRは、インクリボン巻取りコア35に巻き取られる。一方、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した印刷済みの被印刷媒体Mは、ハーフカット機構16及びフルカット機構17で切断され、排出口2aから排出される。
【0025】
図5は、印刷装置1の制御ブロック図である。印刷装置1は、上述の入力部3、表示部4、サーマルヘッド10、サーミスタ13、ハーフカット機構16、フルカット機構17、プラテンローラ21、テープ幅検出スイッチ24に加えて、制御部5、ROM(Read Only Memory)6、RAM(Random Access Memory)7、表示部駆動回路8、ヘッド駆動回路9、搬送用モータ駆動回路11、ステッピングモータ(搬送部)12、カッターモータ駆動回路14、及び、カッターモータ15を備える。なお、制御部5、ROM6、及びRAM7は、印刷装置1のコンピュータを構成する。
【0026】
制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ5aを含む。制御部5は、ROM6に記憶されているプログラムをRAM7に展開し実行することで、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、例えば、サーマルヘッド10を制御するヘッド制御手段であり、プラテンローラ21を制御する搬送制御手段であり、カット機構を制御するカット制御手段である。
【0027】
ROM6は、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷プログラム、印刷プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント等)を記憶する。なお、ROM6は、制御部5によって読取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体としても機能する。
【0028】
RAM7は、印刷についての情報(以降、印刷情報と記す)を記憶する入力データメモリとして機能する。また、RAM7は、印刷情報に基づいて生成される、被印刷媒体に形成すべき印刷内容のパターンを示すデータ(以降、印刷データと記す)を記憶する印刷データメモリとしても機能する。さらに、RAM7は、印刷情報に基づいて生成される、表示用データを記憶する表示データメモリとしても機能する。
【0029】
表示部駆動回路8は、RAM7に記憶された表示用データに基づいて表示部4を制御する。表示部4は、表示部駆動回路8の制御下で、例えば、印刷処理の進捗状況が認識可能な態様で印刷内容を表示してもよい。
【0030】
ヘッド駆動回路9は、印刷データとストローブ信号に基づいて複数の発熱素子10aへの通電を行う。サーマルヘッド10は、主走査方向に配列された複数の発熱素子10aを有する印刷ヘッドである。サーマルヘッド10は、制御部5から送出されたストローブ信号がONである期間(即ち、通電期間)に、印刷データに応じて、発熱素子10aがヘッド駆動回路9により選択的に通電されることで、発熱素子10aでインクリボンRを加熱して熱転写により被印刷媒体Mに1ラインずつ印刷を行う。
【0031】
なお、ヘッド駆動回路9が保持する印刷データは、サーマルヘッド10が1ライン分の印刷を行う通電期間中に1回だけ切り替えられる。より詳細には、通電期間中にヘッド駆動回路9が保持する印刷データは、本通電データから履歴通電データに切り替えられる。ここで、本通電データとは、その通電期間中に印刷が行われるライン(以降、対象ラインと記す。)に形成すべき印刷パターンを示す印刷データである。また、履歴通電データとは、対象ラインよりも先に印刷が行われる先行ライン(例えば、対象ラインよりも1ライン前のラインなど)の印刷データに基づいて生成された印刷データである。
【0032】
搬送用モータ駆動回路11は、ステッピングモータ12を含む搬送部を駆動する。搬送部を構成するステッピングモータ12は、プラテンローラ21を駆動する。プラテンローラ21は、ステッピングモータ12の動力によって回転し、被印刷媒体Mの長手方向(副走査方向)に被印刷媒体Mを搬送する搬送手段である。
【0033】
カッターモータ駆動回路14は、カッターモータ15を駆動する。ハーフカット機構16及びフルカット機構17は、カッターモータ15の動力によって動作し、被印刷媒体Mをハーフカット又はフルカットする。フルカットとは、被印刷媒体Mの基材を剥離紙とともに幅方向に沿って切断する動作のことであり、ハーフカットは、基材のみを幅方向に沿って切断する動作のことである。
【0034】
以上のように構成された印刷装置1では、制御部5のプロセッサ5aが割り込み処理によってサーマルヘッド10とステッピングモータ12を制御することで、被印刷媒体Mに印刷が行われる。例えば、印刷装置1が1ライン周期中にステッピングモータ12の励磁状態を1回だけ切り替えて印刷を行う場合であれば、プロセッサ5aは、
図6に示すような複数の割り込み処理を行う。
【0035】
図6に示す割り込み処理Ps1から割り込み処理Ps3は、サーマルヘッド10を制御するための割り込み処理(以降、第1の割り込み処理と記す。第1処理ともいう。)であり、ハッチングで示している領域はこの割り込み処理を実行予定の期間を示している。割り込み処理Ps1は、ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理であり、且つ、ヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理である。割り込み処理Ps2は、ヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理である。割り込み処理Ps3は、ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理である。ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理には、ストローブ信号の切り替え処理とそれに付随する処理(例えば、タイマーの設定など)が含まれる。ヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理には、ラッチ信号の切り替え処理とそれに付随する処理(例えば、タイマーの設定など)が含まれる。
【0036】
図6に示す割り込み処理Pmは、搬送部(より詳細にはステッピングモータ12)を制御するための割り込み処理(以降、第2の割り込み処理と記す。第2処理ともいう。)であり、ハッチングで示している領域はこの割り込み処理を実行予定の期間を示しており、ステッピングモータ12の励磁状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理である。ステッピングモータ12の励磁状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理には、励磁切り替え処理とそれに付随する処理(例えば、タイマーの設定など)が含まれる。
【0037】
さらに、印刷装置1では、プロセッサ5aは、サーマルヘッド10を制御するための第1の割り込み処理(Ps1〜Ps3)がステッピングモータ12を制御するための第2の割り込み処理(Pm1、Pm2)の実行予定の期間中に開始されるように設定されているか否かを判定し、第1の割り込み処理が第2の割り込み処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定したときに、第2の割り込み処理(Pm2)を開始させるタイミングを変更して、第1の割り込み処理が第2の割り込み処理の実行中に開始されないようにする、すなわち、第1の割り込み処理を開始させるタイミングが第2の割り込み処理の実行予定の期間外となるように、プログラムされている。プロセッサ5aがこのように動作することで、プロセッサ5aが割り込み処理を時間的に並列に処理できない場合であっても、サーマルヘッド10を制御するための第1の割り込み処理が遅延することはない。このため、印刷装置1は、設計どおりの通電時間で印刷を行うことができる。従って、割り込み処理の遅延に起因する印刷品位の低下を抑制することができる。
【0038】
図7は、割り込みタイミング決定処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、1ライン周期当たり2回の励磁切り替えが発生する場合のタイミングチャートの一例であり、各割り込み処理が互いに重ならない場合の一例である。
図9及び
図10は、1ライン周期当たり2回の励磁切り替えが発生する場合のタイミングチャートの一例であり、各割り込み処理の一部が互いに重なる場合の例である。
図9は、
図7に示す割り込みタイミング決定処理が行われて割り込みタイミングが調整された場合の例であり、
図10は、
図7に示す割り込みタイミング決定処理が行われず、割り込みタイミングが調整されなかった場合の例である。
【0039】
以下、
図7から
図10を参照しながら、1周期あたり2回の励磁切り替えが発生する場合を例にして、プロセッサ5aで行われる
図7に示す割り込みタイミング決定処理について具体的に説明する。なお、割り込みタイミング決定処理は、例えば、1ライン毎に、ストローブ信号をOFF状態(High状態)からON状態(Low状態)に変更する割り込み処理Ps1中で行われる。
【0040】
割り込みタイミング決定処理が開始されると、プロセッサ5aは、まず、1ライン周期Tcを取得する(ステップS1)。1ライン周期Tcは、印刷装置1の印刷速度によって決定されている。
【0041】
次に、プロセッサ5aは、本通電時間Ttと履歴通電時間TRを取得する(ステップS2)。本通電時間Ttとは、本通電データに基づいてサーマルヘッド10が制御される期間の幅である。履歴通電制御時間TRとは、履歴通電データに基づいてサーマルヘッド10が制御される期間の幅である。本通電時間Ttと履歴通電時間TRの合計が1ライン周期Tc中でストローブ信号がON状態に維持される通電時間である。本通電時間Ttと履歴通電時間TRは、サーマルヘッド10の温度が低いほど長くなるように決定されている。
図9及び
図10は、
図8よりもサーマルヘッド10の温度が低いときのタイミングチャートを示している。
【0042】
通電時間が取得されると、プロセッサ5aは、励磁切り替え周期Tr1、Tr2を取得する(ステップS3)。励磁切り替え周期Tr1は、1ライン周期中の1回目の励磁切り替えタイミングES1から2回目の励磁切り替えタイミングES2までの時間であり、励磁切り替え周期Tr2は、1ライン周期中の2回目の励磁切り替えタイミングES2から次のライン周期の1回目の励磁切り替えタイミングES1までの時間である。励磁切り替え周期Tr1とTr2は、通常は同じ時間に設定されていて、1ライン周期Tcの半分である。即ち、Tr1=Tr2=Tc/2の関係が成り立っている。
【0043】
その後、プロセッサ5aは、ステップS1からステップS3で取得した情報に基づいて、各割り込み処理のタイミングが互いに重なるように設定されているかどうかを判定する(ステップS4)。ここでは、プロセッサ5aは、サーマルヘッド10を制御するための第1の割り込み処理がステッピングモータ12を制御するための第2の割り込み処理の実行予定の期間中に開始されるように設定されているかどうかを判定する。なお、判定方法は特に限定されない。
【0044】
プロセッサ5aは、例えば、最も重なりが生じやすいと想定される、1ライン周期Tc中の2回目の励磁切り替えのためのタイマー割り込み処理Pm2とストローブ信号をOFF状態に切り替えるためのタイマー割り込み処理Ps3に注目してもよい。その場合、下式(1)を満たしているか否かによって、各割り込み処理のタイミングが重なるように設定されているかどうかを判定してもよい。なお、Tthは第1の割り込み処理の実行に要する処理時間であり、Tmは第2の割り込み処理の実行に要する処理時間である。
Tth+Tr1≦Tt+TR≦Tth+Tr1+Tm (1)
【0045】
式(1)を満していないときには、Tt+TRで表されるタイマー割り込み処理Ps3の開始タイミングが、Tth+Tr1とTth+Tr1+Tmで表されるタイマー割り込み処理Pm2の実行予定の期間外に位置する。例えば、
図8は、式(1)を満たしていない状態に該当する。このため、プロセッサ5aは、第1の割り込み処理は第2の割り込み処理の実行予定の期間中に開始されないように設定されていると判定する。
【0046】
式(1)を満しているときには、Tt+TRで表されるタイマー割り込み処理Ps3の開始タイミングが、Tth+Tr1とTth+Tr1+Tmで表されるタイマー割り込み処理Pm2の実行予定の期間内に位置する。例えば、
図9に破線で示すタイマー割り込み処理(第2の割り込み処理)Pm2’は、式(1)を満たした状態に該当する。このため、プロセッサ5aは、第1の割り込み処理は第2の割り込み処理の実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定する。
【0047】
ステップS4で各割り込み処理のタイミングが互いに重なるように設定されていないと判定されると、プロセッサ5aは、各割り込み処理のタイミングを調整することなく、割り込みタイミング決定処理を終了する。これにより、例えば、
図8に示すような割り込み処理のタイミングが確定する。
【0048】
一方、ステップS4で各割り込み処理のタイミングが互いに重なるように設定されていると判定されると、プロセッサ5aは、励磁切り替え周期Tr1、Tr2を変更し(ステップS5)、割り込みタイミング決定処理を終了する。ここでは、プロセッサ5aは、励磁切り替え周期Tr1、Tr2を変更して、第2の割り込み処理の開始タイミングを、第1の割り込み処理が第2の割り込み処理の実行中に開始されないように、変更する。
【0049】
式(1)に基づいて各割り込み処理が重なるように設定されていると判定されている場合であれば、プロセッサ5aは、例えば、励磁切り替え周期Tr1とTr2をそれぞれ下式(2)と(3)のように更新して、第2の割り込み処理の開始タイミングを第1の割り込み処理の実行予定の期間外となるように遅らせてもよい。これにより、例えば、
図9に示すような各割り込み処理のタイミングが確定する。
Tr1=Tt+TR (2)
Tr2=Tc−Tr1 (3)
【0050】
また、プロセッサ5aは、励磁切り替え周期Tr1とTr2をそれぞれ下式(4)と(5)のように更新して、第2の割り込み処理を開始させるタイミングを、第2の割り込み処理の実行予定の期間が第1の割り込み処理の実行予定の期間外となるように早めてもよい。
Tr1=Tt+TR−(Tth+Tm) (4)
Tr2=Tc−Tr1 (5)
【0051】
図7に示す制御処理を行う印刷装置1によれば、
図9に示すように、サーマルヘッド10を制御するための第1の割り込み処理とステッピングモータ12を制御するための第2の割り込み処理が重なるように設定されていた場合であっても、第1の割り込み処理が遅延することを防止することができる。これにより、印刷装置1は、サーマルヘッド10の温度に基づいて決定された通電時間(Tt+TR)どおりの通電制御を行うことができるため、割り込み処理の遅延に起因する印刷品位の低下を抑制することができる。また、印刷装置1は、既存の製品のソフトウェアを変更することで実現可能であり、ハードウェア的な変更を要しない。
【0052】
なお、並列処理を行わないプロセッサ5aが
図7に示すような制御処理を行わないと、
図10に示すように、第1の割り込み処理と第2の割り込み処理とが重なるように設定さてしまった場合に、後から発生した第1の割り込み処理は第2の割り込み処理が終了してから実行されることになる。このため、第1の割り込み処理が遅延してしまう。従って、
図7に示すような制御処理は、プロセッサ5aが並列処理を行わない場合に特に効果的であり、プロセッサ5aのスペックよらず印刷品位の低下を抑制することができる。ただし、プロセッサ5aが並列処理を行う場合にも、
図7に示すような制御処理が行われてもよい。
【0053】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0054】
上述した実施形態では、入力部3と表示部4を有する印刷装置1を例示したが、印刷装置は、入力部3における操作や表示部4における表示を要さない印刷装置であってもよく、印刷データを別体に配置されたコンピュータから受信する印刷装置であってもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、最も重なりやすいと想定される割り込み処理Pm2とPs3の重なりを判定することで、1ライン周期中における各割り込み処理の重なりの有無を判定する例を示したが、判定方法はこの方法に限らない。例えば、割り込み処理Pm2とPs3に加えて、割り込み処理Pm2とPs2の重なりを判定してもよい。また、各割り込み処理の重なりを個別に全て判定してもよい。
【0056】
割り込み処理の重なりを判定する対象である第1の割り込み処理は、処理の遅延により通電時間が変動するものであればよい。このため、判定対象とする第1の割り込み処理は、ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理だけを含んでもよく、ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理とヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理の両方を含んでも良い。また、ヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理だけを含んでも良い。つまり、ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理、又は、ヘッド駆動回路9が保持する印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理の少なくとも一方を含んでいれば良い。
【0057】
また、上述した実施形態では、1ライン周期当たり2回の励磁切り替えが発生する場合を例に説明したが、励磁切り替え回数は2回に限られない。複数回の励磁切り替えが発生する高精細な印刷が行われる場合に特に効果的であり、3回以上の励磁切り替えが発生する場合において、プロセッサ5aが各割り込み処理の重なりを判定してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、通電期間中に印刷データを1回だけ切り替える例を示したが、印刷データの切り替え回数は1回に限られない。プロセッサ5aは、通電期間中に複数回の印刷データの切り替えが行われる印刷装置において、上述した印刷制御を行ってもよい。
【0059】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、
前記被印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記サーマルヘッドと前記搬送部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されているとき、前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外となるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更することを特徴とする印刷装置。
【0060】
[付記2]
付記1に記載の印刷装置は、さらに、
印刷データとストローブ信号に基づいて前記サーマルヘッドが有する複数の発熱素子への通電を行うヘッド駆動回路を備え、
前記第1処理は、前記ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理を含み、
前記搬送部は、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段を駆動するためのモータを有し、前記第2処理は、前記モータの励磁状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理を含む、
ことを特徴とする印刷装置。
【0061】
[付記3]
付記1に記載の印刷装置は、さらに、
印刷データとストローブ信号に基づいて前記サーマルヘッドが有する複数の発熱素子への通電を行うヘッド駆動回路を備え、
前記第1処理は、前記ストローブ信号の状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理、又は、前記ヘッド駆動回路が保持する前記印刷データを切り替えるためのタイマー割り込み処理、の少なくとも一方を含み、
前記搬送部は、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段を駆動するためのモータを有し、前記第2処理は、前記モータの励磁状態を切り替えるためのタイマー割り込み処理を含む
ことを特徴とする印刷装置。
【0062】
[付記4]
付記1乃至付記3のいずれか1つに記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記第1処理が前記第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されているか否かを判定し、
前記第1処理が前記第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されていると判定したときに、前記第2処理を開始させるタイミングを、前記第1処理を開始させるタイミングより後のタイミング、又は、前記第2処理の終了タイミングが前記第1処理を開始させるタイミングより前となるタイミング、に変更する、
ことを特徴とする印刷装置。
【0063】
[付記5]
印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、前記被印刷媒体を搬送する搬送部と、を有し、
前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されているとき、前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外となるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【0064】
[付記6]
印刷装置を制御するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドと、前記被印刷媒体を搬送する搬送部と、を有し、
前記コンピュータに対して、
前記サーマルヘッドを制御するための第1処理が、前記搬送部を制御するための第2処理を実行予定の期間中に開始されるように設定されているとき前記第1処理を開始させるタイミングが前記第2処理を実行予定の期間外となるように前記第2処理を開始させるタイミングを変更させる
ことを特徴とするプログラム。