(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子と、前記抵抗素子と電気的に絶縁した状態で設けられ、前記抵抗素子が発熱した際に自身に流れる熱量を検出するとともに、検出した熱量に応じた信号を出力する熱流センサと、前記熱流センサを挟んで前記抵抗素子とは反対となる側に設けられている金属部材とを有する絶縁型信号伝達装置を備える電子機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、産業用機器の場合、各種の安全規格を満足することが求められる。例えば、絶縁型信号伝達装置であれば、内部回路との絶縁を確保するために、絶縁体が介在しない部位には回路パターンを設けない領域を設定すること等が求められている。このため、フォトカプラを使った絶縁型伝達装置では、必要とする基板表面のスペースが大きくなりがちであった。その結果、基板の大型化を招いたり、スペースが足らないことから新たな機能の追加が制限されたりする等のおそれがあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化することができる絶縁型信号伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明では、入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子と、抵抗素子とは電気的に絶縁した状態で設けられ、抵抗素子が発熱した際に自身に流れる熱量を検出するとともに、検出した熱量に応じた信号を出力する熱流センサと、を備える。
つまり、絶縁型信号伝達装置は、一般的には温度検出を目的として使用される熱流センサを出力段に用いることにより、入力側となる抵抗素子と出力側となる熱流センサとの間において、熱伝導により電気的に絶縁した状態で信号を伝達することができる。
【0006】
これにより、フォトカプラでは不可能あるいは極めて困難であった例えば基板の表面から裏面への信号の伝達が可能となる。
このとき、抵抗素子は、通電によって発熱することから、フォトカプラの駆動回路のような複数の回路部品を必要としない。そのため、基板に実装する際に必要なスペースを削減できる。
また、信号伝達を熱により行うことから、光で行うように外乱を遮断するパッケージ内に発信源を収納する必要もないことから、その点でも小型化できる。
【0007】
さらに、熱による信号伝達は、基板に使われる部材の材質や厚み等が元々熱伝達し易いものである事を考慮すれば、フォトカプラのような光による信号伝達と比較しても、伝達速度および伝達精度のいずれについても遜色ない性能を示す。そのため、電子機器の絶縁回路を熱を媒介する構成に形成する事は、電子部品としての絶縁回路の性能低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
したがって、絶縁型信号伝達装置を小型化することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明では、抵抗素子と熱流センサとの間に絶縁材料で形成されている基板が介在している。つまり、抵抗素子と熱流センサとの間は、基板によって絶縁されている。基板は、抵抗素子や熱流センサなどの電子部品を実装するために必要となるものである。そして、その基板を抵抗素子と熱流センサとの間に介在させることにより、追加部品を要することなく抵抗素子と熱流センサとの間を電気的に絶縁することができる。したがって、回路の大型化を招くことがない。
【0009】
請求項3に記載した発明では、絶縁型信号伝達装置は、抵抗素子が基板の表面に実装されており、熱流センサが、絶縁材料で形成されている基板の内部に、抵抗素子の実装位置に対応して埋め込まれている。
これにより、基板の表面には、熱流センサを実装するスペースを設ける必要が無くなる。したがって、絶縁型信号伝達装置が占めるスペースを削減でき、基板を小型化することができる。
【0010】
また、絶縁型信号伝達装置が占めるスペースを削減できるということは、基板の大きさが同じであれば他の回路部品を実装するためのスペースを確保できることを意味している。そのため、機能を追加するために他の回路部品を設けることが可能となる。
したがって、絶縁型信号伝達装置の小型化あるいは多機能化を図ることができる。勿論、抵抗素子と熱流センサとの間には、絶縁体である基板が介在することから、電気的に絶縁される。
【0011】
請求項4に記載した発明では、絶縁型信号伝達装置は、熱流センサを挟んで抵抗素子とは反対となる側に金属部材を備える。
伝熱によって信号を伝達する場合、熱が熱流センサに向かって流れるようにすることにより、信号を伝達する際の精度を高めることができると考えられる。その一方で、電気的な絶縁を確保するためには、抵抗素子と熱流センサとの間に熱伝導を促すために金属部品等を配置することは好ましくない。
【0012】
そこで、熱流センサを挟んで抵抗素子とは反対となる側に、基板に比べて相対的に熱伝導性が高くなる金属部材を設けることにより、基板内に、抵抗素子から金属部材に向かう熱の流れ、つまりは、抵抗素子から熱流センサを経由して金属部材に到達する熱の流れを形成する。これにより、抵抗素子に生じた熱を熱流センサに集中させることが可能となり、抵抗素子の発熱による熱流を精度よく検出することができる。そして、熱流を精度よく検出することができれば、信号を伝達する際の精度つまりはS/N比を向上させることができる。
【0013】
請求項5に記載した発明では、絶縁型信号伝達装置は、基板に複数の抵抗素子および熱流センサが設けられ、隣り合う熱流センサ間に位置して、金属部材を分離する分離領域(S)が設けられている。
複数の入力に対処すべく絶縁型信号伝達装置を複数設ける場合、省スペース化のために抵抗素子および熱流センサが隣り合うように配置されると考えられる。そして、抵抗素子が発熱した場合には、その熱は、発熱した抵抗素子を中心として周方向に広がると考えられる。つまり、熱流センサには、対となる抵抗素子だけでなく、近傍に位置するとなりの抵抗素子からの熱が伝達される可能性がある。
【0014】
このとき、熱流センサが対となる抵抗素子以外の抵抗素子からの熱流を検出してしまうと、他のチャンネルからの信号が混入することになる。そこで、金属部材を分離する分離領域を設けることにより、近傍に位置する他の抵抗素子からの熱が紛れ込むこと、つまりは、他のチャンネルからの信号が混入することを抑制できる。
【0015】
請求項6に記載した発明では、絶縁型信号伝達装置は、金属部材として、基板に設けられているグランドパターンを利用している。
熱流センサは、自身に生じる温度差に基づいた電圧を出力する。このとき、自身に生じる温度差が少ない場合には、出力する電圧も低くなる。つまり、熱流センサの周囲が同一温度になった場合には、その温度自体は高くても、出力される電圧は低くなる。
【0016】
一方、グランドパターンは、電流が環流する回路パターンであることから、いわゆるベタパターンとして広い面積で、あるいは、パターン幅が太く形成されている。そのため、グランドパターンに熱が伝わった場合には、直ぐには熱が飽和しにくくなっている。また、グランドパターンは、基板表面に設けられていることも多く、伝わった熱を放出し易いと考えられる。
【0017】
そこで、金属部材としてグランドパターンを利用することにより、熱流センサを通過した熱をグランドパターンから効率的に放出することが可能となるため、熱流センサを通過する熱の流れが促され、熱流センサにおいて、抵抗素子側とグランドパターン側とに十分な温度差を生じさせることができる。したがって、信号を伝達する際の精度を高めることができる。
【0018】
請求項7に記載した発明では、電子機器は、入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子と、抵抗素子が発熱した際に自身に流れる熱量を検出するとともに検出した熱量に応じた信号を出力する熱流センサと、を有する絶縁型信号伝達装置を備えている。この場合、絶縁型信号伝達装置は、上記したように小型化することができることから、基板の小型化あるいは他の回路の実装が可能となる。したがって、産業用機器の小型化や多機能化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について、
図1から
図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の絶縁型信号伝達装置(以下、単に伝達装置1と称する)は、抵抗素子2と熱流センサ3とを備えている。この伝達装置1は、接続端子6(
図2参照)から入力された信号を絶縁して内部回路7(
図2参照)に伝達する。本実施形態では、入力される信号として交流信号を想定している。
【0021】
抵抗素子2は、
図1にIN+、IN−として示す入力信号の端子間に直列に設けられている。また、抵抗素子2と直列にコンデンサ4が設けられている。このため、交流信号が入力されると、抵抗素子2に電流が流れ、その電流によって抵抗素子2が発熱する。つまり、伝達装置1は、入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子2を備えている。本実施形態では、抵抗素子2は、表面実装型のものを採用している。
【0022】
熱流センサ3は、例えば樹脂材料により薄い長方形のフィルム状に形成されており、自身に流れる熱流を検出する。具体的には、熱流センサ3は、内部に異なる種類の金属が互いに接続されて配置されている。そして、熱流センサ3は、本実施形態では厚み方向への熱流が生じると、表面と裏面とに温度差が生じ、ゼーベック効果によってその温度差が電圧に変換される。そして、熱流センサ3は、熱量によって生じた温度差に応じた電圧を出力する。
【0023】
この熱量センサは、詳細は後述する
図3にて説明するが、抵抗素子2の近傍であって、且つ、抵抗素子2からは電気的に絶縁された状態で設けられている。そのため、抵抗素子2が発熱すると、その熱が熱量センサを通過する。その結果、熱量センサは、抵抗素子2の発熱に応じた電圧を出力することになる。なお、熱流センサ3は、検出領域の面積に応じた電圧を出力することから、検出領域の面積が判明していれば、単位面積当たりに流れる熱量を示す熱流束を検出することができる。そのため、熱流センサ3は、熱流束センサとも称される。
【0024】
この場合、抵抗素子2は、交流信号が入力されている状態では電流が流れ続けることから、例えば100度付近の温度で発熱し続ける。このとき、熱流センサ3に流れる熱量が大きくなることから、相対的に大きな電圧値が出力される。一方、抵抗素子2は、交流信号が入力されなくなると、電流が流れないため周囲温度に近い温度となる。このとき、熱流センサ3は、自身に流れる熱量が小さくなる、あるいは無くなることから、相対的に小さな電圧値を出力する。
【0025】
このため、例えば伝達装置1の出力電圧に対して閾値を設定することにより、交流信号が入力されている状態をオン状態、交流信号が入力されていない状態をオフ状態とすれば、例えばスイッチ等のオンオフ状態を伝達することが可能となる。あるいは、交流信号を断続して入力することによって抵抗素子2の発熱量を調整することにより、外部装置の状態を、オンオフの2段階だけでなく複数段階あるいは連続的に伝達することも可能となる。つまり、本実施形態の伝達装置1は、交流−直流変換装置として機能することにより、信号を伝達する。
【0026】
この伝達装置1は、
図2に示すように、基板5に複数が実装されている。この基板5は、例えばガラスエポキシなどの絶縁材料によって形成されている。また、基板5は、一般的には概ね1.6mm程度の厚みに形成されている。そのため、基板5は、その内部に熱が伝達し易い構造となっている。この基板5には、外部装置と接続され、各種の信号が入出力されるコネクタや端子台等の接続端子6、ならびに、図示しない電源回路やマイクロコンピュータ等を含んで構成されている内部回路7が実装されている。
【0027】
本実施形態では、基板5は、産業用機器としてのプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC8と称する)の本体内に設けられている。このような産業用機器は、例えばロボットコントローラやモータコントローラ等に用いられる。
【0028】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、フォトカプラを採用した従来の絶縁型信号伝達装置(以下、便宜的に従来装置と称する)の場合、安全規格を満足させるために回路パターンを設けない領域を設定すること等が求められている。このため、従来装置では、必要とするスペースが大きくなりがちであり、基板の大型化を招いたり、基板上のスペースが足らないことから新たな機能の追加が制限されたりする等のおそれがあった。
【0029】
そこで、本実施形態では、以下のようにして伝達装置1の小型化を図っている。
伝達装置1の抵抗素子2は、
図3に示すように、基板5の一方の面に表面実装されている。以下、便宜的に、抵抗素子2が実装されている側を基板5の上面と称し、その反対側の面を基板5の下面として説明する。
【0030】
一方、熱流センサ3は、絶縁材料で形成されている基板5の内部に、抵抗素子2の実装位置に対応して埋め込まれている。より具体的には、熱流センサ3は、抵抗素子2の実装位置の下方側であって、基板5の上面側からの透過視において少なくとも一部が抵抗素子2に重なった位置に設けられている。また、熱流センサ3は、抵抗素子2との間に基板5という絶縁体が介在する状態であって、且つ、抵抗素子2からの距離が基板5の厚み以下となる位置つまりは抵抗素子2の近傍に設けられている。
【0031】
これにより、基板5の上面において必要となるスペースは、概ね抵抗素子2の大きさに一致することになる。このとき、伝達装置1では、抵抗素子2を発熱させるために必要となるのが1つのコンデンサ4であるため、従来装置のフォトカプラの駆動回路に比べると、回路規模が大幅に小さくなる。
【0032】
そして、絶縁材料で形成されている基板5であっても熱は伝達することから、抵抗素子2が発熱した場合には、その熱は、矢印Fにて示すように熱流センサ3内を流れる。このとき、熱流センサ3は、抵抗素子2の近傍に設けられている。これにより、抵抗素子2の発熱に起因する熱流を精度よく熱流センサ3で検出することが可能となる。
【0033】
そして、熱流センサ3からは検出した熱量に応じた電圧が内部回路7に対して出力されることから、内部回路7は、抵抗素子2が発熱しているか否か、つまりは、本実施形態で言えば交流信号が印加されているか否かを検出することができる。すなわち、伝達装置1は、従来装置のような光による絶縁ではなく、熱伝導による絶縁を実現しており、基板5を熱の伝達経路として利用することによって、伝達装置1に入力された信号を電気的に絶縁した状態で内部回路7側に伝達することができる。
【0034】
また、本実施形態の場合、基板5には、熱流センサ3を挟んで抵抗素子2とは反対となる側つまりは基板5の裏面側に金属部材が設けられている。この金属部材は、本実施形態では熱流センサ3に接触した状態で設けられている。また、金属部材は、本実施形態では基板5の裏面に形成されるグランドパターン9を採用している。なお、このグランドパターン9は、グランド電位を安定させるためのものであり、いわゆるベタパターンとして広い面積で、あるいは、線幅が太い配線パターンで基板5に設けられている金属部材である。つまり、本実施形態の金属部材は、薄板状つまりは基板5の表面や内部に設けることが可能且つ容易な層状に形成されている。
【0035】
つまり、抵抗素子2から熱流センサ3への向きにおいて、熱流センサ3の先に、基板5よりも熱を伝えやすい金属部材が配置されている。これにより、熱流が抵抗素子2から熱流センサ3へ向きに誘導され、抵抗素子2の発熱をより検知しやすくなる。
【0036】
また、グランドパターン9は、その表面が露出した状態で設けられている。これにより、グランドパターン9の表面からの放熱が促され、熱流センサ3の厚み方向における両面間の温度差が大きくなる。そして、温度差が大きくなれば、出力される電圧も大きくなる。したがって、S/N比を向上させることができ、より精度の高い信号伝達が可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、上記したように、基板5に複数の伝達装置1を設けている。この場合、金属部材をグランドパターン9とすると、隣り合う抵抗素子2からの熱流が検出されるおそれがある。そのため、
図4に示すように、隣り合う熱流センサ3間に、グランドパターン9を分離する分離領域(S)を設けている。
【0038】
本実施形態の場合、分離領域(S)は、基板5の下面に広く形成されているグランドパターン9において、互いに隣り合うように配置されている熱流センサ3間に、熱流センサ3の隣り合う辺の長さと概ね同程度となる溝状に形成されている。これにより、基板5上に配置されている抵抗素子2aからの熱は、熱流センサ3aを通ってグランドパターン9a部分から放熱される流れとなる。そして、抵抗素子2aに隣り合う抵抗素子2bからの熱は、熱流センサ3bを通ってグランドパターン9b部分から放熱される流れとなる。
【0039】
これにより、複数の熱流センサ3を設けた場合であっても、各熱流センサ3に、それぞれ対応する抵抗素子2からの熱の流れを集中させることが可能となる。したがって、例えば隣り合った抵抗素子2等、熱流センサ3の近傍に位置する他の抵抗素子2からの熱が紛れ込むこと、つまりは、他のチャンネルからの信号が混入することを抑制できる。この場合、上記したように共通のグランドパターン9に分離領域(S)を設けることもできるが、電気的に接続されていない個別のベタパターンや比較的太い回路パターンを金属部材として採用することで、分離領域(S)が存在する構造としてもよい。
【0040】
以上説明した構成によれば、次のような効果を得ることができる。
伝達装置1は、入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子2と、抵抗素子2とは電気的に絶縁した状態で設けられ、抵抗素子2が発熱した際に自身に流れる熱量を検出するとともに、検出した熱量に応じた信号を出力する熱流センサ3と、を備える。つまり、抵抗素子2は絶縁回路として伝達装置1における入力回路を構成しており、熱流センサ3は入力回路とは電気的に絶縁された出力回路を構成している。
【0041】
これにより、伝達装置1における入力側となる抵抗素子2と出力側となる熱流センサ3との間では、熱伝導によって、つまりは、電気的に絶縁した状態で信号を伝達することができる。すなわち、一般的には温度を検出することが想定される熱流センサ3を、熱伝導による信号伝達素子として用いることにより、例えば基板5の表面から裏面への信号の伝達等、フォトカプラでは不可能あるいは極めて困難であった経路での信号の伝達が可能となる。
【0042】
さらに、熱による信号伝達は、基板に使われる部材の材質や厚み等が元々熱伝達し易いものである事を考慮すれば、フォトカプラのような光による信号伝達と比較しても、伝達速度および伝達精度のいずれについても遜色ない性能を示す。そのため、電子機器の絶縁回路を熱を媒介する構成に形成する事は、電子部品としての絶縁回路の性能低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
【0043】
そして、抵抗素子2は、通電されると、つまりは、電流が流れると発熱するため、フォトカプラとは異なり、複数の回路部品で構成された駆動回路を基本的に必要としない。そのため、基板5に必要なスペースを削減できる。したがって、伝達装置1を小型化することができる。
【0044】
伝達装置1では、抵抗素子2は、基板5の表面に実装されており、熱流センサ3は、絶縁材料で形成されている基板5内に抵抗素子2の実装位置に対応して埋め込まれている。これにより、熱流センサ3を実装するスペースを基板5の表面つまりは上記した上面および下面に設ける必要が無くなる。これにより、伝達装置1が占めるスペースを削減でき、基板5を小型化することが可能となる。
【0045】
また、伝達装置1が占めるスペースを削減できるということは、他の回路部品を実装するためのスペースを確保できることでもあるため、機能を追加することが容易となる。したがって、伝達装置1の小型化あるいは多機能化を図ることができる。勿論、抵抗素子2と熱流センサ3との間には、絶縁体である基板5が介在することから、電気的に絶縁される。
【0046】
伝達装置1は、熱流センサ3を挟んで抵抗素子2とは反対となる側に金属部材を備える。伝熱によって信号を伝達する場合、熱が熱流センサ3に向かうようにすることにより、信号を伝達する際の精度を高めることができると考えられる。その一方で、電気的な絶縁を確保するためには、抵抗素子2と熱流センサ3との間に熱伝導性の高い金属部品等を配置することは好ましくない。
【0047】
そこで、熱流センサ3を挟んで抵抗素子2とは反対となる側に、基板5に比べて相対的に熱伝導性が高くなる金属部材を設けている。これにより、基板5内に、抵抗素子2から金属部材に向かう熱の流れ、つまりは、抵抗素子2から熱流センサ3を経由して金属部材に到達する熱の流れを形成することができる。したがって、熱流センサ3によって抵抗素子2の発熱を精度よく検出することが可能となり、信号を伝達する際の精度つまりはS/N比の向上を図ることができる。
また、本実施形態では金属部材を熱流センサ3に接触する状態で設けているため、熱流センサ3から金属部材への熱の伝達が促され、熱流センサ3の入口側と出口側との温度差が生じやすくなり、伝達精度を向上させることができる。
【0048】
伝達装置1は、基板5に複数の抵抗素子2および熱流センサ3が設けられ、隣り合う熱流センサ3間に位置して、金属部材を分離する分離領域(S)が設けられている。複数の入力に対処すべく伝達装置1を複数設ける場合、省スペースのために、抵抗素子2および熱流センサ3は隣り合うように配置されると考えられる。
【0049】
このとき、抵抗素子2が発熱した場合、その熱は、抵抗素子2を中心として周方向に広がると考えられる。そのため、熱流センサ3には、対となる抵抗素子2だけでなく、近傍に位置するとなりの抵抗素子2からの熱が伝達される可能性がある。そして、熱流センサ3が対となる抵抗素子2以外の抵抗素子2からの熱流を検出してしまうと、他のチャンネルからの信号が混入することになる。
【0050】
そこで、金属部材を分離する分離領域(S)を設けることにより、近傍に位置する他の抵抗素子2からの熱が紛れ込むこと、つまりは、他のチャンネルからの信号が混入することを抑制できる。
【0051】
伝達装置1は、金属部材として、基板5に設けられているグランドパターン9を利用している。熱流センサ3は、上記したように本実施形態では厚み方向への温度差に基づいた電圧を出力することから、温度差が少ない場合には、出力が低くなる。つまり、熱流センサ3の周囲が同じ温度になると、温度自体は高くても、出力される電圧値は低くなる。
【0052】
一方、グランドパターン9は、電流が環流する回路パターンとして、上記したようにベタパターンとして広い面積で、あるいは、線幅が太く形成されている。そのため、熱が伝わったとしても飽和しにくく、また、基板5の表面に設けられていることも多いことから伝わった熱を基板5外に放出し易くなっていると考えられる。
また、グランドパターン9は、熱流センサ3だけでなく他の電子部品が配置されている部分まで延びている。そのため、他の電子部品から発する熱はグランドパターン9に流れることから、熱流センサ3が抵抗素子2から受ける熱に他の電子部品からの熱が混じり難い。よって熱流センサ3の検出精度つまりは信号の伝達精度を向上させることができる。
【0053】
そこで、金属部材としてグランドパターン99を利用することにより、熱流センサ3を通過した熱をグランドパターン9から効率的に放出することが可能となる。これにより、熱流センサ3を通過する熱の流れが促され、熱流センサ3において、抵抗素子2側とグランドパターン9側とに十分な温度差を生じさせることができる。したがって、信号を伝達する際の精度を高めることができる。
【0054】
また、入力される信号に応じた電流が印加されることにより発熱する抵抗素子2と、抵抗素子2が発熱した際に自身に流れる熱量を検出するとともに検出した熱量に応じた信号を出力する熱流センサ3と、を有する伝達装置1を備える電子機器例えば実施形態で示したPLC8などの産業用機器は、上記した効果を得ることができ、小型化や多機能化を図ることができる。
【0055】
本発明は上記した、または図面に記載した例にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形又は拡張することができる。
例えば、実施形態では基板5の下面にグランドパターン9を設けた例を示したが、これに限定されない。グランドパターン9は、例えば
図5に示すように、基板5の下面に埋め込む形で設けることができる。このような構成によっても、実施形態と同様の効果を得ることができ、伝達装置1を小型化することができる。
【0056】
あるいは、グランドパターン9は、例えば
図6に示すように、基板5内に埋め込んでもよい。この場合であっても、グランドパターン9の方が基板5よりも伝熱性が高いことから、抵抗素子2から熱流センサ3の向きへの熱の流れを促すことが可能となり、実施形態と同様の効果を得ることができ、伝達装置1を小型化することができる。
【0057】
また、抵抗素子2と熱流センサ3との間に基板5が介在しているという状態は、基板5の上面に例えば抵抗素子2を実装し、基板5の下面に熱流センサ3を実装する態様も夫君できる。つまり、熱流センサ3は、必ずしも基板5に埋め込む必要は無く、基板5の表面に実装されていてもよい。
【0058】
この場合、例えばいわゆるヒートシンクを設けることで、抵抗素子2とは反対側に金属部材を設けてもよい。すなわち、金属部材とは、実施形態で例示したグランドパターン9のような層状の部材だけでなく、熱流センサ3からの放熱を促す放熱部材として機能するものであれば、ブロック状やフィン状のものも利用することができる。
【0059】
また、実施形態では入力される信号として交流信号を想定したが、直流信号であってもよい。その場合、例えば
図7に示すように、コンデンサ4の代わりに抵抗素子10を熱流センサ3に直列に設けることで、直流信号に応じた電流を抵抗素子2に通電することができる。つまり、
図7に示す伝達装置1は、直流−直流変換装置として機能することにより、信号を伝達する。したがって、実施形態と同様の効果を得ることができ、伝達装置1を小型化することができる。この場合、抵抗素子2と抵抗素子10の抵抗値を調整し、抵抗素子10を電流制限抵抗として用いることができる。
【0060】
実施形態では熱流センサ3を基板5内に埋め込んだ例を示したが、熱流センサ3は、必ずしも基板5内に設けられる必要は無く、抵抗素子2が実装されている面とは反対側の面に実装することもできる。この場合であっても、伝熱により、絶縁した状態で信号を伝達することができる