(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<化粧シート100>
化粧シート100は、
図1に示すように、基材層1の一方の面(表面)に、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、接着材層5、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9がこの順に積層されている。また、基材層1の他方の面(裏面)に、裏面プライマー層10が形成されている。
【0012】
<化粧板110>
また、化粧板110は、基材20の一方の面に対し、化粧シート100の裏面プライマー層10側の面が接着剤層21を介して貼り付けられる(形成される)ことにより形成される。すなわち、本実施形態に係る化粧板110は、基材20の一方の面側に、接着剤層21、裏面プライマー層10、基材層1、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、接着材層5、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9がこの順に積層されている。
【0013】
<基材層1>
基材層1は、樹脂フィルムから構成される。樹脂フィルムとしては、例えば、着色ポリプロピレン樹脂を使用できる。基材層1の厚さは、例えば、30μm以上200μm以下とする。
<ベタ層2>
ベタ層2は、基材層1とパール柄層3との接着性を向上するための層である。ベタ層2としては、例えば、二液ウレタン樹脂と塩酢ビ樹脂とを混合した樹脂を使用できる。樹脂には、着色のために有機顔料が添加されている。ベタ層2は、例えば、基材層1の上にベタ層2構成用の樹脂を塗工して形成する。乾燥後の塗布量は、例えば、2g/m
2とする。なお、ベタ層2は絵柄層としても良い。
【0014】
<パール柄層3>
パール柄層3は、複数種類のパール顔料を用いて形成される。具体的には、パール柄層3は、第1パール顔料及びメジウムを含む第1パール柄層3Aと、第2パール顔料及びメジウムを含む第2パール柄層3Bとが積層されている。
第1パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む銀色のパール顔料である。
第1パール顔料に占めるマイカの比率は、例えば、60.0以上62.0以下とする。
第1パール顔料に占める酸化チタンの比率は、例えば、37.5以上39.5以下とする。
第1パール顔料に占める酸化スズの比率は、例えば、0.5以上2.0以下とする。
また、第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む金色のパール顔料である。
【0015】
第2パール顔料に占めるマイカの比率は、例えば、44.0以上46.0以下とする。
第2パール顔料に占める酸化チタンの比率は、例えば、46以上47.0以下とする。
第2パール顔料に占める酸化鉄の比率は、例えば、9.0以上9.5以下とする。
これにより、第1パール柄層3Aで構成される柄、つまり第1パール顔料(銀色のパール顔料)の柄と、第2パール柄層3Bで構成される柄、つまり第2パール顔料(金色のパール顔料)の柄とを合成でき、パール柄層3による意匠性の向上効果を増大することができる。
【0016】
上記の説明では、第1パール顔料を銀色のパール顔料とし、第2パール顔料を金色のパール顔料とした場合を例示した。第1パール顔料と第2パール顔料とは、粒径が同じものであれば、第1パール顔料を金色のパール顔料とし第2パール顔料を銀色のパール顔料としても良いし、第1パール顔料と第2パール顔料の両方をともに、銀色のパール顔料若しくは金色のパール顔料としても良い。また、各パール柄層のパール顔料として、銀色のパール顔料や金色のパール顔料以外のパール顔料を採用しても良い。例えば、マイカ、酸化鉄からなる赤色のパール顔料などであっても良い。
【0017】
第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とは重なっていることが好ましい。重なっているとは、例えば相対的に幅が狭い側の柄が、他方の柄に対し、50%以上の面積で重なっていればよい。
第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とが重なっている場合、より奥行きのある立体的なパール柄の表現が可能となる。
本実施形態では、第1パール柄層3Aがベタ層2側に位置し、第2パール柄層3Bがアンカーコート層4側に位置している。第2パール柄層3Bと第1パール柄層3Aとのそれぞれは、メジウムにパール顔料を含有してなる塗工液(インキ)を印刷で塗工して形成される。
【0018】
また、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bのパール顔料(第1パール顔料及び第2パール顔料)の粒径は、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下の範囲に設定する。第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bそれぞれの厚さは、例えば、5μm以上50μm以下とする。
また、メジウムとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルポリオール樹脂等を使用できる。また、必要に応じて、イソシアネート系の硬化剤、シリコンオイル等の滑剤やワックス等の耐摩強化剤を1%以上5%以下添加しても良い。
【0019】
ここで、第1パール柄層3Aは、メジウム100質量部に対して、第1パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下含み、第2パール柄層3Bは、メジウム100質量部に対して、第2パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下含むようにする。
これにより、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bの凝集破壊を抑制でき、密着強度(剥離強度)を向上できる。
更に、本実施形態では、第1パール柄層3Aは、例えば
図2(a)に示すようなヘリオ版を用いて形成される。第1パール柄層3Aは、インキの集合からなり、その網点の面積の比率が0%より大きく70%以下となっていて、構成するインキの高さ及び底面積を変化させることで階調表現が行われている。この第1パール柄層3Aの柄は、例えば木目導管などからなる。
【0020】
また第2パール柄層3Bは、例えば
図2(b)に示すようなポーシェル版を用いて形成される。第2パール柄層3Bは、インキの集合からなり、その網点の面積の比率は0%より大きく40%以下であり、第1パール柄層3Aよりも単位面積当たりの塗布量が多くなっている。ここで、第2パール柄層3Bを構成する各インキの高さが同じであり、上記第2パール柄層3Bは、構成するインキの底面積を変化させることで階調表現が行われている。
なお、網点の面積は、網点が存在する面の総面積に占めるインキ有の部分の面積である。
【0021】
ここで、上記構成においては、第1パール柄層3Aは、第2パール柄層3Bと比較して階調表現がはっきりしている。その相対的に階調表現がはっきりしている第1パール柄層3Aに対して第2パール柄層3Bを重ねることで、第1パール柄層3Aの柄の奥行き感が更に向上する。すなわち、相対的に階調表現が高い第1パール柄層3Aの上に、階調表現が低いか無い第2パール柄層3Bを重ねることで、更に第1パール柄層3A側の柄の奥行き感が増大して意匠性が向上する。
一般に、ヘリオ版を使用した場合に比べて、ポーシェル版を使用した方が、単位面積当たりの塗布量が増大するため、ポーシェル版をヘリオ版と組み合わせることで、輝度感などの意匠表現の幅を広げることができる。
【0022】
ここで、ポーシェル版の各セルは、例えば深さが同じで角柱などの柱状となっていて、例えば底面積を変化させることで階調表現を行うことができる。一方、ヘリオ版の各セルは、例えば、四角柱などの錐体形状となっていて、例えば高さと底面積を変化させることで階調表現を行うことができる。
また、塗布量(体積)については、例えば、ポーシェル版の各セルを四角柱形状とし、ヘリオ版の各セルを四角錐形状とし、100%の領域でセルの縦及び横の長さがセルの高さと等しい場合、ポーシェル版の塗布量は、ヘリオ版の塗布量に対し、10%の領域では30倍、30%の領域では10倍、50%の領域では6倍、100%の領域では3倍となる。
【0023】
<アンカーコート層4>
アンカーコート層4は、パール柄層3と透明樹脂層6との接着性を向上させるための層である。アンカーコート層4としては、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。アンカーコート層4は、例えば、パール柄層3(第2パール柄層3B)の上にアンカーコート層4用の二液ウレタン樹脂を塗工して形成する。乾燥後の塗布量は1.2g/m
2とする。
【0024】
<接着剤層5>
接着剤層5は、透明な接着剤からなる層である。透明な接着剤としては、例えば、酸変性ポリプロピレン樹脂を使用できる。接着剤層5の厚さは、例えば、12μmとする。
<透明樹脂層6>
透明樹脂層6は、パール柄層3で構成される柄が透けて見える、透明な樹脂からなる層である。透明な樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用できる。例えば、ポリオレフィン(PP)樹脂がある。透明樹脂層6の厚さは、例えば、68μmとする。
【0025】
<表面保護層7、8、9>
表面保護層7、8、9は、透明樹脂層6やパール柄層3等を保護するために化粧シート100の表層に設けられる透明な樹脂層である。表面保護層7(以下、「第1表面保護層7」とも呼ぶ)は、透明樹脂層6側に位置し、表面保護層9(以下、「第3表面保護層9」とも呼ぶ)は、表層側に位置し、表面保護層8(以下、「第2表面保護層8」とも呼ぶ)は、第1表面保護層7と第3表面保護層9との間に位置している。ここで、第1表面保護層7はアンカー層として機能し、第2表面保護層8はプライマー層として機能する。
第1表面保護層7と第2表面保護層8とのそれぞれは、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、3g/m
2とする。また、第3表面保護層9としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、例えば、6g/m
2とする。
【0026】
<裏面プライマー層10>
裏面プライマー層10は、基材層1と基材20との接着性を向上させるためのアンカー層である。裏面プライマー層10としては、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。
<接着剤層21>
接着剤層21は、接着剤からなる層である。接着剤としては、例えば、水性ビニルウレタン樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、例えば、6g/m
2とする。
<基材20>
基材20としては、例えば、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード層、金属板、無機質系基材を使用できる。基材20の厚さは、例えば、5mmとする。
【0027】
<本実施形態の効果>
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る化粧シート100は、基材層1の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層3、透明樹脂層6及び表面保護層7、8、9がこの順に積層されている。そして、パール柄層3は、第1パール顔料及びメジウムを含む第1パール柄層3Aと、第2パール顔料及びメジウムを含む第2パール柄層3Bとが積層されている。第1パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む。第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む。また、ヘリオ版などを用いて形成された第1パール柄層3Aの網点の面積の比率は0%より大きく70%以下である。ポーシェル版などを用いて形成された第2パール柄層3Bの網点の面積の比率は0%より大きく40%以下である。
このような構成に、第1パール柄層3Aの網点の面積と第2パール柄層3Bの網点の面積とを調整したため、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bが重なっても凝集破壊を抑制でき、密着強度の低下を抑制できる。
【0028】
(2)また、本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とが重なっている。
パール柄が重なることで奥行き感がでて、パール柄層による意匠性の向上効果を増大できる。
このとき、下側の第1パール柄層3Aの階調表現を高く設定することで、より奥行き感が増大する。
(3)本実施形態に係る化粧板110は、基材20と、その基材20の一方の面に形成された化粧シート100とを有する。
このような構成により、意匠性が高く、密着強度が高い化粧板110を提供できる。
【0029】
(変形例)
本実施形態では、ベタ層2上にパール柄層3を形成する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、
図3に示すように、ベタ層2を省略しても良い。
【実施例】
【0030】
以下に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:ベタ層2有り)
実施例1では、着色ポリプロピレン樹脂を用いて基材層1を形成した。基材層1の厚さは70μmとした。
続いて、基材層1の一方の面に、二液ウレタン樹脂と塩酢ビ樹脂とを混合した樹脂に有機顔料を添加した塗工液を塗工してベタ層2を形成した。乾燥後の塗布量は2g/m
2とした。
【0031】
続いて、ベタ層2上に、ヘリオ版(150線/25.4mm)を用いた、メジウムを主成分とする透明な樹脂に、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む第1パール顔料を含む塗工液を塗工して第1パール柄層3Aを形成した。第1パール顔料としては、日本光研工業(株)のMF100RNを使用した。第1パール顔料の粒径は、5μm以上30μm以下とした。また、ヘリオ版を用いて形成された第1パール柄層3Aの網点の面積の比率は35%とした。
続いて、第1パール柄層3A上に、ポーシェル版(150線/25.4mm、版深36μm、スクリーン無し通称白黒版)を使用して、メジウムを主成分とする透明な樹脂に、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む第2パール顔料を含む塗工液を塗工して第2パール柄層3Bを形成した。なお、スケール領域は、網点無しを0%とし、全面ベタを100%とする。第2パール顔料としては、日本光研工業(株)のMC302を使用した。第2パール顔料の粒径は、5μm以上30μm以下とした。また、ポーシェル版を用いて形成された第2パール柄層3Bの網点の面積の比率は10%とした。
【0032】
このように、ベタ層2上に、第1パール柄層3Aと、第2パール柄層3Bとをこの順に積層することにより、パール柄層3を形成した。
続いて、パール柄層3上に、二液ウレタン樹脂を塗工してアンカーコート層4を形成した。乾燥後の塗布量は1.2g/m
2とした。
続いて、アンカーコート層4上に、酸変性ポリプリピレン樹脂を用いて接着剤層5を形成した。接着剤層5の厚さは、12μmとした。
続いて、接着剤層5上に、ポリオレフィン(PP)樹脂を用いて透明樹脂層6を形成した。透明樹脂層6の厚さは、68μmとした。
【0033】
続いて、透明樹脂層6の上に、二液ウレタン樹脂を塗工して第1表面保護層7を形成した。乾燥後の塗布量は、3g/m
2とした。
続いて、第1表面保護層7の上に、二液ウレタン樹脂を塗工して第2表面保護層8を形成した。乾燥後の塗布量は、3g/m
2とした。
続いて、第2表面保護層8の上に、紫外線硬化型樹脂を塗工して第3表面保護層9を形成した。乾燥後の塗布量は、6g/m
2とした。
また、基材層1の他方の面、つまり、ベタ層2と反対側の面に、二液ポリエステルポリオールとセルロース樹脂とを配合した塗工液を塗工して裏面プライマー層10を形成した。乾燥後の塗布量は、1.2g/m
2とした。
【0034】
このように、基材層1の一方の面に、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9をこの順に積層し、基材層1の他方の面に、裏面プライマー層10を形成することで、化粧シート100を形成した。
続いて、裏面プライマー層10の上に、水性ビニルウレタン樹脂を塗工して接着剤層21を形成した。乾燥後の塗布量は、6g/m
2とした。続いて、接着剤層21を介して、化粧シート100に基材20を貼り付けた。これにより、化粧板110を形成した。
【0035】
(実施例2:ベタ層2無し)
実施例2では、ベタ層2を省略した。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例1:ベタ層2有り)
比較例1では、ヘリオ版を用いて形成された第1パール柄層3Aの網点の面積の比率は40%とした。また、ポーシェル版を用いて形成された第2パール柄層3Bの網点の面積の比率は70%とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(評価判定)
以上の実施例1、実施例2及び比較例1の化粧板について、次の評価を実施した。
【0036】
[密着強度]
化粧シート100の端部を1インチ巾(幅)で人為的に基材20から剥離し、常温で引張試験機により引張荷重を加えて、剥離時の荷重を測定した。引張速度は50mm/分とした。そして、剥離時の荷重が19.6N/インチ以上のものを合格とした。
比較例1では、ピーリング強度が規格17.9N/25.4mm巾であったのに対し、実施例1では、シート巾方向に3点測定し、27.8N/25.4mm巾、27.7N/25.4mm巾、28.7N/25.4mm巾となって、剥離強度が高いことを確認した。実施例2においても、実施例1よりも若干剥離強度が小さくなったが、実施例1とほぼ同等の剥離強度があり、剥離強度の評価は合格であった。
【0037】
ここで、実施例1の化粧板において、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bの網点の面積の比率を変えて、剥離強度を評価した。その結果を表1に示す。「○」が合格であり、「×」が不合格である。
ここで、網点の面積の比率は、版の中の網点部分が占める面積とベタ部の面積の合計に対する網点部分が占める面積の割合を百分率で表した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から分かるように、本発明の範囲の網点の面積の比率であれば、目的の剥離強度が確保されていることが分かる。
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。