特許第6819181号(P6819181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819181
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/314 20150101AFI20210114BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H01Q5/314
   H01Q1/24 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-185503(P2016-185503)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-50226(P2018-50226A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 尚史
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−85452(JP,A)
【文献】 特表2005−522904(JP,A)
【文献】 特開2008−294635(JP,A)
【文献】 特開2006−319477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0102357(US,A1)
【文献】 特開2014−239539(JP,A)
【文献】 特開平10−051351(JP,A)
【文献】 特開昭56−027507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0116168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/314
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域の電波信号を通過させる第1の選択部と、
前記第2の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域の電波信号を通過させる第2の選択部と、
一端に前記第1の選択部が接続され、他端に前記第2の選択部が接続され、前記第1の周波数帯域の電波信号及び前記第2の周波数帯域の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に用いられる所定の長さのアンテナ素子と、
を備え、
前記アンテナ素子の長さは、前記第1の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長と、前記第2の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長との間の長さに定められていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、前記アンテナ素子の同調周波数を上昇させて通過させる電波信号の周波数帯域に合わせるキャパシタを有することを特徴とする請求項記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、前記アンテナ素子の同調周波数を低下させて通過させる電波信号の周波数帯域に合わせるインダクタを有することを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の選択部及び前記第2の選択部は、キャパシタとインダクタとが並列に設けられたトラップ回路を有することを特徴とする請求項2または3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、通過させる周波数帯域の電波信号を選択的に通過させる帯域通過フィルタであることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の周波数帯域は、所定の測位衛星のL1帯の受信周波数を含み、前記第2の周波数帯域は、無線LANの送受信周波数のうち少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ素子は、曲線部分及び折れ曲がり部分のうち少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一項に記載のアンテナ装置と、
前記第2の選択部の前記アンテナ素子とは反対側に設けられて前記第1の周波数帯域内の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に係る処理を行う第1信号処理部と、
前記第1の選択部の前記アンテナ素子とは反対側に設けられて前記第2の周波数帯域内の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に係る処理を行う第2信号処理部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の周波数帯域の無線電波を利用する電子機器に対して当該複数の周波数帯域に単一のエレメント(アンテナ素子)で対応可能に構成されたアンテナ装置がある。
【0003】
特許文献1には、エレメントの途中にトラップ回路(ウェイブトラップ回路)を設けて動作有無を切り替えることにより、有効なエレメント長を二周波数の無線電波の波長に各々対応する長さの間で切り替える技術が開示されている。また、特許文献2には、エレメントの一端に設けられた接続端子から各周波数の送受信回路に分離させてから各々トラップ回路を設ける技術が開示されている。このように、各々の周波数帯域の電波に対して別個にエレメントを設けないことで、サイズや重量の増大の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−121924号公報
【特許文献2】特開2007−36622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラップ回路をアンテナ素子の途中に設けると、当該トラップ回路を跨いでアンテナ素子を用いる場合に損失が生じる一方で、アンテナ素子から複数の送受信回路に分離させると、部品点数が増加し、また、回路規模の増大に繋がり、コンパクトな構成にしにくいという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、複数の周波数帯域の電波信号に対応して適切なアンテナ利得を維持しつつよりコンパクトに構成することの出来るアンテナ装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
第1の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域の電波信号を通過させる第1の選択部と、
前記第2の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域の電波信号を通過させる第2の選択部と、
一端に前記第1の選択部が接続され、他端に前記第2の選択部が接続され、前記第1の周波数帯域の電波信号及び前記第2の周波数帯域の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に用いられる所定の長さのアンテナ素子と、
を備え、
前記アンテナ素子の長さは、前記第1の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長と、前記第2の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長との間の長さに定められていることを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、複数の周波数帯域の電波信号に対応して適切なアンテナ利得を維持しつつよりコンパクトに構成することが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子機器の機能構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の共通送受信部の構成を説明する図である。
図3】共通送受信部の変形例を示す図である。
図4】第2実施形態の共通送受信部の構成を説明する図である。
図5】第3実施形態の共通送受信部を有する電子機器の機能構成を示すブロック図である。
図6】第3実施形態の共通送受信部の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態のアンテナ装置である共通送受信部70を有する電子機器1について説明する。
図1は、電子機器1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
この電子機器1は、マイコン40と、衛星電波受信モジュール50(第1信号処理部)と、無線通信部60(第2信号処理部)と、共通送受信部70と、操作受付部81と、表示部82と、報知動作部83と、RTC84(Real Time Clock)と、電力供給部90などを備える。
【0012】
マイコン40は、ホストCPU41とRAM42(Random Access Memory)などを備え、電子機器1全体の動作を統括制御する各種処理を行う。ホストCPU41は、各種演算処理を行い、RAM42は、ホストCPU41に作業用のメモリ空間を提供して一時データを記憶保持する。
【0013】
記憶部43は、制御プログラムや初期設定データなどを記憶し、各種設定データなどを記憶保持する。記憶部43は、少なくとも不揮発性メモリを有し、マスクROMなどの読出しのみが可能なメモリを有していても良い。制御プログラムや初期設定データなどは、マスクROM又はフラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリに格納される。その他の各種データは、不揮発性メモリに記憶される。
【0014】
衛星電波受信モジュール50は、所定の測位衛星からの電波を受信して日時や現在位置などを算出、取得する処理を行う。衛星電波受信モジュール50は、受信部51と、制御部52と、記憶部53などを備える。
【0015】
受信部51は、共通送受信部70のエレメント71(アンテナ素子)を介して測位衛星からの電波を受信し、信号を捕捉、増幅して復調する。ここでは、受信部51は、米国のGPS(Global Positioning System)に係る測位衛星(GPS衛星)からのL1帯(1.57542GHz;第1の周波数帯域)の電波を受信処理可能である。
【0016】
制御部52は、衛星電波受信モジュール50の動作制御を行う。また、制御部52は、受信部51により受信された電波から復調された信号に基づいて日時などの情報の取得や、測位に係る演算処理を行う。制御部52は、CPUやRAMなどを備える。
【0017】
記憶部53は、測位衛星から取得された各測位衛星の位置や軌道に係る情報、電波の受信履歴など記憶する。記憶部53としては、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。
【0018】
無線通信部60は、外部の無線通信機器やサーバなどと無線通信を行うための通信制御処理を行う。無線通信部60は、ここでは、無線LAN(2.4GHz帯;第2の周波数帯域)による通信が可能であり、通信規格(IEEE802.11)に従って送受信の制御やデータの復変調、データ配列の整理、整合確認などを行う。
【0019】
共通送受信部70は、衛星電波受信モジュール50の動作に伴う測位衛星からの電波の受信、及び、無線通信部60の動作に伴う無線LANによる電波送受信に係る共通のエレメント71を備え、これらの電波の送受信を行う。共通送受信部70については、後述する。
【0020】
操作受付部81は、ユーザによる所定の操作などの外部からの入力動作を受け付けて電気信号としてマイコン40に出力する。操作受付部81としては、例えば、表示画面に重ねて設けられたタッチパネルや、押しボタンスイッチなどが挙げられる。
【0021】
表示部82は、マイコン40の制御動作に基づいて各種動作や表示に係る設定やステータス情報を表示画面に表示させる。表示部80の表示画面としては、例えば、ドットマトリクス形式の液晶ディスプレイ(LCD)が用いられる。
【0022】
報知動作部83は、マイコン40の制御により所定の報知動作を行う。所定の報知動作としては、例えば、振動の発生、ビープ音の発生やランプの点滅、点灯動作などが挙げられ、報知動作部83は、これらの動作に応じた構成を備える。
【0023】
RTC84は、日時の計数を行う。RTC84の動作は、マイコン40や衛星電波受信モジュール50などの動作とは別個に継続して行われ、マイコン40の起動時には、RTC84から現在日時が取得され、衛星電波受信モジュール50による正確な日時の取得後などには、マイコン40によりRTC84の計数する現在日時が修正される。
【0024】
電力供給部90は、マイコン40などの各部に動作に必要な電力をバッテリ91から供給する。バッテリ91としては、着脱可能な乾電池や充電池であっても良いし、ソーラパネルやこのソーラパネルにより発電された電力を蓄える充電池が設けられていても良い。電力供給部90は、各部への電力供給を管理するパワーマネージメント機能を有していても良い。
【0025】
次に、共通送受信部70について説明する。
図2は、共通送受信部70の構成を説明する図である。
【0026】
共通送受信部70は、エレメント71と、トラップ回路72、73などを備える。トラップ回路72(第1の選択部)は、所定の長さのエレメント71の一端に接続され、トラップ回路72のエレメント71の接続側とは反対側は、無線通信部60の入出力に接続される。また、トラップ回路73(第2の選択部)は、エレメント71の他端に接続され、トラップ回路73のエレメント71の接続側と反対側には、衛星電波受信モジュール50の受信部51が接続される。
【0027】
エレメント71の長さは、測位衛星からの送信周波数(L1帯の1.57542GHz)の送信電波の1/4波長(約4.73×10−2m;第1の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長)より短く、無線LANによる送受信周波数(2.4GHz帯)の送受信電波の1/4波長(第7チャンネルの2.442GHzに対し、約3.05×10−2m;第2の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長)よりも長い。
【0028】
トラップ回路72、73は、それぞれLC回路である。トラップ回路72では、インダクタ72L(コイル)とキャパシタ72C(コンデンサ)が並列に設けられており、トラップ回路73では、インダクタ73Lとキャパシタ73Cが並列に設けられている。トラップ回路72の共振周波数は、衛星電波受信モジュール50による受信周波数であるGPS衛星のL1帯の1.57542GHzと等しい。また、トラップ回路73の共振周波数は、ここでは、無線通信部60による送受信周波数(2.4GHz帯)の約中央の周波数である2.442GHz(第7チャンネル)と等しい。即ち、トラップ回路72は、測位衛星から電波信号を含む周波数帯域(第1の周波数帯域)の電波信号が無線通信部60の側へ出力されるのを阻止し、トラップ回路73は、無線LANに係る送受信電波信号を含む周波数帯域(第2の周波数帯域)の電波信号が衛星電波受信モジュール50との間で入出力する(通過する)のを阻止する。また、トラップ回路72、73は、阻止する共振周波数付近以外の電波信号を通過させる。
ここでは、衛星電波受信モジュール50及び無線通信部60は、LPF(低域通過フィルタ)を介して電波信号の入出力を行っている。衛星電波受信モジュール50及び無線通信部60の入出力インピーダンスは、例えば、50Ωであるが、これに限られるものではない。共通送受信部70とのインピーダンス整合を取る際に都合の良い入出力インピーダンスで構成されていても良い。
【0029】
トラップ回路72のキャパシタ72Cは、無線LANに係る電波の送受信時には、エレメント71の短縮コンデンサ(同調周波数を上昇させる)として機能し、トラップ回路73のインダクタ73Lは、測位衛星電波の受信時には、エレメント71の延長コイル(同長周波数を低下させる)として機能する。従って、エレメント71の長さとキャパシタ72Cとの組み合わせは、無線通信部60が送受信可能に定められ、エレメント71の長さとインダクタ73Lとの組み合わせは、衛星電波受信モジュール50が電波受信可能に定められる。また、キャパシタ72Cとインダクタ72Lの組み合わせ及びキャパシタ73Cとインダクタ73Lの組み合わせは、それぞれ、無線LANに係る送受信周波数及び衛星電波受信に係る周波数に対して適切なインピーダンス(リアクタンス)及びSWR(定在波比)となる範囲で定められる。これらにより、無線通信部60は、共通送受信部70とともに低損失低ノイズで無線LANに係る電波の送受信が可能となり、衛星電波受信モジュール50は、共通送受信部70とともに低損失低ノイズで測位衛星からの電波受信が可能となる。即ち、共通送受信部70は、衛星電波受信モジュール50及び無線通信部60の両側からそれぞれ先端給電型の1/4波長モノポールアンテナとして動作する。接地は電子機器1の筐体などに対してなされる。
【0030】
[変形例]
図3は、本実施形態の電子機器1における共通送受信部70の変形例を示す図である。上記実施の形態では、エレメント71を直線状としてその両端にトラップ回路72、73を設けたが、エレメント71aのように折線状(折れ曲がり部分を有する形状)や曲線状(曲線部分を有する形状)であっても良い。
【0031】
以上のように、第1実施形態の共通送受信部70は、GPS衛星のL1帯(第1の周波数帯域)の電波信号の通過を阻止し、この第1の周波数帯域とは異なる無線LANの使用周波数帯域(第2の周波数帯域)の電波信号を通過させるトラップ回路72と、第2の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、第1の周波数帯域の電波信号を通過させるトラップ回路73と、一端にトラップ回路72が接続され、他端にトラップ回路73が接続され、第1の周波数帯域の電波信号及び第2の周波数帯域の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に用いられる所定の長さのエレメント71と、を備える。
このように、両端にトラップ回路72、73を接続し、一端の側で絶縁し、他端の側を介して受信回路に接続可能な構成とすることで、デュプレクサ(ダイプレクサ)などで分波させたりする必要がなく、また、必要以上に電波信号がトラップ回路などを通過する必要が無いので、部品点数を増やさずに電波の送受信に係る損失の低下を防ぐことが出来る。従って、2つの周波数帯域に対応して適切なアンテナ利得を維持しつつよりコンパクトに共通送受信部70を構成することが出来る。
【0032】
また、エレメント71の長さは、第1の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長(1/4波長)と、第2の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長(1/4波長)との間の長さに定められているので、無理な設計を行わずに両波長に同調させ易い。
【0033】
また、トラップ回路72は、エレメント71の同調周波数を上昇させて、通過させる電波信号の周波数帯域(即ち、第2の周波数帯域)に合わせるキャパシタ72Cを有するので、この短縮コンデンサとしてのキャパシタ72Cにより容易にエレメント71を受信周波数に同調させることが出来る。
【0034】
また、同様に、トラップ回路73は、エレメント71の同調周波数を低下させて通過させる電波信号の周波数帯域(即ち、第1の周波数帯域)に合わせるインダクタ73Lを有するので、この延長コイルとしてのインダクタ73Lにより容易にエレメント71を受信周波数に同調させることが出来る。
【0035】
また、共通送受信部70は、キャパシタとインダクタとが並列に設けられたトラップ回路72、73を有するので、必要以上にエレメント71を長くせず、且つ、共振周波数の電波信号除去に用いられるトラップ回路72、73の電子部品をそのまま短縮コンデンサや延長コイルとして用いることが出来るので部品点数を増やさずに、効率良く電波送受信の利得の維持とコンパクトな構成とを両立させることが出来る。
【0036】
また、第1の周波数帯域は、GPS衛星のL1帯の受信周波数を含み、第2の周波数帯域は、無線LANの送受信周波数のうち少なくとも一部(第7チャンネル)を含む。
このように、特に、やや近接した周波数の複数の電波を送受信する電子機器にこの共通送受信部70を用いることで、エレメント71やトラップ回路72、73を効率良いサイズ及び部品点数で配置することが出来るので、コンパクトに適切な強度で電波の送受信を行うことが出来る。
【0037】
また、エレメント71aのように曲線部分及び折れ曲がり部分のうち少なくとも一方を有するように配置することが出来るので、アンテナの指向性を適切に調整したり、電子機器の内部における配置に柔軟性を持たせたりすることが出来る。
【0038】
また、本実施形態の電子機器1は、上述の共通送受信部70と、トラップ回路73のエレメント71とは反対側に設けられて第1の周波数帯域内の電波信号(GPS衛星からの送信電波)の受信に係る処理を行う衛星電波受信モジュール50と、トラップ回路72のエレメント71とは反対側に設けられて第2の周波数帯域内の電波信号(無線LANの電波)の送受信に係る処理を行う無線通信部60と、を備える。
このように、電子機器1において、共通送受信部70を用いることで、コンパクト且つ複数の送受信周波数に係る送受信の感度を適切に維持可能な電子機器1とすることが出来、即ち、通信や電波受信の安定を維持しつつ小型軽量化や耐久性の増加を図ることが出来る。
【0039】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の共通送受信部70を有する電子機器1について説明する。
この電子機器1の構成は、第1実施形態の電子機器1と同一であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図4は、本発明のアンテナ装置の第2実施形態の共通送受信部70の構成を説明する図である。
この電子機器1では、共通送受信部70においてトラップ回路72の代わりに帯域通過フィルタ72b(BPF)が設けられている。この帯域通過フィルタ72bでは、キャパシタ72Cとインダクタ72Lとが直列に設けられている。これ以外の構成は、第1実施形態の電子機器1と同一であり、詳しい説明を省略する。
【0041】
直列配置のキャパシタ72Cの容量及びインダクタ72Lのインダクタンスが適切に定められることで、帯域通過フィルタ72bの共振周波数を無線LANの送受信周波数と一致させて、無線通信部60との間で選択的にこの無線LANによる送受信に係る電波信号を通過させ、同時に、測位衛星からのL1帯の電波信号の流れ込みを阻止することが出来る。
【0042】
この場合、キャパシタ72Cやインダクタ72Lによりエレメント71の同調周波数が変化しない。従って、エレメント71の長さは、無線通信部60による無線LAN(2.4GHz帯)の送受信周波数に合わせて定められる。一方、トラップ回路73において、インダクタ73Lは、エレメント71の同調周波数を低下させるので、上述のエレメント71の長さと受信周波数(1.57542GHz)とに応じてインダクタ73Lのインダクタンスが定められ、更に、このインダクタ73Lとキャパシタ73Cとにより無線LANの2.4GHz帯の電波に対して共振周波数となるようにキャパシタ73Cの容量が定められる。
【0043】
このように、第2実施形態の電子機器1は、無線LANに係る電波信号を選択的に通過させる帯域通過フィルタ72bを備え、エレメント71の長さは、この無線LANに係る電波信号の共振周波数に応じて定められている。このように、一方にはトラップ回路を用いずとも同様に2種類の周波数の電波信号を両端から各々の送受信回路との間で入出力させることが出来る。特に、BPFの通過周波数帯域を短波長側の電波の送受信周波数に合わせることで、エレメント71の長さを効率的に短くすることが出来る。
【0044】
[第3実施形態]
次に、アンテナ装置の第3実施形態である共通送受信部について説明する。
図5は、第3実施形態の共通送受信部70aを有する電子機器1aの機能構成を示すブロック図である。
本実施形態の電子機器1aは、衛星電波受信モジュール50及び無線通信部60の代わりに、第1無線通信部60a及び第2無線通信部60bを備え、それぞれ、共通送受信部70aを介して無線電波を受信する。その他の構成については第1実施形態の電子機器1と同一であり、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
第1無線通信部60a及び第2無線通信部60bは、それぞれ2つの周波数の電波を選択的に切り替えて受信可能となっている。即ち、電子機器1aは、合計で4波長(4つの周波数)の電波を送受信することが出来る。4波長は、全て送受信兼用であっても良いし、送信と受信とで周波数の異なるものが2組送受信可能であっても良い。
【0046】
図6は、本実施形態の電子機器1aにおける共通送受信部70aの変形例を説明する図である。
共通送受信部70aでは、トラップ回路72のエレメント71とは反対側で2経路に分岐され、BPF74、75をそれぞれ介して第1無線通信部60aが送受信可能な二周波数の送受信回路に繋がっている。また、トラップ回路73のエレメント71とは反対側で2経路に分岐され、BPF76、77を介して第2無線通信部60bが送受信可能な二周波数の送受信回路に繋がっている。トラップ回路72は、BPF76、77が通す2周波数の電波信号を阻止し、BPF74、75が通す2周波数の電波信号を通過させる。トラップ回路73は、BPF74、75が通す2周波数の電波信号を阻止し、BPF76、77が通す2周波数の電波信号を通過させる。BPF74〜77は、何れも直列LC回路であり、それぞれ、送受信対象の周波数の信号が通過可能にインダクタのインダクタンスとキャパシタの容量とが定められる。
【0047】
即ち、この電子機器1aでは、送受信可能な4波長の電波の送受信時に、何れも2つのフィルタを介して信号が取得、送信されるので、フィルタによる損失を低く均等にしつつ、各々適切にインピーダンスの整合をとることが出来る。
【0048】
以上のように、第3実施形態の電子機器1aで示したように、本発明のトラップ回路72、73に更に従来のように複数の電波信号を分波、合波させる構成を接続することで無理なく3以上の波数の電波を受信可能とすることが出来る。この場合には、トラップ回路72、73の通過/遮断する周波数帯域がそれぞれ分波、合波させる複数の電波信号の周波数を含むように定められる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、キャパシタとインダクタを単純に並列に配置したトラップ回路及び直列に配置した帯域通過フィルタを例に挙げて説明したが、他の構成により所定の帯域の電波信号を除去したり、選択的に通過させたりするものであっても良い。
【0050】
また、上記実施の形態では、GPS衛星からのL1帯の電波の受信を行ったが、その他の周波数帯域の電波、例えば、GLONASS衛星からのL1帯の電波の受信を行っても良い。また、無線LANの他のチャンネルを基準として同調周波数やエレメント71の長さなどが定められても良いし、無線LAN以外の電波の送受信に用いられるように設定されても良い。また、電子機器1は、複数の周波数の電波を受信のみまたは送信のみ行う構成であっても良いし、また、受信周波数と送信周波数とが異なる場合にこれらの送受信周波数にまとめて対応可能な構成であっても良い。
【0051】
また、上記実施の形態では、GPS衛星からのL1帯の電波(1.57542GHz)及び無線LANの電波(2.4GHz帯)のそれぞれ1/4波長に合わせてアンテナ長などを定めることとしたが、電子機器のサイズや送受信対象の電波の周波数などに応じて、先端で給電を行うモノポールアンテナやダイポールアンテナ(ホイップアンテナ)として設定可能な各種波長に合わせることが出来、また、異なる波長を混在させても良い。
【0052】
また、本発明の電子機器1は、電子時計、スマートウォッチなどのウェアラブル端末、携帯端末やタブレット端末、携帯型の計測(センシング)機器やナビゲーション機器、カメラなどの撮影機器など種々のものを含み得る。また、これらの電子機器に応じて各種周辺機器を備えることが出来る。
【0053】
また、共通送受信部70は、電子機器1に組み込まれるものだけではなく、独立して構成されて電子機器に外部接続可能とされても良い。
その他、上記実施の形態で示した構成、構造や配置などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0055】
[付記]
<請求項1>
第1の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域の電波信号を通過させる第1の選択部と、
前記第2の周波数帯域の電波信号の通過を阻止し、前記第1の周波数帯域の電波信号を通過させる第2の選択部と、
一端に前記第1の選択部が接続され、他端に前記第2の選択部が接続され、前記第1の周波数帯域の電波信号及び前記第2の周波数帯域の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に用いられる所定の長さのアンテナ素子と、
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
<請求項2>
前記アンテナ素子の長さは、前記第1の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長と、前記第2の周波数帯域の電波信号への同調に係るアンテナ長との間の長さに定められていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
<請求項3>
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、前記アンテナ素子の同調周波数を上昇させて通過させる電波信号の周波数帯域に合わせるキャパシタを有することを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
<請求項4>
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、前記アンテナ素子の同調周波数を低下させて通過させる電波信号の周波数帯域に合わせるインダクタを有することを特徴とする請求項2又は3記載のアンテナ装置。
<請求項5>
前記第1の選択部及び前記第2の選択部は、キャパシタとインダクタとが並列に設けられたトラップ回路を有することを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のアンテナ装置。
<請求項6>
前記第1の選択部及び前記第2の選択部のうち一方は、通過させる周波数帯域の電波信号を選択的に通過させる帯域通過フィルタであり、前記アンテナ素子の長さは、当該通過させる電波信号の共振周波数に応じて定められていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
<請求項7>
前記第1の周波数帯域は、所定の測位衛星のL1帯の受信周波数を含み、前記第2の周波数帯域は、無線LANの送受信周波数のうち少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のアンテナ装置。
<請求項8>
前記アンテナ素子は、曲線部分及び折れ曲がり部分のうち少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のアンテナ装置。
<請求項9>
請求項1〜8の何れか一項に記載のアンテナ装置と、
前記第2の選択部の前記アンテナ素子とは反対側に設けられて前記第1の周波数帯域内の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に係る処理を行う第1信号処理部と、
前記第1の選択部の前記アンテナ素子とは反対側に設けられて前記第2の周波数帯域内の電波信号の送信及び受信のうち少なくとも一方に係る処理を行う第2信号処理部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0056】
1、1a 電子機器
40 マイコン
41 ホストCPU
42 RAM
43 記憶部
50 衛星電波受信モジュール
51 受信部
52 制御部
53 記憶部
60 無線通信部
60a 第1無線通信部
60b 第2無線通信部
70、70a 共通送受信部
71、71a エレメント
72、73 トラップ回路
72C、73C キャパシタ
72L、73L インダクタ
72b 帯域通過フィルタ
80 表示部
81 操作受付部
82 表示部
83 報知動作部
90 電力供給部
91 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6