(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントロールユニットは、イグニッションスイッチのオフ時に前記回路異常を検出した場合には、前記回路遮断手段により前記充電開始信号回路と前記コントロールユニット間で回路を遮断した後、前記コントロールユニットを停止させることを特徴とする請求項1に記載の車両の充電システム。
前記コントロールユニットは、前記回路異常が検出された後にイグニッションスイッチがオフからオンに切り替えられたことを検知すると、前記回路遮断手段によって遮断した回路を接続状態に復帰すると共に、前記診断処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の車両の充電システム。
前記コントロールユニットは、前記回路異常が検出されたことを報知する報知部を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の充電システム。
前記回路遮断手段は、前記コントロールユニットの内部に設けられ、前記充電開始信号回路が接続される端子に直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の充電システム。
前記回路遮断手段は、前記回路を接続する閉状態と、前記回路を遮断する開状態とで切り替え可能なスイッチで構成されており、前記回路異常が検出された場合に開状態に維持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の充電システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の充電システムの起動回路において、充電開始信号が流れる充電開始信号回路が断線し、断線箇所が地絡や天絡すると、起動回路の回路構成によっては、充電開始信号回路が常時通電状態となり充電コネクタを車両へ接続したのと同じようにコントロールユニットに充電開始信号が入力された状態となる。この結果、充電コネクタが車両に接続されていなくても起動回路が作動し、コントロールユニットおよび車載充電器を勝手に起動させることになる。また、このような回路異常によって充電開始信号回路に充電開始信号が流れ続けると、起動回路が作動し続ける結果、イグニッションスイッチがオフされても、起動回路の作動によって起動状態にある車両システムを停止することができなくなる。
【0005】
そして、このような意図しない車両システムの起動や停止不能の状態に車両が継続しておかれると、車両システムが電力を消費し続けることとなる。このため、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常、すなわちコントロールユニットへの充電開始信号が常時入力状態(オン状態)となる回路異常を検知した際には、一刻も早く修理を行うことが望ましい。しかしながら、使用者(運転者)が車両の近くにいない場合など、意図に反して車両が起動したことに使用者が気づけず、修理といった対応を迅速にとれない状況が想定される。このため、車両の走行への影響を低減するように上記の回路異常に対処する必要がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常の発生時において、意図しない電力消費を防止し、可用性が向上された車両の充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両の充電システムは、
車両に搭載され、外部電源から供給される電力を変換して車載電池を充電する車載充電器と、
前記車載電池に対する充電を制御するコントロールユニットと、
前記車載充電器と前記コントロールユニットとを接続する充電開始信号回路を含み、前記車載充電器に前記外部電源が接続されると前記充電開始信号回路を通電状態とすることで前記コントロールユニットへ充電開始信号を出力し、前記コントロールユニットを起動させる起動回路と、
前記充電開始信号回路の前記コントロールユニット側に直列に接続され、前記充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が検出された場合に前記充電開始信号回路と前記コントロールユニット間で回路を遮断する回路遮断手段と、を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、充電開始信号回路を介してコントロールユニットへ充電開始信号が常時入力された状態(充電開始信号回路が常時通電状態)となる回路異常が検出されると、回路遮断手段によって、充電開始信号回路とコントロールユニットとの間で回路が遮断される。これによって、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が発生しても、充電開始信号回路とコントロールユニット間で回路を遮断して、コントロールユニットに充電開始信号が入力されるのを阻止することができる。この結果、意図に反してコントロールユニットが起動することや、車両システム(コントロールユニット)が停止不能となる状況を解消することができ、意図しない電力消費を防止し、車両の可用性を向上することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記コントロールユニットは、イグニッションスイッチのオフ時に前記回路異常を検出した場合には、前記回路遮断手段により前記充電開始信号回路と前記コントロールユニット間で回路を遮断した後、前記コントロールユニットを停止させる。
【0010】
上記(2)の構成によれば、イグニッションスイッチのオフ時において、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が発生した場合、コントロールユニットが起動されていてもドライバが気付かず、起動状態で放置される恐れがあるところ、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が検出されると充電開始信号回路とコントロールユニット間で回路が遮断されるとともにコントロールユニットがすぐに停止される。これによって、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が原因で、コントロールユニットが、イグニッションのオフ操作後も意図せず起動し続けたり、イグニッションがオフであるにもかかわらず意図せず勝手に起動された場合でも、コントロールユニットが起動し続けることが回避される。このため、意図しない電力消費をより確実に防止することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の構成において、
前記コントロールユニットは、
前記回路異常を検出するための診断処理を前記コントロールユニットの起動後の診断可能期間において実行する回路異常診断部と、
前記回路異常を検出した場合には、前記回路遮断手段によって回路を遮断する回路遮断実行部と、を備え、
前記回路異常が発生していない正常時には、前記診断可能期間において前記充電開始信号が前記コントロールユニットに入力されないオフ状態となるように構成されており、
前記診断処理は、前記診断可能期間において前記充電開始信号が前記コントロールユニットに入力されるオン状態にある場合に、前記回路異常にあると判定する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、診断処理が実行される診断可能期間においては、充電開始信号が入力されない状態、つまり充電開始信号回路が非通電状態となるのが正常であるところ、充電開始信号が入力状態となっている場合は異常であることから、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が発生していると判定される。このように、充電開始信号が入力状態(オン状態)か入力されない状態(オフ状態)、すなわち充電開始信号が通電状態か非通電状態かを判定することにより、充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常を検出することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上
記(3)の構成において、
前記コントロールユニットは、前記回路異常が検出された後にイグニッションスイッチがオフからオンに切り替えられたことを検知すると、前記回路遮断手段によって遮断した回路を接続状態に復帰すると共に、前記診断処理を実行する。
上記(4)の構成によれば、充電開始信号回路のいずれかの箇所で充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常が一時的な要因により発生した場合に、回路遮断手段によって回路が遮断された状態が維持される事態を防止することができる。また、外部電源による車載電池の充電が可能な状態に充電システムを復帰させることもできる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の構成において、
前記コントロールユニットは、前記回路異常が検出されたことを報知する報知部を、さらに含む
上記(5)の構成によれば、充電開始信号回路の回路異常の発生や、急速充電など他の方法により充電が可能であることなどを運転手などに知らせることができ、修理を促すことや、可能な代替方法を提示することができる。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の構成において、
前記回路遮断手段は、前記コントロールユニットの内部に設けられ、前記充電開始信号回路が接続される端子に直列に接続されている。
上記(6)の構成によれば、充電開始信号回路のいずれの個所で充電開始信号が常時通電状態(充電開始信号が常時入力状態)となる回路異常が発生しても、コントロールユニットへの充電開始信号の入力を確実に遮断することが可能となる。このため、意図に反したコントロールユニットの起動や、車両システムの停止不能状態となるのをより確実に解消することができる。
【0016】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記回路遮断手段は、前記回路を接続する閉状態と、前記回路を遮断する開状態とで切り替え可能なスイッチで構成されており、前記回路異常が検出された場合に開状態に維持される。
上記(7)の構成によれば、回路遮断手段をスイッチで構成することにより、充電システムに回路遮断手段を容易に設けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、コントロールユニットを起動する充電開始信号を流す充電開始信号回路が常時通電状態となる回路異常の発生時において、意図しない電力消費を防止し、可用性が向上された車両の充電システムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る充電システム9を備える車両91を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る車両91の充電システム9の概要構成図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係る充電システム9の起動回路4の構成を示す回路図である。
本発明は、
図1に示されるような電気自動車やプラグインハイブリッド車のように、外部電源Pと接続して、車両91に搭載されている車載電池95(走行駆動用バッテリ)を充電する車両91の充電システム9に適用される。
図1〜
図3に示される実施形態では、
図1に示されるように、充電コネクタ92(充電ガン)が一端側に接続された充電ケーブル93の他端側(電源プラグ)を充電用コンセントPiに接続すると共に、充電コネクタ92を車両91に接続することで車載電池95の充電が可能となっている。より詳細には、充電ケーブル93には外部電源Pからの電力の供給および遮断などを行う制御器94(CCID: Charge Circuit Interrupt Device)が設けられており、充電ケーブル93を外部電源Pに接続すると、制御器94からパルス信号が車両側に送られる。また、この制御器94からのパルス信号を車載充電器1が特定回数受信すると、充電コネクタ92(外部電源P)が車両91に接続されたことが車両側で検知されるようになっている。
【0021】
そして、上記の車両91の充電システム9(以下、充電システム9)は、
図2〜
図3に示されるように、車載充電器1と、コントロールユニット2と、起動回路4と、回路遮断手段5(
図3参照)とを備える。
以下、充電システム9が備える構成の各々について順に説明する。
【0022】
車載充電器1は、車両91に搭載された電力変換器であり、
図1〜
図2に示されるように、外部電源Pから供給される電力を変換して車載電池95を充電する。具体的には、車載充電器1は、充電コネクタ92が車両91に接続された状態において、外部電源Pからの交流電圧(例えば、家庭用電源などのAC100V)を直流電圧(例えばDC300V)に変換して出力する。そして、この車載充電器1からの出力が供給されることで、車載電池95が充電される。
【0023】
コントロールユニット2は、車載電池95に対する充電を制御する。コントロールユニット2はECU(電子制御装置)で構成されており、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えたコンピュータで構成されている。
図1〜
図3に示される実施形態では、コントロールユニット2は、外部接続用の端子(K端子、L端子、M端子、N端子)を備えている。また、コントロールユニット2は、車両91全体を統合制御する車両統合制御ユニットとなっている。なお、コントロールユニット2は、上記の車載充電器1や、図示しない、バッテリ管理ユニットや車両91の駆動用モータMのモータ制御機能及び電力変換機能(インバータ)を一体化したモータ制御ユニット等にも車載ネットワーク(CAN、LINなど)を介して接続されることで、車両91に搭載された様々な補機類の制御などを含む車両91の総合的な制御も行う。また、
図2に示されるように、コントロールユニット2にはイグニッションスイッチ(IG−SW7)が接続されており、IG−SW7がオン、オフに切り替えられたことを示す状態信号が直接(車載ネットワーク8を通じてではなく直接)入力される。そして、コントロールユニット2は、IG−SW7のオン、オフに応じてEV電源リレー42をオン、オフすることにより、コントロールユニット2および車載充電器1へのバッテリBからの電源の供給をオン、オフし、車両91の車両システムを起動、停止している。
【0024】
起動回路4は、車載充電器1に外部電源Pが接続されたことを検知して、コントロールユニット2を起動する。起動回路4によってコントロールユニット2および車載充電器1が起動されることにより、車両電源オフ時においても車載電池95の充電が可能となる。より詳細には、
図2〜
図3に示されるように、起動回路4は、車載充電器1とコントロールユニット2とを接続する充電開始信号回路3と、車載充電器1に外部電源Pが接続されると充電開始信号回路3を通電状態とすることで充電開始信号Sを出力するよう接続作動する回路接続手段41(本実施形態ではスイッチ)とを備える。そして、上記の接続作動により、コントロールユニット2に充電開始信号Sが入力されることが契機となって、コントロールユニット2および車載充電器1が起動する。
【0025】
図1〜
図3に示される実施形態では、
図2に示されるように、コントロールユニット2および車載充電器1の各々は、起動回路4を介して、電源(例えば、12V)となるバッテリBに電気的に接続され、上記の充電開始信号回路3がコントロールユニット2と車載充電器1とを電気的に接続している。そして、回路接続手段41は車載充電器1内に設けられており、回路接続手段41が上述のように接続作動すると、充電開始信号回路3に電流が流れて充電開始信号回路3が通電状態になり、コントロールユニット2に充電開始信号Sが入力されるよう構成されている。後述するように、起動回路4はEV電源リレー42を備えており、充電開始信号回路3が通電状態になると、起動回路4によってEV電源リレー42がオンされる。このEV電源リレー42のオンによって、コントロールユニット2および車載充電器1にバッテリBからの電力(電源電圧)の供給がなされて、コントロールユニット2および車載充電器1が起動するよう構成されている。
【0026】
より詳細には、
図3に示されるように、起動回路4は、車載充電器1内の上述した回路接続手段41、および、充電開始信号回路3と、EV電源リレー42と共に、コントロールユニット電源43、第1トランジスタ44、第2第2トランジスタ45、モニタ回路46、および、コントロールユニット2内のバックアップ電源回路47を有している。回路接続手段41は、車載充電器1に設けられた起動スイッチとなっており、一端側は接地(アース)され、他端側は充電開始信号回路3に接続されている。なお、本実施形態では、充電コネクタ92が車両91に物理的に接続されたことを契機に起動スイッチ(回路接続手段41)はオンになり、回路が接続される。また、回路接続手段41に接続された充電開始信号回路3のもう一方の端部は、コントロールユニット2が備える外部接続用のN端子に接続されている。なお、回路接続手段41は、充電コネクタ92が車載充電器1に接続された際に、コントロールユニット2を起動させるためのものであり、オンされた後に一定時間(後述する出力時間Tp)経過すると自動的にオフされるようになっている。
【0027】
また、バックアップ電源回路47(バックアップ電源)には、バッテリBから常時電力が供給されており、例えばイグニッションオフなど、コントロールユニット2に電力が供給されない状態であっても、コントロールユニット2の記憶装置(RAM)に記憶されたデータ等を維持することにも利用されている。そして、上記のバックアップ電源回路47は第2トランジスタ45のエミッタ45Eに接続されており、バックアップ電源回路47からのエミッタ45Eへの電力供給が可能となっている。他方、第2トランジスタ45のベース45Bは、充電開始信号回路3が接続されるコントロールユニット2のN端子に接続され、第2トランジスタ45のコレクタ45Cは、EV電源リレー42のコイル42cが接続されるコントロールユニット2のM端子に接続されている。つまり、バックアップ電源回路47は、第2トランジスタ45、コントロールユニット2のN端子、回路接続手段41を介してアースされる構成となっている。
【0028】
したがって、IG−SW7のオフ時には、充電コネクタ92を車載充電器1に接続することで回路接続手段41(起動スイッチ)がオンになると、バックアップ電源回路47から第2トランジスタ45のベース45B、充電開始信号回路3、車載充電器1の回路接続手段41に電流が流れる。つまり、充電開始信号回路3に電流が流れ、コントロールユニット2に充電開始信号Sが入力された状態となる。また、第2トランジスタ45のベース45Bに電流が流れたのに伴い、バックアップ電源回路47から、第2トランジスタ45のエミッタ45E、コレクタ45C、コントロールユニット2のM端子に電流が流れ、さらに、このM端子に接続されたEV電源リレー42のコイル42cに電流が流れて、EV電源リレー42が励磁される。つまり、EV電源リレー42のリレースイッチ42sがオンになり、L端子を介してコントロールユニット電源43に電力が供給される。こうしてバッテリBからコントロールユニット2及び車載充電器1に電力が供給されて夫々起動する。
【0029】
また、コントロールユニット2の内部において、M端子とL端子とは第1トランジスタ44を介して接続されている。つまり、上述したL端子に接続されているコントロールユニット電源43はM端子にも接続されている。より具体的には、コントロールユニット電源43は第1トランジスタ44のエミッタ44Eおよびベース44Bに接続されている。また、第1トランジスタ44のコレクタ44Cが上述のM端子に接続されている(
図3参照)。そして、IG−SW7のオフ時において充電コネクタ92を車載充電器1に接続されることにより、バッテリBからの電力がコントロールユニット電源43に供給されると、第1トランジスタ44のベース44Bに接続されたスイッチ48がオンされることによって、第1トランジスタ44がオンされる。第1トランジスタ44がオンされた後は、コントロールユニット電源43からM端子を介してEV電源リレー42のコイル42cに電流が流れ続けるようになっている。よって、回路接続手段41が一定時間後に自動的にオフされても、コントロールユニット2及び車載充電器1は起動し続けるようになっている。そして、充電が終了すると、スイッチ48がオフされることにより、第1トランジスタ44がオフされる。これによって、EV電源リレー42への電力の供給が停止されるので、EV電源リレー42がオフされ、コントロールユニット2及び車載充電器1が停止する。
【0030】
他方、IG−SW7のオン時には、バッテリBからEV電源リレー42へ電源が供給されてEV電源リレー42がオンされることで、コントロールユニット2及び車載充電器1が起動される。詳しくは、図示は省略するが、バッテリBがIG−SW7を介してコントロールユニット2の内部でM端子に接続されており、バッテリBからEV電源リレー42へ電源を供給できる構成となっている。そのため、IG−SW7がオンされるとバッテリBからEV電源リレー42のコイル42cに電流が流れてEV電源リレー42が励磁され、リレースイッチ42sがオンされることでL端子を介してバッテリBからコントロールユニット電源43に電力が供給される。そして、上述したのと同様に、コントロールユニット2及び車載充電器1が夫々起動する。そして、IG-SW7がオフ操作されると、第1トランジスタ44のベース44Bに接続されたスイッチ48がオフされることにより、第1トランジスタ44がオフされ、コントロールユニット2及び車載充電器1が停止する。
【0031】
そして、例えば、充電開始信号回路3の地絡や回路接続手段41のオン固着などが発生し、充電開始信号回路3が常時通電状態になると、第2トランジスタ45がオンされ続けるため、充電終了時やIG−SW7のオフ時に第1トランジスタ44をオフしても、EV電源リレー42のコイル42cの励磁が終了できなくなる。このため、後述するように、コントロールユニット2の電源が落とせず、コントロールユニット2や車載充電器1は起動し続けることになる。
【0032】
モニタ回路46は、コントロールユニット2内の充電開始信号Sの入力を監視する回路であり、
図1〜
図3に示される実施形態では、
図3に示されるように、コントロールユニット2内においてN端子に接続されている回路遮断手段5(後述)と第2トランジスタ45との間に接続されている。これによって、モニタ回路46は、充電開始信号回路3の通電状態、つまりコントロールユニット2への充電開始信号Sの入力状態を監視している。なお、モニタ回路46による監視結果は、後述する診断処理Dによって利用される。
【0033】
以上のような起動回路4により、IG−SW7がオフであってコントロールユニット2及び車載充電器1が起動していなくとも、充電コネクタ92が接続されることで、コントロールユニット2及び車載充電器1を起動させ、充電コネクタ92を介して外部電源Pから車載電池95(走行駆動用バッテリ)の充電を行うことができる。
【0034】
回路遮断手段5は、充電開始信号回路3のコントロールユニット2側に直列に接続され、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出された場合に充電開始信号回路3とコントロールユニット2間で回路を遮断する。また、
図1〜
図3に示される実施形態では、回路遮断手段5は、回路を接続する閉状態と、回路を遮断する開状態とで切り替え可能なスイッチで構成されており、充電開始信号回路3とコントロールユニット2との間で回路を電気的に接続(回路遮断手段5は閉状態)し、あるいは、非接続(回路遮断手段5は開状態)することが可能に構成される。この回路遮断手段5は、充電開始信号回路3が常時通電状態(充電開始信号Sがコントロールユニット2へ常時入力される状態)となる回路異常Eがない正常時には常に閉状態とされる。この回路遮断手段5の開閉状態は、コントロールユニット2によって制御されている。
【0035】
また、
図1〜
図3に示される実施形態では、回路遮断手段5は、コントロールユニット2の内部に設けられ、充電開始信号回路3が接続されるN端子に直列に接続されている。より詳細には、
図3に示すように、回路遮断手段5は、充電開始信号回路3が接続されるN端子と第2トランジスタ45とを直接接続する回路に介設されることにより、充電開始信号回路3およびコントロールユニット2の各々に対して直列に接続されており、充電開始信号回路3とコントロールユニット2(第2トランジスタ45)との間の回路を遮断できる構成となっている。これによって、充電開始信号回路3のいずれの個所で充電開始信号Sが常時通電状態となる回路異常Eが発生しても、コントロールユニット2への充電開始信号Sの入力を確実に遮断することが可能となる。
【0036】
ただし、本実施形態に本発明は限定されず、他の幾つかの実施形態では、回路遮断手段5は、コントロールユニット2の外部に設けられても良い。この場合には、充電開始信号回路3は、回路遮断手段5を介してコントロールユニット2のN端子に接続さていても良い。あるいは、その他の幾つかの実施形態では、回路遮断手段5は充電開始信号回路3に介設されることにより、充電開始信号回路3およびコントロールユニット2の各々に対して直列に接続されていても良い。これらの実施形態においても、回路遮断手段5よりも車載充電器1側に位置する充電開始信号回路3に上記の回路異常Eが発生した場合において、コントロールユニット2への充電開始信号Sの入力を遮断することができる。なお、本明細書において、回路遮断手段5が、充電開始信号回路3のコントロールユニット2側に直列に接続されているとは、上述した、回路遮断手段5がコントロールユニット2の内部に設けられている場合や、その外部に設けられている場合を含むものとする。
【0037】
上述したような構成を備える充電システム9において充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常E(充電開始信号Sが常時入力状態となる回路異常)が発生し、回路異常Eの発生箇所とコントロールユニット2との間に、充電開始信号回路3の一部を通して電流が流れると、上記の回路接続手段41が接続作動していないにもかかわらず、充電開始信号Sがコントロールユニット2に入力された状態(オン状態)になってしまう。しかしながら、コントロールユニット2は回路接続手段41の作動状態の監視等を行っておらず、充電開始信号Sがオン状態にされたのが、回路接続手段41の接続作動によるものなのか、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eによるものなのかをコントロールユニット2では区別されない。このため、充電開始信号回路3に、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生した場合であっても、コントロールユニット2および車載充電器1は起動回路4によって起動されることになる。
【0038】
そして、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eによって起動回路4が誤作動(EV電源リレー42がオン)すると、車両91の車両システムが停止状態にある場合には、車両システムは不必要に勝手に起動され、バッテリBの電力を消費していくことになる。また、運転者が車両91を使用している場合などの車両システムが起動された状態(IG−SW7がオン時)では、IG−SW7がオフされたのを契機に車両システムを停止しようとしても、その一方で、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eにより充電開始信号Sがオン状態となっているため、EV電源リレー42をオフすることができず、車両システムを停止できない。そして、バッテリBを電源とするコントロールユニット2や車載充電器1は、IG−SW7がオフされても、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eのために起動し続けることによって、バッテリBの電力を消耗させることになる。
【0039】
そこで、本発明の一実施形態に係る充電システム9においては、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出されると、回路遮断手段5が閉状態から開状態に切り替えられる。これによって、回路遮断手段5よりも車載充電器1側で生じた、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eによって充電開始信号回路3を介して流れる電流(充電開始信号S)が遮断される。
図1〜
図3に示される実施形態では、回路遮断手段5によって、充電開始信号回路3とコントロールユニット2内の第2トランジスタ45との間において回路が遮断される。これによって、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生したとしても、充電開始信号回路3を介した電流がコントロールユニット2内(第2トランジスタ45)を流れるのを停止させて、充電開始信号Sをオフ状態にすることができる。従って、停止状態にある車両システム(コントロールユニット2および車載充電器1)が勝手に起動された場合には、これを停止させることが可能となると共に、IG−SW7のオンにより既に車両システムが起動されている場合には、IG−SW7がオフされたのを契機に車両システムを停止することができる。
【0040】
なお、回路遮断手段5は、回路異常Eが検出された場合には、車両システム(コントロールユニット2)が停止された状態でも開状態、すなわち回路が遮断された状態で維持されるよう構成されている。例えば、回路異常Eが検出された場合には、コントロールユニット2が停止されてからもバッテリBから回路遮断手段5に電力が供給されて、回路遮断手段5の開状態が維持されるよう構成されていても良い。これによって、車両システム(コントロールユニット2)が停止されている間も充電開始信号回路3とコントロールユニット2間の回路遮断状態が維持されるので、回路異常Eが生じた後、車両システムが停止されてもコントロールユニット2や車載充電器1が勝手に起動するのを回避することができる。
【0041】
上記の構成によれば、充電開始信号回路3が常時通電状態(充電開始信号回路3を介してコントロールユニット2へ充電開始信号Sが常時入力された状態)となる回路異常Eが検出されると、回路遮断手段5によって、充電開始信号回路3とコントロールユニット2との間で回路が遮断される。これによって、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常が発生しても、充電開始信号回路3とコントロールユニット2間で回路を遮断して、コントロールユニット2に充電開始信号Sが入力されるのを阻止することができる。この結果、意図に反してコントロールユニット2が起動することや、車両システム(コントロールユニット2)が停止不能となる状況を解消することができ、意図しない電力消費を防止し、車両91の可用性を向上することができる。
【0042】
なお、充電開始信号回路3での回路異常Eの発生時において、回路遮断手段5を開状態とすると、外部電源Pを車載充電器1に接続して充電しようとしても、充電開始信号回路3に電流(充電開始信号S)が流れることなはない。このため、IG−SW7のオフ時において普通充電は不能となるが、意図しない電力消費を確実に防止することができるので、より長時間にわたって、車両91を走行可能状態に維持することができる(フェールセーフ処理)。
【0043】
また、幾つかの実施形態では、コントロールユニット2は、IG−SW7のオフ時に、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eを検出した場合には、回路遮断手段5により充電開始信号回路3とコントロールユニット2間で回路を遮断した後、コントロールユニット2を停止させる。具体的には、IG−SW7のオフ時において充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eによりコントロールユニット2が起動された場合や、充電コネクタ92が接続された充電中において充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生した場合に、コントロールユニット2は、回路遮断手段5を開状態とした後、EV電源リレー42をオフすることで、強制的にコントロールユニット2および車載充電器1を停止する。
【0044】
上記の構成によれば、IG−SW7のオフ時において、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生した場合、コントロールユニット2が起動されていても使用者が気付かず、起動状態で放置される恐れがある。ところが、本発明では、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出されると、充電開始信号回路3とコントロールユニット2間で回路が遮断されるとともにコントロールユニット2が強制的に停止される。これによって、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが原因で、コントロールユニット2が、IG−SW7のオフ操作後も意図せず起動し続けたり、IG−SW7がオフであるにもかかわらず意図せず勝手に起動された場合でも、コントロールユニット2が起動し続けることが回避される。このため、意図しない電力消費をより確実に防止することができる。
【0045】
次に、上述したコントロールユニット2について
図4〜
図7を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るコントロールユニット2の機能ブロック図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る充電システム9において充電コネクタ92が車両に接続された際の各種信号の正常時のタイミングチャートである。
図6は、本発明の一実施形態に係る充電システム9においてイグニッションスイッチ(IG−SW7)がオンされた際の各種信号の正常時のタイミングチャートである。また、
図7は、本発明の一実施形態に係る制御フロー図である。なお、以下では、上述した
図1〜
図3に示される実施形態に対応したものとして説明する。
【0046】
幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、コントロールユニット2は、回路異常Eを検出するための診断処理Dを実行する回路異常診断部22と、上述したように、回路異常Eを検出した場合には回路遮断手段5を開状態に制御する回路遮断実行部24と、を備える。
診断処理Dは、コントロールユニット2が起動された際に、充電開始信号回路3が正常な場合には充電開始信号Sが入力(オン状態)されることがない診断可能期間Tt(
図5、
図6参照)において実行され、この診断可能期間Ttにおいて充電開始信号Sが出力されているかどうかで回路異常Eを診断する。そして、診断処理Dでは、診断可能期間Ttにおいてコントロールユニット2に充電開始信号Sが入力される(充電開始信号回路3が通電状態となる)場合を、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eとして検出する。
【0047】
例えば、幾つかの実施形態では、充電開始信号回路3が正常であれば、
図5に示されるように、充電コネクタ92が車載充電器1に接続された場合には、回路接続手段41の作動により充電開始信号回路3が通電されてコントロールユニット2に充電開始信号Sが入力される(充電開始信号Sがオン状態にされる)ことでコントロールユニット2が起動された後、EV電源リレー42がオンされて車載充電器1が起動される。そして、充電開始信号Sは、充電コネクタ92の接続から所定の出力時間Tpだけ出力(オン状態)された後、オフ状態にされるように構成されている。つまり、IG−SW7のオフ時に充電コネクタ92が接続された際に、コントロールユニット2(車載充電器1)を起動させるために一時的に充電開始信号Sをコントロールユニット2へ出力させている。
また、IG−SW7がオンされた場合には、
図6に示されるように、IG−SW7のオンによりコントロールユニット2が起動されることでEV電源リレー42がオンされて車載充電器1が起動されるが、ここで、充電開始信号Sは、車載充電器1の起動と同時に所定の出力時間Tpだけ出力(オン状態)された後、オフ状態になるように構成されている。通常、IG−SW7のオン時には、充電開始信号Sを出力する必要は無いが、本実施形態では、回路異常診断部22によって回路接続手段41を作動させて検査用の充電開始信号Sを一時的に出力させるよう制御している。つまり、IG−SW7のオンによりコントロールユニット2と車載充電器1が起動された時に一時的に充電開始信号回路3を通電させて所定の出力時間Tpだけ充電開始信号Sをオン状態にさせている。
【0048】
これは後述する導通検査Cを行っているためであり、この導通検査Cを実行しない場合には、検査用の充電開始信号Sは出力する必要がないので出力時間Tpは0となり、時刻t1〜時刻t2の間(後述する診断待機期間Twの間)でも充電開始信号S(検査用)はオフ状態となる。
【0049】
このように、本実施形態の充電システム9は、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生していない正常時には、充電開始信号Sを所定の出力時間Tpだけ出力させた後の期間(診断可能期間Ttを含む)においては、充電開始信号Sが出力されない(充電開始信号回路3が非通電状態となる)ように構成されている。
【0050】
そして、回路異常診断部22による診断処理Dは、コントロールユニット2の起動後(時刻t1)から所定の診断待機期間Tw経過後(時刻t2以降)の診断可能期間Ttにおいて充電開始信号Sがオン状態にあるかオフ状態にあるかで充電開始信号回路3の回路異常Eを判定する。充電開始信号回路3に回路異常Eが発生している場合には、正常時において充電開始信号Sがオフ状態となるタイミング(
図5や
図6の時刻t2以降の診断可能期間Tt)において充電開始信号回路3が通電状態になるため、正常時と異なり、充電開始信号Sがオン状態となる。すなわち、診断処理Dは、診断可能期間Ttにおける充電開始信号Sの入力状態を検出することで、充電開始信号Sがオン状態(充電開始信号回路3が通電状態)にある場合には回路異常Eが発生していると判定し、充電開始信号Sがオフ状態(充電開始信号回路3が非通電状態)では正常と判定する。
【0051】
幾つかの実施形態では、回路異常診断部22は、診断可能期間Ttにおいては、車両のシステム(コントロールユニット2および車載充電器1)が停止するまで、充電開始信号Sのコントロールユニット2への入力状態を上述したモニタ回路46で常時監視することにより、上記の診断処理Dを実行している。つまり、IG−SW7のオンや充電コネクタ92の接続によりコントロールユニット2が起動された際、診断待機期間Twが経過した後、IG−SW7のオフや充電の終了によりコントロールユニット2が停止されるまで、繰り返し診断処理Dが実行される。つまり、診断待機期間Twが過ぎたあとは、システムが停止されるまで診断可能期間Ttが継続され、診断処理Dは、診断可能期間Ttの間繰り返し実行される。これによって、車両システムの起動中に充電開始信号回路3に回路異常Eが発生した場合でも確実に回路異常Eを検出することができる。また、いつでも回路遮断手段5を開状態とすることができるので、IG−SW7のオフや充電終了を契機にEV電源リレー42をオフしてコントロールユニット2および車載充電器1を停止することができる。
【0052】
一方、回路遮断実行部24は、診断処理Dにて充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出された場合に、回路遮断手段5を開状態に切り替える。これによって、充電開始信号回路3とコントロールユニット2との間で回路が遮断される。
【0053】
上記で説明した診断処理Dを含むコントロールユニット2(回路異常診断部22及び回路遮断実行部24)による制御フローを、
図7を用いて説明する。
ステップS1において、コントロールユニット2は、IG−SW7のオン、オフにかかわらず自身が起動している状態か否かを判定する。幾つかの実施形態では、コントロールユニット2の起動状態は、コントロールユニット2の制御電源電圧が所定値以上でかつ所定時間以上継続するか否かで判定している。コントロールユニット2の起動状態を検知することで、診断可能期間Ttを適切に判定することができ、適切なタイミングで診断処理Dを実行することができる。そして、ステップS1において、コントロールユニット2が起動状態にあると判定すると、ステップS2に進む。
【0054】
ステップS2において、コントロールユニット2(回路異常診断部22)は、コントロールユニット2が起動した時点(時刻t1)から診断待機期間Twを待機する。この診断待機期間Twは、コントロールユニット2が起動した時点(時刻t1)から正常時に出力される充電開始信号Sがオフ状態とされる時点を基準に、その長さ(時間)が適宜設定される。このステップS2により、コントロールユニット2は、診断処理Dの実行タイミングとなる診断可能期間Ttまで、診断処理Dの実行を待機する。すなわち、充電開始信号回路3が正常な場合に充電開始信号Sがオフ状態となる期間まで診断処理Dの実行を待機するよう診断待機期間Twが設定されており、診断可能期間Ttは、この診断待機期間Tw(時刻t1〜時刻t2)の後の期間に設定される。
【0055】
なお、
図5および
図6に示される実施形態では、診断待機期間Twは、コントロールユニット2の起動が、IG−SW7のオン時か、オフ時かにかかわらず同じ長さ(時間)に設定されている。ここでは、充電コネクタ92が接続された場合(IG−SW7がオフ時)より、IG−SW7がオンされた場合の方が、コントロールユニット2の起動から充電開始信号Sがオフ状態になるまでの時間が長いので、診断待機期間Twは、IG−SW7をオンした場合のコントロールユニット2の起動から充電開始信号S(検査用)がオフ状態にされる時点までの時間に合わせて設定されている。なお、他の幾つかの実施形態では、診断待機期間Twの開始タイミング(時刻t1)は、車載充電器1が起動した時点に設定してもよい。
【0056】
ステップS3において、モニタ回路46により充電開始信号Sがオン状態(充電開始信号回路3が通電状態)であるか否かを確認する。このステップS3は診断可能期間Ttで実行される。そして、
図7に示される実施形態では、ステップS3において充電開始信号Sがオン状態である場合には、ステップS4において、充電開始信号Sのオン状態が第1所定時間T1以上経過したか否かを判定する。ステップS4において、充電開始信号Sのオン状態が第1所定時間T1以上経過していない場合には、ステップS3に戻り、第1所定時間T1以上経過するまでは、このステップS3とステップS4を繰り返す。つまり、充電開始信号Sのオン状態が第1所定時間T1以上継続するかを監視している。
【0057】
そして、ステップS4において充電開始信号Sのオン状態が第1所定時間T1以上経過したと判定された場合には、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eにあると判定する(ステップS5)。なお、第1所定時間T1が設けられているのは、例えば、充電開始信号Sが何らかの要因で診断可能期間Ttにおいて一時的にオン状態(充電開始信号回路3が通電状態)となった場合に回路異常Eが発生していると誤判定されるのを防止するためである。つまり、一旦ステップS3で充電開始信号Sがオン状態と判定されてステップS4に進んでも、第1所定時間T1が経過するまでに充電開始信号Sがオフ状態になった場合には、ステップS3からステップS10へ進み、後述する正常判定の処理が行われるので回路異常Eであるとの誤判定を防止することができる。なお、充電開始信号Sがオン状態となっている継続時間のカウントは、ステップS3において充電開始信号Sがオン状態と判定された時点で開始され、充電開始信号Sのオン状態が第1所定時間T1以上経過した時点、もしくは第1所定時間T1が経過する前に充電開始信号Sがオンからオフとなった時点で終了し、同時にリセットされる。
ステップS5において充電開始信号回路3の回路異常Eが発生していると判定されると、コントロールユニット2(回路遮断実行部24)は、ステップS5の後の所定のタイミング(即座や、所定時間経過後など)で回路遮断手段5を開状態に切り替え、充電開始信号回路3とコントロールユニット2との間で回路を遮断する(ステップS6)。
【0058】
図7に示される実施形態では、ステップS6に続くステップS7において、コントロールユニット2は、後述する報知部26(
図4参照)により、充電開始信号回路3の回路異常Eを報知している。なお、他の幾つかの実施形態では、ステップS7は省略されていても良い。
また、他の幾つかの実施形態では、回路異常Eを判定した後(
図7のステップS5の後)、回路異常Eを報知し(
図7のステップS7の実行)、その後、回路遮断手段5を開状態としても良い(
図7のステップS6の実行)。
【0059】
さらに、
図7に示される実施形態では、ステップS6において回路遮断手段5(例えば、回路遮断スイッチ)を開状態とした後(
図7では、さらに、ステップS7で回路異常Eを報知した後)、ステップS8において、IG−SW7がオフされているか否か、すなわちIG−SW7のオフ時に回路異常Eが発生したかどうかを判定している。そして、ステップS8において、IG−SW7がオンされていると判定した場合には、そのまま制御フローを終了し、IG−SW7がオフされている場合は、ステップS9において、EV電源リレー42をオフしてコントロールユニット2を停止させた後、制御フローを終了している。つまり、IG−SW7がオンされている時に回路異常Eが発生した場合は、IG−SW7のオフを契機にコントロールユニット2を停止できればよいので、回路遮断手段5が開状態とされるだけであるが、IG−SW7がオフされている時に回路異常Eが発生した場合(充電中の回路異常Eも含む)は、回路異常Eが使用者に気付かれずにコントロールユニット2が起動状態のまま放置される可能性があるので、回路遮断手段5を開状態にして回路を遮断した後、強制的にコントロールユニット2を停止させている。なお、他の幾つかの実施形態では、ステップS8〜S9は省略されていても良い。
【0060】
一方、ステップS3において、充電開始信号Sがオン状態でない場合(オフ状態)には、ステップS10において、充電開始信号Sのオフ状態が第2所定時間T2以上経過したか否かを判定する。ステップS10において、充電開始信号Sのオフ状態が第2所定時間T2以上経過していない場合には、ステップS3に戻り、第2所定時間T2以上経過するまでは、このステップS3とステップS10を繰り返す。つまり、充電開始信号Sのオフ状態が第2所定時間T2以上継続するかを監視している。そして、ステップS10において充電開始信号Sのオフ状態が第2所定時間T2以上経過したと判定された場合には、ステップS11において、充電開始信号回路3の正常状態の確認がとれたものとして正常判定し、制御フローを終了する。この第2所定時間T2を設けているのは、何らかの要因で一時的に充電開始信号Sがオフ状態(充電開始信号回路3が非通電状態)となった場合に、充電開始信号回路3が正常であると誤判定されるのを防止するためである。つまり、一旦ステップS3で充電開始信号Sがオフ状態と判定されてステップS10に進んでも、第2所定時間T2が経過するまでに充電開始信号Sがオン状態となった場合には、ステップS3からステップS4へ進み、回路異常Eかどうかの判定が行われるので充電開始信号回路3が正常であるとの誤判定を防止することができる。なお、充電開始信号Sがオフ状態となっている継続時間のカウントは、ステップS3において充電開始信号Sがオン状態でない(オフ状態)と判定された時点で開始され、充電開始信号Sのオフ状態が第2所定時間T2以上経過した時点、もしくは第2所定時間T2が経過する前に充電開始信号Sがオフからオンとなった時点で終了し、同時にリセットされる。
【0061】
なお、上記の診断待機期間Twの時間や充電開始信号Sの出力時間Tp、また第1所定時間T1や第2所定時間T2は、コントロールユニット2および車載充電器1の起動が、IG−SW7のオン時(IG−SW7のオンによりコントロールユニット2が起動)か、オフ時(充電コネクタ92の接続によりコントロールユニット2が起動)か、によって、それぞれ設定を変更しても良い。
【0062】
上記の構成によれば、診断処理Dが実行される診断可能期間Ttにおいては、充電開始信号Sはオフ状態(充電開始信号回路3が非通電状態)となるのが正常であるところ、オン状態(充電開始信号回路3が通電状態)となっている場合は、異常であることから、回路異常Eが発生していると判定される。このように、診断可能期間Ttにおけるコントロールユニット2への充電開始信号Sの入力状態がオン状態か、オフ状態かを診断することにより、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eを検出することができる。そして、回路異常Eが検出された場合には、充電開始信号回路3とコントロールユニット2間で回路を遮断し、コントロールユニット2への充電開始信号Sの入力を遮断することで、コントロールユニット2が停止不能な状態となるのを防止することができる。
【0063】
次に、上述した導通検査Cについて説明する。
上述したように、幾つかの実施形態(
図6)では、充電システム9は、上記の診断処理Dとは別に、充電開始信号回路3が非通電状態となる回路異常F(充電開始信号Sがコントロールユニット2に入力されなくなる回路異常)を検出するための導通検査Cを行っている。これは、充電コネクタ92を接続しても充電不能となる故障を検知するための検査である。導通検査Cは、IG−SW7のオンによってコントロールユニット2および車載充電器1が起動された時(
図6)に、充電開始信号回路3の正常時に充電開始信号S(検査用)がオン状態となる期間(
図6の出力時間Tp)に実行される。
【0064】
本実施形態の充電システム9は、充電コネクタの接続時(IG−SW7はオフ)だけでなく、IG−SW7のオンによりコントロールユニット2が起動された時にも、充電開始信号S(検査用)を一時的に出力させるように構成しており、IG−SW7のオンにより車載充電器1が起動された際のコントロールユニット2への充電開始信号S(検査用)の入力状態から充電開始信号回路3に回路異常Fが発生しているか否かの判定を実行する。具体的には、IG−SW7のオン後、充電開始信号回路3の正常時に充電開始信号S(検査用)がオン状態にされるタイミング(
図6の出力時間Tp)において、充電開始信号Sがコントロールユニット2に入力されない場合(モニタ回路46で検出されない場合)は、充電開始信号回路3が非通電状態となる回路異常Fであると異常判定をする。逆に、コントロールユニット2に充電開始信号S(検査用)が入力されていれば正常判定をする。
【0065】
そして、
図6に示される実施形態では、導通検査Cは、診断処理Dが実行される診断可能期間Ttより前に車載充電器1の起動を契機に実施される。すなわち、正常時に充電開始信号Sがオン状態にされる出力時間Tpに合わせて導通検査Cを実施した後、診断待機期間Twが経過して充電開始信号Sが確実にオフ状態にされているタイミングで診断処理Dを実施している。他の幾つかの実施形態では、診断処理Dの後に導通検査Cを実行しても良い。なお、導通検査Cによる検査用の充電開始信号Sは、車載充電器1が起動すると、車載充電器1から自動的に出力されても良いし、コントロールユニット2が車載ネットワーク8を介して車載充電器1に指示するなどすることにより、上述した導通検査Cが可能な任意のタイミングで車載充電器1から出力しても良い。
【0066】
このように導通検査Cと診断処理Dを組み合わせることで、充電開始信号回路3の断線、地絡、天絡を原因とする回路異常F(充電開始信号回路3が非通電状態となり、充電開始信号Sが入力されなくなる故障)および回路異常E(充電開始信号回路3が常時通電状態となり充電開始信号Sが入力され続ける故障)の両方の異常を検出することが可能となる。ここで言う地絡とは、例えば、充電開始信号回路3が車体等にアースした状態である。天絡とは、例えば、充電開始信号回路3が車両側のバックアップ電源回路47に短絡した状態である。なお、
図3に示される実施形態の起動回路4では、充電開始信号回路3に地絡が発生した場合に、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが発生する。このため、充電開始信号回路3に生じた地絡が診断処理Dにより検出可能であり、他方、充電開始信号回路3に天絡や断線が発生した場合には、導通検査Cによって検出が可能となる。
【0067】
また、他の幾つかの実施形態では、
図2、
図3の起動回路4は、上述した実施形態とは異なる回路構成であってもよい。例えば、充電開始信号回路3に天絡が発生した場合に充電開始信号回路3が常時通電状態となり、充電開始信号回路3に地絡、断線が発生した場合に充電開始信号回路3が非通電状態となる回路構成であってもよい。この場合、診断処理Dにより充電開始信号回路3に生じた天絡が検出可能となり、導通検査Cにより充電開始信号回路3に生じた地絡や断線を検出可能となる。
【0068】
また、幾つかの実施形態では、コントロールユニット2は、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出された後にIG−SW7がオフからオンに切り替えられたことを検知すると、回路遮断手段5によって遮断した回路を接続状態に復帰すると共に、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eの診断処理Dを実行する。つまり、回路異常Eが検出されて回路を一旦遮断しても、IG−SW7がオフからオンに切り替えられた時点で遮断している回路を接続状態に復帰させた後、診断処理Dを実行するよう制御される。ここで、充電開始信号回路3が常時通電状態となる回路異常Eが検出されれば、回路遮断手段5は再び開状態とされ、回路異常Eが検出されなければ、回路遮断手段5は閉状態のままとされる。
上記の構成によれば、回路異常Eを検出した後もIG−SW7のオン毎に診断処理Dを実行することができるので、充電開始信号回路3の回路異常Eが一時的な要因により発生した場合において回路遮断手段5が開状態、すなわち回路が遮断された状態で維持される事態を防止し、外部電源Pによる車載電池95の充電が可能な状態に充電システムを復帰させることができる。
【0069】
また、幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、コントロールユニット2は、回路異常Eが検出されたことを報知する報知部26を、さらに含む。報知部26は、充電開始信号回路3に回路異常Eが発生したことを車両91の内部に報知しても良い。また、車載電池95の充電の方法として、車両91が普通充電および急速充電に対応している場合、車載充電器1を用いない急速充電は可能である。急速充電は、充電開始信号Sを用いることなく起動できる。このため、普通充電はできない旨や、急速充電は可能である旨を報知しても良い。
上記の構成によれば、充電開始信号回路3の回路異常Eの発生や、普通充電ができない旨、急速充電など他の方法により充電が可能であることなどを運転手などに知らせることができ、修理を促すことや、可能な代替方法を提示することができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態においては、回路遮断手段5の開閉はコントロールユニット2によって制御されているが、他の幾つかの実施形態では、回路遮断手段5の開閉は運転者による手動によって行われても良い。例えば、充電開始信号回路3の回路異常Eが検出されると、その充電システム9からその旨の報知を受けるなどした後に、回路遮断手段5を手動により開状態としても良い。その他の幾つかの実施形態では、回路遮断手段5の開閉は、コントロールユニット2による制御と手動によるものと、両方により実行可能に構成されても良い。