(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の多結晶シリコン製造装置としては、シーメンス法による製造装置が知られている。この多結晶シリコン製造装置による製造では、反応炉内に種棒となるシリコン芯棒を多数配設して加熱しておき、この反応炉にクロロシランガスと水素ガスとを含む混合ガスからなる原料ガスを供給して、加熱したシリコン芯棒に接触させ、その表面に原料ガスの熱分解及び水素還元によって生成された多結晶シリコンを円柱状に形成させる方法である。
【0003】
このような多結晶シリコン製造装置では、反応炉の壁はステンレス鋼やニッケル基合金などの金属材料によって形成されるが、多結晶シリコン製造時には反応炉内が500℃付近にも達するため、反応炉壁からのアウトガスの影響により多結晶シリコンの汚染が発生するために、反応炉の炉壁全体がジャケットによる二重構造となっていて、その二重構造の炉壁内の流路に冷媒を流通させ、炉壁の温度を特定の制限温度、例えば400℃以下の低い温度に抑えるようにする方法が行なわれている。
【0004】
特許文献1では、反応炉のベルジャの外壁とジャケットの内壁との間に仕切り板で区画された螺旋状の冷媒流路が形成され、冷媒は、ベルジャ直胴部の下部に設けられた冷媒導入口から流入し、螺旋状冷媒流路に沿って、ベルジャ上部の鏡板部を順次経由してベルジャ頂部に設けられた冷媒排出口から流出する構造とされている。また、特許文献2では、多結晶シリコン製造用のCVD設備でカバー部分に水冷ジャケットが形成されており、冷却水が下部の入り口から上部の出口に移行するようにカバーの内外壁管の空間を通して流れる構成としてカバー部分の冷却が行われるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような多結晶シリコン製造装置において、長時間の使用に伴い、反応炉のジャケットの二重構造の炉壁内の流路には、循環冷媒中のスケールや塵、系内の錆等の不溶解成分(これらを総称してスケールとする)が付着物または沈殿物として堆積する場合がある。例えば、特許文献1のような螺旋状冷媒流路の場合、底面部にスケールが堆積し易く、特許文献2のような構成のベルジャカバーの冷却水流路では、その構造からカバー下端部に堆積し易い傾向がある。そして、この付着物や沈殿物が流路内の壁面に付着、堆積または固着すると、その部分の冷媒の流通が妨げられることから、壁面の冷却効果が損なわれ、均一な冷却ができなくなると、壁面の温度が部分的に上昇することにより、炉壁の内面からのアウトガスの影響により多結晶シリコンの汚染を引き起こすおそれがある。
【0007】
特許文献3では、多結晶シリコン製造用の水冷式金属製反応炉の内部に通水路を形成したボトムプレートにおいて、通水路内に付着した水垢や缶石をノズル挿入口から高圧水を導入して除去する構成になっているが、水垢や缶石の付着自体を低減する内容までは開示されていない。
このため、何れの特許文献の構成においても、冷媒中のスケールなどが流路や通水路に付着・堆積後に除去することが通例で、長時間の連続運転による炉の使用においては、品質汚染の影響を受けやすく、また、スケール等を除去する場合も、高圧水による冷媒や通水の供給・排出系を利用した除去方法であるため、確実に除去することや除去後の確認が難しい課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多結晶シリコン製造中に反応炉の炉壁内の流路にスケールが堆積することを低減し、炉壁内面を均一に冷却して炉内汚染を抑制し、長時間にわたり安定した高純度の多結晶シリコンを製造するとともに、冷却流路内に堆積したスケールを容易に除去することができる多結晶シリコンの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原料ガスの反応により多結晶シリコンが析出される反応炉を有する多結晶シリコン製造装置であって、前記反応炉は、内周壁とその外側を覆う外周壁とを有するとともに、前記内周壁と前記外周壁との間に形成され冷媒が流通する流路と、前記外周壁の下部に接続され前記流路に冷媒を供給する冷媒供給系と、前記外周壁の頂部に接続され前記流路内を流通した冷媒を排出する冷媒流出系と、前記外周壁の下部の前記冷媒供給系よりも上方位置に周方向に間隔をおいて複数形成され蓋体により開閉可能な開口と、前記開口の内周下縁部に設けられ、前記冷媒供給系から供給された冷媒の一部を導入して冷媒中のスケールを捕捉するスケール受け部とを備えている。
【0010】
この多結晶シリコン製造装置の反応炉の炉壁内においては、流路の下部から上部に向けて冷媒が流通する。この際、流路の特に下部に溜まり易いスケールが、上昇する冷媒の流れとともに上部側へ移動し運ばれる。そして、外周壁の開口の内周下縁にスケール受け部が形成されていることにより、上昇流の一部が開口内に入り込む際に、その流れとともに入り込んだスケールがスケール受け部に捕捉され堆積する。このスケール受け部は、内周壁ではなく外周壁に設けられているので、その上にスケールが堆積しても、その堆積物が反応炉の内周壁の外面を覆うことはない。したがって、内周壁側の流路の一部をスケールで閉塞することがなく、安定した冷却により、反応炉の内周壁の温度を均一に維持することができる。
スケール受け部に捕捉、堆積したスケールは、多結晶シリコンの製造終了後等に蓋を開けて除去すればよい。
【0011】
本発明の多結晶シリコン製造装置において、前記スケール受け部の前記流路側の角部は、前記流路側から離間するにしたがって上り勾配の傾斜面となっているとよい。
スケール受け部の傾斜面は、流路内の上昇流の一部をスケール受け部に導く作用を有しており、その上昇流によって上部側へ移動し運ばれたスケールをスケール受け部に効果的に案内することができる。
【0012】
本発明の多結晶シリコン製造装置において、前記スケール受け部は、前記流路に直交する上向き面を有する棚部によって形成されている。そして、前記棚部の前記流路側の端部に前記傾斜面が形成されているとよい。
【0013】
本発明の多結晶シリコン製造装置において、前記流路は、上下方向に沿う仕切り壁により周方向に複数の小流路に区画されており、各小流路に前記冷媒供給系が接続され、前記開口は前記小流路ごとに設けられているとよい。
流路を複数の小流路に区画することで、冷媒の流れを反応炉の周壁に沿って均等化することができ、内周壁の温度をより均一にすることができる。小流路の数は二つ以上の任意の数に設定することができ、各小流路への冷媒供給系の接続箇所及び開口の数も一つ以上の任意の数に設定することができる。
【0014】
本発明の多結晶シリコン製造装置において、前記開口の接続位置と前記冷媒供給系の接続位置との間に拡幅切替部が形成されており、前記開口の接続位置における前記流路の流路幅をW1とし、前記冷媒供給系の接続位置における前記流路の流路幅をW2としたときに、前記流路幅W1と前記流路幅W2との比率(W1/W2)が1.2以上1.8以下の範囲内とされているとよい。
【0015】
冷媒供給系の接続位置の流路幅W2と開口の接続位置の流路幅W1とに、比率(W1/W2)が1.2以上1.8以下の範囲内となるように差を設け、外周壁の下部に接続された冷媒供給系により流路の下端側面部から冷媒を供給することで、スケールが堆積、付着しやすい流路下部の特に底部側では冷媒に乱流を生じさせることができ、一方で、開口付近においては安定した上昇流を確保できる。このように、流路の底部側において冷媒の流れに乱流を生じさせることで、スケールを円滑に巻き上げることができ、流路の底部側にスケールが堆積、付着することを防止できるので、安定して冷媒の流通経路を確保できる。したがって、流路により反応炉の内周壁を安定して冷却でき、内周壁の底部側においても温度上昇や温度のばらつきが生じることを抑制できる。
この場合、比率(W1/W2)が1.2未満では、開口を通過する冷媒の上昇流の速度が大きく(速く)なり、スケール受け部におけるスケールの捕捉効果が低下する。一方、比率(W1/W2)が1.8を超えると、流路幅W2から流路幅W1への拡幅切替部において冷媒の流れに過流が生じ易くなり、開口付近において円滑な上昇流の流れを確保しにくくなるとともに、冷媒中のスケールの移動がばらつき、不安定になるため、スケール受け部において安定したスケールの捕捉が難しくなる。
【0016】
また、本発明の多結晶シリコン製造方法は、前記多結晶シリコン製造装置を用いて多結晶シリコンを製造する方法であって、前記反応炉における前記流路内に前記冷媒を流通させた状態として、前記反応炉内に原料ガスを供給して多結晶シリコンを析出する。
前述したように反応炉の炉壁内の流路は、外周壁側の下部に冷媒供給系と開口が設けられ、開口が周方向に間隔をおいて複数形成された状態で冷媒を流通することにより、開口部のスケール受け部でスケールを捕捉できるので、流路内の流路下部側や内周壁の外面にスケールが堆積しにくい構造となっているので、反応炉の内周壁の温度を均一に維持して、不純物濃度の低い多結晶シリコンを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反応炉の壁内の流路に冷媒を流通することにより、その上昇流によって冷媒の流れとともに上部側へ運ばれたスケールがスケール受け部に捕捉されるので、スケールが流路内に堆積しにくく、したがって、長時間にわたって反応炉の内周壁の温度上昇を抑制して、不純物濃度の低い多結晶シリコンを製造することができるとともに、冷却流路内に堆積したスケールを短時間で除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の多結晶シリコン製造装置101は、
図5に全体を示したように、炉底を構成する底板部2と、この底板部2上に脱着自在に取り付けられた釣鐘形状のベルジャ3とを備える反応炉4を有している。この反応炉4のベルジャ3の壁は、内周壁5と外周壁6との二重構造とされ、その間に冷媒を流通させる流路7が形成されており、ベルジャ3の下部に、その流路7に冷媒を供給する冷媒供給系8が接続され、ベルジャ3の頂部に、流路7を経由した冷媒を流出する冷媒流出系9が接続されている。
【0020】
この場合、両壁5,6の間には、
図3に示すように、上下方向に沿う仕切り壁11(二点鎖線で囲んだ範囲Qの要部拡大図において、仕切り壁11を破線のハッチングで示した。)が周方向に間隔をおいて複数設けられ、これら仕切り壁11によって流路7が複数の小流路7aに区画されている。また、本実施形態の多結晶シリコン製造装置101では、
図4に示されるように、約120°間隔で3枚の仕切り壁11が設けられ、これら仕切り壁11によって流路7が三つの小流路7aに区画されており、冷媒供給系8の各供給管8aが、各小流路7aの下部にそれぞれ複数本ずつ(
図4では、各小流路7aに5本ずつ)接続されている。各仕切り壁11の上端部は、ベルジャ3の頂部で中心部に向かうように放射状に配置されており、各小流路7aを経由した冷媒がベルジャ3の中心部に集められて、冷媒流出系9の一つの流出口9aから流出される。なお、流路7は、三つを超える多数の小流路に区画しても良いし、三つより少ない二つの小流路に区画したり、小流路に区画せずに全体で一つの流路を構成しても良い。
反応炉4の底板部2も、内部に冷媒を流通させる流路12が形成されており、その外周部に冷媒供給系13が接続され、中心部に流路から冷媒を下方に流出する冷媒流出系14が接続されている。
【0021】
そして、反応炉4により囲まれた反応室21内には、底板部2に、多結晶シリコンによって形成されたシリコン芯棒22が取り付けられる複数対の電極23と、原料ガスを炉内に噴出するための噴出ノズル24と、反応後のガスを炉外に排出するためのガス排出口25とがそれぞれ複数設けられている。これら噴出ノズル24は、反応炉4の外部の原料ガス供給系26に接続されている。また、ガス排出口25は、底板部2の上の外周部付近に周方向に適宜の間隔をあけて複数設置され、外部のガス処理系27に接続されている。各電極23は外部の電源部28に接続状態とされている。
【0022】
また、シリコン芯棒22は、下端部が電極23内に差し込まれた状態に固定されることにより、上方に延びて立設されている。図示は省略するが、二本ずつのシリコン芯棒22を対として上端部で1本の短尺の連結部材によって連結されることにより、全体として逆U字又はΠ字状となるように組み立てられている。電極23は反応炉4の中心から概略同心円状に配置されていることにより、シリコン芯棒22も全体としてほぼ同心円状に配置されている。
【0023】
そして、ベルジャ3の外周壁6の下部であって、冷媒供給系8の供給管8aの接続位置よりも上方位置に、各小流路7aに連通する開口31が周方向に間隔をおいて設けられている。これら開口31は、
図1及び
図2に示すように、正面視が矩形状に形成されており、この開口31の周縁を区画形成する矩形の枠体32がベルジャ3の外周壁6に一体に設けられ、その枠体32の外側端部に蓋体33がボルト34により着脱可能に取り付けられている。この枠体32は、
図1に示すように、厚さがベルジャ3の外周壁6の厚さよりも大きく形成されており、その内側端はベルジャ3の外周壁6の内面とほぼ面一に配置され、外側端はベルジャ3の外周壁6の外面から突出して設けられている。このように外周壁6に開口31が形成され、その開口31に枠体32が設けられていることにより、上下方向に沿う流路7は、その途中で、一部が外方に張り出した状態に変形させられる。
【0024】
また、この枠体32の内側端部の内周部は面取りされており、傾斜面35が形成されている。そして、この枠体32の下部を構成している板材が、開口31の内周下縁部を形成する棚板(棚部)36であり、ベルジャ3の周方向に沿って設けられる。この棚板36の上向き面36aは水平に設けられ、前述の傾斜面35が、棚板36の内側(流路7側)の角部(端部)に形成され、流路7側から傾斜面35の上り勾配の上端に水平な上向き面36aが接続している。
なお、枠体32の外側端と蓋体33との間には、これらの間を密封するとともに蓋体33内面へのスケール付着防止のために板状の緩衝板37が介在している。
【0025】
流路7の内周壁5の外面と外周壁6の内面との間隔(径方向距離)、すなわち流路7の流路幅W0は、約15mm〜50mmの範囲に形成され、流路7の流路幅W0は、開口31部分を除いて、下部から上部にかけてほぼ均一な大きさに形成される。
【0026】
冷媒供給系8の各供給管8aは、ベルジャ3の中心部から放射状に、言い換えれば径方向に沿って配置されており、図示例では、各供給管8aは、外周壁6の内面にほぼ直交して水平方向に延びて接続されている。また、各供給管8aと流路7との接続口81の接続内口径をD1とした場合に、接続内口径D1は約10mm〜45mmの範囲に形成される。冷媒供給系8の供給管8aの接続位置は、ベルジャ3の下端から供給管8aの接続口81の中心位置までの垂直距離が約40mm〜80mmであり、流路7の底部(下端部)71から供給管8aの接続口81の下端位置までの垂直距離T1が0以上で接続口81の接続内口径D1の2倍以下の大きさとされ、冷媒は流路7の最下部の底部71側の位置から供給される。垂直距離T1が0以上で接続内口径D1の2倍以下の大きさの範囲内であれば、流路7の底部71から上部にかけて安定した上昇流を確保できる。なお、垂直距離T1が接続内口径D1の2倍より大きい範囲では、流路7の底部71のスケールを巻き上げさせて除去することが難しくなる。
【0027】
開口31の高さ位置は、棚板36の上向き面36aが供給管8aの接続口81の中心位置から開口31の中心位置までの垂直距離H0が120mm〜400mmの位置が好ましい。供給管8aが外周壁6に接続されていることから、流路7の下端側面部から冷媒を供給すると、供給管8aの接続口81から近い位置の流路7の底部71側及びその周辺では、乱流が生じる。このため、垂直距離H0が120mmより低い位置の場合、供給管8aの接続口81から比較的近い位置に開口31が配置されることになり、流路7の底部71側及びその周辺における乱流の影響を受けやすく、冷媒中のスケールの移動が速く、不安定になるため、棚板36において安定したスケールの捕捉が難しくなる。また、垂直距離H0が400mmを超えると比較的重量の大きいスケールが流路7内で沈降する場合もあり、好ましくない。
【0028】
また、開口31の周方向の位置は、
図3及び
図4に示すように、冷媒供給系8の供給管8aのベルジャ3への接続位置の真上、あるいは、供給管8aの接続位置の間のいずれの位置に設けることも可能であり、ベルジャ3の中心位置に対する周方向の角度において、開口31の中心位置が、隣接する開口31の中心位置に対して15〜35°の範囲の位置になるようになることがよい。また、開口31の位置が供給管8aの接続位置の周方向位置に対して0〜15°の範囲内に位置することがよい。尚、開口31の面積は、80〜300cm
2の範囲がよい。これらは、反応炉壁の強度の影響やスケール除去時の作業効率を考慮して配置されることが望ましい。
【0029】
また、棚板36は流路7の外周壁6の内面の位置から5〜30mmの範囲で形成されることが望ましく、30mmを超えると冷媒の流れに対して大きな渦などが形成され易く停滞させることとなり好ましくない。また5mm未満ではスケールの捕捉効果が低下する。また、棚板36の傾斜面35の角度は、棚板36の流路7の外周壁6の内面からの位置により、流路7の外周壁6の内面に対する角度αで表すと、角度αは30〜60°の範囲で調整される。
【0030】
次に、このように構成した多結晶シリコン製造装置1を用いて多結晶シリコンを製造する方法について説明する。
反応炉4内に立設されている各シリコン芯棒22に通電するなどにより、これらシリコン芯棒22を発熱させるとともに、原料ガス供給系26からトリクロロシランと水素ガスとを含む原料ガスを供給して噴出ノズル24から反応室21内に噴出すると、その原料ガスが分解または還元反応によりシリコン芯棒22の表面上に多結晶シリコンを析出し、その径を徐々に大きくして概略円柱状のシリコンロッドSとして成長する。
【0031】
この多結晶シリコンの製造中に、反応炉4の流路7,12には冷媒が流通させられる。そして、ベルジャ3の炉壁内の流路7では、下部の冷媒供給系8から供給された冷媒が流路7を
図1の実線矢印Aで示すように上昇する。このとき、冷媒中のスケールも冷媒の流れに乗って上昇するが、流路7の途中で流れの一部が実線矢印Bで示すように枠体32内に入り込む。そして、この枠体32内に入り込む部分で流路断面積が急拡大することにより、流れの一部が棚板36の上向き面36aに引き寄せられるとともに、その流速も低下し、それに伴い、破線矢印Cで示すようにスケールが枠体32の棚板36の上向き面36aに落下する。また、この棚板36の上向き面36aにおける蓋体33の近傍位置は、矢印Bで示す冷媒の流れに対してデッドスペースDとなるため、上向き面36a上に落下したスケールが冷媒の流れに逆戻りしにくく、上向き面36a上に堆積される。すなわち、本実施形態においては、この棚板36が流路7内のスケールを捕捉するスケール受け部とされている。
この棚板36は、ベルジャ3の外周壁6に設けられているので、スケールの堆積物はベルジャ3の内周壁5の外面から離間した位置に配置されることになる。また、棚板36の内周端部における傾斜面35は、流路7内を上昇する冷媒の一部を開口31内に導入するガイドとなる。
【0032】
このように、この多結晶シリコン製造装置1は、多結晶シリコンの製造時にベルジャ3の二重構造の壁の間の流路7に冷媒を流通することにより、冷媒中のスケールが開口31の棚板36の上向き面36a上に捕捉されるので、スケールが内周壁5と外周壁6との間に堆積しにくく、流路7を閉塞することが防止される。このため、ベルジャ3の内周壁5の全面に行き亘るように冷媒が流通し、内周壁5の部分的な温度上昇を抑えて、温度のばらつきを少なくし、不純物の発生を防止して、高純度の多結晶シリコンを製造することができる。
【0033】
棚板36の上向き面36a上に捕捉されたスケールの堆積物は、反応炉4のメンテナンス時等に、蓋体33を外して開口31から除去すればよい。具体的には、掻き出し用の治具や吸引用のノズルなどの使用ができる。開口31の周方向の位置は、冷媒供給系8の供給管8aのベルジャ3への接続位置の真上、あるいは、供給管8aの接続位置の間のいずれの位置に設けることが可能であるが、供給管8aの接続位置の間に配置されることにより、スケールの捕集効果がより高められる。
【0034】
次に、
図6に示される本発明の第2実施形態の多結晶シリコン製造装置102について説明する。
図1に示される第1実施形態の多結晶シリコン製造装置101では、流路7の流路幅W0を、開口31部分を除いて下部から上部にかけてほぼ均一な大きさに形成していたが、
図6に示される第2実施形態の多結晶シリコン製造装置102の流路7には、開口31の接続位置と冷媒供給系8の供給管8aの接続位置との間に拡幅切替部72が形成されており、冷媒供給系8の供給管8aが接続される流路7の底部71側の流路幅W2が上部側の流路幅W1よりも小さく形成された構成とされる。以下、第2実施形態の多結晶シリコン製造装置102の説明において、第1実施形態の多結晶シリコン製造装置1の構成と同じ部分については、説明を一部省略する。
【0035】
第2実施形態の多結晶シリコン製造装置102の流路7は、開口31の接続位置と冷媒供給系8の供給管8aの接続位置との間に、上方に向かうにつれて漸次拡幅する拡幅切替部72が形成されており、開口31の接続位置における流路7の流路幅をW1とし、冷媒供給系8の供給管8aの接続位置における流路7の流路幅をW2としたときに、流路幅W1と流路幅W2との比率(W1/W2)が1.2以上1.8以下の範囲内に形成される。
また、冷媒供給系8の供給管8aと流路7との接続口81の中心位置から拡幅切替部72の下端までの垂直距離をH2とし、その拡幅切替部72の下端から開口31の中心位置までの垂直距離をH1としたときに、垂直距離H2と接続口81の接続内口径D1との比率(H2/D1)が0.8以上1.7以下の範囲内とされ、垂直距離H1と接続口81の接続内口径D1との比率(H1/D1)が0.8以上2.3以下の範囲内に形成される。
なお、冷媒供給系8の供給管8aは、第1実施形態と同様に、流路7の底部71から接続口81の下端位置までの垂直距離T1が0以上で接続内口径D1の2倍以下の大きさとなる位置に接続されており、冷媒は流路7の底部71側から供給されるようになっている。
【0036】
この多結晶シリコン製造装置102においても、第1実施形態と同様に、冷媒供給系8の供給管8aがベルジャ3の外周壁6に接続されており、流路7の下端側面部から冷媒が流路7内に供給される。このため、供給管8aの接続口81から近い位置の流路7の底部71側及びその周辺には、乱流が生じる。
しかし、冷媒供給系8の供給管8aの接続位置の流路幅W2と、開口31の接続位置の流路幅W1とに、比率(W1/W2)が1.2以上1.8以下の範囲内となるように差を設け、外周壁6の下部に接続された供給管8aにより流路7の下端側面部から冷媒を供給することで、スケールが堆積、付着しやすい流路7下部の特に底部71側及びその周辺では冷媒に乱流を生じさせることができ、流路7の開口31付近においては安定した上昇流を確保できる。このように、流路7の底部71側及びその周辺において冷媒の流れに乱流を生じさせることで、スケールを円滑に巻き上げることができ、流路7の底部71側及びぞの周辺にスケールが堆積、付着することを防止できるので、安定して冷媒の流通経路を確保できる。したがって、流路7によりベルジャ3の内周壁5を安定して冷却でき、内周壁5の底部側においても温度上昇や温度のばらつきが生じることを抑制できる。
【0037】
なお、比率(W1/W2)が1.2未満では、開口31を通過する冷媒の上昇流の速度が大きく(速く)なり、棚板36におけるスケールの捕捉効果が低下する。一方、比率(W1/W2)が1.8を超えると、流路幅W2から流路幅W1への拡幅切替部72において冷媒の流れに過流が生じて、開口31付近において円滑な上昇流の流れを確保しにくくなるとともに、冷媒中のスケールの移動が遅く、不安定になるため、開口31(棚板36)において安定したスケールの捕捉が難しくなる。
【0038】
また、比率(H2/D1)が0.8未満では、スケールの巻き上げ効果は向上するが、開口31におけるスケール捕捉効果が低減する。また、比率(H2/D1)が1.7を超えると、スケールの巻き上げ効果が低下し、さらに冷媒の上昇速度が小さく(遅く)なり、比較的重量の大きいスケールを巻き上げさせることが難しくなる。
一方、比率(H1/D1)が0.8未満では、スケールの巻き上げ効果は向上するが、開口31におけるスケールの捕捉効果が低減する。また、比率(H1/D1)が2.3を超えると、比較的重量の大きいスケールを開口31付近まで巻き上げさせることが難しくなることから、開口31におけるスケールの捕捉効果が低減する。
【0039】
また、第2実施形態の多結晶シリコン製造装置102においても、冷媒供給系8の供給管8aを、垂直距離T1が0以上で接続口81の接続内口径D1の2倍以下の大きさの範囲内となる位置に配置しているので、流路7の底部71から上部にかけて安定した上昇流を確保できる。
【0040】
さらに、第1実施形態及び第2実施形態においては、冷媒供給系8の各供給管8aは、外周壁6の内面に直交して水平方向に延びて接続された構成としていたが、
図7に示す第3実施形態の多結晶シリコン製造装置103のように、供給管8aの接続口81を流路7の底部71に向けて下方に傾斜させ、供給管8aから供給される冷媒を流路7の底部71に向けて案内させる構成としてもよい。この場合、供給管8aの接続口81は、
図7に示すように、外周壁6の内面に対する角度βが60°〜80°の範囲で傾斜させるとよい。
【0041】
角度βを設けることで、流路7の底部71にスケールが付着、堆積しにくくする効果がある。なお、この場合においても、冷媒供給系8の供給管8aは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、流路7の底部71から接続口81の下端位置までの垂直距離T1が0以上で接続内口径D1の2倍以下の大きさとなる位置に接続される。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、開口の形状は正面視で矩形状としたが、矩形以外の多角形、円形、楕円形等の形状としてもよい。
また、蓋体33の一部を透明板によって構成してもよく、その透明板の部分を覗き窓として、スケールの捕捉、堆積状況を外部から目視できるようにすることも可能である。その場合は、緩衝板37も、蓋体33の透明部の内側に配置される部分は透明材により構成される。
また、棚板(棚部)の上向き面は必ずしも水平面でなくてもよく、スケールを捕捉させることができ、捕捉、堆積したスケールが流路内に逆戻りしない程度の面が形成されていればよい。平面でなくても可能であり、凹状面であってもよく、さらに外周壁6の周方向に沿う溝状として、その溝内にスケールを溜めるようにしてもよい。したがって、本発明のスケール受け部は、平面、凹状面の他に、溝をも含むものとする。