特許第6819245号(P6819245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6819245非水電解質二次電池用正極板の製造方法及び非水電解質二次電池の製造方法、並びに非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819245
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極板の製造方法及び非水電解質二次電池の製造方法、並びに非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20210114BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20210114BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210114BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20210114BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20210114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20210114BHJP
【FI】
   H01M4/1391
   H01M4/62 Z
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/131
   H01M10/052
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-232617(P2016-232617)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-92707(P2018-92707A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164035
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 正人
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】城田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】河内 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−046350(JP,A)
【文献】 特開2016−085873(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/121350(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/170756(WO,A1)
【文献】 特開平10−154532(JP,A)
【文献】 特開2001−035495(JP,A)
【文献】 特開2017−027927(JP,A)
【文献】 特開2012−028313(JP,A)
【文献】 特開2013−131437(JP,A)
【文献】 特開2011−104592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0309570(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102088071(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体上に正極活物質を含む正極活物質合剤層が形成された正極板の製造方法であって、
前記正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物と、リン酸リチウムを含む正極合剤スラリーを作製する工程と、
前記正極合剤スラリーを前記正極芯体上に塗布する工程と、
前記正極芯体上に塗布された前記正極合剤スラリーを乾燥させ、前記正極活物質合剤層とする工程と、
前記正極活物質合剤層を圧縮ローラで圧縮する工程と、を有し、
前記正極合剤スラリーに含まれるリン酸リチウムのメジアン径(D50)は1.0μm〜10.0μmであり、
前記正極合剤スラリーは、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムを含み、
前記正極合剤スラリーに含まれるリン酸リチウムにおいて、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムの体積積算値が0.1%以上1.0%以下であり、
前記正極合剤スラリーに含まれる前記リン酸リチウムの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物の量に対して1.0質量%以上である、非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4.0μm未満である、
請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項3】
前記正極合剤スラリーは酸化タングステンを含み、
前記酸化タングステンのメジアン径(D50)は0.2μm〜10.0μmであり、
前記酸化タングステンのBET比表面積は、4.0m2/g以上であり、
前記正極合剤スラリーに含まれる前記酸化タングステンの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上である請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項4】
前記正極合剤スラリーは粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンを含み、
前記正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンにおいて、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンの体積積算値が13%以下である請求項3に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項5】
前記酸化タングステンは、粒子径が0.1μm未満の1次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子のメジアン径(D50)が0.2μm〜10.0μmである請求項3又は4に記載の非水電解質二次電池用正極板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造した正極板を用いた非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
正極芯体上に、正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質合剤層が形成された正極板と、
負極板と、
非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極活物質合剤層は、リン酸リチウムを含み、
前記リン酸リチウムのメジアン径(D50)は1.0μm〜10.0μmであり、
前記正極活物質合剤層は、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムを含み、
前記正極活物質合剤層において、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムの体積積算値が0.1%以上1.0%以下であり、
前記正極活物質合剤層に含まれる前記リン酸リチウムの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物の量に対して1.0質量%以上である非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4.0μm未満であり、
前記正極活物質合剤層は、酸化タングステンを含み、
前記酸化タングステンのメジアン径(D50)は0.2μm〜10.0μmであり、
前記酸化タングステンのBET比表面積は、4.0m2/g以上であり、
前記正極活物質合剤層に含まれる前記酸化タングステンの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上である請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用正極板の製造方法及び非水電解質二次電池の製造方法
、並びに非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池は、ハイブリッド電気自動車(PHEV、HEV)や電気自動車(EV)の駆動用電源等に利用されている。このような駆動電源等に利用される非水電解質二次電池に対する性能及び信頼性の向上についての要求はますます高くなっている。
【0003】
下記の特許文献1には、優れた入出力特性と高い耐久性とを兼ね備える非水電解液二次電池を提供することを目的とし、正極は作動上限電位が金属リチウム基準で4.3V以上であり、正極活物質と、DBP吸油量が150ml/100g以上の導電材と、イオン伝導性を有する無機リン酸化合物と、を含む正極活物質合剤層を備える、非水電解液二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−103332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、正極活物質合剤層にリン酸リチウムが含有された正極板を用いた非水電解質二次電池において、以下の課題があることを見出した。
【0006】
正極板を製造する際、正極芯体上に正極活物質合剤層を形成した後、この正極活物質合剤層を圧縮ローラにより圧縮することにより、正極活物質合剤層を所定の密度に圧縮することが好ましい。ここで、正極活物質合剤層に含有されるリン酸リチウムの粒子径が小さい場合、正極活物質合剤層の一部が圧縮ローラに付着し、長尺状の正極板の長手方向において、リン酸リチウム等の含有量が不均一になるという課題が生じる可能性がある。
【0007】
また、正極活物質合剤層にリン酸リチウムを含有させることにより、非水電解質二次電池に過充電等の異常が生じた場合の温度上昇を抑制でき、信頼性の高い非水電解質二次電池となる。しかしながら、更なる信頼性の向上が求められる。
【0008】
本発明の目的の一つは、より高品質な正極板を備えると共により信頼性の高い非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態の正極板の製造方法は、
正極芯体上に、正極活物質を含む正極活物質合剤層が形成された正極板の製造方法であって、
前記正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物と、リン酸リチウムを含む正極合剤スラリーを作製する工程と、
前記正極合剤スラリーを前記正極芯体上に塗布する工程と、
前記正極芯体上に塗布された前記正極合剤スラリーを乾燥させ、前記正極活物質合剤層
とする工程と、
前記正極活物質合剤層を圧縮ローラで圧縮する工程と、を有し、
前記正極合剤スラリーに含まれるリン酸リチウムのメジアン径(D50)は1.0μm〜10.0μmであり、
前記正極合剤スラリーは、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムを含み、
前記正極合剤スラリーに含まれるリン酸リチウムにおいて、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムの体積積算値が1.0%以下であり、
前記正極合剤スラリーに含まれる前記リン酸リチウムの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物の量に対して1.0質量%以上である。
【0010】
このような構成により、正極活物質合剤層を圧縮する際に、圧縮ローラに正極活物質合剤が付着することを抑制しながら、非水電解質二次電池に異常が生じた際の温度上昇がより効果的に抑制された非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
なお、正極合剤スラリーに含まれるリン酸リチウムにおいて、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムの体積積算値は0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。
【0011】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルの総モル数の割合が35mol%以上であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4.0μm未満であることが好ましい。
【0012】
これにより、より高容量且つ高出力の非水電解質二次電池が得られる。なお、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合は、60mol%以下であることが好ましい。これにより、正極板を保管した際の性能低下がより確実に抑制された優れた正極板となる。
また、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は、1μm以上であることが好ましい。これにより、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子同士の顕著な凝集を抑制することができ、リチウム遷移金属複合酸化物の取り扱いが容易になる。
【0013】
前記正極合剤スラリーは、酸化タングステンを含み、
前記酸化タングステンのメジアン径(D50)は0.2μm〜10.0μmであり、
前記酸化タングステンのBET比表面積は、4.0m/g以上であり、
前記正極合剤スラリーに含まれる前記酸化タングステンの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上であることが好ましい。
【0014】
正極合剤スラリーに酸化タングステンを含有させることにより、正極合剤スラリーがゲル化することを抑制できる。更に、酸化タングステンのメジアン径(D50)を0.2μm〜10.0μmとし、酸化タングステンのBET比表面積を4.0m/g以上とし、前記正極活物質合剤層に含まれる前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対する、前記正極活物質合剤層に含まれる酸化タングステンのモル数を0.2mol%以上とすることにより、より効果的に正極合剤スラリーのゲル化を抑制できる。
なお、酸化タングステンのBET比表面積は、10.0m/g以下とすることが好ましく、8.5m/g以下とすることがより好ましい。これにより、圧縮処理後の正極活物質合剤層の充填密度が、安定的に所望の値となる。
また、前記正極活物質合剤層に含まれる前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対する、前記正極活物質合剤層に含まれる酸化タングステンのモル数は1.0mol%以下とすることが好ましく、0.5mol%以下とすることがより好ましい。これにより、正極活物質合剤層中の正極活物質の量が小さくなり電池容量が低下すること
を抑制できる。
【0015】
前記正極合剤スラリーは、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンを含み、
前記正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンにおいて、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンの体積積算値が13%以下であることが好ましい。なお、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンの体積積算値が1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記酸化タングステンは、粒子径が0.1μm未満の1次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子のメジアン径(D50)が0.2μm〜10.0μmであることが好ましい。これにより、より効果的に圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着を抑制しながら、正極合剤スラリーのゲル化を抑制できる。
【0017】
上述の製造方法で製造した正極板を用いて非水電解質二次電池を製造することが好ましい。
【0018】
本発明の一形態の非水電解質二次電池は、
正極芯体上に、正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質合剤層が形成された正極板と、
負極板と、
非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極活物質合剤層は、リン酸リチウムを含み、
前記リン酸リチウムのメジアン径(D50)は1.0μm〜10.0μmであり、
前記正極活物質合剤層は、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムを含み、
前記正極活物質合剤層において、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウムの体積積算値が1.0%以下であり、
前記正極活物質合剤層に含まれる前記リン酸リチウムの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物の量に対して1.0質量%以上である。
【0019】
このような構成によると、より信頼性の高い非水電解質二次電池となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、高品質の正極板を備え、より信頼性の高い非水電解質二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る非水電解質二次電池の斜視図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図3Aは実施形態に係る正極板の平面図であり、図3B図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
図4図4Aは実施形態に係る負極板の平面図であり、図4B図4AのIVB−IVB線に沿った断面図である。
図5】圧縮前の正極板を圧縮ローラにより圧縮処理する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の例示であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0023】
まず、図1及び図2を用いて実施形態に係る角形の非水電解質二次電池20の構成を説明する。図1及び図2に示すように、実施形態に係る角形の非水電解質二次電池20は、開口を有する角形の有底筒状の外装体1と、外装体1の開口を封口する封口板2を有する
。外装体1には、長尺状の正極板と長尺状の負極板が長尺状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体3と非水電解液が収容されている。巻回電極体3は、一方の端部に巻回された正極芯体露出部4dを有し、他方の端部に巻回された負極芯体露出部5dを有する。巻回電極体3と外装体1の間には絶縁シート13が配置されている。封口板2には、外装体1内の圧力が所定値以上となった時に破断し、外装体1内のガスを外装体1外に排出するガス排出弁10が設けられている。また、封口板2には、電解液注液孔11が形成されている。この電解液注液孔11は外装体1内に非水電解液を注液した後、封止栓12により封止される。
【0024】
正極芯体露出部4dには正極集電体6が接続され、正極集電体6と正極外部端子7が電気的に接続される。正極外部端子7は、封口板2を貫通する端子部7aと、封口板2の外面側に配置される外部端子板7bと、外部端子板7bに接続される接続部7cを備える。正極集電体6と封口板2の間には内部側絶縁部材14が配置され、正極外部端子7と封口板2の間には外部側絶縁部材15が配置される。
なお、正極集電体6と正極外部端子7の間に、外装体1内の圧力が所定値以上となったときに作動し、正極板と正極外部端子7の間の導電経路を切断する電流遮断機構を設けることができる。この電流遮断機構の作動圧は、ガス排出弁10の作動圧よりも小さい値とする。また、正極外部端子7において、外部端子板7b及び接続部7cを省略することもできる。
【0025】
負極芯体露出部5dには負極集電体8が接続され、負極集電体8と負極外部端子9が電気的に接続される。負極外部端子9は、封口板2を貫通する端子部9aと、封口板2の外面側に配置される外部端子板9bと、外部端子板9bに接続される接続部9cを備える。負極集電体8と封口板2の間には内部側絶縁部材16が配置され、負極外部端子9と封口板2の間には外部側絶縁部材17が配置される。なお、負極外部端子9において、外部端子板9b及び接続部9cを省略することもできる。
【0026】
図3において、図3Aは正極板4の平面図であり、図3B図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。正極板4では、正極芯体4aの両面に正極活物質合剤層4bが形成されている。正極板4の端部には両面に正極活物質合剤層4bが形成されていない正極芯体露出部4dが設けられている。正極芯体4aにおいて正極活物質合剤層4bと隣接する部分には、正極活物質合剤層4bよりも電気抵抗が大きい正極保護層4cが設けられている。
【0027】
図4において、図4Aは負極板5の平面図であり、図4B図4AのIVB−IVB線に沿った断面図である。負極板5では、負極芯体5aの両面に負極活物質合剤層5bが形成されている。負極板5の端部には両面に負極活物質合剤層5bが形成されていない負極芯体露出部5dが設けられている。なお、負極板5においては、幅方向における両端に負極芯体露出部5dが設けられている。負極板5の幅方向において、一方の端部の負極芯体露出部5dの幅が、他方の端部の負極芯体露出部5dの幅より大きくなっている。
【0028】
次に、非水電解質二次電池20の製造方法を説明する。
【0029】
[正極板の作製]
正極活物質としてのLiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるリチウム遷移金属極複合酸化物、導電剤としての炭素粉末、リン酸リチウム、酸化タングステン、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、分散媒としてのN−メチルー2―ピロリドン(NMP)と混合して正極合剤スラリーを作製する。ここで、正極合剤スラリーに含まれる正極活物質、導電剤、結着剤の質量比は、91:7:2とした。また、正極活物質として、メジアン径(D50)が3μmのリチウム遷移金属極複合酸化物を
用いた。また、酸化タングステンの添加量は、リチウム遷移金属極複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.3mol%となるように添加した。また、メジアン径(D50)が0.6μmであり、BET比表面積が8.0m/gの酸化タングステンを用いた。なお、リチウム遷移金属極複合酸化物及び酸化タングステンのメジアン径(D50)は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製 SALD−2300)により測定した。
【0030】
アルミナ粉末、導電剤としての炭素粉末、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、分散媒としてのN−メチルー2―ピロリドン(NMP)と混合して正極保護層スラリーを作製する。ここで、正極保護層スラリーに含まれるアルミナ粉末、導電材、結着剤の質量比は、83:3:14とした。
【0031】
上述の方法で作製した正極合剤スラリーを、正極芯体4aとしてのアルミニウム箔の両面にダイコーターにより塗布する。また、正極芯体4aにおいて正極合剤スラリーが塗布された部分と隣接する部分に正極保護層スラリーを塗布する。その後、正極合剤スラリー及び正極保護層スラリーを乾燥させて分散媒としてのNMPを除去する。そして、図5に示すように、圧縮ローラ30と圧縮ローラ31の間に圧縮前の正極板40を通し、正極活物質合剤層4bを圧縮ローラ30及び圧縮ローラ31により圧縮した。このとき、圧縮後の正極活物質合剤層4bの充填密度が2.5g/cmとなるように圧縮処理を行った。そして、正極板4の幅方向の一方の端部に長手方向に沿って両面に正極活物質合剤層4bが形成されていない正極芯体露出部4dが形成されるように所定寸法に切断し正極板4とする。
【0032】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛粉末と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを、それぞれの質量比で98:1:1の割合で水に分散させ負極合剤スラリーを作製する。
【0033】
上述の方法で作製した負極合剤スラリーを、負極芯体5aとしての銅箔の両面にダイコーターにより塗布する。次いで、負極合剤スラリーを乾燥させて分散媒としての水を除去し、ロールプレスによって所定厚さとなるように圧縮する。そして、負極板5の幅方向の両端部に長手方向に沿って両面に負極活物質合剤層5bが形成されていない負極芯体露出部5dが形成されるように所定寸法に切断し負極板5とする。
【0034】
[扁平状の巻回電極体の作製]
上述の方法で作製した正極板4と負極板5を、厚さ20μmのポリプロピレン製のセパレータを介して巻回した後、扁平状にプレス成形して扁平状の巻回電極体3を作製する。このとき、扁平状の巻回電極体3の巻き軸方向の一方の端部には巻回された正極芯体露出部4dが形成され、他方の端部には負極芯体露出部5dが形成されるようにする。
【0035】
[非水電解液の調整]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比(25℃、1気圧)で3:3:4となるように混合した混合溶媒を作製する。この混合溶媒に、溶質としてLiPFを1mol/Lとなるように添加する。
【0036】
[非水電解質二次電池の組み立て]
正極外部端子7と正極集電体6が電気的に接続された状態とし、内部側絶縁部材14及び外部側絶縁部材15を介して、正極外部端子7と正極集電体6をアルミニウム製の封口板2に固定する。また、負極外部端子9と負極集電体8が電気的に接続された状態とし、
内部側絶縁部材16及び外部側絶縁部材17を介して、負極外部端子9と負極集電体8をアルミニウム製の封口板2に固定する。
【0037】
正極芯体露出部4dに正極集電体6を溶接し、負極芯体露出部5dに負極集電体8を溶接する。そして、巻回電極体3を絶縁シート13で包み、巻回電極体3を外装体1に挿入する。その後、外装体1と封口板2を溶接し、外装体1の開口を封口板2により封口する。
【0038】
次に、上述の方法で作製した非水電解液を封口板2に設けられた電解液注液孔11から注液し、その後、電解液注液孔11を封止栓12としてのブラインドリベットにより封止する。
以上のようにして非水電解質二次電池20が作製される。
【0039】
次に、正極板a〜e、電池A〜Eについて説明する。
【0040】
[正極板a〜eの作製]
以下の方法で正極板a〜eを作製した。
【0041】
〔正極板a〕
上述の[正極板の作製]に記載の方法において、メジアン径(D50)が4.0μm、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値が4.0%の粉末状のリン酸リチウムを、リチウム遷移金属極複合酸化物に対して2.0質量%となるように正極合剤スラリーに添加して正極板を作製し、正極板aとした。なお、リン酸リチウムのメジアン径(D50)、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値の値は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製 SALD−2300)により測定した。
【0042】
〔正極板b〕
上述の[正極板の作製]に記載の方法において、メジアン径(D50)が4.0μm、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値が1.0%の粉末状のリン酸リチウムを、リチウム遷移金属極複合酸化物に対して1.25質量%となるように添加して正極板を作製し、正極板bとした。
【0043】
〔正極板c〕
上述の[正極板の作製]に記載の方法において、メジアン径(D50)が5.0μm、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値が1.0%の粉末状のリン酸リチウムを、リチウム遷移金属極複合酸化物に対して2.0質量%となるように添加して正極板を作製し、正極板cとした。
【0044】
〔正極板d〕
上述の[正極板の作製]に記載の方法において、メジアン径(D50)が5.0μm、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値が0%の粉末状のリン酸リチウムを、リチウム遷移金属極複合酸化物に対して2.0質量%となるように添加して正極板を作製し、正極板dとした。
【0045】
〔正極板e〕
正極合剤スラリーにリン酸リチウム及び酸化タングステンを添加しないことを除いては上述の[正極板の作製]に記載の方法で正極板を作製し、正極板eとした。
【0046】
上述の方法で作製した正極板a〜eを用いて、上述の方法で角形二次電池A〜Eを作製した。そして、正極板a〜e及び角形二次電池A〜Eについて、以下の評価を行った。
【0047】
〔圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量の評価〕
正極板a〜eについて、正極活物質合剤層を圧縮ローラにより圧縮処理したときの圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量を、次の方法で評価した。圧縮前の正極板を1000m圧縮処理した。そして、ハンディ型光沢計(日本電色製 PG−II)を用いて、単角60度で、圧縮処理前後の圧縮ローラ表面の光沢を測定した。圧縮処理後の圧縮ローラの光沢の値に対する圧縮処理前の圧縮ローラの光沢の値を求めた。圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量が多くなるほど、圧縮ローラの光沢の値が低下するため、圧縮処理後の光沢の値に対する圧縮処理前の光沢の値が大きいほど、圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量が多いことが分かる。
【0048】
〔過充電試験〕
角形二次電池A〜Eについて、次の方法で過充電試験を行った。
充電深度(SOC) 60%の角形二次電池を、60℃の環境下で、125Aの定電流で電池電圧が30Vに達するまで充電した。そして、角形二次電池の外装体1の大面積側壁の中央部の温度を測定し、最高到達温度を測定した。
【0049】
正極板a〜e、及び角形二次電池A〜Eについての評価結果を表1に示す。表1には「圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量」として、圧縮処理後の圧縮ローラの光沢の値に対する圧縮処理前の圧縮ローラの光沢の値を記載した。また、過充電試験について、電池Aにおける最高到達温度を100として、電池B及びDの最高到達温度を相対値で示した。なお、電池Cについては過充電試験を行っていない。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、正極合剤スラリーにリン酸リチウムが添加されていない電池E(正極板e)では、圧縮処理による圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量は少ないものの、過充電試験における最高到達温度が高い。
電池A(正極板a)では、過充電試験における最高到達温度が低いものの、圧縮処理による圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量が多い。
また、電池D(正極板d)では、圧縮処理による圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量を低減できるものの、過充電試験における最高到達温度がやや高くなっている。
これに対し、電池B(正極板b)では、過充電試験における温度上昇を抑制できると共に、圧縮処理による圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量も低減できている。
なお、電池C(正極板c)においても、圧縮処理による圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着量も低減できている。
【0052】
これらの結果は、以下のように考察される。正極合剤スラリーに添加されるリン酸リチウム粉末に粒子径が1.0μm未満の粒子が含まれることにより、より多くの正極活物質
表面にリン酸リチウムが配置されるため、過充電時の温度上昇をより効果的に抑制できると考えられる。このため、リン酸リチウム粉末に、粒子径が1.0μm未満の粒子が全く含まれない場合は、過充電時の温度上昇の抑制効果が低い。しかしながら、正極合剤スラリーに添加されるリン酸リチウム粉末において、粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値(%)が多くなると、水分を含み易く圧縮ロールに付着し易いリン酸リチウム粒子が正極活物質合剤層表面により多く配置され易くなるため、正極板の圧縮処理時に圧縮ローラに正極活物質合剤がより多く付着し易くなると考えられる。
【0053】
したがって、電池B(正極板b)のように、粒子径が1.0μm未満のリン酸リチウム粒子が正極合剤スラリーに含まれ、リン酸リチウム粉末における粒子径が1.0μm未満の粒子の体積積算値を1.0%以下とすることにより、正極板の圧縮処理時に圧縮ローラに正極活物質合剤が付着することを抑制し、且つ過充電状態における温度上昇を抑制できる信頼性の高い二次電池となる。
【0054】
なお、正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4μm未満であることが好ましい。これにより、より高容量、且つ高出力である非水電解質二次電池が得られる。しかしながら、このようなリチウム遷移金属複合酸化物を用いて正極合剤スラリーを作製した場合、正極合剤スラリーがゲル化し易くなる。このため、正極合剤スラリーに酸化タングステンを添加することにより、正極合剤スラリーがゲル化を抑制することが好ましい。
【0055】
そして、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは、メジアン径(D50)が0.2〜10.0μmであり、BET比表面積が4.0m/g〜8.5m/gであることが好ましい。また、正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンの量は、リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%〜0.5mol%であることが好ましい。正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンの量が多くなりすぎると、正極活物質の割合が減少し、容量低下につながる。
【0056】
また、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは粒子径が0.2μm未満の粒子を含み、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンにおいて、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンの体積積算値が13%以下であることが好ましい。これにより、より確実に正極合剤スラリーのゲル化を防止できる共に、正極板の圧縮工程において、圧縮ローラに正極活物質合剤が付着することをより効果的に抑制できる。
【0057】
正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは、粒子径が0.1μm未満の1次粒子が凝集した二次粒子を含み、二次粒子のメジアン径(D50)が0.2μm〜10.0μmであることが好ましい。このような構成であると、より確実に正極合剤スラリーのゲル化を防止できる共に、圧縮ロールへの正極活物質合剤の付着をより効果的に抑制できる。
【0058】
≪その他≫
正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi1−xMn(0<x<1))、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi1−xCo(0<x<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNiCoMn(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1))等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。また、上記のリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、Nb、B、W、Mg又はMo等を添加したものも
使用し得る。例えば、Li1+aNiCoMn(M=Al、Ti、Zr、Nb、B、Mg及びMoから選択される少なくとも1種の元素、0≦a≦0.2、0.2≦x≦0.5、0.2≦y≦0.5、0.2≦z≦0.4、0≦b≦0.02、a+b+x+y+z=1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0059】
負極活物質としてはリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料を用いることができる。リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの内、特に黒鉛が好ましい。さらに、非炭素系材料としては、シリコン、スズ、及びそれらを主とする合金や酸化物などが挙げられる。
【0060】
非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を使用することができ、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることが好ましい。また、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和環状炭酸エステルを非水電解質に添加することもできる。
【0061】
非水電解質の電解質塩としては、従来のリチウムイオン二次電池において電解質塩として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiB(C、LiB(C)F、LiP(C、LiP(C、LiP(C)F等及びそれらの混合物が用いられる。これらの中でも、LiPFが特に好ましい。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0062】
セパレータとしては、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PP)などのポリオレフィン製の多孔質セパレータを用いることが好ましい。特にポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の3層構造(PP/PE/PP、あるいはPE/PP/PE)を有するセパレータを用いることが好ましい。また、セパレータにアルミナ等の無機粒子とバインダーから成る耐熱層を設けることができる。
また、ポリマー電解質をセパレータとして用いてもよい。
【0063】
正極活物質合剤層の表面、ないし負極活物質層の表面にアルミナ等の無機粒子とバインダーから成る耐熱層を設けることができる。また、正極板において、正極活物質合剤層が形成された領域と隣接する正極芯体上に、アルミナ等の無機粒子とバインダーから成る正極保護層を設けることができる。なお、正極保護層に炭素材料等の導電性粒子を添加することもできる。
【0064】
≪その他の発明≫
その他の発明に関する非水電解質二次電池の製造方法は、
正極芯体上に、正極活物質を含む正極活物質合剤層が形成された正極板の製造方法であって、
前記正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物と、酸化タングステンを含む正極合剤スラリーを作製する工程と、
前記正極合剤スラリーを前記正極芯体上に塗布する工程と、
前記正極芯体上に塗布された前記正極合剤スラリーを乾燥させ、前記正極活物質合剤層とする工程と、
前記正極活物質合剤層を圧縮ローラで圧縮する工程と、を有し、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、
前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、
前記リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4μm未満であり、
前記正極合剤スラリーは、酸化タングステンを含み、
前記酸化タングステンのメジアン径(D50)は0.2μm〜10.0μmであり、
前記酸化タングステンのBET比表面積は、4.0m/g以上であり、
前記正極合剤スラリーに含まれる前記酸化タングステンの量は、前記リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上である。
【0065】
正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含み、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4μm未満であることが好ましい。これにより、より高容量、且つ高出力である二次電池が得られる。しかしながら、このようなリチウム遷移金属複合酸化物を用いて正極合剤スラリーを作製した場合、正極合剤スラリーがゲル化し易くなる。そこで、正極合剤スラリーに酸化タングステンを添加することにより、正極合剤スラリーがゲル化を抑制できる。
【0066】
そして、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは、メジアン径(D50)が0.2μm〜10.0μmであり、BET比表面積が4.0m/g以上であることにより、より確実に正極合剤スラリーがゲル化を抑制できる。また、正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンの量は、リチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上とする。
【0067】
また、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは粒子径が0.2μm未満の粒子を含み、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンにおいて、粒子径が0.2μm未満の酸化タングステンの体積積算値が13%以下であることが好ましい。これにより、正極板の圧縮工程において、圧縮ローラに正極活物質合剤が付着することをより効果的に抑制できる。
【0068】
正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは、粒子径が0.1μm未満の1次粒子が凝集した二次粒子を含み、二次粒子の平均粒子径が0.2μm〜10.0μmであることが好ましい。このような構成であると、より確実に正極合剤スラリーのゲル化を防止できる共に、圧縮ロールへの正極活物質合剤の付着をより効果的に抑制できる。
【0069】
[参考例]
〔正極板f〕
正極合剤スラリーにリン酸リチウム及び酸化タングステンを添加しないことを除いては上述の[正極板の作製]に記載の方法で正極板を作製し正極板fとした。
【0070】
〔正極板g〕
正極合剤スラリーにリン酸リチウムを添加しないことを除いては上述の[正極板の作製]に記載の方法で正極板を作製し正極板gとした。なお、BET比表面積が8.0m/gであり、粒子径が0.2μm未満の粒子を含み、粒子径が0.2μm未満の粒子の体積積算値が50%である酸化タングステン粉末を用いた。
【0071】
〔正極板h〕
正極合剤スラリーにリン酸リチウムを添加しないことを除いては上述の[正極板の作製]に記載の方法で正極板を作製し正極板hとした。なお、BET比表面積が8.0m/gであり、粒子径が0.2μm未満の粒子を含み、粒子径が0.2μm未満の粒子の体積積算値が13%である酸化タングステン粉末を用いた。
【0072】
正極板f〜hを作製するために作製した正極合剤スラリーに関し、それぞれゲル化の評価を行った。
〔正極合剤スラリーのゲル化の評価〕
作製直後の正極合剤スラリーの粘度をスパイラル粘度計(MALCOM製 PC−1TL)で測定し、保存前の粘度とした。次に、25℃で2週間保存した正極合剤スラリーの粘度を同様に測定し、保存後の粘度とした。「保存後の粘度」/「保存前の粘度」=「粘度の変化率」とした。なお、粘度の変化率が大きいほど、ゲル化の程度が大きいことを示す。
【0073】
正極板f〜hに関する、粘度の変化率(保存後の粘度/保存前の粘度)及び圧着ローラへの正極活物質合剤の付着量を表2に示す。圧縮ローラへの付着量は、圧縮処理後の圧縮ローラの光沢の値に対する圧縮処理前の圧縮ローラの光沢の値から求めた。
【0074】
【表2】
【0075】
正極板fに関して、正極合剤スラリーに酸化タングステンが添加されない場合は、圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着は少ないものの、正極合剤スラリーがゲル化し易い。
正極板hに関して、正極合剤スラリー添加される酸化タングステンについて、粒子径が0.2μm未満の粒子の体積積算値(%)が13%と比較的小さい場合は、正極合剤スラリーのゲル化を抑制しつつ、圧縮ローラへの正極活物質合剤の付着も低減できる。
【0076】
以上のことから、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属の総モル数に対する、前記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合が35mol%以上であり、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(D50)は4.0μm未満である場合、正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンのメジアン径(D50)は0.2〜10.0μmであり、酸化タングステンのBET比表面積は、4.0m/g以上であり、正極合剤スラリーに含まれる酸化タングステンの量はリチウム遷移金属複合酸化物中の遷移金属の総モル数に対して0.2mol%以上であることが好ましい。更に、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンは粒子径が0.2μm未満の粒子を含み、正極合剤スラリーに添加される酸化タングステンにおいて、粒子径が0.2μm未満の酸化タン
グステンの体積積算値が13%以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
20・・・非水電解質二次電池
1・・・外装体
2・・・封口板
3・・・巻回電極体
4・・・正極板
4a・・・正極芯体
4b・・・正極活物質合剤層
4c・・・正極保護層
4d・・・正極芯体露出部
5・・・負極板
5a・・・負極芯体
5b・・・負極活物質合剤層
5d・・・負極芯体露出部
6・・・正極集電体
7・・・正極外部端子
7a・・・端子部
7b・・・外部端子板
7c・・・接続部
8・・・負極集電体
9・・・負極外部端子
9a・・・端子部
9b・・・外部端子板
9c・・・接続部
10・・・ガス排出弁
11・・・電解液注液孔
12・・・封止栓
13・・・絶縁シート
14・・・内部側絶縁部材
15・・・外部側絶縁部材
16・・・内部側絶縁部材
17・・・外部側絶縁部材

30、31・・・圧縮ローラ
40・・・圧縮前の正極板
図1
図2
図3
図4
図5