特許第6819258号(P6819258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819258
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20210114BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20210114BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20210114BHJP
【FI】
   B66C23/88 Z
   B66C15/00 Z
   G05D1/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-239907(P2016-239907)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-95365(P2018-95365A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小阪 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】玉木 啓資
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−287015(JP,A)
【文献】 特開2000−292185(JP,A)
【文献】 特開平07−113866(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094074(WO,A1)
【文献】 特開2014−124980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00− 23/94
B66C 13/00− 15/06
G05D 1/00− 1/12
G01C 21/00− 21/36
G01C 23/00− 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪によって走行自在としたクレーンにおいて、
自己の諸元を把握し、
作業現場の地形を表す三次元情報を取得し、
前記三次元情報に基づいて走行経路の路面状況を認識し、
前記自己の諸元と前記走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断し、
前記車輪を上下方向に可動自在とするサスペンションを具備し、
前記自己の諸元であるサスペンションストロークと前記走行経路の路面状況である凹部深さを比較し、更に凹部長さに基づいて走行可能又は走行不能を判断する、ことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記自己の諸元である登坂能力と前記走行経路の路面状況である勾配角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記自己の諸元であるアプローチアングルと前記走行経路の路面状況である勾配入口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記自己の諸元であるデパーチャアングルと前記走行経路の路面状況である勾配出口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項5】
前記自己の諸元であるランプブレークオーバーアングルと前記走行経路の路面状況である勾配頂上角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項6】
表示装置を具備し、
前記表示装置に前記三次元情報である画像を表示するとともに、当該画像上に走行可能と判断された走行経路及び走行不能と判断された走行経路を表示する、ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。詳しくは、自己の諸元と走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断できるクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている(特許文献1参照)。クレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、走行自在に構成されている。旋回体は、ブームに加えてフックの巻き上げ及び巻き下げを可能とするウインチを備え、荷物を運搬自在に構成されている。
【0003】
ところで、クレーンは、未舗装の路面を走行する機会が多い。また、大きな荷物を運搬できる大型のクレーンは、走行体と旋回体が巨大であるから重量が重い。従って、このようなクレーンは、急坂を登ることができずにスタックしてしまう場合があった。また、路面がクレーンの底部構造に引っ掛かってスタックしてしまう場合もあった。そこで、自己の諸元と走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断できるクレーンが求められていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−108134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己の諸元と走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断できるクレーンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、
複数の車輪によって走行自在としたクレーンにおいて、
自己の諸元を把握し、
作業現場の地形を表す三次元情報を取得し、
前記三次元情報に基づいて走行経路の路面状況を認識し、
前記自己の諸元と前記走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断し、
前記車輪を上下方向に可動自在とするサスペンションを具備し、
前記自己の諸元であるサスペンションストロークと前記走行経路の路面状況である凹部深さを比較し、更に凹部長さに基づいて走行可能又は走行不能を判断する、ものである。
【0007】
第二の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記自己の諸元である登坂能力と前記走行経路の路面状況である勾配角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ものである。
【0008】
第三の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記自己の諸元であるアプローチアングルと前記走行経路の路面状況である勾配入口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ものである。
【0009】
第四の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記自己の諸元であるデパーチャアングルと前記走行経路の路面状況である勾配出口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ものである。
【0010】
第五の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記自己の諸元であるランプブレークオーバーアングルと前記走行経路の路面状況である勾配頂上角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する、ものである。
【0012】
の発明は、第一から第のいずれかの発明に係るクレーンにおいて、
表示装置を具備し、
前記表示装置に前記三次元情報である画像を表示するとともに、当該画像上に走行可能と判断された走行経路及び走行不能と判断された走行経路を表示する、ものである。
【発明の効果】
【0013】
第一の発明に係るクレーンは、自己の諸元を把握し、作業現場の地形を表す三次元情報を取得し、三次元情報に基づいて走行経路の路面状況を認識する。そして、自己の諸元と走行経路の路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断する。また、自己の諸元であるサスペンションストロークと走行経路の路面状況である凹部深さを比較し、更に凹部長さに基づいて走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーンによれば、走行経路の路面状況に起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行経路の凹部深さが深く、かつ凹部長さが所定の範囲となるのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、車輪の駆動力(駆動トルク)が路面に伝わらずにスタックするのを予防できる。
【0014】
第二の発明に係るクレーンは、自己の諸元である登坂能力と走行経路の路面状況である勾配角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーンによれば、走行経路の勾配角度が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、車輪の駆動力(駆動トルク)が不足してスタックするのを予防できる。
【0015】
第三の発明に係るクレーンは、自己の諸元であるアプローチアングルと走行経路の路面状況である勾配入口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーンによれば、走行経路の勾配入口角度が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体の前部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0016】
第四の発明に係るクレーンは、自己の諸元であるデパーチャアングルと走行経路の路面状況である勾配出口角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーンによれば、走行経路の勾配出口角度が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体の後部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0017】
第五の発明に係るクレーンは、自己の諸元であるランプブレークオーバーアングルと走行経路の路面状況である勾配頂上角度を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーンによれば、走行経路の勾配頂上角度が小さいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体の中央部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0019】
の発明に係るクレーンは、表示装置に三次元情報である画像を表示するとともに、当該画像上に走行可能と判断された走行経路及び走行不能と判断された走行経路を表示する。かかるクレーンによれば、走行可能と判断された走行経路及び走行不能と判断された走行経路をオペレータが容易にかつ素早く把握できる。これにより、作業効率の向上が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】走行時におけるクレーンを示す図。
図2】吊上作業時におけるクレーンを示す図。
図3】走行可能又は走行不能を判断するシステムを示す図。
図4】上り勾配におけるクレーンを示す図。
図5】上り勾配の入口部分におけるクレーンを示す図。
図6】下り勾配の出口部分におけるクレーンを示す図。
図7】上り勾配と下り勾配の山部分におけるクレーンを示す図。
図8】下り勾配と上り勾配の谷部分におけるクレーンを示す図。
図9】作業現場の地形を表す三次元情報を示す図。
図10】制御装置による処理態様を示す図。
図11】表示装置に表示された画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の技術的思想は、以下に説明するクレーン1のほか、他の作業車両にも適用できる。
【0022】
まず、クレーン1について簡単に説明する。
【0023】
図1は、走行時におけるクレーン1を示している。図2は、吊上作業時におけるクレーン1を示している。
【0024】
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0025】
走行体2は、左右一対の車輪(駆動輪及び従動輪)4を備えている。車輪4は、前列から順に駆動輪41、従動輪42、駆動輪43、駆動輪44、駆動輪45、従動輪46となっている。また、走行体2は、吊上作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ5を備えている。更に、走行体2は、これらを駆動するためのアクチュエータに加え、エンジン6やトランスミッションなどを備えている。なお、走行体2は、その前部に運転用キャビン7を備えている。運転用キャビン7には、走行操作に必要となるハンドルやアクセルペダル、ブレーキペダルなどが設けられている。
【0026】
旋回体3は、油圧モータによって旋回自在となっている(図2における矢印A参照)。旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム8を備えている。ブーム8は、油圧シリンダによって伸縮自在となっている(図2における矢印B参照)。また、ブーム8は、油圧シリンダによって起伏自在となっている(図2における矢印C参照)。なお、旋回体3は、ブーム8の左方に操縦用キャビン9を備えている。操縦用キャビン9には、吊上作業の操作に必要となる旋回レバーや伸縮レバー、起伏レバーなどが設けられている。また、操縦用キャビン9には、表示装置92や警報装置93が設けられている(図3参照)。
【0027】
次に、走行可能又は走行不能を判断するシステムについて説明する。
【0028】
図3は、走行可能又は走行不能を判断するシステムを示す図である。また、図4から図8は、様々な路面状況におけるクレーン1を示す図である。更に、図9は、作業現場の地形を表す三次元情報を示す図である。
【0029】
制御装置10は、CPUなどの処理部11とROM及びRAMなどの記憶部12を有している。記憶部12には、自己の諸元が記憶されている。また、制御装置10は、位置特定部13を有している。位置特定部13は、GNSSアンテナが受信した電波に基づいて現在位置を特定するものである。更に、制御装置10は、情報受信部14を有している。情報受信部14は、図示しないアンテナが電波を受信することにより、様々な情報を取得できる。具体的には、通信ネットワークNtを介して遠隔サーバSvに格納されている様々な情報を取得できる。例えば、作業現場の地形を表す三次元情報を取得できる。なお、制御装置10は、カメラ91に接続されている。カメラ91は、作業現場を上方から撮影すべく、ブーム8の先端部分に取り付けられている。更に、制御装置10は、表示装置92と警報装置93に接続されている。
【0030】
次に、「自己の諸元」について説明する。
【0031】
「自己の諸元」には、クレーン1の登坂能力のほか、クレーン1のアプローチアングル、デパーチャアングル、ランプブレークオーバーアングル、サスペンションストロークなどが含まれる。
【0032】
登坂能力とは、クレーン1が登ることができる最大傾斜角度であって、全ての車輪4に接する仮想線Laと水平線Lhのなす角である(図4参照)。かかる角度α1は、クレーン1の走行性能を示す重要な値である。そして、角度α1よりも走行経路の勾配角度β1が小さいか否かが問題となる。角度α1よりも勾配角度β1が小さい場合、クレーン1は、車輪4(駆動輪41・43・44・45)の駆動力(駆動トルク)が不足しないので、スタックすることなく走行できる。反対に、角度α1よりも勾配角度β1が大きい場合、クレーン1は、車輪4(駆動輪41・43・44・45)の駆動力(駆動トルク)が不足するので、スタックすることとなる。また、エンジン6やトランスミッションに過大な負荷がかかって故障する恐れもある。従って、角度α1の値が大きい程、クレーン1の走行性能が高いことが分かる。
【0033】
アプローチアングルとは、駆動輪41の外周に接し、かつ駆動輪41よりも前側の底部構造に接する仮想線Lbと水平線Lhのなす角である(図5参照)。かかる角度α2は、クレーン1の走行性能を示す重要な値である。そして、角度α2よりも走行経路の勾配入口角度β2が小さいか否かが問題となる。角度α2よりも勾配入口角度β2が小さい場合、クレーン1は、走行体2の前部における底部構造に路面が引っ掛からないので(乗り上げないので)、スタックすることなく走行できる。反対に、角度α2よりも勾配入口角度β2が大きい場合、クレーン1は、走行体2の前部における底部構造に路面が引っ掛かるので(乗り上げるので)、ときにスタックすることとなる。また、底部構造が故障する恐れもある。従って、角度α2の値が大きい程、クレーン1の走行性能が高いことが分かる。
【0034】
デパーチャアングルとは、従動輪46の外周に接し、かつ従動輪46よりも後側の底部構造に接する仮想線Lcと水平線Lhのなす角である(図6参照)。かかる角度α3は、クレーン1の走行性能を示す重要な値である。そして、角度α3よりも走行経路の勾配出口角度β3が小さいか否かが問題となる。角度α3よりも勾配出口角度β3が小さい場合、クレーン1は、走行体2の後部における底部構造に路面が引っ掛からないので(乗り上げないので)、スタックすることなく走行できる。反対に、角度α3よりも勾配入口角度β3が大きい場合、クレーン1は、走行体2の後部における底部構造に路面が引っ掛かるので(乗り上げるので)、ときにスタックすることとなる。また、底部構造が故障する恐れもある。従って、角度α3の値が大きい程、クレーン1の走行性能が高いことが分かる。
【0035】
ランプブレークオーバーアングルとは、駆動輪44の外周に接し、かつ駆動輪44と駆動輪45の中央における底部構造を通る仮想線Ldと、駆動輪45の外周に接し、かつ駆動輪44と駆動輪45の中央における底部構造を通る仮想線Leと、のなす角である(図7参照)。かかる角度α4は、クレーン1の走行性能を示す重要な値である。そして、角度α4よりも走行経路の勾配頂上角度β4が大きいか否かが問題となる。角度α4よりも勾配頂上角度β4が大きい場合、クレーン1は、走行体2の中央部における底部構造に路面が引っ掛からないので(乗り上げないので)、スタックすることなく走行できる。反対に、角度α4よりも勾配頂上角度β4が小さい場合、クレーン1は、走行体2の中央部における底部構造に路面が引っ掛かるので(乗り上げるので)、ときにスタックすることとなる。また、底部構造が故障する恐れもある。従って、角度α4の値が小さい程、クレーン1の走行性能が高いことが分かる。
【0036】
サスペンションストロークとは、サスペンション4Sの機能によって車輪4が上下方向に可動する範囲のうち、定常位置から下限位置までの寸法である(図8参照)。かかる寸法Sは、クレーン1の走行性能を示す重要な値である。そして、寸法Sよりも走行経路の凹部深さDが浅いか否か及び凹部深さDが深いとして凹部長さLが所定の範囲であるか否かが問題となる。寸法Sよりも凹部深さDが浅い場合、クレーン1は、車輪4(駆動輪41・43・44・45)が接地して駆動力(駆動トルク)が路面に伝わるので、スタックすることなく走行できる。反対に、寸法Sよりも凹部深さDが深く、かつ凹部長さLが所定の範囲となる場合、クレーン1は、車輪4(駆動輪41・43・44・45)のうち、駆動輪43と駆動輪44と駆動輪45が浮き上がって駆動力(駆動トルク)が路面に伝わらないので、ときにスタックすることとなる。また、凹部長さLが所定の範囲となる場合とは、全ての車輪4(駆動輪41・43・44・45と従動輪42・46)のうち、駆動輪41と従動輪46が路面に接し、従動輪42と駆動輪43と駆動輪44と駆動輪45が路面に接していない状態となる範囲をいう。そのため、駆動輪41や従動輪46に過大な負荷がかかって故障する恐れもある。従って、寸法Sの値が大きい程、クレーン1の走行性能が高いことが分かる。
【0037】
次に、「三次元情報」について説明する。
【0038】
「三次元情報」とは、作業現場における地形が等高線Cによって表された三次元マップMある。具体的に説明すると、盛土や切土などを含む地形の高低が等高線Cによって表された三次元マップMである。三次元マップMにおいて、等高線Cの間隔が広い場所はなだらかな地形を表し、等高線Cの間隔が狭い場所は急峻な地形を表す。また、三次元マップMには、作業車両の走行経路Rが含まれている。なお、三次元マップMには、走行経路Rごとに舗装又は非舗装である旨の情報が記録されているとしてもよい。また、ぬかるみの場所などの情報が記録されているとしてもよい。
【0039】
三次元マップMは、現在位置を特定することにより、遠隔サーバSvから取得できる。若しくは、カメラ91によって作業現場を撮影し、得られた画像データに基づいて三次元マップMを作成するとしてもよい。また、他のカメラによって作業現場を撮影し、得られた画像データに基づいて三次元マップMを作成するとしてもよい。加えて、レーザースキャナによって地形を計測し、得られた点群データに基づいて三次元マップMを作成するとしてもよい。三次元マップMは、所定時間ごと若しくは作業行程ごとに更新されるのが好ましい。
【0040】
以下に、走行可能又は走行不能を判断するフローについて説明する。
【0041】
図10は、制御装置10による処理態様を示す図である。また、図11は、表示装置92に表示された画像を示す図である。
【0042】
ステップS1において、制御装置10は、自己の諸元を把握する。具体的に説明すると、制御装置10は、クレーン1の登坂能力α1のほか、クレーン1のアプローチアングルα2、デパーチャアングルα3、ランプブレークオーバーアングルα4、サスペンションストロークSなどを把握する。その後、ステップS2に移行する。
【0043】
ステップS2において、制御装置10は、作業現場の地形を表す三次元マップMを取得する。具体的に説明すると、制御装置10は、現在位置を特定することにより、遠隔サーバSvから取得する。若しくは、上述した方法によって自ら作成した三次元マップMを取得する。このとき、表示装置92に三次元マップMを表示する。その後、ステップS3に移行する。
【0044】
ステップS3において、制御装置10は、三次元マップMに基づいて走行経路Rの路面状況を認識する。具体的に説明すると、制御装置10は、走行経路Rの勾配角度β1のほか、走行経路Rの勾配入口角度β2、勾配出口角度β3、勾配頂上角度β4、凹部深さD、凹部長さLなどを認識する。このとき、走行経路Rごとに舗装又は非舗装である旨の情報を認識するとしてもよい。また、ぬかるみの場所などの情報を認識するとしてもよい。その後、ステップS4に移行する。
【0045】
ステップS4において、制御装置10は、自己の諸元と走行経路Rの路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断する。具体的に説明すると、制御装置10は、登坂能力α1と勾配角度β1のほか、アプローチアングルα2と勾配入口角度β2、デパーチャアングルα3と勾配出口角度β3、ランプブレークオーバーアングルα4と勾配頂上角度β4、サスペンションストロークSと凹部深さDを比較して走行可能又は走行不能を判断する。このとき、車輪4と路面の摩擦係数を考慮するとしてもよい。つまり、走行経路Rが舗装されているか否かやぬかるみであるか否かによって摩擦係数を選択し、走行可能又は走行不能を判断するとしてもよい。この場合、選択し得る摩擦係数は、制御装置10に記憶されており、オペレータが任意に選択できるものとする。その後、走行可能と判断した場合は、ステップS5に移行し、走行不能と判断した場合は、ステップS6に移行する。
【0046】
ステップS5において、制御装置10は、表示装置92に表示された三次元マップM上に走行可能と判断された走行経路Rを表示する。具体的に説明すると、制御装置10は、走行可能と判断された走行経路Rを青色に塗り分けるなどして表示する(図11におけるRb参照)。但し、このときの表示方法について限定するものではない。なお、走行可能と判断された走行経路Rについては、他の作業車両と情報を共有するとしてもよい。
【0047】
ステップS6において、制御装置10は、表示装置92に表示された三次元マップM上に走行不能と判断された走行経路Rを表示する。具体的に説明すると、制御装置10は、走行不能と判断された走行経路Rを赤色に塗り分けるなどして表示する(図11におけるRr参照)。但し、このときの表示方法について限定するものではない。また、制御装置10は、走行不能と判断された走行経路Rを走行しようとした場合に警報装置93を作動させる。このようにすることで、走行経路Rを誤ってスタックするのを確実に予防できる。なお、走行不能と判断された走行経路Rについても、他の作業車両と情報を共有するとしてもよい。
【0048】
以上のように、本願の発明にかかるクレーン1は、自己の諸元を把握し、作業現場の地形を表す三次元情報(三次元マップM)を取得し、三次元情報(三次元マップM)に基づいて走行経路Rの路面状況を認識する。そして、自己の諸元と走行経路Rの路面状況を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの路面状況に起因してスタックするのを予防できる。具体的には、急坂を登ることができずにスタックしたりクレーン1の底部構造に路面が引っ掛かってスタックしたりするのを予防できる。
【0049】
詳細に説明すると、クレーン1は、自己の諸元である登坂能力α1と走行経路Rの路面状況である勾配角度β1を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの勾配角度β1が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、車輪4(駆動輪41・43・44・45)の駆動力(駆動トルク)が不足してスタックするのを予防できる。
【0050】
また、クレーン1は、自己の諸元であるアプローチアングルα2と走行経路Rの路面状況である勾配入口角度β2を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの勾配入口角度β2が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体2の前部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0051】
更に、クレーン1は、自己の諸元であるデパーチャアングルα3と走行経路Rの路面状況である勾配出口角度β3を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの勾配出口角度β3が大きいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体2の後部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0052】
更に、クレーン1は、自己の諸元であるランプブレークオーバーアングルα4と走行経路Rの路面状況である勾配頂上角度β4を比較して走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの勾配頂上角度β4が小さいのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、走行体2の中央部における底部構造に路面が引っ掛かってスタックするのを予防できる。また、底部構造が故障するのを予防できる。
【0053】
更に、クレーン1は、自己の諸元であるサスペンションストロークSと走行経路Rの路面状況である凹部深さDを比較し、更に凹部長さLに基づいて走行可能又は走行不能を判断する。かかるクレーン1によれば、走行経路Rの凹部深さDが深く、かつ凹部長さLが所定の範囲となるのに起因してスタックするのを予防できる。具体的には、車輪4(駆動輪41・43・44・45)の駆動力(駆動トルク)が路面に伝わらずにスタックするのを予防できる。
【0054】
加えて、クレーン1は、表示装置92に三次元情報(三次元マップM)である画像を表示するとともに、当該画像上に走行可能と判断された走行経路R及び走行不能と判断された走行経路Rを表示する。かかるクレーンによれば、走行可能と判断された走行経路R及び走行不能と判断された走行経路Rをオペレータが容易にかつ素早く把握できる。これにより、作業効率の向上が実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 クレーン
2 走行体
3 旋回体
4 車輪
41 駆動輪
42 従動輪
43 駆動輪
44 駆動輪
45 駆動輪
46 従動輪
α1 登坂能力
α2 アプローチアングル
α3 デパーチャアングル
α4 ランプブレークオーバーアングル
S サスペンションストローク
β1 勾配角度
β2 勾配入口角度
β3 勾配出口角度
β4 勾配頂上角度
D 凹部深さ
L 凹部長さ
R 走行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11