(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1スリットの先端は、前記第1挿通孔の前記円形状の中心と前記第2挿通孔の前記円形状の中心とを繋ぐ中心線よりも前記第2端部側に位置している、請求項1に記載の熱交換器。
前記第1スリットの先端部における前記第1の方向に沿う幅は、前記第2スリットの先端部における前記第1の方向に沿う幅と同一の寸法となるように設定されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2001−165588号公報においては、フィンの表面に平行な方向に向けてスリット部分から伝熱管が挿入される。このため、伝熱管がフィンを押し広げながらスリット部分を通過することになり、フィンが反りやすい。
【0007】
また実公平6−41085号公報においては、フィンの一方側の辺にのみ、フィンの主面から立ち上がった整流板が配置されている。この整流板により、熱気流が水管の表面に沿った方向に曲げられるため熱交換効率が向上する。しかし、整流板が設けられていることにより、伝熱管をフィンに挿入した場合、フィンの上記一方側の辺は整流板により拘束されて他方側の辺よりも伸びにくいため、フィンが反りやすい。
【0008】
フィンに反りが生じた場合、フィンに挿入された複数の伝熱管同士のピッチなどが設計値と異なることとなり、伝熱管を他の部材と組み立てることが困難となる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い熱交換効率を確保するとともに、伝熱管をフィンに挿入する際のフィンの反りを抑制できる熱交換器、温水装置および熱交換器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱交換器は、伝熱管と、フィンとを備えている。フィンは、伝熱管が挿通される円形状の複数の挿通孔を有し、かつ材質にステンレスを含んでいる。複数の挿通孔は、単列をなすように第1の方向に沿って並んで配置されている。複数の挿通孔は、互いに隣り合う第1挿通孔と第2挿通孔とを有している。フィンは、第1の方向に交差する第2の方向に互いに対向する第1端部および第2端部を有している。フィンは、第1端部から第2端部に向かって延びる第1スリットと、第2端部から第1端部に向かって延びる第2スリットとを有している。第2スリットは、切り起こし壁部が配置された第1縁部と、切り起こし壁部が配置されない第2縁部とを有している。
【0011】
なお上記の円形状とは、真円形状および楕円形状を含む。
本発明の熱交換器によれば、第2スリットが切り起こし壁部を有している。このため、この切り起こし壁部により、伝熱管の表面に沿った方向に加熱用気体の流れを曲げることができる。これにより、熱交換効率が向上する。
【0012】
また第2スリットが切り起こし壁部が配置されない第2縁部を有している。このため、挿通孔に伝熱管が挿入された際に、フィンは切り起こし壁部に拘束されにくくなり、第2端部において延びやすくなる。これにより、フィンは第1端部側と第2端部側とでほぼ均等に延びることが可能となる。つまり第1端部側または第2端部側のいずれかに偏って延びることが抑制され得る。よって、フィンの反りが抑制され、熱交換器の組立が容易となる。
【0013】
以上より、高い熱交換効率を確保しつつ、伝熱管をフィンに挿入する際のフィンの反りを抑制することができる。
【0014】
上記の熱交換器においては、第1スリットの先端は、第1挿通孔の円形状の中心と第2挿通孔の円形状の中心とを繋ぐ中心線よりも第2端部側に位置している。
【0015】
これにより、第1端部を第2端部に対して加熱用気体の上流側に配置した場合には、加熱用気体は伝熱管内の媒体と熱交換しやすくなる。
【0016】
上記の熱交換器においては、第2スリットの先端は、第1挿通孔と第2挿通孔とに挟まれる領域内に位置している。
【0017】
これにより伝熱管がフィンの挿通孔に挿入された場合に第2スリットがフィンの変形を吸収しやすくなる。
【0018】
上記の熱交換器においては、第2スリットの第1縁部は、第2スリットの第2縁部よりも第2端部の近くに位置している。
【0019】
この切り起こし壁部により加熱用気体をより効果的に伝熱管に接触させることができ、熱交換効率を向上することができる。
【0020】
上記の熱交換器においては、第1縁部の正面形状は、第2端部から第1端部に向けて突き出した湾曲形状を有している。
【0021】
これにより第2スリットの先端部の幅を小さく維持しながら切り起こし壁部の立ち上がり高さを大きくすることができる。
【0022】
上記の熱交換器においては、複数の挿通孔の各々の周囲には、バーリング壁部が配置されている。第1の方向に延びて挿通孔の円形状の中心を通る仮想の直線と、円形状の中心を通りその仮想の直線に直交する仮想の垂線とを想定した場合に、バーリング壁部は、仮想の垂線が通過する部分に切欠を有している。
【0023】
これにより伝熱管をフィンの挿通孔に圧入する際に、バーリング壁部が切欠を境界として2つに分かれて広がることにより伝熱管の圧入抵抗を低減することができる。
【0024】
上記の熱交換器においては、フィンは、仮想の垂線が通過する部分に、フィンの端縁から挿通孔に向けて窪んだ凹部を有している。
【0025】
この凹部により、ろう材を挿通孔の真上に塗布することが容易となる。この凹部からろう材が流れ落ちることにより、挿通孔に挿通された伝熱管とフィンとをろう材で接合することが容易となる。
【0026】
上記の熱交換器においては、第1スリットの先端部における第1の方向に沿う幅は、第2スリットの先端部における第1の方向に沿う幅と同一の寸法となるように設定されている。
【0027】
これにより設計が容易になる。
本発明の温水装置は、上記の熱交換器と、その熱交換器により熱交換される加熱用気体を発生させるバーナとを備えている。
【0028】
本発明の温水装置によれば、伝熱管をフィンに挿入する際のフィンの反りを抑制することができる。これにより組立が容易な温水装置を実現することができる。
【0029】
本発明の熱交換器の製造方法は、上記の熱交換器を製造する方法であって、フィンの挿通孔に伝熱管を圧入する工程と、フィンに伝熱管をろう付けする工程とを備えている。
【0030】
本発明の熱交換器の製造方法によれば、伝熱管をフィンに圧入する際のフィンの反りを抑制することができる。これにより組立が容易な熱交換器を実現することができる。
【0031】
上記の熱交換器の製造方法においては、フィンは、複数の挿通孔の各々の周囲にバーリング壁部を有するように、かつ凹部を有するように準備される。第1の方向に延びて挿通孔の円形状の中心を通る仮想の直線と、円形状の中心を通りその仮想の直線に直交する仮想の垂線とを想定した場合に、バーリング壁部は、仮想の垂線が通過する部分に切欠を有するように形成される。凹部は、仮想の垂線が通過する部分に、フィンの端縁から挿通孔に向けて窪むように形成される。ろう付けする工程は、ろう材を凹部からバーリング壁部の切欠を通じて伝熱管とフィンとの間へ流す工程を含む。
【0032】
これにより、凹部により、ろう材を挿通孔の真上に塗布することが容易となる。ろう材が凹部からバーリング壁部の切欠を通じて伝熱管とフィンとの間へ流れ落ちることにより、挿通孔に挿通された伝熱管とフィンとをろう材で接合することが容易となる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明によれば、伝熱管をフィンに挿入する際のフィンの反りを抑制できる熱交換器、温水装置および熱交換器の製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の一実施の形態における温水装置の構成について
図1を用いて説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施の形態の温水装置100は、顕熱回収熱交換器(一次熱交換器)10と、潜熱回収熱交換器(二次熱交換器)20と、燃焼装置(バーナー)30と、チャンバ31と、送風装置32と、ダクト33と、ベンチュリ34と、オリフィス35と、ガスバルブ36と、配管40と、バイパス配管41と、三方弁42と、液液熱交換器43と、温水配管44と、筐体50とを主に有している。筐体50の内部に、上記の部品のうち筐体50を除く全ての部品が配置されている。
【0037】
ガスバルブ36、オリフィス35およびベンチュリ34がこの順で配管に接続されている。この配管には筐体50の外部から燃料ガスが供給可能である。この配管に供給された燃料ガスは、ガスバルブ36とオリフィス35とを通じてベンチュリ34に流れる。
【0038】
ガスバルブ36は燃料ガスの流量を制御するためのものである。ベンチュリ34は、燃料ガスと空気との混合ガスの流れを絞ることによって混合ガスの流速を増加させるものである。ベンチュリ34は、筐体50の外部から空気を取り入れられるように構成されている。ベンチュリ34は、筐体50の外部から取り入れた空気と、配管から供給された燃料ガスとを混合するように構成されている。
【0039】
ベンチュリ34は配管を通じて送風装置32に接続されている。この配管により、ベンチュリ34で混合された混合ガスは送風装置32に送られる。送風装置32は、混合ガスを燃焼装置30へ供給するためのものである。送風装置32は、ファンケースと、ファンケース内に配置された羽根車と、羽根車を回転させるための駆動源(モータなど)とを主に有している。
【0040】
送風装置32はチャンバ31に接続されており、チャンバ31は燃焼装置30に接続されている。送風装置32から供給された混合ガスは、チャンバ31を通じて燃焼装置30に送られる。
【0041】
燃焼装置30は、混合ガスを燃焼することにより加熱用気体としての燃焼ガスを発生するためのものである。燃焼装置30は燃焼ガスを下向きに供給する逆燃式の装置である。燃焼装置30から吹出される混合ガスは、点火プラグ14aによって着火され、燃焼ガスとなる。点火プラグ14aは、後述するように顕熱回収熱交換器10に設けられている。
【0042】
燃焼ガスが顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20を順に通過するように、燃焼装置30、顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20が接続されている。具体的には、燃焼装置30の下方に顕熱回収熱交換器10が取り付けられており、この顕熱回収熱交換器10の下方に潜熱回収熱交換器20が取り付けられている。
【0043】
潜熱回収熱交換器20にはダクト33が接続されており、ダクト33は筐体50の外部へ延びている。これにより、潜熱回収熱交換器20を通過した燃焼ガスは、ダクト33を通じて筐体50の外部へ排出される。
【0044】
顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20の各々は、燃焼装置30から供給された燃焼ガスと湯水との間で熱交換を行うことにより湯水を加熱するためのものである。
【0045】
顕熱回収熱交換器10は、燃焼装置30が発生させた燃焼ガスの顕熱を回収するためのものである。潜熱回収熱交換器20は、燃焼ガスの潜熱を回収するためのものである。この潜熱回収熱交換器20には、たとえばプレート式熱交換器が用いられる。
【0046】
顕熱回収熱交換器10において入水する湯水の温度が低い場合、または燃焼装置30の加熱量が少ない場合などには、顕熱回収熱交換器10内において燃焼ガスの水蒸気が凝縮し、凝縮した水(ドレン)が発生する。また潜熱回収熱交換器20においても、ドレンが発生する。これらのドレンはダクト33の一部を通って、筐体50の外部へ排水される。
【0047】
顕熱回収熱交換器10の伝熱管と潜熱回収熱交換器20の伝熱管とは配管40で接続されている。潜熱回収熱交換器20よりも入水側の配管40の部分と、顕熱回収熱交換器10よりも出湯側の配管40の部分とはバイパス配管41によりバイパスされている。
【0048】
顕熱回収熱交換器10よりも出湯側の配管40の部分とバイパス配管41とは三方弁42で接続されている。三方弁42は、顕熱回収熱交換器10から配管40の出湯口への流路と、顕熱回収熱交換器10からバイパス配管41への流路とを切り替え可能に構成されている。
【0049】
バイパス配管41には液液熱交換器43が接続されている。液液熱交換器43には、温水端末に接続された温水配管44が挿入されている。液液熱交換器43は、顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20を通って温められた温水が液液熱交換器43の内部に流れるように構成されている。この液液熱交換器43の内部を流れる温水が温水配管44の外側を流れることにより、液液熱交換器43の内部を流れる温水と温水配管44の内部を流れる温水との間で熱交換を行うことが可能となる。
【0050】
上記の温水装置100に供給された水は、顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20において燃焼ガスと熱交換をして湯となる。これにより温水装置100によって湯を供給することが可能となる。
【0051】
温水端末から戻ってきた温水は、温水配管44を通って、液液熱交換器43において顕熱回収熱交換器10および潜熱回収熱交換器20で温められた温水との熱交換により温められてから、再び温水端末に供給される。このようにして、温水装置100によって温水端末に温水を供給することが可能となる。
【0052】
次に、上記の温水装置100に用いられる顕熱回収熱交換器10の構成について
図2および
図3を用いて説明する。
【0053】
図2に示されるように、本実施の形態の顕熱回収熱交換器10は、ケース11と、ヘッダ12と、伝熱管(吸熱パイプ:
図3)13a、13bと、フィン1(
図3)とを主に有している。
【0054】
ケース11は、第1側壁11a、第2側壁11b、第3側壁11cおよび第4側壁11dを有している。第1側壁11a〜第4側壁11dは、四角の枠状となるように接続されている。
【0055】
第1側壁11aと第3側壁11cとは互いに対面している。第2側壁11bと第4側壁11dとは互いに対面している。第1側壁11a〜第4側壁11dの各々は、ケース11の内部と外部と仕切る壁面を有している。
【0056】
上記枠形状を有するケース11は上下に開口を有している。これによりケース11の上側の開口を通ってケース11の内部に燃焼ガスが給気可能である。またケース11の下側の開口を通って燃焼ガスがケース11の外部へ排気可能である。
【0057】
第1側壁11aの外面にヘッダ12が設けられている。第1側壁11aの外面に設けられたヘッダ12には、入水側の継手13cおよび出湯側の継手13dが取り付けられている。第3側壁11cの外面にも図示しないヘッダ12が設けられている。第1側壁11aの外面に設けられたヘッダ12と、第3側壁11cの外面に設けられたヘッダ12とは複数の伝熱管13a、13bで接続されている。
【0058】
図3に示されるように、複数の伝熱管13a、13bは、ケース11の内部に位置する伝熱管13aと、ケース11の外部に位置する伝熱管13bとを有している。伝熱管13aの横断面形状はたとえば楕円形状を有している。なお横断面形状とは、伝熱管13aが延びる方向に直交する方向の断面形状を意味する。伝熱管13a、13bの各々は、たとえばステンレスなどの材質よりなっている。
【0059】
また第2側壁11bおよび第4側壁11dの各々には、ケース11の外部から内部に向かって窪んだ凹部11daが設けられている。ケース11の外部に位置する伝熱管13bは凹部11daに嵌っている。
【0060】
このヘッダ12と伝熱管13a、13bとを流通する湯水の流れはたとえば以下のようになる。
【0061】
図2および
図3に示されるように、入水側の継手13cから入水した湯水は、第1側壁11aの外面の最も一方端側に設けられたヘッダ12を通じて、ケース11の内部に位置する伝熱管13aに入る。この伝熱管13a内に入った湯水は、第3側壁11cの外面に設けられた図示しないヘッダ12に達する。第3側壁11cの外面に設けられたヘッダ12に達した湯水は、当該ヘッダ12に接続された別の伝熱管13aを通って第1側壁11aの外面に設けられたヘッダ12に達する。
【0062】
このように湯水は、第1側壁11a側から第3側壁11c側へ向かった後に、第3側壁11c側から第1側壁11a側へ折り返される。その後、湯水は、第3側壁11c側への折り返しと第1側壁11a側への折り返しとが繰り返されるように流れる。
【0063】
図2に示されるように、上記により第1側壁11aの外面の最も他方端側に設けられたヘッダ12に到達した湯水は、第2側壁11bの外面に設けられた伝熱管13bを通って第3側壁11cの外面に設けられたヘッダ12に達する。
【0064】
第3側壁11cの外面に設けられたヘッダ12に達した湯水は、
図3に示される第4側壁11dの外面に設けられた伝熱管13bを通って第1側壁11aの外面に設けられたヘッダ12に達し、最後に、湯側の継手13dから出湯する。
【0065】
図3に示されるように、ケース11の内部に位置する伝熱管13aの外周面には、複数のフィン1が接続されている。なお
図3においては、図の簡略化のため、複数のフィン1のうち一部のフィン1のみが示されている。
【0066】
図4に示されるように、フィン1は、たとえばステンレス製の1枚の平板を加工することにより形成されている。フィン1は、平板部1aと、複数の挿通孔1bと、バーリング壁部1cと、第1スリット1eaと、第2スリット1ebと、切り起こし壁部1gと、凹部1hと、凸部1iとを主に有している。
【0067】
複数の挿通孔1bは、単列をなすように第1の方向(矢印X方向)に沿って並んで配置されている。複数の挿通孔1bの各々は、平板部1aの表面から裏面にかけて貫通している。複数の挿通孔1bの各々は、正面視において楕円形状を有している。正面視とは、平板部1aの表面に対して直交する方向から見た視点を意味する。
【0068】
フィン1は、第1の方向Xに交差する第2の方向(矢印Y方向)に互いに対向する第1端部E1および第2端部E2を有している。なお第2の方向Yは、第1の方向Xに対してたとえば直交している。
【0069】
複数の挿通孔1bの各々の周囲には、バーリング壁部1cが配置されている。このバーリング壁部1cは、平板部1aを折り曲げることにより平板部1aに対して立ち上げられた部分である。バーリング壁部1cは切欠1daを有している。
【0070】
図5に示されるように、第1の方向Xに延びて挿通孔1bの円形状の中心Cを通る仮想の直線(中心線S)と、円形状の中心Cを通り仮想の直線Sに直交する垂線(一点鎖線L)とを想定した場合、バーリング壁部1cの切欠1daは、その垂線Lが通過する部分に配置されている。挿通孔1bが楕円形状である場合、バーリング壁部1cの切欠1daは、挿通孔1bの楕円形状の長軸(一点鎖線L)が通過する部分に配置されている。具体的には、切欠1daは、長軸Lが通過するバーリング壁部1cの第1端部E1側の部分と第2端部E2側の部分との各々に配置されている。これにより、バーリング壁部1cは、長軸Lを境界にして2つに分離されている。
【0071】
第1スリット1eaは、フィン1の第1端部E1から第2端部E2に向かって延びている。第2スリット1ebは、フィン1の第2端部E2から第1端部E1に向かって延びている。第1スリット1eaおよび第2スリット1ebの双方は、切り起こし壁部1gが配置されない縁部を有している。
【0072】
上記における切り起こし壁部1gが配置されない縁部とは、その縁部において平板部1aが折り曲げられていないことを意味する。よって、切り起こし壁部1gが配置されない縁部においては、平板部1aが平坦なまま終端している。
【0073】
第2スリット1ebは、第2端部E2側において正面視で湾曲した部分と、第1端部E1側において正面視で直線状に延びる部分とを有している。第2スリット1ebの湾曲した部分の縁部には切り起こし壁部1gが配置されている。一方、第2スリット1ebの直線状に延びる部分の縁部には切り起こし壁部1gが配置されていない。つまり、第2スリット1ebは、切り起こし壁部1gが配置された第1縁部(湾曲した部分)と、切り起こし壁部1gが配置されない第2縁部(直線状に延びる部分)とを有している。
【0074】
切り起こし壁部1gは、平板部1aを折り曲げることにより平板部1aに対して立ち上げられた部分である。切り起こし壁部1gは、上記のバーリング壁部1cとたとえば同じ方向に折り曲げられている。切り起こし壁部1gは、フィン1の第1の方向Xの端部に位置する部分1geを有している。
【0075】
第2スリット1ebの切り起こし壁部1gが配置された第1縁部の正面形状(上記正面視における形状)は第2端部E2から第1端部E1に向けて突き出した湾曲形状を有している。
【0076】
第1スリット1eaがフィン1の第1端部E1から第2端部E2に向かって延びる長さは、第2スリット1ebがフィン1の第2端部E2から第1端部E1に向かって延びる長さよりも長い。第1スリット1eaの先端は、2つの挿通孔1bの楕円形状の中心C同士を繋ぐ中心線(一点鎖線S)よりも第2端部E2側に位置している。この中心線Sは、第1の方向に沿って延びている。一方、第2スリット1ebの先端は、中心線Sよりも第2端部E2側に位置している。つまり第2スリット1ebは、第2端部E2側から中心線Sを超えて第1端部E1側まで延びていない。
【0077】
第1スリット1eaは、フィン1の第1端部E1から中心線Sまでは、第1端部E1から第2端部E2へ近づくほど幅W1が狭くなっている。また第1スリット1eaは、中心線Sから第2端部E2側の先端までは同じ幅W1を維持している。第1スリット1eaの全体には、切り起こし壁部1gは配置されていない。
【0078】
第1スリット1eaの先端および第2スリット1ebの先端の各々は、2つの挿通孔1bによって挟まれる領域(
図5中のハッチング領域R)内に位置している。第1スリット1eaの先端部における第1の方向Xに沿う幅W1は、第2スリット1ebの先端部における第1の方向Xに沿う幅W2と同一の寸法となるように設定されている。
【0079】
第1スリット1eaの先端と第2スリット1ebの先端とに挟まれる平板部1aの部分は、2つの隣り合う挿通孔1bの周囲の平板部1aの部分を繋ぐ接続部1fとなる。
【0080】
第1の方向Xに延びて挿通孔1bの円形状の中心Cを通る仮想の直線(中心線S)と、円形状の中心Cを通り仮想の直線Sに直交する垂線(一点鎖線L)とを想定した場合、凹部1hは、フィン1の第1端部E1であって、上記垂線(一点鎖線L)が通過する部分に配置されている。挿通孔1bが楕円形状である場合、挿通孔1bの楕円形状の長軸Lが通過する部分に配置されている。凹部1hは、フィン1の第1端部E1の端縁から挿通孔1bに向けて窪んでいる。この凹部1hは、正面視においてたとえば第1端部E1側から挿通孔1b側に向けて突き出した湾曲形状を有している。
【0081】
凸部1iは、フィン1の第2端部E2であって、上記垂線(一点鎖線L)が通過する部分に配置されている。挿通孔1bが楕円形状である場合、挿通孔1bの楕円形状の長軸Lが通過する部分に配置されている。この凸部1iの先端は、正面視においてたとえば第2端部E2側から挿通孔1bとは反対側に向けて突き出した湾曲形状を有している。凸部1iの先端における湾曲形状は、凹部1hの湾曲形状と同一の形状である。
【0082】
第2端部E2は第1端部E1よりも燃焼ガスの流れ方向下流側に位置している。凸部1iが燃焼ガスの流れ方向下流側の第2端部E2に形成されているため、凸部1iが燃焼ガスの流れ方向上流側の第1端部E1に形成される場合に比べ、フィン1における熱交換性能および耐久性能が良好となる。
【0083】
次に、本実施の形態の顕熱回収熱交換器10の製造方法について説明する。
まずフィン1が形成される。フィン1は、
図6に示されるように、複数のフィン1となる部分が繋がった状態の1枚のステンレス製の平板を切り離すことにより形成される。この切り離しにより、
図4および
図5に示すフィン1が形成される。また上記の切り離しにより、フィン1の凹部1hと凸部1iとが形成される。
【0084】
次に、
図3に示されるように、フィン1の挿通孔1bに伝熱管13aが圧入される。これにより複数のフィン1に複数の伝熱管13aが接続される。この状態で、フィン1の凹部1hにろう材のペーストが塗布される。このろう材のペーストの塗布は、伝熱管13aの延びる方向(矢印Z方向)に沿って複数のフィン1の凹部1hに対して連続的に行われる。
【0085】
図5に示されるように、凹部1hに塗布されたろう材のペーストは、凹部1hからバーリング壁部1cの切欠1daを通じてフィン1と伝熱管13aとの接続部に達する。これによりフィン1と伝熱管13aとがろう材によりろう付けされる。
【0086】
図3に示されるように、フィン1と伝熱管13aとがろう付けされた後に、その伝熱管13aが、ケース11を構成する第1側壁11aおよび第3側壁11cに接続される。この接続の際には、伝熱管13bを取り付けた第2側壁11bおよび第4側壁11dが、第1側壁11aおよび第3側壁11cの間に挟まれる。このように各部が接続されることにより、本実施の形態の顕熱回収熱交換器10が製造される。
【0087】
次に、本実施の形態の作用効果について、
図7および
図8に示す比較例と対比して説明する。
【0088】
図7に示される比較例のフィン1の構成は、
図4、
図5に示す実施の形態の構成と比較して、第2端部E2には切り起こし壁部1gが設けられているがスリットが設けられていない点において主に異なっている。なお、比較例のフィン1の構成のうち
図4、
図5に示す実施の形態の構成と対応する部分については、実施の形態の符号と同一の符号を付している。
【0089】
比較例のフィン1においては、第2端部E2には切り起こし壁部1gが設けられており、スリットが設けられていない。このため、比較例のフィン1の挿通孔1bに伝熱管が圧入された場合、フィン1の第1端部E1側は矢印AR1方向に拡がりやすいが、第2端部E2側は切り起こし壁部1gにより拘束されて矢印AR2方向に拡がりにくい。この伝熱管の圧入によって、フィン1の第1端部E1が第2端部E2よりも大きく拡がることにより、
図8に示すようにフィン1に反りが生じる。
【0090】
フィン1に反りが生じた場合、フィン1に接続された伝熱管のピッチなどの寸法が設計値と異なることになる。この場合、
図3に示されるように、伝熱管がケース11の第1側壁11aおよび第3側壁11cに接続される際に、組立誤差が生じて、組立が困難となる。
【0091】
これに対して本実施の形態においては、
図4および
図5に示されるように、切り起こし壁部1gが配置された第1縁部を第2スリット1ebが有している。このため、この切り起こし壁部1gにより、伝熱管13aの表面に沿った方向に燃焼ガス(加熱用気体)の流れを曲げることができる。これにより、熱交換効率が向上する。
【0092】
また第2スリット1ebが切り起こし壁部1gが配置されない第2縁部を有している。このため、挿通孔1bに伝熱管13aが挿入された際に、フィン1は切り起こし壁部1gに拘束されにくくなり、第2端部E2において延びやすくなる。これにより、フィン1が第1端部E1側と第2端部E2側とでほぼ均等に延びることが可能となる。つまり第1端部E1側または第2端部E2側のいずれかに偏って延びることが抑制され得る。よって、フィン1の反りが抑制され、顕熱回収熱交換器10の組立が容易となる。
【0093】
また
図5に示されるように、第1スリット1eaの先端は、2つの挿通孔1bの楕円形状の中心C同士を繋ぐ中心線Sよりも第2端部E2側に位置している。これにより、第1端部E1を第2端部E2に対して燃焼ガスの上流側に配置した場合には、燃焼ガスは伝熱管13a内の湯水と熱交換しやすくなる。
【0094】
また、このように第1スリット1eaの先端が中心線Sよりも第2端部E2側に位置している場合、挿通孔1bに伝熱管13aが挿入される際に特に第1端部E1側が延びやすくなり、フィン1の反りが生じやすくなる。しかし本実施の形態においては、第2端部E2から延びる第2スリット1ebが切り起こし壁部1gを有しない第2縁部を有している。このため、第1スリット1eaが上記のようにフィン1の反りを生じさせやすい形状を有していても、そのフィン1の反りを第2スリット1ebにより抑制することが可能となる。つまり第2スリット1ebが切り起こし壁部1gのない第2縁部を有する構成は、第1スリット1eaが第2スリット1ebよりも長く延びる場合において効果的にフィン1の反りを抑制できる。
【0095】
また挿通孔1bが楕円形状を有し、第1スリット1eaがその楕円形状の長軸Lの一方側から他方側に向かって延びている。これにより第1スリット1eaの長さは、挿通孔1bが真円形状の場合よりも長くなる。このように第1スリット1eaの長さが長くなることにより、挿通孔1bに伝熱管13aが挿入される際に特に第1端部E1側が延びやすくなり、フィン1の反りが生じやすくなる。しかし本実施の形態においては、第2端部E2から延びる第2スリット1ebが切り起こし壁部1gを有しない第2縁部を有している。このため、第1スリット1eaおよび挿通孔1bが上記のようにフィン1の反りを生じさせやすい形状を有していても、そのフィン1の反りを第2スリット1ebにより抑制することが可能となる。つまり第2スリット1ebが切り起こし壁部1gのない第2縁部を有する構成は、挿通孔1bが楕円形状で第1スリット1eaが第2スリット1ebよりも長く延びる場合において効果的にフィン1の反りを抑制できる。
【0096】
また
図5に示されるように、第2スリット1ebの先端は、2つの挿通孔1bに挟まれる領域R内に位置している。これにより伝熱管13aがフィン1の挿通孔1bに圧入された場合に第2スリット1ebがフィン1の変形を吸収しやすくなる。
【0097】
また
図5に示されるように、第2スリット1ebの第2端部E2側の第1縁部には切り起こし壁部1gが配置されている。この切り起こし壁部1gにより燃焼ガスをより効果的に伝熱管13aに接触させることができ、熱交換効率を向上することができる。
【0098】
また
図5に示されるように、第2スリット1ebの切り起こし壁部1gが配置された第1縁部の正面形状は第2端部E2から第1端部E1に向けて突き出した湾曲形状を有している。これにより第2スリット1ebの先端部の幅
W2を小さく維持しながら切り起こし壁部1gの立ち上がり高さを大きくすることができる。以下、そのことを
図9に示す比較例と
図10に示す比較例と対比しながら説明する。
【0099】
図9に示されるように、仮にフィン1の平板部1aの領域1gbを打ち抜いて切り起こし壁部1gaを形成する場合、打ち抜きのための金型の寸法分(ハッチング領域1gc分)だけ捨て材が発生する、また、この場合、金型の寸法分(ハッチング領域1gc分)だけ切り起こし壁部1gaの立ち上がり高さが小さくなる。
【0100】
また
図10に示されるように、仮に切り起こし壁部1gが配置された縁部の正面形状が直線形状である場合、切り起こし壁部1gの立ち上がり高さH2を高くすることができない。なぜなら、第2スリット1ebを挟んで両側から延びる切り起こし壁部1gとなる部分(破線で示す部分)同士が互いに干渉しやすいからである。
【0101】
仮に
図10の構成において切り起こし壁部1gとなる部分(破線で示す部分)同士が互いに干渉しにくくするためには、第2スリット1ebの幅W2を大きくする必要がある。しかし、第2スリット1ebの幅W2を大きくした場合、フィン1の寸法が大きくなり、顕熱回収熱交換器10の寸法が大きくなる。
【0102】
これに対して本実施の形態においては、
図11に示されるように切り起こし壁部1gが配置された第2スリット1ebの第1縁部の正面形状が湾曲形状である。これにより第2スリット1ebを挟んで両側から延びる切り起こし壁部1gとなる部分(破線で示す部分)同士が、
図10に示す場合よりも互いに干渉しにくくなる。これにより本実施の形態においては、第2スリット1ebの先端部の幅W2を小さく維持しながら、切り起こし壁部1gの立ち上がり高さH1を大きくすることができる。また
図9に示すような加工と異なり、打ち抜きによる捨て材も生じない。
【0103】
また
図5に示されるように、複数の挿通孔1bの各々の周囲には、バーリング壁部1cが配置されている。バーリング壁部1cは、挿通孔1bの楕円形状の長軸Lが通過する部分に切欠1daを有している。これにより伝熱管13aをフィン1の挿通孔1bに圧入する際に、バーリング壁部1cが切欠1daを境界として拡がることができ、伝熱管13aの圧入抵抗を低減することができる。
【0104】
また
図5に示されるように、フィン1は、挿通孔1bの楕円形状の長軸Lが通過する部分に、フィン1の端縁から挿通孔1bに向けて窪んだ凹部1hを有している。この凹部1hにより、ろう材を挿通孔1bの真上に塗布することが容易となる。また、凹部1hからろう材が流れ落ちることにより、挿通孔1bに挿通された伝熱管13aとフィン1とをろう材で接合することが容易となる。
【0105】
また
図5に示されるように、第1スリット1eaの先端部における第1の方向Xに沿う幅W1は、第2スリット1ebの先端部における第1の方向Xに沿う幅W2と同一寸法となるように設定されている。これにより設計が容易になる。
【0106】
また本実施の形態の熱交換器の製造方法によれば、伝熱管13aをフィン1に圧入する際のフィン1の反りを抑制することができる。
【0107】
また
図5に示されるように、本実施の形態の熱交換器の製造方法によれば、凹部1hにより、ろう材を挿通孔1bの真上に塗布することが容易となる。また、ろう材が凹部1hからバーリング壁部1cの切欠1daを通じて伝熱管13aとフィン1との間へ流れ落ちることにより、挿通孔1bに挿通された伝熱管13aとフィン1とをろう材で接合することが容易となる。
【0108】
なお上記においては、伝熱管13aの横断面形状および挿通孔1b正面視における形状が楕円形状である場合について説明したが、伝熱管13aの横断面形状および挿通孔1b正面視における形状は楕円形状以外の円形状であってもよく、たとえば真円形状であってもよい。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。