(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フラッフパルプに高吸水性樹脂が混合された吸収体本体よりも肌面側に肌面側シートが設けられ、層状に形成された吸収体を有し、着用者の股下に配置される前記吸収体の股下部に長手方向に延設された幅方向左右一対の溝状部を有する吸収性物品を製造する方法であって、
複数の層を積層して前記吸収体を層状に形成する層形成ステップと、
層状に形成された前記吸収体にプレス加工によって前記溝状部を形成する溝形成ステップと、を備え、
前記層形成ステップの前に、前記溝状部の形成領域の何れかの層間を形成する接合面に、ホットメルトを供給するホットメルト供給ステップを備え、
前記肌面側シートは前記吸収体本体を被包するラップシートを含み、
前記ホットメルト供給ステップでは、前記吸収体本体の肌面側と前記ラップシートとの接合面にホットメルトを供給し、
前記溝形成ステップにおける前記プレス加工の直前に、前記吸収体の前記溝状部の形成される領域に前記ラップシートの外側から水を供給する
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
前記ホットメルト供給ステップでは、前記溝状部の形成領域を含み且つ前記溝状部の形成領域よりも広域に前記ホットメルトを供給し、前記溝状部の形成領域には他の領域よりも多量の前記ホットメルトを供給する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載された吸収性物品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、実施形態としての吸収性物品について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0025】
本実施形態の吸収性物品は、着用者に装着され、尿や経血といった液体を吸収する衛生用品である。この吸収性物品としては、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」),尿パッド,生理用ナプキン,パンティーライナーなどが挙げられる。以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。
【0026】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0027】
[I.一実施形態]
[1.紙おむつ]
[1−1.基本的な構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。この紙おむつ1は、幅方向の中心線Cを基準として対称に形成されている。
紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A,股下部1B及び後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0028】
この紙おむつ1には、後身頃1Cで幅方向に突出する止着テープ2が設けられ、前身頃1Aの最も非肌面側にフロントパッチ3(
図1では破線で示す)が設けられている。ここでは、通気性を有するフロントパッチ3が用いられている。止着テープ2がフロントパッチ3に止め付けられることで、紙おむつ1が着用者に装着される。
また、股下部1Bの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部1Bが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。
【0029】
つぎに、
図1〜
図3を参照して、紙おむつ1を構成するシート類10〜14について述べる。
紙おむつ1には、前身頃1A,股下部1B及び後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体12(
図1では太破線で示す)が設けられている。
図1及び
図2では、前身頃1A及び後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい吸収体12を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体12を用いてもよい。
【0030】
吸収体12は、着用者から排泄される液体を吸収して保持する部材である。この吸収体12については、マット状であるため、以下の説明では「マット12」と呼ぶ。
このマット12には、例えば、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合される。コア(吸収体本体)120等をラップシート(コアラップとも言う)で積層状態に挟んだものが好ましく、コア120等をラップシートで被包(ラップ)したものがさらに好ましい。
【0031】
ラップシートは、ティッシュペーパのような薄葉紙、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を適宜用いることができる。ラップシートは、下ラップシート(下ティッシュ)121と上ラップシート(上ティッシュ)122とからなり、下ラップシート121の両端が上ラップシート122の各端部まで回り込んで重合されており、コア120の全周をラップしている。上ラップシート122は、肌面側に配置されるので肌面側シートの一つである。
【0032】
また、マット12は、フラッフパルプにSAPが混合された層状のコア120の肌面側に、第1のSAP層(第1の高吸水性樹脂層)123aと、フラッフパルプ層124と,第2のSAP層(第2の高吸水性樹脂層)123bとが、この順で積層され、これらがラップシート121,122でラップされて構成される。ただし、第1のSAP層123aはコア120の一部の領域に部分的に設けられ、第2のSAP層123bはコア120のさらに一部の領域に部分的に設けられているので、層状のコア120の肌面側には、第1のSAP層123aとフラッフパルプ層124と第2のSAP層123bとがこの順で配置された領域と、第1のSAP層123aとフラッフパルプ層124とがこの順で配置された領域と、フラッフパルプ層124のみが配置された領域とがある。また、各エンボス部20には、溝状部の形状を保持する形状保持部200が備えられている。エンボス部20及び形状保持部200の詳細は後述する。
【0033】
このように構成されるマット12に対して肌面側及び非肌面側には、以下に述べる種々のシートが更に積層されている。
マット12の肌面側には、肌面側シートの一つであるトップシート11が積層されている。
トップシート11は、紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このトップシート11は、着用者から排泄された液体をマット12に吸収させるために、液体を透過させる性質(液透過性)をもつ。そして、トップシート11は、マット12の肌面側を被覆する。
【0034】
さらに、トップシート11及びマット12に対して幅方向側方のそれぞれには、サイドシート10が設けられている。
サイドシート10は、トップシート11と同様に紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このサイドシート10は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させない性質(液不透過性)をもつ。
【0035】
図1及び
図2に示すように、カバーシート14は、紙おむつ1の股下部1B及び後身頃1Cにおいては最も非肌面側に配置される。このカバーシート14は、バックシート13を補強すると共に触感(例えば手触り)を向上させるために設けられ、バックシート13を非肌面側から被覆する。
【0036】
バックシート13は、マット12からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもち、マット12を非肌面側から被覆する。バックシート13には、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートが用いられる。
ここでは、カバーシート14は単層構造あるがで、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシート及びアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0037】
カバーシート14の非肌面側には、フロントパッチ3が貼着されている。
このフロントパッチ3は、止着テープ2と共にファスニング機構を構成するものであり、止着テープ2は、後身頃1Cの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。
図1及び
図2では、後身頃1Cの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ2を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ2が設けられていればよい。これらの止着テープ2は、後身頃1Cの両縁部のそれぞれから幅方向外側へ延設される。
【0038】
本実施形態では、止着テープ2とフロントパッチ3とを固定するファスニング機構として、フック材(雄部材)とループ材(雌部材)との機械的結合により固定する面状ファスナーが用いられる。
面状ファスナーは、表面に多数の突起(例えば鉤状やきのこ状など)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ2及びフロントパッチ3のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材及びループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。
【0039】
[1−2.詳細な構成]
つぎに、
図1〜
図3を参照して紙おむつ1の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部1Bを所定形状に折り曲げて保持するための構造(以下「折曲保持構造」という)を述べる。なお、股下部1Bの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部1Bを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ1に設けられている。
この折曲保持構造として、股下部1Bの形状を所定形状に折り曲げるための溝状部として一次元状のエンボス部(以下、単にエンボス部と言う)20が設けられ、所定形状に折り曲げられた股下部1Bの形状を保持するためのサポートギャザー31が設けられている。
【0040】
〈エンボス部〉
エンボス部20は、股下部1Bにおいて長手方向に延びて凹設され、本実施形態では一対(二本)設けられている。なお、前身頃1Aや後身頃1Cにはエンボス部20が設けられていない。
また、本実施形態では、マット12の肌面側にエンボス部20が設けられている。すなわち、紙おむつ1の肌面側にエンボス部20が配置される。なお、エンボス部20は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
【0041】
このエンボス部20は、マット12を部分的にプレス(圧搾)することで凹設(エンボス加工)することができ、本実施形態では、エンボス部20は、マット12の圧搾により形成されている。このようにエンボス部20を圧搾形成すると、マット12のエンボス部20が形成される箇所は圧搾によって圧密化される。
図1及び
図2では、幅方向の中心線Cを基準として対称に配置され、互いに平行であって二本で一対をなす直線状のエンボス部20を例示する。ただし、エンボス部20は、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよいし、弧状や波型といった他の形状であってもよい。さらに、エンボス部20は、少なくとも一対(二本)設けられていればよく、三本以上のエンボス部20が設けられてもよい。
【0042】
〈形状保持部〉
形状保持部200は、このようなエンボス部20が形成された箇所において、エンボス部20の形状を保持するものである。特に、形状保持部200は、マット12がエンボス部20に沿って折り曲げられた場合にも、エンボス部20の形状を保持するもので、上記の折曲保持構造と協働して、エンボス部20に沿って折り曲げられた形状を保持するためにも機能する。
【0043】
本実施形態では、形状保持部200は、フラッフパルプ層124の各エンボス部20が形成される箇所に対応して形成されたスリット124Sと、コア120内に含まれた高密度化されたSAP120Sと、コア120の層とフラッフパルプ層124との間に介装された第1のSAP層123aと、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との間に介装された第2のSAP層123bと、を有している。
【0044】
本実施形態では、圧搾によってエンボス部20を形成しているので、このエンボス部20の加工に伴うコア120の部分的な圧密化によってSAPの密度が高まって、高密度化されたSAP120Sが形成される。ただし、フラッフパルプに対してエンボス部20が形成される箇所だけ部分的に高密度でSAPを供給してコア120を製造することによっても、高密度化されたSAP120Sを形成することができる。
【0045】
また、フラッフパルプにSAPが含まれていると、コア120の圧搾時に、SAPが周囲のフラッフパルプを巻き込むようにして変形するため、フラッフパルプとSAPとが互いに絡み合ってアンカー効果を発揮する。フラッフパルプには、フラッフパルプが圧縮されると復元しようとする復元力が発生するが、SAPによるアンカー効果が発揮されると、フラッフパルプの復元力を抑制する。このアンカー効果は、フラッフパルプ内でのSAPの密度が高まってSAPとフラッフパルプとの絡み合いが強まるほど大きく発揮される。したがって、エンボス部20に高密度化されたSAP120Sが含まれていると、アンカー効果によってエンボス部20の溝形状が保持され易くなる。
【0046】
エンボス部20に沿ってマット12が折り曲げられると、この折り曲げに伴ってエンボス部20に沿って圧縮されたフラッフパルプ層124のフラッフパルプが復元しようとする復元力が発生しマット12を折り曲げ状態から平らな状態に復元させようとする。この場合には、折り曲げに伴ってSAP120Sが更に高密度化されてアンカー効果が高まりエンボスが保持されるので、これによってマット12の折り曲げられた形状が保持され易くなる。
【0047】
また、フラッフパルプ層124には、エンボス部20が形成される箇所に対応してスリット124Sが形成されているため、エンボス部20を圧搾によって形成した場合にも、フラッフパルプ層124のフラッフパルプが復元しようとする復元力が発生し難くなる。したがって、スリット124Sによってエンボス部20の溝形状が保持され易くなる。
また、スリット124Sが形成されていると、エンボス部20に沿ってマット12が折り曲げられた場合にも、フラッフパルプが復元しようとする復元力が発生し難くなり、スリット124Sによってマット12の折り曲げられた形状が保持され易くなる。
【0048】
また、第1のSAP層123aや第2のSAP層123bによっても、エンボス部20の溝形状が保持され易くなり、マット12の折り曲げられた形状が保持され易くなる。
つまり、マット12において、フラッフパルプ層124の非肌面側には第1のSAP層123aが隣接し、フラッフパルプ層124の肌面側には第2のSAP層123bが隣接する。エンボス部20を圧搾によって加工する場合には、圧搾に伴って各エンボス部20において、第1のSAP層123a内のSAPの一部や第2のSAP層123b内のSAPの一部がフラッフパルプ層124内に入り込んでフラッフパルプと混合される。この結果、フラッフパルプ層124内でSAPによるアンカー効果が発揮され易くなり、フラッフパルプの復元力を抑制する。したがって、第1のSAP層123a又は第2のSAP層123bのSAPによるアンカー効果によってエンボス部20の溝形状が保持され易くなる。
【0049】
また、エンボス部20に沿ってマット12が折り曲げられると、この折り曲げに伴ってエンボス部20に沿って圧縮されたフラッフパルプ層124のフラッフパルプの復元力がマット12を折り曲げ状態から平らな状態に復元させようとするが、マット12の折り曲げに伴って、各エンボス部20において、第1のSAP層123a内のSAPの一部や第2のSAP層123b内のSAPの一部がフラッフパルプ層124内に入り込んでフラッフパルプと混合される。この結果、フラッフパルプ層124内でSAPによるアンカー効果が発揮され易くなり、フラッフパルプの復元力を抑制する。したがって、第1のSAP層123a又は第2のSAP層123bのSAPによるアンカー効果によってマット12の折り曲げられた形状が保持され易くなる。
【0050】
なお、第1のSAP層123aは、ここでは、幅方向においては、各エンボス部20を含み、各エンボス部20,20の幅方向外側の一定範囲の領域と両エンボス部20,20の相互間にわたって配設され、長手方向には、各エンボス部20,20を含み、各エンボス部20、20の長手方向外側の一定範囲の領域間に配設される。
【0051】
第2のSAP層123bは、ここでは、幅方向においても長手方向においても、各エンボス部20の形成領域に部分的に配設される。エンボス部20の形成領域とは、マット12溝加工によって薄肉化されてその肌面側が他の部分よりも凹んだ領域のうちの一部であって、凹みの最も薄肉化された頂点部分を中心としこの頂点部分から所定範囲内の領域である。
図7に示すように、本実施形態では、各エンボス部20の形成領域に対応して第2のSAP層123bが配設される。特に、本実施形態では、第2のSAP層123bの一部がフラッフパルプ層124のスリット124S内の空間に進入した形で、エンボス部20の溝形状が形成されている。
【0052】
したがって、マット12の全領域のうち、第1のSAP層123a及び第2のSAP層123bが配置されたエンボス部20の形成領域においては、コア120の肌面側には、第1のSAP層123a,フラッフパルプ層124,第2のSAP層123b,上ラップシート122がこの順に積層される。マット12の全領域のうち、第1のSAP層123aが配置されるが第2のSAP層123bが配置されない領域においては、コア120の肌面側には、第1のSAP層123a,フラッフパルプ層124,上ラップシート122がこの順に積層される。マット12の全領域のうち、SAP層123a,123bが何れも配置されない領域においては、コア120の肌面側には、フラッフパルプ層124,上ラップシート122がこの順に積層される。
【0053】
また、エンボス部20の層間には、接着剤層125,126が形成されている。この接着剤層125,126は、所要の層の積層時に積層面にホットメルトを供給し、プレスによってエンボス部20を加工することにより、層間を強固に結合するように形成される。これにより、肌面側からエンボス部20が強固に形成されるので、エンボス部20の幅方向の両端がそれぞれ肌面側に向けて凸状となるように屈曲しやすくなり、エンボス部20に挟まれた領域も着用者の排泄口に向けて凸状になり、より体にフィットする。ここでは、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との間に、接着剤層125が配置される。本実施形態では、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との間だけでなく、例えば上ラップシート122とトップシート11との間にも接着剤層が配置されるなど、各層の間にホットメルトを供給し、接着剤層を形成してもよい。上ラップシート122とトップシート11との間に接着剤層を配置すればエンボス部20の肌面側の表面形状が一層保持され、吸収性物品の装着時に着用者の体により一層フィットしやすくなる。
【0054】
本実施形態では、エンボス部20のみならず各層の間に広範囲にホットメルトを供給して接着剤層を形成しているが、エンボス部20の形成領域については他の領域よりも多くホットメルトを供給し、より強固な接着剤層を形成するようにしている。
【0055】
〈サポートギャザー〉
サポートギャザー31は、装着状態において、マット12を肌面側に持ち上げて支持するための部位である。このサポートギャザー31は、エンボス部20よりも幅方向外側に配置される。ここでは、股下部1Bの領域内において、厚み方向において(平面視で)少なくとも一部がマット12と重なる位置にサポートギャザー31が配置される。
また、サポートギャザー31では、皺寄せられた紙おむつ1が長手方向に延びている。ここでは、前身頃1A及び股下部1Bに亘ってサポートギャザー31が設けられている。
【0056】
このサポートギャザー31は、一対の第一弾性部材41(弾性部、
図1では二点鎖線で示す)によって形成される。
第一弾性部材41は、サポートギャザー31と同様に、股下部1Bの領域内において、平面視で少なくとも一部がマット12と重なる位置に、エンボス部20よりも幅方向外側に配置され、長手方向に沿って設けられる。ここでは、エンボス部20と平行に第一弾性部材41が配置される。
【0057】
この第一弾性部材41は、長手方向にマット12を収縮させるように設けられる。具体的に言えば、バックシート13とカバーシート14との間に第一弾性部材41が配置・介装され、これらのシート13,14と伸張状態の第一弾性部材41の少なくとも股下部1Bの範囲内に位置する部分とが糊付けや縫合などによって互いに固定される。そのため、第一弾性部材41の収縮方向への弾性力によって、シート13,14が皺寄せられ、マット12が長手方向に収縮させられる。
【0058】
上記したサポートギャザー31のほか、立体ギャザー32及びレッグギャザー33も紙おむつ1に設けられている。
立体ギャザー32は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー32では、サイドシート10の幅方向内側端縁部が第二弾性部材42(
図1及び
図2では密破線で示す)によって肌面側に立設されると共に皺寄せられる。
レッグギャザー33は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられる。このレッグギャザー33は、幅方向に突出しており、サイドシート10の幅方向外側端縁部、カバーシート14の幅方向外側端縁部及びバックシート13の幅方向外側端縁部が第三弾性部材43(
図1では疎破線で示す)によって皺寄せられる。
【0059】
図1及び
図2では、幅方向の一方及び他方のそれぞれに、三本ずつ設けられた第一弾性部材41、二本ずつ設けられた第二弾性部材42、二本ずつ設けられた第三弾性部材43を例示する。ただし、紙おむつ1において設計されたギャザー31,32,33の幅方向領域やサポーギャザー31,32,33に要求される弾性力(収縮力)などに応じて、種々の本数、弾性力あるいは種類の弾性部材41,42,43を採用することができる。弾性部材41,42,43としては、例えば、糸ゴム,天然ゴムあるいは伸縮フィルムなどを用いることができる。
【0060】
[2.装着状態の紙おむつ]
つぎに、
図4を参照して、装着状態の股下部1Bを説明する。
装着状態では、股下部1Bが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、股下部1Bの幅方向断面が「W」字状の所定形状に折り曲げられる。この「W」字状をなす部分を二つの並んだV字に準えて、一方のV字部分及び他方のV字部分をV字部51,52と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折りと呼ぶ。
【0061】
この装着状態では、エンボス部20が折れ目となって股下部1Bの谷折りを案内している。具体的に言えば、二つのエンボス部20を折れ目として股下部1Bを谷折りすることで、二つの谷折りが案内される。そして、V字部51,52のそれぞれの角部に対応する部位に二つのエンボス部20が位置する。このときの股下部1Bでは、二つのエンボス部20の幅方向中間部が逆V字状に山折りされ、幅方向中心が折れ目となる。
このように所定形状に折り曲げられた股下部1Bでは、V字部51,52のそれぞれの幅方向外側に、第一弾性部材41で形成されるサポートギャザー31が位置する。これらの第一弾性部材41あるいはサポートギャザー31によって、マット12が長手方向に収縮され、全体的に股下部1Bが肌面側に持ち上げられる。
【0062】
[3.製造方法]
つぎに、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明する。
はじめに、吸収性物品の製造装置の要部であるマット12の製造部の概略を説明する。
図5に示すように、マット12の製造装置は、下ラップシート121上にコア120を配置し積層するためのフォーミングロール131と、コア120上にSAPを供給し第1のSAP層123aを形成する第1SAP供給装置136aと、コア120上にフラッフパルプ(フラッフパルプ層)124を配置し積層するためのフォーミングロール132と、フラッフパルプ層124上にSAPを供給し第2のSAP層123bを形成する第2SAP供給装置136bと、フラッフパルプ層124上にホットメルトを供給するホットメルト供給装置137と、フラッフパルプ層124上に上ラップシート122を供給する供給ロール133と、フラッフパルプ層124上に供給する直前の上ラップシート122のフラッフパルプ層124側との接合面にホットメルトを供給するホットメルト供給装置138とをこの順に備えている。
【0063】
なお、ここでは、ホットメルト供給装置137,138の何れか一方は、エンボス部20及びその近傍のみにホットメルトを供給する。これにより、エンボス部20のみならず各層の間に広くホットメルトを供給しつつ、エンボス部20の層間を他の部分よりも多くホットメルトを供給し、より強固に結合するようにしている。ただし、ホットメルト供給装置137,138の何れか一方のみを装備し、エンボス部20の形成箇所及びその近傍のみにホットメルトの供給量を他の箇所よりも多くするようにしてもよい。
【0064】
また、マット12の製造装置の下流には、マット12に、プレスによってエンボス部20を圧搾により凹設するプレスロール134,135が装備されている。
プレスロール134,135によってエンボス部20を圧搾加工されたマット12には、その肌面側に、トップシート11を積層され、非肌面側にカバーシート14,バックシート13を積層されていくが、これらの工程の装置は図示を省略する。
なお、
図5に示す装置構成は一例であり、少なくとも以下の製造方法を実施しうる製造装置であればよく、例示の構成に限定されるものではない。
【0065】
吸収性物品の製造は、
図6に示すように、まず、ステップS10〜S70でマット12の形成を行なう。つまり、下ラップシート121上にコア(吸収体本体)120を配置し積層する(コア形成ステップ、ステップS10)。そして、このコア120上の要部(エンボス部20の形成領域を含む領域)にSAPを供給し第1のSAP層123aを配置・積層する(形状保持部加工ステップとしての第1の樹脂層形成ステップ、ステップS20)。更に、SAP層123上にフラッフパルプを供給しフラッフパルプ層124を配置・積層する(パルプ配置ステップ、ステップS30)。なお、このフラッフパルプ層124のエンボス部20を形成する箇所には予めスリット124Sが形成されている(形状保持部加工ステップ)。更に、このフラッフパルプ層124上の要部にSAPを供給し第2のSAP層123bを配置・積層する(形状保持部加工ステップとしての第2のSAP層形成ステップ、ステップS40)。
【0066】
そして、フラッフパルプ層124及び第2のSAP層123bと上ラップシート122との接合面にホットメルトを供給する(ホットメルト供給ステップ、ステップS50)。このとき、エンボス部20の形成箇所及びその近傍については、他の箇所よりも多くホットメルトを供給する。さらに、フラッフパルプ層124及び第2のSAP層123bの上に上ラップシート122を積層し、コア120,第1のSAP層123a,フラッフパルプ層124,第2のSAP層123bの積層体を下ラップシート121及び上ラップシート122で被包(ラップ)して(シート配置ステップ)、所定の長さにカットする(ステップS60)。
【0067】
この後、マット12の肌面側にプレス加工によってエンボス部20を凹設する(即ち、溝状部20をエンボス加工する)プレス工程(溝形成ステップ及び形状保持部加工ステップとしての高密度化SAP形成ステップ、ステップS70)を実施して、エンボス部20を備えたマット12の形成を完了する。
【0068】
なお、プレス工程の直前に、マット12のエンボス部20の形成領域に水スプレーを実施してからプレスを行なってもよい。このように、水スプレーによってマット12に水分が含まれた状態で加圧成形すると、その後の水分の蒸発によって、加圧成形した箇所のフラッフパルプ(コア120内のフラッフパルプ及びフラッフパルプ124層内のフラッフパルプ)
が圧密化された状態に保持され易くなり、加圧成形した形状がよりくっきりとした状態に保持され易くなる。この場合、圧密化されたフラッフパルプも形状保持部として機能することになる。
【0069】
つぎに、何れも帯状のトップシート11,サイドシート10,バックシート13及びカバーシート14を走行させながら、トップシート11及びサイドシート10と、バックシート13との間にマット12を挟むようにして、これらの積層工程を開始する(ステップS80)。なお、止着テープ2はカバーシート14あるいはサイドシート10に予め貼り付けられているものとする。この積層工程は、各シート類10〜14を所定の層配置で走行させながら、貼り合わせていく。これらの貼合箇所の要部には直前にホットメルトを供給するが、トップシート11とマット12との張り合わせ箇所のうち、エンボス部20の形成箇所及びその近傍については、他の箇所よりも多くホットメルトを供給する。
【0070】
そして、エンボス部20の外側に第一弾性部材(弾性部)41や第二弾性部材42や第三弾性部材43を配設するギャザー加工工程(ステップS90)を実施する。ギャザー加工工程はプレス工程と並行に同時に行える。
【0071】
ギャザー加工工程は積層工程の終了までに終了し、積層工程が終了したら(ステップS100)、股繰りカットやサイドシート10側をトップシート11側に折り曲げるホールド処理をして(ステップS110)、製品カットを行なって(ステップS120)、製造が完了する。
【0072】
なお、ここでは、エンボス部20が形成されたマット12に、トップシート11,サイドシート10,バックシート13及びカバーシート14を積層する工程を積層工程としているが、積層工程に、マット12の形成工程において各層を積層する工程も積層工程に含めることができる。つまり、下ラップシート121上にコア120を配置する工程(ステップS10)、コア120上に第1のSAP層123aを配置する工程(ステップS20)。SAP層123上にフラッフパルプ層124を配置する工程(ステップS30)。フラッフパルプ層124上に第2のSAP層123bを配置する工程(ステップS40)、フラッフパルプ層124及び第2のSAP層123b上に上ラップシート122を積層する工程(ステップS60)も積層工程に含めることができる。
【0073】
[3.作用及び効果]
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
本実施形態の紙おむつ1によれば、エンボス部20においてマット12を確実に折り曲げることができる。さらに、第一弾性部材41によってマット12が長手方向に収縮されることで、マット12を肌面側に持ち上げ、エンボス部20でのマット12の折り曲げを確実に保持することができる。
よって、装着状態において紙おむつ1の股下部1Bが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。
【0074】
そして、各エンボス部20には、溝状部の形状を保持する形状保持部200が備えられているので、エンボス部20の形状が保持される。特に、形状保持部200は、マット12がエンボス部20に沿って折り曲げられた場合にもエンボス部20の形状を保持する。
本実施形態では、形状保持部200は、フラッフパルプ層124に形成されたスリット124Sと、コア120内に含まれた高密度化したSAP120Sと、コア120の層とフラッフパルプ層124との間の第1のSAP層123aと、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との
間の第2のSAP層123bとを有し、それぞれによって、エンボス部20の形状が保持される。
【0075】
つまり、エンボス部20が形成される箇所に対応して形成されたスリット124Sは、エンボス部20におけるフラッフパルプ層124のフラッフパルプの復元力の発生を抑えるので、この復元力によるエンボス部20の溝形状が平らな状態に復元することを抑制し、エンボス部20の溝形状を保持する。また、マット12がエンボス部20に沿って折り曲げられた場合にも、スリット124Sが、この折り曲げ形状を保持する。
【0076】
また、コア120内に含まれてエンボス部20の加圧加工に伴ってSAP120Sが高密度化すること、或いは、コア120内のエンボス部20の形成領域に予めSAP120Sが高密度化されていることにより、高密度化したSAP120Sが形成されるが、高密度化したSAP120Sによればアンカー効果が大きく発揮されるようになり、エンボス部20の溝形状を保持する。更に、エンボス部20の形成箇所においてマット12が折り曲げられると、SAP120Sは一層高密度化しながら互いの絡み合いを強めるため、アンカー効果が更に高まり、マット12の折り曲げに伴ってフラッフパルプが圧縮を受けるのに従ってSAP120Sによるアンカー効果が高まり、このアンカー効果によってコア120内のフラッフパルプの復元を抑制し、マット12の折り曲げられた形状を保持する。
【0077】
また、第1のSAP層123a及び第2のSAP層123bは、プレス(圧搾)によってエンボス部20を加工したり、マット12をエンボス部20に沿って折り曲げたりすることにより、各エンボス部20においてSAP層123a,123b内のSAPの一部がフラッフパルプ層124内に入り込んでSAPとフラッフパルプとが絡み合ってアンカー効果を発揮する。これにより、SAP層123a,123bがエンボス部20の溝形状を保持し、マット12の折り曲げられた形状を保持する。
【0078】
また、第2のSAP層123bのSAPの一部が、上ラップシート122を介して上ラップシート122の更に肌面側のトップシート11の繊維に絡み合ってトップシート11に対してもアンカー効果をすることも期待できる。この場合、トップシート11がエンボス部20に沿って折れ曲がった状態に保持され易くなる。また、上ラップシート122やトップシート11といった肌面側シートがコア120から離隔してしまうおそれが抑制され、肌面側シート122,11がコア120の肌面側に沿った状態に保持され易くなる。
【0079】
そして、エンボス部20においては、他の箇所よりも多くホットメルトが供給されるため、エンボス部20にはこのホットメルトが固化した接着剤層125,126が形成される。このため、接着剤層125,126が、エンボス部20において、エンボス部20の溝形状が保持されると共に、上ラップシート122やトップシート11といった肌面側シートがコア120から離隔してしまうおそれが抑制され、肌面側シート122,11がマット12の肌面側に沿った状態に保持され易くなる。
【0080】
しかも、固化した接着剤層125,126がマット12の剛性を向上することにもなるので、エンボス部20の溝形状を含んだマット12の形状を保持する効果が得られる。したがって、本実施形態では、接着剤層125,126が形状保持部としての機能も含んでいる。つまり、エンボス部20でマット12が確実に折れ曲がり変形して着用者の体にフィットし易くなり、且つトップシート11がマット12の肌面側に沿った状態に保持され、この点でも着用性が向上する。
また、このようにエンボス部20は折れ曲がって着用者の体から離隔するため、エンボス部20が硬化しても着用者の体に触れず着用性を妨げることはない。
【0081】
本実施形態の場合、マット12の肌面側のエンボス部20以外の箇所は、フラッフパルプ層124が形成されるため、着用者の体に触れる部分では肌面側シート122,11の直下にこのフラッフパルプ層124が存在し、フラッフパルプのソフトな触感が着用者の触感を良好にし、また、着用者の体にフィットし易くする。したがって、この点でも着用性が向上する。
【0082】
なお、マット12の肌面側のエンボス部20以外の箇所では、フラッフパルプ層124の非肌面側にSAP層123が形成されるため、フラッフパルプ層124に吸収された液体は、その後SAP層123に進入し吸収される。したがって、マット12の吸液性が向上する効果も得られる。
【0083】
また、アンカー効果を発揮するようにSAPがフラッフパルプ等と絡み合ったSAP層123a,123bや、固化した接着剤層125,126が形成される領域は、主に着用者の肌には触れにくいエンボス部20の形成領域であるので、SAP層123a,123bや接着剤層125,126のごわごわ感が着用者の接触感を損なうおそれもない。したがって、良好な接触感が保持される。
【0084】
[IV.その他]
上記の実施形態では、トップシート11を重ねる前のマット12にエンボス部20を形成しているが、マット12にエンボス部20を形成する際に、マット12の肌面側の上ラップシート122にトップシート11を重ねた上でプレス加工によってエンボス部20を形成することも考えられる。
【0085】
また、上記の実施形態では、エンボス部20の形成領域において、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との間、及び上ラップシート122とトップシート11との間に、ホットメルトを他の部分よりも多く供給して、ホットメルトによる結合効果やホットメルトの固化による形状保持効果を得ているが、これに替えて或いはこれに加えてエンボス部20の形成領域の他の層間にホットメルトを多く供給してもよい。
【0086】
また、本実施形態では、形状保持部200として、フラッフパルプ層124の各エンボス部20が形成される箇所に対応して形成されたスリット124Sと、コア120内に含まれた高密度化されたSAP120Sと、コア120の層とフラッフパルプ層124との間に介装された第1のSAP層123aと、フラッフパルプ層124と上ラップシート122との間に介装された第2のSAP層123bと、を有しているが、これらの一部(これらのうちの1つ又は一部の組み合わせ)をそなえるだけでもよいし、そなえなくてもよい。この場合は 、エンボス部20及びその近傍へのホットメルトの供給量を他の部分よりも多くする。これにより、形状保持部200の形状保持効果が上がり、エンボスがしっかりと形成され、エンボス部20の周辺がそれぞれ屈曲しやすくなる。また、 例えば、肌面側からエンボス部20が形成される場合は、エンボス部20の幅方向の両端がそれぞれ肌面側に向けて凸状となるように屈曲しやすくなるなど、狙った方向に吸収体を屈曲させることができる。
【0087】
また、フラッフパルプ層124の各エンボス部20が形成される箇所に対応して形成されたスリット124Sを設けなくてもよい。スリット124Sを設けない場合は、SAPのアンカー効果を十分に得るために、第2のSAP層123bを備えることが好ましい。また、スリット124Sの替わりに、マット12やフラッフパルプ層124のエンボス部20の形成領域をその周囲領域よりもフラッフパルプの目付量を小さくしてもよい。
また、スリット124Sを設けない場合は、エンボス部20及びその近傍へのホットメルトの供給量を他の部分よりも多くする。これにより、形状保持部200の形状保持効果が上がり、エンボスがしっかりと形成され、エンボス部20の周辺がそれぞれ屈曲しやすくなり、狙った方向に吸収体を屈曲させることができる。
【0088】
例えば
図8に示すように、フラッフパルプ層124の下面(非肌面)側〔
図8(a)参照〕及び上面(非肌面)側〔
図8(b)参照〕の何れか又は両方に、空隙部(凹部)127,128を形成してフラッフパルプの目付量を小さく設定することができる。これにより、プレス工程で空隙部127,128が容易に押し潰されてエンボス部20のマット12の厚みが薄くなって、よりノッチの深いエンボス部20を形成でき、エンボス部20の溝形状を保持することができる。また、着用時のエンボス部20に沿ったマット12の折れ曲がりを促進すると共に、この折れ曲がり形状を保持することができる。
なお、
図8では第1のSAP層123aのみを備える場合を示し、シート類11〜14の図示を省略する。
【0089】
また、上記実施形態では、左右のエンボス部20,20間にもSAPを供給して、第1のSAP層123aを形成しているが、エンボス部20におけるコア120と肌面側シートとの結合を促進して互いの離隔を防止するためだけであれば、エンボス部20,20間にはSAPを供給しなくてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、プレス工程の直前にマット12のエンボス部20の形成領域に水スプレーを実施しているが、マット12の製造時(積層工程の各ステップの直後)やトップシート11の積層前に水スプレーを実施してもよい。
【0091】
さらに、エンボス部20におけるコア120と肌面側シートとの離隔を防止するためだけであれば、SAP供給の後のフラッフパルプの供給を省いてもよい。この場合、エンボス部20に供給されたSAPはプレス工程で、コア120内に進入しつつ肌面側シート内にも進入し、コア120と肌面側シートとがSAPによるアンカー効果で結合される。
【0092】
また、SAP層123a,123bやフラッフパルプ層124を省き、マット12のコア120のみをラップシート(下ラップシート121,上ラップシート122)でラップしたものにエンボス部20を加工するものでも、エンボス部20の形成領域(或いはこれを含む領域)における何れかの層間に、少なくともその周囲領域よりも多量の接着剤によって接着剤層を形成すれば、接着剤層によって吸収性物品の品質を向上することができる。
【0093】
つまり、接着剤層によって層間の離隔が抑制されるため、着用者から排泄された液体が肌面側シートから吸収体本体に速やかに吸収され易くなり、着用者の快適性が確保され、吸収性物品の品質が向上する。また、接着剤層によりエンボス部20の剛性が向上して形状保持効果が得られ、フラッフパルプによる形状復元力が抑えられ、エンボス部20で吸収体が確実に折れ曲がって着用者の体にフィットし易くなり、着用性が向上し、吸収性物品の品質が向上する。
この接着剤層のみを適用する場合は、エンボス部20の加工はプレスに限定されない。
【0094】
なお、エンボス部20は、マット12の肌面側と非肌面側とに設けてもよい。形状保持効果を十分に得られた状態で肌面側にエンボス部20が深く形成されると、エンボス部20の幅方向の両端がそれぞれ肌面側に向けて凸状となるように屈曲しやすくなり、エンボス部20に挟まれた領域も着用者の排泄口に向けて凸状になり、体にフィットする。一方、非肌面側にエンボス部20が深く形成されると、エンボス部20の幅方向の両端がそれぞれ非肌面側に向けて凸状となるように屈曲しやすくなり、エンボス部20に挟まれた領域も着用者の排泄口とは反対に向けて凸状になり、おむつと体との間に空間ができ通気性が向上する。
さらに、エンボス部20は、前身頃1Aや後身頃1Cの一部に設けてもよい。