(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータが、前記振れ角検出手段によって検出される搬送物の振れ角の大きさに応じて力を付加するように構成される請求項1または請求項2に記載のクレーン。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1と
図2とを用いて、クレーンの一実施形態に係るクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、クレーン1として移動式クレーンについて説明を行うが、アクチュエータによって起伏される伸縮ブーム8と旋回台7とウインチ(メインウインチ13、サブウインチ15)とを具備するクレーン1であればよい。
【0019】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、クレーン装置6を有する。
【0020】
車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0021】
クレーン装置6は、、搬送物Wをワイヤロープによって吊り上げるものである。クレーン装置66は、、、旋回台7、伸縮ブーム8、ジブ9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16、キャビン18等を具備する。
【0022】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成するものである。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。円環状の軸受は、その回転中心が車両2の設置面に対して垂直になるように配置されている。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として一方向と他方向とに回転自在に構成されている。旋回台7は、油圧式の旋回モータ17(
図2参照)によって回転されるように構成されている。旋回台7には、その旋回位置を検出する旋回位置検出センサ35(
図2、
図3参照)が設けられている。
【0023】
伸縮ブーム8は、搬送物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持するものである。伸縮ブーム8は、複数のブーム部材から構成されている。各ブーム部材は、断面積の大きさの順に入れ子式に挿入されている。伸縮ブーム8は、各ブーム部材を図示しない伸縮シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。伸縮ブーム8は、ベースブーム部材の基端が旋回台7上に揺動可能に設けられている。これにより、伸縮ブーム8は、車両2のフレーム上で水平回転可能かつ揺動自在に構成されている。
【0024】
ジブ9は、クレーン装置6の揚程や作業半径を拡大するものである。ジブ9は、伸縮ブーム8のベースブーム部材に設けられたジブ9支持部によってベースブーム部材に沿った姿勢で保持されている。ジブ9の基端は、トップブーム部材のジブ9支持部に連結可能に構成されている。ジブ9は、ジブ9支持部に図示しないピンを打ち込むことによりトップブーム部材の先端に連結可能に構成されている。
【0025】
メインフックブロック10は、搬送物Wを吊るものである。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、搬送物Wを吊るメインフックとが設けられている。サブフックブロック11は、搬送物Wを吊るものである。サブフックブロック11には、搬送物Wを吊るサブフックが設けられている。
【0026】
起伏シリンダ12は、伸縮ブーム8を起立および倒伏させ、伸縮ブーム8の姿勢を保持するものである。起伏シリンダ12はシリンダ部とロッド部とからなる油圧シリンダから構成されている。起伏シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド部の端部が伸縮ブーム8のベースブーム部材に揺動自在に連結されている。起伏シリンダ12は、ロッド部がシリンダ部から押し出されるように作動油が供給されることで伸縮ブーム8を起立させ、ロッド部がシリンダ部に押し戻されるように作動油が供給されることで伸縮ブーム8を倒伏させるように構成されている。
【0027】
油圧ウインチであるメインウインチ13は、メインワイヤロープ14の繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがメイン用油圧モータによって回転され、メインワイヤロープ14が繰り入れ、繰り出しされるように構成されている。
【0028】
油圧ウインチであるサブウインチ15は、サブワイヤロープ16の繰り入れおよび繰り出しを行うものである。サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがサブ用油圧モータによって回転され、サブワイヤロープ16が繰り入れ、繰り出しされるように構成されている。
【0029】
油圧式の旋回モータ17は、旋回台7を旋回させるものである(
図2参照)。旋回モータ17は、プランジャモータから構成されている。旋回モータ17は、右回転用のプランジャに図示しない右旋回用油路が接続され、左回転用のプランジャに図示しない左旋回用油路が接続されている(
図2参照)。旋回モータ17は、右旋回用油路を通じて右回転用のプランジャに作動油が供給されることで旋回台7を右旋回させ、左旋回用油路を通じて左回転用のプランジャに作動油が供給されることで旋回台7を左旋回させるように構成されている。
【0030】
キャビン18は、操縦席を覆うものである。キャビン18は、旋回台7における伸縮ブーム8の側方に設けられている。キャビン18の内部には、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、メインウインチ13を操作するための図示しないメイン用操作弁、サブウインチ15を操作するための図示しないサブ用操作具、旋回台7を旋回させるための旋回操作具19、伸縮ブーム8を起伏操作するための起伏操作具20、伸縮ブーム8を伸縮操作するための伸縮操作具21、クレーン1を移動させるための図示しないハンドル等が設けられている。
【0031】
図2に示すように、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21は、所定の方向に操作することで対応する切換弁の開度を変更するように構成されている。旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21には、中立位置から所定の操作量Ms(
図3参照)までの間、対応する切換弁の開度を変更しない不感帯が設けられている(
図3薄墨部分参照)。また、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21には、操作されていない状態で各操作具を中立位置に保持するために図示しない保持用ばねが設けられている。
【0032】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏シリンダ12で伸縮ブーム8を任意の起伏角度に起立させて、伸縮ブーム8を任意の伸縮ブーム8長さに延伸させたりジブ9を連結させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。さらに、クレーン1は、振れ角検出カメラ28によってメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れの方向および振れ角の大きさを算出するための画像を取得することができる。
【0033】
以下に、
図2と
図3とを用いて、クレーン1の荷振れ抑制支援制御について説明する。クレーン1には、荷振れ抑制支援制御を実施するために、旋回操作具19に力を付加するアクチュエータである旋回操作具用モータ22、起伏操作具20に力を付加する起伏操作具用モータ23および伸縮操作具21に力を付加する伸縮操作具用モータ24と、振れ角検出手段である振れ角検出カメラ28と、各操作具用モータを制御する制御装置29とを備える。本実施形態において、クレーン1には、旋回周方向の荷振れと旋回径方向の荷振れとが合成された荷振れが生じているものとする。
【0034】
図2に示すように、旋回操作具用モータ22は、旋回操作具19に独立して力を付加し、起伏操作具用モータ23は、起伏操作具20に独立して力を付加し、伸縮操作具用モータ24は、伸縮操作具21に独立して力を付加するものである。旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24は、図示しないアンプに接続され、アンプからの電流に応じたトルクを発生させる。旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24は、対応する操作具の操作可能な方向に任意の大きさの力Fmを付加できるように構成されている。つまり、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23、伸縮操作具用モータ24は、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21を介して操縦者に力Fmを伝達するように構成されている。
【0035】
図3(a)に示すように、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24は、各操作具の不感帯(薄墨部分参照)における保持用ばねの最大張力Fs以下の力を付加するように構成されている。つまり、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24は、対応する各操作具に最大の力Fmを付加した場合にも切換弁の開度が変更されないように構成されている。
【0036】
図2と
図3(b)とに示すように、旋回用支援スイッチ25、起伏用支援スイッチ26および伸縮用支援スイッチ27は、荷振れ抑制支援制御を開始するための信号を制御装置29に送信するためのものである。旋回用支援スイッチ25は、操縦者が旋回操作具19を操作する際に操作可能に構成され、起伏用支援スイッチ26は、操縦者が起伏操作具20を操作する際に操作可能に構成され、伸縮用支援スイッチ27は、操縦者が伸縮操作具21を操作する際に操作可能に構成されている。例えば、旋回用支援スイッチ25は、旋回操作具19の把持部分に設けられ、操縦者が旋回操作具19の把持部を把持している状態で操作可能に構成されている。つまり、旋回用支援スイッチ25、起伏用支援スイッチ26および伸縮用支援スイッチ27は、操縦者が対応する各操作具に付加される力Fmを受け止められる状態である場合に操作可能に構成されている。
【0037】
図2に示すように、振れ角検出手段である振れ角検出カメラ28は、メインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れ角の大きさを検出するための画像を撮影するものである。振れ角検出カメラ28は、伸縮ブーム8に設けられている。振れ角検出カメラ28は、複数のカメラから構成されている。振れ角検出カメラ28は、各カメラによって異なる二方向からメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16を撮影可能に構成されている。これにより、振れ角検出カメラ28は、伸縮ブーム8に対するメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れの方向および振れ角の大きさを算出可能な画像を撮影することができる。
【0038】
制御装置29は、クレーン1の動作を制御するとともに、旋回台7や伸縮ブーム8における搬送物Wの荷振れの抑制を支援する荷振れ抑制支援制御を行うものである。制御装置29は、車両2に設けられている。制御装置29は、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21の操作に基づいて対応する図示しない油圧切換弁の動作を制御する。また、制御装置29は、旋回用支援スイッチ25、起伏用支援スイッチ26および伸縮用支援スイッチ27の操作によって、対応する旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24による荷振れ抑制支援制御を実施する。制御装置29は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置29は、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0039】
制御装置29は、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21に接続され、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21からの信号を取得することができる。
【0040】
制御装置29は、旋回用支援スイッチ25、起伏用支援スイッチ26および伸縮用支援スイッチ27に接続され、旋回用支援スイッチ25、起伏用支援スイッチ26および伸縮用支援スイッチ27からの信号を取得することができる。
【0041】
制御装置29は、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24に図示しないアンプを介して接続され、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24を制御する信号を図示しないアンプに送信することができる。すなわち、制御装置29は、アンプを介して旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24を制御することができる。
【0042】
制御装置29は、振れ角検出カメラ28に接続され、振れ角検出カメラ28が撮影する画像を取得する。
【0043】
図4(a)に示すように、制御装置29は、振れ角検出カメラ28から取得した画像から伸縮ブーム8に対するメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れの方向および振れ角の大きさを算出することができる。具体的には、制御装置29は、振れ角検出カメラ28から取得した画像から伸縮ブーム8の先端における旋回周方向の振れ角θxと旋回径方向の振れ角θzとを抽出し、搬送物Wの荷振れの方向および振れ角の大きさを算出する。
【0044】
図4(b)に示すように、制御装置29は、搬送物Wの荷振れを、算出したメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れ角の大きさで振れの方向に向かう荷振れベクトルVとして定義する。さらに、制御装置29は、荷振れベクトルVを旋回台7の旋回周方向成分と旋回径方向に分解して、旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとを算出することができる。つまり、荷振れベクトルVは、旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとを含んでいる。制御装置29は、旋回用支援スイッチ25(
図2参照)、起伏用支援スイッチ26(
図2参照)または伸縮用支援スイッチ27(
図2参照)からの信号を取得すると荷振れ抑制支援制御を開始するように構成されている。
【0045】
図5(a)に示すように、クレーン1は、旋回操作具19が矢印A1の方向(例えば、左旋回方向)に操作された場合、
図5(b)に示すように、旋回台7が黒塗矢印A2の方向(左旋回方向)に旋回される。これにより、搬送物Wは、その慣性によって黒塗矢印A2の方向と逆方向の黒塗矢印A4の方向に荷振れが発生する。制御装置29は、振れ角検出カメラ28によって取得したサブワイヤロープ16の画像に基づいて、荷振れベクトルVに含まれている旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとを算出している。(
図4(b)参照)
図5(c)に示すように、制御装置29は、旋回操作具19に設けられる旋回用支援スイッチ25の操作により旋回用支援スイッチ25から信号を取得すると、算出した旋回周方向ベクトルVcの大きさに応じた大きさで、旋回周方向ベクトルVcの向きの力Fm(白塗矢印参照)が旋回操作具19に付加されるように旋回操作具用モータ22を制御する。制御装置29は、所定間隔で旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとを算出する。制御装置29は、所定間隔で算出した旋回周方向ベクトルVcに基づく大きさおよび方向の力Fmが旋回操作具19に付加されるように旋回操作具用モータ22を制御する。
【0046】
同様に、制御装置29は、起伏用支援スイッチ26と伸縮用支援スイッチ27とから信号を取得すると、算出した旋回径方向ベクトルVrの大きさに応じた力が起伏操作具20と伸縮操作具21とに付加するように起伏操作具用モータ23と伸縮操作具用モータ24とを制御する。この際、制御装置29は、旋回径方向ベクトルVrの方向に伸縮ブーム8を起立または倒伏させるための起伏操作具20の操作方向に力Fmが付加されるように起伏操作具用モータ23を制御し、伸縮ブーム8を延伸また収縮させるための伸縮操作具21の操作方向に力Fmが付加するようように伸縮操作具用モータ24を制御する。つまり、制御装置29は、搬送物Wの振れ角の大きさおよび振れの方向に基づいた力を旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21にそれぞれ加えることで操縦者に荷振れの振れの大きさと振れの方向とを伝達するように構成されている。
【0047】
以下に、
図6を用いて、クレーン1の荷振れ抑制支援制御を利用した搬送物Wの荷振れ抑制操作について具体的に説明する。本実施形態において、クレーン1は、旋回操作具19と起伏操作具20とによって荷振れ抑制操作が行われるものとする。
【0048】
制御装置29は、振れ角検出カメラ28が取得する画像に基づいて荷振れベクトルVを算出し、旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとに分解する(
図4参照)。制御装置29が旋回用支援スイッチ25と起伏用支援スイッチ26からの信号を取得した場合、荷振れ抑制支援制御を実施する。制御装置29は、各ベクトルの大きさおよび方向に基づいて、対応する旋回操作具19と起伏操作具20とに力Fmを付加する。つまり、制御装置29は、旋回操作具19と起伏操作具20とを通じて操縦者に振れの大きさと振れの方向を伝達している。
【0049】
図6に示すように、ステップS110において、制御装置29は、振れ角検出カメラ28からメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の振れ角の大きさを検出するための画像を取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0050】
ステップS120において、制御装置29は、取得した画像から伸縮ブーム8を基準とする搬送物Wの振れ角の大きさおよび振れの方向を算出し、ステップをステップS130に移行させる。
【0051】
ステップS130において、制御装置29は、算出した搬送物Wの振れ角の大きさおよび振れの方向から振れ角の大きさで振れの方向に向かう荷振れベクトルVを定義し、ステップをステップS140に移行させる。
【0052】
ステップS140において、制御装置29は、定義した荷振れベクトルVを旋回周方向と旋回径方向とに分解し、旋回周方向ベクトルVcと旋回径方向ベクトルVrとを算出し、ステップをステップS150に移行させる。
【0053】
ステップS150において、制御装置29は、旋回用支援スイッチ25からの信号を取得したか否かを判断する。
その結果、旋回用支援スイッチ25からの信号を取得したと判定された場合、制御装置29はステップをS160に移行させる。
一方、旋回用支援スイッチ25からの信号を取得していないと判定された場合、制御装置29はステップをステップS170に移行させる。
【0054】
ステップS160において、制御装置29は、旋回操作具19に旋回操作具用モータ22によって旋回周方向ベクトルVcに基づいた方向および大きさの力Fmを付加し、ステップをステップS170に移行させる。
【0055】
ステップS170において、制御装置29は、起伏用支援スイッチ26からの信号を取得したか否かを判断する。
その結果、起伏用支援スイッチ26からの信号を取得したと判定された場合、制御装置29はステップをS180に移行させる。
一方、起伏用支援スイッチ26からの信号を取得していないと判定された場合、制御装置29はステップをステップS110に移行させる。
【0056】
ステップS180において、制御装置29は、起伏操作具20に起伏操作具用モータ23によって旋回周方向ベクトルVcに基づいた方向および大きさの力Fmを付加し、ステップをステップS110に移行させる。
【0057】
このように構成することで、クレーン1は、搬送物Wが荷振れを起こした場合、荷振れに対応する各操作具に付加される力Fmを手掛かりに各操作具を操作することで荷振れを打ち消す方向にクレーン1を操縦することができる。つまり、操縦者は、搬送物Wの荷振れの抑制を視覚による認識だけでなく各操作具に付加される力Fm(抵抗力)による力覚によって荷振れの大きさと荷振れ抑制のタイミングをはかることができる。また、クレーン1は、振れ角検出カメラ28で取得した荷振れの状態に基づいて荷振れ抑制支援制御を実施するので、旋回台7や伸縮ブーム8の動作状態に関わらず各操作具の操作による荷振れの抑制を支援することができる。つまり、クレーン1は、風等によって搬送物Wに荷振れが発生した場合でも各操作具を介して荷振れの状態を認識することができる。加えて、旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24は、対応する各操作具に付与する力Fmが操作具によるクレーン1の操縦に影響を及ぼさないように各操作具の不感帯における保持用ばねの最大張力Fs以下の力を付加するように構成されている。
【0058】
なお、本実施形態において、クレーン1は、搬送物Wの荷振れの振れ角の大きさに応じた力を旋回操作具用モータ22と起伏操作具用モータ23とによって旋回操作具19と起伏操作具20とに付加する構成であるが、荷揺れの振れ角の大きさに加えてメインワイヤロープ14またはサブワイヤロープ16の長さ、搬送物Wの重量等を考慮して各操作具に付加する力Fmの大きさを算出してもよい。
【0059】
次に、
図1と
図7を用いて、クレーンの第二実施形態であるクレーン30について説明する。なお、以下の第二実施形態に係るクレーン30は、
図1から
図6に示すクレーン1において、クレーン1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、記号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0060】
第二実施形態におけるクレーン30の荷振れ抑制支援制御を利用した搬送物Wの荷振れ抑制操作について説明する。本実施形態において、クレーン1は、旋回操作具19と起伏操作具20とによって荷振れ抑制操作が行われるものとする。
【0061】
起伏シリンダ12は、伸縮ブーム8を起立および倒伏させ、伸縮ブーム8の姿勢を保持するものである。起伏シリンダ12はシリンダ部とロッド部とからなる油圧シリンダから構成されている。起伏シリンダ12は、図示しないヘッド側油室に作動油が供給されることでロッド部がシリンダ部から押し出されて伸縮ブーム8を起立させ、図示しないロッド側油室に作動油が供給されることで伸縮ブーム8を倒伏させるように構成されている。また、起伏シリンダ12には、ヘッド側油室の油圧を検出するヘッド側油圧センサ31と、ロッド側油室の油圧を検出するロッド側油圧センサ32とが設けられている。
【0062】
油圧式の旋回モータ17は、旋回台7を旋回させるものである(
図2参照)。旋回モータ17は、プランジャモータから構成されている。旋回モータ17は、右回転用のプランジャに図示しない右旋回用油路が接続され、左回転用のプランジャに図示しない左旋回用油路が接続されている。旋回モータ17の右回転用のプランジャに作動油を供給する右旋回用油路には、右旋回用油圧センサ33が設けられ、旋回モータ17の左回転用のプランジャに作動油を供給する左旋回用油路には、左旋回用油圧センサ34が設けられている。
【0063】
以下に、
図7と
図8とを用いて、クレーン30の荷振れ抑制支援制御について説明する。クレーン30には、荷振れ抑制支援制御を実施するために、操作具に力を付加するアクチュエータである旋回操作具用モータ22、起伏操作具用モータ23および伸縮操作具用モータ24と、ヘッド側油圧センサ31およびロッド側油圧センサ32と、右旋回用油圧センサ33および左旋回用油圧センサ34と、各操作具用モータを制御する制御装置29とを備える。本実施形態において、クレーン30には、旋回周方向の荷振れと旋回径方向の荷振れとが合成された荷振れが生じているものとする。
【0064】
制御装置29は、ヘッド側油圧センサ31およびロッド側油圧センサ32に接続され、ヘッド側油圧センサ31が検出する起伏シリンダ12のヘッド側油室の油圧とロッド側油圧センサ32が検出する起伏シリンダ12のロッド側油室の油圧とを取得することができる。
【0065】
制御装置29は、右旋回用油圧センサ33および左旋回用油圧センサ34に接続され、右旋回用油圧センサ33が検出する旋回モータ17の右回転用のプランジャの油圧と旋回モータ17の左旋回用油圧センサ34が検出する左回転用のプランジャの油圧とを取得することができる。
【0066】
制御装置29は、右旋回用油圧センサ33および左旋回用油圧センサ34から取得した旋回モータ17の右回転用のプランジャの油圧と左回転用のプランジャの油圧との差圧から搬送物Wの旋回周方向(旋回周方向)の荷振れの振れ角の大きさおよび振れの方向を算出する。さらに、制御装置29は、ヘッド側油圧センサ31およびロッド側油圧センサ32から取得した起伏シリンダ12のヘッド側油室の油圧とロッド側油室の油圧との差圧から搬送物Wの旋回径方向(旋回径方向)の荷振れの振れ角の大きさおよび振れの方向を算出する。制御装置29は、旋回用支援スイッチ25または起伏用支援スイッチ26からの信号を取得すると荷振れ抑制支援制御を開始する。
【0067】
以下に、
図8を用いて、クレーン30の荷振れ抑制支援制御を利用した搬送物Wの荷振れ抑制操作について具体的に説明する。
図8に示すように、ステップS210において、制御装置29は、ヘッド側油圧センサ31およびロッド側油圧センサ32から起伏シリンダ12のヘッド側油室の油圧とロッド側油室の油圧とを取得し、ステップをステップS220に移行させる。
【0068】
ステップS220において、制御装置29は、右旋回用油圧センサ33および左旋回用油圧センサ34から旋回モータ17の右回転用のプランジャの油圧と左回転用のプランジャの油圧とを取得し、ステップをステップS230に移行させる。
【0069】
ステップS230において、制御装置29は、取得した旋回モータ17の右回転用のプランジャの油圧と左回転用のプランジャの油圧との差圧から旋回周方向ベクトルVcを算出し、取得した起伏シリンダ12のヘッド側油室の油圧とロッド側油室の油圧との差圧から旋回径方向ベクトルVrを算出し、ステップをステップS150に移行させる。
【0070】
このように構成することで、クレーン30は、旋回モータ17における右回転用のプランジャの油圧および左回転用のプランジャの油圧との差圧と、起伏シリンダ12におけるヘッド側油室の油圧およびロッド側油室の油圧とに基づいて荷振れ抑制支援制御を実施するので、旋回台7や伸縮ブーム8の動作状態に関わらず操作具の操作による荷振れの抑制を支援することができる。
【0071】
以上、本実施形態において、クレーン30は、旋回操作具19と起伏操作具20との操作時に荷振れ抑制支援制御を実施する構成であるがこれに限定するものではなく、旋回操作具19や起伏操作具20のみでも、旋回操作具19、起伏操作具20および伸縮操作具21等を組み合わせて荷振れ抑制支援制御を実施してもよい。各操作具は、対応する各操作具用モータによって力が付加されるように構成されているがこれに限定するものではなく、操作具に任意の大きさの力を付加できるものであればよい。
【0072】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。