n(nは1以上の整数)台の単相電力変換器からなり、かつ、n=1の時には単相電力変換器の2つの交流出力端を第1、第2の交流出力端とし、n=2以上の時にはn台の単相電力変換器の交流出力側の直列接続回路の始点及び終点に位置する2つの交流出力端を第1、第2の交流出力端とした単相電力変換ユニットを構成し、
m(mは2以上の整数)台の前記単相電力変換ユニットの前記第1の交流出力端を共通接続して中性点とし、m台の前記単相電力変換ユニットの前記第2の交流出力端が同一の交流負荷または交流電源の各相にそれぞれ接続されると共に、前記単相電力変換器を制御する主制御装置を備えた電力変換装置を対象として、前記電力変換装置の電気的状態を監視するための状態検出装置において、
前記中性点と接地点との間に取り付けられた第1の検出手段と、
前記第1の検出手段から出力されるアナログ信号を第1のディジタル信号に変換して出力する第1のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第1のディジタル信号を第1のシリアル信号に変換して出力する第1のシリアル変換手段と、
少なくとも(m−1)個の前記第1の交流出力端と前記中性点との間に取り付けられた第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるアナログ信号を第2のディジタル信号に変換して出力する第2のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第2のディジタル信号を第2のシリアル信号に変換して出力する第2のシリアル信号変換手段と、
全ての前記アナログ−ディジタル変換手段の変換タイミングを制御するための変換タイミング制御手段と、
全ての前記シリアル変換手段の出力信号の中から一つを選択して出力するシリアル信号選択手段と、
前記シリアル信号選択手段の出力信号を光信号に変換し、前記電力変換装置の状態を示す信号として前記主制御装置に出力する電気−光変換手段と、
前記第1及び第2の検出手段、前記第1及び第2のアナログ−ディジタル変換手段、前記第1及び第2のシリアル変換手段、前記変換タイミング制御手段、前記シリアル信号選択手段、前記電気−光変換手段を含む回路に電源を供給する給電手段と、
を備え、
前記給電手段に、何れかの前記単相電力変換器から電源を供給することを特徴とする状態検出装置。
【背景技術】
【0002】
図21は、第1の従来技術として、電力変換装置により高圧の交流を出力して3相の電動機を駆動する電動機駆動システムの構成図である。同図において、201は電力変換装置であり、3台の単相電力変換器INV−U1〜INV−U3の交流出力端を直列接続してU相の単相直列多重変換器を構成すると共に、同様に単相電力変換器INV−V1〜INV−V3,INV−W1〜INV−W3によりV相,W相の単相直列多重変換器を構成し、これら3相分の単相直列多重変換器をスター結線することにより主回路部が構成されている。
ここで、U相,V相,W相の単相直列多重変換器を、便宜的にそれぞれ単相電力変換ユニットというものとする。
【0003】
202は交流電源としての多巻線変圧器であり、電源系統に接続される1次側の3相巻線に対して2次側に9組の3相巻線を備え、2次側巻線出力端R1〜R3から単相電力変換器INV−U1〜INV−U3に3相交流電圧を供給し、同様に2次側巻線出力端S1〜S3,T1〜T3から単相電力変換器INV−V1〜INV−V3,INV−W1〜INV−W3に3相交流電圧をそれぞれ供給する。
203は交流負荷としての電動機であり、電力変換装置201の出力端U,V,Wから高圧の3相交流電圧が供給されることにより駆動される。
【0004】
401は、電力変換装置201の全体を制御する主制御装置であり、後述する各検出器が接続されると共に、光ファイバー64U1〜64U3,64V1〜64V3,64W1〜64W3を介して、単相電力変換器INV−U1〜INV−U3,INV−V1〜INV−V3,INV−W1〜INV−W3にそれぞれ接続されている。402は、スター結線された主回路部の中性点Oと接地端子Eとの間に接続された地絡故障検出器であり、給電線P
DIGにより主制御装置401から給電されて動作し、中性点Oから接地端子E及び接地線を介して接地点Gに流れる地絡電流I
Gの大きさから地絡故障の有無を判定すると共に、その結果を信号線S
DIGにより主制御装置401に伝えて装置保護の演算に使用する。
【0005】
403は、単相電力変換器INV−U3とU相出力端Uとの間に接続されたU相電流検出器であり、電源線P
DIUにより主制御装置401から給電されて動作し、U相電流の検出結果が信号線S
DIUにより主制御装置401に送られて電流制御や装置保護のための演算に使用される。同様に、404は、単相電力変換器INV−V3とV相出力端Vとの間に接続されたV相電流検出器であり、電源線P
DIVにより主制御装置401から給電されて動作し、V相電流の検出結果が信号線S
DIVにより主制御装置401に送られる。また、405は、単相電力変換器INV−W3とW相出力端Wとの間に接続されたW相電流検出器であり、電源線P
DIWにより主制御装置401から給電されて動作し、W相電流の検出結果が信号線S
DIWにより主制御装置401に送られるようになっている。
【0006】
主制御装置401と地絡故障検出器402、U相電流検出器403、V相電流検出器404、W相電流検出器405により、電力変換装置201の制御部が構成されている。
主制御装置401は、各検出器403〜405及び単相電力変換器INV−U1〜INV−U3,INV−V1〜INV−V3,INV−W1〜INV−W3に接続されて電動機203の運転や保護に必要な演算を実行し、その結果に基づいて各相の単相電力変換器を動作させることで電力変換装置201から出力される各相の電流を制御し、電動機203を適切な大きさの電圧及び周波数により運転する。
【0007】
次に、
図22は、電力変換装置201に適用される単相電力変換器の一例を示す単相2レベル変換器の構成図である。
同図に示す単相電力変換器301において、302はダイオード整流回路であり、交流入力端a,b,cから入力された3相交流を直流に変換して直流中間回路の正側母線P−負側母線N間に出力する。303は、スイッチング素子をIGBTとした単相2レベル変換器(単相2レベルインバータ)であり、直流中間回路のP−N間の直流を4個のIGBTのスイッチングと各部の還流ダイオードとのオンオフにより任意の電圧及び周波数の交流に変換して、交流出力端x−y間に出力する。
【0008】
304は、単相2レベル変換器303の主回路を制御する補助制御装置であり、
図21における主制御装置401により演算した情報を光ファイバー64を介してシリアル受信光−電気変換モジュールSRから取り込み、この情報に基づく演算結果により単相2レベル変換器303のIGBTをスイッチングする。305は補助制御装置304の制御電源であり、交流入力端a,b,cから取り込んだ交流、または直流中間回路のP−N間から取り込んだ直流等から、適宜な手段により補助制御装置304の動作に必要な電源を生成し、電源線P
LCTRを通じて給電する。
【0009】
図21に示した電動機駆動システムや
図22の単相電力変換器の構成及びその動作原理は、例えば特許文献1等に記載されている。なお、特許文献1には、
図21における地絡故障検出器402等が示されていないが、高圧の電力機器においては安全上、必須の検出器であるため、
図21ではこれを加えている。
【0010】
次いで、
図23は、
図21の電力変換装置201に適用される単相電力変換器の一例を示す単相3レベル変換器の構成図である。同図の単相電力変換器306において、307はダイオード整流回路であり、交流入力端a,b,cから入力された3相交流を直流に変換して直流中間回路のP−N間に出力する。308はスイッチング素子をIGBTとした単相3レベル変換器(単相3レベルインバータ)であり、直流中間回路のP−N間の直流を8個のIGBTのスイッチングと各部の還流ダイオード、及び、2個のコンデンサの直列接続点MとIGBTとの間に接続されたクランプダイオードのオンオフにより任意の電圧及び周波数の交流に変換して、交流出力端x−y間に出力する。なお、Mは2個のコンデンサの直列接続点である。
【0011】
310は単相電力変換器306を制御する補助制御装置であり、
図21の主制御装置401により演算した情報を、光ファイバー64を介してシリアル受信光−電気変換モジュールSRから取り込み、この情報に基づく演算結果により単相3レベル変換器308の8個のIGBTをスイッチングする。309は補助制御装置310の制御電源であり、交流入力端a,b,cから取り込んだ交流、または直流中間回路のP−N間から取り込んだ直流等から適宜な手段により補助制御装置310の動作に必要な電源を生成し、電源線P
LCTRを通じて給電する。
以上のような単相電力変換器306の構成や動作については、例えば特許文献2に記載されている。
【0012】
前述した
図21の電力変換装置201は、交流負荷としての電動機203を駆動するものであるのに対し、
図24は、第2の従来技術として、各相の出力端を電源系統側に接続し、周波数変動や無効電力の補償等を目的として使用される電力変換装置の構成を示している。
図24において、204は電力変換装置、205は電力変換装置204と電源系統との間で電圧の変換や絶縁を行うための変圧器である。
【0013】
406は、電力変換装置204全体を制御する主制御装置である。この主制御装置406は、地絡故障検出器402や各相の電流検出器403〜405が接続されることや、光ファイバー64U1〜64U3,64V1〜64V3,64W1〜64W3を介して各相の単相電力変換器が接続される点は
図21と同様であるが、各相の単相電力変換器は、U相がCNV−U1〜CNV−U3、V相がCNV−V1〜CNV−V3、W相がCNV−W1〜CNV−W3であり、これらの単相電力変換器は、以下の
図25,
図26に説明するように内部の構成が
図22,
図23と異なっている。
【0014】
図25は、電力変換装置204に適用される単相電力変換器の一例を示す単相2レベル変換器の構成図である。同図において、311は単相電力変換器、312はスイッチング素子をIGBTとした単相2レベル変換器であり、4個のIGBTのスイッチングと各部の還流ダイオードとのオンオフにより、直流を任意の電圧及び周波数の交流に変換して交流出力端x−y間に出力すると共に、P−N間の直流電圧を所定値に保つように動作する。
【0015】
313は、単相2レベル変換器312のみを制御する補助制御装置であり、
図24の主制御装置406により演算した情報を、光ファイバー64を通じてシリアル受信光−電気変換モジュールSRから取り込み、この情報に基づく演算結果により単相2レベル変換器312のIGBTをスイッチングする。314は補助制御装置313の制御電源であり、P−N間から取り込んだ直流等から適宜な手段により補助制御装置313の電源を生成し、電源線P
LCTRを通じて給電する。
以上のような単相電力変換器311の構成及び動作については、例えば非特許文献1に記載されている。
【0016】
図26は、電力変換装置204に適用される単相電力変換器の一例を示す単相3レベル変換器の構成図である。同図に示す単相電力変換器315において、316はスイッチング素子をIGBTとした単相3レベル変換器であり、8個のIGBTのスイッチングと各部の還流ダイオードとのオンオフにより、直流を任意の電圧及び周波数の交流に変換して交流出力端x−y間に出力すると共に、P−N間の直流電圧を所定値に保つように動作する。
【0017】
317は単相3レベル変換器316のみを制御する補助制御装置であり、
図24の主制御装置406により演算した情報を光ファイバー64を通じてシリアル受信光−電気変換モジュールSRから取り込み、この情報に基づく演算結果により8個のIGBTをスイッチングする。318は補助制御装置317の制御電源であり、P−N間から取り込んだ直流等から適宜な手段により補助制御装置317用の電源を生成し、電源線P
LCTRを通じて給電する。
【0018】
以上のように、電源系統に連系させて周波数変動や無効電力を補償するための電力変換装置において、単相3レベル変換器を適用する構成については、例えば特許文献3に記載されている。
【0019】
さて、
図21や
図24に示した地絡故障検出器402は、一般に地絡継電器(または地絡リレー、もしくは単に地絡検出器)と呼ばれる電力機器の保護装置であり、主回路側の電位である中性点Oや、これとほぼ同電位である接地端子E、接地線、接地点Gと絶縁された電源によって動作する。このため、断線等の何らかの理由によって地絡故障検出器に接続された接地線が接地点Gから切り離されると、地絡故障検出器には主回路側の非常に高い電位がそのまま印加される。
このような状態が発生しても安全が確保されるように、地絡故障検出器の電源には十分な絶縁耐圧(高耐圧)を持った電源を使用する必要がある。しかし、一般に高耐圧の電源は非常に高価であり、大型となる。更に、この種の電源は製作も難しいため、納期が長くなる等、別の問題もある。
【0020】
上述した問題を解決する手段として、
図27に示すような電動機駆動システムを対象として、高耐圧の電源が不要な地絡故障検出器を使用する方法がある。
同図に示す電力変換装置201’において、501は地絡故障検出器、502は主制御装置、63は光ファイバーであり、他の記号については
図21と同様の記号を用いて説明を省略する。なお、
図27では、
図21における各検出器や信号線、光ファイバー等を省略し、説明に必要な部分のみを図示することによって簡略化している。
【0021】
図28は地絡故障検出器501の詳細な構成を示したものである。同図において、51は整流回路、53は間欠信号発生回路、54はE−O(電気−光)変換回路、R1,R2は地絡電流を制限するための制限抵抗、ZDは定電圧ダイオード、C1はコンデンサである。また、主制御装置502内の55はO−E(光−電気)変換回路である。
【0022】
次に、この地絡故障検出器501の動作について説明する。
図27において何らかの原因で電力変換装置201’に地絡が発生すると、中性点Oから接地端子Eを経由して接地点Gに向かう電流I
Gが流れる。この電流I
Gは、
図28の地絡故障検出器501の抵抗R1,R2によって大きさが制限された電流であり、例えば、
図29(1)に示す電流I
Gのような波形となる。
電流I
Gが流れたことにより、抵抗R2の両端には検出器本体に対する入力電圧V
inが発生し、抵抗R1,R2の接続点から電流I
Gの一部が検出器本体に電流I1として流れ込む。この状態で、電流I1は整流回路51により整流されてコンデンサC1が充電され、
図29(2)のように電源電圧V
ccが上昇して最終的にはV
g2で示すような一定値に到達する。
【0023】
このようにしてコンデンサC1が充電される過程において、電源電圧V
ccが、
図29(2)のV
g1で示すように回路動作に必要な基準電圧に達すると、
図28の間欠信号発生回路53から、
図29(3)に示すごとく、周期ΔTで一時的に論理値が“1”となる間欠信号S
intが出力され、後段のE−O変換回路54に入力される。
このE−O変換回路54は、間欠信号S
intの論理値が“1”のときに内部の発光素子が点灯状態となって光信号を出力し、この光信号が光ファイバー63を介して監視側の主制御装置502に送られ、O−E変換回路55により電気信号に変換されることで地絡故障を検知することができる。ここで、上記間欠信号S
intは、
図30に示す如く、周期ΔTにおいて論理値“1”の期間T1が論理値“0”の期間T2より十分短いほど消費電力の低減に効果的である。
【0024】
以上のように、高耐圧の電源が不要な地絡故障検出器を使用する電力変換装置は、例えば特許文献4に記載されている。この特許文献4においては、
図27,
図28に示したように、地絡電流を電源として地絡故障検出器を動作させ、検出した地絡故障信号を光ファイバーにより出力することで高耐圧の電源を不要とし、結果として大きさやコストを低減している。
【0025】
次に、
図31は、単相直列多重変換器を3相分備えた電力変換装置101を用いて3相の電動機203を駆動する電動機駆動システムに、従来技術の状態検出装置を適用した例である。
【0026】
ここで、一相分の単相直列多重変換器は、3台の単相電力変換器を直列多重接続することにより構成される。すなわち、前記同様に、U相の単相直列多重変換器は、単相電力変換器INV−U1〜INV−U3により構成され、V相の単相直列多重変換器は、単相電力変換器INV−V1〜INV−V3により構成され、W相の単相直列多重変換器は、単相電力変換器INV−W1a〜INV−W3により構成されている。
【0027】
図31において、1は電力変換装置101の全体を制御するための主制御装置、2は状態検出装置、R
DIGは地絡電流を検出するために電力変換装置101の中性点Oと接地端子Eとの間に接続された電流検出手段としての抵抗素子、R
DIUはU相電流を検出するために中性点OとU相の単相電力変換器INV−U1の交流出力端xとの間に接続された抵抗素子、同様に、R
DIV,R
DIWはそれぞれが中性点OとV相の単相電力変換器INV−V1、W相の単相電力変換器INV−W1aの出力端xとの間に接続された抵抗素子である。なお、W相の単相電力変換器INV−W1aは、電源線P
SDを介して状態検出装置2に電源を供給する機能を備えている。
また、64U1〜64U3,64V1〜64V3,64W1〜64W3は、状態検出装置2と単相電力変換器INV−U1〜INV−U3,INV−V1〜INV−V3,INV−W1a〜INV−W3との間にそれぞれ接続された光ファイバーである。
【0028】
抵抗素子R
DIG,R
DIU,R
DIV,R
DIWの両端電圧V
DIG,V
DIU,V
DIV,V
DIWは、状態検出装置2に入力されている。この状態検出装置2からは、後述する
図34によって説明するように、前記の両端電圧V
DIG,V
DIU,V
DIV,V
DIWに対してAD(アナログ−ディジタル)変換、ディジタル−シリアル変換、E−O(電気−光)変換等を行って得た光信号S
IGL,S
IUL,S
IVL,S
IWLが出力され、これらの光信号S
IGL,S
IUL,S
IVL,S
IWLは、光ファイバー41a〜41dを介して主制御装置1に入力されている。
【0029】
図32は、
図31の電力変換装置101に適用される単相電力変換器102の一例を示す構成図である。同図において、ダイオード整流回路302及び単相2レベル変換器(単相2レベルインバータ)303の構成は、
図22に示したものと同様であるため、説明を省略する。
【0030】
図32における304は、単相2レベル変換器303の主回路を制御する補助制御装置であり、
図31の主制御装置1により演算した情報を、光ファイバー64を介してシリアル受信光−電気変換モジュールSRから取り込み、この情報に基づく演算結果により単相2レベル変換器303のIGBTをスイッチングする。また、3は補助制御装置304の制御電源であり、交流入力端a,b,cから取り込んだ交流、または直流中間回路のP−N間から取り込んだ直流等から適宜な手段により補助制御装置304の動作に必要な電源を生成し、電源線P
LCTRを介して補助制御装置304に給電する。
【0031】
更に、制御電源3は、
図31における状態検出装置2の動作に必要な電源を生成し、電源線P
SD及び電源供給端子PSを介して状態検出装置2内の後述する電源回路21に給電している。制御電源3、電源線P
SD、電源供給端子PS、及び状態検出装置2内の電源回路21により給電手段を構成している。
ここで、状態検出装置2内の電源回路21には、少なくとも1台の単相電力変換器102(例えば、前述した
図31の単相電力変換器INV−W1a)内の制御電源3から給電すれば良い。
【0032】
次に、
図33は
図31の電力変換装置101に適用される単相電力変換器103の一例を示す単相3レベル変換器の構成図である。同図において、ダイオード整流回路307及び単相3レベル変換器(単相3レベルインバータ)308の構成は、
図23に記載したものと同様であるため、説明を省略する。
図33において、309は補助制御装置、5は補助制御装置309の制御電源であり、
図32の制御電源3と同様の方法で補助制御装置309の動作に必要な電源を生成し、電源線P
LCTRを通じて給電すると共に、状態検出装置2の動作に必要な電源を生成し、電源線P
SD及び電源供給端子PSを介して状態検出装置2の電源回路21に給電する。
図32と同様に、状態検出装置2内の電源回路21には、少なくとも1台の単相電力変換器103内の制御電源5から給電すれば良い。
【0033】
図34は、状態検出装置2の内部構成図である。同図において、11a〜11dは電圧変換回路、12a〜12dはAD変換回路、13a〜13dはAD変換回路12a〜12dを制御するためのAD変換制御回路、14a〜14dはAD変換回路12a〜12dの出力信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路、15a〜15dはシリアル変換回路14a〜14dから出力されたシリアル信号(電気信号)を光信号に変換して光ファイバー41a〜41dに出力するE−O(電気−光)変換回路、21は電源線P
SDを介して前記単相電力変換器102または103の電源供給端子PSに接続された電源回路、C1は電源回路21の出力側に接続された蓄電素子としてのコンデンサである。
【0034】
上記構成において、電圧変換回路11a〜11d、AD変換回路12a〜12d及びAD変換制御回路13a〜13dはディジタル信号演算手段を構成し、シリアル変換回路14a〜14dはシリアル変換手段を構成し、E−O変換回路15a〜15dは電気−光変換手段を構成している。
【0035】
図31における地絡電流I
Gの検出動作では、中性点Oから抵抗素子R
DIGを通って接地端子E、接地点Gへ流れる電流I
Gを抵抗素子R
DIGの両端電圧V
DIGとして検出し、状態検出装置2に入力する。電流I
Gと電圧V
DIGとの関係は、V
DIG=I
G×R
DIGである。この電圧V
DIGは状態検出装置2に入力され、
図34の電圧変換手段11aにより電圧V
IGに変換されてAD変換回路12aに入力される。
電圧変換手段11aには、オペアンプを備えた反転増幅回路または非反転増幅回路が使用されており、この増幅回路に取り付けられた抵抗によって決まる変換ゲインG
DIGで電圧V
DIGを電圧V
IG(=V
DIG×G
DIG)に変換する。
【0036】
図34のAD変換制御回路13aは、
図35(1)に示すAD変換制御信号C
IGとして、予め設定された一定の周期Tで “1”の状態をパルス出力する回路であり、フリーランタイマ機能を実現するロジック回路のディジタルカウンタ等によって構成されている。AD変換回路12aは、
図35(2)のように、AD変換制御信号C
IGが“1”の状態になるとアナログ信号をディジタル信号に変換する処理を開始し、
図35(3)に示すごとく、変換時間T
CHGの経過後に変換結果をディジタルデータD
IGとして出力する。
【0037】
AD変換回路12aからディジタルデータD
IGが出力されると、
図35(4)に示すごとく、予め設定された遅延時間T
DLYの経過後にシリアル変換回路14aがディジタルデータD
IGをパラレル−シリアル変換し、「※1」で示すようなシリアル信号S
IGとして出力する。ここで、送信側となるシリアル変換回路14aが出力するデータの伝送形式は、受信側の仕様に合わせれば良い。
【0038】
例えば、シリアル信号にUART方式を採用する場合には、上記「※1」の部分は
図36に示すような伝送形式の波形となる。なお、
図36(4’)はクロック信号S
CLKを示し、
図36(4)は
図35(4)の「※1」の部分を拡大したシリアル信号S
IGを示している。
図36(4)のシリアル信号S
IGにおいて、D0〜D7は実際のディジタルデータであり、STはUART信号の先頭を示すスタートビット、SPはUART信号の最後を示すストップビット、PRはディジタルデータD0〜D7のパリティチェック結果である。8ビットのデータを送る場合はこの波形の通りで良いが、8ビットを超えるデータの場合は、
図36における(1)〜(11)の波形を送信した後、(12)の部分から繰り返して(1)〜(11)の波形を出力するようにし、データを8ビット単位に分割して必要な回数だけ送信すれば良い。
【0039】
図34のE−O変換回路15aは、シリアル変換回路14aから出力された電気信号としてのシリアル信号S
IGを光信号S
IGLに変換して送信する。
光ファイバー41aを通して光信号S
IGLを受信した
図31の主制御装置1は、E−O変換回路15aとは逆に、図示されていないO−E(光−電気)変換回路により光信号を電気信号に変換する。そして、この電気信号をCPU等に取り込み、シリアル変換回路14aと逆のパラレル変換回路(図示せず)にてシリアル信号からパラレル信号に変換することで、AD変換回路12aから出力されたデータを認識する。
【0040】
更に、CPU等の処理により、データの大きさ、すなわち地絡電流I
Gの大きさが故障判別用の閾値を超えた場合は、地絡故障と判定する。こうして地絡故障と判定した場合の処理は、電力変換装置が使用される設備によって様々であるが、例えば電動機駆動用のインバータでは、インバータが出力している周波数及び電圧を徐々に低くして最終的に零とすることで、電動機を減速して停止させる処理となる。また、電源系統に接続されたコンバータの場合は、地絡故障と判定された時間が所定の設定時間を超えて連続したら、コンバータの動作を停止させる処理等となる。
【0041】
図34の状態検出装置2において、U相,V相,W相の負荷電流I
U,I
V,I
Wを検出する処理は地絡電流I
Gの場合とほぼ同様であるため、これらに対する詳細な説明は省略する。なお、地絡電流I
Gは、地絡が発生していない正常時は装置の運転中でも微小な電流が流れるのみであり、地絡故障が検出された場合でも、装置が使用される設備の仕様によっては、運転継続を許容するか、あるいは、停止するまで数十ミリ秒〜数秒、数十秒といった時間の経過を許容することがある。
これに対し、各相を流れる負荷電流I
U,I
V,I
Wについては、装置の仕様で定めた最大電流が常時流れることや、半導体素子を保護するために電流が許容最大値を超える過電流となった場合には直ちに運転を停止しなければならないこと等が、地絡電流I
Gの場合と異なっている。
【0042】
なお、
図31〜
図36を用いて説明した電力変換装置は、本出願人による特願2015−141747に記載されている。この先願発明においては、検出した地絡故障信号を、検出した信号数に応じた数の光ファイバーにより出力することで高耐圧の電源を不要とし、結果として大きさやコストを低減すると共に、状態検出装置の電源を単相電力変換器側から供給することで各変換回路等を動作させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
図21に示した電力変換装置201では、地絡故障検出器だけでなく、用途や目的によって様々な検出器が使用されており、例えば、出力端の電流を制御するためには電流検出器によって電流を常時検出できるようにしなければならない。
この種の用途で使われる電流検出器は、例えばホール素子や絶縁アンプ、シャント抵抗等の検出素子を使用した回路を中心にして構成されるが、何れの構成でも精度良く確実に電流を検出するために、検出素子は、電流が流れる電線や導体板(銅製のブスバー)等、主回路において高電圧が印加されている部分の直近か、または直接接触させるように配置することが必要である。これらの電流検出器から出力された信号は、電流制御のための演算や電流が過大になる状態を防止するため、アナログ信号として瞬時値を主制御装置に取り込んだ後に、AD変換回路によりディジタル信号に変換した結果をCPU等に取り込んで演算処理に使用している。
【0046】
ここで、電流検出器を動作させるための電源と、検出したアナログ信号とは、共に主制御装置と電気的に接続する必要があるので、主制御装置と電流検出器との間には、電力変換装置の中で最も電圧が高い部分に対応した高耐圧の絶縁が必要となる。一般的には、電流検出器側で高耐圧の絶縁を確保するための処理が施されるが、このような処理が施された電流検出器は非常に高価で大型となるだけでなく、納期も長くなる。
【0047】
また、高圧の電力変換装置においてIGBT等の半導体素子をスイッチング動作させると、スイッチング時の急激な電圧の変化によって非常に大きなサージ電圧が発生する。このサージ電圧は制御装置の誤動作を引き起こす恐れがあるノイズの原因となるが、制御装置とこれに電気的に接続された電流検出器との間では、電源線やアナログ信号の検出線にノイズが侵入しやすくなり、結果として制御装置が誤動作する確率が高くなるという別の問題も生じていた。
【0048】
上述した課題に対し、
図31に示した電力変換装置によれば、検出器を1台に集約すると共に、高耐圧の絶縁を要する電源を不要とし、ノイズの侵入を防止して制御装置等の誤動作を防止するほか、検出するべき状態量としての電流等の大きさに関わらず、安定な検出動作が可能である。しかし、光ファイバーと、光信号の伝送に必要なE−O変換回路及びO−E変換回路が検出信号の数だけ必要になるため、装置の小型化やコストの低減等の点で改善の余地がある。
【0049】
また、電動機駆動用の電力変換装置では、センサレスベクトル制御や瞬停再起動制御等の制御方式を適用する際、電力変換装置の出力電圧を検出することが良く行われるが、
図31に示した電力変換装置では、地絡故障検出器や出力電流検出器が設けられているものの、各相の出力電圧検出器については考慮されていなかった。
【0050】
更に、電流検出器としてシャント抵抗等の抵抗素子を使用する場合には、温度変化による抵抗値変化の影響を無視できないことがある。また、ホール素子等と組み合わされた電子回路内内蔵の検出器を使用すれば温度変化の影響を軽減できるが、高精度な制御を実現する場合には、やはり温度変化の影響を無視できない場合がある。この温度変化への対策としては、温度検出素子を別個に取り付ける方法があるが、その場合は個々の電流検出器に取り付ける必要があるため、温度検出素子の数が多くなってしまう。
【0051】
また、
図21に示したような電力変換装置は製作から数十年に渡って使用され続けることが多く、途中で制御装置(主制御装置、補助制御装置の何れか一方、または両方)は保守の一環として交換する場合がある。制御装置の交換時期に合わせて検出器も交換することもあるが、検出器が電力変換装置の構造品として一体となるように設計されている場合には、検出器のみの交換は困難である。また、検出器を交換すると制御性能が変化し、場合によっては悪化することがある。これを防ぐためには、時間を要する調整試験が必要になる等の問題があり、このような背景から既存の検出器をそのまま継続して使用することが多い。
制御装置を交換しても既存の検出器を使用すれば制御性能が変化することはないが、交換後の制御装置では既存の検出器も考慮して全体を設計・製造する必要があり、余計な労力、時間、コストがかかるという別の問題を生じていた。
【0052】
また、
図21の電力変換装置では、状態検出装置の電源を主回路の単相電力変換器から供給することで検出器の耐圧を低くすることが可能であるが、この方式によると、主回路側に故障が発生した場合に電源を供給できなくなる恐れがあった。
更に、電力変換装置の制御装置にはCPU等の演算素子が搭載されており、この演算素子に書き込まれたソフトウェア(プログラム)は所定の演算周期で動作するようになっている。状態検出装置の検出動作を主制御装置側の演算と非同期にする場合は、状態検出装置側の演算周期を主制御装置側のソフトウェアの演算周期より十分速くする必要があり、このようにすると、シリアル伝送の伝送速度を非常に高くする必要が生じると共に、主制御装置側の受信容量を必要以上に大きくしなければならない等の別の問題が発生する。
【0053】
そこで、本発明の解決課題は、上述した種々の問題を解消し、装置の小型化、低コスト化を図ると共に、動作の安定性、信頼性に優れた状態検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0054】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、n(nは1以上の整数)台の単相電力変換器からなり、かつ、n=1の時には単相電力変換器の2つの交流出力端を第1、第2の交流出力端とし、n=2以上の時にはn台の単相電力変換器の交流出力側の直列接続回路の始点及び終点に位置する2つの交流出力端を第1、第2の交流出力端とした単相電力変換ユニットを構成し、
m(mは2以上の整数)台の前記単相電力変換ユニットの前記第1の交流出力端を共通接続して中性点とし、m台の前記単相電力変換ユニットの前記第2の交流出力端が同一の交流負荷または交流電源の各相にそれぞれ接続されると共に、前記単相電力変換器を制御する主制御装置を備えた電力変換装置を対象として、前記電力変換装置の電気的状態を監視するための状態検出装置において、
前記中性点と接地点との間に取り付けられた第1の検出手段と、
前記第1の検出手段から出力されるアナログ信号を第1のディジタル信号に変換して出力する第1のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第1のディジタル信号を第1のシリアル信号に変換して出力する第1のシリアル変換手段と、
少なくとも(m−1)個の前記第1の交流出力端と前記中性点との間に取り付けられた第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるアナログ信号を第2のディジタル信号に変換して出力する第2のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第2のディジタル信号を第2のシリアル信号に変換して出力する第2のシリアル信号変換手段と、
全ての前記アナログ−ディジタル変換手段の変換タイミングを制御するための変換タイミング制御手段と、
全ての前記シリアル変換手段の出力信号の中から一つを選択して出力するシリアル信号選択手段と、
前記シリアル信号選択手段の出力信号を光信号に変換し、前記電力変換装置の状態を示す信号として前記主制御装置に出力する電気−光変換手段と、
前記第1及び第2の検出手段、前記第1及び第2のアナログ−ディジタル変換手段、前記第1及び第2のシリアル変換手段、前記変換タイミング制御手段、前記シリアル信号選択手段、前記電気−光変換手段を含む回路に電源を供給する給電手段と、を備え、
前記給電手段に、何れかの前記単相電力変換器から電源を供給することものである。
【0055】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した状態検出装置において、
m個の前記第2の交流出力端と前記中性点との間に取り付けられた第3の検出手段と、
前記第3の検出手段から出力されるアナログ信号を第3のディジタル信号に変換して出力する第3のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第3のディジタル信号を第3のシリアル信号に変換して出力する第3のシリアル変換手段と、
を更に備え、
前記変換タイミング制御手段は、前記第3のアナログ−ディジタル変換手段を含む全ての前記アナログ−ディジタル変換手段の変換タイミングを制御し、
前記シリアル信号選択手段は、前記第3のシリアル変換手段を含む全ての前記シリアル変換手段の出力信号の中から一つを選択して出力し、
前記給電手段は、前記第3の検出手段、前記第3のアナログ−ディジタル変換手段及び前記第3のシリアル変換手段に対しても電源を供給するものである。
【0056】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した状態検出装置において、
前記検出手段のうち少なくとも一つの検出手段が温度検出手段を備えると共に、
前記温度検出手段から出力されるアナログ信号を第4のディジタル信号に変換して出力する第4のアナログ−ディジタル変換手段と、
前記第4のディジタル信号を第4のシリアル信号に変換して出力する第4のシリアル変換手段と、を更に備え、
前記変換タイミング制御手段は、前記第4のアナログ−ディジタル変換手段を含む全ての前記アナログ−ディジタル変換手段の変換タイミングを制御し、
前記シリアル信号選択手段は、前記第4のシリアル変換手段を含む全ての前記シリアル変換手段の出力信号の中から一つを選択して出力し、
前記給電手段は、前記第4のアナログ−ディジタル変換手段及び前記第4のシリアル変換手段に対しても電源を供給するものである。
【0057】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載した状態検出装置において、前記
第1の検出手段または前記第2の検出手段のうち少なくとも一つの検出手段を複数の抵抗素子により構成し、これらの抵抗素子のうち前記電力変換装置の中性点に最も近い抵抗素子から電圧を検出するものである。
【0058】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載した状態検出装置において、
m台の前記単相電力変換ユニットの前記第2の交流出力端と前記交流負荷または交流電源の各相との間にそれぞれ接続された第5の検出手段と、
前記第5の検出手段に電源を供給する給電手段と、を更に備え、
前記第2のアナログ−ディジタル変換手段は、前記第5の検出手段から出力されるアナログ信号を前記第2のディジタル信号に変換するものである。
【0059】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載した状態検出装置において、前記給電手段に、前記単相電力変換器以外の系統から電源を供給するものである。
【0060】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載した状態検出装置において、
前記主制御装置から出力された光信号を電気信号に変換し、この電気信号を前記変換タイミング制御手段に対する動作制御信号として出力する手段を更に備えたものである。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、状態検出装置の電源を、電力変換装置を構成する何れかの単相電力変換器、または主制御装置やその電源から電力変換装置の保護や制御に必要な検出機能を全て備えた状態検出装置に1系統のみ供給するだけでよい。このため、主制御装置と状態検出装置との間には、電力変換装置の主回路電位に対応した高耐圧の絶縁を要する電源や検出器が不要となるか、仮に必要な場合でも少数の検出器で済むので、小型かつ安価な状態検出装置を提供することができる。
【0062】
また、状態検出装置と主制御装置との間は光ファイバーによって接続可能であり、電気的に接続しなければならない電源線や検出線が不要になる。このため、電源線や検出線を通って主制御装置にノイズが侵入することがなくなり、結果的に電力変換装置を安定に動作させることができる。
更に、本発明では電力変換装置の制御に必要となる地絡、出力電流、出力電圧等を検出する検出器を1台の状態検出装置に集約できるので、様々な機能を搭載することにより大型で高コストとなる主制御装置の回路やプリント基板等の設計及び構造の簡略化が可能になる。
そして、検出器としてシャント抵抗等の温度変化の影響を受け易い素子を使用する場合でも、その温度を検出することで補正も容易となり、安価なシャント抵抗でも高精度の制御を実現することができる。
【0063】
また、通常の制御装置の交換では、既存の検出器を考慮して主制御装置を設計・製作する必要があるが、本発明によれば、既存の検出器を考慮するのは状態検出装置の部分のみでよいため、設計・製作を簡略化することができる。更に、電源としては主回路の単相電力変換器から給電する方式のほか、必要に応じて主制御装置等の他の系統からも給電できるため、主回路側の故障により給電できない場合にも対応可能であり、装置の信頼性を向上することができる。
【0064】
加えて、主制御装置の演算周期と状態検出装置の動作周期とが非同期である場合でも、状態検出装置が主制御装置から出力された信号を光ファイバー経由で取得可能にしたことで、状態検出装置の動作周期を主制御装置の演算周期と同期させて制御することができる。これにより、結果としてシリアル伝送の速度を必要以上に速くする必要がなくなり、主制御装置側の受信容量を減少させて制御演算を含めた動作を安定化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る状態検出装置を備えた電動機駆動システムの構成図である。この電動機駆動システムは、
図21や
図31と同様に、各相が3台の単相電力変換器からなる直列多重変換器によって構成された電力変換装置105により、3相の電動機203を駆動するものである。
【0067】
図1において、105は電力変換装置、211は、単相電力変換器INV−U1〜INV−U3,INV−V1〜INV−V3,INV−W1〜INV−Wからなる3相分の直列多重変換器を備えた主回路部である。ここで、各相の直列多重変換器は請求項における単相電力変換ユニットを構成している。
また、1aは電力変換装置105の全体を制御するための主制御装置、2aは状態検出装置、R
DIGは地絡電流を検出するために電力変換装置の中性点Oと接地端子Eとの間に接続された抵抗素子、R
DIUはU相電流を検出するために中性点Oと単相電力変換器INV−U1の交流出力端xとの間に接続された抵抗素子、同様に、R
DIV及びR
DIWは、それぞれが中性点OとV相単相電力変換器INV−V1及び単相電力変換器INV−W1aの出力端xとの間に接続されたV相電流検出用、W相電流検出用の抵抗素子である。なお、
図31と同様に、単相電力変換器INV−W1aは、電源線P
SDを介して状態検出装置2aに対する電源を供給する機能を備えている。
他の構成要素については、
図21または
図31と同一の記号を付して説明を省略する。
【0068】
次に、
図2は
図1における状態検出装置2aの構成図である。
図2において、11aは、地絡電流を検出するための電圧変換回路、11b〜11dはU相〜W相の電流を検出するための電圧変換回路、12aは電圧変換回路11aの出力電圧をディジタル信号に変換するAD(アナログ−ディジタル)変換回路、12b〜12dは電圧変換回路11b〜11dの出力電圧をディジタル信号にそれぞれ変換するAD変換回路である。
【0069】
また、14aはAD変換回路12aから出力されたディジタル信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路、14b〜14dはAD変換回路12b〜12dから出力されたディジタル信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路である。
16aはAD変換回路12a〜12dを制御するための4つのAD変換制御信号を演算して出力する変換タイミング制御手段としてのAD変換制御回路、17aはシリアル変換回路14a〜14dから出力された4つのシリアル信号のうちの一つを選択して出力するシリアル信号選択回路、15はシリアル信号変換回路17aから出力された電気信号としてのシリアル信号を光信号に変換して光ファイバー41に出力するE−O(電気−光)変換回路である。
更に、21は電源線P
SDに接続された電源回路、C1は電源回路21の出力側に取り付けられた蓄電素子としての平滑コンデンサである。
【0070】
次に、この状態検出装置2aの動作について説明する。
地絡電流I
Gの検出動作では、
図1の中性点Oから接地点Gへ流れる電流I
Gを抵抗素子R
DIGの両端電圧V
DIGとして検出し、状態検出装置2aに入力する。ここで、電流I
Gと電圧V
DIGとの関係は、V
DIG=I
G×R
DIGである。この電圧V
DIGは状態検出装置2aの電圧変換回路11aにより電圧V
IGに変換されてAD変換回路12aに入力される。
電圧変換回路11aには、オペアンプを備えた反転増幅回路または非反転増幅回路が使用されており、この増幅回路に取り付けられた抵抗素子によって決まる変換ゲインG
DIGにより電圧V
DIGを電圧V
IG(=V
DIG×G
DIG)に変換する。
【0071】
次いで、AD変換回路12a、シリアル変換回路14a、AD変換制御回路16a、シリアル信号選択回路17aの動作について、図面を参照しつつ説明する。
図3はAD変換制御回路16aの動作を示す波形図である。
図3(1)CLKは回路を動作させるためのクロック信号、
図3(2)Bit0〜(5)Bit3は4ビット2進カウンタの出力信号であり、
図3(2)Bit0が最下位ビット、
図3(5)Bit3が最上位ビットとなっている。
図3(6)C
IG〜(9)C
IWはAD変換制御回路16aから出力されるAD変換制御信号である。ここで、
図3(6)C
IGは地絡電流の検出結果をAD変換するAD変換回路12aに対する制御信号、
図3(7)C
IU〜(9)C
IWが各相電流の検出結果をAD変換するAD変換回路12b〜12dに対する制御信号である。
【0072】
図4は、AD変換制御回路16aにおける前記4ビット2進カウンタの動作を示す真理値表である。この表の番号(0)〜(15)は、
図3内に付記した(0)〜(15)に対応しており、
図4の10進数の列は4ビット2進カウンタの出力状態を10進数に変換した値である。
4ビット2進カウンタの出力状態は、
図3(1)CLKの立ち上りに同期して、
図3(2)Bit0〜(5)Bit3あるいは
図4に示すように、10進数に換算した値が0〜15の間を1ずつ加算しながら変化し、15の次は0に戻る動作を一周期としてこれを繰り返す。
【0073】
図3(6)のC
IGは、4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で1となった時に“1”が出力されるように、
図4(1)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“0”,Bit2=“0”,Bit3=“0”の条件で論理積をとればよい。同様に、
図3(7)C
IUは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で3となった時に“1”が出力されるように、
図4(3)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“1”,Bit2=“0”,Bit3=“0”の条件とし、
図3(8)C
IVは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で5となった時に“1”が出力されるように、
図4(5)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“0”,Bit2=“1”,Bit3=“0”の条件とし、
図3(9)C
IWは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で7となった時に“1”が出力されるように、
図4(7)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“1”,Bit2=“1”,Bit3=”0“の条件でそれぞれ論理積をとればよい。
以上のようにすることで、4ビット2進カウンタの動作の一周期で、AD変換制御信号として
図3(6)C
IG〜(9)C
IWを1回ずつ出力することができる。
【0074】
次に、
図5はAD変換回路12a及びシリアル変換回路14aの動作を示す波形図である。これらの動作は従来技術とほぼ同様であるが、AD変換制御回路16aから出力される
図5(1)のAD変換制御信号C
IGが“1”になる期間T
Cと
図5(4)のシリアル信号S
IGが出力される期間T
txとを明確にしている。
図5(1)C
IGが“1”になると、
図5(2)変換中に示すようにアナログ−ディジタル変換処理が開始され、変換期間T
CHGの経過後に、変換結果をディジタル信号D
IGとして出力する。
【0075】
図5(1)C
IGが“1”となってAD変換回路12aが動作を開始してからC
IGが“0”となって変換が終了し、
図5(4)S
IGの出力が終わるまでの期間は、変換期間T
CHG、遅延期間T
DLY、シリアル信号出力期間T
txの合計期間となり、この期間がAD変換制御信号C
IGの出力期間T
Cを超えないようにすることで、後段のシリアル信号選択回路17aにおいてシリアル信号同士のタイミングが重ならないようにすることができる。
AD変換回路12aからディジタル信号D
IGが出力されると、
図5(4)に示すように予め設定された遅延期間T
DLYの経過後にシリアル変換回路14aがディジタル信号D
IGをパラレル−シリアル変換し、「※1」に示すようなシリアル信号S
IGを出力する。
以上はAD変換回路12a及びシリアル変換回路14aの動作についての説明であるが、各相の電流検出に用いるAD変換回路12b〜12d、シリアル変換回路14b〜14dについても同様の動作となる。
【0076】
図6は、シリアル信号選択回路17aの動作を示す波形図である。同図の(1)S
IG〜(4)S
IWはAD変換回路12a〜12dから出力されたディジタル信号をシリアル変換回路14a〜14dによりパラレル−シリアル変換して得られたシリアル信号である。
また、
図6における※1〜※4の部分はシリアル信号が出力される様子を示しており、シリアル信号選択回路17aにより選択されたシリアル信号は
図6(5)S
Tの※1〜※4に示すように順番に出力され、次段のE−O変換回路15により電気信号から光信号S
LTに変換されて上位の主制御装置1aに伝えられる。
シリアル信号が出力されるタイミングはAD変換制御信号によって決まり、予めタイミングが重ならないように制御されているので、シリアル信号選択回路17aには論理和回路を用いればよい。
【0077】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図7は、第2実施形態が適用される電動機駆動システムを示しており、第1実施形態と同様に、3相の直列多重変換器によって構成された電力変換装置106により3相の電動機203を駆動するものである。
【0078】
図7において、1bは電力変換装置106の全体を制御するための主制御装置、2bは状態検出装置、R
DVUはU相出力電圧を検出するために中性点Oと単相電力変換器INV−U3の交流出力端yとの間に接続された電圧検出手段としての抵抗素子、同様にR
DVV及びR
DVWはそれぞれが中性点Oと単相電力変換器INV−V3,INV−W3の出力端yとの間に接続されたV相出力電圧検出用及びW相出力電圧検出用の抵抗素子である。また、W相の単相電力変換器INV−W1aは状態検出装置2bに電源を供給する機能を備えている。
他の部分については、
図1と同様の記号を付して説明を省略する。
【0079】
図8は、
図7における状態検出装置2bの構成図である。
同図において、11e〜11gはそれぞれU相〜W相の出力電圧を検出するための電圧変換回路、12e〜12gは電圧変換回路11e〜11gの出力信号をディジタル信号に変換するAD変換回路、14e〜14gはAD変換回路12e〜12gの出力信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路、16bはAD変換回路12a〜12gを制御するための7つのAD変換制御信号を演算して出力する変換タイミング制御手段としてのAD変換制御回路、17bはシリアル変換回路14a〜14gから出力された7つのシリアル信号のうちの一つを選択して出力するシリアル信号選択回路である。
他の部分については、
図2と同様の記号を付して説明を省略する。
【0080】
図9は、AD変換制御回路16bの動作を示す波形図である。
図9(6)C
IG〜(12)C
VWはAD変換制御回路16bから出力されるAD変換制御信号である。このうち、
図9(10)C
VU〜(12)C
VWが各相出力電圧の検出結果をAD変換するAD変換回路12e〜12gに対する制御信号であり、他の
図9(1)〜(9)の信号については
図3と同様である。
【0081】
次に、AD変換制御回路16bにより
図9(10)C
VU〜(12)C
VWを出力させるための動作について説明する。
図9(10)C
VUは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で9となった時に“1”が出力されるように、
図4(9)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“0”,Bit2=“0”,Bit3=“1”の条件で論理積をとればよい。同様に、
図9(11)C
VVは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で11となった時に“1”が出力されるように、
図4(11)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“1”,Bit2=“0”,Bit3=“1”の条件で論理積をとればよく、
図9(12)C
VWは4ビット2進カウンタの出力が10進数換算で13となった時に“1”が出力されるように、
図4(13)に示す如くBit0=“1”,Bit1=“0”,Bit2=“1”,Bit3=“1”の条件で論理積をとればよい。
図9の波形から明らかなように、シリアル信号選択回路16bを含めた状態検出装置2bの動作は第1実施形態の状態検出装置2aに対して検出数が増加した構成であり、増加した部分は第1実施形態と類似した動作になるので、詳細な説明は省略する。
【0082】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図10は、この第3実施形態が適用される電動機駆動システムを示しており、第1,第2実施形態と同様に、3相の直列多重変換器によって構成された電力変換装置107により3相の電動機203を駆動するものである。
【0083】
図10において、1cは電力変換装置107の全体を制御するための主制御装置、2cは状態検出装置、RT
DIUはU相電流を検出するために中性点Oと単相電力変換器INV−U1の交流出力端xとの間に接続された温度検出機能付きの抵抗素子、同様にRT
DIV及びRT
DIWはそれぞれが中性点Oと単相電力変換器INV−V1,INV−W1aの出力端xとの間に接続された温度検出機能付きのV相電流検出用及びW相電流検出用の抵抗素子である。また、RT
DIGは中性点Oと接地端子Eとの間に接続された地絡電流検出用の温度検出機能付きの抵抗素子である。
他の部分については、
図1,
図7と同様の記号を付して説明を省略する。
【0084】
図11は、
図10における状態検出装置2cの構成図である。
図11において、11hは地絡電流を検出するための抵抗素子の温度検出に用いられる電圧変換回路、11i〜11kはU相〜W相の電流を検出するための抵抗素子の温度検出に用いられる電圧変換回路、12hは電圧変換回路11hの出力信号をAD変換するAD変換回路、12i〜12kは電圧変換回路11i〜11kの出力信号をAD変換するAD変換回路、14hはAD変換回路12hの出力信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路、14i〜14kはAD変換回路12i〜12kの出力信号を伝送に必要なシリアル信号に変換するシリアル変換回路である。
また、16cはAD変換回路12a〜12kを制御するための8つのAD変換制御信号を演算して出力する変換タイミング制御手段としてのAD変換制御回路、17cはシリアル変換回路14a〜14kから出力された8つのシリアル信号のうちの一つを選択して出力するシリアル信号選択回路である。他の部分については、
図2,
図8と同様の符号を付して説明を省略する。
【0085】
図10に示した電流検出手段としての抵抗素子RT
DIG,RT
DIU,RT
DIV,RT
DIWに取り付ける温度検出素子としては、温度によって抵抗値が変化する白金等を使用した測温抵抗体、半導体を使用したサーミスタ、熱電対等が利用可能であるが、高精度かつ高速な演算に使用される電流検出用の抵抗素子は温度変化に対しても速い応答が必要であることから、サーミスタが適していると言える。また、サーミスタにも様々な種類があるが、温度と抵抗値との関係を簡単な近似式によって表すことができ、温度の上昇と共に抵抗値が単調に減少する負の温度特性を有するNTC(negative temperature coefficient)サーミスタが最適である。
【0086】
図12は、
図11における電圧変換回路11hの構成図である。
図12において、Q
1は演算増幅器、R
1,R
2は演算増幅器Q
1と組み合わせて非反転増幅器を構成するための設定抵抗、RP
TIGは地絡電流検出用の抵抗素子RT
DIGに取り付けられたNTCサーミスタ(図示せず)に給電するための給電抵抗である。
電圧変換回路11hでは、電源電圧V
ccを給電抵抗RP
TIGの固定抵抗値と温度により変化するNTCサーミスタの抵抗値とにより分圧して得られる電圧を非反転増幅器が増幅し、検出温度に対応する電圧V
TIGとして出力する。この電圧(アナログ信号)V
TIGは、
図11のAD変換制御回路16cから出力されるAD変換制御信号C
TIGに従ってAD変換回路12hによりディジタル信号D
TIGに変換される。そして、このディジタル信号D
TIGをシリアル変換回路14hによりシリアル信号S
TIGに変換し、シリアル信号選択回路17cを経由してE−O変換回路15により光信号に変換した後、光ファイバー41を介して主制御装置1cに伝送する。
なお、AD変換制御回路16cの動作は、第2実施形態におけるAD変換制御回路16bと同様にすればよい。
【0087】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図13は地絡電流I
Gを検出するための抵抗素子群の構成図であり、例えば第1実施形態や第2実施形態の抵抗素子R
DIGとして用いることができる。
図13(a),(b)において、直列接続された抵抗素子R
DIG1,R
DIG2は、電力変換装置の中性点Oと接地点Gとの間に接続される。同図(a)は地絡電流I
Gに対応する電圧V
DIGを中性点O側の抵抗素子R
DIG1の両端から取り出し、同図(b)は接地点G側の抵抗素子R
DIG2の両端から取り出している。取り出した電圧V
DIGは、状態検出装置の地絡電流の検出部に入力される。
【0088】
また、
図14(a),(b)はU相出力電圧を検出する電圧検出手段としての抵抗素子群の構成図であり、直列接続された抵抗素子R
DVU1,R
DVU2はそれぞれ電力変換装置の中性点O側とU相出力端側に配置されている。中性点OとU相出力端との間のU相出力電圧は、直列接続された抵抗素子R
DVU1,R
DVU2によって分圧され、この分圧された電圧を
図14(a)では中性点O側の抵抗素子R
DVU1の両端から取り出し、
図14(b)ではU相出力端側の抵抗素子R
DVU2の両端から取り出す。そして、取り出した電圧をV
DVUとして状態検出装置のU相出力電圧の検出部に入力する。
なお、V相,W相出力電圧についても、
図14(a),(b)と同様の方法によって検出することができる。
【0089】
図13の構成では、中性点O側の抵抗素子R
DIG1の値を接地点G側の抵抗素子R
DIG2の値より小さくし、
図14の構成では、中性点O側の抵抗素子R
DVU1の値をU相出力端側の抵抗素子R
DVU2の値より小さくすることで、状態検出装置に入力される電圧は中性点Oを基準とした値だけ考慮すればよいため、回路を簡略化することができる。
【0090】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図15は、第5実施形態が適用される電動機駆動システムを示しており、前記同様に、3相の直列多重変換器によって構成された電力変換装置108により3相の電動機203を駆動するものである。
図15において、1dは主制御装置、2dは状態検出装置、403,404,405は
図21と同様に各相の電流検出器である。他の部分については、
図1,
図7等と同様の記号を付して説明を省略する。
【0091】
図16は、
図15における状態検出装置2dの構成図である。
図15,
図16の状態検出装置2d内に付した番号(1)〜(6)に関し、(1)はU相の電流検出器403に電源を供給するためのU相給電部、(2)はU相の電流検出器403から出力される検出信号を入力するためのU相電流検出部である。同様に、番号(3),(5)はそれぞれV相,W相の電流検出器404,405に対するV相給電部及びW相給電部であり、番号(4),(6)はそれぞれV相,W相の電流検出器404,405から出力される検出信号を入力するためのV相電流検出部及びW相電流検出部である。
【0092】
また、22は、電源回路21の出力側のコンデンサC1を介して電源電圧V
ccが供給される電源回路、C2は電源回路22の出力電圧V
PCTが印加される蓄電素子としてのコンデンサである。ここで、電源回路22には、3端子レギュレータやDC/DCコンバータ等の電圧調整機能を有する回路を使用することができ、この電源回路22の出力電圧V
PCTを各相の電流検出器用の給電部(1),(3),(5)に供給している。
図16のU相電流検出部(2)では、U相の電流検出器403の検出信号が電圧V
CTIUとして状態検出装置2dに入力され、電圧変換回路11bにより電圧V
IUに変換された後は、
図2等と同様の動作になるため詳細な説明は省略する。V相電流検出部(4),W相電流検出部(6)についても、U相電流検出部(2)と同様の動作である。
【0093】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
図17は、第6実施形態が適用される電動機駆動システムを示しており、前記同様に、3相の直列多重変換器によって構成された電力変換装置109により3相の電動機203を駆動するものである。
図17において、1eは主制御装置、2eは状態検出装置であり、主制御装置1eは状態検出装置2eに電源を供給可能となっている。他の部分については、
図1,
図7等と同様の記号を付して説明を省略する。
【0094】
この第6実施形態では、主制御装置1eから電源線P
SD1を介して給電される電圧が電源トランス31により絶縁され、電源線P
SD2を介して状態検出装置2eに供給される。給電経路の途中に電源トランス31があることから、電源は周波数成分を持った交流やパルス状の繰り返し波形となり、一般に電源トランスは周波数成分が高いほど小型にできるため、高周波の電源トランスを用いることが望ましい。
図17では、独立した単体の電源トランス31を使用する構成となっているが、電源トランスを主制御装置1eや状態検出装置2eの基板や筐体に取り付けて一体化してもよい。
【0095】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態を説明する。
図18は、第7実施形態が適用される電動機駆動システムを示しており、前記同様に、3相の直列多重変換器によって構成された電力変換装置110により3相の電動機203を駆動するものである。
図18において、1fは状態検出装置2fに対するシリアル信号の送信機能を備えた主制御装置、2fは主制御装置1fから送信されたシリアル信号の受信機能を備えた状態検出装置、42は光ファイバーである。
図18の他の部分については、
図1,
図7等と同様の記号を用いて説明を省略する。
【0096】
図19は、
図18における状態検出装置2fの構成図である。
図19において、42は主制御装置1fから送信されたシリアル信号S
LRを状態検出装置2fに伝送するための光ファイバー、20は光信号を電気信号に変換するO−E変換回路、18aはO−E変換回路20の出力を受けて動作する変換タイミング制御手段としてのAD変換制御回路である。
図18の他の部分については、
図2,
図8等と同様の記号を用いて説明を省略する。
【0097】
前述した第1実施形態のような構成では、検出した電流や電圧をAD変換する際の周期を一定とし、主制御装置のCPU側の演算周期と非同期としている。このため、例えばAD変換回路の変換動作をCPUの演算周期の10倍にする等、十分に速くする必要があった。
アナログ信号から変換されたディジタル信号は、AD変換のたびにシリアル信号に変換し、光ファイバーを通じて主制御装置のCPU側に伝送しなければ意味がないので、結果として、AD変換回路の変換動作に合わせて全体の動作を速くする必要があった。
【0098】
これに対し、本実施形態による
図18、
図19の構成を用いることで、状態検出装置2fは主制御装置1fが出力した信号を受け取ることが可能になる。例えば、図面には示されていない方法で主制御装置1fのCPUが演算を開始するタイミングをパルス信号とし、主制御装置1f内でE−O変換して光信号S
LRを送信する。この光信号S
LRは光ファイバー42を通じて状態検出装置2fにより受信され、O−E変換回路20にて電気信号S
Rに変換される。この電気信号S
Rを受けたタイミングで、AD変換制御回路18aが動作するようにすればよい。
上記のような構成、機能を備えることにより、状態検出装置2f内のAD変換回路12a〜12dによる変換動作を主制御装置1f側のCPUの演算周期に同期させることができる。
【0099】
図20は、
図19のAD変換制御回路18aの動作を説明するための波形図である。
AD変換制御回路18aは、初期状態で内部の4ビット2進カウンタが10進数の換算で“15”となる
図4(15)のBit0=“1”,Bit1=“1”,Bit2=“1”,Bit3=“1”で停止している。この状態で、
図20(0)に※1で示すように主制御装置1fからの光信号S
LRに基づく信号S
R(CPUの演算開始を示す信号)が入力されると、2進カウンタは,10進数の換算で“0”となる
図4(0)のBit0=“0”,Bit1=“0”,Bit2=“0”,Bit3=“0”に変化する。
【0100】
以降は、
図4と同様に2進カウンタが1ずつ加算される過程でAD変換制御信号が出力される。2進カウンタの値が10進数の“15”の状態になるとカウンタは停止状態となり、
図20に※2で示すように、信号S
Rが再び入力されると※1からの動作を繰り返すように動作する。