【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「エネルギーキャリア」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、背景技術のようにタービンから排出された燃焼排ガス(燃焼ガス)と液体アンモニアとを熱交換させることによって液体アンモニアを気化させる手法では、燃焼ガスの温度と液体アンモニアの沸点との差が大きいので、エネルギ利用効率の観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、燃焼ガスよりも低い温度の熱媒を用いて液体アンモニアを気化させてシステムの熱効率の改善を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、熱サイクル設備に係る第1の解決手段として、燃料を燃焼させることにより、所定の第1液体熱媒を気化させる第1気化装置と、該第1気化装置で得られた第1気体熱媒を駆動流体として動力を発生する動力発生装置と、該動力発生装置から排出された第1気体熱媒を第2液体熱媒と熱交換させることにより凝縮させる凝縮装置と、該凝縮装置で得られた液体熱媒を加圧し、前記第1液体熱媒として前記第1気化装置に供給する循環装置と、前記第2液体熱媒を液体アンモニアと熱交換させることにより気体アンモニアを生成する第2気化装置と、該第2気化装置に前記液体アンモニアを供給する供給装置とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、熱サイクル設備に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第2気化装置は、所定の伝熱体を介して前記第2液体熱媒と前記液体アンモニアとを熱交換させる、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、熱サイクル設備に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記伝熱体は鋼材から形成されている、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、熱サイクル設備に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記第2気化装置で生成された前記気体アンモニアを駆動流体として動力を発生する第2動力発生装置を備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、熱サイクル設備に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記第2動力発生装置から排出された前記液体アンモニアを前記第2液体熱媒と熱交換させて再加熱する再加熱装置を備える、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、熱サイクル設備に係る第6の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記第2気化装置で生成された前記気体アンモニアを前記第1気化装置の排ガスと熱交換して過熱する過熱装置をさらに備える、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、熱サイクル設備に係る第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、前記第1気化装置は、前記第2気化装置で生成した前記気体アンモニアを前記燃料として燃焼させる、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、熱サイクル設備に係る第8の解決手段として、上記第1〜第7のいずれかの解決手段において、前記第2気化装置で生成した前記気体アンモニアを還元剤として用いることにより前記第1気化装置で発生した燃焼ガスを脱硝処理する脱硝装置をさらに備える、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、熱サイクル設備に係る第9の解決手段として、上記第1〜第8のいずれかの解決手段において、第1液体熱媒は、水であり、前記第1気化装置は、前記水を気化させて水蒸気を発生するボイラであり、前記動力発生装置は、上記水蒸気を駆動流体とするタービンであり、前記第2液体熱媒は、水あるいは海水である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2液体熱媒より系外に排出されるエネルギを液体アンモニアにより回収するので、システムの熱効率の改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
最初に、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る熱サイクル設備Aは、
図1に示すように燃料タンク1、ポンプ2、気化器3、ボイラ4、タービン5、復水器6及びポンプ7を備えている。このような各構成要素のうち、ボイラ4、タービン5、復水器6及びポンプ7は、水配管あるいは蒸気配管によって環状に相互接続されており、ランキンサイクル(熱サイクル)を構成している。
【0019】
なお、これら複数の構成要素のうち、ポンプ2は、本発明の供給装置に相当する。また、気化器3は、本発明の第2気化装置に相当する。ボイラ4は、本発明の第1気化装置に相当する。タービン5は、本発明の動力発生装置に相当する。復水器6は、本発明の凝縮装置に相当する。さらに、ポンプ7は、本発明の循環装置に相当する。
【0020】
燃料タンク1は、内部に液体アンモニアを燃料として貯留する。ポンプ2は、所定の燃料配管を介して燃料タンク1に接続されており、燃料タンク1から液体アンモニアを汲み出して気化器3に供給する。
【0021】
気化器3は、所定の燃料配管を介してポンプ2と接続されており、復水器6から別途供給される温海水を用いて液体アンモニアを蒸発(気化)させて気体アンモニアを生成する。すなわち、この気化器3は、熱交換器の一種であり、第2液体熱媒である温海水を液体アンモニアと熱交換させることにより気体アンモニアを生成する。このような気化器3は、所定の燃料配管を介してボイラ4と接続されており、気体アンモニアを燃料としてボイラ4に供給する。また、この気化器3は、液体アンモニアとの熱交換後の温海水を外部に排水する。
【0022】
ボイラ4は、水配管を介してポンプ7に接続されており、気化器3から供給された気体アンモニアを燃料として燃焼させることにより、ポンプ7から供給された水(第1液体熱媒)を気化させる。すなわち、このボイラ4は、外気から取り込んだ燃焼用空気を酸化剤として用いて気体アンモニアを燃焼させることにより燃焼ガスを発生させ、当該燃焼ガスが有する熱エネルギによって水(第1液体熱媒)を蒸発させて水蒸気(第1気体熱媒)を発生させる。このようなボイラ4は、蒸気配管を介してタービン5に接続されており、上記水蒸気をタービン5に出力する。
【0023】
タービン5は、蒸気タービンであり、上記ボイラ4から入力された水蒸気(第1気体熱媒)を駆動流体として用いることにより回転動力を発生する。このようなタービン5は、蒸気配管を介して復水器6に接続されており、動力回収した後の水蒸気を復水器6に排出する。
【0024】
復水器6は、図示しない海水ポンプによって所定流量の海水が供給されるようになっており、この海水を用いることによりタービン5から受け入れた水蒸気(第1気体熱媒)を凝縮させる。すなわち、この復水器6は、タービン5から受け入れた水蒸気(第1気体熱媒)を別途受け入れた海水(第2液体熱媒)と熱交換させて冷却することにより水(第1液体熱媒)に復元(復水)させる。
【0025】
このような復水器6は、水配管を介してポンプ7に接続されており、水(第1液体熱媒)をポンプ7に供給する。また、この復水器6は、水蒸気(第1気体熱媒)との熱交換によって加温された海水(温海水)を気化器3に供給する。
【0026】
ポンプ7は、水(第1液体熱媒)を加圧してボイラ4に供給する。すなわち、ポンプ7は、ボイラ4、タービン5、復水器6及びポンプ7並びに複数の水配管及び蒸気配管からなる循環経路において、水(第1液体熱媒)及び水蒸気(第1気体熱媒)を矢印の向きに循環させるための動力源である。
【0027】
なお、図示していないが、上記タービン5は、自らの回転動力によって発電機を回転駆動する。すなわち、第1実施形態に係る熱サイクル設備Aは、ランキンサイクル(熱サイクル)を用いて最終的な成果物として電力を得るものである。
【0028】
次に、第1実施形態に係る熱サイクル設備Aの動作について詳しく説明する。
この熱サイクル設備Aでは、ポンプ2及び気化器3が作動することによって燃料タンク1から汲み出された液体アンモニアが気体アンモニアに相変換されてボイラ4に供給される。また、これとは別に、ポンプ7が作動することによってボイラ4に水が供給される。そして、ボイラ4は、気化器3から供給される気体アンモニアを燃料として燃焼させることにより、ポンプ7から別途供給される水を気化させて水蒸気を生成する。
【0029】
そして、タービン5は、ボイラ4から供給される水蒸気を駆動流体として用いることにより回転動力を発生させる。例えば、このタービン5に発電機が軸結合していた場合、タービン5の回転動力は、発電機の駆動に用いられ、電力に変換される。そして、タービン5から排出された水蒸気は、復水器6における海水との熱交換によって凝縮して水となり、ポンプ7に供給される。
【0030】
この熱サイクル設備Aでは、水が液相と気相との相転移を繰り返すことにより回転動力を発生させる。また、この熱サイクル設備Aでは、外部に廃棄される海水の熱を液体アンモニアを気化並びに昇温させるためのエネルギとして回収する。したがって、この熱サイクル設備Aによれば、システムの熱効率の改善を図ることができる。
【0031】
ここで、
図2は、第1実施形態の変形例に係る熱サイクル設備Bを示している。この熱サイクル設備Bは、上述した気化器3(第2気化装置)をアンモニア伝熱部3A、海水伝熱部3B及び伝熱プレート3Cによって構成したものである。
【0032】
アンモニア伝熱部3Aは、アンモニア(液体アンモニア及び気体アンモニア)が流通する伝熱性流路であり、海水伝熱部3Bは海水が流通する伝熱性流路である。また、伝熱プレート3Cは、アンモニア伝熱部3Aと海水伝熱部3Bとを熱結合させる部材(板材)であり、アンモニア伝熱部3Aと海水伝熱部3Bとを熱伝導自在に接続する。なお、この伝熱プレート3Cは、本発明の伝熱体に相当するものである。
【0033】
アンモニア(液体アンモニア及び気体アンモニア)と海水(第2液体熱媒)とでは材料に対する腐食性が異なる。例えば鋼材はアンモニアに対して十分な耐食性を有するが、海水に対する耐食性に劣る。したがって、アンモニアの流路は鋼材によって構成し得るが、海水の通路は鋼材以外の材料、例えばチタン合金等で構成する必要がある。このような事情から、この変形例に係る熱サイクル設備では、アンモニア伝熱部3Aと海水伝熱部3Bとが耐食性を考慮して異種材料で形成されている。アンモニア伝熱部3A及び伝熱プレート3Cは、例えば炭素鋼で形成され、海水伝熱部3Bはチタン合金によって形成されている。
【0034】
このようなアンモニア伝熱部3A、海水伝熱部3B及び伝熱プレート3Cを備える熱サイクル設備Bによれば、上述した第1実施形態に係る熱サイクル設備Aの奏する効果に加え、第2気化装置の耐食性を第1実施形態に係る熱サイクル設備Aよりも向上させることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図3を参照して説明する。この第2実施形態に係る熱サイクル設備Cは、ランキンサイクルにアンモニアの膨張サイクルを組み合わせたものであり、
図1に示した熱サイクル設備Aに膨張タービン8を付加した構成を備える。この熱サイクル設備Cでは、気化器3と膨張タービン8とによってアンモニアの膨張サイクルが形成されている。なお、上記膨張タービン8は、本発明の第2動力発生装置に相当する。
【0036】
すなわち、この熱サイクル設備Cは、気化器3とボイラ4との間に膨張タービン8を設けることにより、気化器3で生成された気体アンモニアを用いて膨張タービン8を駆動するものである。この熱サイクル設備Cでは、膨張タービン8で動力回収された後の気体アンモニアが燃料としてボイラ4に供給され、水蒸気が生成される。
【0037】
このような熱サイクル設備Cでは、タービン5に加え膨張タービン8でも回転動力が発生する。したがって、この熱サイクル設備Cによれば、上述した熱サイクル設備A,Bの奏する効果に加え、当該熱サイクル設備A、Bよりも大きな動力を発生させることが可能である。例えば、タービン5で発生させた回転動力を用いて発電機を駆動し、また膨張タービン8で発生させた回転動力を用いて別の発電機を駆動することにより、熱サイクル設備A,Bよりも大きな電力を発生させることが可能である。
【0038】
図4は、このような第2実施形態の第1変形例に係る熱サイクル設備Dを示している。この熱サイクル設備Dは、気化器3に代えて、アンモニアに関する2つの伝熱部(第1伝熱部3a及び第2伝熱部3b)を備えた気化器3D(第2気化装置)を備える。また、この気化器3Dでは、海水を第1伝熱部3aを通過する液体アンモニアと最初に熱交換させ、その後に第2伝熱部3bを通過する液体アンモニアと熱交換させる。
【0039】
また、この熱サイクル設備Dでは、第1伝熱部3aと第2伝熱部3bとの間に膨張タービン8が設けられる。第1伝熱部3aは、ポンプ2から供給された液体アンモニアを海水と熱交換させることによって気体アンモニアを生成する。膨張タービン8は、この第1伝熱部3aから供給される気体アンモニアによって駆動され、回転動力を発生させる。
【0040】
気体アンモニアは、膨張タービン8で熱エネルギを奪われることにより温度・圧力が低下し、場合によっては一部が液化する。第2伝熱部3bは、膨張タービン8から供給されたアンモニア(一部が液化したもの)を海水と熱交換させることによって再加熱・再気化させる再加熱装置である。第2伝熱部3bで生成された気体アンモニアは、ボイラ4に燃料として供給される。
【0041】
このような熱サイクル設備Dによれば、タービン5で発生させた回転動力に加え、膨張タービン8でも回転動力が得られるので、上述した熱サイクル設備A,Bよりも大きな電力を発生させることが可能である。
【0042】
さらに、
図5は、第2実施形態の第2変形例に係る熱サイクル設備Eを示している。この熱サイクル設備Eは、上述した熱サイクル設備Cに熱交換器9を付加したものである。すなわち、この熱サイクル設備Eでは、気化器3と膨張タービン8との間に気体アンモニアをボイラ4の燃焼ガス(排ガス)と熱交させる熱交換器9が設けられる。この熱交換器9は、気化器3で生成された気体アンモニアをボイラ4の燃焼ガス(排ガス)と熱交させて過熱する過熱装置として機能する。
【0043】
このような熱サイクル設備Eによれば、ボイラ4に供給される気体アンモニアの温度を上述した熱サイクル設備Cよりも上昇させることができるので、ボイラ4における気体アンモニアの燃焼性を向上させるとともに排ガス温度の低減が図れるため、熱サイクル設備Eの熱効率の向上を図ることが可能である。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、海水(第2液体熱媒)との熱交換によって生成された気体アンモニアをボイラ4の燃料として利用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2気化装置で生成した気体アンモニアを還元剤として用いることにより第1気化装置で発生した燃焼ガスを脱硝処理する脱硝装置をさらに備えても良い。
【0045】
すなわち、ボイラ4の燃焼ガス(排ガス)は、一般的に脱硝処理されることにより窒素酸化物(NOx)が除去されが、この脱硝処理では還元剤としてアンモニアが用いられる。このような事情から、気体アンモニアをボイラ4の燃料として利用することに加え、あるいは気体アンモニアをボイラ4の燃料として利用することに代えて、気体アンモニアを脱硝装置における還元剤として利用しても良い。
【0046】
(2)上記各実施形態では、ボイラ4、タービン5、復水器6及びポンプ7によってランキンサイクルを構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ボイラ4に代えて気体アンモニア(第1液体熱媒)を燃焼させて第1気体熱媒を生成する他の第1気化装置を採用し、またタービン5に代えて第1気体熱媒を用いて動力を発生させる他の動力発生装置を採用しても良い。この場合、水に代えて他の第1液体熱媒を採用しても良い。
【0047】
(3)上記各実施形態では、第2液体熱媒として海水を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、海水に代えて河川や湖等から導入した水(真水)を用いても良い。
【0048】
(4)上記各実施形態では、気体アンモニアを単独燃料としてボイラ4で燃焼させたが、本発明はこれに限定されない。気体アンモニア以外の燃料を気体アンモニアと複合させて燃焼させても良い。気体アンモニア以外の燃料として、例えば石炭(微粉炭)や各種のバイオマスが考えられる。
【0049】
(5)上記各実施形態では、ボイラ4の燃焼熱のみによって水(第1液体熱媒)を水蒸気(第1気体熱媒)に相転移させたが、本発明はこれに限定されない。例えば自然エネルギーとボイラ4の燃焼熱とを複合的に用いて第1液体熱媒を第1気体熱媒に相転移させても良い。