(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調節レバーを一方向に回動させる事によって前記アンロック状態から前記ロック状態に切り替える際に、互いに摺接して案内される、前記駆動側凸部の円周方向側面と前記被駆動側凸部の円周方向側面とが、最初に摺接して案内される部分の傾斜角度を、その後に摺接して案内される部分の傾斜角度よりも小さくした形状を有している
請求項4に記載したステアリング装置。
前記調節レバーを他方向に回動させる事によって前記ロック状態から前記アンロック状態に切り替える際に、互いに摺接して案内される、前記駆動側凸部の円周方向側面と前記被駆動側凸部の円周方向側面とが、最初に摺接して案内される部分の傾斜角度を、その後に摺接して案内される部分の傾斜角度よりも小さくした形状を有している
請求項4〜5のうちの何れか1項に記載したステアリング装置。
前記車体側ブラケットに対して前記ステアリングコラムを変位させる事に伴って相対変位する1対の面同士の間に配置されると共に、前記弾性部材の反力に基づいて前記1対の面同士の間で圧縮される合成樹脂材を有している、
請求項1〜7のうちの何れか1項に記載したステアリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来構造の場合には、前記保持力を解除すべく、調節レバーを他方向に回動させる際に、調節ロッドの軸力に基づく付勢によって、調節レバーが他方向に勢い良く回動する可能性がある。そして、この様に調節レバーが他方向に勢い良く回動した場合には、この調節レバーを操作する運転者に違和感を与える為、好ましくない。
【0007】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、ステアリングホイールの位置調節を不能とするロック状態から、ステアリングホイールの位置調節を可能とするアンロック状態に切り替える際に、調節レバーが勢い良く回動する事を抑制できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステアリング装置は、ステアリングコラムと、コラム側ブラケットと、コラム側通孔と、車体側ブラケットと、1対の車体側通孔と、調節ロッドと、拡縮装置とを備えている。
このうちのステアリングコラムは、後端部にステアリングホイールを支持したステアリングシャフトを、内径側に回転自在に支持するものである。
又、前記コラム側ブラケットは、前記ステアリングコラムの軸方向一部に設けられている。
又、前記コラム側通孔は、前記コラム側ブラケットを幅方向に貫通する状態で設けられている。
又、前記車体側ブラケットは、前記コラム側ブラケットを幅方向両側から挟む位置に配置された1対の支持板部を有し、車体に支持される。
又、前記1対の車体側通孔は、前記1対の支持板部を幅方向に貫通する状態で設けられている。
又、前記調節ロッドは、前記コラム側通孔及び前記1対の車体側通孔を幅方向に挿通している。
又、前記拡縮装置は、前記調節ロッドを中心とする回動を可能に設けられた調節レバーと、圧縮量に対する反力の特性にヒステリシスを生じ、且つ、圧縮量に対する反力が前記1対の支持板部同士の間隔を縮める方向に作用する弾性部材と、前記調節レバーを一方向に回動させる動作を前記弾性部材の圧縮量を増大させる動作に変換すると共に、前記調節レバーを他方向に回動させる動作を前記弾性部材の圧縮量を減少させる動作に変換する変換装置とを含んで構成される。そして、前記拡縮装置は、前記調節レバーを一方向に回動させる事に伴って前記弾性部材の圧縮量を増大させる事により前記1対の支持板部同士の間隔を縮め、前記調節レバーを他方向に回動させる事に伴って前記弾性部材の圧縮量を減少させる事により前記1対の支持板部同士の間隔を拡げる。
尚、圧縮量に対する反力の特性にヒステリシスを生じるとは、圧縮量に対する反力の特性に関して、例えば
図8や
図10に示す様に、加圧時に発生する反力よりも、減圧時に発生する反力が小さくなる事を意味する。
又、前記コラム側通孔と前記1対の車体側通孔とのうち、少なくとも何れか一方が、前記ステアリングホイールの位置調節が可能な方向に伸長する長孔になっている。
又、前記拡縮装置により、前記1対の支持板部同士の間隔を縮める事に基づいて前記ステアリングホイールの位置調節を不能としたロック状態と、前記1対の支持板部同士の間隔を拡げる事に基づいて前記ステアリングホイールの位置調節を可能としたアンロック状態とを切り替え可能としている。
【0009】
本発明を実施する場合には、例えば、前記弾性部材を、複数個の皿ばねを軸方向に重ね合わせる事により構成する事ができる。この場合に、前記複数個の皿ばねの重ね合わせ方は、軸方向に関して同じ向きに重ね合わせる並列重ねでも良いし、軸方向に関して逆向きに重ね合わせる直列組み合わせでも良いし、並列重ねと直列組み合わせの併用(例えば、並列重ねしたもの同士の直列組み合わせ)でも良い。
【0010】
本発明を実施する場合には、例えば、前記ロック状態に於いても、前記弾性部材の圧縮量(たわみ量)が全たわみ量(=自由高さ−密着高さ)に達しない構成を採用する事ができる。
【0011】
本発明を実施する場合には、例えば、前記アンロック状態に於いても、前記弾性部材の圧縮量がゼロにならない構成を採用する事ができる。
【0012】
本発明を実施する場合には、例えば、前記変換装置を、カム装置とする事ができる。
前記カム装置は、幅方向側面に円周方向に関する凹凸面である駆動側カム面が設けられ、前記調節レバーと共に回動する駆動側カムと、前記駆動側カム面と対向する幅方向側面に前記駆動側カム面と係合する円周方向に関する凹凸面である被駆動側カム面が設けられ、前記車体側ブラケットに対する回転を阻止された被駆動側カムとを有するもので、前記駆動側カムを前記被駆動側カムに対して回動させる事により、幅方向寸法を拡縮可能とし、且つ、前記アンロック状態で、前記駆動側カム面に設けられた複数の駆動側凸部と前記被駆動側カム面に設けられた複数の被駆動側凸部とが円周方向に関して交互に配置された状態となり、前記ロック状態で、前記各駆動側凸部の先端面と前記各被駆動側凸部の先端面とが突き合わされた状態となるものである。
そして、前記調節レバーを一方向に回動させる事により、前記カム装置の幅方向寸法を拡大する事に基づいて、前記弾性部材の圧縮量を増大させ、前記調節レバーを他方向に回動させる事により、前記カム装置の幅方向寸法を縮小する事に基づいて、前記弾性部材の圧縮量を減少させる。
【0013】
本発明を実施する場合には、例えば、前記調節レバーを一方向に回動させる事によって前記アンロック状態から前記ロック状態に切り替える際に、互いに摺接して案内される、前記駆動側凸部の円周方向側面と前記被駆動側凸部の円周方向側面とが、最初に摺接して案内される部分の傾斜角度を、その後に摺接して案内される部分の傾斜角度よりも小さくした形状を有している、と言った構成を採用する事ができる。
【0014】
本発明を実施する場合には、例えば、前記調節レバーを他方向に回動させる事によって前記ロック状態から前記アンロック状態に切り替える際に、互いに摺接して案内される、前記駆動側凸部の円周方向側面と前記被駆動側凸部の円周方向側面とが、最初に摺接して案内される部分の傾斜角度を、その後に摺接して案内される部分の傾斜角度よりも小さくした形状を有している、と言った構成を採用する事ができる。
【0015】
本発明を実施する場合には、例えば、前記アンロック状態で、前記駆動側カムを前記被駆動側カムに対して一方向に回動させる方向に付勢する、付勢ばねを備えている、と言った構成を採用する事ができる。
【0016】
本発明を実施する場合には、例えば、 前記車体側ブラケットに対して前記ステアリングコラムを変位させる事に伴って相対変位する1対の面同士の間に配置されると共に、前記弾性部材の反力に基づいて前記1対の面同士の間で圧縮される合成樹脂材を有している、と言った構成を採用する事ができる。
【発明の効果】
【0017】
上述の様な構成を有する本発明のステアリング装置の場合には、ステアリングホイールの位置調節を不能とするロック状態から、ステアリングホイールの位置調節を可能とするアンロック状態に切り替える際に、調節レバーが勢い良く回動する事を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、
図1〜10により説明する。
尚、本明細書及び特許請求の範囲で、前後方向、幅方向、及び上下方向は、特に断らない限り、車両の前後方向、幅方向、及び上下方向を言う。
【0020】
本例のステアリング装置は、
図1に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、操舵輪である前輪に舵角を付与する様にしている。ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続され、この中間シャフト8の前端部は、別の自在継手9を介して、入力軸3に接続されている。
【0021】
本例のステアリング装置は、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイール1の上下位置を調節する為のチルト機構、及び、前後位置を調節する為のテレスコピック機構を備えている。
【0022】
テレスコピック機構を構成する為に、ステアリングコラム6を、後側に配置した筒状のアウタコラム10の前端部と、前側に配置した筒状のインナコラム11の後端部とを摺動可能に嵌合させて、全長を伸縮可能にしている。又、このうちのアウタコラム10を、車体12に支持された車体側ブラケット13に対し、前後方向に移動可能に支持している。又、ステアリングコラム6の内側に回転自在に支持され、後端部にステアリングホイール1を固定したステアリングシャフト5を、アウタシャフト14とインナシャフト15とをスプライン係合等により、トルク伝達可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせた構造としている。尚、アウタコラム10、インナコラム11、アウタシャフト14、及びインナシャフト15は、それぞれ鉄合金、アルミニウム合金等の金属製である。
【0023】
チルト機構を構成する為に、ステアリングコラム6を車体12に対して、幅方向に設置したチルト軸16を中心とする揺動変位を可能に支持すると共に、アウタコラム10を、車体側ブラケット13に対し、上下方向に移動可能に支持している。
【0024】
又、アウタコラム10の前端部の下部及び上部にスリット17a、17b(
図2にのみ図示)を軸方向に伸長する状態で形成する事により、アウタコラム10の前端部の内径を弾性的に拡縮可能としている。そして、アウタコラム10の前端部下面で、スリット17aを幅方向両側から挟む部分に、1対の被挟持部18、18をアウタコラム10と一体に設け、これら両被挟持部18、18によりコラム側ブラケット19を構成している。1対の被挟持部18、18は、アウタコラム10の軸方向に伸長する状態で、特許請求の範囲に記載したコラム側通孔に相当するテレスコ用長孔20、20を形成している。
【0025】
これに対し、車体側ブラケット13は、鉄合金、アルミニウム合金等の金属板製で、取付板部21と、1対の支持板部22a、22bとから構成されている。このうちの取付板部21は、平板状で、通常時には車体12に対し支持されているが、衝突事故の際には、二次衝突の衝撃に基づいて前方に離脱し、アウタコラム10の前方への変位を許容する様にしている。又、1対の支持板部22a、22bは、取付板部21から垂下した状態で、互いに平行に設けられている。これら両支持板部22a、22bのうち、幅方向に関して対向する位置に、それぞれ上下方向に伸長する状態で、特許請求の範囲に記載した車体側通孔に相当するチルト用長孔23、23を形成している。そして、テレスコ用長孔20、20とチルト用長孔23、23とに、円柱状の調節ロッド24を幅方向に挿通している。調節ロッド24は、鉄合金、アルミニウム合金等の金属や、強化繊維を混入した合成樹脂等の、高強度の材料製である。
【0026】
そして、調節ロッド24に組み付けた拡縮装置により、1対の支持板部22a、22b同士の間隔を拡縮可能としている。
【0027】
この様な拡縮装置を構成する為に、調節ロッド24の軸方向一端部(
図2の左端部)で、1対の支持板部22a、22bのうちの一方(
図2の左方)の支持板部22aの外側面から突出した部分に、外向フランジ状の頭部25を一体に設けている。そして、調節ロッド24の軸方向一端部のうち、頭部25の内側面と一方の支持板部22aの外側面との間に、この頭部25側から順番に、調節レバー26の基端部と、カム装置27とを外嵌している。
【0028】
カム装置27は、駆動側カム28と被駆動側カム29との相対変位に基づいて幅方向寸法である軸方向寸法を拡縮するもので、このうちの被駆動側カム29を、一方の支持板部22aに形成したチルト用長孔23に、このチルト用長孔23に沿った変位を可能に且つ回転を阻止した状態で係合させている。又、被駆動側カム29を調節ロッド24に対し、相対回転及び軸方向の相対変位を可能に外嵌している。又、駆動側カム28を調節ロッド24に対し、相対回転及び軸方向の相対変位を阻止した状態で外嵌している。又、この駆動側カム28に調節レバー26の基端部を、相対回転を阻止した状態で結合している。従って、本例の場合、駆動側カム28及び調節ロッド24は、調節レバー26と共に、この調節ロッド24を中心として回動する。
【0029】
又、本例の場合には、調節レバー26を一方向に回動させる事に伴ってカム装置27の軸方向寸法が拡大し、前記調節レバー26を他方向に回動させる事に伴ってカム装置27の軸方向寸法が縮小する様にしている。
【0030】
この為に、互いに対向する被駆動側カム29の外側面と駆動側カム28の内側面とのうち、被駆動側カム29の外側面には、円周方向に関する凹凸面である、被駆動側カム面30が形成されている。
図4の(b)及び
図5に示す様に、被駆動側カム面30は、幅方向に直交する平坦面状の被駆動側基準面31と、この被駆動側基準面31の円周方向等間隔となる複数箇所(図示の例では4箇所)からそれぞれ幅方向外方に向けて突出した被駆動側凸部32、32とを有している。これら被駆動側凸部32の円周方向両側面のうち、調節レバー26の回動方向に関する一方向側の側面は、被駆動側ストッパ面33となっており、調節レバー26の回動方向に関する他方向側の側面は、被駆動側案内斜面34となっている。被駆動側ストッパ面33は、被駆動側基準面31に対してほぼ直角な、回動方向の一方向側を向いた段差面である。被駆動側案内斜面34は、幅方向外方に向かう程回動方向の一方向側に向かう方向に傾斜している。本例の場合、被駆動側基準面31に対する被駆動側案内斜面34の傾斜角度は、円周方向の全幅に亙り一定になっている。
【0031】
又、駆動側カム28の内側面には、円周方向に関する凹凸面である、駆動側カム面35が形成されている。
図4の(a)及び
図5に示す様に、駆動側カム面35は、幅方向に直交する平坦面状の駆動側基準面36と、この駆動側基準面36の円周方向等間隔となる複数箇所からそれぞれ幅方向内方に向けて突出した、被駆動側凸部32、32と同数の駆動側凸部37、37とを有している。これら駆動側凸部37の円周方向両側面のうち、調節レバー26の回動方向に関する一方向側の側面は、駆動側案内斜面38となっており、調節レバー26の回動方向に関する他方向側の側面は、駆動側ストッパ面39となっている。駆動側案内斜面38は、幅方向内方に向かう程回動方向の他方向側に向かう方向に傾斜している。本例の場合、駆動側基準面36に対する駆動側案内斜面38の傾斜角度は、円周方向の全幅に亙り一定になっている。駆動側ストッパ面39は、駆動側基準面36に対してほぼ直角な、回動方向の他方向側を向いた段差面である。
【0032】
又、駆動側基準面36に対する駆動側案内斜面38の傾斜角度は、被駆動側基準面31に対する被駆動側案内斜面34の傾斜角度と等しくなっている。又、駆動側基準面36に対する駆動側ストッパ面39の傾斜角度は、被駆動側基準面31に対する被駆動側ストッパ面33の傾斜角度と等しくなっている。
【0033】
そして、
図5の(a)に示す様に、駆動側凸部37と被駆動側凸部32とを円周方向に関して交互に配置したアンロック状態で、調節レバー26を一方向に回動させる事により、駆動側カム28を一方向に回動させると、
図5の(a)→(b)に示す様に、駆動側案内斜面38が被駆動側案内斜面34に摺接して案内されながら、カム装置27の軸方向寸法が拡大する。そして、
図5の(b)→(c)に示す様に、駆動側凸部37の先端面61が被駆動側凸部32の先端面60に突き当たった状態で、カム装置27の軸方向寸法が最大となり、ロック状態となる。
【0034】
反対に、
図5の(c)に示すロック状態で、調節レバー26を他方向に回動させる事により、駆動側カム28を他方向に回動させると、
図5の(c)→(b)に示す様に、駆動側案内斜面38が被駆動側案内斜面34に摺接して案内されながら、カム装置27の軸方向寸法が縮小する。そして、
図5の(b)→(a)に示す様に、駆動側凸部37の先端面61が被駆動側基準面31に突き当たると共に、被駆動側凸部32の先端面60が駆動側基準面36に突き当たった状態で、カム装置27の軸方向寸法が最小となり、アンロック状態となる。
【0035】
又、調節ロッド24の軸方向他端部(
図2の右端部)で、1対の支持板部22a、22bのうちの他方(
図2の右方)の支持板部22bの外側面から突出した部分に、ナット40を固定している。そして、調節ロッド24の軸方向他端部のうち、ナット40の内側面と他方の支持板部22bの外側面との間に、このナット40側から順番に、弾性部材41と、スラストベアリング42と、押圧プレート43とを、それぞれ調節ロッド24に対する相対回転及び軸方向の相対変位を可能に外嵌している。
【0036】
この状態で、押圧プレート43の内側面は、他方の支持板部22bの外側面に摩擦係合している。又、弾性部材41は、スラストベアリング42により、押圧プレート43に対する相対回転を可能とされている。これと共に、弾性部材41は、スラストベアリング42とナット40との間で、軸方向に弾性的に圧縮されている。又、本例の場合には、この状態で、弾性部材41の圧縮に伴って発生した反力は、1対の支持板部22a、22b同士の間隔を縮める方向に作用している。
【0037】
又、本例の場合、弾性部材41は、圧縮量に対する反力の特性にヒステリシスを生じるものであり、具体的には、複数個(図示の例では2個)の皿ばね44、44を、並列重ねする事、即ち、圧縮方向である軸方向に関して互いに同じ向きに重ね合わせる事によって構成された、重ね皿ばねである。
【0038】
図7に示す様に、皿ばね44は、弾性を有する鋼板等の金属板により、頂角が大きい部分円すい筒状に造られている。この様な皿ばね44は、軸方向の圧縮量が変化する際に、相手部材との接触部で擦れ合いによる摩擦力が発生し、この摩擦力の方向が、圧縮量を増大させる加圧時と、圧縮量を減少させる減圧時とで逆向きになる。この結果、皿ばね44は、
図8に概念図で示す様に、加圧時に発生する反力よりも、減圧時に発生する反力が小さくなると言った、ヒステリシスを生じる。
【0039】
この様なヒステリシス、即ち、加圧時に発生する反力と減圧時に発生する反力との差は、圧縮量が変化する際に発生する摩擦力が大きくなる程大きくなる。一方、本例の弾性部材41の場合には、
図2、6、9に示す様に、隣り合う皿ばね44、44の側面同士が面接触している。そして、弾性部材41の圧縮量が変化する際に、軸方向に隣り合う皿ばね44、44の側面同士の間で擦れ合いによる摩擦力が発生する。従って、本例の弾性部材41である、重ね皿ばねのヒステリシスは、
図10に概念図で示す様に、
図8に示した単体の皿ばね44のヒステリシスに比べて、大きくなっている。
【0040】
又、本例の場合には、この様な重ね皿ばねである弾性部材41の軸方向両端部のうち、小径側端部をナット40の内側面に当接させ、大径側端部をスラストベアリング42の外側面に当接させている。但し、弾性部材41の軸方向の設置の向きは、本例の場合と逆にする事もできる。
【0041】
本例のステアリング装置により、ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、調節レバー26を他方向に回動させる。これにより、調節レバー26と共に駆動側カム28を他方向に回動させる。そして、
図5の(a)に示す様に、駆動側凸部37と被駆動側凸部32とを円周方向に関して交互に配置した状態である、アンロック状態とする事により、カム装置27の軸方向寸法を縮める。すると、
図6の(a)に示す様に、スラストベアリング42とナット40との間隔が拡がり、弾性部材41の圧縮量が減少する。即ち、1対の支持板部22a、22b同士の間隔を縮める方向に作用する、弾性部材41の反力が減少する。従って、これに伴い、1対の支持板部22a、22b同士の間隔が拡がる。この結果、1対の支持板部22a、22bの内側面と1対の被挟持部18、18の外側面との当接部の面圧、及び、アウタコラム10の前端部内周面とインナコラム11の後端部外周面との当接部の面圧が、低下乃至は喪失する。これにより、それぞれが車体側ブラケット13に対するステアリングコラム6の変位を阻止する為の保持力である、前記各当接部の摩擦力が、低下乃至喪失する。この状態で、調節ロッド24がチルト用長孔23、23及びテレスコ用長孔20、20内で動ける範囲で、ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節できる。
【0042】
尚、本例の場合、調節レバー26は、
図5の(a)に示す様に、駆動側ストッパ面39と被駆動側ストッパ面33とが当接する位置までしか、他方向に向けて回動させる事ができない様になっている。
【0043】
又、上述の様にステアリングホイール1を所望位置に移動させた後、調節レバー26を一方向に回動させる事により、この調節レバー26と共に駆動側カム28を一方向に回動させる。そして、
図5の(c)に示す様に、駆動側凸部37の先端面61と被駆動側凸部32の先端面60とを互いに突き当てた状態である、ロック状態とする事により、カム装置27の軸方向寸法を拡げる。すると、
図6の(b)に示す様に、スラストベアリング42とナット40との間隔が縮まり、弾性部材41の圧縮量が増大する。即ち、1対の支持板部22a、22b同士の間隔を縮める方向に作用する、弾性部材41の反力が増大する。従って、これに伴い、1対の支持板部22a、22b同士の間隔が縮まる。この結果、前記各当接部の面圧が上昇する事により、前記保持力である、これら各当接部の摩擦力が増大する。これにより、ステアリングホイール1を、調節後の位置に保持できる。
【0044】
又、本例の場合、ロック状態からアンロック状態に切り替える際に、調節レバー26が他方向に勢い良く回動する事を抑制できる。
【0045】
即ち、本例の場合、ロック状態で調節レバー26を他方向に回動させる事により、駆動側カム28を他方向に回動させると、
図5の(c)→(b)に示す様に、駆動側案内斜面38が被駆動側案内斜面34に摺接して案内される。この際、駆動側カム28には、慣性力や調節レバー26の自重が作用するだけでなく、弾性部材41の圧縮に伴って発生した反力が作用し、他方向に付勢された状態となる。しかしながら、この際に弾性部材41の圧縮量は、
図6の(b)→(a)に示す様に、減少する方向に変化する。つまり、この際に弾性部材41の反力は、
図10に示した、減圧時の反力となり、加圧時の反力に比べて、大幅に小さくなっている。従って、その分、駆動側カム28に作用する他方向への付勢を抑える事ができ、調節レバー26が他方向に勢い良く回動する事を抑制できる。
【0046】
又、本例の場合には、
図6の(b)に示す様に、ロック状態でも、弾性部材41の圧縮量が、全たわみ量には達しない様にしている。別な言い方をすれば、弾性部材41を構成する皿ばね44、44が底突きしない様にしている。そして、この様な構成を採用する事により、ロック状態からアンロック状態に切り替える際に、直ちに弾性部材41の反力を大きく下げて、調節レバー26が他方向に勢い良く回動する事を抑制できる様にしている。更には、ロック状態での弾性部材41の圧縮量が過度に大きくなる事によって、この弾性部材41がへたり易くなる事を防止している。尚、本例の構造を実施する場合、ロック状態での弾性部材41の圧縮量は、全たわみ量の80%以下となる様にするのが好ましい。
【0047】
尚、本発明を実施する場合には、ロック状態で弾性部材41の圧縮量が全たわみ量に達する構成を採用する事もできる。
例えば、アンロック状態からロック状態に切り替わる位置まで調節レバー26を一方向に回動させる途中で、弾性部材41の圧縮量が全たわみ量に達する様にすれば、ロック状態で、弾性部材41が発生する軸力を最大とする事ができ、この軸力を利用して、前記保持力を十分に大きくする事ができる。この様な構成を採用する場合には、ロック状態を解除する動作の途中から、
図6の(b)に示す様な状態、即ち、弾性部材41の圧縮量が全たわみ量に達しておらず、皿ばね44、44が底突きしていない状態となる。
【0048】
又、本例の場合には、
図6の(a)に示す様に、アンロック状態でも、弾性部材41の圧縮量がゼロにならない様にしている。これにより、アンロック状態でも、弾性部材41の反力が、調節ロッド24に外嵌されたカム装置27等の各部材に予圧として負荷される事により、これら各部材間にがたつきが生じる事を抑制できる様にしている。尚、本例の構造を実施する場合、アンロック状態での弾性部材41の圧縮量は、全たわみ量の20
%以上となる様にするのが好ましい。即ち、本例の構造を実施する場合、弾性部材41の圧縮量は、何れの状態でも、全たわみ量の20%〜80%の範囲に収まる様にするのが好ましい。
【0049】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、
図11により説明する。
本例の場合には、弾性部材41aのばね剛性及びヒステリシスをより大きくする為に、この弾性部材41aを構成する皿ばね44a、44aの個数を3個にすると共に、弾性部材41aの外径寸法、即ち、皿ばね44a、44aの外径寸法を、スラストベアリング42の外径寸法よりも大きくしている。これに伴い、本例の場合には、スラストベアリング42の外側面と弾性部材41aとの間に、その外径寸法が、スラストベアリング42の外径寸法よりも大きく、且つ、弾性部材41の外径寸法よりも大きい、円輪状の座板45を挟持している。そして、この座板45の外側面に、弾性部材41aの大径側端部を当接させている。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0050】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例に就いて、
図12により説明する。
本例の場合には、上述した実施の形態の第1〜2例の構成に加えて、頭部25の内側面と調節レバー26の外側面との間に弾性部材41bを、軸方向に関して弾性的に圧縮した状態で設けている。そして、この弾性部材41bを圧縮する事によって発生した反力が、1対の支持板部22a、22b(
図2参照)同士の間隔を縮める方向に作用する様にしている。この為に、本例の場合には、調節ロッド24に対して駆動側カム28を、軸方向の相対変位を可能とした状態で外嵌している。又、弾性部材41bに就いても、ロック状態での圧縮量が全たわみ量に達しない様にすると共に、アンロック状態での圧縮量がゼロにならない様にしている。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1〜2例の場合と同様である。
【0051】
尚、本発明を実施する場合には、
図12に示した弾性部材41bを設ける代わりに、実施の形態の第1〜2例の弾性部材41、41aを省略した構造を採用する事もできる。
【0052】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例に就いて、
図13により説明する。
本例の場合には、ステアリングホイール1(
図1参照)の位置調節を行う際に、車体側ブラケット13に対してステアリングコラム6(アウタコラム10)を変位させる事に伴って相対変位する1対の面同士の間に、これら1対の面同士が相対変位する事に対する摩擦を低減する為の合成樹脂材を配置している。
【0053】
具体的には、ステアリングホイール1の前後位置を調節する際に互いに相対変位する、インナコラム11の後端部外周面とアウタコラム10の前端部内周面との間に、幅方向に離隔して、それぞれが薄肉に形成された1対の合成樹脂材46a、46aを配置している。そして、ロック状態及びアンロック状態で、これら合成樹脂材46a、46aを、インナコラム11の後端部外周面とアウタコラム10の前端部内周面と間で、弾性部材41a、41bの反力に基づいて圧縮している。
【0054】
又、ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に互いに相対変位する、アウタコラム10の前端部及びコラム側ブラケット19の幅方向両側面と、1対の支持板部22a、22bの内側面との間に、それぞれが薄肉に形成された合成樹脂材46b、46bを配置している。そして、ロック状態及びアンロック状態で、これら合成樹脂材46b、46bを、アウタコラム10の前端部及びコラム側ブラケット19の幅方向両側面と、1対の支持板部22a、22bの内側面との間で、弾性部材41a、41bの反力に基づいて圧縮している。
【0055】
又、ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に互いに相対変位する、一方の支持板部22aの外側面と被駆動側カム29の内側面との間に、薄肉に形成された合成樹脂材46cを配置している。そして、ロック状態及びアンロック状態で、この合成樹脂材46cを、一方の支持板部22aの外側面と被駆動側カム29の内側面との間で、弾性部材41a、41bの反力に基づいて圧縮している。
【0056】
又、ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に互いに相対変位する、他方の支持板部22bの外側面と押圧プレート43の内側面との間に、薄肉に形成された合成樹脂材46dを配置している。そして、ロック状態及びアンロック状態で、この合成樹脂材46dを、他方の支持板部22bの外側面と押圧プレート43の内側面との間で、弾性部材41a、41bの反力に基づいて圧縮している。
尚、合成樹脂材46a〜46dを構成する合成樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)等の各種の合成樹脂を採用する事ができる。又、これらの合成樹脂には、必要に応じて、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の各種の強化繊維を混入する事ができる。
【0057】
上述の様な構成を有する本例の場合には、ステアリングホイール1の位置調節を行う際に、互いの間に合成樹脂材46a〜46dを配置した1対の面を、合成樹脂材46a〜46dを介して小さな摺動抵抗で摺動させる事ができる。この為、ステアリングホイール1の位置調節の作業性を向上させる事ができる。
【0058】
又、本例のステアリング装置の場合には、調節ロッド24に比べてばね剛性が低い、弾性部材41a、41bの反力を利用して、ロック状態での保持力を確保する構成を採用している。この為、各部の寸法が初めから大きなばらつきを有していたり、合成樹脂材46a〜46dの寸法が、長期間に亙る使用に伴って生じる摩耗やクリープにより変化した場合でも、これらの寸法のばらつきや変化を、弾性部材41a、41bの低いばね剛性に基づいて吸収する事ができる。即ち、調節ロッド24に比べてばね剛性が低い、弾性部材41a、41b(弾性部材41も同様)は、上述の様な寸法のばらつきや変化に伴って、ロック状態での圧縮量に差や変化が生じた場合でも、発生する反力には大きな差や変化が生じない為、ロック状態での保持力を安定的な大きさにする事ができる。従って、アンロック状態とロック状態との切り換えやロック状態の維持を、適切に行う事ができる。
尚、本発明を実施する場合には、ステアリングホイール1の位置調節に伴って相対変位する1対の面同士の間部分の全部ではなく、一部(少なくとも1つの、1対の面同士の間部分)にのみ、合成樹脂材を配置する構成を採用する事もできる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第3例の場合と同様である。
【0059】
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例に就いて、
図14〜16により説明する。
本例の場合には、カム装置27aを構成する駆動側カム面35a及び被駆動側カム面30aの構成が、上述した実施の形態の第1例の場合と若干異なる。
【0060】
本例の場合、被駆動側カム面30aを構成する被駆動側案内斜面34aは、被駆動側基準面31に対する傾斜角度が、円周方向に関して段階的に変化している。即ち、被駆動側案内斜面34aは、回動方向一方向側に設けられた被駆動側高勾配部47と、回動方向他方向側に設けられた被駆動側低勾配部48との、互いの円周方向端縁同士を連続させる事により構成されている。被駆動側基準面31に対する被駆動側低勾配部48の傾斜角度は、被駆動側基準面31に対する被駆動側高勾配部47の傾斜角度よりも小さくなっている。
【0061】
又、駆動側カム面35aを構成する駆動側案内斜面38aも、駆動側基準面36に対する傾斜角度が、円周方向に関して段階的に変化している。即ち、駆動側案内斜面38aは、回動方向一方向側に設けられた駆動側高勾配部49と、回動方向他方向側に設けられた駆動側低勾配部50との、互いの円周方向端縁同士を連続させる事により構成されている。駆動側基準面36に対する駆動側低勾配部50の傾斜角度は、駆動側基準面36に対する駆動側高勾配部49の傾斜角度よりも小さくなっている。又、駆動側基準面36に対する駆動側高勾配部49の傾斜角度は、被駆動側基準面31に対する被駆動側高勾配部47の傾斜角度と等しくなっている。又、駆動側低勾配部50の傾斜角度と、被駆動側低勾配部48の傾斜角度とは、互いに等しくなっている。又、駆動側低勾配部50の円周方向長さは、被駆動側低勾配部48の円周方向長さよりも小さくなっている。
【0062】
この様な構成を有する本例の場合、
図16の(a)に示すアンロック状態で、調節レバー26(
図2参照)を一方向に回動させる事により、駆動側カム28aを一方向に回動させると、先ず、
図16の(a)→(b)に示す様に、駆動側低勾配部50が被駆動側低勾配部48に摺接して案内されながら、カム装置27aの軸方向寸法が拡大する。次いで、
図16の(b)→(c)に示す様に、駆動側高勾配部49が被駆動側高勾配部47に摺接して案内されながら、カム装置27の軸方向寸法が拡大し、ロック状態となる。
【0063】
この様に、本例の場合、アンロック状態をロック状態に切り替える際には、駆動側案内斜面38aと被駆動側案内斜面34aとが、いきなり傾斜角度が大きい部分同士、即ち、駆動側高勾配部49と被駆動側高勾配部47とで当接するのではなく、その前に、傾斜角度が小さい部分同士、即ち、駆動側低勾配部50と被駆動側低勾配部48とで当接する。この為、カム装置27aから調節レバー26に作用する回動の抵抗力が急激に変化する事を抑えられ、調節レバー26の操作性をより向上させる事ができる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0064】
[実施の形態の第6例]
本発明の実施の形態の第6例に就いて、
図17により説明する。
本例の場合には、カム装置27bを構成する被駆動側カム面30bの構成が、上述した実施の形態の第1例の場合と若干異なる。
【0065】
本例の場合には、被駆動側カム面30bを構成する被駆動側案内斜面34bのうち、被駆動側高勾配部47の回動方向一方向側の端部に、第二被駆動側低勾配部51を設けている。被駆動側基準面31に対する第二被駆動側低勾配部51の傾斜角度は、被駆動側基準面31に対する被駆動側低勾配部48の傾斜角度と等しくなっている。
【0066】
この様な構成を有する本例の場合、
図17の(a)に示すロック状態で、調節レバー26(
図2参照)を他方向に回動させる事により、駆動側カム28aを他方向に回動させると、先ず、
図17の(a)→(b)に示す様に、駆動側低勾配部50が第二被駆動側低勾配部51に摺接して案内されながら、カム装置27bの軸方向寸法が縮小する。次いで、
図17の(b)→(c)に示す様に、駆動側高勾配部49が被駆動側高勾配部47に摺接して案内されながら、カム装置27bの軸方向寸法が縮小した後、駆動側低勾配部50が被駆動側低勾配部48に摺接して案内されながら、カム装置27bの軸方向寸法が縮小して、ロック状態となる。
【0067】
この様に、本例の場合、ロック状態をアンロック状態に切り替える際には、駆動側案内斜面38aが、いきなり傾斜角度が大きい部分、即ち、被駆動側高勾配部47に摺接して案内されるのではなく、その前に、傾斜角度が小さい部分、即ち、第二被駆動側低勾配部51に摺接して案内される。この為、ロック状態をアンロック状態に切り替える際に、初期の段階から、駆動側案内斜面38aが被駆動側案内斜面34bに沿って勢い良く滑り落ちる事を防止できる。従って、調節レバー26が他方向に勢い良く回動する事を、より抑制する事ができる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第5例の場合と同様である。
【0068】
尚、上述した実施の形態の第5〜6例では、被駆動側案内斜面34a、34b及び駆動側案内斜面38aの傾斜角度が円周方向に関して段階的に変化する構成を採用したが、本発明を実施する場合には、被駆動側案内斜面及び駆動側案内斜面の傾斜角度が円周方向に関して連続的に(即ち徐々に)変化する構成を採用する事もできる。
【0069】
[実施の形態の第7例]
本発明の実施の形態の第7例に就いて、
図18〜19により説明する。
本例の場合には、カム装置27cを構成する駆動側カム面35bの構成が、上述した実施の形態の第1例の場合と若干異なる。
【0070】
即ち、本例の場合には、被駆動側カム面30cを構成する被駆動側凸部32aの先端面60のうち、回動方向他方向側の端部に、係止凸部52を設けている。そして、ロック状態で、この係止凸部52を、駆動側凸部37の先端部の回動方向他方向側の端縁部に係合させる事により、駆動側カム28及び調節レバー26(
図2参照)が、意図せず、他方向に回動する事、即ち、ロック状態が解除される事を防止できる様にしている。
【0071】
又、本例の場合には、調節レバー26と車体側ブラケット13との間にコイルばね等の付勢ばね53を設け、この付勢ばね53の弾力により、アンロック状態で、調節レバー26を一方向に付勢し、被駆動側カム29bの被駆動側案内斜面34に、駆動側カム28の駆動側案内斜面38を少し乗り上げさせている。これにより、アンロック状態で、調節レバー26の回動位置を静止させる事ができると共に、調節レバー26を操作する際のがたつき感をなくす事ができる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0072】
[実施の形態の第8例]
本発明の実施の形態の第8例に就いて、
図20〜21により説明する。
本例の場合には、カム装置27dを構成する被駆動側カム面30d及び駆動側カム面35bの構成が、上述した実施の形態の第7例の場合と若干異なる。
【0073】
本例の場合、被駆動側カム面30dを構成する被駆動側案内斜面34a、及び、駆動側カム面35bを構成する駆動側案内斜面38aは、上述の
図16に示した実施の形態の第5例の場合と同様の構成を有している。
【0074】
又、被駆動側カム面30dを構成する被駆動側基準面31a及び被駆動側凸部32aの先端面60aが、回動方向一方向側に向かう程幅方向外側に向かう方向、即ち、被駆動側案内斜面34aと同方向に、この被駆動側案内斜面34aよりも小さい傾斜角度で傾斜している。
又、駆動側カム面35bを構成する駆動側基準面36a及び駆動側凸部37aの先端面61aが、回動方向一方向側に向かう程幅方向外側に向かう方向、即ち、駆動側案内斜面38aと同方向に、この駆動側案内斜面38aよりも小さい傾斜角度で傾斜している。
又、被駆動側カム面30dを構成する被駆動側基準面31a及び被駆動側凸部32aの先端面60aの傾斜角度と、駆動側カム面35bを構成する駆動側基準面36a及び駆動側凸部37aの先端面61aとの傾斜角度とは、それぞれ同じ大きさになっている。
【0075】
そして、本例の場合、アンロック状態では、
図21の(b)に示す様に、付勢ばね53(
図18参照)の弾力により、駆動側凸部37aの先端面61aが、被駆動側基準面31aの円周方向中間部まで乗り上がった状態となる事で、カム装置27d及び調節レバー26にがたつきが生じる事を防止している。
図20の(a)は、アンロック状態からロック状態への切り替えの際に、調節レバー26と共に駆動側カム28bが一方向に回動し、駆動側低勾配部50が被駆動側低勾配部48に接触した状態を示している。
【0076】
本例の場合には、被駆動側案内斜面34aではなく、被駆動側案内斜面34aよりも傾斜角度が小さい被駆動側基準面31aに駆動側凸部37aの先端面61aが乗り上げる程度の付勢ばね53の弾力があれば良い為、この付勢ばね53の弾力を余り大きくする必要がない。従って、この付勢ばね53を掛け渡す部分の強度を低く抑える事ができる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第7例の場合と同様である。
【0077】
尚、本発明を実施する場合には、弾性部材として、圧縮量に対する反力の特性にヒステリシスを生じる、各種のものを採用する事ができる。
例えば、弾性部材として、単体の皿ばね44(
図7)を採用する事もできる。
【0078】
又、弾性部材として、例えば
図22に示す様な、それぞれが複数個(図示の例では2個)の皿ばね44、44を並列重ねして成る、1対の重ね皿ばね同士を、互いに直列組み合わせで重ね合わせたものを採用する事もできる。
【0079】
又、弾性部材として、例えば
図23に示す様な、輪ばね54を採用する事もできる。この輪ばね54は、それぞれが弾性を有する金属等の材料により造られた、複数個ずつの内輪55と外輪56とを備える。このうちの内輪55は、全周がつながった円環状に構成され、外周面の軸方向両半部に、この内輪55の軸方向中央側が大径側となる部分円すい面状の内輪側摩擦面57を有している。又、外輪56は、全周がつながった円環状に構成され、内周面の軸方向両半部に、この外輪56の軸方向中央側が小径側となる部分円すい面状の外輪側摩擦面58を有している。そして、この様な内輪55と外輪56とを、圧縮方向である軸方向に関して交互に配置すると共に、軸方向に隣り合う内輪55と外輪56との、互いに近い側の内輪側摩擦面57と外輪側摩擦面58とを面接触させている。
【0080】
又、弾性部材として、例えば
図24に示す様な、略部分円筒状の板ばね59を、単体で、或いは、複数重ね合わせて構成された重ねばねとして、採用する事もできる。
又、弾性部材としては、ばね材(皿ばね、輪ばね、板ばね等)の他、例えばゴム材を採用する事もできる。又、ばね材は、金属製に限らず、例えば合成樹脂製であっても良い。
【0081】
又、本発明を実施する場合、1対の支持板部同士の間隔を拡縮する為の拡縮装置を構成する変換装置は、ねじ装置とする事もできる。このねじ装置は、例えば、調節ロッドの一端部に形成された雄ねじ部に調節ナットを螺合する事により構成され、この調節ナットの螺合量(軸方向に関する螺合位置)を、調節レバーを回動させる事により変化させるものである。この場合も、拡縮装置は、調節レバーを一方向に回動させる事によって調節ナットの螺合量を変化させる事に伴い、弾性部材の圧縮量を増大させる事で1対の支持板部同士の間隔を縮め、調節レバーを他方向に回動させる事によって調節ナットの螺合量を変化させる事に伴い、弾性部材の圧縮量を減少させる事で1対の支持板部同士の間隔を拡げる。
【0082】
本発明は、チルト機構とテレスコピック機構とのうちの、何れか一方の機構のみを備えたステアリング装置に適用する事もできる。