(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819350
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ドアの排水構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20210114BHJP
B60J 10/25 20160101ALI20210114BHJP
B60J 10/70 20160101ALI20210114BHJP
【FI】
B60J5/04 T
B60J10/25
B60J10/70
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-29256(P2017-29256)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-134916(P2018-134916A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】大竹 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 英孝
(72)【発明者】
【氏名】菊地 剛
(72)【発明者】
【氏名】林 真人
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−085737(JP,A)
【文献】
特開2012−116445(JP,A)
【文献】
実開昭58−110165(JP,U)
【文献】
実開昭63−197725(JP,U)
【文献】
実開昭55−036036(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 10/00
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定された固定ガラスを具備した前記ドアの排水構造であって、
前記ドアのインナパネルの車両外側面に固定され、前記固定ガラスの下端部を下方から支持する第一ブラケットと、
前記第一ブラケットの下方において車両前後方向に延設されるとともに、前記インナパネルの前記車両外側面に固定された樋状の第二ブラケットと、を備え、
前記インナパネルは、その後端部において上下方向に延設され、最も後方において車両前方を向く第一面と前記第一面よりも車両前方かつ車両内側において車両外側を向く第二面とを曲面状に繋ぐ湾曲部を有し、
前記第二ブラケットは、車両後方へ下降傾斜するとともに受け止めた水を前記第一面または前記湾曲部へと導く底面部を有する
ことを特徴とする、ドアの排水構造。
【請求項2】
前記底面部には、車両前後方向に延びる溝が設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載のドアの排水構造。
【請求項3】
前記湾曲部は、前記インナパネルに固定されたラッチよりも車両外側に位置し、
前記底面部は、車両外側へ下降傾斜している
ことを特徴とする、請求項1または2記載のドアの排水構造。
【請求項4】
前記インナパネルは、前記第一面および前記第二面と、前記第二面よりも車両前方かつ車両内側において車両前方を向く第三面とによって前記後端部が段差状に形成され、
前記底面部は、前記第三面よりも車両後方に突設された排出部を有し、前記排出部よりも車両前方において車幅方向寸法が車両後方に行くほど拡大形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドアの排水構造。
【請求項5】
前記固定ガラスの下端部には、ウェザーストリップが装着されており、
前記ウェザーストリップは、車両前方へ下降傾斜した状態で車両前後方向に延設されるとともに、その前端に水抜き孔を有し、
前記第二ブラケットは、その前端部が前記水抜き孔よりも車両前方に位置するように配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のドアの排水構造。
【請求項6】
前記第二ブラケットは、前記底面部の車両内縁および車両外縁のそれぞれに立設された内壁部および外壁部と、前記内壁部および前記外壁部の前縁同士が結合されて形成された斜面部と、を有する
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のドアの排水構造。
【請求項7】
前記湾曲部よりも車両前方に設けられ、前記インナパネルの前記車両外側面と前記第二ブラケットとの間の隙間をシールするシーリング材を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のドアの排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに固定されたサイドガラスの周辺から浸入した水を排水するための排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドア(例えばリヤドア)には、昇降自在なサイドガラスとの間にドアサッシュを挟んで固定されたサイドガラス(ステーショナリーガラスやパーティションガラスとも呼ばれる)が設けられたものがある。この固定ガラスは、例えばリヤドアのインナパネルに取り付けられたウェザーストリップによって支持される。また、固定ガラスとリヤドアのアウタパネルとの間は、ベルトラインモール(アウトサイドモールやアウタウェザーストリップとも呼ばれる)によってシールされる。なお、ベルトラインモールは、例えばアウタパネルの縁に沿って設けられるシール部材であり、固定ガラスの外側面に当接するリップを有する。
【0003】
固定ガラスの周囲は、このベルトラインモールによって概ねシールされるものの例えば、ベルトラインモールのリップの端末と固定ガラスとの間の僅かな隙間やウェザーストリップの水抜き孔などから、アウタパネルとインナパネルとの間の空間に水が浸入することがある。インナパネルとアウタパネルとの間の空間にはラッチが配置されているため、水が浸入することでラッチの被水を招く。また、アウタパネル内に浸入した水が、インナパネルに形成された孔(例えばラッチ嵌合孔やチャイルドロックレバーの孔など)から車室内に浸入することもある。
【0004】
これに対し、固定ガラスの周辺から浸入した水を排水するための構造が提案されている。例えば特許文献1のシール構造では、固定ガラスの下縁を支持する支持溝に配設された樋部材によって水が集められ、この水が樋部材の前端に設けられた流出口からパーティションサッシュの溝部内へ排出されている。また、特許文献2には、ウェザーストリップの水抜き孔からドア内部に浸入した水の流れが排水部によって制御される構成が開示されている。具体的には、浸入した水が、水誘導板によってラッチを避けてインナパネルの内面側またはアウタパネルの内面側に導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3626612号公報
【特許文献2】特許第5493476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の構成によってラッチの被水防止性を向上させるためには、パーティションサッシュとラッチとの間隔を広めに確保する必要があり、スペース効率や配置自由度が低下しうる。また、上記の特許文献2では、インナパネルの内面側に水を導く構成を採用した場合にはラッチをインナパネルに取り付けると、ラッチの嵌合孔から水が浸入する可能性があるため好ましくない。また、特許文献2では、ウェザーストリップの前端に形成された水抜き孔から浸入した水はそのまま落下しているため、ラッチの被水を防止することが難しい。つまり、リヤドアの内部に浸入した水の経路が定まらない場合には、ラッチの被水を必ずしも防止できるとは限らない。
【0007】
本件のドアの排水構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、ドアの内部に浸入した水を特定の経路に案内することを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示するドアの排水構造は、車両のドアに固定された固定ガラスを具備したドアの排水構造であって、前記ドアのインナパネルの車両外側面に固定され、前記固定ガラスの下端部を下方から支持する第一ブラケットと、前記第一ブラケットの下方において車両前後方向に延設されるとともに、前記インナパネルの前記車両外側面に固定された樋状の第二ブラケットと、を備える。前記インナパネルは、その後端部において上下方向に延設され、最も後方において車両前方を向く第一面と前記第一面よりも車両前方かつ車両内側において車両外側を向く第二面とを曲面状に繋ぐ湾曲部を有する。また、前記第二ブラケットは、車両後方へ下降傾斜するとともに受け止めた水を前記第一面または前記湾曲部へと導く底面部を有する。
【0009】
(2)前記底面部には、車両前後方向に延びる溝が設けられていることが好ましい。
(3)前記湾曲部は、前記インナパネルに固定されたラッチよりも車両外側に位置し、前記底面部は、車両外側へ下降傾斜していることが好ましい。
(4)前記インナパネルは、前記第一面および前記第二面と、前記第二面よりも車両前方かつ車両内側において車両前方を向く第三面とによって前記後端部が段差状に形成されていることが好ましい。この場合、前記底面部は、前記第三面よりも車両後方に突設された排出部を有し、前記排出部よりも車両前方において車幅方向寸法が車両後方に行くほど拡大形成されていることが好ましい。
【0010】
(5)前記固定ガラスの下端部にはウェザーストリップが装着されており、前記ウェザーストリップは、車両前方へ下降傾斜した状態で車両前後方向に延設されるとともに、その前端に水抜き孔を有し、前記第二ブラケットは、その前端部が前記水抜き孔よりも車両前方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0011】
(6)前記第二ブラケットは、前記底面部の車両内縁および車両外縁のそれぞれに立設された内壁部および外壁部と、前記内壁部および前記外壁部の前縁同士が結合されて形成された斜面部と、を有することが好ましい。
(7)前記排水構造は、前記湾曲部よりも車両前方に設けられ、前記インナパネルの前記車両外側面と前記第二ブラケットとの間の隙間をシールするシーリング材を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示のドアの排水構造によれば、固定ガラスの周辺からドアの内部に浸入した水を第二ブラケットの底面部で受け止め、インナパネルの第一面または湾曲部へと案内し、第一面または湾曲部に沿わせて下方へと流すことができる。これにより、固定ガラスの周辺から浸入した水を、特定の経路にのみ流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る排水構造が適用されたリヤドアの側面図と、リヤドアの一部を拡大するとともにアウタパネルを透視して示す拡大図とを併せて示す図である。
【
図2】(A)は
図1のA−A矢視断面図であり、(B)は
図1のB−B矢視断面図である。
【
図3】
図1の拡大図を、車両前方外側から俯瞰した斜視図である。
【
図4】排水構造を車両前方外側から俯瞰した斜視図である。
【
図5】
図1のC−C矢視断面図に第二ブラケットを投影した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのドアの排水構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
以下の説明では、車両の進行方向を前方(車両前方)、逆側を後方(車両後方)とし、前方を基準に左右を定める。また、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。さらに、車両の左右方向(車幅方向)において、車室側(車両内側)を「内側」といい、その逆(車両外側)を「外側」という。
【0016】
[1.全体構成]
本実施形態の排水構造は、
図1に示す車両のリヤドア1(ドア)に適用される。ここでは、車両の左側面に設けられるリヤドア1を例示するが、車両の右側面のリヤドアにも同様の(左右対称の)構成の排水構造を適用可能である。リヤドア1は、アウタパネル2とインナパネル3とが組み合わされて構成され、上部に配置された昇降ガラス4およびステーショナリーガラス5(固定ガラス)を有する。昇降ガラス4とステーショナリーガラス5との間は、サッシュ5aによって仕切られている。サッシュ5aは、リヤドア1の上端から後述するラッチ8よりも下方まで延設される。
【0017】
インナパネル3は、リヤドア1の外側面を形成するアウタパネル2の内側に配置され、アウタパネル2との間に空間1Aを形成する。インナパネル3の後端部は、上下方向に延在する三つの表面3a,3b,3cによって段差状(クランク状)に形成される。
図5に示すように、第一面3aは前方を向く面であって最も後方に位置する。なお、第一面3aの外端部にはヘム面3eが設けられ、このヘム面3eにアウタパネル2が固定される。
【0018】
第二面3bは、第一面3aよりも前方かつ内側において外側を向く面であり、第三面3cは、第二面3bよりも前方かつ内側において前方を向く面である。インナパネル3は、第一面3aと第二面3bとの間を曲面状に繋ぐ第一湾曲部3d(湾曲部)を有する。すなわち、第一湾曲部3dは、第一面3aの内縁と第二面3bの後縁とを滑らかに繋ぎ、インナパネル3の後端部において上下方向に延設された部分である。本実施形態のインナパネル3は、第二面3bと第三面3cとの間にも、これらを曲面状に繋ぐ第二湾曲部3fが上下方向に延設されている。なお、第一湾曲部3dと第二湾曲部3fとは湾曲方向が反対である。
【0019】
図1に示すように、ステーショナリーガラス5は、リヤドア1の窓枠のうちサッシュ5aで仕切られた後方側の部分に嵌め込まれて固定されている。ステーショナリーガラス5の周縁部には、その全周に亘ってステーショナリーウェザーストリップ6(以下、単に「ウェザーストリップ6」という)が装着されており、ステーショナリーガラス5は、ウェザーストリップ6を介して窓枠に固定されている。ステーショナリーガラス5は、その前縁がサッシュ5aの溝部(図示略)に嵌合され、下端部がインナパネル3に固定された第一ブラケット10に嵌合されて支持されている。第一ブラケット10は、ステーショナリーガラス5(ウェザーストリップ6)を下方から支持する部品であり、インナパネル3の外側面に固定されている。
【0020】
図1,
図2(A)および(B)に示すように、第一ブラケット10は、インナパネル3の窓枠を構成する端部(ベルトライン)に沿って前方へ下降傾斜した状態で前後方向に延設される。また、
図2(A)に示すように、ウェザーストリップ6は、ステーショナリーガラス5に対し、その下端部を挟み込んだ状態で装着されており、第一ブラケット10と同様に、前方へ下降傾斜した状態で前後方向に延設される。そして、ウェザーストリップ6におけるステーショナリーガラス5の下端部に装着される部位の前端には、ステーショナリーガラス5とウェザーストリップ6との間の僅かな隙間に浸入した水を排出するための水抜き孔6aが設けられる。また、
図2(A)および(B)に示すように、ステーショナリーガラス5の下端部における外側の面は、アウタパネル2の窓枠を構成する端部(ベルトライン)に沿って取り付けられたベルトラインモール7のリップによってシールされる。
【0021】
図1および
図3に示すように、インナパネル3の外側面(アウタパネル2に対向する面)にはラッチ8が取り付けられる。ラッチ8は、インナパネル3の第一湾曲部3dよりも内側に配置される。インナパネル3のラッチ8と重なる箇所には、例えば、ラッチ8の嵌合孔,ラッチ8のハーネスコネクタ部の孔,チャイルドロックレバーの孔等の貫通孔(いずれも図示略)が形成されている。
【0022】
そのため、ステーショナリーガラス5の周辺(例えば、ベルトラインモール7のリップ端末とステーショナリーガラス5との間の隙間やウェザーストリップ6の水抜き孔6aなど)から空間1Aに浸入した水がラッチ8にかかるように流れてしまうと、上記の貫通孔から車室内に水が浸入しうる。本実施形態の排水構造は、このようなラッチ8の被水を防止するためのものである。以下、排水構造について詳述する。
【0023】
[2.排水構造]
本実施形態の排水構造は、上記の第一ブラケット10と第二ブラケット20とシーリング材30とを備え、上述したインナパネル3の後端部の形状を利用して、ステーショナリーガラス5の周辺から浸入した水を、インナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3dへと案内するものである。二つのブラケット10,20は、例えば薄い板金を曲げ加工することで形成される。
【0024】
図1〜
図4に示すように、第一ブラケット10は、ステーショナリーガラス5の下端部(ウェザーストリップ6)を下方から支持する支持部11と、インナパネル3に対して第一ブラケット10を取り付けるための固定部12と、ウェザーストリップ6の外側において支持部11から立設された立面部13とを有する。
【0025】
図2(B)に示すように、支持部11は、ウェザーストリップ6の幅寸法(車幅方向の寸法)よりも大きな幅寸法を有する平面状の部位であり、内側に向かって下降傾斜している。
図2(B)および
図4に示すように、固定部12は、支持部11の内縁から立設され、インナパネル3の窓枠を構成する端部の外側面に沿った平面状あるいは曲面状の部位である。固定部12は、例えば溶接によってインナパネル3に固定される。立面部13は、支持部11の外縁から立設され、固定部12に対向する部位である。すなわち、第一ブラケット10は、上方に開放した略コの字形状に形成されている。
【0026】
図1〜
図6に示すように、第二ブラケット20は、ステーショナリーガラス5の周辺から浸入した水(上から流れてくる水)を受け止め、その水をインナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3dへと案内する樋状の部品である。第二ブラケット20は、第一ブラケット10の下方において前後方向に延設されるとともに、インナパネル3の外側面に固定される。第二ブラケット20は、その前端部がウェザーストリップ6の水抜き孔6aよりも前方に位置するように配置される。また、
図5に示すように、第二ブラケット20の後端部(後述する排出部21a)は、インナパネル3の第一湾曲部3dに近接配置され、第一面3aとの間に隙間をあけて配置される。
【0027】
図1〜
図6に示すように、第二ブラケット20は、浸入した水を受け止められるように、樋状(すなわち上方に開放したほぼコの字形状)に形成されている。つまり、第二ブラケット20は、水を受け止めて案内する機能を持った底面部21と、底面部21の内縁および外縁のそれぞれに立設された内壁部22および外壁部23とを有する。底面部21は、後方へ下降傾斜した状態で前後方向に延設され、受け止めた水を第一面3aまたは第一湾曲部3dへと導くものである。
【0028】
図2(A),(B),
図5および
図6に示すように、底面部21には、前後方向に延びる溝21cが凹設されている。この溝21cによって、底面部21で受け止められた水が後方へと流れやすくなる。また、底面部21は、インナパネル3の第三面3cよりも後方に突設された排出部21aを有し、排出部21aよりも前方において車幅方向の寸法が後方へ行くほど拡大形成されている。さらに、本実施形態の底面部21は、
図2(A)および(B)に示すように、外側に向かって下降傾斜している。このような構成により、底面部21によって水を受け止めやすくなるとともに、この水が外側へ案内されながら後方へと流れやすくなり、排出部21aから第一面3aまたは第一湾曲部3dへとスムーズに排出される。
【0029】
内壁部22および外壁部23は、底面部21で受け止めた水が内側および外側へ流れ落ちないようにするためのものである。言い換えると、底面部21上の水が排出部21a以外から排出されることを防ぎ、第二ブラケット20によって受け止めた水の経路を一つ(インナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3d)に定めるための部位である。
【0030】
内壁部22は、インナパネル3に対して第二ブラケット20を固定するための固定部としての機能も併せ持つ。本実施形態の内壁部22は、
図4および
図6に示すように、インナパネル3に対する第二ブラケット20の位置を決めるための二つの位置決め孔22aを有する。なお、各位置決め孔22aと重なるように第一ブラケット10にも位置決め孔を設け、位置決めを共用してもよい。また、本実施形態の内壁部22は、インナパネル3に対して二箇所でスポット溶接される。なお、
図4中の符号31はスポット打点を示す。
【0031】
本実施形態の第二ブラケット20は、内壁部22および外壁部23の前縁同士が互いに近づく方向へ湾曲形成されるとともに、前縁同士が結合されて形成された斜面部24を有する。斜面部24は、底面部21よりも大きな傾斜角で後方へ下降傾斜しており、おもにベルトラインモール7のリップとサッシュ5aとの隙間やウェザーストリップ6の水抜き孔6aから落下してきた水を受け止める。
【0032】
シーリング材30は、
図4および
図5に示すように、第一湾曲部3dよりも前方に設けられ、インナパネル3の外側面と第二ブラケット20の内壁部22との間の隙間をシールするものである。シーリング材30は、底面部21上の水が排出部21a以外の部分からインナパネル3へ排出されることを防ぎ、水の経路を一つ(インナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3d)に定めるためのものである。
【0033】
本実施形態のシーリング材30は、インナパネル3の第二面3bの前側部分から第三面3cを亘って後側のスポット打点31に至る範囲に設けられている。なお、シーリング材30が設けられる範囲はこれに限られず、例えば、第二面3bと第三面3cとの間の第二湾曲部3fから後側のスポット打点31に至る範囲にシーリング材30が設けられていてもよい。
【0034】
[3.作用,効果]
(1)上述した排水構造によれば、
図7中に太矢印で示すように、ステーショナリーガラス5の周辺から空間1A(リヤドア1の内部)に浸入した水を第二ブラケット20の底面部21で受け止めることができる。さらに、受け止めた水をインナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3dへと案内し、第一面3aまたは第一湾曲部3dに沿わせて下方へと流すことができる。
【0035】
つまり、上述した排水構造によれば、ステーショナリーガラス5の周辺からリヤドア1の内部に浸入した水を、特定の経路にのみ流すことができる。このため、例えば本実施形態のように、第一湾曲部3dよりも内側に位置するようにラッチ8をインナパネル3に取り付ければ、ラッチ8の被水防止性を向上させることができる。これにより、インナパネル3のラッチ8と重なる箇所に形成された貫通孔から車室内に水が浸入することを防ぐことができる。
【0036】
(2)上述した排水構造では、第二ブラケット20の底面部21に溝21cが凹設されているため、底面部21上の水が後方へと流れやすくなり、排水性を向上させることができる。
(3)また、上述した排水構造では、インナパネル3の第一湾曲部3dがラッチ8よりも外側に位置している。また、第二ブラケット20の底面部21は、外側へも下降傾斜しているため、底面部21上の水は後方へ流れつつ外側にも案内される。つまり、第二ブラケット20を流れる水はラッチ8よりも車幅方向外側の位置で排水されるため、ラッチ8の被水防止性をさらに向上させることができる。
【0037】
(4)上述した排水構造では、底面部21が後方に行くほど拡大形成されているため、第二ブラケット20によってウェザーストリップ6の水抜き孔6aなどの想定された箇所以外から浸入する水も受け止められやすくなる。また、その水が後方へと流れやすくもなるため、排水性を向上させることができる。さらに、排出部21aが第三面3cよりも後方に突設されているため、底面部21を流れてきた水を第一面3aまたは第一湾曲部3dへと導くことができる。言い換えると、ステーショナリーガラス5の周辺からリヤドア1の内部に浸入した水を、特定の経路にのみ流すことができる。
【0038】
(5)上述した排水構造では、第二ブラケット20の前端部がウェザーストリップ6の水抜き孔6aよりも前方に位置するように配置されているため、ウェザーストリップ6の水抜き孔6aから落下した水も、第二ブラケット20によって受け止めることができる。つまり、ウェザーストリップ6の水抜き孔6aから落下した水も、特定の経路にのみ流すことができ、ラッチ8の被水を防止することができる。
【0039】
(6)上述した第二ブラケット20には、内壁部22および外壁部23の前縁同士が結合されて形成された斜面部24が設けられている。このため、底面部21で受け止めた水が前方へ流れることを防ぐことができ、排水性を向上させることができる。
(7)また、上述した排水構造によれば、インナパネル3の車両外側面と第二ブラケット20との間の隙間がシーリング材30によってシールされているため、第二ブラケット20を伝う水が第一面3aまたは第一湾曲部3d以外の部分へ導かれることを防ぐことができる。つまり、ステーショナリーガラス5の周辺からリヤドア1の内部に浸入した水を、特定の経路にのみ流すことができる。
【0040】
[4.その他]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述した第一ブラケット10の形状,固定方法,固定位置は一例であって上述したものに限られない。同様に、第二ブラケット20の形状,固定方法,固定位置も一例であって、上述したものに限られない。
【0041】
例えば、第二ブラケット20の底面部21の溝21cを省略してもよいし、底面部21が車幅方向に水平な姿勢でインナパネル3に固定されていてもよい。また、底面部21が前後方向に一様な幅寸法で形成されていてもよいし、位置決め孔22aやスポット打点31が上述した実施形態と異なる位置に設けられていてもよい。第二ブラケット20は、少なくとも、底面部21で受け止めた水をインナパネル3の第一面3aまたは第一湾曲部3dへと導く形状や配置であればよい。
なお、ウェザーストリップ6やベルトラインモール7の形状,ラッチ8の位置,インナパネル3の形状は、上述したものや図示したものに限られない。また、上述した排水構造は、車両のリヤドア1以外のドアにも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 リヤドア(ドア)
2 アウタパネル
3 インナパネル
3a 第一面
3b 第二面
3c 第三面
3d 第一湾曲部(湾曲部)
5 ステーショナリーガラス(固定ガラス)
6 ステーショナリーウェザーストリップ(ウェザーストリップ)
6a 水抜き孔
8 ラッチ
10 第一ブラケット
20 第二ブラケット
21 底面部
21a 排出部
21c 溝
22 内壁部
23 外壁部
24 斜面部
30 シーリング材