(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも基材、印刷層および保護層を順に有する印刷物における保護層を形成するための印刷用コート剤であって、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)およびロジン変性マレイン酸樹脂(C)を含み、
ロジン変性マレイン酸樹脂(C)の酸価が100mgKOH/g以下であり、
ポリウレタン樹脂(A)と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)の質量比(A)/(B)が90/10〜50/50であり、
ポリウレタン樹脂(A)とロジン変性マレイン酸樹脂(C)の質量比(A)/(C)が30/70〜70/30であることを特徴とする印刷用コート剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0019】
本発明の一実施態様は、少なくとも基材、印刷層および保護層を順に有する印刷物における保護層を形成するための印刷用コート剤であって、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)およびロジン変性マレイン酸樹脂(C)を含み、
ロジン変性マレイン酸樹脂(C)の酸価が100mgKOH/g以下であり、ポリウレタン樹脂(A)と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)の質量比(固形分)(A)/(B)が90/10〜50/50であり、ポリウレタン樹脂(A)とロジン変性マレイン酸樹脂(C)の質量比(固形分)(A)/(C)が30/70〜70/30であることを特徴とする印刷用コート剤に関する。
【0020】
印刷用コート剤中のポリウレタン樹脂(A)は柔軟性を付与し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)およびロジン変性マレイン酸樹脂(C)は耐スクラッチ性を付与する。更に耐熱性を持たせるために、質量比(A)/(B)が90/10〜50/50であり、ポリウレタン樹脂(A)とロジン変性マレイン酸樹脂(C)の質量比(A)/(C)が30/70〜70/30である。該比率は質量比(A)/(B)が80/20〜60/40、かつ質量比(A)/(C)が40/60〜60/40であることが好ましい。
【0021】
印刷用コート剤100質量%中、ポリウレタン樹脂(A)と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)とロジン変性マレイン酸樹脂(C)の合計は10〜30質量%であることが好ましい。また、印刷用コート剤中の固形分の合計100質量%中、ポリウレタン樹脂(A)と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)とロジン変性マレイン酸樹脂(C)の合計は70〜100質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の印刷用コート剤は表刷り用としての使用が好ましい。本明細書において、表刷りとは、紙基材およびプラスチック基材に印刷した場合、基材/印刷インキ/印刷用コート剤の順で印刷され、印刷面からみて印刷模様が確認できる場合を表刷りとする。なお、印刷用コート剤からなる保護層が本発明の印刷物において最外層となる。以下、本発明の印刷用コート剤を構成する各材料について説明する。
【0023】
<ポリウレタン樹脂(A)>
ポリウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が10,000〜100,000のものが好ましく、ガラス転移温度が−60℃〜0℃であることが好ましく、更には動的粘弾性測定において30℃における貯蔵弾性率E’が10
7〜10
9Paであるものが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度はDSC測定値である。
【0024】
また、ポリウレタン樹脂(A)は、アミン価および/または水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は1〜20mgKOH/gであることが好ましい。また水酸基を有するものが特に好ましく、水酸基価は1〜20mgKOH/gであることが好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂(A)は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。例えば、ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、アミン系鎖延長剤を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂などが好ましい。
【0026】
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールなどが挙げられる。中でもポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールの使用が好ましい。
【0027】
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエーテルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量はポリウレタン樹脂(A)固形分100質量%中、5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0028】
ポリエーテルポリオールは、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。中でもポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく、数平均分子量は200〜7,000であることが好ましい。数平均分子量は、末端を水酸基として水酸基価から計算するものであり、(式1)により求められる。
(式1)ポリオールの数平均分子量=1000×56.1× 水酸基の価数/水酸基価
【0029】
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量はポリウレタン樹脂(A)固形分100質量%中、5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0030】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸とジオールとのエステル化反応により得られる縮合物等が挙げられる。二塩基酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4−シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3,5−トリメチルペンタンジオール、2、4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−アルカンジオール、1,3−アルカンジオール、1−モノグリセライド、2−モノグリセライド、1−モノグリセリンエーテル、2−モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。
【0031】
ジオールは、なかでも分岐構造を有するジオールが好ましい。分岐構造とは、ジオールに含まれるアルキレン基の水素原子の少なくとも1つがアルキル基によって置換された、アルキル側鎖を有するジオールを意味し、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、および2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは、印刷適性、印刷効果、耐ブロッキング性を向上させるため特に好ましい。
これらのポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、二塩基酸としてはセバシン酸、アジピン酸が特に好ましい。また、ヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。
【0032】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは200〜7,000である。数平均分子量は、前記(式1)により求めることが可能である。本発明に用いるポリエステルポリオールの酸価は1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0033】
更に、ポリウレタン樹脂(A)は、更に低分子ジオール由来の構造単位を有するものが好ましい。低分子ジオールの含有量は、使用量の制限はないが、ポリウレタン樹脂(A)の所望の貯蔵弾性率やガラス転移温度とするため、ポリウレタン樹脂(A)固形分100質量%中、0.5〜20.0質量部であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜10.0質量%である。低分子ジオールとしては、分子量で50〜800のものが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3,5−トリメチルペンタンジオール、2、4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−アルカンジオール、1,3−アルカンジオール、1−モノグリセライド、2−モノグリセライド、1−モノグリセリンエーテル、2−モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。
【0034】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0035】
アミン系鎖延長剤としては、以下に限定されるものではないが、分子量500以下が好ましく、ジアミン系、多官能アミン系等のものが挙げられ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、p−フェニレンジアミンなどのジアミン系鎖延長剤の他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど水酸基を有するジアミン系鎖延長剤も用いることが出来る。これらの鎖延長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また必要に応じて3官能以上の多官能のアミン系鎖延長剤も使用出来、具体的には、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’−ジアミノジプロピルアミン)、トリエチレンテトラミン、N−(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン:(スペルミジン)、6,6−イミノジヘキシルアミン、3,7−ジアザノナン−1,9−ジアミン、N,N’−ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミンが挙げられる。中でも好ましくはイソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミンである。
【0036】
また、過剰反応停止を目的とした重合停止剤として、一価のアミン化合物を用いることもできる。かかる化合物としては例えば、1級、2級のアミノ基を有するモノアミン化合物であれば特に限定されないが、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類や2−エタノールアミンなどのアミノアルコール類等があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を重合停止剤として用いることができる。重合停止剤を用いるときには、重合停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に重合停止剤を単独に添加して重合停止反応を行ってもよい。一方、重合停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。
【0037】
ポリウレタン樹脂(A)の合成法は、ポリオール、低分子ジオール等をポリイソシアネートと反応させたのちアミン系鎖延長剤および必要に応じて重合停止剤と反応させてポリウレタン樹脂にすることが好ましい。例えば、ポリオールとポリイソシアネートを必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であればウレタン化触媒を用いて50℃〜150℃の温度で反応させ(ウレタン化反応)、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーにアミン系鎖延長剤を反応させてポリウレタン樹脂を得るプレポリマー法、あるいは、高分子ポリオールとポリイソシアネートとアミン系鎖延長剤および(および重合停止剤)を一段で反応させてポリウレタン樹脂(A)を得るワンショット法など公知の方法により製造することが出来る。また、アミン系鎖延長剤は、高分子ポリオールとともにポリイソシアネートとウレタン化反応で使用することもできる。
【0038】
プレポリマーを製造するに当たり、ポリオール(低分子ジオールを含む)とポリイソシアネートとの量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数とポリオールの合計の水酸基のモル数の比であるNCO/OH比=1.1〜3.0の範囲となるようにすることが好ましい。更に好ましくはNCO/OH比=1.3〜2.5である。
【0039】
また、プレポリマーの合成には有機溶剤を用いることが反応制御の面で好ましい。使用できる有機溶剤としてはイソシアネート基と反応不活性な有機溶剤が好ましく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロルベンゼン、パークレンなどのハロゲン系炭化水素などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合し混合溶媒として用いることもできる。
【0040】
さらに、このプレポリマーの合成反応には触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオール化合物に対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0041】
上記で得られた末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとアミン系鎖延長剤であるジアミン、トリアミンなどとを10〜60℃で反応させ、末端に活性水素基を含有する高分子量のポリウレタン樹脂(A)が得られる。
【0042】
また、プレポリマー中のイソシアネート基のモル数に対するアミン系鎖延長剤および重合停止剤のアミノ基の合計モル数の比は1.01〜2.00、好ましくは1.03〜1.06の範囲となるようにして反応させることが好ましい。
【0043】
なお、ポリウレタン樹脂(A)の有するウレタン結合濃度とウレア結合濃度の合計は、耐ブロッキング性が向上するため、2.3〜2.9mmol/gであることが好ましい。
【0044】
<塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000〜100,000のものが好ましく、20,000〜70,000が更に好ましい。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)の固形分100質量%中、塩化ビニルモノマー由来の構造は1〜30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70〜95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、被膜物性、耐ブロッキング性等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応、変性反応あるいは共重合でビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20〜200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃〜90℃であることが好ましい。
【0045】
なお、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)のガラス転移温度は、DSCにより測定できるが、以下で表されるFOXの式によっても推算することができる。
<FOX式>1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wi/Tgi+…+Wn/Tgn
〔上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+…+Wi+…Wn=1)である。〕
【0046】
<ロジン変性マレイン酸樹脂(C)>
ロジン変性マレイン酸樹脂(C)は、ロジン由来の構造と、マレイン酸および/または無水マレイン酸由来の構造を有する樹脂であり、必要により多価アルコール由来の構成成分を含有することができる。該ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジンなどが使用でき、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、3級のアルカノールアミンなどが挙げられる。尚、その他のフマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、飽和酸や脂肪酸類、極性基を有する長鎖アルキル化合物、界面活性剤等を含有しても良い。
【0047】
ロジン変性マレイン酸樹脂(C)は、印刷用コート剤の経時安定性が良化するため酸価が100mgKOH/g以下であることが好ましい。また、耐スクラッチ性が向上するため、JISK 5902(環球法)における軟化点が130〜160℃であることが好ましい。
【0048】
<金属キレート(D)>
本発明の印刷用コート剤には、耐熱性が向上するため、金属キレート(D)を使用することが好ましい。金属キレート(D)としては、チタンキレート、ジルコニウムキレート等が使用できる。チタンキレートとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、テトラターシャリーブチルチタネート 、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、トリエタノールアミンチタネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル‐3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、n−ブチルリン酸エステルチタンなどを挙げることができる。ジルコニウムキレートとしては、ジルコニウムプロピオネート、ジルコニウムアセチルアセテート等が例示できる。金属キレート(D)のなかでも、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、テトラターシャリーブチルチタネート 、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートなどの少なくともアルコキシ基が配位した構造を有するチタン系の金属キレート(D)が、好ましい。
金属キレート(D)の含有量は、印刷用コート剤100質量%中、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であればさらに好ましい。含有量が0.1質量%以上であると耐熱性、耐油性、耐ブロッキング性が向上し、5.0質量%以下の場合は、印刷用コート剤の経時安定性が良好となる。これらの金属キレート(D)を使用すると、印刷乾燥後に印刷用コート剤中の水酸基あるいはカルボキシル基と架橋するため被膜強度、諸物性が向上する。
【0049】
<ポリジメチルシロキサン樹脂>
本発明の印刷用コート剤において、ポリジメチルシロキサン樹脂を使用することで、耐ブロッキング性を向上させることができる。該樹脂としてはポリジメチルシロキサン構造を有するものであれば特に限定されないが、アミノ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フェノール変性ポリジメチルシロキサン樹脂、片末端反応性変性ポリジメチルシロキサン樹脂、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン樹脂、メチルスチリル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級アルコキシ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、高級脂肪酸含有変性ポリジメチルシロキサン樹脂、フッ素変性ポリジメチルシロキサン樹脂、から選ばれる少なくとも1種の変性ポリジメチルシロキサン樹脂が好ましい。中でもアミノ変性ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン樹脂がより好ましい。耐ブロッキング性の向上に加えて印刷用コート剤の印刷時における消泡性が向上するため、ポリジメチルシロキサン樹脂は印刷用コート剤100質量%中、0.1〜3質量%含有することが好ましい。
【0050】
<その他併用樹脂>
印刷用コート剤はその他の樹脂を含有しても良い。例えば、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
<有機溶剤>
本発明の印刷用コート剤は、液状媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用しても良い。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくはエステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤からなる有機溶剤が好ましい。また、印刷用コート剤100質量%中、10質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。なお、本発明の印刷用コート剤は、液状媒体として水を含んでいても良いが、その含有量は印刷用コート剤100質量%中0.1〜5質量%が好ましい。
【0052】
<添加剤>
本発明の印刷用コート剤は、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、印刷用コート剤の製造においては必要に応じて添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。ワックス成分としては炭化水素系ワックスまたは脂肪酸アミド、およびそれらの併用が好ましい。
【0053】
<炭化水素系ワックス>
上記炭化水素系ワックスとしては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスおよびフィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス等が挙げられる。中でも、ポリエチレンワックスおよびフィッシャー・トロプシュ・ワックスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む炭化水素系ワックスが好ましい。
【0054】
上記炭化水素系ワックスは、耐スクラッチ性およびポリウレタン樹脂等との相溶性性が良化するため、平均粒子径が1〜5μmであり、硬度(針入度)が0.5〜12であることが好ましい。また、炭化水素系ワックスは、融点が90〜150℃であることが好ましい。なお、針入度はJISK2207に従い、25℃において測定した値を表し、平均粒子径とは、レーザー回折・光散乱法での測定におけるD50の値を表し、融点はDSC昇温曲線における吸熱ピークのピークトップ(極小値)の温度を表す。
【0055】
炭化水素系ワックスの印刷用コート剤への添加方法は特に制限は無く、あらかじめ有機溶剤等と共に炭化水素系ワックスを混合して分散したものを添加しても良いし、固体である炭化水素系ワックスを直接印刷用コート剤中に添加して分散させても良い。炭化水素系ワックス分散の方法は特に制限は無く、ディスパー、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0056】
<印刷用コート剤の製造>
本発明の印刷用コート剤は、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)、ロジン変性マレイン酸樹脂(C)等を有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリウレタン樹脂(A)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(B)、ロジン変性マレイン酸樹脂(C)および必要に応じて分散剤を混合し、有機溶剤に分散させ、更にポリウレタン樹脂(A)、必要に応じて他の樹脂や添加剤などを配合することにより印刷用コート剤を製造することができる。また、分散機としては一般に使用される、例えば撹拌ディスパー、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。印刷用コート剤中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0057】
印刷用コート剤の粘度は、高速印刷に対応させるため、B型粘度計での25℃における粘度が50〜800cpsの粘度範囲であることが好ましい。より好ましくは100〜600cpsである。印刷用コート剤の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば各樹脂成分、有機溶剤などの量を適宜選択することにより調整することができる。
【0058】
<印刷物>
本発明における印刷物は、プラスチック基材などからなる基材上に、印刷インキを印刷して、印刷層を形成し、更にその印刷面に本発明の印刷用コート剤を印刷して保護層を形成することで得ることができる。したがって基材/印刷層/保護層となる。
印刷インキとしてはグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、液体トナー、インクジェットインキ等が挙げられ、それらの印刷方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、枚葉印刷方式、デジタル印刷方式等が挙げられる。中でも、デジタル印刷方式によって形成されたデジタル印刷層の多くは、他のグラビアインキ、フレキソインキ、枚葉インキ(オフセットインキ)等により形成された印刷層と比較して脆いため、本発明の印刷用コート剤からなる保護層による効果をより発揮することができる。
また、本発明の印刷用コート剤は印刷による被膜形成法が好ましく、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット印刷方式いずれでも良いが、グラビア印刷方式による印刷方法であることが好ましい。
グラビア印刷方式は、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブンによる乾燥によって被膜を定着することで得ることができる。
【0059】
<デジタル印刷層>
上記デジタル印刷層を形成するインキは、液体トナー、水性インクジェットインキ、紫外線硬化型インクジェットインキ、溶剤型インクジェットインキ等が挙げられ、デジタル印刷できるものであれば特段限定されない。なお、プラスチック基材への印刷を考慮すると液体トナーまたは紫外線硬化型インクジェットインキであることが好ましい。
【0060】
例えば液体トナーとしては、トナー粒子を水及び/又は有機溶剤に分散した一般的なものが挙げられる。液体トナーは、トナー粒子を印字体に固定するための定着樹脂、トナー粒子を可視化するための着色剤、液体トナーの電気的特性を調整するための電荷調整剤等を含有する。
【0061】
定着樹脂としては、液体トナーに使用されている公知の樹脂を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
着色剤としては、液体トナーに使用されている公知の顔料及び/又は染料を用いることができる。この着色剤としては、例えば、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ファーストレッド、ブリリアントカーミン3B、ベンジジンオレンジ、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スピリットブラック、オイルブルー、ローダミン6B、ニグロシン、カーボンブラック、ジクロロキナクドリン、イソインドリン、酸化チタン等が挙げられる。
【0063】
電荷調整剤としては、例えば、ナフテン酸、オレイン酸、オクテン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩、ポリオキシエチル化アルキルアミンのような非イオン性界面活性剤、レシチン、アマニ油等の油脂類、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルなどの公知の電荷調整剤を使用することができる。
【0064】
<プラスチック基材>
上記プラスチック基材は、フィルム基材であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハンなどのフィルム基材、およびこれらの複合材料からなるフィルム基材が挙げられる。プラスチック基材は、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの金属あるいは金属酸化物が蒸着されていても良く、更に蒸着面をポリビニルアルコールなどの塗料でコーティング処理を施されていても良い。一般的に印刷される基材表面はコロナ処理などの表面処理が施されている場合が多い。さらにこれらプラスチック基材については、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどプラスチックフィルムを加工して得られるフィルムも使用する事が可能である。
【0065】
防曇剤は界面活性剤が好ましく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルやエチレンオキサイド付加物などのイオン系界面活性剤を1種あるいは複数用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部および%は、特に注釈の無い場合、それぞれ質量部および質量%を表わす。
【0067】
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5〜2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0068】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製ガードカラムH
XL−H
東ソー株式会社製TSKgelG5000H
XL
東ソー株式会社製TSKgelG4000H
XL
東ソー株式会社製TSKgelG3000H
XL
東ソー株式会社製TSKgelG2000H
XL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0069】
(ウレタン結合濃度とウレア結合濃度の和)
下記の式により算出した。
[ウレタン結合濃度+ウレア結合濃度]=[ポリイソシアネートのNCO基のモル数(mmol)]/[ポリウレタン樹脂の固形分質量(g)]
【0070】
(軟化点)
JIS K5902(環球法)に従って求めた。
【0071】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂PU1]
アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの縮合物である数平均分子量1000のポリエステルポリオール(以下「MPD/AA」)195部、1,3−プロパンジオール5部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)115.9部、および酢酸エチル200部を窒素気流下にて80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)45.9部、ジブチルアミン(以下「DBA」)2部、2−エタノールアミン(以下「2EtAm」)2部、酢酸エチル/イソプロパノール(以下「IPA」)=60/40(質量比)の混合溶剤653.7部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、固形分30%、アミン価5.0mgKOH/g、水酸基価5.0mgKOH/g、重量平均分子量40000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0072】
(合成例2)[ポリウレタン樹脂PU2]
表1に記載の原料と比率を用いた以外は、合成例1と同様の方法にてポリウレタン樹脂溶液PU2を得た。なお、表1中の「PPG」は数平均分子量1000のポリプロピレングリコールを表す。
【0073】
(実施例1)[印刷用コート剤S1の作製]
ポリウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)35部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製 ソルバインTAO 塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=91/2/7(質量比)の共重合樹脂、固形分30%酢酸エチル溶液))10部、ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学社製 マルキードNo5 酸価25mgKOH/g 軟化点120℃ 固形分30%酢酸エチル溶液)溶液を20部、金属キレート溶液(日本曹達社製 TBP(n−ブチルリン酸エステルチタン) 純度90%n‐ブタノール溶液)を1部、ポリジメチルシロキサン樹脂(信越化学社製KP356 ジメチルシロキサン樹脂)を0.1部、炭化水素系ワックス(三井化学社製 ハイワックス220MP ポリエチレンワックス 融点107℃ 軟化点113℃ 固形分15%有機溶剤分散液)を2部、溶剤として、メチルプロピレングリコール3部、酢酸n−プロピル11.9部、IPA17部を混合し、30分ディスパーで撹拌を行うことで印刷用コート剤S1を得た。
【0074】
(実施例2〜12)[印刷用コート剤S2〜S12の作製]
表2に記載された原料および配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、印刷用コート剤S2〜S12を得た。表中の原料情報は以下に示す。
ソルバインTA3:日信化学工業社製 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂 塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート=83/4/13(質量比)
ハリタック4851:ハリマ化成社製 ロジン変性マレイン酸樹脂 酸価19mgKOH/g 軟化点100℃
マルキード3002:荒川化学社製 ロジン変性マレイン酸樹脂 酸価90mgKOH/g 軟化点175℃
【0075】
(比較例1〜11)[印刷用コート剤T1〜T11の作製]
表3に記載された原料および配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、印刷用コート剤T1〜T11を得た。なお表3中のマルキードNo33は以下を表す。
マルキードNo33:荒川化学社製 ロジン変性マレイン酸樹脂 酸価310mgKOH/g 軟化点145℃
【0076】
(参考例1)[デジタル印刷物D1の作製]
片面コロナ放電処理された2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学社製 FOR 膜厚20μm)の処理面上に、デジタル印刷機(ヒューレットパッカード社製、HP Indigo WS6600)を用いて液体トナー(藍インキ)のベタ柄印刷を行い、印刷物D1を得た。
【0077】
(参考例2)[表刷りグラビアインキの印刷物E1の作製]
バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を31部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインTAO:日信化学工業社製 塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=91/2/7(質量比)の共重合樹脂、固形分30%酢酸エチル溶液))を14部、炭化水素系ワックス(三井化学社製 ハイワックス220MP ポリエチレンワックス 融点107℃ 軟化点113℃ 固形分15%有機溶剤分散液)を0.8部、藍顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を11部、酢酸n−プロピル/IPA=70/30(質量比)の溶液43.2部を混合し、アイガーミルで30分間分散し、表刷りグラビアインキを得た。
上記で得られた表刷りグラビアインキを、メチルエチルケトン(以下「MEK」):酢酸n−プロピル(以下「NPAC」):IPA=40:40:20(質量比)からなる混合溶剤により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、腐蝕175線 版深25μm ベタ柄の版を備えたグラビア印刷機により、片面コロナ放電処理された2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学社製 FOR 膜厚20μm)の処理面に、印刷速度80m/分でグラビア印刷を行い、印刷物E1を得た。
【0078】
(実施例13)[印刷用コート剤の印刷]
上記で得られた印刷用コート剤S1を、MEK:NPAC:IPA=40:40:20(質量比)からなる混合溶剤により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、腐蝕175線版深25μmベタ柄版を備えたグラビア印刷機により、上記デジタル印刷物D1の印刷面に表刷り印刷を印刷速度80m/分で行い、印刷物J1を得た。
【0079】
(実施例14〜24)
印刷用コート剤S2〜S12を用いて、表4−1に示す印刷構成で印刷を行う以外は実施例13と同様の方法で印刷を行い、印刷物J2〜J12を得た。
【0080】
(実施例25)
上記で得られた印刷用コート剤S1を、MEK:NPAC:IPA=40:40:20(質量比)からなる混合溶剤により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、腐蝕175線版深25μmベタ柄版を備えたグラビア印刷機により、上記印刷物E1の印刷面に表刷り印刷を印刷速度80m/分で行い、印刷物K1を得た。
【0081】
(実施例26、27)
印刷用コート剤S1の代わりに、表2に記載された印刷用コート剤S2、S3を使用し、実施例25と同様の方法によりそれぞれ印刷を行い、印刷物K2、K3を得た。
【0082】
(比較例12〜22)
上記印刷用コート剤T1〜T11を用いて、表4−2の印刷構成で印刷を行う以外は、実施例13と同様の方法で印刷を行い、印刷物JJ1〜JJ11を得た。
【0083】
<評価>
印刷物E1、D1(参考例)、および印刷用コート剤S1〜S12(実施例)、T1〜T12(比較例)から得られた印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)を用いて以下の評価を行い、評価結果を表4−1および表4−2に示した。
【0084】
<耐スクラッチ性>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、印刷面を爪で引掻き、印刷面に生じるインキ剥がれの程度を評価した。
5.キズが生じないもの (良好)
4.わずかにキズが生じるもの (実用可)
3.キズが生じるもの(やや不良)
2.3と1の中間程度のキズが生じるもの(不良)
1.非常に弱いもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0085】
<耐テープ接着性>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、ニチバン製セロハンテープ(12mm幅)を印刷面に貼り、テープを徐々に引き離し、途中から急激に引き離したときのインキ皮膜の剥離程度を評価した。
5.急激に引き離しても剥離しないもの(良好)
4.5と3の中間程度の剥離であるもの(実用可)
3.急激に引き離せば剥離するが、徐々に引き離した場合は剥離しないもの(やや不良)
2.3と1の中間程度の接着強度をもつもの(不良)
1.徐々に引き離しても剥離するもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
<光沢>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、BYK‐Gardner社製 Micro−TRI−gross meterの60°の光沢値および目視にて、光沢を評価した。
5.光沢値50以上のもの(良好)
4.光沢値20以上50未満のもの(実用可)
3.目視でややマット感のあるもの(やや不良)
2.マット感が強いもの(不良)
1.光沢が無いもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0086】
<耐ブロッキング性>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、以下の条件にて耐ブロッキング性を評価した。
(試料および圧力)
OPP印刷物の印刷面/塩ビシート 0.5kg/cm
2
(静置条件)40℃−80%RH 14時間
(評価方法)印刷面と各種基材とを引き剥がし、印刷面からのインキ被膜の取られ(剥がれ)具合を目視で判定。
なお上記において、塩ビシートは以下を表す。
塩ビシート:軟質塩ビシート 株式会社ハギテック製 型番2556−607−02 厚さ0.2mm
判定基準
5.印刷面のインキ被膜が全く剥離せず、剥離抵抗の小さいもの(良好)
4.インキ被膜の剥離面積が1%以上5%未満であり、剥離抵抗の小さいもの(実用可)
3.インキ被膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの(やや不良)
2.インキ被膜の剥離面積が20%以上50%未満のもの(不良)
1.インキ被膜が50%以上剥離するもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0087】
<耐熱性>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、それぞれ2cm×10cmの大きさに切り、同じ大きさに切ったアルミ箔(厚さ30μm)と印刷物の印刷面とを重ねあわせた。センチネル社製ヒートシーラーを用いて、2×9.8N/cm
2の圧力で、120℃1秒間アルミ箔を押圧し、アルミ箔を剥がしたときのインキ被膜の剥がれ具合を目視で判定した。尚、判定基準は以下の通りとした。
5. シールバー温度160℃で全く剥離しないもの(良好)
4. シールバー温度140℃で剥離しないが、160℃で剥離するもの(実用可)
3. シールバー温度120℃で剥離しないが、140℃で剥離するもの(やや不良)
2. シールバー温度100℃で剥離しないが、120℃で剥離するもの(不良)
1.シールバー温度100℃で剥離するもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0088】
<耐油性>
印刷物E1、D1(参考例)、印刷物J1〜J12(実施例)、K1〜K3(実施例)、並びにJJ1〜JJ12(比較例)について、それぞれ2cm×20cmの大きさに切り、印刷面に溶融した市販のマーガリン(商品名:ネオソフト雪印乳業(株)製)を全面に塗布し、25℃で6時間静置した後、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験機でインキの剥離度合いを目視で判定した。条件は荷重200g、10回往復、対カナキン3号とした。尚、判定基準は以下の通りとした。
5.印刷面のインキが全く剥離しないもの(良好)
4.インキ被膜の剥離面積が1%以上5%未満であるもの(実用可)
3.インキ被膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの(やや不良)
2.インキ被膜の剥離面積が20%以上50%未満のもの(不良)
1.インキ被膜が50%以上取られるもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0089】
評価結果から、本発明の印刷用コート剤を用いることで、デジタル印刷物と従来表刷りインキ印刷物の印刷層の光沢を向上させ、軟包装表刷りインキに要求される諸物性である耐塩ブロッキング性および耐テープ接着性、耐スクラッチ性、耐油性を大幅に向上させ、更にフィルムのシール時に要求される耐熱性を大幅に向上させることができた。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4-1】
【0094】
【表4-2】