特許第6819449号(P6819449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819449
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】蓄電装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20210114BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20210114BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20210114BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20210114BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01G11/84
   H01G13/00 361Z
   !H01M10/0585
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-89727(P2017-89727)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-190508(P2018-190508A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/146513(WO,A1)
【文献】 特開2013−143213(JP,A)
【文献】 特開2015−176699(JP,A)
【文献】 特開2018−060699(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0274960(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0124098(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−39
H01G 11/84
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の複数の正極電極及び負極電極が絶縁された状態で交互に積層されるとともに、
前記正極電極の一辺の一部から突出した形状の正極タブが積層された正極タブ群、及び前記負極電極の一辺の一部から突出した形状の負極タブが積層された負極タブ群を有する電極組立体を備えた蓄電装置の検査方法であって、
前記正極電極の一辺に沿う方向と前記負極電極の一辺に沿う方向とを一致させて幅方向とし、
前記電極組立体を積層方向から見た側面視において、前記幅方向に互いに対向する前記正極タブ群の前記幅方向の一端面と前記負極タブ群の前記幅方向の一端面との距離を第1距離として測定し、前記正極タブ群の前記幅方向の他端面と前記負極タブ群の前記幅方向の他端面との距離を第2距離として測定する測定工程と、
前記第1距離及び前記第2距離に基づいて、前記電極組立体における前記正極電極及び前記負極電極の前記幅方向への積層ずれを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする蓄電装置の検査方法。
【請求項2】
前記測定工程は、前記電極組立体の側面視の投影を用いて行われる請求項1に記載の蓄電装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極タブを有する正極電極と負極タブを有する負極電極とを積層した電極組立体を備える蓄電装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、電動機などへの供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などが搭載されている。二次電池は、シート状の正極電極及び負極電極をシート状のセパレータを介して積層した電極組立体と、該電極組立体を収容する直方体状及び金属製のケースとを備える(例えば、特許文献1参照)。正極電極及び負極電極は、集電体としての金属箔と、該金属箔の両面又は片面に存在する活物質層とを備える。正極電極及び負極電極は、金属箔の一辺の一部から突出した形状のタブを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−49193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電極組立体では、正極電極及び負極電極が金属箔の一辺に沿う方向(幅方向)にずれて積層されることがある。積層ずれが生じた電極組立体では、例えば、正極電極の活物質層の全面がセパレータを介して負極電極の活物質層に対向しなくなることで、二次電池におけるエネルギ密度が低下してしまう。このため、電極組立体において正極電極及び負極電極が積層ずれしているか否かを判定する二次電池の検査が行われている。例えば、特許文献1では、負極電極に形成された孔と正極電極を収納するセパレータに形成された孔の位置によって積層ずれを判定している。しかしながら、この方法では、負極電極及びセパレータに検査用の孔を形成しなければならず、二次電池の製造工程が煩雑になる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電極組立体における正極電極及び負極電極の積層ずれを容易に判定できる蓄電装置の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための蓄電装置の検査方法は、シート状の複数の正極電極及び負極電極が絶縁された状態で交互に積層されるとともに、前記正極電極の一辺の一部から突出した形状の正極タブが積層された正極タブ群、及び前記負極電極の一辺の一部から突出した形状の負極タブが積層された負極タブ群を有する電極組立体を備えた蓄電装置の検査方法であって、前記正極電極の一辺に沿う方向と前記負極電極の一辺に沿う方向とを一致させて幅方向とし、前記電極組立体を積層方向から見た側面視において、前記幅方向に互いに対向する前記正極タブ群の前記幅方向の一端面と前記負極タブ群の前記幅方向の一端面との距離を第1距離として測定し、前記正極タブ群の前記幅方向の他端面と前記負極タブ群の前記幅方向の他端面との距離を第2距離として測定する測定工程と、前記第1距離及び前記第2距離に基づいて、前記電極組立体における前記正極電極及び前記負極電極の前記幅方向への積層ずれを判定する判定工程と、を含むことを要旨とする。
【0007】
電極組立体において複数の正極電極及び負極電極のうち一部の正極電極や負極電極が幅方向に積層ずれしている場合、積層ずれしていない場合と比べて、第1距離が短くなったり、第2距離が長くなったりする。例えば、積層ずれしていない場合の第1距離と測定された第1距離との差の絶対値、及び積層ずれしていない場合の第2距離と測定された第2距離との差の絶対値の少なくとも一方が、正極タブ23及び負極タブ33の幅方向の寸法の公差の絶対値より大きい場合、電極組立体において正極電極及び負極電極が積層ずれしていると判定する。このように電極組立体において正極電極が有する正極タブ及び負極電極が有する負極タブを利用して第1距離及び第2距離を測定し、正極電極及び負極電極の幅方向への積層ずれを判定することにより、蓄電装置を検査することができる。この場合、正極電極や負極電極に対して検査用の加工等を施す必要が無く、電極組立体における正極電極及び負極電極の幅方向への積層ずれを容易に判定できる。
【0008】
また、上記蓄電装置の検査方法について、前記測定工程は、前記電極組立体の側面視の投影を用いて行われるのが好ましい。
これによれば、電極組立体を積層方向から見た側面視の投影を用いることで、電極組立体が存在する部分が暗い領域となり、存在しない部分が明るい領域となる。このため、投影を用いない場合と比較して、電極組立体が存在する部分と存在しない部分との境界、すなわち正極タブ群及び負極タブ群の一端面及び他端面の位置を精度良く特定することができる。よって、第1距離及び第2距離を精度良く測定でき、電極組立体における正極電極及び負極電極の幅方向への積層ずれの検査の精度を向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極組立体における正極電極及び負極電極の積層ずれを容易に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の二次電池の分解斜視図。
図2】実施形態の電極組立体の分解斜視図。
図3】実施形態の二次電池の検査方法を示す側面図。
図4】(a),(b)は電極組立体の平面図、(c),(d)は電極組立体の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、蓄電装置の検査方法を二次電池の検査方法に具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース11を備える。二次電池10は、ケース11に収容された電極組立体12を備える。ケース11は、直方体状のケース本体13と、ケース本体13の開口部13aを閉塞する矩形平板状の蓋14とを有する。ケース11を構成するケース本体13と蓋14は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)である。また、本実施形態の二次電池10は、その外観が角型をなす角型電池である。また、本実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0012】
二次電池10は、電極組立体12から電気を取り出すための正極端子15と負極端子16を備える。正極端子15と負極端子16は、蓋14に所定の間隔をあけて並設された一対の孔14aからケース11の外部に露出される。また、正極端子15及び負極端子16には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁リング17がそれぞれ取り付けられている。
【0013】
図2に示すように、電極組立体12は、シート状の複数の正極電極20と負極電極30とセパレータ40とを備える。電極組立体12は、正極電極20と負極電極30との間にセパレータ40を介在させ、かつ相互に絶縁させた状態で積層した層状構造を備える。
【0014】
正極電極20は、矩形シート状の集電体としての正極金属箔(例えばアルミニウム箔)21と、正極金属箔21の両面に存在する正極活物質層22とを有する。正極電極20は、一対の長辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第1縁部20aを備え、第1縁部20aの対辺となる他方の縁部に第2縁部20bを備える。さらに、正極電極20は、第1縁部20aと第2縁部20b同士を繋ぐ一対の短辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第3縁部20cを備え、第3縁部20cの対辺となる他方の縁部に第4縁部20dを備える。以下、第1縁部20a及び第2縁部20bに沿う方向を正極電極20の幅方向とし、第3縁部20c及び第4縁部20dに沿う方向を正極電極20の高さ方向として説明する。また、幅方向において、第3縁部20c側を幅方向一方とし、第4縁部20d側を幅方向他方とする。
【0015】
正極電極20は、第1縁部20aの一部から高さ方向に突出した矩形状の正極タブ23を有する。正極タブ23は、正極活物質層22が存在せず、正極金属箔21そのもので構成されている。正極タブ23は、第1縁部20aの幅方向中央からずれた位置に存在する。本実施形態の正極タブ23は、第1縁部20aの幅方向中央から幅方向一方にずれた位置に存在する。正極タブ23は、幅方向に向かい合う一対の縁部のうち、幅方向中央に近い一方の縁部に内側縁部23aを備え、他方の縁部に外側縁部23bを備える。
【0016】
負極電極30は、矩形シート状の集電体としての負極金属箔(例えば銅箔)31と、負極金属箔31の両面に存在する負極活物質層32とを有する。負極電極30は、一対の長辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第1縁部30aを備え、第1縁部30aの対辺となる他方の縁部に第2縁部30bを備える。さらに、負極電極30は、第1縁部30aと第2縁部30b同士を繋ぐ一対の短辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第3縁部30cを備え、第3縁部30cの対辺となる他方の縁部に第4縁部30dを備える。以下、第1縁部30a及び第2縁部30bに沿う方向を負極電極30の幅方向とし、第3縁部30c及び第4縁部30dに沿う方向を負極電極30の高さ方向として説明する。また、幅方向において、第3縁部30c側を幅方向一方とし、第4縁部30d側を幅方向他方とする。
【0017】
負極電極30は、第1縁部30aの一部から高さ方向に突出した矩形状の負極タブ33を有する。負極タブ33は、負極活物質層32が存在せず、負極金属箔31そのもので構成されている。負極タブ33は、第1縁部30aの幅方向中央からずれた位置に存在する。本実施形態の負極タブ33は、第1縁部30aの幅方向中央から幅方向他方にずれた位置に存在する。負極タブ33は、幅方向に向かい合う一対の縁部のうち、幅方向中央に近い一方の縁部に内側縁部33aを備え、他方の縁部に外側縁部33bを備える。
【0018】
セパレータ40は、矩形シート状の絶縁性材料からなる。セパレータ40は、正極電極20と負極電極30とを絶縁する。セパレータ40は、一対の長辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第1縁部40aを備え、第1縁部40aの対辺となる他方の縁部に第2縁部40bを備える。また、セパレータ40は、第1縁部40aと第2縁部40b同士を繋ぐ一対の短辺に沿う縁部のうちの一方の縁部に第3縁部40cを備え、第3縁部40cの対辺となる他方の縁部に第4縁部40dを備える。
【0019】
図4(a)に示すように、負極電極30の第1縁部30aの長さは、正極電極20の第1縁部20aの長さより長く、負極電極30の第2縁部30bの長さは、正極電極20第2縁部20bの長さより長い。さらに、負極電極30の第3縁部30cの長さは、正極電極20の第3縁部20cの長さより長く、負極電極30の第4縁部30dの長さは、正極電極20の第4縁部20dの長さより長い。つまり、負極電極30の外形は、正極電極20の外形より一回り大きい。
【0020】
また、セパレータ40の第1縁部40aの長さは、負極電極30の第1縁部30aの長さと等しく、セパレータ40の第2縁部40bの長さは、負極電極30の第2縁部30bの長さと等しい。さらに、セパレータ40の第3縁部40cの長さは、負極電極30の第3縁部30cの長さと等しく、セパレータ40の第4縁部40dの長さは、負極電極30の第4縁部30dの長さと等しい。つまり、セパレータ40の外形は、正極電極20の外形より一回り大きく、負極電極30の外形と等しい大きさである。
【0021】
積層ずれが生じていない電極組立体12を積層方向から見たとき、正極電極20の第1縁部20a及び第2縁部20bは、高さ方向において負極電極30及びセパレータ40の第1縁部30a,40a及び第2縁部30b,40bよりも内側に位置する。また、正極電極20の第3縁部20c及び第4縁部20dは、幅方向において負極電極30及びセパレータ40の第3縁部30c,40c及び第4縁部30d,40dよりも内側に位置する。
【0022】
図1に示すように、各正極電極20は、それぞれの正極タブ23が電極組立体12の積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。電極組立体12は、積層方向の一端から他端までの範囲の正極タブ23が集められた正極タブ群18を備える。正極タブ群18には、正極端子15が電気的に接合される。図4(a)に示すように、正極タブ群18は、幅方向の一端面としての内側端面18aと、幅方向の他端面としての外側端面18bとを備える。内側端面18aは、幅方向において負極タブ群19と対向している。
【0023】
同様に、図1に示すように、各負極電極30は、それぞれの負極タブ33が電極組立体12の積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。また、電極組立体12は、積層方向の一端から他端までの範囲の負極タブ33が集められた負極タブ群19を備える。負極タブ群19は、幅方向において正極タブ群18と異なる位置に存在する。負極タブ群19には、負極端子16が電気的に接続される。図4(a)に示すように、負極タブ群19は、幅方向の一端面としての内側端面19aと、幅方向の他端面としての外側端面19bとを備える。内側端面19aは、幅方向において正極タブ群18の内側端面18aと対向している。
【0024】
図4(a)及び図4(c)に示すように、正極電極20及び負極電極30に幅方向への積層ずれがない電極組立体12の場合、正極タブ群18の内側端面18aは、正極タブ23の内側縁部23aが積層されて構成され、外側端面18bは、正極タブ23の外側縁部23bが積層されて構成される。同様に、負極タブ群19の内側端面19aは、負極タブ33の内側縁部33aが積層されて構成され、外側端面19bは、負極タブ33の外側縁部33bが積層されて構成される。電極組立体12を積層方向から見た側面視において、正極タブ群18の内側端面18aと負極タブ群19の内側端面19aとの幅方向の距離を第1距離Aとし、正極タブ群18の外側端面18bと負極タブ群19の外側端面19bとの幅方向の距離を第2距離Bとする。全ての正極電極20及び負極電極30に積層ずれがない電極組立体12の場合の第1及び第2距離A,Bを第1及び第2基準距離A0,B0とする。
【0025】
一方、図4(b)及び図4(d)に示す電極組立体12aでは、複数の正極電極20のうち1枚の正極電極200が幅方向一方にずれた状態で積層されている。この場合、正極タブ群18の内側端面18aは、ずれている正極電極200を除く他の正極電極20の正極タブ23の内側縁部23aが積層されて構成され、外側端面18bは、ずれている正極電極200の正極タブ23の外側縁部23bによって構成される。負極タブ群19の内側端面19aは、負極タブ33の内側縁部33aが積層されて構成され、外側端面19bは、負極タブ33の外側縁部33bが積層されて構成される。つまり、正極タブ群18の内側端面18aと負極タブ群19の内側端面19a及び外側端面19bの幅方向の位置は、積層ずれがない電極組立体12の場合と同じ位置になる。一方、正極タブ群18の外側端面18bは、積層ずれがない電極組立体12の場合よりも幅方向外側(幅方向一方)に位置する。第1距離A1は第1基準距離A0と同じ長さになり、第2距離B1は第2基準距離B0よりも長くなる。なお、正極タブ23の幅方向の寸法に公差が存在し、負極タブ33の幅方向の寸法に公差が存在しないと想定した場合、第2距離B1と第2基準距離B0との差の絶対値は、正極タブ23の幅方向の寸法の公差の絶対値よりも大きくなる。
【0026】
なお、図示しないが、複数の正極電極20のうち1枚の正極電極200が幅方向他方にずれた状態で積層されている場合、正極タブ群18の内側端面18aは、ずれている正極電極200の正極タブ23の内側縁部23aによって構成される。正極タブ群18の外側端面18bは、ずれている正極電極200を除く他の正極電極20の正極タブ23の外側縁部23bが積層されて構成される。負極タブ群19の内側端面19aは、負極タブ33の内側縁部33aが積層されて構成され、外側端面19bは、負極タブ33の外側縁部33bが積層されて構成される。つまり、正極タブ群18の外側端面18bと負極タブ群19の内側端面19a及び外側端面19bの位置は、積層ずれがない電極組立体12の場合と同じ位置になる。一方、正極タブ群18の内側端面18aは、積層ずれがない電極組立体12の場合よりも幅方向内側(幅方向他方)に位置する。第2距離Bは第2基準距離B0と同じ長さになり、第1距離Aは第1基準距離A0よりも短くなる。なお、正極タブ23の幅方向に公差が存在し、負極タブ33の幅方向の寸法に公差が存在しないと想定した場合、第1距離Aと第1基準距離A0との差の絶対値は、正極タブ23の幅方向の寸法の公差の絶対値よりも大きくなる。
【0027】
次に、正極電極20及び負極電極30の幅方向への積層ずれを検査する電極組立体12の検査方法について説明する。
電極組立体12の検査工程は、正極電極20、負極電極30、及びセパレータ40を積層した後に行われる。図3に示すように、検査工程は、搬送路R上に配置された電極組立体12を搬送しながら行う。電極組立体12は、積層方向が搬送方向と直交するように搬送路R上に配置されている。検査工程は、形状取得工程、測定工程、及び判定工程を含む。検査工程は、検査装置50によって行われる。
【0028】
形状取得工程は、積層方向から見た電極組立体12の形状を取得する工程である。形状取得工程には、検査装置50の投光部51及びCCDカメラ52が用いられる。投光部51は、搬送路Rの下方に配置され、CCDカメラ52は、搬送路Rの上方に配置される。投光部51とCCDカメラ52は、搬送路Rを挟んで、電極組立体12の積層方向に対向配置されている。投光部51は、電極組立体12が搬送路Rの所定の位置まで搬送されると、電極組立体12全体に向けて投光する。搬送路Rには光が透過可能な材料が用いられている。よって、投光された光は搬送路Rを透過した後、その一部が電極組立体12によって遮られる。このとき、CCDカメラ52は、電極組立体12とその周辺を撮影することで投影画像を取得する。投影画像において、電極組立体12が存在する部分は暗い領域(図4(a)及び図4(b)のドット部分参照)、電極組立体12が存在しない部分は明るい領域となる。これにより、電極組立体12の側面視の形状を取得できる。
【0029】
測定工程は、電極組立体12の正極タブ群18と負極タブ群19との第1距離A及び第2距離Bを測定する工程である。測定工程は、検査装置50の測定部53によって行われる。測定部53には、CCDカメラ52が接続され、電極組立体12の投影画像が送信される。測定部53は、電極組立体12の投影画像を用いて第1距離A及び第2距離Bを測定する。
【0030】
判定工程は、測定工程で測定された第1距離A及び第2距離Bに基づいて、正極電極20及び負極電極30の積層ずれを判定する工程である。判定工程は、検査装置50の判定部54によって行われる。判定部54には、測定部53が接続され、第1距離A及び第2距離Bの測定結果が送信される。判定部54は、測定された第1距離Aと予め設定された第1基準距離A0とを比較する。また、判定部54は、測定された第2距離Bと予め設定された第2基準距離B0とを比較する。判定部54は、第1距離Aと第1基準距離A0との差の絶対値、及び第2距離Bと第2基準距離B0との差の絶対値の少なくとも一方が、正極タブ23及び負極タブ33の幅方向の寸法の公差の絶対値よりも大きい場合、電極組立体12において正極電極20及び負極電極30が幅方向へ積層ずれしていると判定する。判定部54は、第1距離Aと第1基準距離A0との差の絶対値、及び第2距離Bと第2基準距離B0との差の絶対値が、正極タブ23及び負極タブ33の幅方向の寸法の公差の絶対値以下の場合、電極組立体12において正極電極20及び負極電極30が幅方向へ積層ずれしていないと判定する。なお、判定工程において、積層ずれしていると判定された電極組立体12は、図示しない他の搬送路へと送られる。
【0031】
次に、本実施形態の作用を記載する。
上述したように、複数の正極電極20のうち1枚の正極電極200が幅方向外側にずれた状態で積層されている場合、積層ずれしていない電極組立体12の場合と比較して、第2距離B1が第2基準距離B0よりも長くなる。また、複数の正極電極20のうち1枚の正極電極200が幅方向内側にずれた状態で積層されている場合、積層ずれしていない電極組立体12の場合と比較して、第1距離Aが第1基準距離A0よりも短くなる。第2距離B1と第2基準距離B0との差の絶対値、及び第1距離Aと第1基準距離A0との差の絶対値が、正極タブ23及び負極タブ33の幅方向の寸法の公差の絶対値以下の場合、積層ずれしていないと判定し、正極タブ23及び負極タブ33の幅方向の寸法の公差の絶対値よりも大きい場合、積層ずれしていると判定する。このように第1距離A及び第2距離Bを測定することにより、電極組立体12における正極電極20及び負極電極30の幅方向への積層ずれを判定する。
【0032】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)複数の正極電極20及び負極電極30のうち一部の正極電極20や負極電極30が幅方向に積層ずれしていると判定された電極組立体12の場合、積層ずれしていないと判定された電極組立体12の場合と比べて、第1距離Aが短くなったり、第2距離Bが長くなったりする。このように正極電極20が有する正極タブ23及び負極電極30が有する負極タブ33を利用して第1距離A及び第2距離Bを測定し、正極電極20及び負極電極30の幅方向への積層ずれを判定することにより、二次電池10を検査できる。この場合、正極電極20や負極電極30に対して検査用の加工等を施す必要が無く、電極組立体12における正極電極20及び負極電極30の幅方向への積層ずれを容易に判定できる。
【0033】
(2)電極組立体12を積層方向から見た側面視の投影画像では、電極組立体12が存在する部分が暗い領域となり、存在しない部分が明るい領域となる。このため、投影を用いない場合と比較して、電極組立体12が存在する部分と存在しない部分の境界、すなわち正極タブ群18及び負極タブ群19の内側端面18a,19a及び外側端面18b,19bの位置を精度良く特定することができる。よって、第1距離A及び第2距離Bを精度良く測定でき、電極組立体12における正極電極20及び負極電極30の幅方向への積層ずれの検査の精度を向上できる。
【0034】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
○ 正極電極20は、正極金属箔21の片面に正極活物質層22が存在する構造でもよい。同様に、負極電極30は、負極金属箔31の片面に負極活物質層32が存在する構成でもよい。
【0035】
○ 負極電極30の外形は、正極電極20の外形と同じ大きさ、又は正極電極20の外形より小さくてもよい。
○ セパレータ40の外形は、正極電極20及び負極電極30のうち外形が大きい方の電極の外形より大きくてもよい。
【0036】
○ 電極組立体12は、複数の正極電極20と複数の負極電極30とをセパレータ40を介して交互に積層した構造であったが、電極組立体12の構造はこれに限定されない。例えば、電極組立体12は、正極電極を収納した電極収納セパレータと負極電極とを交互に積層した構造であってもよい。ただし、正極電極の正極タブは、電極収納セパレータに収納されず、電極収納セパレータから突出した状態にある。
【0037】
○ 正極タブ群18及び負極タブ群19の幅方向の位置は適宜変更してよい。ただし、正極タブ群18と負極タブ群19とが幅方向で重ならないようにする。
○ 上記実施形態では、電極組立体12を積層方向から見た側面視の投影画像を用いて第1距離A及び第2距離Bを測定したが、測定方法は限定されず、第1距離A及び第2距離Bを測定できれば他の方法であってもよい。例えば、電極組立体12の側面視の投影をスクリーンに映し、スクリーン上で第1距離A及び第2距離Bを測定してもよい。また、実物の電極組立体12を用いて、第1距離A及び第2距離Bを実測してもよい。
【0038】
○ 上記実施形態では、電極組立体12において正極電極20のみが幅方向に積層ずれしている例を挙げたが、負極電極30のみ又は正極電極20及び負極電極30の両方が幅方向に積層ずれしている場合についても、第1距離A及び第2距離Bを測定することにより、幅方向の積層ずれを判定できる。
【0039】
○ 上記実施形態では、電極組立体12において複数の正極電極20のうち1枚の正極電極20が幅方向に積層ずれしている例を挙げたが、複数の正極電極20が幅方向に積層ずれしている場合についても、第1距離A及び第2距離Bを測定することにより、幅方向の積層ずれを判定できる。なお、積層ずれの量が正極電極20ごとに異なる場合、ずれ量の最も大きい正極電極20における正極タブ23の内側縁部23a又は外側縁部23bが正極タブ群18の内側端面18a又は外側端面18bとなる。また、例えば、全ての正極電極20が幅方向外側に積層ずれしている場合、第1距離Aは第1基準距離A0よりも長くなり、かつ第2距離Bは第2基準距離B0よりも長くなる。全ての正極電極20が幅方向内側に積層ずれしている場合、第1距離Aは第1基準距離A0よりも短くなり、かつ第2距離Bは第2基準距離B0よりも短くなる。
【0040】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池でもよいし、他の二次電池であってもよい。要は、正極用の活物質と負極用の活物質との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0041】
○ 蓄電装置は、例えばキャパシタなど、二次電池以外の蓄電装置にも適用可能である。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想を、その効果とともに記載する。
【0042】
(イ)前記正極電極の外形は、前記負極電極の外形よりも小さく、前記正極電極及び前記負極電極の一辺と直交する辺に沿う方向を高さ方向とすると、前記電極組立体を積層方向から見た側面視において、前記正極電極は、前記負極電極の全ての縁部よりも幅方向内側及び高さ方向内側に位置し、前記正極タブは、前記負極電極の一辺よりも高さ方向外側に位置する蓄電装置の検査方法。
【0043】
これによれば、電極組立体を積層方向から見た側面視において、正極電極の全ての縁部は、負極電極によって視認できない状態にあるため、正極電極の縁部を利用して積層ずれを判定することは困難である。したがって、負極電極の縁部よりも高さ方向外側に位置する正極タブを利用して第1距離及び第2距離を測定することで、電極組立体における正極電極及び負極電極の幅方向の積層ずれを容易に判定できる。
【符号の説明】
【0044】
10…蓄電装置としての二次電池、12…電極組立体、18…正極タブ群、18a…一端面としての内側端面、18b…他端面としての外側端面、19…負極タブ群、19a…一端面としての内側端面、19b…他端面としての外側端面、20…正極電極、23…正極タブ、30…負極電極、33…負極タブ、A…第1距離、B…第2距離。
図1
図2
図3
図4