特許第6819458号(P6819458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819458
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】包装箱、および、ブランクシート
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/54 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   B65D5/54 301J
   B65D5/54 301P
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-97389(P2017-97389)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-193086(P2018-193086A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田代 英司
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3003926(JP,U)
【文献】 実開昭53−119224(JP,U)
【文献】 実開平06−067317(JP,U)
【文献】 実開昭54−123229(JP,U)
【文献】 特開2014−231379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装箱であって、
底板と、
前記底板と対向する開口を区画する上縁を備えて前記底板を囲う前後左右の側壁と、
1つの前記側壁である後壁の上縁に連設されて前記開口を覆う頂板と、
前記頂板の前縁に連設されて前壁の外面に接合された前フラップと、を備え、
前記頂板は、前記頂板の前縁に位置する左右で一対の前端から前記後壁の上縁に向けて延びる第1ミシン目を備え、前記頂板のなかで前記第1ミシン目に囲まれた領域が、前記開口を設けるための第1開封部であり、
前記前フラップは、前記第1ミシン目の各前端から前記前フラップの下縁まで延びる左右で一対の第2ミシン目に挟まれた中間部を備え、
前記前壁は、前記前壁の上縁を一辺とした形状を縁取る第3ミシン目を備え、前記第3ミシン目に囲まれた部分である切り取り部は、前記中間部の内面に接合され、
前記切り取り部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記中間部の下縁の下方にはみ出す部分を有し、かつ、左右方向では前記中間部以下の幅を有し、
前記切り取り部は、前記切り取り部の下縁を一辺とした形状を縁取る第4ミシン目を備え、前記第4ミシン目に囲まれた部分である差し込み部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記はみ出す部分を含む
包装箱。
【請求項2】
前記差し込み部は、当該差し込み部の左右方向における中央に、上下方向に延びるミシン目をさらに備える
請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記頂板の左右縁に別々に連設されて左右側壁を構成する外フラップをさらに備え、
前記各第1ミシン目は、前記一対の前端から前記左右縁の中間に位置する後端まで前記左右縁に対して傾きを有して延びる第1部分と、前記第1部分の後端から前記後壁の上縁に向けて延び、前記左右縁を構成する第2部分とから構成され、
前記左右縁は、前記第2部分と、前記第2部分以外である第5ミシン目とから構成され、
前記頂板は、前記頂板の前縁のなかで当該前縁の端から前記第1ミシン目の前端までの部分、前記第1部分、および、前記第5ミシン目によって囲まれた左右で一対の第2開封部と、前記第1ミシン目に囲まれた前記第1開封部とから構成される
請求項1または2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記頂板の前縁のなかで当該前縁の端から前記第1ミシン目の前端までの部分には、ミシン目が設けられている
請求項1から3のいずれか一項に記載の包装箱。
【請求項5】
底板と、
前記底板と対向する開口を区画する上縁を備えて前記底板を囲う前後左右の側壁と、
1つの前記側壁である後壁の上縁に連設されて前記開口を覆う頂板と、
前記頂板の前縁に連設されて前壁の外面に接合された前フラップと、
を備える包装箱の製造に用いられるブランクシートであって、
前記前フラップ、前記頂板、前記後壁、前記底板、および、前記前壁が、この順に連設されており、
前記頂板は、前記頂板の前縁に位置する左右で一対の前端から前記後壁の上縁に向けて延びる第1ミシン目を備え、前記頂板のなかで前記第1ミシン目に囲まれた領域が、前記開口を設けるための第1開封部であり、
前記前フラップは、前記第1ミシン目の各前端から前記前フラップの下縁まで延びる左右で一対の第2ミシン目に挟まれた中間部を備え、
前記前壁は、前記前壁の上縁を一辺とした形状を縁取る第3ミシン目を備え、前記第3ミシン目に囲まれた部分である切り取り部は、前記中間部に接合され
前記切り取り部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記中間部の下縁の下方にはみ出す部分を有し、かつ、左右方向では前記中間部以下の幅を有し、
前記切り取り部は、前記切り取り部の下縁を一辺とした形状を縁取る第4ミシン目を備え、前記第4ミシン目に囲まれた部分である差し込み部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記はみ出す部分を含む
ブランクシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装箱、および、ブランクシートに関する。
【背景技術】
【0002】
包装箱の一例である段ボール製のラップラウンド箱は、底板と、底板に連設された前後の側壁と、底板に連設された左右の側壁と、後壁の上縁に連設された頂板と、頂板の前縁に連設された前フラップと、を備える。前フラップの内面と、前壁の外面とは、相互に接合され、それによって、包装箱は封緘されている。前フラップは、左右の端部と中央部との境目にミシン目を備え、頂板は、前フラップのミシン目につながる左右のミシン目を備え、そして、各ミシン目が切断されることによって、包装箱は開封される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−040056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した包装箱の開封に際しては、まず、前フラップの中央部が、利用者の指などによって摘ままれ、前フラップのミシン目が切断されるように、前フラップの中央部が、前フラップの左右の端部に対して、引き上げられる。そして、前フラップの中央部が、利用者の指などによって摘ままれた状態で、頂板のミシン目が切断されるように、前フラップの中央部と頂板の一部とが引き上げられる。この際、利用者が摘むことのできる範囲が、帯状を有した1枚の前フラップのみに限られるため、頂板のミシン目を切断するための外力を受けて前フラップが折れ曲がってしまい、ミシン目を切断するための外力が、その切断に適した方向へ伝わりがたい構成となっている。
本発明の目的は、包装箱を開封するための外力をミシン目の切断に適した方向へ伝達可能とした包装箱、および、ブランクシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための包装箱は、包装箱であって、底板と、前記底板と対向する開口を区画する上縁を備えて前記底板を囲う前後左右の側壁と、1つの前記側壁である後壁の上縁に連設されて前記開口を覆う頂板と、前記頂板の前縁に連設されて前壁の外面に接合された前フラップと、を備える。前記頂板は、前記頂板の前縁に位置する左右で一対の前端から前記後壁の上縁に向けて延びる第1ミシン目を備え、前記頂板のなかで前記第1ミシン目に囲まれた領域が、前記開口を設けるための第1開封部である。前記前フラップは、前記第1ミシン目の各前端から前記前フラップの下縁まで延びる左右で一対の第2ミシン目に挟まれた中間部を備え、前記前壁は、前記前壁の上縁を一辺とした形状を縁取る第3ミシン目を備え、前記第3ミシン目に囲まれた領域である切り取り部は、前記中間部に接合されている。
【0006】
上記課題を解決するためのブランクシートは、底板と、前記底板と対向する開口を区画する上縁を備えて前記底板を囲う前後左右の側壁と、1つの前記側壁である後壁の上縁に連設されて前記開口を覆う頂板と、前記頂板の前縁に連設されて前壁の外面に接合された前フラップと、を備える包装箱の製造に用いられるブランクシートである。前記前フラップ、前記頂板、前記後壁、前記底板、および、前記前壁が、この順に連設されており、前記頂板は、前記頂板の前縁に位置する左右で一対の前端から前記後壁の上縁に向けて延びる第1ミシン目を備え、前記頂板のなかで前記第1ミシン目に囲まれた領域が、前記開口を設けるための第1開封部である。そして、前記前フラップは、前記第1ミシン目の各前端から前記前フラップの下縁まで延びる左右で一対の第2ミシン目に挟まれた中間部を備え、前記前壁は、前記前壁の上縁を一辺とした形状を縁取る第3ミシン目を備え、前記第3ミシン目に囲まれた領域である切り取り部は、前記中間部の内面に接合されている。
【0007】
上記包装箱、および、上記ブランクシートによれば、包装箱の開封時に、前フラップの中間部が、第2ミシン目を境界として、前フラップから切り取られる。前壁の切り取り部もまた、第3ミシン目を境界として、前壁から切り取られる。そして、これら相互に接合された中間部と切り取り部とが引き上げられ、それによって、第1ミシン目を境界として、頂板が前方から後方に向けて切り開かれる。結果として、第1開封部を開封する際には、中間部と切り取り部とから構成された積層体が、利用者の指などによって摘まれるため、第1ミシン目を切断するための外力を受ける中間部は折れ曲がりがたくなり、第1ミシン目を切断するための外力が、第1ミシン目の切断に適した方向へ伝達されやすくなる。
【0008】
上記包装箱において、前記切り取り部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記中間部の下縁の下方にはみ出す部分を有し、かつ、左右方向では前記中間部以下の幅を有し、前記切り取り部は、前記切り取り部の下縁を一辺とした形状を縁取る第4ミシン目を備え、前記第4ミシン目に囲まれた部分である差し込み部は、前記前壁の外面と対向する方向から見て、前記はみ出す部分を含んでもよい。
【0009】
上記包装箱によれば、第4ミシン目によって囲まれた差し込み部が、利用者の指などによって包装箱の内側に向けて押し込まれ、それによって、利用者の指先などが包装箱の内側に差し込まれる。そして、切り取り部のなかで差し込み部を除く部分と、中間部とから構成された積層体が、利用者の指などによって摘まれて、包装箱の外側に向けて引き出されるように、これらが切り取られる。すなわち、切り取られた積層体は、包装箱の外側に位置する。一方、中間部と切り取り部とから構成される積層体が、包装箱の内側に向けて押し込まれ、それによって、前フラップや前壁から積層体が切り取られる形態では、切り取られた積層体が、包装箱の内側に位置する。そのため、上述した構成であれば、切り取られた積層体が、包装箱の内側に位置する構成と比べて、積層体を起点として第1ミシン目を切断する操作での視認性を高めることが可能ともなる。
【0010】
上記包装箱において、前記頂板の左右縁に別々に連設されて左右側壁を構成する外フラップをさらに備え、前記各第1ミシン目は、前記一対の前端から前記左右縁の中間に位置する後端まで前記左右縁に対して傾きを有して延びる第1部分と、前記第1部分の後端から前記後壁の上縁に向けて延び、前記左右縁を構成する第2部分とから構成され、前記左右縁は、前記第2部分と、前記第2部分以外である第5ミシン目とから構成され、前記頂板は、前記頂板の前縁のなかで当該前縁の端から前記第1ミシン目の前端までの部分、前記第1部分、および、前記第5ミシン目によって囲まれた左右で一対の第2開封部と、前記第1ミシン目に囲まれた前記第1開封部とから構成されてもよい。
【0011】
上記包装箱によれば、頂板のなかで、第1部分、第5ミシン目、および、頂板の前縁に囲まれた各第2開封部は、第1開封部、および、外フラップから切り離されて、前フラップのみと前縁を介して連設される。そのため、第1ミシン目が切断された後では、すなわち、第1開口部が開封された後では、頂板の前縁を回転軸として、第2開封部を立ち上げることが可能であり、それによって、開口の全体を開放することが可能ともなる。
【0012】
上記包装箱において、前記頂板の前縁のなかで当該前縁の端から前記第1ミシン目の前端までの部分には、第6ミシン目が設けられてもよい。この包装箱によれば、第1部分、第5ミシン目、および、第6ミシン目に囲まれた各第2開封部を、第1ミシン目が切断された後に、すなわち、第1開口部が開封された後に、第2ミシン目、および、第6ミシン目の切断を経て、外フラップ、および、前フラップから切り取ることが可能ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】包装箱の斜視構造を示す斜視図。
図2】包装箱を製造するためのブランクシートを示す平面図。
図3】包装箱が開封される過程における包装箱の斜視構造を示す斜視図。
図4】包装箱が開封される過程における包装箱の斜視構造を示す斜視図。
図5】包装箱が開封される過程における包装箱の斜視構造を示す斜視図。
図6】包装箱が開封される過程における包装箱の斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図6を参照して包装箱、および、ブランクシートの一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、包装箱の一例として、段ボール製のラップランド箱を示し、包装箱における一対の側壁のなかで、前フラップの接合された1つの側壁を前壁、前壁と対向する他の側壁を後壁とし、前後方向、および、左右方向を規定している。
【0015】
[包装箱]
図1が示すように、直方体状を有した包装箱は、底板11、前後左右の側壁12,13,14,15、頂板16、および、前フラップ17を備える。前後左右の側壁12,13,14,15は、底板11と対向する矩形状を有した開口11Tを区画する上縁を備えて、底板11の周囲を囲う。頂板16は、1つの側壁である後壁13の上縁13Uに連設されて、開口11Tの全体を覆う。前フラップ17は、頂板16の前縁16Fに連設されて、前壁12の外面に接合された帯状を有する。
【0016】
頂板16は、前後方向に延びる直線状を有した右縁16Rと、前後方向に延びる直線状を有した左縁16Lとを備える。右縁16Rと左縁16Lとは、左右で一対の縁である左右縁の一例である。1つの側壁である右壁14は、頂板16の右縁16Rに連設された外フラップ14F1と、底板11に連設された外フラップ14F2とを備える。1つの側壁である左壁15は、頂板16の左縁16Lに連設された外フラップ15F1(図2参照)と、底板11に連設された外フラップ15F2(図2参照)とを備える。
【0017】
頂板16は、第1ミシン目を備える。第1ミシン目は、2つの第1開封線1L1と、2つの第2開封線1L2とから構成される。各第1開封線1L1の前端は、頂板16の前縁16Fに位置し、各第1開封線1L1の後端1LCは、頂板16における別々の左右縁の中間に位置する。各第1開封線1L1は、頂板16の左右縁に対して傾きを有した直線状を有する。各第2開封線1L2は、別々の第1開封線1L1の後端1LCから、後壁13の上縁13Uに向けて延び、頂板16の左右縁を構成する。頂板16のなかで、第1ミシン目に囲まれた六角板状の領域は、開口11Tを開けるための1つの第1開封部161である。
【0018】
頂板16の各左右縁は、1つの第2開封線1L2と、1つの第5開封線16Sとから構成される。各第5開封線16Sは、第5ミシン目の一例であり、頂板16と外フラップ14F1,15F1とを連設させるミシン目である。各第5開封線16Sは、頂板16における前縁16Fの左右の端から、第1開封線1L1の後端1LCまで延びる。
【0019】
頂板16の前縁16Fは、左右で一対の回動軸線16FEと、一対の回動軸線16FEに挟まれた折線である中間線16FCとから構成される。各回動軸線16FEは、前縁16Fの左右の各端と第1開封線1L1の前端とをつなぐ。頂板16のなかで、回動軸線16FE、第1開封線1L1、および、第5開封線16Sによって囲まれた三角板状を有する領域は、左右で一対の第2開封部162である。頂板16は、上記第1ミシン目に囲まれた第1開封部161と、これら2つの第2開封部162とから構成される。
【0020】
前フラップ17は、左右で一対のミシン目である開始線17Lを備える。各開始線17Lは、第2ミシン目の一例である。各開始線17Lは、第1開封線1L1の各前端から前フラップ17の下縁まで延びる。前フラップ17は、左右で一対のフラップ端部17Eと、一対のフラップ端部17Eに挟まれたフラップ中間部17Cとから構成される。フラップ中間部17Cの上縁は、上記中間線16FCであり、フラップ中間部17Cの左右縁は、上記開始線17Lである。フラップ中間部17Cの内面は、接着部Aによって前壁12の外面に接合されている。各フラップ端部17Eの上縁は、上記回動軸線16FEである。各フラップ端部17Eとフラップ中間部17Cとの境界は、第1開封線1L1の前端から下方に延びる上記開始線17Lである。フラップ中間部17Cは、左右一対の開始線17Lの切断によって、前フラップ17から切り取られる。
【0021】
前壁12は、前壁12の上縁を一辺とした矩形形状を縁取るミシン目である切り取り線12LTを備える。切り取り線12LTは、第3ミシン目の一例である。切り取り線12LTに囲まれた部分である切り取り部12Pは、フラップ中間部17Cの内面に接合されている。切り取り部12Pは、前壁12の外面と対向する方向から見て、左右方向では、フラップ中間部17C以下の幅を有した矩形形状をする。切り取り部12Pは、切り取り線12LTの切断によって、前壁12から切り取られる。
【0022】
切り取り部12Pは、前壁12の外面と対向する方向から見て、フラップ中間部17Cの下縁の下方にはみ出す部分を有する。切り取り部12Pは、差し込み線12LPを含む。差し込み線12LPは、切り取り部12Pの下縁を一辺とした三角形状を、切り取り部12Pの内側に縁取るミシン目であり、第4ミシン目の一例である。差し込み線12LPに囲まれた部分は、差し込み部12P1であり、差し込み部12P1は、前壁12の外面と対向する方向から見て、前フラップ17の下縁からはみ出す部分を含む。前フラップ17の下縁は、上方に窪む差し込み縁17Tを備え、差し込み部12P1は、差し込み縁17Tから下方にはみ出す部分を含む。差し込み部12P1は、差し込み部12P1の左右方向における中央に、上下方向に延びるミシン目をさらに備える。差し込み部12P1は、包装箱の外側から内側に向けて差し込み部12P1が押し込まれ、それによって、上下方向に延びるミシン目と差し込み線12LPとが切断され、前壁12を貫通する孔である差し込み孔を形成する。
【0023】
[ブランクシート]
次に、包装箱を製造するためのブランクシートについて説明する。
図2が示すように、1枚のブランクシートにおいて、帯状を有した前フラップ17、矩形板状を有した頂板16、後壁13、底板11、および、前壁12は、この順に連設されている。前フラップ17は、左右で一対の開始線17Lを備え、開始線17Lに挟まれたフラップ中間部17Cと、一対のフラップ端部17Eとから構成される。前フラップ17は、頂板16の前縁16Fに連設されている。前縁16Fは、上述したように、左右で一対の回動軸線16FEと、一対の回動軸線16FEに挟まれた中間線16FCとから構成される。頂板16は、上述したように、左右で一対の第1開封線1L1と、左右で一対の第2開封線1L2とから構成される第1ミシン目を備え、第1ミシン目に囲まれた第1開封部161と、それ以外である左右で一対の第2開封部162とから構成される。頂板16は、後壁13の上縁13Uに連設されて、後壁13の上縁13Uは、頂板16の後縁16Bを兼ねている。後壁13は、底板11の後縁11Bに連設され、前壁12は、底板11の前縁11Fに連設されている。
【0024】
外フラップ14F1は、頂板16の右縁16Rに連設され、外フラップ15F1は、頂板16の左縁16Lに連設されている。左右の外フラップ14F2,15F2は、底板11の左右の縁Lに連設されている。左右の内フラップ14I2,15I2は、後壁13の左右の縁Lに連設され、左右の内フラップ14I1,15I1は、前壁12の左右の縁Lに連設されている。
【0025】
前壁12は、上述したように、前壁12の上縁12Uを一辺とした矩形形状を縁取る切り取り線12LTを備える。切り取り線12LTによって囲まれた切り取り部12Pは、切り取り部12Pの下縁を一辺とする三角形状を縁取る差し込み線12LPを備える。差し込み線12LPによって囲まれた差し込み部12P1は、それの中央を上下方向に横切るミシン目をさらに備える。
【0026】
前縁16Fの各回動軸線16FE、中間線16FC、頂板16の後縁16B、底板11の後縁11B、および、底板11の前縁11Fは、ブランクシートの表面を押し込んで形成された線状の溝である。頂板16の右縁16R、頂板16の左縁16L、底板11の左右の縁L、後壁13の左右の縁L、および、前壁12の左右の縁Lは、これらもまた、ブランクシートの表面を押し込んで形成された線状の溝である。他方、開始線17L、各第1開封線1L1、各第2開封線1L2、第5開封線16S、切り取り線12LT、および、差し込み線12LPは、ブランクシートを貫通する切れ込みが断続的に形成された直線状の線分である。
【0027】
ブランクシートから包装箱が製造される際には、まず、食品などの物品が底板11の内面に載置されて、底板11に対して、前壁12と後壁13とが立てられる。次に、前壁12に対して、物品を包むように、左右の内フラップ14I1,15I1が折り曲げられ、また、後壁13に対して、物品を包むように、左右の内フラップ14I2,15I2が折り曲げられる。次に、後壁13に対して、物品を覆うように、頂板16が折り曲げられ、続いて、底板11に対して、左右の外フラップ14F2,15F2が立てられ、頂板16に対して、左右の外フラップ14F1,15F2が折り曲げられる。次いで、頂板16に対して、前フラップ17と前壁12とが対向するように、前フラップ17が折り曲げられる。そして、前フラップ17の内面と前壁12の外面とが接合されると共に、左右の外フラップ14F1,14F2,15F1,15F2の内面と、左右の内フラップ14I1,14I2,15I1,15I2の外面とが接合される。これによって、内フラップ14I1,14I2と、外フラップ14F1,14F2とから右壁14が形成され、内フラップ15I1,15I2と、外フラップ15F1,15F2とから左壁15が形成されて、包装箱が封緘される。
【0028】
[作用]
次に、包装箱を開封するための手順について説明する。
図3が示すように、包装箱の開封時には、まず、前フラップ17の差し込み縁17Tの下方において、差し込み部12P1が、利用者の指によって包装箱の内側に押し込まれる。この際、差し込み部12P1は、それの中央を上下方向に横切るミシン目によって切断され、また、差し込み線12LPが、それに沿って切断され、これによって、前壁12を貫通する差し込み孔が形成される。そして、差し込み孔を通じて、利用者の指が包装箱の内側に差し込まれる。
【0029】
次いで、図5が示すように、包装箱の内側に指が差し込まれた状態から、前壁12の切り取り部12Pと、前フラップ17のフラップ中間部17Cとが、1つの積層体として、包装箱の外側に引き出される。この際、食品などの物品が、包装箱の内部に収容されて、底板11を下方に押圧し続けているため、積層体が引き出される力を受けて、フラップ中間部17Cが、開始線17Lを境界として、前フラップ17から切り取られる。また、切り取り部12Pもまた、切り取り線12LTを境界として、前壁12から切り取られる。そして、左右方向において、切り取り部12Pの有する幅が、フラップ中間部17Cの有する幅以下であるため、一対のフラップ端部17Eの間から、切り取り部12Pが円滑に引き出される。これによって、切り取り部12Pとフラップ中間部17Cとが、1つの積層体として指などによって摘まれた状態で、包装箱の外側に引き出される。すなわち、切り取られた1つの積層体が、包装箱の外側に配置される。
【0030】
次いで、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとが、一体として引き上げられる。この際もまた、食品などの物品が、包装箱の内部に収容されて、底板11を下方に押圧し続けているため、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとが引き上げられることによって、頂板16の各第1開封線1L1が、その前端から後端1LCに向けて切断されはじめる。そして、各第1開封線1L1の全体が切断されると、第2開封部162が、第1開封部161から分断される。この間、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとから構成された積層体が、利用者の指などによって摘まれるため、第1開封線1L1を切断するための外力を受けるフラップ中間部17Cは折れ曲がりがたくなり、第1開封線1L1を切断するための外力が、第1開封線1L1の切断に適した左右方向へ伝達されやすくなる。
【0031】
次いで、図6が示すように、頂板16の各第2開封線1L2が、それの前端から後端に向けて切断されて、それによって、第1開封部161が、左右の外フラップ14F1,15F1から分断される。続いて、頂板16の第5開封線16Sが、それの後端から前端に向けて切断されて、それによって、各第2開封部162が、外フラップ14F1,15F1から切り離されて、前フラップ17のみと回動軸線16FEを介して連設される。そのため、第5開封線16Sが切断された後では、回動軸線16FEを回転軸として、各第2開封部162を立ち上げることが可能であり、それによって、開口11Tの全体を開放することが可能ともなる。結果として、開口11Tの全体から物品を露出させることが可能であって、利用者は物品を把持すること、ひいては、包装箱の内部から物品を取り出すことが容易となる。
【0032】
以上、上記実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)第1開封部161を開封する際には、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとから構成された積層体が、利用者の指などによって摘まれる。そのため、第1開封線1L1を切断するための外力を受けるフラップ中間部17Cは折れ曲がりがたくなる。結果として、第1開封線1L1を切断するための外力が、第1開封線1L1の切断に適した左右方向へ伝達されやすくなる。
【0033】
(2)切り取り部12Pの切り取りに先駆けて、差し込み線12LPによって囲まれた差し込み部12P1が、利用者の指などによって包装箱の内側に向けて押し込まれ、それによって、利用者の指先などが包装箱の内側に差し込まれる。そして、切り取り部12Pと、フラップ中間部17Cとから構成された積層体が、利用者の指などによって摘まれて、包装箱の外側に向けて引き出されるように、これらが切り取られる。
【0034】
他方、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとから構成される積層体が、包装箱の内側に向けて押し込まれ、それによって、前フラップ17や前壁12から積層体が切り取られる形態では、切り取られた積層体が、包装箱の内側に位置してしまい、切り取られた積層体を用いる操作において、それの視認性が低い。この点、切り取られた積層体が包装体の外側に引き出される構成であれば、切り取られた積層体が、包装箱の内側に位置する構成と比べて、積層体を起点として第1開封線1L1を切断する操作が容易なものとなる。
【0035】
(3)さらに、前壁12と対向する方向から見て、左右方向では、フラップ中間部17Cの幅よりも切り取り部12Pの幅が小さいため、一対のフラップ端部17Eの間を通して、切り取り部12Pを円滑に引き出すことが可能ともなる。
【0036】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[回動軸線16FE]
・回動軸線16FEは、ミシン目に変更することも可能である。回動軸線16FEがミシン目に変更された構成によれば、第2開封部162を前フラップ17から分離することが可能であるため、開口11Tの開放がさらに容易ともなる。なお、この際、各回動軸線16FEが、第6ミシン目の一例である。
【0037】
[ミシン目]
・第1ミシン目は、頂板16の前縁16Fに位置する左右で一対の前端と、頂板16の後縁16Bに位置する後端とをつなぐ2つの直線や曲線に具体化することも可能である。また、第1ミシン目が有する形状は、頂板16の前縁16Fに位置する左右で一対の前端を備え、各前端から頂板16の後縁16Bに向けて延びる線分が相互に接続される閉環状に具体化することも可能である。
なお、本発明におけるミシン目とは、シートの切断予定部分に沿って断続的に設けられた切目を指し、切目の形状は必要に応じて点状、直線状、くの字状、L字状その他任意に設定可能である。
【0038】
[前フラップ17,前壁12]
・前フラップ17が有する形状は、左右方向に延びる帯状に限らず、頂板16の前縁16Fを一辺とする半円板状や、頂板16の前縁16Fを一辺とする三角板状に具体化することも可能である。
【0039】
・前壁12の外面と対向する方向から見て、左右方向では、フラップ中間部17Cの幅と、切り取り部12Pの幅とが、相互に等しい大きさを有することも可能であり、また、フラップ中間部17Cの幅が、切り取り部12Pの幅よりも小さい構成とすることも可能である。なお、上記(3)に記載したように、左右方向では、フラップ中間部17Cの幅が、切り取り部12Pの幅よりも大きい構成とすることによって、切り取り部12Pを包装箱の内側から引き出すことが容易となる。
【0040】
・前壁12の外面と対向する方向から見て、フラップ中間部17Cが有する形状と、切り取り部12Pが有する形状とは、相互に異なることも可能である。なお、切り取り部12Pを包装箱の内側から引き出すことが容易である観点から、前壁12の外面と対向する方向から見て、フラップ中間部17Cの大きさと、切り取り部12Pの大きさとは、相互に同じ程度であることが好ましい。
・切り取り部12Pの形状は、前壁12と対向する方向から見て、矩形形状に限らず、三角形状や半円形状とすることも可能であり、前壁12の上縁を一辺として構成される形状であればよい。差し込み部12P1の形状もまた、前壁12と対向する方向から見て、三角形状に限らず、四角形状や半円形状とすることも可能であり、前壁12の上縁を一辺として構成される形状であればよい。
【0041】
・差し込み線12LP、および、差し込み線12LPによって区画される差し込み部12P1が、切り取り部12Pから割愛された構成とすることも可能である。この際、包装箱の開封時には、まず、フラップ中間部17Cと切り取り部12Pとが、利用者の指などによって包装箱の内側に押し込まれる。そして、前壁12から切り取られた切り取り部12Pと、前フラップ17から切り取られたフラップ中間部17Cとが、利用者の指などによって、包装箱の内側において引き上げられ、それによって、第1開封線1L1の切断がはじめられる。このような構成であっても、上記(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0042】
[包装箱]
・右壁14や左壁15は、前壁12や後壁13と同じく、一枚の板として具体化すると共に、前壁12や後壁13は、右壁14や左壁15と同じく、内フラップと外フラップとの接合体とすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
L…縁、1L1…第1開封線、1L2…第2開封線、1LC…後端、11…底板、11B…後縁、11F,16F…前縁、11T…開口、12…前壁、12P…切り取り部、12P1…差し込み部、12LT…切り取り線、12LP…差し込み線、13U…上縁、13…後壁、14…右壁、14F1,14F2,15F1,15F2…外フラップ、14I1,14I2,15I1,15I2…内フラップ、15…左壁、16…頂板、16B…後縁、16FE…回動軸線、16L…左縁、16R…右縁、17…前フラップ、17C…フラップ中間部、17T…差し込み縁、161…第1開封部、162…第2開封部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6